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Posted by 八少女 夕

【小説】郷愁の丘(7)滞在と別れ - 1 -

一週あきましたが、再び「郷愁の丘」の続きです。この部分も少し長いので三回に分けます。

前作をお読みになっていらっしゃらない方のためにちょっと説明すると、ジョルジアは弱小出版社の専属カメラマンとして無名だったのですが、この前の年に世界中の子供の笑顔をテーマにした写真集『太陽の子供たち』が評判になり、『フォトグラフ・オブ・ザ・イヤー』の一般投票部門で六位入賞という快挙を果たしています。現在は一般受けする子供の写真から離れてモノクロームで大人の写真を撮っています。



郷愁の丘「郷愁の丘」を読む
あらすじと登場人物




郷愁の丘(7)滞在と別れ - 1 -

 また激しい雨が降った。彼女の心はサバンナへと向かった。稲光の中で浮かび上がるアカシアの樹とキリンのシルエット。シマウマのくっきりとした縞の上を伝って落ちる雨水。

 天の恵である雨は、けれどもその瞬間には厳しい自然の猛威であり、屋根どころか傘すら持たない動物たちの上に等しく降り注いでいる。彼女は、サバンナで見かけた生まれたばかりのガゼルやシマウマの子どもたちが怯えていないか考えた。彼らにとっては初めての雷雨なのだ。

 生まれてすぐに立ち上がり、母親の与える乳を満足に飲む前に危険を避けて移動する術を学ばされる小さな生き物たち。自然の厳しい掟の中で、それでも続いていく生命の環は神々しいほどに美しかった。

 それに較べれば、ニューヨークで彼女が一喜一憂している、写真集の売上や雑誌に載ったシリーズの評判などは、取るに足らない杞憂だった。そして、世界中の称賛を受ける妹と比較されることへの抵抗や、彼女や成功した兄が自由に泳いでいく社交界の海に近寄る事すら出来ない不甲斐なさもどうでもいいのだと思えた。

 そう思っていた《郷愁の丘》の彼のリビングに、よりにもよって彼女が『フォトグラフ・オブ・ザ・イヤー』に受賞した特集号である写真誌《アルファ》があるのを見つけた時には、その皮肉に思わず笑った。表紙に映っているのは授賞式のために着飾っているジョルジア自身なのだ。

 彼女は、不意にレイチェルの家で知った事を思い出した。彼はジョルジアの写真集を全て購入していた。それにこの特集号の存在も知って、わざわざアメリカから取り寄せたに違いない。彼女が、知り合ってもいない有名ジャーナリストに恋をしてしまい、その著作やレポートの載っている雑誌を買って読んでいたのと全く同じように。

 ジョルジアはジョセフ・クロンカイトとの恋が実るとは露ほども考えなかった。彼の側に間もなく婚約が発表されるだろうと噂された美しい女性がいたこともあるが、それ以前に彼女には愛の成就は遠すぎる願いだった。

「君のような化け物を愛せる男などいるものか」

 かつて投げつけられた言葉は、彼女の世界を変えてしまった。息ができなくなるほどの苦しいショックを何ヶ月もかけて克服した後、生身の恋愛はもはや彼女とは無縁の壁の向こうの出来事に変わってしまっていた。それから十年も可能な限り人と関わらずに生きてきたので、それがあたり前になってしまい、恋をしても片想いのままで終わる以外の選択はなかった。

 この《郷愁の丘》に来る直前に知った、グレッグに女性として愛されていたという事実は、彼女に大きなショックを与えた。それなのに、何事もなかったかのような紳士的で穏やかな彼の態度に慣れて、彼女は既にその事実を忘れかけていた。《アルファ》の表紙に映った授賞式用に特別に装った彼女自身の姿は、いかにもその場にあるのが不自然な存在として目に映った。非現実的でまるでオーパーツのようだった。

 彼女が黙ってその表紙を眺めているのを見ながら、彼は言った。
「そういえば、まだちゃんと言っていなかったね。受賞、おめでとう」

 彼女は、はっと我に返った。彼はさっきまでと変わらない。友情に満ちて穏やかな教養高い紳士だった。この《郷愁の丘》に関する全て、生命と孤高と美しさと厳しさを秘めた世界の専門家として、つまり、彼女を強く惹き付ける全てを兼ね備えたまま、彼女を唯一困惑させる異性としての氣配を消してそこに存在していた。

 彼女は、そのたゆまぬ努力にはじめて意識を向けた。愛する人を前にしてあふれそうになる想いを常に隠す事は、彼女に可能だろうか? 可能だとしても、それは何と苦しいことであるか。もし、彼がその苦しい努力を、ただ彼女のために続けてくれているとしたら、それは何とありがたい事なのだろう。

 それとも、親しくなった事で、彼の幻想が打ち砕かれ、彼は努力すら必要とせずに想いを消したのだろうか。そう思えれば、負い目はなくなるのに、彼女はそれを信じたくなかった。どこかで彼の崇拝を手放したくないと思っている。彼にとって、誰よりも特別な存在で居続けたいと願っている。なんというエゴイスムだろう。

「賞をとれたのはあなたのおかげよ」
彼女は、自分の中のこの不穏な想いから眼を逸らすために、努めて明るく彼に話しかけた。
「どうして?」

「あの時撮ったマサイの女の子の笑顔が評判よくて、いくつかのメディアで取り上げられたの。それで『太陽の子供たち』の売上が予想外に上がったの。あなたが長老に交渉してくれなかったらあの写真は撮れなかったもの」

 彼は笑った。
「それを聞いて嬉しいよ。たしかにあれはいい写真だった。その場にいたのに、僕は彼女があんな表情をした瞬間に氣がつかなかったよ」
「あの子、どうしたのかしら」

「数ヶ月前に、あの集落を訪れたよ。赤ん坊を背負っていたな」
「まさか! あの子、まだ幼児だったじゃない」
「彼らの結婚は早いけれど、さすがにまだだろうな。生まれてすぐに親が婚約を決めるけれど、実際に女の子が結婚するのは十三歳から十五歳くらいなんだ。背負っていたのはたぶんあの子の兄弟だと思うよ」

「そう。でも、小さな子供が兄弟の子守りをするのね。私の姪は、あの子より少し歳上だけれど子守りをするなんて考えられないわ」
「そうだね。あの子たちは欧米の子どもたちよりも早熟だ。六歳ぐらいから親の手伝いをするのが普通で、それはマサイ以外の部族でもそうだな。子供を背負ったまま十キロ近く歩いて学校に通う子もいるし、亡くなった母親の代わりに煮炊きをしているのをみた事もある」
「ここでは人生サイクルのスピードが私たちとは全く違うのね」

 彼は思い立ったように提案した。
「明日、マサイの村に行ってみるか? この近所の部族だから、あの子はいないけれど」
「いいの? 調査の件で行くんでしょう? よそ者がついて行ったら嫌がられない?」

 彼はじっとジョルジアをみてから言った。
「君なら大丈夫だ」
「どういうこと?」

「欧米の都会から来る人たちの中には、マサイ族を見せ物小屋のエンターテーナーのように扱う人たちがいる。飛び上がる所を写真に撮りたいとかね。彼らの生活の中に遠慮もなしに割り込んで、いますぐあれを見たい、これをしたいと要求するんだ。一部の部族は、既に観光客相手にショーをする事で生計を立てている人たちもいる。でも、僕が逢いに行く人たちは昔ながらの生活様式を守っていて、彼らのペースで誇りを持って生きている。君は、小銭を投げて、いいことをしてやっていると思うような傲慢な人じゃない。彼らの生活を尊重する事を知っている。だから、連れて行っても彼らは嫌がらないだろう」
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Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
更新、お疲れさまでした。
え、なんか、ちょっと寂しげなタイトルの章ですね。いよいよジョルジアの『郷愁の丘』滞在も終わっちゃう、とか?

圧倒的な大自然を目の当たりにしたとき、普段の自分の悩み事の小ささに気づくことってありますね。なんて些末なことで悩んでいたんだろう、なんて思うのですが……普段の生活に戻ると、結局また同じようなことで汲々としている。う~ん、なんだかなぁ。

お得意の恋愛に関するぐるぐるですが、ジョルジアの場合は濃いと言いますか、たんなる「いい子」じゃない部分も垣間見えて、面白いです。
このぐるぐる、解決が難しいですね。もっともある意味では、すごく簡単なのかもしれませんけど。

ウチの朴念仁も、思う相手には思われず、こんなに思われているのにその存在も知らない人がいるんですよねぇ。世の中、うまくいかないものです(笑)
そうそう、その朴念仁と、ウワサの彼女のお話、じつはこっそり書き始めています。今年中にはなんとかしたいなぁ(ちゃっかりPR)

次回、マサイの村編も楽しみです。
ところでジョルジア、ちゃんとグレッグを撮ってる?
2017.08.09 15:44 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

まあ、いい加減に滞在を終わらせないと、この人ったらグレッグがおとなしいのをいいことにつけあがって長居していますから(笑)

そうなんですよね。ものすごく感動していると、いろいろと哲学的なことを考えて、すっきりしているんですが、帰ってくるたたいてい元の木阿弥ですよね。不思議だ。

ジョルジアは「いい子じゃない」どころか極悪です。キープしたいだの、このままが楽だから放置だの、とんでもないですね。
そういえば、ウチのヒロインって、結構酷いことをするので、お相手への男性陣からの同情、時々いただいています。

そしてついにあのお二人の続きが! 待っていましたよ。久しぶりですものねぇ。楽しみにまっていますよ!
ジョルジアは、今はまだどちらかというとクロンカイト様を向いていますが、この作品中に妙な念を送るのを止めさせますのでご安心くださいませ(笑)

> ところでジョルジア、ちゃんとグレッグを撮ってる?

えっ。な、夏休みの宿題は……。今からやろうと思っていたところなのにっ! (子供の逆ギレ)

コメントありがとうございました。
2017.08.09 22:30 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
う〜ん、ぐるぐる、ぐるぐるしてますねぇ……
でもジョルジアの気持ち、わかる気がします
気持ちは受け入れられないんだけれど、グレッグにとって自分が
いつまでも「女(特別)」であって欲しいと願う気持ち。
これって、例えば対象がはなから「あり得ない、無理無理」だったら
「気持ち悪い」で片付けられるで思うんですよ。
でもそうじゃなくてむしろ崇拝を手放したくないと思ってるってことは、ジョルジアは少なからず男として彼を認めてるってことなんだと思うんです。
複雑な女心……これは、すべての女性に少なからずある「エゴ」だと思うんだけれど、ジョルジアは自分が恋愛で苦しんだ過去も手伝って、人一倍自分のこうした「エゴ」に嫌悪感を抱いていそうです。
また、ジョルジアのグレッグに対する想いがまた繊細に描写されていて、
ただの惚れた腫れたで悩んでるんじゃないってことが痛いほどに伝わってきます。
某ニュースキャスターさんへの想いとは質が異なりますよね。
燃え盛る炎と静謐な炎と。
見事に陰影が別れていると思います。

そういえばマサイ族は、本当はスマホとかも所有してるらしいけれど
テレビでは持ってないふりするとかいいますよね。
ジョルジアはグレッグのおすみつきということもあってきっと自然に
彼らを尊重することができるでしょうね。
そこで新たなグレッグを発見してぱしゃり‥‥とかかな?
章題が何やら気になりますが楽しみにしてます。
2017.08.10 01:15 | URL | #- [edit]
says...
ま。観光客はそうでしょうね。
あれが見たいこれが見たいですから。
私もそうですし。
それを考えると。集落を観るのは失礼なことなんでしょうね。
まあ、私は海外にはあまり行かないのでそういうことはしないですけど。
観光客は困りものなのか、あるいはそれで食っていけるから良いのか。
なんだか微妙なものですね。
2017.08.10 10:00 | URL | #- [edit]
says...
あ、別れってタイトルに入ってる。
一旦2人は離れるのですね。なんの進展もないまま・・・。

圧倒的な自然に感動する事って日常ではほとんどないんですよ。
旅先などで日常が非日常と重なった時、大自然を前にするとこういうことが起こるような気がします。
いままさにジョルジアの身にそれが起こっているんですね。
でもたちまち日常に引き戻される。
人間って生きているんですからこれはしょうがない事なのかも、そんなふうに感じました。
そしてジョルジアの着飾った姿が乗っている特集号の表紙を想像しています。
きっと綺麗なんだろうなぁ。
本人にとってそれがどうなのかは置いておいて、グレッグがどういう気持ちでその表紙を見ていたのか、そして今見ているのか、グレッグは本当にフリーズしているみたいですね。やれやれ。
ジョルジアのエゴイズムですが、彼女のトラウマは相当に酷いようですから、まぁこれくらいはやむを得ないのではないでしょうか。
「君のような化け物を愛せる男などいるものか」
酷い!!!この台詞が出てくるたびにそう思います。言葉って使い方によっては凶器ですね。

マサイの村は楽しみですね。
グレッグのジョルジアに対する評価も聞けましたが、実際彼らにどのように受け入れられるんだろう。あるいははねつけられるんだろう。
グレッグの言うようにジョルジアなら大丈夫、そう思うんですけれど。
でも夕さんの書かれるマサイって、単純に「大自然と共に生きる善良な民」ではないんですよね。
2017.08.10 12:02 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

そうです、そうです。
全然「論外」じゃないんです。この時点では、もう半分くらい「受け入れてもいいかも、でも、いざとなったら、また捨てられるのかも」みたいなところで揺れていますかねぇ。でも、グレッグの方はそんなこと知らないし「可能性ないよなぁ。迫ったら嫌われるなあ」とぐるぐるしています。見えないけど。

それに、自分がそうしてきたからでもあるんですけれど、ジョルジア、本当にモテなかったので、やっぱり好かれていると嬉しいんですよね。純粋に。

で、某ジャーナリスト氏の時のものすごく分かりやすい恋の落っこち方の記憶がまだあるので、今の自分が感じているものがなんだかわからなくて混乱しているようです。「全然ドキらないし、赤くもならないし、なんかすごく居心地いいし、これって恋じゃないじゃん?」みたいな。自分ではもう完璧に友情は超えているんだけれど、じゃあ、なんなんだろうと。

マサイ族、そうか、私が行った時はまだスマホ自体がなかった頃ですが、今はそういう人もいるのですね。
ということは、マサイの村には「出勤」しているのか。
なんせああいうところは電線が通っていないので、充電できないんですよね。
私が行った時には、観光客のいない時にしているデジタル時計が大好き、なんて話は聞きましたが。

ぱしゃり……
だから、今、撮ろうとしたところだったのに!
(やるべきことをやっていないと指摘された子供の言い訳その二・笑)

コメントありがとうございました。
2017.08.10 20:47 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

観光客用の「なんとかショー」になってしまっているところは、手っ取り早く観光客が見たいものだけを見せて終わりにするんでしょうね。
そして、払って行くお金が、彼らの現金収入になっていると。
本来の少数民族の生活そのものは、ずっと見ていて楽しいものでもないんですよね。
当たり前ですけれど、生活ですから。観光客はさっさと面白いものだけ見て次に行きたい。
でも、本当に生活しているところで、それを中断させてあれこれ要求し、しかも「来てやった」的な態度だと失礼ですよね。
生活の邪魔をしているのですから。

いずれにしても、そうやってちょっと見るだけでは、きっと彼らの生活はほとんどわからないのでしょうね。

コメントありがとうございました。
2017.08.10 20:58 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

あはは、だって「滞在」だけだとなんですし。
で、もちろん離れます(笑)
もう外伝で開示してしまったので隠しもしませんが、ずっと進展していませんよね。(おいおい)

同じ光景を見ても人と、その状況によって感じる事は様々だと思うのですよ。
分かりやすく言うと、新婚旅行やデートで夕日を見たらロマンチックだろうし、悩みがあって一人で見たら、そうは思わないだろうし。

ジョルジアにとって、《郷愁の丘》が特別なのは、やはり彼女の人生での経験や、現在の心境がこの場所と呼応したからなんですよね。

《アルファ》誌の表紙になっている写真は、前作の例の表彰式での写真ですから、珍しくドレスを着ていますね。ブルーのドレス、アレッサンドラの専属美容師にメイクもしてもらって、化けています。ベンジャミンが個人的感情もあって選んだベストショットが使われていますから、そりゃグレッグは大事にしていたでしょうね。注文した時は、まさか本人がいずれ自宅に来るとは思ってもいなかったし。

ジョンの酷いセリフですが、本当にとんでもない言葉ですが、ありえないようなセリフではなく、こういう事を言ってしまう人っているんですよね。言葉の凶器って本当に有ると思います。本人はここまで誰かの人生を左右したとは考えてもいないケースもありますし。

さて、マサイの村ですけれど、ものすごく特別な経験をするわけでもないです。
ここにこのシーンが入っている理由は、実はいくつかの伏線の一つではあるのですが、なんとなく動物だけで終わらせたくなかつたというのもあります。まあ、いずれにしても理想的な善良な人々なんてどこにもいませんかね。でも、どうでもいい人たちもどこにもいないんですよね。だから、この経験もジョルジアにとっても、グレッグにとっても「何か」ではあるはずです。たぶん。

コメントありがとうございました。
2017.08.10 22:13 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
なんか、ちょっとわかった気がするなぁ。あ、いえ、私の感じているイメージのことなんですが。
ジョルジアは確かにすごく某ジャーナリスト氏を恋していると分かっているんだけれど、何となくその気持ちは「絵に描いた餅」イメージから抜け出せない感じだったんですよね。なんというのか、質感がない恋。確かに、直接ふれあったわけでもないから当たり前なのかもしれないけれど……何だかそのイメージが、ここ数回で、あ~そうか、恋と名乗っている思いだけれど、どうして「薄く」感じるかというと、これはジョルジアがまさに現実逃避しているからなんだなと。現実的じゃないから重さが感じられなくて……でも、これってジョンに言われた一言から自分を守るための防御のために恋心を作り上げているようなイメージで。……あ、いや、某ジャーナリスト氏はすごくいい人なんだけれど、ジョルジアから見たらまさに「テレビの中」「雑誌の中」の人ですよね。彼女が撮ったお墓の写真の中の彼は、確かに「綺麗な絵」だけれど、グレッグが素晴らしいと感じた女の子の笑顔とはまるきり違うものなんですよね。そっちには質感と量感がある。少なくともグレッグにとってはそこに奥行きがあったと思うんです。
だから彼女のこのぐるぐるは、彼女が、自分の内面に持っている大事なものに気がつくためのぐるぐるなんですね。グレッグの気持ちはもう分かってるし、そこへのぐるぐるじゃない。始めから彼女は自分の中に大事なものを持っているけれど、気がついていない、そこへのぐるぐる。う~ん、実はいちばん始末に負えないのかも。
ジョルジアはぐるぐるしているけれど、このぐるぐるはグレッグとの間の質感と量感を高めていっているだけだな、とニマニマしている私でした。恋は平面じゃなくて立体だからね。うん。
2017.08.13 09:03 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

ああ、なんか、よく分かって下さっているなあと感心しています。
この話、ちょっとわかりにくいかなと自分でも思うんですけれど、二人のお互いにはあまりよく見えていないトラウマが邪魔しているんですよね。そうじゃなかったら、とっくにもう少し進んでいると思うんです。もっというと、正に彩洋さん が指摘してくださっている、もう傷つきたくないという「自己防衛」が、両方で発動してしまっているんです。

美穂とジョセフの時は、キャラをお借りしているにしてももう少し現実味があったと思うんですけれど、ジョルジアの場合は本当に非現実の仮想空間だけの恋なので、薄っぺらいのですよね。まだキャシーの方がずっと現実のジョセフのことを知っていますしねえ。ま、ジョルジアはキャシーとジョセフが知り合いなんて知らないんですけれど。

このジョルジアとジョセフとグレッグの関係は、おそらく玲子と例の雑誌の竹流とルドヴィコに近いのだと思います。もちろん竹流の人生には真や珠恵さんとの間ではものすごく厚い中身の愛のストーリーが詰まっているんですが、雑誌でしかしらない読者にとっては、テレビで見るアイドルと変わらないわけで。ジョルジアにとってのジョセフも有能さと人格の素晴らしさと外見はわかっても、そこまでの存在でしかないんですよね。ところがグレッグの方は、マイナス部分も含めてものすごい量の情報と共体験と共感が積もっていて、恋だかなんだかわからないけれど、とにかく手放したくないというところだけわかっていて、「下手に動かさない方が失わなそうで安心」みたいなことになりつつあるという感じでしょうか。

一方で、グレッグにとっての雑誌の中のジョルジアは、もう少し現実的な感じで見ていたのですが、もちろん今の方がもっとずっとよく知っているのでこれから雑誌を見るときはもっと複雑な心持になるでしょうねぇ。こっちのぐるぐるも進行中(笑)

というわけで、ジョルジアの方も質感と量感を増大させていますが、グレッグの方もそうなので、この立体化作業は双方から進んでいます。

面白がりつつ、応援していただけると嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2017.08.13 21:24 | URL | #9yMhI49k [edit]

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