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【小説】君との約束 — あの湖の青さのように(3)

Posted by 八少女 夕

大海彩洋さん(のところの猫マコト)主催の「オリキャラのオフ会 in 北海道」第三弾、完結編です。本当は「Infante 323 黄金の枷」を先に発表する予定だったのですが(前回も同じ事言ったぞ)、こちらの展開が明後日の方向に行ってしまった関係で、他の方の書かれるご予定を狂わせるに間違いないという事で、少しでも早く発表する事にしました。
オリキャラのオフ会

浦河に到着するところなどは全てすっ飛ばして、盆踊り大会の日から始まっています。若干の回想は入っていますが。うちの二組のキャラのストーリーを畳む事だけに専念していますし、さらにお許しもなく勝手にコラボっています。該当キャラの持ち主の皆さん、すみません。ありがとうございました。

オリキャラのオフ会 in 北海道の募集要項記事(大海彩洋さんのブログ)
私のところのチームの詳細設定など



君との約束 — あの湖の青さのように(3)
- Featuring「森の詩 Cantum Silvae」


 正志は焦っていた。浦河の相川牧場に来て二日が経っていた。到着した十日の夜のウェルカムパーティでもずいぶん飲んだが、その前夜の屈斜路湖から、もうペースが崩れていた。昨晩も働いた後にソーラン節の練習をしてから宴会で、思っていた以上に酔ってしまった。そして、今晩は盆踊り大会。ソーラン節を踊りつつ、北海道の海の幸を堪能する結構な待遇だが、これまた飲みまくる事になるだろう。

 自分で酒はそこそこ強いと思い込んでいた。営業という仕事柄、接待で飲み慣れている。だが、この場にいるメンバーの飲み方は、その彼の「そこそこ」をはるかに凌駕していた。

 全員が飲んでいるわけではない。高校生トリオや、中学生の双子、それに見事な太鼓のバチさばきを見せてくれる成太郎は19歳なので、当然一滴も飲まない。二十歳だから飲んでも構わない綾乃も敢えて飲もうとしなかった。牧場の女性陣、それに手伝いにきているかじぺたさんと呼ばれている女性は、お酌をする事はあっても自分たちが飲みまくる事はない。むしろ忙しく台所と宴会場を行き来をしていた。

 異国風の三人のうち、詩人と呼ばれている部屋の中でも全身を覆う見るからに暑い服を纏った不思議な人物は、カニをつつきながら合うとは思えない甘いジュースを飲んでいた。一方、その連れであるオッドアイの青年レイモンドと、大柄な女性リーザは、どれほど飲ませてもまるで水を飲んでいるかのように、全く変わらない。

 それは、コトリも同じだった。屈斜路湖でもそうだったが、もの静かな彼女は飲んでも口数が多くなる事はない。いつもと同じように落ち着いているが、氣がつくと盃が空になっている。ダンゴの方は、賑やかに飲む。量は多くないが、楽しい酒のみだ。そして、屈斜路湖から親しんでいるマックスたちと楽しく話している事が多かった。

 ホストファミリーの相川家は遺伝なのか、誰もがとんでもないうわばみだ。とくに家長の長一郎は、その歳でそんなに飲んで大丈夫なのかと、余計な心配をするほどだが、京都から来た旧知の友、鏡一太郎の方も同じペースで飲み、しかも赤くなって声は大きくなっても、酔って乱れた様子は全く見せない。

 結局、飲んでいるメンバーの中で、一番酒に飲まれかけているのは、悔しい事だが正志なのだった。そして、部屋に行くとふらついたまますぐに寝てしまうので、千絵とまともに話すらできないのだった。

 こんなはずじゃなかった。

 この旅行を計画した時、彼は千絵と、もう少し別の形の旅行をするつもりでいた。屈斜路湖での混浴の露天にゆったりと浸かり、アイヌの文化に触れた後で、二人でじっくりと語り合う。そして、力を合わせて働いた後、部屋で今後の事も話そうなどと、勝手に思っていたのだ。

 今後の事。二人の未来の事。そう、もう少し具体的にいえば、次に旅行するときは新婚旅行だね、という話に持っていければ上等だと思っていた。花火大会もあるから、ムードは満点だと。

 屈斜路湖から見ず知らずのメンバーたちと意氣投合して、毎晩宴会になる事は考えてもいなかった。豪華で美味しい朝食にも舌鼓を打ち、仲間たちと朝から笑い合った。それは嬉しい誤算でとても楽しい事だったが、千絵にプロポーズをする段取りからはどんどん離れていくようだった。

 宴会で千絵と並んで飲みながら話そうと思っても、忙しく働き回る牧場の女性陣を見ると、いつもの放っておけない性格がうずくのか、立ち上がって手伝いに行ってしまう。彼も立って一緒に台所に行こうとすると、他のメンバーが正志を呼び止め、盃に酒をついで話しかけてきた。

 それに、昨日のソーラン節練習直後、宴会の始まりに起こった件があった。

 ソーラン節の振り付けと、厳しい指導、それにめげないメンバーたちのふざけた楽しい騒ぎ。そういうムードが苦手な人もいる。どうやらコトリはそのタイプだったようで、そっと席を外した。たまたま入口の側にいてそれを見ていた正志は、宴会時間になっても帰ってこないので、どうしたのかとトイレに行くついでに建物から出て周りを見回したのだ。

 コトリは愛車DUCATI696のところにいて、オイルをチェックしていた。一日で300キロ近くを走ったのだ。ベストなコンディションにするために、少し整備をしていたのだろう。

「思いっきり飛ばせた?」
正志が訊くと、少し驚いたようだったが、微笑んで頷いた。
「神戸では、ほとんど信号のない直線コースなんてないから」

 それから、しばらくモーターサイクル談義に花が咲いた。正志は、Kawasaki Ninja 650Rに乗っていた時に、逆輸入車だったので、合うキャリア&トップケースを見つけるのに苦労し、バイクを処分したときもそのケースだけは手元に置いてしまったと話した。

「マンションを買うと決めた時に、バイクに乗る事自体をもうやめようと思ったくせにね。まだ未練があるんだろうな」
「ER-6fはまだ市場にでているから、そのうちにまた買えばいいでしょう」
「そのうちにか……」

 その時に、コトリが建物の入口の方を見たので、正志もその視線を追った。そこにはゴミ袋を持っている千絵がいて、DUCATIの前で話し込んでいる二人を見ていた。二人の視線に氣づくと、彼女は小さく手を振って、ゴミ置き場の方へ急いで行ってしまった。

「あ……」
どことなくこれはマズい状況ではないかと思った。後ろめたい事をしていたわけではないし、千絵は、いままでやきもちを焼いたりすることはなかったので、わざわざ追って行って何かをいうのも、よけいに事をこじらせるように思い、しばらく立ちすくんでいた。

「行ってあげたら」
コトリがぽつりと言った。
「え?」

「ダンゴが言ってくれなかったら、私もわからなかったけれど、車種や整備の話、走りの話題についていけない女の子たちは、置いてきぼりになったようでずいぶんと寂しい思いをするみたい。それはそれ、これはこれでどちらも大切なんだって、安心させてあげた方がいいと思う」

 正志は、コトリをじっと見つめた。よくみている人だなと思った。ぶっきらぼうに感じることもあるけれど、とても心の温かい人なのだとも感じた。
「ありがとう。いってくる」

* * *


 ゴミ袋を持って小走りにゴミ捨て場に向かっていた千絵は、悲しいきもちを振り払おうと頭を振った。その時にちゃんと前を向いていなかったので、角を曲がって走ってきた小さなものに氣がつかなかった。

 足元に暖かいものがポンと当たった。それは茶虎柄の小さい猫だった。
「みゃ~!」

「あ。マコト! ごめんなさい!」
千絵は、あわてて屈んでその仔猫を抱き上げた。左右で色の違うきれいな瞳が、千絵を見ていた。いきなりぶつかったにもかかわらず、マコトは嫌がる事もなく、千絵の顔を覗き込んでかわいらしく鳴いた。千絵は、その頭を撫でてやりながら、そっと立ちすくんで、大きなため息を一つ漏らした。

「ずいぶんと大きいため息だな」
その声にはっとして振り向くと、建物の影にいた赤毛の大柄な女性が、千絵の方を見ていた。泉の縁に腰掛けて、何か貴金属のようなものを洗っているところのようだった。

「リーザさん」
「いつも男どもが食い散らかしたものの後始末に走り回っているようだが、それに疲れたんじゃないのか」

 千絵は驚いた。褒めてもらいたかったわけではないし、自分も他の参加者たちのように普通に座って食べているだけでもいいのに勝手に手伝っている事もわかっていたけれど、それでも誰かがそれをしっかり見ていてくれる事が、嬉しかったから。

「いいえ。そうじゃないんです。動き回るのは、私のクセみたいなものですし、嫌じゃないんです。そうじゃなくて……。たぶん、自分の中にはないと思っていたつまらない感情があったので、がっかりしてしまったんだと思います」
「ふ~ん? そういうこともあるさ。それが人間ってもんだろう?」

 千絵は、マコトの毛並みを優しく梳きながら、リーザの方に近づいて行った。見ると彼女が泉の水で洗っているのは小さな真鍮の指輪だった。
「それは?」

「これか? わたしが子供の時に、恩人がくれた指輪さ。ウニがついてしまったんで、洗いにきたんだ」
「とても綺麗。水を反射して光っていますね」

 リーザは、笑って指輪についた水分を丁寧に拭きながら言った。
「高価な宝石付きと違って、どこにでもある類いの指輪かもしれない。だが、わたしにとっては剣とともに一番大切な持ち物だ。モノってのは、どのような形で自分のものとなったか、もしくは失ってしまったか、その歴史で価値が決まるんだと思う。そうやって特別になったものは、他のヤツらがなんと言おうと関係なく大切な存在になるんだ」

 千絵は、リーザが愛おしそうに指輪を嵌めるのを見ながら考えた。私の知らない、バイクに乗っていた頃の正志君。バイクショップの店長であるコトリさんとその話をしている彼がとても生き生きとしていたのは、当時の彼がそのバイクで走る時間を大切にしていたからなのよね。入っていけない世界を感じて悲しくなってしまったけれど、そんな姿を見せたりしちゃダメなのかもしれない。

 マコトが、千絵の腕からぱっと離れて、リーザの膝の上にすとんと遷った。リーザは、千絵の後を見て笑った。
「ああ、邪魔者は消えた方がいいな」

 千絵が振り向くと、そこには戸惑った顔をした正志が立っていた。リーザはマコトを抱いたまま、「がんばんな」とでも言うように正志の肩をポンと叩くと、また続きの酒を飲むために宴会場に戻っていった。それが昨日の事だ。
 
* * *


 盆踊り大会が始まっていた。正志は、「踊っている場合じゃないんだけれどな」と、半ば涙目になりながらソーラン節を踊っていた。昨日の件の誤解はなんとか解けたようだし、千絵は怒ってはいなかったのだが、その後もポイントを稼ぐチャンスがあまりなく、プロポーズどころではなかった。

 踊りながら千絵を探すと、つまだけになった刺身の盛り皿を抱えて台所へと向かっているところだった。

 櫓の上は、盛り上がっていた。レオポルドは、特別に用意してもらった金色の浴衣を身に着けて、ソーラン節を踊った。せっかく用意してくれたお揃いの浴衣もあったのだが、目立たないものは嫌だとゴネたのだ。縫わされる女性陣はムッとしていたようだが、彼らがアイヌの衣装を着、アイヌのハチマキをお土産に持ってきた事を喜んだ弘志夫人が大人の対応で用意してくれた。

「陛下。もうそのぐらいにしておいていただけないでしょうか」
妙に冷静な男の声に振り向くと、見慣れぬ外国人が二人立っていた。一人は、くすんだ赤の袖の膨らんだ上着に灰色の胸当てをし、この暑いのにマントまで身につけた男で、もう一人は大きくデコルテは開いているが、裾までしっかりと覆われたアプリコット色のドレスを着た妙に色っぽい女性だった。

「なんだフリッツか。よくここがわかったな」
レオポルドは、悪びれずに言った。

「あれは誰ですか」
長一郎が、小さい声でマックスに訊ねた。彼はにニコニコ笑って答えた。
「陛下の護衛の責任者を務めているフリッツ・ヘルマン大尉と、高級娼館の女主人マダム・ベフロアです。我々と別れて札幌の歓楽街へ行っていたのです」

「この世界の出口でお待ちしていましたが、いっこうにお見えにならないので、お迎えに参りました」
「もう少しいいではないか。そなたもここに来て飲め。伏見の酒はまだ飲んだ事がないのだろう? それにソーラン節を踊るのも滅多にない経験だぞ」

「陛下。いい加減にしてください。向こうでどれだけの政務がたまっているとお思いなんですか。臣下の皆様のお小言をいただくのは、この私なのですよ」
「じゃあ、お前だけ先に帰って、じじいどもに『よきにはからえ』と伝えろ。余とマックスは、疲れを癒すためにもう一ヶ月ほど滞在する」
レオポルドは、抵抗を試みた。

 ヘルマン大尉は、腕を組み軽蔑した目つきで、女性陣に囲まれて楽しそうなレオポルドとマックスを眺めた。
「では、お二人のご様子を、宮廷奥取締業務の引き継ぎで休む暇もないフルーヴルーウー伯爵夫人に詳細にお伝えする事にします」

 レオポルドとマックスは、ぎょっとして慌てて櫓から降りてきた。
「ちょっと、待ってください、ヘルマン大尉。私はすぐに帰りますので……」
「フリッツ、余が悪かった。明日、花火とやらを見たらすぐに帰るので、ラウラに告げ口するのだけは勘弁してくれ」

「フルーヴルーウー伯爵夫人?」
「ええっ。マックスったら、結婚していたってこと?!」
女性陣から、次々と批判的な声が上がる。特に、馴れ馴れしくされていたダンゴはおかんむりだ。

「ええ。陛下のおぼえもめでたいバギュ・グリ侯爵令嬢で、大恋愛の末の新婚なのよ」
ヴェロニカが、とどめを刺す。皆の冷たい視線に耐えかねて、マックスは、無理やり話題を変えた。

「ところで、ヘルマン大尉。お預けしたお金は全て遣い切ったでしょうか」
現地通貨を持ち帰ってはいけないことになっているので、彼らに渡した三百万円のことを訊ねているのだ。

 ヘルマン大尉の顔は曇った。
「そ、それが……」

 大尉の視線を追うと、二人の後には大量のジェラルミンケースが置かれている。
「私は、歓楽街であるススキノでなんとか遣い切ろうと努力したのですが」

「どうやって遣ったのだ、フリッツ」
「はあ、『そーぷらんど』というご婦人と一緒に入る公共浴場のようなところへ行きまして、値段が張るところでしたので、かなり減らす事には貢献できたと思うのですが……」
「なんだ。そんな大金は払わずとも、女と風呂に入りたいなら、ここの岩風呂を使えばいいのに。いい湯だぞ」

「えっ」
ヘルマン大尉は真っ赤になって、女性陣を見回した。正志は、それは違う! と、心の中でつっこんだが、レオポルドたちに余計な知識は付けない方がいいだろうと思い、そのまま黙っている事にした。

「ソープ……ランドって、何?」
後方で、高校生トリオの一人である萌衣が大きな声で享志に訊いている。正志は、なんて質問をするんだと苦笑いし、享志がどう答えるのかにも興味津々となった。

「聞いたことないな。真、知ってる?」
「いや。知らない。お風呂だって言っていたから、そうなんじゃないのか」

 なんだ、なんだ? どこのお坊ちゃま、お嬢様なんだ、この三人? まあ、こちらに振られるよりは、これで納得してくれれば、その方がいいけれど。なんせ今、千絵の前で、その手の店の詳細を知っているようなそぶりは見せたくないから。

「でも、この人がチンタラ楽しんでいる間に、私がそれ以上に稼いでしまったみたいなのよね」
ヴェロニカが、妖艶な口元をほころばせて言った。

「何をやったのだ」
「ススキノの研修先の高級クラブで、お客さんに氣にいられて。一緒に仕手株というのをやったら、なんだか増えに増えてしまって、このケースの中、全部一万円札がぎっしりなの。どうしたらいいかしら、陛下」

「それでは、それを遣い切るまでは帰れないではないか。なんとか明晩までに使わねばならぬな」
レオポルドは、真剣な面持ちをしたが、金色の浴衣を着ているとどうやっても真面目に考えているようには見えなかった。

 翌朝、襟裳岬経由で花火大会に行く前に、レオポルドとマックスは、ヘルマン大尉によって強制的に着替えさせられた。きちんとした中世の服装をすると、二人ともこれまでのおちゃらけようが嘘のようにサマになった。これまで、彼らの事を少しねじの外れたただの外国人なのではないかと思いかけていた一同も、やはり彼らは異世界から来た王侯貴族なのだと納得した。

* * *


 帯広の夜空を、大きな花が彩った。東京よりも広がっている空がずっと広い。そこを腹の底に響く轟音とともに、赤や緑や金色の色鮮やかな花火が次々と花ひらいた。

 この数日間をともに過ごしたメンバーが座って同じ花火を眺めている。いつも飲んでいたメンバーも、忙しく働いていた女性陣も、バチを話さなかった成太郎も、熊の置物の謎に挑んでいた高校生たちも、宴会を抜け出してバイクの整備をしていたコトリも、今は、全て同じ方向を見て、花火を楽しんでいる。

 隣に座る千絵の白い横顔が、花火の光に彩られている。正志は、今なら話ができると思い当たった。

「千絵」
「なあに、正志君?」

「俺……本当は、もっとお前に休んでもらうつもりで来たんだけれど……いろいろと氣が回らなくて、一人で飲んでいるばっかりで、ごめんな」

 千絵は、微笑んで首を振った。
「そんなことない、正志君。私の事を氣にして、何度も声を掛けようとしていてくれたわよね。それがわかっただけで、十分だったの。あのね、私、この旅、とても楽しかったの。来れてよかったって何度も思ったわ。本当よ」

 千絵は、嫌味でも、諦めでもなく、本当にそう思っているようだった。この旅に来る前と変わらずに、曇りのない澄んだ瞳で正志の事を見つめていた。ちょうど屈斜路湖や美瑛の青い池の水のように。正志の怖れは、すっとほどけていった。

「陛下の提案じゃないけれど……」
「?」
「また、一緒にここ北海道に来ような」

 その言葉を聞くと、千絵は正志を見て、とても嬉しそうに笑った。
「ええ。そうしましょう」

「すぐに来ような。それも……」
「それも?」
「その、できたら……新婚旅行で」

 千絵が、驚いた様子で正志を見た。彼は、意を決して、千絵の方に向き直り、はっきりと言いかけた。
「つまり、その、俺と結婚してくださ……」

 その時、正志は視線に氣がついた。

 中世組四人が遠慮なく注視していた。それに、双子と高校生三人も、生まれてはじめて目にするライブのプロポーズを見逃すまいと、しっかりと目をこちらに向けている。異国風の三人組も会話をやめて止まっていた。そしてそれ以外の若者や大人たちも、あえて見ないようにしながら、全員が固唾をのんで成り行きに注目していた。

 千絵も、その異様な注目に氣がついて赤くなった。正志は、くらくらした。轟音と花火の華麗さを隠れ蓑にして、こっそりプロポーズのはずだったのに、こんな見せ物みたいな状態になってしまった。控えめな千絵が、こんな状態でうんと言ってくれるはずは……ないよな。怒っても、当然だ。ちくしょう、失敗した……。

 がっくりと肩を落として下を見る正志を見て、千絵には、彼の心の内がわかったらしい。皆の視線をものともせずにその手を取ってから、はっきりした声で答えた。
「ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします」

 正四尺の特大花火が、帯広の空に炸裂した。その一つひとつの光は流星のように尾を引いて、仲間たちの上で輝いた。だが、彼らはその花火を見ていなかった。たった今婚約した二人の周りに集まって、思い思いの歓声を上げた。正志は、ガッツポーズをして、飛び上がった。

「なんとめでたいことだ。余からも祝わせてもらおう」
レオポルドが言った。

「いや、陛下からはすでにいろいろと……」
「それはそれ、これはこれだ。結婚祝いだからな。ふさわしい贈り物をせねば。そうだな、馬百頭を贈ろう」

「えっ?」
正志と千絵は、固まった。

「い、いや、陛下。うちはしがないマンション暮らしで、馬百頭もらっても……」
第一、馬の値段をわかっていないような氣がする。それに馬の維持費も……。

「余が贈ると言ったら、贈るのだ。足りないと言うなら羊も……」
「いや、そうじゃなくて!」

 その時、コトリがすっと立って、こちらにやってきた。
「デュラン、ちょっといいかしら」

 正志が何か言おうとすると、コトリは「私にまかせて」という顔をした。正志は、千絵と顔を見合わせてから、コトリに頷いた。彼女は続けた。
「この世界では、馬をたくさん贈るのは、あなたの世界ほど現実的ではないの。だから、代わりにたくさんの馬に匹敵する機械馬をプレゼントしてあげるといいわ。たとえば、私のDUCATIは馬80頭に匹敵するの。正志君は、数年前に、Kawasaki Ninja 650Rという機械馬を手放さざるを得なくて、とても残念がっていたの。だからそれをプレゼントしてあげて」

「おお、それはいい案だ。そうしよう」
正志は、その展開に小躍りして、もう一度ガッツポーズをした。やった! またNinja 650Rに乗れるんだ! 今度は、千絵とタンデムするぞ。

「ところで、そのNinjaとやらは馬100頭分か?」
レオポルドはコトリに訊いた。
「いいえ。72頭よ」
「では28頭分は、どうするのだ」

 100頭にこだわるな。誰もが苦笑いした。真が立ち上がって言った。
「では、こうしたらどうでしょうか。残りの28頭は、この牧場から買って、そのままここに預けるというのは」

「そうね。維持費の代わりに、ここで観光用に使ってもらえばいいと思うわ」
綾乃もにこやかに提案した。

 相川長一郎と弘志は、突然28頭も馬が売れる事になって驚いたが、やがて頷き合って笑い、それから言った。
「名前はどうしましょうか」

「ここに集まった仲間全員と同じ名前を付けたらどうですか」
成太郎が提案した。皆がそれに同意したので、相川牧場では、このワーキングホリデーに参加した仲間全員の名前をそれぞれに持つ馬が飼われる事になった。

 一つだけ問題があって、マコト号がダブるので、一頭をアイカワマコト号、もう一頭をチャトラマコト号と名付けることで決着した。当然ながらエドワード1世号、アーサー号、ポチ号もいるし、ハゾルカドス号やコクイノオンナ号もいる。

 相川牧場に積まれたジェラルミンケースの中の一万円札の内、一部はコトリの店に送られ、Ninja 650RことKawasaki ER-6fを仕入れてきちんと整備してから正志たちに送る手はずとなった。そして、残りは相川牧場にて28頭の馬の代金と維持費に充てられる事になった。

 正志たちが、もう一度礼を言おうとレオポルドの方を振り返ると、中世の服装をした奇妙な四人はもうそこにはいなかった。始めからいなかったかのように、消え去っていた。だが、マックスとレオポルドの持ってきた土産や、ずっと着ていたアイヌの衣装は相川牧場に残されていたし、ジェラルミンケースの山もちゃんとそこにあった。

「なんとなく、これからもずっと一緒にいるんだと思っていたわ」
千絵がぽつりと言った。正志も、同じ事を思っていた事に氣がついて驚いた。

「いつかまた逢えるよな。ここ北海道で」
「そうね。ここに集まったみんなとも、またいつか逢えるわよね」

 一つの約束が、次の約束に繋がっていく。北海道で始まった絆が深まると、次の縁を呼び寄せる。正志と千絵は、とても幸福になって、青く深い北の大空を見上げた。

(初出:2015年8月 書き下ろし)

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というわけで、駆け足でしたけれど、今回はこれで完結です。上手く絡めなかった方、ごめんなさい! とくに幹事の彩洋さんのところのメンバーと、もっと絡みたかったけれど、長くなる一方でどうにもできず。課題の角ドンと、それから「とにかく相川牧場で馬を買う」という目標に向けてのみ邁進した結果です。

いろいろと、空白時間がありますので、お好きなようにうちのキャラを使って書いてくださって構いませんので……。どうぞよろしくお願いします。

今回も、皆さんにたくさん遊んでいただいて、嬉しいオフ会になりました。みなさん、本当にありがとうございました。そして、幹事の彩洋さんとマコト、本当にお疲れさまです!
.12 2015 小説・あの湖の青さのように trackback0

【小説】君との約束 — あの湖の青さのように(2)

Posted by 八少女 夕

大海彩洋さん(のところの猫マコト)主催の「オリキャラのオフ会 in 北海道」第二弾です。本当は「Infante 323 黄金の枷」を先に発表する予定だったのですが、他の方が書かれるご予定もあるだろうという事で、こちらを先に発表する事にしました。
オリキャラのオフ会

サキさんのところのコトリ&ダンゴとしばしの別れを告げて、四人はミニバンで富良野へと向かいます。北見でlimeさんのところの双子を、美瑛にてTOM-Fさんのところの綾乃を拾ってまいります。

なお、この後の話は、欠片も書いていません。皆さんの出方を見ながらのんびり一本だけ書こうと思っています。


オリキャラのオフ会 in 北海道の募集要項記事(大海彩洋さんのブログ)
私のところのチームの詳細設定など



君との約束 — あの湖の青さのように(2)
- Featuring「森の詩 Cantum Silvae」


「あの先に、二人少年がいるだろう」
後の席に座っているレオポルドが、運転席の正志に話しかけた。

 言われてみると、一キロほど先の反対車線の道路脇に、小さな影が二つ見えた。なんで少年ってわかるんだ?
「少年?」

「ああ、少年二人。一人は親指を上に向けている」
「親指?」
「そうだ。そして、もう一人の少年が、昨夜、そなたたちが見せた例の牧場の紙を見ているぞ」

「ええっ?!」
正志と千絵はぎょっとした。正志と千絵、それに昨日知り合って一緒に浦河の牧場でのワーキングホリデーに同行することになった謎の外国人、レオポルドとマックスは、レンタカーの七人乗りのミニバンで北上していた。本来だったら、昨日行くはずだった富良野へ寄る用事があったからだ。

 朝食後、やはり浦河へと行くことになっているバイクでの女性旅行者たち、コトリとダンゴに夜までの別れを告げて屈斜路湖畔を北上し、北見までやってきたところだった。

 普段なら、反対車線のヒッチハイカーになど氣を留めたりしないのだが、そんな手前から予言のようなことを言われたので、スピードを緩めつつ近づくと、本当に二人の少年で、背の低くてフワフワとした髪の少年が「浦河」と書かれた紙を掲げ親指を突き出していて、もう一人がオロオロと見ている紙は、紛れもなくあの浦河の牧場のチラシだった。

 正志が車を停めて窓を開けた。
「本当だ。あのチラシを持っている。お~い、君たち、ここで何をしているんだ?」

「ヒッチハイクです。残念ながら、みなさんは、反対方向みたいですね」
きれいな顔をした少年だった。凊やかな表情でキッパリと答えた。

 背の高い方の少年が、後から小さな声で言った。
「なあ、ナギ、やっぱりヒッチハイクは無謀だよ。なんかあったらどうするんだよ。電車やバスを使った方がいいって」

 千絵は、鞄から例のチラシを取り出して二人に見せた。
「ねえ、あなたたちもここヘ行こうとしているの?」

 二人は、驚いたようだった。それから頷いて、こちらの車線へと移動してきた。
「嘘みたいだ。さっきから二十台くらい、車が通ったんですが、みんな無視するか、全然違うところにしか行かないみたいで」

「そりゃ、そうだよ」
正志は頷いた。電車を乗り継ぐより、相当効率悪いだろう。

「俺たちは、今日、富良野経由で浦河へ行く。レンタカーにスペースはたっぷりある。君たちが、北海道を半周する遠回りが嫌じゃなかったら、乗ってもいいぞ。そこの二人も乗りかかった船で道連れになったんだ」

 二人の少年は、顔を見合わせた。
「遠回りかもしれないけれど、座っているだけで目的地に確実に辿りつける。こんな偶然は二度と起こらないよね、ミツル」
「そうだな、ナギ。この人もこのチラシを持っているからには、人さらいってこともなさそうだし」
二人は小さく話し合い、それから、こくんと頷いた。

「お願いします。ガソリン代とか、必要だったら言ってください。僕たち、お小遣いも持ってきていますから」
ナギの言葉に、正志は笑って手を振った。

「君たちのお小遣いをぶんどるほど悪どくないよ。それに、レンタカー代とガソリン代だけでなく、昨日の宿泊費用まで全部そっちの二人が払ってくれちゃったんだ。国王さまと伯爵殿らしいから、失礼がないように頼むよ」

 その言葉を聞いて、二人の少年は揃って目を見開いた。国王と伯爵? そのアイヌのコスプレをしたウルトラ奇妙な二人が?

* * *


 釧路から屈斜路湖までずっと平坦な道だったので、層雲峡を通るコースは変化が出るだろうと思っていた。確かに少しは変化があったが、それでも単調な道という印象は拭えない。東京の信号機だらけでイライラする道と較べれば天国のようなのだが、こうも直線コースだけだと少し眠たくなってくる。昨夜は楽しくて騒ぎすぎたし。

 その正志の疲れを察知したのか、層雲峡の手前で、千絵が運転を代わると言ってくれた。レオポルドも運転したがったが、無免許に決まっているので、もちろん断った。千絵の運転は、多少もたつくがひたすら直線コースでは特に問題はなかったし、第一ブレーキなどが丁寧で、ナギとミツルはむしろこっちの運転の方が嬉しいようだった。

 助手席に座った正志は、振り返ってレオポルドに話しかけた。
「ところで、陛下。さっき、ミツル君があのチラシを持っているって、なんでわかったんですか?」

「なんだって。そなたには見えていなかったのか?」
「えっ。あの距離で見えるわけないでしょう」
「そんな視力では、狩りの時に獲物が見えないではないか」
「か、狩り?」

 マックスが、にこやかに言った。
「あまり遠くを見ない生活をしている者たちは、視力が落ちるものなのですよ。例えば街の職人たちは、とても細かい作業は得意ですが、100フィート先の麦の数を正確に数えられなかったりします」
「そういうものなのか」

 正志は、マックスの方を向いて訊いた。
「ってことは、あなたもあの距離のチラシが見えたんですか?」
「ええ、もちろんです。私は、遍歴の教師でしたから、遠くを見る事が多かったのです。なるほど、ここの皆さんたちの視力は、街の職人たちのようなものなのですね」

「あの、お二人はどこから来たんですか?」
ミツルがおずおずと訊いた。
「先ほど、我々はグランドロン王国から来たと言わなかったか」

「ええと、聞きましたけれど……それ、どこですか?」
「知らぬのか。《シルヴア》の森に面している国だが」
「ごめんなさい。僕たち、世界地理はまだ中国までしか終わっていないんだ。二学期になったらヨーロッパの地理もやると思うけれど」

 正志は、俺はヨーロッパの地理も歴史もやったけれど、そんな国の事は憶えていないぞと心の中でつっこんだ。

 ミツルが、大人たちの会話に加わっている間、ナギの方は、少し熱っぽい様子で、会話には加わらずにじっとレオポルドの事を見つめていた。

「おお。千絵殿も『本氣』を出されたか」
突然、レオポルドが楽しそうに言った。

「なんですって?」
千絵と正志は、意味が分からずに同時に訊き返した。

「余は昨日、無理を言ってコトリの機械馬に乗せてもらったのだが、彼女が『本氣だしますよ』と加速した時にな、兜が浮いたような感じになったのだ。今は、全身がわずかに……」

「冗談はやめてください。私は法定速度を遵守しています」
千絵が困ったように言う。正志は、F1じゃないんだから、体が浮くほどスピードを日本国内で出せるかと頭を振った。

「ナギ!」
ミツルが咎めるような声を出したので、運転している千絵以外はナギを見た。彼は、はっとして、それから窓の外を眺めた。大人たちは、それからミツルの方を見たが、こちらは曖昧に笑って誤摩化した。わけがわからなかったが、正志は宣言した。
「とにかく、少なくともみんなちゃんとシートベルトを締めてくれ」

 そういっている間に、車は層雲峡を過ぎ、大雪高原へと入っていった。今朝ダメもとで電話してみたら運良く予約が取れたガーデンレストラン「フラテッロ・ディ・ミクニ」に到着したのだ。「大雪高原旭が丘」の施設の一つで、隣には大きなガーデンがいくつもあるが、今日は食事だけなので入園はしない。

 といっても、目の前に雄大な大雪山を眺める広く開放的なレストランでのランチコース。三方向に大きな窓があり、オープンキッチンで料理される宝石のように美しい料理の数々が運ばれてくる。北海道出身のオーナーシェフ三國氏が監修した、産地最高の食材を使った本格イタリアンだ。

 甘エビのカルパッチョにはグレープフルーツのピュレと、食べられる色鮮やかな花が踊るように添えられている。パスタは、黄色トマト、モツァレラチーズ、そして薫り高いバジル使ったオレキエッテ。メインの肉料理は道産牛のフィレンツェ風ステーキ。そしてドルチェがマンゴーソルベとアマレット酒のパンナコッタで甘いザバイオーネソースがかかっている黄金のような一品。

「どの料理も本当に美味しいですね。しかも色鮮やかで美しいときている」
マックスが幸せな笑顔を見せる。

「そなたたちは、毎日このように美味い物を食べているのか。不公平だ」
レオポルドがブツブツ言っているので、千絵と少年たちはくすくすと笑った。

「いや、毎日ここまで美味い物を食べているわけじゃありませんよ。東京じゃこうは行きません。北海道は海の幸も山の幸も新鮮で美味しい場所として有名なんです。ま、北海道以外にもそういうところはありますけれど」
正志がそういうと、マックスはため息をもらした。
「私たちのいるところは、どこへ行っても、それに最高の食材を集めても、ここまで美味しいものは食べられません。皆さんが羨ましい」

 食事が終わり、エスプレッソを飲んだ後、先を急ぐためにレストランを出る事になった。会計の時に、マックスが全て払おうとしたので千絵が抗議した。
「そんなに何もかも払っていただくわけにはいきません」

「いいではないか。この金は、我々の世界にはもって帰れないのだから、運転してくれているそなたたちのために遣って何が悪い」
レオポルドが言った。

 千絵は、少し躊躇したが、また口を開いた。
「正志君に、ここ北海道で食事をごちそうする一年前からの約束があるんです。一年前に、私の無理をきいて助けてくれたお礼なんです。ここで払わなかったら、また約束が果たせないわ」

 正志は、一年前の約束をすっかり忘れていたので驚いた。彼らが札幌の空港で出会い、なりゆきで富良野まで一緒にレンタカーで行くことになったあの二日間のあと、「北海道に再び行って海鮮丼をおごる事」を約束させたのだ。また逢ってもらう口実のつもりだった。

「あの約束は……」
千絵に言おうとした時に、レオポルドがそれを制した。

「では、なおさら、ここは余が払おう。二人でもう一度ここへ来る約束をするがいい。いや、何度でもここに来て、正志殿が助けてくれた事を想うがいい。正志殿も、その方が金を払ってもらうよりずっと嬉しいだろう」

 千絵は目を見開いた。その彼女に、ニコニコ笑ってマックスは、伝票を係員に渡した。彼女は、それから、ゆっくりと正志の方を振り返った。正志は、何も言わずに大きく頷いた。千絵も無言で微笑んだ。

「想い合うというのは、いいものだな、マックス」
レオポルドが話しかけると、マックスは「本当に」と答えた。

「なぜ余だけいつもチャンスがないのだ。昨日、コトリにほのめかした時にも、結婚したばかりだとあっさり袖にされた」
レオポルドが呟くと、マックスが大袈裟に振り向いた。
「陛下! ご結婚相手はきちんと選んでくださらないと困ります。貴賤結婚だけはやめてください」

「マックスさん、それは時代遅れだわ。コトリさんがとても素敵な方だってあなたも知っているじゃない。貴賤結婚だなんて」
千絵が憤慨した。正志は、憤慨まではしないが、マックスがそういう事を言うタイプだとは思わなかったので、少し驚いた。

 マックスは、少し慌てて弁明するように言った。
「千絵さん、違うのです。私は、世界のあらゆる人たちが、身分の差のある人と愛し合っても構わないし、心から応援するのです。ただお一人、この方を除いて。この方にそれをやられると、私に実害が及ぶんです」

「どういうことですか?」
千絵が少し表情を緩めて訊くと、レオポルドが笑いながら代わりに答えた。
「我々の慣例では、貴賤結婚をすると位の高いものはその地位を失うのだ。そして、余が国王でいられなくなると、現在のところ次期国王にされるのは、わが従弟であるこのフルーヴルーウー伯なのだ」

「伯爵になるのだって、不自由で嫌だったのに、国王なんてまっぴらですよ。絶対にやめてください」
マックスが真剣に抗議しているのがおかしくて、正志たちも双子の少年たちもくすくす笑った。

* * *


 コバルトブルーの水が、鏡のように静まり返っていた。美瑛の青い池。去年、富良野に行った時には存在を知らなかった。千絵がiPhoneの待ち受け画面として使っている画像が、この池の写真だと教えてくれたのは正志だった。

「じゃあ、次に北海道に行く時にはここに行ってみたいわ」
そんな風に話したのは、去年のクリスマスの少し前の事だっただろうか。

 今回の旅行を計画した時、正志に富良野の上田久美子に何かプレゼントを持っていきたいと提案したのは千絵だった。二人がつき合うきっかけになったのは、千絵が亡くなった患者から受け取った指輪のプレゼントを久美子に届けることがきっかけだった。けれど、そのついでに美瑛の青い池にも行きたいとは、千絵には言えなかった。

 札幌から、屈斜路湖へ行く。そして、ずっと南の浦河へも行く。楽しそうに計画を進めている正志に、寄り道をして富良野へ行ってもらう事だけでも、大きすぎる頼み事のように感じていた。

 ましてや、自分の遅刻が原因で、屈斜路湖から富良野経由で浦河へ行くなどという殺人的スケジュールになってしまった後は、「青い池」なんて口にするのも憚られた。けれども正志は、何も言わずに車を白金温泉の方へと向け、青い池の駐車場で停まった。

「わざわざ、ここに来てくれたのね」
「そりゃそうだよ。ほとんど通り道じゃないか。行きたいって言っていただろう?」
「ありがとう、正志君。なんてきれいな色なのかしら。信じられないわ」

 しばらく雨も降っていない晴天の夏の日。青い池を訪れるには最高のコンディションだった。次回また北海道に来るとしても、この素晴らしいブルーが見られるとは限らない。どれほど疲れていても、まるで何でもないかのように笑顔で、この瞬間をプレゼントしてくれた正志の優しさを、千絵は瞳に焼き付けようと思った。

「そなたは何をしているのだ」
正志と千絵は、レオポルドの声のする方を見た。そこには黒い服を着た若い女性がいて、かなり本格的な一眼レフカメラを構えて池を撮っていた。邪魔をされて振り向いた女性の顔に一瞬驚きが表れた。それはそうだろう。アイヌの民族衣装を身に着けた外国人が二人立っていたのだから。

「あらら。ちょっと助けにいってくるか……」
正志は苦笑いして、そちらへと向かった。千絵は、双子はどこにいるのかと周りを見回した。少し離れたところでやはり写真を撮っていたので、安心して正志の後を追った。

 女性は、想像した年齢よりもずっと若そうだった。遠目では、黒いスキニージーンズに、黒いカーディガン、そしてショートカットがボーイッシュなイメージを作っているのだが、大きな瞳とふっくらとした柔らかそうな頬はずっと少女のような可愛らしい印象を作る。大人の女性というよりは、滅多にいない美少女という感じが強い。だが、その唇から出た言葉は、正志たちをさらに驚かせた。
「May I help you?」

 かなりネイティヴに近いアメリカ英語の発音だった。外国人相手だと思ったので、わざわざ英語にしたのだろう。だが、レオポルドたちはお互いの顔を見た。

「どこの言葉だ?」
「アルビオン(ブリテン島の古名)から来た遍歴職人たちの言葉に似ていますね。若干、訛っているようですが」

 以前は、二人で話す時には彼らの言葉だったのに、日本語に慣れすぎたのか、いまでは二人の間の雑談まで日本語だ。
「我々に話しかけるのに、そんな辺境の言葉を遣うのか? ラテン語かギリシア語で返してみるか」
「どうでしょうか。遍歴職人たちはそのような言語は話せませんでしたが……」
「では、面倒を省くには、この酒を飲ませるのが一番早いかもしれんな」

 それを訊いて、正志は吹き出した。
「いや、たぶんその方は、お酒を飲まなくても日本語が話せると思いますよ、ちがいますか?」

 女性は、頷くと改めて言った。
「ええ。日本人ですから。でも、あの……日本語がわかるのに、英語、ご存じないんですか?」

 千絵は、にっこりと笑って言った。
「ちょっと特殊なところからいらしたお二人なんです。それで、現代文明のことなどはあまりご存じないみたいで。カメラも初めて見たんだと思います」

 思えば、いつの間にかこの妙な二人の事をいて当然みたいに受け入れてしまったけれど、よく考えたらありえないよなあ。正志は、考えた。でも、間違いなく昨日からずっと一緒にいるし、酒飲んで騒いだし、それにいっぱいおごってもらったもんな。こうやって、二人にはじめて出会う人が驚く度に、正志は自分がいかにこの二人に馴染んでしまっているかを思い知らされるのだった。おそらく千絵もそうなんだろう。

「これは、カメラと言って、いま観ている景色を記録する機械です。絵を描くのと違って、一瞬でできるんです。見てみますか?」
女性は、レオポルドとマックスの写真を一枚撮ると、ディスプレイを切り替えていま撮った画像を二人に見せた。

「なんと! これはすごい。今の一瞬で、この絵を?」
「なるほど、あちらこちらに置かれている絵が妙に写実的だと思っていたのですが、この機械で作成したのですね」

「あたし、春日綾乃って言います。アメリカのニューヨークに住んでいて、いま一時帰国中なんです。あなた方はどちらからいらしたのですか?」

「俺は、山口正志、こちらは白石千絵。東京から来ました。この二人とは屈斜路湖で知り合ったんですが……」
「我々はグランドロン王国から来たのだ。余は国王のレオポルド、こちらは従弟のフルーヴルーウー伯マクシミリアンだ」

 綾乃は、それはどこと言いたげに正志たちを見たが、カップルの肩のすくめ方と曖昧な笑顔を見て何かを理解したのか「そうですか」とだけ言った。

「綾乃さんはもしかして写真家? なんだかすごい機材を持っているわね」
千絵が訊く。綾乃はニッコリと笑った。
「カメラは趣味です。いずれ職業にする可能性もありますけれど。あたし、学生なんです。専攻は天体物理学で、ジャーナリズム・スクールにも通っています」

「て、天体物理学? アメリカで? す、すげっ」
正志が狼狽える。少女みたいだなんてとんでもない……。

「天体物理学とはなんだ」
レオポルドが正志の方を見て訊いた。

「あ~、星を見て研究する学問で……」
「ああ、占星術の事か。なかなか優秀なようだな」
絶対に占星術じゃない! 正志はそう思ったが、自分で説明するのは難しそうだったので、本人が訂正するのを待つ事にした。

「写真撮影が趣味なら、今日ここに来たのはラッキーだったわね」
千絵が言った。綾乃は、大きく頷いた。
「そうなんです。本当は、できるだけ早く札幌へ行って、夜行バスに乗らなくちゃいけないんですけれど、ここ数日のこの池の状態が最高のコンディションだって聴いたら、浦河に行くのが一日遅れてもしかたないって思えてしまって」

「浦河?!」
正志と千絵は同時に叫んだ。
「ええ、浦河です。ある牧場で働く事になっているんです。どうして?」

 千絵は、バックから例のチラシを取り出した。
「これのことじゃない? 私たち、実は、これから浦河へ行くの。あそこにいる二人の中学生も、今朝、やっぱり牧場に行くってわかって、一緒に連れて行くところなのよ」

 綾乃は、千絵の指す方向を見た。二人の少年が、こちらへと歩いてきていた。
「それは……すごい偶然ですね。みなさんは、どうやっていらっしゃるんですか?」
「俺たちは、レンタカーだ。でも、ミニバンだから、もう一人ならまだ乗れるよ。富良野で、一か所だけ寄るところはあるけれど、その後は浦河に直行する。札幌から夜行バスに乗るよりずっと楽だと思うけれど、よかったら、一緒に行くかい?」

 綾乃は、すぐに決断したようだった。
「ええ、ぜひお願いします!」

 正志は、レオポルドとマックスが嬉しそうな顔をするのを、目の端でとらえた。一方、千絵は、正志とミツル少年も嬉しそうな顔をしたのを見逃さなかった。おかしくてクスクス笑った。

 綾乃がレンタルスクーターを美瑛で返却するのを待ってから、満席になった七人乗りのミニバンは、目的地へ向かって出発した。

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出てきた場所の情報です。

フラテッロ・ディ・ミクニ
大雪高原旭が丘
白金青い池

次は浦河到着後から書こうと思っています。ちなみにマックスにラウラという妻がいる事は、二人とも決して言いません。ナンパの旅ですからね(笑)話の最後に、ヘルマン大尉とヴェロニカも浦河へやってきますが、この二人の登場はおまけなので、どうぞお氣になさらずに。それより正志と千絵の話のオチはどうしよう。このままではヤマなしオチなしだ……。
.05 2015 小説・あの湖の青さのように trackback0

【小説】君との約束 — あの湖の青さのように(1)

Posted by 八少女 夕

大海彩洋さん(のところの猫マコト)主催の「オリキャラのオフ会 in 北海道」第一弾です。
オリキャラのオフ会

今回のオフ会では、基本的に正志視点で事が進みます。というわけで、正志が目撃していないサキさんの書いてくださったお話の続き部分は、後日に(どんな形かはまだ考え中)発表する事になります。

前回のオフ会(in 松江)での、素晴らしい設定に敬意を表して、例の日本酒が再登場します。cambrouseさん、勝手に設定を増やしました。お許しください。


オリキャラのオフ会 in 北海道の募集要項記事(大海彩洋さんのブログ)
私のところのチームの詳細設定など



君との約束 — あの湖の青さのように(1)
- Featuring「森の詩 Cantum Silvae」


「あれ。間違えたかな。こんな簡単な道なのに」
正志は首を傾げた。もう屈斜路湖が見えてきていいはずなのに、その氣配がない。ナビゲーターが引き返すように騒ぎだした。

「曲がり角、見落としちゃったのかしら。そろそろ暗くなってきたから。本当にごめんね。正志くん」
「だから、謝らなくていいってば。もともとの到着時間と大して変わっていないって」

 昼前には札幌千歳空港に着く便を予約していたので、ゆっくりと観光をしながら六時間以上かけて屈斜路湖までドライブするつもりだった。千絵が夜勤明けとは聞いていた。そんな疲れることをして大丈夫かと言ったら「飛行機で少し眠れば大丈夫」というので、そのスケジュールにしたのだ。ところが、急患でバタバタして、羽田発札幌行の搭乗時間に間に合わなくなってしまった。それで搭乗便を変更してもらい、夕方の釧路行になんとか乗り込むことが出来た。

 釧路からのドライブ時間はたったの一時間半ほど、途中で曲がるところはたったの二カ所。ナビケーターもついているのに道を間違うなんてみっともないな。正志は思ったが、千絵は飛行機に乗り遅れたせいだと謝ってばかりだ。
「でも……千歳空港に行けていたら慣れているセダンだったのに、釧路には七人乗りのミニバンしか残っていなかったし……もし、午前の飛行機に間に合っていれば……」

「だから、もう氣にするなよ。そもそも、後輩のパニックを放っておけなかったなんて、本当にお前らしい理由での遅刻じゃないか。疲れているはずなのに、ドライブ中も全然寝ないで、ずっと謝っているしさ」
「羽田の待合室で少し寝させてもらったたじゃない。せっかくの旅行のスタートがこんななのに、運転してくれる正志君の横で私がぐうぐう寝るなんて悪いわ」

「だからさ。そうやっていつも人のことばかり……うわぁっっ!」
正志は、ブレーキを強く踏み、車は急停車した。目の前を黄色っぽい塊が横切ったのだ。それは、慌てて道際の木立へと消えていった。

「い、今の……き、キツネだったよな?」
「……尻尾、ふわふわだったわね」
「う、ビビった~。轢かなくてよかったよ」
「本当にいるのね、キタキツネ。初日に見られるなんて思わなかったわ」
「おう。こういうラッキーもあるってことさ」

 二人は笑って、それから五月蝿いナビゲーターの言う事をきいて、もと来た道を戻りだした。それから、今度は間違えずに52号線に入り、屈斜路湖を目指した。

 二人が出会った北海道へもう一度一緒に行こう、その約束を果たしに来た。一年ぶりの北海道。二人がつき合って一年が経ったということになる。看護師である千絵の休みは不規則だから、週末ごとに逢えるわけではない。都内で清涼飲料水の営業をしている正志は残業や接待が多くて平日の夜に逢えることもあまりない。それでも、二人とも可能な限り機会を作り、逢える時間を大切にしてきた。

 人のことを氣遣うあまり、いつも自分のことを二の次にしている千絵のことを、正志は時々じれったく思い、もっと自分を優先しろと言うけれど、実のところ彼が千絵のことで一番氣にいっているのは、そういう多少過ぎたお人好しな部分だ。それと同時に、時おり心配になる部分でもある。看護師は彼女の天職であると同時に、患者も同僚もそのつもりはなくてもそんな彼女を消耗させてしまうだろうから。

 だから、「長い休みを取ると周りに迷惑をかける」という彼女を説得して、北海道旅行を企画したのだ。「約束だから」と強引に。ついでに、たまたま見つけた数日間牧場に滞在して働き、その仲間たちと帯広の花火大会を観に行くという企画にも申し込んだ。単純に観光して飲み食いしているだけより、二人で同じところで寝食を共にして働いたら、もっとお互いのことがわかるいいチャンスだと思ったから。千絵もそのアイデアを面白がってくれた。

 札幌から牧場のある浦河まで直行してもよかったのだが、せっかく休みを取ったので、一度行ってみたかった屈斜路湖で屈斜路コタンの文化に触れることにした。本当は、札幌からのドライブの途中に去年の旅の目的だった、富良野在住の女性を訪ねてお土産を渡すつもりだったのだが、ルートを変更したので、明日、一日で北海道を半周する500km近いドライブになるが、美瑛、富良野を通って浦河まで行くことにしている。

 半日遅れの北海道到着だったが、正志は半日無駄にしたとは思っていなかった。千絵が羽田に着いたらすぐに飛び立てるような都合のいい便には空きはなかったけれど、夕方のフライトを待つまでの間、二人でゆっくり食事をして、たくさん話もできた。待合室で椅子にもたれていたのが、いつの間にか彼の腕に額をもたれかけさせてきた千絵の寝顔を眺めたりしたのも、くすぐったいような嬉しい時間だった。そして、釧路からの一時間半のドライブも、青い空と目に鮮やかな沿道の緑、そして、どこまでも続く道を行くワクワクした心地が久しぶりでとても楽しかったのだ。

「お。あったぞ。あれが今晩の宿だ」
屈斜路湖畔に建てられた本物のアイヌ文化を楽しめるとうたっているプチホテルだ。アイヌ文様をインテリアに多用した客室や、アイヌの伝統に根ざす創作料理を出してくれたるだけでなく、ホテルのスタッフがアイヌ詞曲舞踊団に早変わりしてライブをしてくれることもあるらしい。

 車を停めた時に、正志は、横に停めてあった赤いDUCATI696をちらりと見た。イタリア車か。へえ。綺麗に乗っているな。持ち主はどんな人だろう。そんな事を考えつつ、荷物を持ってホテルへと入っていった。

 アイヌの民族衣装を身に着けた、笑顔の女性が迎え入れてくれた。チェックインがすむとやはりホッとする。なんだかんだいって長い一日だったからな。食事の前に風呂に入って、ゆっくりするか。

「屈斜路湖に面した混浴の露天風呂があるって聞いたんですけれど」
「コタンの湯ですね。ここからすぐのところです。もっとも今、やはりここにお泊りの外国の男性お二人が入っていますよ」
「あ~、俺たちは一緒に入ろうと思って水着を用意してきましたが、その二人は?」
「褌してますよ。外国の方は大抵そうなんですけれど、全裸は抵抗があるとおっしゃったので。さっき宿主が締めてあげました」
「そうですか」

 正志は千絵の方をちらっと見たが、クスッと笑っていたので大丈夫だろうと思った。よく考えたら、若い女性であっても、千絵は看護師で男性患者の世話などもするのだから、褌を締めた男を見るのくらいどうということはないのであろう。それよりも、外国人か。言葉は通じるのかな。正志は戸惑った。

「ところでどこの国の方なんでしょうか。英語ですか?」
「さあ。それが、妙に流暢に日本語を話されるんですよ。ですから、会話には困らないと思います。もっとも、少し変わったところのあるお二人ですけれどね」

「そうなんですか?」
「ええ。どうも、大変コンサバティヴな伝統のある国からいらしたみたいで、テレビやエアコンのことなどをご存じないようなんです。でも、いい方々だと思いますよ。それと、アイヌのモシリライブをどうしても観たいとおっしゃるので、八時半から開催するんですよ。追加料金はお二人が払ってくださいましたので、必要ございません。よかったらそのお時間にシアターにお越し下さいね」

 正志たちは部屋に荷物を置くと、宿の裏手の露天温泉風呂に向かった。

 脱衣室は男女に分かれている。風呂の半分までは大きな岩で区切られているが、その先は混浴だ。
 
 正志が入っていくと、確かに二人の先客がいた。一人は黒い長い髪をオールバックにしたがっちりとした男で、もう一人はもう少し背が低くて茶色くウェーブした肩までの髪の男だった。屈斜路湖の先に夕陽は沈んでしまったばかりのようで、わずかに残った薄紫の光が遠く対岸の稜線を浮かび上がらせていた。二人は、そちらを見ながら静かに外国語で話していた。

「おじゃまします」
正志が声を掛けると、二人は振り向いた。
「おお。遠慮はいらぬぞ。素晴らしい眺めが堪能できるいい湯だ」
髪の長い男が言った。妙に流暢だが、確かに変わった言葉遣いだ。正志は思った。

 茶色い髪の男の目が、岩の向こうから表れた千絵に釘付けになった。彼女の水着は水色花柄のホルターネックタイプで、ブラの部分の下に大きいフリルがあるし、ボトムスも花柄のフリルがミニスカートのように覆っているので、ごく普通のビキニと比較すると大した露出ではないのだが、二人が顔を見合わせてやたらと嬉しそうな顔をしたので、正志はムッとする以前に先ほどの宿の女性の言っていた「コンサバティヴな伝統の国から来た」という言葉を思い出しておかしくなった。当の千絵の方は、そんな風に見られて居心地が悪かったのか、すぐに湯の中に入ってしまった。

「同じ宿に泊まっていると聞きました。俺は山口正志。彼女は白石千絵といいます。東京から来ました。日本語がとてもお上手ですが、日本にお住まいなんですか」
正志が言うと、二人とも首を振った。

「我々はグランドロン王国から来たのだ。余は国王のレオポルド、こちらはフルーヴルーウー伯爵マクシミリアンだ」
「こ、国王と伯爵?」
そんな国あったっけ、そう思いながら正志は二人の顔を見たが冗談を言っているようにも見えなかった。

「そ、そうなんですか。日本語はどちらで習われたんですか」
「習ったわけじゃないんです。これのおかげで聴き取ったり話したりが出来るというだけで」
マックスが手元の瓢箪を持ち上げてみせた。

「なんですか、それは」
「日本酒だ。知らないのか。出入り口で売っているが」
レオポルドが上機嫌で言った。

「出入り口って?」
「時代や空間を超えて旅をする時に通る道の出入り口だ。《シルヴァ》という大きい森と繋がっているのだ。この世界の入り口ではこの酒を買うように奨められているぞ」

「なんて銘柄の日本酒ですか?」
正志の勤める会社は酒類も扱っているが、そんな日本酒があることは知らなかった。聞き捨てならない。

「cambrouse酒造の『年代記』だ。『るじつきー』『ぴるに』『じーくふりーと』と三種類あって、我々は一番値の張る『るじつきー』を買って飲んでいるので、このように話が出来るのだ」

「他の二つだと、どうなるんですか?」
千絵も興味を持ったようで訊いてきた。

 マックスがにこやかに答えた。
「相手の言っていることは、三つとも同じようにわかるのです。ただ、こちらの話す能力に差が出るらしいのです。『ぴるに』だと、どのようなことを話そうとしても、相手にはイーとしか聴こえないそうです」
なんだそりゃ。ショッカー仕様なのか? 正志は首を傾げた。

「もうひとつの『じーくふりーと』だと?」
「相手が返答に困るような爆弾発言を繰り返すそうだ」
レオポルドが答えた。正志と千絵は、顔を見合わせた。それは、まずい。

「それで、お二人は一番高いのを、お買いになったわけですね」
「そうだ。だが、『るじつきー』には現地の滞在費を十分まかなえる金額の小切手が一枚ついて来るのだ。だから結局はさほど高くないのさ」
「お国の通貨でお支払いになったんで?」

「通貨ではなくて、これで払いました」
マックスが、風呂の脇の岩の上に置いてある袋を開けてみせた。中には、大小様々の金塊が入っていた。

「! こ、これ、本物の金ですか?」
「ええ。かなり重いんですよ。あの小切手でもらえる紙幣が、あれほど軽くて価値があると知っていたら、こんなに持ってこなかったんですが」

「一体いくらの小切手だったんですか?」
「五百万円。適当な大きさの金塊がなかったので大きめので払ったら、おつり分も小切手に入れてくれたらしい。札幌に行った連れたちは歓楽街へ行くというので、三百万ほど渡して、残りを我々が持っているのだが、想定したよりも物価がずっと安くて、まだ全然使えていないのだ」

 風呂から出て、食事の時に二人と再会することを約束して部屋に向かう途中、正志たちは二人連れの女性とすれ違った。一人は、黒い髪をきれいにボブカットに切り揃えているボーイッシュなイメージでおそらく千絵と同年代、もう一人はもう少し若そうで、艶やかな長い髪をポニーテールにして赤いリボンをつけているミニスカートの可愛い女性だった。

 二人とも感じよく会釈をして、通り過ぎた。そして、向こうから歩いてくるレオポルドたちのことを見つけると、ポニーテールの女性が大きく手を振ってにこやかに訊いた。
「あ、デュランにマックス! お風呂はどうでしたか?」

 マックスは妙に嬉しそうに答えた。
「ええ。とてもいいお湯でしたよ。こちらの奥方も一緒に入ったのですよ。お二人もお入りになればよかったのに」

 ボブカットの女性は、素っけなく答えた。
「わたしたちは、宿の風呂に入りました。水着も持ってきていないし」

「そなたたちもフンドシを締めてもらえばいいではないか」
レオポルドが言うと、ポニーテールの女性だけでなく、会話を耳にしてしまった正志たちも吹き出した。

「そういうわけにはいきません。それにもうすぐに食事でしょう。ところで、その服、いつも着ているんですか?」
ボブカットの女性が指摘しているのは、レオポルドとマックスの着ている白い服のことだ。木綿でできたアイヌの民族衣装でカパラミプというのだと、当の二人に露天風呂を上がった後に更衣室で教えてもらった。切伏文様を施し刺繍もされている手のかかった服で、かなり高価だと思うが、なぜこの外国人二人が常に着ているのかわからない。

「我々の服装は目立つのでな。滞在国の民族衣装を着ていた方が少しは目立たぬであろう」
「いや、反対に、ものすごく目立ちますけれど」
正志が指摘したが、どうもこの二人は「目立つ」と言われると少し嬉しそうだった。結局、目立ちたいのか。

 こうやって、正志たちも二人の女性と和やかに話をすることができたので、食事は宿のスタッフに頼んで六人一つのテーブルにしてもらった。

「自己紹介がまだでしたね。俺は、山口正志、東京で営業職に就いています。こちらは白石千絵、看護師です」
正志が改めて挨拶をすると、女性二人も笑顔で握手をした。

「はじめまして。私は三厩彩香みんやま さやか です。でも、普段はコトリで通っています。神戸の『コンステレーション』というショップで店長をしています。こちらは友人で運送会社に勤めている佐々葉月さっさ はづき 、通称ダンゴです」

「ダンゴ? こんなにかわいいのに?」
千絵が驚くと、ダンゴはほんの少し顔を赤らめた。
「笹団子からの連想ですって。友達がつけてくれたんです」

 そのいい方とはにかみ方がとても可愛らしかったので、正志と千絵は「なるほど」と、思った。ただの「友達」ではないらしい。

「ダンゴってなんですか?」
マックスが、ニコニコと訊いた。コトリは、わずかに微笑んで、目の前のきびで作られた「シト」という団子を指差した。
「これよ。こういう丸くて素朴なお菓子のこと」

「ほう。ということは、これもダンゴみたいなものだな。見かけは素朴だが、なかなか美味いもので、病みつきになってしまったのだ」
その言葉に横を見ると、レオポルドが部屋にあったジャガイモを発酵させたポッチェを持ち込んで食べていた。これから食事なのに、なぜそれをいま食べる……。正志は苦笑した。

「ところで、ダンゴさんたちは、なぜこの人の事をデュランって呼ぶんですか?」
正志はレオポルドを指差した。
「え? だって、そう自己紹介されましたよ。違うんですか?」

「違わないぞ。どちらも余の本当の名前だ。正式に全部名乗ると長いが、聴きたいか?」
「陛下、やめてください。聞き終わるまでに夜が明けます」
マックスがやんわりと制し、それからにこやかに続けた。

「城下に忍びで出かける時に、レオポルドと名乗られるとすぐに陛下だとわかっちゃうんですよ。それで、子供の頃から忍びのときはデュランと名乗られるのを常にしておられるのです。ちなみに、私はマックスという名前だと思って育ちましたので、親しい者の間では普段からマックスです」
「じゃあ、何故、我々には忍びのお名前をつかわなかったんですか?」

「先ほどまでデュランとマックスで通していたんだが、だんだんと民のフリをするのも面倒になってきてな。どっちにしても我々の事を知っている人間はここには居ない事がわかったしな」
「私も、陛下に対して敬語を使わず話すのに疲れてしまったんで、もう忍びはやめようかと、さっきお風呂の中で二人で話し合ったのですよ」

「ええ~。じゃ、私たちも陛下と伯爵って呼ばなくちゃダメ?」
ダンゴが可愛らしく口を尖らせる。
「そんな必要はありません。さっきまでと同じようにマックスと呼んでください」
「余の事もデュランでいいぞ」

「じゃ、そう呼びますね。コトリもそうするでしょ?」
「今さら変えるのも変だしね」
そのコトリの言葉を聞くと、レオポルドは若干嬉しそうだった。

 料理が次々と運ばれてきた。エゾウグイ、アイヌ語名「パリモモ(口笛を吹く魚)」の活造りは、淡白だが甘味があり口の中でとろけるよう。それに凍らせた刺身「ルイペ(溶けた食べ物)」、ヒメマスの塩焼きなど屈斜路湖の幸が続く。行者ニンニクと豚を濃い味のたれでからめて作った「コタン丼」、おそらく肉と野菜のたっぷり入った味噌汁「カムオハウ」も美味しかった。菱の実「ペカンペ」を利用した和え物、味が濃くて美味しい舞茸、オオウバユリ「トゥレプ」を用いた粥「サヨ」など、日本人である正志たちもはじめてのアイヌ料理の美味さに六人ともしばし無言となった。

「ところで、お忍び旅の目的は?」
千絵が、酒をつぎながらマックスに訊いた。

「休暇です。しばらくきつい仕事をしていまして、それが無事に完了したので、打ち上げみたいなものでしょうか。みなさんは?」
マックスが訊き返すと、千絵はバックから一枚のチラシを取り出した。

「私たちはね、明日からここで働くのよ。たった数日間だけれど、自然と触れあいつつ、美味しいものを食べて、最後に花火を見せてくれるっていう、面白いツアーを見つけたの」

「オリキャラのオフ会 in 北海道」ちらし by 彩洋さん

 すると、コトリとダンゴがびっくりして立ち上がった。
「ええっ。千絵さんたちも? 私たちも、その牧場に行く予定になっているの」

「なんだって。そりゃ、面白い偶然だな。じゃあ、明日からもしばらく一緒だな」
正志が言い、四人はしばらく盛り上がった。

 レオポルドはマックスと、しばらく何か異国の言葉で話していたが、やがて言った。
「面白そうなので、我々も同行してもいいだろうか」

「え? いらっしゃいます? だったら、申し込まないと。今、電話して訊いてみますね」
千絵が、電話するその横で、正志はコトリたちと明日のルートについて話していた。

「うん、わかっている。無謀なんだけれど、今日寄れなかった富良野に行かなくちゃいけないんで、朝一で国道39号線を通って一日ドライブすることになっているんだ」
「それは、ちょっと大変ですね。私たちは、バイクですし、そんな無理は利かないので、直行します。向こうでお逢いしましょう」

「あ。表のDUCATI、君のなんだ! すごいな。その華奢な体で、あれに乗っちゃうんだ」
「あ、でも車体は161キロで軽い方なんですよ。燃料やオイルを入れても200Kgいかないはずです。アルミフレームも使っていますしね。かなり扱いやすいです」
「へえ。たしか80馬力くらいあったよね」
「ええ。加速は胸がすくようですよ。正志さんもバイクに乗るんですか?」
「昔ね。最後のはKawasaki Ninja 650R。マンション買うときに手放した。でも、いずれまた乗るかもね」

 千絵は電話を切ると、にっこりと笑った。
「アイヌ文化に興味のある外国のゲストって言ったら、大歓迎ですって。明日、一緒に行きましょうね」

 六人は、明日以降も続く親交と共同作業を喜んで、再び乾杯をした。食事の後には、スタッフたちがエンターテーナーに早変わりして、モシリ・ライブを開催してくれた。心の触れあう、縄文の精神をテーマにしたアイヌの舞台は圧倒的だった。

 その興奮が醒めやらぬまま、六人はレオポルドたちの泊っている豪華な特別室「アイヌルーム」へ移動し、夜更けまで楽しく飲んで親交を深めた。

(続く)

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.29 2015 小説・あの湖の青さのように trackback0

オリキャラのオフ会 in 北海道の設定です

Posted by 八少女 夕

大海彩洋さんと、ちゃとら猫マコト幹事で8月中旬に開催される「オリキャラのオフ会 in 北海道」に参加することになりました。(くわしくはリンクへどうぞ)

オリキャラのオフ会


今回、うちから参加させていただくのは、

君との約束 — 北海道へ行こう」から山口正志と白石千絵

森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」からレオポルドとマックス

の四人です。

おそらく四人は一緒に行動しています。
8月9日 屈斜路湖(露天風呂・コタンの湯、丸木舟宿泊)→ 8月10日 美瑛(青い池)へ行き、その後、富良野で前作の登場人物久美子にお土産を渡します。青い池でたぶん撮影をしているTOM-Fさんのところの綾乃に絡ませていただこうと思います。
集合場所である牧場には8月10日の夜にレンタカーで行くと思います。

【随時更新 設定と予定の追加】
8月8日
(レオポルドとマックス)
数日ほど屈斜路湖のプチホテル「丸木舟」に滞在。ちなみに、途中まで一緒に来たヴェロニカ(高級娼館を経営するマダム・ベフロア)と国王護衛の責任者ヘルマン大尉は、体よく追っ払われて、札幌のススキノにヴェロニカ曰く「研修」に行っているらしい。

8月9日
(正志と千絵)
夕方に釧路空港からプチホテル「丸木舟」に直行する。事情により七人乗りのミニバンをレンタルしている。露天の「コタンの湯」でレオポルドたちと出会い、ホテルではサキさんのところのコトリとダンゴと出会う。夕食後一緒にアイヌライブを鑑賞。

(レオポルドとマックス)
美幌峠の展望台でサキさんのところのコトリたちと出会う。それぞれ、早速ちょっかいを出した模様。早い夕方にプチホテル「丸木舟」に帰って、「コタンの湯」入浴。夕食後、アイヌライブを鑑賞。

8月10日
(四人一緒)
正志のレンタカーで、朝一で出発。美幌町経由で、北見でlimeさんの所の双子を拾って美瑛の青い池に行き(ここまでが四時間半のドライブ)、TOM-Fさんのところの綾乃と出会う。彼女もレンタカーに同乗させて、一瞬だけ富良野の上田久美子宅(「君への約束 - 北海道へ行こう」のキャラ)に寄ってから浦河の牧場へ(占冠村と新冠町を経由し、国道237号線 と 浦河国道/国道235号線 を行くらしい。富良野から四時間ぐらいのドライブ)

牧場到着は、たぶん夕方の六時半か七時ぐらいが妥当かな。

お土産は正志「柳月 三方六セット」千絵「美瑛サイダー」レオポルド「マタンプシ(アイヌのハチマキ)」マックス「食われ熊」を予定しています。



8月の頭に集合場所に行く前の部分を発表し、8月12日頃に皆さんの様子を見て牧場で到着後のことを書こうかと思っています。

四人の設定です。

山口正志
29歳。身長170cm。黒い短めの髪。オリーブの綿シャツに黒いカーゴパンツ、黒いスニーカー。東京新宿区をメインに清涼飲料水の営業をやっている。三鷹のマンションに住む。普通に飲むがうわばみではない。好き嫌いはない。

【追記】牧場の労働(?)時は、ジーンズにポロシャツだと思います。

白石千絵
26歳。身長158cm。オーガニックコットンのピンクのキャミソールに白いコットン鍵編みボレロ、紺の膝下丈のフレアスカート。黒い小さな革のリュック。少し茶色がかった肩までの直毛を後ろで結んでいる。看護師。横浜在住。わりと控えめだが芯は強い。お酒はあまり強くない。ビールは嫌い。好き嫌いはないが、食は細い。

【追記】牧場の労働(?)時は、ジーンズにパステルカラーの半袖カットソーかな。

レオポルド II・フォン・グラウリンゲン(デュラン)
29歳。身長168cm。中世の架空の国、グランドロン国王。漆黒のストレートの長髪をオールバックにして後ろで一つにまとめている。太い眉に切れ長の黒い目。意志の強さを感じるがっちりとした体格。何でも食べる。お酒も大好き。
レオポルド by ユズキさん
このイラストはユズキさんに描いていただきました。著作権はユズキさんにあります。

マクシミリアンIII・フォン・フルーヴルーウー(マックス)
25歳。身長160cm。グランドロン王国に属するフルーヴルーウー伯爵だが、ちょっと前まで遍歴の教師だった。明るめの茶色い髪。首の辺りまでの長さで自然なウェーブがかかっている。瞳は茶色。人当たりのいい優しい顔。きりっとした眉。何でも食べる。お酒も大好き。
マックス by ユズキさん
このイラストはユズキさんに描いていただきました。著作権はユズキさんにあります。

なお、マックスとレオポルドは、アイヌの民族衣装で白布切抜文衣であるカパラミプ(木綿地を仕立て、切伏文様を施し刺繍した衣服)を着ています。「民族衣装ならば目立たないだろう」という理由で着たらしいですが、とある日本酒の効果で日本語ペラペラのガイジン二人が着ているので、悪目立ちしているはずです。

手元に瓢箪に入れた特殊な日本酒を持ち、醒める前に飲みます。これが日本語ペラペラの秘密です。

Sakhalin Ainu Man
A Sakhalin mixed-blood Ainu-Russian man, photographed by Bronisław Piłsudski ca. 1905
.29 2015 小説・あの湖の青さのように trackback0

オリキャラのオフ会、ご参加ありがとうございました!

Posted by 八少女 夕

第一回「オリキャラのオフ会」 in 松江 にご参加くださいました、たくさんのブロガーさんに感謝いたします。おかげさまで、びっくりするほど盛り上がって楽しいオフ会になりました。

オリキャラのオフ会


第一回に選んだのは、2015年4月8日、場所は島根県松江市でした。これは私が島根県松江市が大好きで、「島根県公認 島根応援サイト リメンバ〜 しまね」にも参加しているからです。

「オリキャラのオフ会」は、同じ日に特定の場所にオリキャラたちを集めて、それぞれの方が、小説・マンガ・イラスト・詩などを書くという企画です。

当日、そこにいるとわかっているキャラたちと勝手にすれ違ったり、交流したり、ドロドロのドラマを展開してもいいというコンセプトでした。

参加してくださったブロガーさんとキャラクター、その作品へのリンクをここに貼付けさせていただきます。それぞれが、とても上手に絡み合っています。よかったら全てを訪問して、楽しい雰囲氣を味わってみてくださいね。(参加表明の早かった順です)

TOM-Fさんのところからの参加者
セシル・ディ・エーデルワイスとアーサー・ウイリアム・ハノーヴァー
『出雲の祭日(Layer:3 Fairy Story)・前編
『出雲の祭日(Layer:3 Fairy Story)・後編』 

山西左紀さんのところからの参加者
敷香シスカ &沙絵 &敦子 &洋子
『ガントレットトラック』

ダメ子さんのところからの参加予定者
ダメ家三姉妹
『旅行(番外編)』

大海彩洋さんのところからの参加者
享志・杉下さん・真 のハリポタトリオ&マコト(タケルも?)
『【学院七不思議シリーズ】番外編・松江ループ(1)始まりは露天風呂 』
『【学院七不思議シリーズ】番外編・松江ループ(2)神の見えざる手 』
『【学院七不思議シリーズ】番外編・松江ループ(3)君を忘れない 』

けいさんのところからの参加者
満沢&ナオキ
『半にゃライダー3・番外 「オリキャラのオフ会・松江編」』

limeさんのところからの参加者(他の方の作品で目撃されちゃったキャラ)
リク&玉城&長谷川

cumbrousさんのところからの参加者(ただし4/9メイン)
カロル&ヘレナ・ルジツキー兄妹(松江城の夜桜見物)
『その日、歴史が動いた(嘘)~1919年?2015年?4月9日in松江~』

ポール・ブリッツさんのところからの参加者
ポール
『2015年4月8日夜、島根県松江市玉造温泉・長楽園、大露天風呂の奇妙な事件』

ふぉるてさんのところからの参加者
レイモンドとハゾルカドス(杖)
『らくがき:オリキャラオフ会in松江』
『オリキャラオフ会in松江・2』
『オリキャラオフ会in松江・3(完結)』
イラスト『おまけ(?)』



私のキャラと参加作品
ルドヴィコ&怜子、和菓子屋「石倉六角堂」のメンバー(松江市在住)
谷口美穂(雲南市吉田町出身)&キャシー&ジョルジア
Artistas callejeros(生まれていないけれど時空が曲がっているので参加)
ヤオトメ・ユウ&クリストフ・ヒルシュベルガー教授
俺様ネコ(ニコラ)
瑠水&真樹(TOM-Fさんの所で目撃していただきました)

大道芸人たち Artistas callejeros 番外編   ~ 松江旅情
(1)玉造温泉
(2)城のほとり
(3)堀川めぐり
(4)さくら咲く宵に
.09 2015 その他いろいろ trackback0

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(4)さくら咲く宵に

Posted by 八少女 夕

「オリキャラのオフ会 in 松江」第四弾です。これでおしまいです。長くても、無理矢理終わらせるために、一つにぶち込みました! (すみません)
オリキャラのオフ会
このアイコンはご自由にお使いください。

アメリカ組は八重垣神社に行き、Artistas callejerosは、昼から夕方まで宴会をしていました。そして、夕方。四人は宍道湖で夕陽を眺め、そして玉造温泉で打ち上げします。なお、私が書くのはここまでですので、話を上手く納める方、さらに混乱させたい方はどうぞご自由に!

【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ

「大道芸人たち Artistas callejeros」を読む このブログで読む
縦書きPDF置き場「scribo ergo sum anex」へ行く 縦書きPDFで読む(別館に置いてあります)
あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 ~ 松江旅情(4)さくら咲く宵に


「何やるの?」
キャシーは、八重垣神社の参詣がすんだ後に、奥の院にある「鏡の池」の前で、美穂に問いかけた。そこには、四人の女性がいて、池の水を覗き込んでいた。正確には、池に浮かべた紫色の紙のようなものとその上にのせられた硬貨を覗いていたのだった。

「で?」
「ほら、見て。さっき買ってきたこの占い用の和紙の上にね、ああやって硬貨を載せて浮かべるの。すぐ近くに沈んだ場合は身近な所に結婚に至るご縁があって、遠くに沈んだ時は遠方に、それにすぐに沈んだ場合は、すぐに……」
「でも、ご縁もヘったくれもあたしたち……」

「わかっているわよ。私たちは既婚だけれど」
美穂はそういってから、黙って写真を撮るのに夢中になっているジョルジアの方を見た。ああ、なるほど。キャシーはそういう顔をしたが、美穂がジョルジアを誘いにいったので、池を眺めている四人の女性の方を見た。

 一人の女性が格別目立つ。顔は見えていないが、ボブカットの髪の毛はまるで真珠のように白く輝いていた。その横に二人の女性がいて、あれこれ話していたが待つのに疲れたのか、あたりを散策に行ってしまった。屈んでコインを見ていた女性は、顔を上げて白く輝くボブカットの女性の方を見た。その女性は、何かを考えているかのように、奥の院の緑深い樹々の方を見つめていた。風が通って髪の毛がサラサラと泳いでいた。かがんでいる女性は、深いため息を一つつくと、決心したかのように人差し指を伸ばしてコインをつついた。

「あ」
キャシーが言うと、二人の女性は同時にこちらを見たかと思うと、キャシーの視線を追って沈んでいくコインと、まだ濡れている女性の人差し指に視線を合わせた。

「だからね、ジョルジア、この和紙にコインを載せてね……」
ジョルジアを連れて、美穂がやってくると同時に、他の二人も池の周りに戻ってきた。

「あ。ついに沈んだの?」
そういうと、屈んでいた女性は首を振った。
「もう待っていられないもの。神様の手伝いしちゃった」
そう言って指を見せた。「やだあ」二人の女性の笑い声が響いた。

「お待ちどうさま。さ、次に行こう。ほら、敷香も」
そう言って、屈んでいた女性は、先頭に立って歩き出した。そして、キャシーの横を通る時に、少し切ない微笑みを見せてから会釈して通り過ぎた。 

「キャシー、どうしたの?」
美穂が訊くと、キャシーはぽつりと答えた。
「あなたたちの神様って、容赦なく真実を語るんだ……」
「え?」

 キャシーは、ジョルジアの方に向き直った。
「やってみる?」
ジョルジアは、首を振った。
「そんなことをする必要はないわ。神様に訊かなくたって知っているもの」
そういって、カメラを持って去っていってしまった。

 美穂は、紫の紙を持ったまま、困って立っていたが「もったいないもの」と言って自分の財布から五円玉を取り出すとそっと紙の上に載せて水面に浮かせた。どういうわけだか、五円玉と紙は数秒も経たないうちに、手からほとんど離れない場所に沈んでしまった。

「わかりきったことをしなくてもいいのに」
キャシーが肩をすくめて、ジョルジアを追い、美穂も急いでそれに続いた。

* * *


 夕方、Artistas callejerosの四人と茶虎の感じの悪い仔猫は、宍道湖夕日スポット(とるぱ)にいた。
「夕陽を見るためだけに、こんななんにもない所に来たのか?」
ヴィルは、例によって身も蓋もないことをいうが、蝶子と稔は無視した。レネは、既にセンチな心持ちになっている。『スズランの君』に貰ったハンカチを取り出して、泣く準備も完了だ。

 直に、人びとが集まってきた。すぐ近くに、五十代くらいのとても品のいい金髪の女性が立って、その後ろからやってきたもっと年上の、しかし女性とよく似た風貌の男性が彼女のためにハンカチを広げて座るように促した。小声の静かな会話は東欧系の言葉のように聞こえた。それから女性がふざけてフランス語で「レマン湖に行ったときのことを思い出すわ」と言ったので。レネがびくっと振り向いた。

「あら、フランスの方?」
婦人は優しくレネに笑いかけた。
「はい。ご旅行ですか」
「ええ、そうね。そうと言えないこともないのだけれど……」
困ったように、連れの男性を見た。

「どうやら、紛れ込んでしまったようだが、あたふたしてもしかたないので、美しいと言われる城の桜を見学してから、もともと突然現れたこの湖畔に来てみたのだよ」

 豊かな人生経験があって、たいがいのことでは慌てたりしない人のようだと、レネは感じた。会話の内容を英語に訳して三人に話した。すると、次からは二人も英語で話しだした。見事な発音で、二人ともひとかどの人物に違いないと思わされた。

「夜桜でしたら、私たちこの後、タクシーで千手院という所へ行くつもりなんですよ。よかったらご一緒しませんか。その後、私たちは玉造温泉へ行く予定ですが、その前にまたここへお連れしますけれど」
蝶子が言うと、二人は顔を見合わせてから頷いた。

「私は蝶子、こちらはレネ、稔、そしてヴィルです。お近づきになれて嬉しいです」
蝶子が手を伸ばすと、紳士は古風にその手にそっと口づけをした。
「私はカロル・ルジツキー、これは妹のへレナです。どうぞよろしく」

「ルジツキー?」
ヴィルが少し驚いた顔をしたので、ルジツキー氏は少しだけ笑って「ご存知ですかな」と言った。
「父が取引をしていた有名な財閥の名前と一緒だったので」
「ほう、失礼だが、お名前は?」
「エッシェンドルフといいます」

「というと、ミュンヘンの?」
「はい。やはり、あのルジツキーさんなのですか?」
「どうだろうな。お父様の名前は、ルドルフ・フライヘル・フォン・エッシェンドルフではないだろう? おかしく響くかもしれないが、ルドルフとはただの知り合いではなく友人なのだよ。彼は典型的なバイエルン人でね、非常にドイツ的なものと徹底的に反ドイツ的なものを同時に持っている。その分、我々の間にも傍目には理解できないであろう強い愛憎がある」
「……。六代前はルドルフでした。彼は十九世紀の生まれです」
「そうか。我が家もエッシェンドルフ家も、長く安泰のようで何よりだ」

 他の三人は、ただ黙って何も聴かなかったことにした。

 宍道湖はオレンジに染まっていた。嫁ヶ島のむこうに夕陽が静かに沈んでいく。湖面は静かに波立ち、平和な一日が暮れていく。あたり前のようでいて、全くあたり前ではない一日。平和であることの美しさに、彼らはしばし言葉を失った。

 千手院で、多くの人びとと一緒にしだれ桜、枝華桜を見た時にも彼らは同じように無口になった。樹齢250余年の花は、オレンジ色のライトアップで妖しくも美しく咲いている。その間に起こってきた、人間たちの傲慢さや愚かさに満ちた行動も、それぞれの市井の人びとの歓びや哀しみにも、何も言わず、ただ黙々と毎年この美しい花を咲かせ続けてきたのだろう。

「ねえ、ルドヴィコ。あの人たち、今朝来たお客さんだよ」
その声に振り向くと、「石倉六角堂」で接客してくれた女性がそこにいた。レネがあまりに大量に買うので、稔と蝶子が大笑いしたので憶えていたのだろう。

「毎度ありがとうございます。お氣に召していただけましたか」
一緒に立っていた外国人が、あまりにもよどみない日本語で話したので、四人はびっくりした。

「ええ。とても綺麗な練りきりで、それに繊細な味付けでした。あなたもお店の方なんですか?」
蝶子が訊くと彼は頷いた。
「ええ。今朝の練りきりは僕が作りました。和菓子職人なんです」
「ええっ。こちらで生まれ育ったんですか?」
「いいえ、ミラノの近くです。こちらに来て、修行を始めて、そろそろ十年になります」

「げっ。なのに、俺よりも流暢な日本語」
稔がブツブツと言った。英訳を聴いて、レネ、ヴィル、ルジツキー兄妹も驚いて頷いている。

「十年勉強なさったのですか。では、ニホンシュとやらを飲んだわけではないんですね」
ヘレナがそっと訊いた。
「?」

 流暢な日本語と日本酒とのつながりのわからないArtistas callejerosの四人とルドヴィコに、ルジツキー氏が説明した。
「先ほど、ここに来たばかりの時は、日本語がまるでわからなかったんですよ。でも、あるお店でニホンシュなるものを飲まされたら、二人とも突然日本語がわかって、話せるようになりましてね。残念ながら、それが醒めてしまったら、また全くわからなくなってしまったんだが」
「え? それは普通の日本酒ではないです。僕たち散々飲んでいますけれど、一度も日本語がわかったことないですよ」
レネは哀しそうに答えた。ルドヴィコもおかしそうに笑って肯定した。

「ここ島根は日本の神々の集まる、特別な場所なんです。建国神話にも深い関わりがありましてね。不思議な話もたくさん伝わっているのですよ。だから、そういう不思議な力のある日本酒があっても驚きませんよ。そうですよね、怜子さん?」
ルドヴィコに突然振られても、英語がわかっていない怜子は首を傾げた。彼が素早く日本語に訳したので、笑って頷いた。

「さてと、この二人は時空を迷子になっているらしいんだけれど、どこに連れて行ったら一番簡単に帰れそうかな。怜子さん、そういう場所のことを聞いたことがありますか」
稔がルジツキー兄妹を示しながら訊くと、怜子は少しだけ首を傾げた。
「さあ、どこでそういうことが起こっても不思議はないと思いますけれど」
「いま、一番行きたい所に行くのが一番じゃないですか? たぶんお二人が心惹かれる所が、そのスポットなんじゃないかな」
ルドヴィコが言葉を継いだ。 

 皆の注目を浴びて、兄妹は顔を見合わせた。それから、ヘレナが静かに言った。
「実は、こちらの四人が温泉に行くとおっしゃるのを聞いて、私も行ってみたいと思っていたんです」
「君もか。私も、できることならその温泉に行って、月見酒とやらを嗜んでみたいと思っていたのだよ」

「じゃ、決まりですね。行きましょうか。ところで、怜子さん、あなたたちもご一緒にどうですか? 私たち今日たくさんの方と知り合ったんですが、みなさん、玉造温泉に行くみたいなの。こんな不思議なことって、滅多にないでしょう?」
蝶子が言うと、ルドヴィコと怜子は顔を見合わせた。怜子が少し赤くなって下を見たけれど、ほぼ二人同時に頷いた。

「そうと決まったら、早速、移動しよう」
稔が言って、全員は笑いながら大型のタクシーに乗り込んだ。

* * *


 桜の散りかけている花びらが吹雪のように湯面を覆っている。月が煌煌と明るい。奥出雲の方では、突然の嵐になって、樋水川は急に水量を増したと聞く。だが、玉造温泉は絶好の好天のままだった。

「さっきの宴会飯、上手かったよな」
ぴちゃんと湯を跳ねさせながら、稔は腹をさすった。昨夜入ったときは、蝶子しかいなかった大露天風呂に、今日はずいぶん沢山の人びとがいる。

 特筆すべきは、もちろん昨日から目を付けていたかわいい姉妹三人組だが、その他にも、綺麗めの女性四人組もいる。びっくりしたのは、その中の一人がまたしてもオッドアイだったことだ。いったいどうなっているんだろう? それに、不思議な額飾りをした男もオッドアイだったな。

「あとでまた、宴会場に戻るんでしたっけ。また、別のご馳走がでるんでしょうか」
レネは、月を見るか、女性を見るか、それとも日本酒を飲むか、どれをしていいのかわからず混乱しながら言った。

「なぜ俺たちが余興を用意することになったんだ?」
ヴィルが当面の問題について話しだした。もちろん盃を傾ける速度は変わらない。

「一番ヒマそうに見えたのか、それとも大道芸人だから? なんか案はあるか?」
稔は、さりげなくカワイ子ちゃんたちを観察できるポジションをとりながら答えた。

「あ、あれはどうですか? このあいだ憶えさせられた、あの踊り」
レネが恐る恐る訊くと、稔は腕を組んだ。
「ハイヒールを履いて、ビヨンセの音楽で踊るやつか? ウケるのは間違いないけれど、あの時とメンバーが違うからな」

「今度のメンバーの男と言うと……満沢はバッチリだろうな。あれは役者だから」
「あの和菓子職人もイタリア人ですからね、ノリでは問題ないでしょう」

「高校生は?」
「『級長』って方は、ノリノリだろう。オッドアイの方は……」
「冷静に、何やっているんだと見つめられそうです」

「額飾りをつけた、オッドアイの男は?」
「風呂に入るのですら恥ずかしがっているのに、無理だろう」
ヴィルは盃を飲み干した。

「さっきの挙動不審男は?」
稔が言及しているのは、アメリカから来たという四人のうちの一人で、風呂の水に飛び込んだかと思ったら、急に妻にキスの雨を降らせた謎の男だ。いたたまれなくなった妻に引きずられるようにして風呂から出て行った。
「あれか。妻を人質に取れば何でもやりそうだな。だが踊りが上手そうには見えん」
ヴィルが切り捨てている。

「あそこの二人は?」
「猫に睨まれていた玉城とかいう男の方は、『義務だ』とか言えば、やってくれそうだ。美形の方は……」
「あの人にそんなことをやらせたら、僕たち、あの偉丈夫なお姐さんに首の骨折られそうです」

「それに、あのスイスの教授にも踊ってもらうんですか?」
レネがおずおずと訊く。稔は、手酌をしているヴィルから徳利を奪って、自分の盃を満たしながら言った。
「あのおっさんは、食べ物で釣れば、大抵のことはやりそうだ。もっとも見たいヤツがいるかな? それに、お前のご先祖様の友達は?」

 ヴィルは眉をしかめた。
「やめた方がいい。あの人は、怒らせると怖いと思う」

「『スズランの君』と同行しているブロンドの長髪の人は……」
レネが訊くと、稔とヴィルは顔を見合わせ、それから同時に言った。
「命が惜しい。他の余興にしよう」

 稔たちが、熱心に語り合っている時に、噂になっているとも知らず、セシルとアーサーは並んで大浴場の上にひろがる星空を見て語り合っていた。
「こんなにゆっくりとできるのは、本当に久しぶりだな、セシル」
「そうだな、アーサー。ここでもロンドンと同じ星が見えるんだな」

 だが、湯氣が立ちのぼり、空にもヴェールがかかったようになっていた。
「ち。少し、晴れるようにするか」
セシルは、右手をすっと浴場の中心に向かって動かした。はっとして、アーサーが言った。
「やめろ。忘れたのか、今日ここには『ドラゴン』のエアー・ポケットが多数開いているんだ、下手なことをすると空間が予測不能に歪むぞ!」
その二人の動きが、わずかに空間を歪めた。一瞬だけ湯氣が完全に晴れ、おかしな渦が露天風呂の中を走った。

 その少し前に、キャシーは、洋子と並んで日本酒を飲んでいた。先ほど八重垣神社の池に指でコインを沈めた女性だ。

 美穂が、夫ポールの奇妙な行動に真っ赤になって、彼を引きずるように浴場から連れ出して消えると、それを面白くなさそうに見ていたキャシーの隣にいつの間にか来て、日本酒をついでくれたのだ。
「私、あなたとはいい友達になれそうって予感がしたわ」
洋子はそれだけ言うと、盃を合わせた。キャシーはニヤッと笑って言った。
「さっき、私もそう思った」

 それから、日本酒を立て続けに何杯か煽ってすっかりほろ酔いになったキャシーは、「スタンド・バイ・ミー」を歌いながら、上機嫌で風呂の真ん中まで移動していた。両手を挙げて踊りながら。そこを、先ほどの渦が通り過ぎたのだ。

 キャシーを覆っていた布が、ハラッとほどけた。途端につんざくような叫びをあげて、彼女はお湯の中に座り込んだ。事態を察知した洋子が、速攻で近くに寄り、布を拾って彼女の周りに巻き付けてやった。一秒後には、再び湯氣が辺りを覆った。

 セシルの手を見ていたアーサーをはじめ、それぞれ誰かと話をしていた人物は、場面を見ていなかったが、二人だけ偶然キャシーの裸の上半身を見た人物がいた。一人が『級長』こと享志で、目撃した物をラッキーと判断していいのか、自分の良心に問い合わせていた。

 それと、ちょうど対角線上にいて、キャシーの見事な胸を目撃した稔は、享志を見てぐっと親指を突き出した。「超ラッキー」という意味だ。それを見とがめたキャシーがすぐにやってきて、稔は散々お湯を引っ掛けられたので、享志はこの幸運については、自分の胸三寸におさめておくべきだと若くして学んだ。

* * *


 俺様は、宴会場で風呂チームが戻るのを待っている。ここには、俺様をはじめとして四匹の猫がいる。猫と風呂は相いれないから、これでいいのだ。ニンゲンのくせに、風呂に入りたがらないヤツらも二人ばかりここにいる。イタリア系アメリカ人の女と、国籍不明の、額に飾りをした男だ。それぞれ事情があるのかもしれん。いずれにしても、他の彼奴らが食い散らかした残りのサシミや松葉ガニなどをほぐして俺様たちに食わせる係として使ってやっている。

 俺様以外の三匹は、どれも甘え上手だ。白いヘブンは控えめなヤツで、俺様にも挨拶をした。「空氣を読む」猫の典型だ。世界的に有名な『半にゃライダー』ナオキは、スターの傲慢さが全くない。他の二匹にサインをせがまれて、背中に醤油に浸した肉球を押し付けていたが、どうせ価値のわからぬニンゲンどもが、数日でシャンプーしてしまうに違いない。

 左右の目の色の違うマコトとやらは、やたらとアメリカ女に対して質問が多いが、ニンゲンが愚かでその言葉を理解していないことには氣がついていないらしい。だが、そのことを指摘してやるほど親切な俺様ではない。猫たるもの、ニンゲンが愚かであることは、自ら悟るべきなのだ。

 さて、風呂組も、順番に宴会場に戻ってきている。最初にやってきたのが、やたらと妻に謝ってばかりいるアメリカ人とその日本人妻。妻は「もう、恥ずかしかったんだから」とか言って批難しているが、夫の方は謝りながらも妙に嬉しそうだ。言動が破綻しているぞ。

 次にやってきたのは、ああ、この二人は彼奴らの中ではもっとも賢そうな兄妹。
「カロル、本当に楽しかったですね。これでいつ帰っても悔いはないわ」
「そうだな。いい経験だった」

 なかなか品のいい二人だ。この二人の所になら、飼われてやってもいいかなと少し思う。毎日美味しいものも食えそうだしな。と思ったら、突然二人は姿を消した。なんと。『根の道』が再び開きだしているらしい。

 それを見ていた、額に飾りをつけた男も、はっとしてその閉じかけている『根の道』に飛び込んだ。なんだ、こやつも帰るのか。だが、アメリカ女よ。お前はもう少しここにいて、俺様たちにその白身魚をほぐすがよい。そこのしじみもな。

「じゃあ、やっぱり『半にゃライダー』ごっこでもするか。ちょうど満沢とナオキもいるし」
「俺はまたあのアバンギャルドな髪型をしなくちゃいけないのか」
「テデスコ。サムライ役は格が上なんですよ。ところで、そうなると入浴シーンは?」
「お蝶が、まだ入っているだろ。お色氣シーンは、あいつの独断場だ」

蝶子 in お風呂 by ダメ子さん
このイラストの著作権はダメ子さんにあります。無断使用は固くお断りします。

「ああ~、いい湯だった」
「よし。続きでここで飲むぞ!」

 そう言って、ぞろぞろとうるさいヤツらが戻ってきた。ちっ。俺様たちの食べ放題はこれでおしまいか。うむ。早く次のオフ会をしてくれないかな。俺様としては、次回は北海道辺りで開催してもらいたいものだ。なんせ、うまい海の幸には事欠かないからな。

(初出:2015年4月 書き下ろし)

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http://www.kankou-matsue.jp/shinjiko_yuuhi/spot-01.html
宍道湖夕日スポット(とるぱ)

http://www.senjyuin.com/
尊照山 千手院

第一回、オリキャラのオフ会に参加くださった皆さん、それに一緒に楽しんでくださった皆さん、本当にありがとうございました! もしよかったら、またやりましょうね。

.08 2015 小説・松江旅情 trackback0

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(3)堀川めぐり

Posted by 八少女 夕

「オリキャラのオフ会 in 松江」第三弾です。四月八日の昼、四人は、まだお城付近にいます。本当の松江の桜は、8日にはもう散っているかもしれませんが、こちらではちょうど満開ということで。
オリキャラのオフ会
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TOM-Fさんの所のセシルとアーサー、それに彼らの目撃情報によると彩洋さんちのハリポタトリオ、けいさんのところの「半にゃライダー」コンビも目撃されている界隈、まだまだ目撃情報が続きます。すみません、ストーリーもへったくれもなく、食べて飲んで見学して騒いでいるだけです。なお、私以外誰も知らないイタリア系アメリカ人キャラが一人登場しています。「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」の終わった後に連載する中編の主人公です。知らなくても心配なさらずにスルーしてください。

【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ

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あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 〜 松江旅情(3)堀川めぐり


「参りましたね」
レネは、辺りを見回した。ヴィルの表情は変わっていないが、困っているのは彼も同じだ。よりにもよって、なぜ日本人二人とはぐれてしまったのか。しかもこんなジャパニーズな場所で。

 松江城の見学が終わってから、四人は一緒に塩見縄手と呼ばれる通りまではやってきたのだ。そして、武家屋敷の中を一緒に見学することにした。松江藩士たちが住んだ屋敷で、二百七十年前のものがとても良い状態保存されているのでショーグンの時代にタイムスリップしたかのようだとレネは大喜びだった。

 それだけなら良かったのだが、ついうっかり「お休み処」に心惹かれて、庭を見ている蝶子や稔と離れてしまったのがいけなかったらしい。レネを引き止めにきたヴィルも巻き添えで迷子になってしまった。

「そんな遠くには行っていないはずだ。次にはコイズミなんとかに行くと言っていたから、そこを探せばいいだけだろう」
ヴィルは通りを見回した。

 問題は、二人とも日本語が全く話せないということだった。そして、日本人たちというのは、外国人が簡易な英語で話しかけると、どういうわけだか、一様に意味不明な笑みを見せて逃げていってしまうという謎もあった。

「ああ、日本人じゃない人がいましたよ!」
レネが嬉しそうに叫んだ。ヴィルが振り向くと、門の前に、褐色の肌を持った女性が立っていた。どうやら彼女は写真を撮っている別の女性たちを待っているようだった。

「ちょっとお伺いしていいですか」
レネが近づくと、彼女は振り向いた。そしてはっきりとしたアメリカ英語で答えた。
「どうぞ」

「どうやら俺たちは仲間の日本人たちとはぐれてしまったようなんだが、コイズミなんとかにはどうやったらいけるんだろうか」
ヴィルが訊いた。

 彼女は、肩をすくめてから、庭をみている二人の女性のうちの一人に英語で声を掛けた。
「ミホ! コイズミなんとかって知っている?」

 写真を撮っていた白人女性に一声かけてから、日本人女性がこちらに歩いてきた。
「ええ、すぐ側よ。このあと、私たちもそこへ行こうかと思っていた所だわ。でも、こちらは裏門だから、ここで探しても見つからないわよ」

 ヴィルとレネは安心して頷いた。アメリカ英語だが、話の通じる女性がいたのはありがたい。
「すまないが、連れて行ってくれるとありがたい。俺はヴィル、こっちはレネだ」
「よろしく。私は美穂、こちらはキャシーです。それから、あそこで写真を撮っているのは……。ジョルジア! そろそろ行くわよ。じゃ、行きましょうか。ところで、その足元の猫は、あなたの?」

 そう言われて、足下を見ると、茶虎の仔猫がじっとこちらを見上げていた。見上げているというよりは、睨んでいると言った方がいいかもしれない。一度も見たことのない猫だった。
「いや、僕たちの猫じゃありません。なんか、おっかない猫ですね」
レネが狼狽えた。

Oresama

「そう、今日は、やけにたくさん猫がまとわりつく日なのよね。さっきも茶虎の仔猫にあったんだけれど、そっちはやけに可愛くて、しかも目の色が左右で違ったのよ」
キャシーが言うと、ヴィルとレネは顔を見合わせた。二人とも、今朝あった『スズランの君』と、昨日旅館で逢った高校生のことを思い浮かべていた。オッドアイの猫が、二人のオッドアイの人たちが偶然来ている街にいる? どんな確率で起こることなんだろう。

「それに、ニューヨークでも大人氣の『半にゃライダー』のロケ現場にも出くわしたの。本物のナオキを見られるなんて、日本に帰って来た甲斐があったわ」
美穂が嬉しそうに言った。『半にゃライダー』? どこかで聞いたような……。

「あっ。以前、バイトをしたあの番組!」
レネが叫んだが、ヴィルは、ため息をついた。
「ついさっき、お城でショーをやっていたじゃないか。あんたはどうせ団子屋しか見ていなかったんだろう」

「あ、あのショー、あなたたちもご覧になっていらしたんですか? ラッキーでしたよね。『やにゃれたらにゃり返す。あなたには500倍返しにゃ。それが私の流儀なんでにゃ』あの決め台詞を聞けたなんて」

 美穂がうっとりとするのに心動かされた様子は皆無で、ヴィルはキャシーに訊いた。
「あんたたちも、あのマスクを被った猫のファンか?」

 キャシーは肩をすくめた。
「よくわからないわ。ああいうのは子供のためのものだと思うんだけれど、日本人にとっては違うみたいね。ジョルジア、あなたはどう思う?」

 そう言って振り向くと、連れの女はまた遅れていた。写真を撮るのに夢中になっているらしい。
「ジョルジア! 今日くらいは仕事のことは、忘れなさいよ! 今度はあなたがはぐれるわよ」

 レネとヴィルは、急いでこちらに向かってくるその女をちらっと見た。黒いショートヘアに飾りのない白いTシャツ、ジーンズにGジャンという少年のような佇まいで、どうやらスッピンのようだ。だが意外と整った南欧系の顔立ちだ。「ごめんスクーザ 」と口にしたので、イタリア系なのだろう。

「イタリア語も話せるのか」
ヴィルがイタリア語に切り替えて訊くと、少し驚いたが首を振った。
「私はニューヨークで育ったの。相手の言っているイタリア語はわかるんだけれど、ちゃんとは話せないの。あなたたちの方が、私よりずっと上手だわ」
「だって、僕たちは、年の1/3くらいはイタリアにいるんですよ」
「そう」

 威張った顔つきの仔猫は、五人にしっかりついてきている。話が分かっているみたいに、時々、バカにしたようにこちらを眺めるのがおかしい。

「ああ! いたいた!」
「おい、お前ら、探したんだぞ!」
小泉八雲記念館のすぐ前にいた蝶子と稔が近づいてきた。

「すみません! つい、うっかり」
レネが謝ったが、その時には二人は、新しく増えた連れの方に興味を示していた。

「へえ。ニューヨークから来たんだ。女性三人で?」
「ううん。ここにいるミホの旦那も入れて四人で。この子たちはサンフランシスコでイタリア料理店を経営しているの。せっかくだからミホの故郷を見にこようってね。私と、ここにいるジョルジアは生まれてからずっとニューヨーク在住。この人は、私の勤めている食堂のお客さんで、フォトグラファーなのよ」
キャシーが簡単に説明した。稔は不思議そうに美穂を見た。
「旦那さんは?」

 彼女は肩をすくめた。
「なんだか旅の途中から、様子がおかしくて。具合が悪いのかと訊いてもなんでもないって言うし。なれない長時間旅行で疲れただけだから、三人で観光して来いって言われちゃったの。何度か電話を入れているんだけれど、急病ではないみたいなんで、少し休んでいれば治ると思うんたけれど」

「ジェットラグかしらね?」
蝶子が言って、「小泉八雲記念館」の入り口をくぐった。六人はそれに続いた。

 後に小泉八雲と名乗ることになったラフカディオ・ハーンはギリシャで生まれ、アイルランドやフランス、アメリカで暮らした後に、明治23年、日本へやってきて島根県の尋常中学校と師範学校の英語教師となった。そして、松江に住み小泉セツと結婚した。橋姫伝説などの怪異譚を知り、後に『怪談』をはじめとして、多くの日本の伝説や文化について海外に紹介する原点となった松江生活だが、実際には一年と三ヶ月ほどしかいなかったと言う。

「大雪と冬の寒さに堪えたんですって」
展示を見ながら蝶子が言うと、稔が頷いた。
「ここは山陰だからな。降るときはすごいんだろうな」
「春に来て正解でしたよね」
美穂も頷いた。どういうわけか足元の猫も頷いていた。

「私たちこれから堀川遊覧船に乗るんだけれど、よかったら一緒にどう?」
そう蝶子が訊くと、アメリカ組三人はすぐに頷いた。

松江城の堀川は3.7km、所要時間55分で城の周りを一周する遊覧船がめぐっている。すぐ近くにあった乗船場で七人は同じ舟に乗った。
「その猫もですかい?」
そう訊かれて足下を見ると、まだ茶虎の猫がそこにいた。「当然」という顔をされて、周りを見回してから「しかたないな」と抱え上げたのは稔だった。

 船頭はなかなかのエンターテーナーで、松江城や松江藩の歴史をよどみなく話し、さらには「松江夜曲」なる歌まで披露してくれた。もっともガイジン比率が高く、内容をわかっていたのは限られていたが。

 岸辺と松江城の桜が見事だった。春の陽が波立つ川に反射してキラキラしていた。泳いでいた魚がぴちゃんと跳ねると、仔猫はびくっとして、稔にしがみついた。

「なんだ、魚が怖いのか?」
そういうと、「失敬な」という目つきで睨んだ。稔は「しょうがないな」といって、猫の尻尾の付け根あたりをこすってやった。一瞬、きっと睨んだが、そのポジションからいっこうに動かない所を見ると、もっと撫でろという意味なのかもしれない。周りの全員が桜や松江城を堪能しているのに、どうして俺だけこの猫の面倒を看ているんだろうと、稔は首を傾げた。

 一周して同じ発着所で遊覧船を降りた。代わりに乗り込んできたのは、三人組の日本人だった。男性が二人と女性が一人。一番前が、ふわりとした栗色の髪に大きい瞳が印象的な美青年。その後ろから長い髪を後ろで縛っている筋肉質で背の高い女性が乗り込んだ。一番後ろの黒髪で鼻筋が通り切れ長の目の青年は、ハンサムと言っても過言ではないのだが、どういうわけか頼りない印象を与えた。彼は城の桜を撮影していたが、女性に「玉城、船頭さんが待っているんだから、さっさと乗れ」と叱られていた。

 稔にくっついていた仔猫は、すぐにその青年の所へ行って、批難のまなざしで見上げた。稔と背の高い女性の二人は、それに同時に氣がついて、顔を見合わせて笑い出した。船の中で桜を見ていた美形の青年と、カメラをしまって舟に乗り込もうとしていた玉城と呼ばれた青年は、何があったのかわからずにぽかんとして、女性と稔の顔を交互に見た。それから、玉城青年が足元の茶虎の仔猫に睨まれていることに氣がつき「ひゃっ」と言った。それで、こんどはその場にいた全員が笑った。

 それから仔猫はすっと稔の横に戻ってきた。会釈を交わすと、三人組をのせた遊覧船は、岸を離れていった。

 そのまま七人で昼食をとることにした。発着所の隣に『松江・堀川地ビール館』という建物があり、最高級の島根和牛を焼き肉で食べることができる。七人という大所帯なので、コースの他にいろいろな肉や野菜を少しずつ頼んで、地ビールも堪能した。

「なんだ、このビール。やけに美味いな」
ヴィルが首を傾げると、稔と蝶子はガッツポーズをした。
「インターナショナル・ビア・コンペティションで何度も入賞しているんですって。ドイツのビールにも負けていないでしょう?」
レネとヴィルは頷いた。キャシーはいける口のようで、陽氣に騒いでいた。一方で、ジョルジアはビールではなく島根ワインを頼み、静かに食べていた。

 島根和牛の美味しさは、格別だ。ヨーロッパの煮込まないと食べられないような大して美味しくない牛肉に慣れているArtistas callejerosの四人も、それから量だけはあるが大味なアメリカンビーフに慣れているアメリカチームも、焼き肉を食べるときはしばし無口になった。

「ああ、日本の食事って、おいしいですよね」
霜降り和牛と一緒に食べているお替わり自由のご飯を噛み締めるように、美穂が言った。

「カリフォルニアなら和食なんて珍しくもないかしら?」
蝶子が訊くと、美穂は首を振った。
「日本料理店は多いですけれど、私はほとんど行かないんです。なんせ自分自身がイタリア料理店で働いているので」

「じゃ、家で和食ってこともないんですね」
レネが訊いた。美穂は首を振った。
「和食って手間がかかるでしょう。仕事以外ではあまり調理に時間をかける氣にならないんで、食べたくて死んじゃうって時じゃないと、なかなかね」

「さっき懐石料理とかいう料理のパンフレット見せてもらったけれど、手が込んでいるんだものねぇ。あれを仕事のあとに作るなんて、私も嫌だな」
キャシーが言った。稔も蝶子も、懐石料理を家庭で作るわけないだろうと思ったが、家庭料理との違いについての説明が面倒だったのでスルーした。

「みなさんは、これからどうするんですか?」
美穂は稔に訊いた。

「松江フォーゲルパークに行こうと思ったんだけれど、ガイジンたちがもう動きたくないって言うんで、諦めて夕方までここで酒でも飲んでいようかと思っているんだ。宍道湖の夕陽を見た後、千手院のしだれ桜を見て、それから玉造温泉に戻るよ」
「えっ。玉造温泉にお泊まりなんですか? 私たち『長楽園』に泊るんですが」
「へえ。偶然だな、同じ宿だ。じゃ、また逢えるな」

「ええ。じゃあ、私たちは『八重垣神社』へ行ってきますから、後でまたお逢いしましょう」
美穂と、キャシー、そしてジョルジアは手を振って、出て行った。

 四人はそのまま地ビールとつまみで本日の宴会の第一弾を始めた。茶虎の仔猫は「しかたないな」という顔をして、大騒ぎする四人を片目で見てから丸まった。

(初出:2015年4月 書き下ろし)

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今回でてきた名所に興味を持たれた方は、こちらへどうぞ。
http://www.matsue-tourism.or.jp/buke/
松江市指定文化財 武家屋敷

http://www.matsue-tourism.or.jp/yakumo/
小泉八雲記念館

https://www.ichibata.co.jp/jibeer/index.html
松江・堀川地ビール館

内容もないのにダラダラと連載していますが、次回、フィナーレです。やっと(笑)
.05 2015 小説・松江旅情 trackback0

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(2)城のほとり

Posted by 八少女 夕

「オリキャラのオフ会 in 松江」第二弾です。四月八日の朝、四人は、旅館の朝ご飯を堪能した後に電車に乗って松江の街にやってきました。

あ、参加者の方への業務連絡です。玉造温泉の混浴が人氣でしたので、夜に千手院で夜桜を堪能した後に、また玉造温泉に戻って再び四人を月見沐浴させようと思います。ご希望の方は、どうぞ乱入してきてくださいね。また、私が書いていない時間、スポットでの目撃談も、どうぞご自由に書いてくださいませ。


オリキャラのオフ会
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ちなみに、Artistas callejerosの四人組の外見描写、私の書いている中にはほとんど出てきません。目の色などを細かく知りたい方はこちらをどうぞ。視覚で知りたい方は下のユズキさんの描いてくださったイラストで。髪型など、完璧に再現してくださっていますので。服装も、このままということにしちゃいます。蝶子だけは、これに白っぽいスプリングコートを上に着ているかな。
「大道芸人たち」 by ユズキさん
このイラストの著作権はユズキさんにあります。ユズキさんの許可のない使用は固くお断りします。

【大道芸人たちを知らない方のために】
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あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 〜 松江旅情(2)城のほとり


「ちょっと、ブランベック。なに食べ歩きしているのよ」
蝶子は露骨に嫌な顔をした。レネは、たった今入ったばかりの和菓子店「石倉六角堂」で買いあさった和菓子のうち、どら焼きを開けて食べていた。

「お茶もなしによくそんな甘いものが食えるな」
稔も呆れている。ヴィルも今回は助け舟を出すつもりはないらしい。なんせ四人はつい今しがた、併設された簡易喫茶で練りきりと緑茶を堪能してきたばかりなのだ。

「こんなにおいしい和菓子は、僕たちの所では食べられないじゃないですか。放っておくと固くなっちゃうし、少しでもたくさん食べておかないと」
レネはふくれた。

「そんな姿をみたら、百年の恋も醒めちゃうわよ」
「ほっておいてください。見られて困るような人がここにいるわけないんですから」

 レネが、一つめを食べ終わって、さらに袋を探っている所を稔がつついた。
「おい。今の言葉、後悔すんなよ。ほらっ」

 レネは顔を上げて、稔が顎で示している方向を見て、ぽかんとした。
「……スズランの君……」

 蝶子とヴィルも、レネの視線を追った。道の向こう側、お城の堀に近い方向を、二人の外国人が歩いていた。一人は長い金髪に濃紺のスーツを身に着けた背の高い男性で、もう一人は桜色に薔薇の柄のフリルの多いドレスを着ている若い女性だった。

 その女性をもっとよく見て、ヴィルと蝶子にもレネが誰の事を言っているのかわかった。真珠色の長い髪に赤と青のオッドアイ。ロンドンで、レネがぽーっとなったという女性だろう。レネは彼女にもらったレースのハンカチを未だに大切にしているのだが、そのハンカチから薫っていたのが『リリー・オブ・ザ・バレー』の香水だった。

「ほらみろ。買い食いなんてするもんじゃないだろう」
稔が言うと、レネは恥ずかしげに出しかけていた二つ目のどら焼きを袋にしまった。

「どうした?」
ヴィルが、蝶子に訊いた。蝶子は、やはり少し驚いた様子で、女性の連れの方を見ていた。
「あの男性……」
「知ってんのか?」
稔が訊くと蝶子は頷いた。
「大英博物館で逢った人よ。へえ。『スズランの君』と知り合いだったのね」
「そういえば」と稔は首を傾げた。「あの時のサツ野郎と一緒じゃないんだな……」

「ロンドンで逢った人たちと、日本で再会か……。不思議なめぐり合わせだな」
ヴィルが言うと、レネが息巻いた。
「運命ですよ!」

 蝶子と稔は吹き出した。それから稔が訂正した。
「『縁』だろ。島根県は『縁の国』だからな」

 四人は、道路の向こうの二人に会釈をして通り過ぎた。ところで、あの人は私のことを憶えているのかしら? 蝶子はちらりと考えた。

* * *

 
 松江城の観光を始める前に、まず松江歴史館から観ることにした。武家屋敷のような建物で、松江城とその堀川の景色ともよくマッチしている。もともとは四家の重臣の屋敷のあった場所で、その中の松江藩家老朝日家長屋の一部が今も残り、松江市指定文化財となっている。歴史館にはこの建物や復元された木幡家茶室や日本庭園と企画展示室が上手に組み合わされている。

 展示室では、松江藩の概要、産業、城下町の暮らし、それに水とともにある松江の暮らしなどをコーナーごとに解説し、模型、絵巻風のパネルや鎧兜、陶器、その他の展示で日本語が読めないものも飽きずに見学できるようになっていた。

 ひと通り見学を終えて、出口に向かう途中、売店の側でレネが足を止めた。喫茶店があったのだ。蝶子が辛辣なひと言を言おうとした正にその時、横をドイツ語で話しながら二人組が通り過ぎた。

「先生。ついさっき和菓子屋で食べたばかりじゃないですか。いちいち和菓子を見る度に食べようとなさらないでください!」
「失敬なことをいうね、フラウ・ヤオトメ。この前に通った、少なくとも二軒の和菓子屋では立ち止まらなかったぞ」

 蝶子は吹き出した。首を傾げるレネと稔にヴィルが素早く通訳した。それを耳にして、二人組は立ち止まった。一人は太い眉に銀のラウンド髭を蓄え、細かいチェック柄のツイードの上着を着た厳格そうな外国人で、もう一人は首までの茶色く染めた髪を外側にカールさせ、臙脂色のスプリングコートを着た日本人女性。

「この街で、ドイツ語のわかる人に逢うとは思わなかったな」
と、紳士は握手の手を伸ばし、スイスに住むクリストフ・ヒルシュベルガー教授であると自己紹介をして、同行しているのが秘書のヤオトメ・ユウであると言った。

「お知り合いになれて光栄です。ヴィルフリード・エッシェンドルフです」
ヴィルは、手を伸ばし礼儀正しく挨拶をした後、続けて残りの三人を紹介した。

「せっかくですから、ここの喫茶店でお茶でもしませんか」
教授がそう言ったので、蝶子はまた笑いそうになったが、必死で堪えて喫茶店『きはる』に入った。日があたり暖かいので屋外の濡れ縁で、和菓子と緑茶を楽しんだ。

「この後は、どこに行かれるのですか?」
ユウが訊いた。蝶子は日本語で答えた。
「ここ以外は、まだ、和菓子屋にしか入っていないので、これからちゃんと観光する予定なんです。まずはお城に行って天守閣に登りたいなと思っています。それから、できれば堀川遊覧船にも乗りたいですし、武家屋敷や小泉八雲記念館にも行きたいなと思っているんですが、あまりたくさん観光したがらないガイジン軍団がいるんで、計画通りにいくかどうか……ユウさんは?」

「ええ、和菓子屋めぐりはそこそこにして、イングリッシュガーデンにいくか、神魂神社への参詣ついでに『風土記の丘』や黄泉比良坂に行くのもいいかなと」
「氣になる所、たくさんありますよね」
「ええ。でも、外国人連れだと……何に騒いでいるのかわかってもらえない部分もありますよね」
「確かに」
妙な所で意氣投合してしまった。

「でも、外せないのは宍道湖の夕陽を見て、千手院でしだれ桜を見ることでしょうか」
ユウが言うと、稔が頷いた。
「確かにそれは見逃せないな。じゃあ、後でまた逢うかもしれないな」

 和菓子も食べて、レネとヒルシュベルガー教授も満足したようなので、六人は松江歴史館を出て再会を約束して別れた。

「さあ、とにかくお城に行きましょう」
立派な門を通って、小高い丘を登っていく。
「やっと入口か。天守閣に行くのもさらに登るんだよな。覚悟しろよ」
稔が言う。

「あ、あそこでお団子を売っていますよ!」
レネの叫びを、三人は無視することにした。

(初出:2015年3月 書き下ろし)

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【参考】
松江歴史館
http://www.matsu-reki.jp
.20 2015 小説・松江旅情 trackback0

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(1)玉造温泉

Posted by 八少女 夕

「オリキャラのオフ会 in 松江」第一弾です。といっても、ちょっとまだプロローグ的です。日時は前泊から始まっていますし、場所は玉造温泉。でも、ちゃんと4月8日も入っているし、玉造温泉は松江市です(笑)

オリキャラのオフ会
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今回のオフ会でも、結局この四人をメインに物語を組立てることにしました。物語と言っても、あまりストーリーもありませんけれど。前泊、朝、昼、宵くらいで松江市をうろつかせようかなと思っています。途中で、ほかのウチのオリキャラもいろいろと出てくると思いますが、それは適当に。他の方が書かれたものがあれば、それに合わせてどんどん動かしたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。臨機応変にね。あ、本文には書きませんでしたが、他の方達に目撃された時、四人はたぶん旅館の浴衣と半纏を着ていると思う……。

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あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 〜 松江旅情(1)玉造温泉


「うわっ。こりゃ壮観だ」
稔は玉湯川の桜並木を見て叫んだ。四百本の桜が咲き乱れる様は壮観だ。夜はライトアップされる。
「きれいねぇ。やっぱり桜の時期の日本は外せないわね」
蝶子がうっとりする。

「この桜、すごいですね。花がこんなにぎっしりと詰まっている」
「なるほどな。日本の桜を見ろと、行ったヤツが口を揃える理由がわかったよ」
ガイジン二人もすっかり感心している。

 玉造温泉は、松江からJR山陰本線でおよそ十分のところにある温泉街だ。『枕草子』にも三名泉としてその名が登場し、歴史と格式がある。規模は大きいが、歓楽色がないうえ、料金設定も高めで数寄屋造りの高級旅館が多い。そのため、観光客ずれした場所を嫌うヴィルやレネを連れてくるにはもってこいだった。街のあちこちに、出雲の神話をモチーフにしたオブジェが建っている。

「まずは、今夜のお宿に行きましょうよ。温泉に浸かってゆっくりとして、明日、松江の観光に行くことでいいわよね」
蝶子が言うと、稔が付け加えた。
「宴会を忘れんなよ」

 島根県松江市玉湯町にある「玉造温泉 湯之助の宿 長楽園」は、明治元年創業の老舗だが、創業した長谷川家は奈良時代からこの地に住み、江戸時代より松江藩から「湯之助」の官職を申しつかり玉造温泉の差配・管理をしていた由緒ある家柄だ。

 そもそも玉造温泉は、奈良時代に開かれた日本最古の歴史を持つ温泉の一つで、大国主命とともに国造りをした少彦名命が発見したとの言い伝えもある。

「『ひとたび濯げば形容端正しく、再び浴すれば万の病ここぞとに除こる』って、出雲風土記に書いてあるんだって」
説明書きを読みながら、蝶子が頷く。
「なんですか、それは?」
もともと日本語はまったくわからないレネが首を傾げる。稔が砕いて英訳した。
「一回入ると美形になって、二回入ると病が治るってことじゃないか」
「僕も?」
レネが言うと、ヴィルは鼻で笑った。
「温泉に入っただけで、姿形が変わるわけないだろう」

「とにかく! ここに来たのは混浴ができるからなのよ」
蝶子が言うと、ガイジン二人は目を剥いた。
「こ、混浴? で、でも、日本のオンセンって……あの、その、すっぽんぽんで……」
レネが大いに狼狽えて、ヴィルは無表情ながらもムッとしたのがわかった。

「大丈夫だよ。混浴って言う場合は、本当の裸じゃないんだ」
稔がパンフレットを見せた。たしかに女性モデルが薄いバスタオルのようなものを巻いて温泉に入っている。
「前に日本に来た時、私だけ別のお風呂だったでしょう? 今度は絶対混浴温泉に行こうと思っていたの」
蝶子はすっかり乗り氣だった。一方、ヴィルはパンフレットに掲載された料理に興味を示した。
「ここでも、例の宴会か?」

 稔は大きく頷いた。
「そ。日本で旅館に泊まるとなると、必ず宴会食なんだ」
「日本酒、楽しみですねぇ」
レネも目を細める。

食事は、掘りごたつの座敷会場でだったが、自分たちの席に案内される時に他の客たちが既に食事をしている横を通った。

「お、おい。なんか可愛い三人組がいるぞ」
稔が蝶子を肘でつついた。見ると、二人ロングの長髪、一人はおかっぱの少女で、三人ともよく似ているので姉妹のようだ。稔は、一番年若いと思われるおかっぱの少女を見てにやけている。蝶子は肩をすくめた。
「あなたって、本当に結城さんと女の子の好みがダブっているわよね」
「いいじゃないか。結城と違って、こっちは見ているだけで実害はないぞ」
「まあね。あの子、未成年みたいだから、実害があっちゃ困るわよ」
「あの子たちも混浴温泉に行くのかなあ。断然楽しみになってきたぞ」

 蝶子は、ため息をついて通り過ぎた。案内された席の反対側には、やはり高校生と思われる三人組がいた。こちらは女の子ひとりと、男の子二人。そのうちの一人が元氣よくその場をしきっている。もう一人の男の子は、寡黙だ。どこか違和感があって、蝶子がもう一度よくその少年を見た。そして納得した。瞳が片方だけ碧かったのだ。へえ。珍しいもの見ちゃった。蝶子は心の中でつぶやいた。

 もっとも日本人二人、外国人二人の蝶子たちは、やはり周りの注目の的だった。特に隣の高校生たちが大人しくジュースを飲んでいるのに、次々と日本酒をオーダーしてよく飲むArtistas callejerosは、かなり浮いていたに違いない。

 島根和牛のステーキ、桜鯛や花烏賊のお造り、筍の土佐煮、白魚と穴子の桜花揚げ、その他たくさんの海の幸と山の幸を桜を多用した春らしい会席料理。
「日本の料理って、味だけでなくて、見た目も楽しむものなんですよね」
レネが言い、四人は頷きながらしみじみと味わう。
「これが終わったら、露天だ、露天」
やけにハイテンションな稔に蝶子は白い目を向ける。
「こんなに飲んで、お風呂で倒れないでよ」 

 水曜日の朝、蝶子は一人で朝風呂に向かった。昨夜、四人で露天風呂に来たが、いたのは彼らだけだった。
「ちぇ。せっかく日本の露天に来て、見れたのはお蝶だけかよ」
ブツブツ言っていた稔のことを思い出す、おかしくてしかたない。

 ふと見ると、昨日の三人組の女性が、仲良く並んで女湯に浸かっていた。あらぁ、いるじゃない。もっともここじゃ、ヤスが見るチャンスは皆無だったわね。

 蝶子は、巻物を身につけて、朝の露天風呂に向かった。冷たい風が氣持ちいい。ほのかに桜の香りのただよう春の露天で、今日のこれからのことを考えた。朝食の後、チェックアウトして松江に向かうのよね。美味しいものもたくさんあるし、観たいものもいろいろ。もっとも、ガイジン軍団は、あまり動きたがらないから、どうやって移動させるかがポイントよね。
 
 楽しい一日が始まった。

(初出:2015年3月 書き下ろし)

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【参考】
「玉造温泉 湯之助の宿 長楽園」のサイトです。行きたいけど、遠い……。
http://www.choraku.co.jp/onsen/ryugu.html
.16 2015 小説・松江旅情 trackback0

オリキャラのオフ会やりましょう

Posted by 八少女 夕

「scriviamo! 2015」残り二作品の発表が残っている時点で、「またかよ」かと思われるでしょうが、新企画のお知らせです。あ、この企画は、創作をなさる方専用企画です。


先日発表した「その色鮮やかなひと口を -3-」のコメ欄で、「私もここ(松江)を舞台に何か書きたい」とおっしゃった方が何名かいらしたので、先日からこれやったら面白いだろうなと思っていた企画を打ち上げさせていただきます。

オリキャラのオフ会
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題して「オリキャラのオフ会」です。と言っても、飲食店に集合させるわけではありません。同じ日に特定の場所にオリキャラたちを集めて、ウロウロさせるだけ。それぞれの方が、好きなように短編(もちろん長編でも構いません)を書いてください。あ、マンガ・イラスト・詩などでも構いません。

当日、そこにいるとわかっているキャラたちと勝手にすれ違ったり、交流したり、ドロドロのドラマを展開してくださっても結構です。と言っても、誰が行くかわからないと、交流のしようもないでしょうから、参加してくださる方は、この記事のコメ欄に予め「うちはこのキャラが行くよ」と申し出てくださるといいかと思います。また、早く発表した方のキャラはそこにいるということですから、勝手にすれ違ったり、目撃したりしてくださいませ。

この企画、うまくいったら好きな方が幹事になっていただいてシリーズ化(神戸とか、京都とか、東京とか、ローマとか……)したいなと思うのですが、まずは一回目なので、私が幹事。で、独断と偏見で場所と日時を決定しました。

【日時】2015年4月8日(水)
【場所】島根県松江市
【お約束】観光名所を一カ所以上まわる、または、地域グルメを一点以上記述すること
【やってもOK】よそのブログのオリキャラたちとの交流、もしくは、すれ違い

【追加情報】参加者に好評につき4/8の夜は、玉造温泉の混浴大露天風呂で月見沐浴大宴会となりました。参加ご希望オリキャラ陣は各自移動のほどよろしくお願いします。宿泊費並びに宴会費用は樋水龍王神社持ちとなります。


日付は決まっていますが、これは作品を発表する締切ではありません。これより前に発表していただいても、ずっと後の発表でも構いません。単に、作品の設定上の日付です。

なぜこの日で、ここなのかというと、2015年4月8日は私が勝手に決めた「樋水龍神縁起の日」なので、その記念です。(TOM-Fさんのコメで思いつきました)(笑)

【追記】私の参加作品はこちら
大道芸人たち Artistas callejeros 番外編   ~ 松江旅情
(1)玉造温泉
(2)城のほとり
(3)堀川めぐり
(4)さくら咲く宵に


なお、この日、島根県松江市をうろついていると思われるうちとブログのお友だちのオリキャラは下記の通りです。

ルドヴィコ&怜子、和菓子屋「石倉六角堂」のメンバー(松江市在住)
谷口美穂(雲南市吉田町出身)&キャシー&ジョルジア
Artistas callejeros(生まれていないけれど時空が曲がっているので参加)
ヤオトメ・ユウ&クリストフ・ヒルシュベルガー教授
俺様ネコ(ニコラ)
瑠水&真樹(TOM-Fさんの所で目撃していただきました)

お友だちのブログからの参加予定者です。(敬称略)

TOM-Fさんのところからの参加者
セシル・ディ・エーデルワイスとアーサー・ウイリアム・ハノーヴァー

山西左紀さんのところからの参加者
敷香シスカ &沙絵 &敦子 &洋子

ダメ子さんのところからの参加予定者
ダメ家三姉妹

大海彩洋さんのところからの参加者
享志・杉下さん・真 のハリポタトリオ&マコト(タケルも?)

けいさんのところからの参加者
満沢&ナオキ

limeさんのところからの参加者(目撃されちゃったキャラ)
リク&玉城&長谷川

cumbrousさんのところからの参加者(ただし4/9メイン)
カロル&ヘレナ・ルジツキー兄妹(松江城の夜桜見物)

ポール・ブリッツさんのところからの参加者
ポール

ふぉるてさんのところからの参加者(イラスト)
レイモンドとハゾルカドス(杖)



この他にも、ご希望があればどんなオリキャラ(下記の例外を除く)でも登場可能。うちのオリキャラに関してだけは、事前のお申し出は不要です。どうぞご自由にお使いくださいませ。うちのオリキャラではなく、他のブログのオリキャラを登場させたい場合は、それぞれ誘い合わせてくださいませ。

なお、この日は、樋水龍王神が根の道を開きますので、空間軸、時間軸ともに自由に行き来ができます。従って公共交通機関の予約やタイムマシン、どこでもドアなどの用意は必要ありません。あ、もちろんあえて公共交通機関やプライヴェートジェット機でいらしたい方はどうぞご自由に。

【注意事項】
登場できないオリキャラ
新堂朗&ゆり(安達春昌&瑠璃媛)
武内宮司、次郎

オプショナルツアーで島根県内(出雲・玉造温泉その他)を自由にまわっていただいて結構ですが、重要な神事がありますので、奥出雲樋水村には午後以降は足を踏み入れないようにお願いいたします。



この企画と「樋水龍神縁起」の関係、「なぜ2015年4月8日は樋水龍神縁起の日なの?」などはお氣になさらなくて構いません。もちろんこれのために「樋水龍神縁起」を読む必要もありません。でも、「どうしても氣になって眠れない」という方は、こちらからどうぞ。

「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物

官能的表現が一部含まれるため、成人の方に限られますが……「樋水龍神縁起」四部作(本編)は別館にPDFでご用意しています。
縦書きPDF置き場「scribo ergo sum anex」へ行く 縦書きPDFで読む(scribo ergo sum: anex)
.05 2015 小説・松江旅情 trackback0
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