scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012

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Posted by 八少女 夕

オリキャラのオフ会やりましょう

「scriviamo! 2015」残り二作品の発表が残っている時点で、「またかよ」かと思われるでしょうが、新企画のお知らせです。あ、この企画は、創作をなさる方専用企画です。


先日発表した「その色鮮やかなひと口を -3-」のコメ欄で、「私もここ(松江)を舞台に何か書きたい」とおっしゃった方が何名かいらしたので、先日からこれやったら面白いだろうなと思っていた企画を打ち上げさせていただきます。

オリキャラのオフ会
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題して「オリキャラのオフ会」です。と言っても、飲食店に集合させるわけではありません。同じ日に特定の場所にオリキャラたちを集めて、ウロウロさせるだけ。それぞれの方が、好きなように短編(もちろん長編でも構いません)を書いてください。あ、マンガ・イラスト・詩などでも構いません。

当日、そこにいるとわかっているキャラたちと勝手にすれ違ったり、交流したり、ドロドロのドラマを展開してくださっても結構です。と言っても、誰が行くかわからないと、交流のしようもないでしょうから、参加してくださる方は、この記事のコメ欄に予め「うちはこのキャラが行くよ」と申し出てくださるといいかと思います。また、早く発表した方のキャラはそこにいるということですから、勝手にすれ違ったり、目撃したりしてくださいませ。

この企画、うまくいったら好きな方が幹事になっていただいてシリーズ化(神戸とか、京都とか、東京とか、ローマとか……)したいなと思うのですが、まずは一回目なので、私が幹事。で、独断と偏見で場所と日時を決定しました。

【日時】2015年4月8日(水)
【場所】島根県松江市
【お約束】観光名所を一カ所以上まわる、または、地域グルメを一点以上記述すること
【やってもOK】よそのブログのオリキャラたちとの交流、もしくは、すれ違い

【追加情報】参加者に好評につき4/8の夜は、玉造温泉の混浴大露天風呂で月見沐浴大宴会となりました。参加ご希望オリキャラ陣は各自移動のほどよろしくお願いします。宿泊費並びに宴会費用は樋水龍王神社持ちとなります。


日付は決まっていますが、これは作品を発表する締切ではありません。これより前に発表していただいても、ずっと後の発表でも構いません。単に、作品の設定上の日付です。

なぜこの日で、ここなのかというと、2015年4月8日は私が勝手に決めた「樋水龍神縁起の日」なので、その記念です。(TOM-Fさんのコメで思いつきました)(笑)

【追記】私の参加作品はこちら
大道芸人たち Artistas callejeros 番外編   ~ 松江旅情
(1)玉造温泉
(2)城のほとり
(3)堀川めぐり
(4)さくら咲く宵に


なお、この日、島根県松江市をうろついていると思われるうちとブログのお友だちのオリキャラは下記の通りです。

ルドヴィコ&怜子、和菓子屋「石倉六角堂」のメンバー(松江市在住)
谷口美穂(雲南市吉田町出身)&キャシー&ジョルジア
Artistas callejeros(生まれていないけれど時空が曲がっているので参加)
ヤオトメ・ユウ&クリストフ・ヒルシュベルガー教授
俺様ネコ(ニコラ)
瑠水&真樹(TOM-Fさんの所で目撃していただきました)

お友だちのブログからの参加予定者です。(敬称略)

TOM-Fさんのところからの参加者
セシル・ディ・エーデルワイスとアーサー・ウイリアム・ハノーヴァー

山西左紀さんのところからの参加者
敷香シスカ &沙絵 &敦子 &洋子

ダメ子さんのところからの参加予定者
ダメ家三姉妹

大海彩洋さんのところからの参加者
享志・杉下さん・真 のハリポタトリオ&マコト(タケルも?)

けいさんのところからの参加者
満沢&ナオキ

limeさんのところからの参加者(目撃されちゃったキャラ)
リク&玉城&長谷川

cumbrousさんのところからの参加者(ただし4/9メイン)
カロル&ヘレナ・ルジツキー兄妹(松江城の夜桜見物)

ポール・ブリッツさんのところからの参加者
ポール

ふぉるてさんのところからの参加者(イラスト)
レイモンドとハゾルカドス(杖)



この他にも、ご希望があればどんなオリキャラ(下記の例外を除く)でも登場可能。うちのオリキャラに関してだけは、事前のお申し出は不要です。どうぞご自由にお使いくださいませ。うちのオリキャラではなく、他のブログのオリキャラを登場させたい場合は、それぞれ誘い合わせてくださいませ。

なお、この日は、樋水龍王神が根の道を開きますので、空間軸、時間軸ともに自由に行き来ができます。従って公共交通機関の予約やタイムマシン、どこでもドアなどの用意は必要ありません。あ、もちろんあえて公共交通機関やプライヴェートジェット機でいらしたい方はどうぞご自由に。

【注意事項】
登場できないオリキャラ
新堂朗&ゆり(安達春昌&瑠璃媛)
武内宮司、次郎

オプショナルツアーで島根県内(出雲・玉造温泉その他)を自由にまわっていただいて結構ですが、重要な神事がありますので、奥出雲樋水村には午後以降は足を踏み入れないようにお願いいたします。



この企画と「樋水龍神縁起」の関係、「なぜ2015年4月8日は樋水龍神縁起の日なの?」などはお氣になさらなくて構いません。もちろんこれのために「樋水龍神縁起」を読む必要もありません。でも、「どうしても氣になって眠れない」という方は、こちらからどうぞ。

「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物

官能的表現が一部含まれるため、成人の方に限られますが……「樋水龍神縁起」四部作(本編)は別館にPDFでご用意しています。
縦書きPDF置き場「scribo ergo sum anex」へ行く 縦書きPDFで読む(scribo ergo sum: anex)
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Category : 小説・松江旅情
Tag : オリキャラのオフ会

Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(1)玉造温泉

「オリキャラのオフ会 in 松江」第一弾です。といっても、ちょっとまだプロローグ的です。日時は前泊から始まっていますし、場所は玉造温泉。でも、ちゃんと4月8日も入っているし、玉造温泉は松江市です(笑)

オリキャラのオフ会
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今回のオフ会でも、結局この四人をメインに物語を組立てることにしました。物語と言っても、あまりストーリーもありませんけれど。前泊、朝、昼、宵くらいで松江市をうろつかせようかなと思っています。途中で、ほかのウチのオリキャラもいろいろと出てくると思いますが、それは適当に。他の方が書かれたものがあれば、それに合わせてどんどん動かしたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。臨機応変にね。あ、本文には書きませんでしたが、他の方達に目撃された時、四人はたぶん旅館の浴衣と半纏を着ていると思う……。

【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ

「大道芸人たち Artistas callejeros」を読む このブログで読む
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あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 〜 松江旅情(1)玉造温泉


「うわっ。こりゃ壮観だ」
稔は玉湯川の桜並木を見て叫んだ。四百本の桜が咲き乱れる様は壮観だ。夜はライトアップされる。
「きれいねぇ。やっぱり桜の時期の日本は外せないわね」
蝶子がうっとりする。

「この桜、すごいですね。花がこんなにぎっしりと詰まっている」
「なるほどな。日本の桜を見ろと、行ったヤツが口を揃える理由がわかったよ」
ガイジン二人もすっかり感心している。

 玉造温泉は、松江からJR山陰本線でおよそ十分のところにある温泉街だ。『枕草子』にも三名泉としてその名が登場し、歴史と格式がある。規模は大きいが、歓楽色がないうえ、料金設定も高めで数寄屋造りの高級旅館が多い。そのため、観光客ずれした場所を嫌うヴィルやレネを連れてくるにはもってこいだった。街のあちこちに、出雲の神話をモチーフにしたオブジェが建っている。

「まずは、今夜のお宿に行きましょうよ。温泉に浸かってゆっくりとして、明日、松江の観光に行くことでいいわよね」
蝶子が言うと、稔が付け加えた。
「宴会を忘れんなよ」

 島根県松江市玉湯町にある「玉造温泉 湯之助の宿 長楽園」は、明治元年創業の老舗だが、創業した長谷川家は奈良時代からこの地に住み、江戸時代より松江藩から「湯之助」の官職を申しつかり玉造温泉の差配・管理をしていた由緒ある家柄だ。

 そもそも玉造温泉は、奈良時代に開かれた日本最古の歴史を持つ温泉の一つで、大国主命とともに国造りをした少彦名命が発見したとの言い伝えもある。

「『ひとたび濯げば形容端正しく、再び浴すれば万の病ここぞとに除こる』って、出雲風土記に書いてあるんだって」
説明書きを読みながら、蝶子が頷く。
「なんですか、それは?」
もともと日本語はまったくわからないレネが首を傾げる。稔が砕いて英訳した。
「一回入ると美形になって、二回入ると病が治るってことじゃないか」
「僕も?」
レネが言うと、ヴィルは鼻で笑った。
「温泉に入っただけで、姿形が変わるわけないだろう」

「とにかく! ここに来たのは混浴ができるからなのよ」
蝶子が言うと、ガイジン二人は目を剥いた。
「こ、混浴? で、でも、日本のオンセンって……あの、その、すっぽんぽんで……」
レネが大いに狼狽えて、ヴィルは無表情ながらもムッとしたのがわかった。

「大丈夫だよ。混浴って言う場合は、本当の裸じゃないんだ」
稔がパンフレットを見せた。たしかに女性モデルが薄いバスタオルのようなものを巻いて温泉に入っている。
「前に日本に来た時、私だけ別のお風呂だったでしょう? 今度は絶対混浴温泉に行こうと思っていたの」
蝶子はすっかり乗り氣だった。一方、ヴィルはパンフレットに掲載された料理に興味を示した。
「ここでも、例の宴会か?」

 稔は大きく頷いた。
「そ。日本で旅館に泊まるとなると、必ず宴会食なんだ」
「日本酒、楽しみですねぇ」
レネも目を細める。

食事は、掘りごたつの座敷会場でだったが、自分たちの席に案内される時に他の客たちが既に食事をしている横を通った。

「お、おい。なんか可愛い三人組がいるぞ」
稔が蝶子を肘でつついた。見ると、二人ロングの長髪、一人はおかっぱの少女で、三人ともよく似ているので姉妹のようだ。稔は、一番年若いと思われるおかっぱの少女を見てにやけている。蝶子は肩をすくめた。
「あなたって、本当に結城さんと女の子の好みがダブっているわよね」
「いいじゃないか。結城と違って、こっちは見ているだけで実害はないぞ」
「まあね。あの子、未成年みたいだから、実害があっちゃ困るわよ」
「あの子たちも混浴温泉に行くのかなあ。断然楽しみになってきたぞ」

 蝶子は、ため息をついて通り過ぎた。案内された席の反対側には、やはり高校生と思われる三人組がいた。こちらは女の子ひとりと、男の子二人。そのうちの一人が元氣よくその場をしきっている。もう一人の男の子は、寡黙だ。どこか違和感があって、蝶子がもう一度よくその少年を見た。そして納得した。瞳が片方だけ碧かったのだ。へえ。珍しいもの見ちゃった。蝶子は心の中でつぶやいた。

 もっとも日本人二人、外国人二人の蝶子たちは、やはり周りの注目の的だった。特に隣の高校生たちが大人しくジュースを飲んでいるのに、次々と日本酒をオーダーしてよく飲むArtistas callejerosは、かなり浮いていたに違いない。

 島根和牛のステーキ、桜鯛や花烏賊のお造り、筍の土佐煮、白魚と穴子の桜花揚げ、その他たくさんの海の幸と山の幸を桜を多用した春らしい会席料理。
「日本の料理って、味だけでなくて、見た目も楽しむものなんですよね」
レネが言い、四人は頷きながらしみじみと味わう。
「これが終わったら、露天だ、露天」
やけにハイテンションな稔に蝶子は白い目を向ける。
「こんなに飲んで、お風呂で倒れないでよ」 

 水曜日の朝、蝶子は一人で朝風呂に向かった。昨夜、四人で露天風呂に来たが、いたのは彼らだけだった。
「ちぇ。せっかく日本の露天に来て、見れたのはお蝶だけかよ」
ブツブツ言っていた稔のことを思い出す、おかしくてしかたない。

 ふと見ると、昨日の三人組の女性が、仲良く並んで女湯に浸かっていた。あらぁ、いるじゃない。もっともここじゃ、ヤスが見るチャンスは皆無だったわね。

 蝶子は、巻物を身につけて、朝の露天風呂に向かった。冷たい風が氣持ちいい。ほのかに桜の香りのただよう春の露天で、今日のこれからのことを考えた。朝食の後、チェックアウトして松江に向かうのよね。美味しいものもたくさんあるし、観たいものもいろいろ。もっとも、ガイジン軍団は、あまり動きたがらないから、どうやって移動させるかがポイントよね。
 
 楽しい一日が始まった。

(初出:2015年3月 書き下ろし)

この記事には追記があります。下のRead moreボタンで開閉します。

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【参考】
「玉造温泉 湯之助の宿 長楽園」のサイトです。行きたいけど、遠い……。
http://www.choraku.co.jp/onsen/ryugu.html
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Category : 小説・松江旅情
Tag : 小説 連載小説 コラボ オリキャラのオフ会 地名系お題

Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(2)城のほとり

「オリキャラのオフ会 in 松江」第二弾です。四月八日の朝、四人は、旅館の朝ご飯を堪能した後に電車に乗って松江の街にやってきました。

あ、参加者の方への業務連絡です。玉造温泉の混浴が人氣でしたので、夜に千手院で夜桜を堪能した後に、また玉造温泉に戻って再び四人を月見沐浴させようと思います。ご希望の方は、どうぞ乱入してきてくださいね。また、私が書いていない時間、スポットでの目撃談も、どうぞご自由に書いてくださいませ。


オリキャラのオフ会
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ちなみに、Artistas callejerosの四人組の外見描写、私の書いている中にはほとんど出てきません。目の色などを細かく知りたい方はこちらをどうぞ。視覚で知りたい方は下のユズキさんの描いてくださったイラストで。髪型など、完璧に再現してくださっていますので。服装も、このままということにしちゃいます。蝶子だけは、これに白っぽいスプリングコートを上に着ているかな。
「大道芸人たち」 by ユズキさん
このイラストの著作権はユズキさんにあります。ユズキさんの許可のない使用は固くお断りします。

【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ

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あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 〜 松江旅情(2)城のほとり


「ちょっと、ブランベック。なに食べ歩きしているのよ」
蝶子は露骨に嫌な顔をした。レネは、たった今入ったばかりの和菓子店「石倉六角堂」で買いあさった和菓子のうち、どら焼きを開けて食べていた。

「お茶もなしによくそんな甘いものが食えるな」
稔も呆れている。ヴィルも今回は助け舟を出すつもりはないらしい。なんせ四人はつい今しがた、併設された簡易喫茶で練りきりと緑茶を堪能してきたばかりなのだ。

「こんなにおいしい和菓子は、僕たちの所では食べられないじゃないですか。放っておくと固くなっちゃうし、少しでもたくさん食べておかないと」
レネはふくれた。

「そんな姿をみたら、百年の恋も醒めちゃうわよ」
「ほっておいてください。見られて困るような人がここにいるわけないんですから」

 レネが、一つめを食べ終わって、さらに袋を探っている所を稔がつついた。
「おい。今の言葉、後悔すんなよ。ほらっ」

 レネは顔を上げて、稔が顎で示している方向を見て、ぽかんとした。
「……スズランの君……」

 蝶子とヴィルも、レネの視線を追った。道の向こう側、お城の堀に近い方向を、二人の外国人が歩いていた。一人は長い金髪に濃紺のスーツを身に着けた背の高い男性で、もう一人は桜色に薔薇の柄のフリルの多いドレスを着ている若い女性だった。

 その女性をもっとよく見て、ヴィルと蝶子にもレネが誰の事を言っているのかわかった。真珠色の長い髪に赤と青のオッドアイ。ロンドンで、レネがぽーっとなったという女性だろう。レネは彼女にもらったレースのハンカチを未だに大切にしているのだが、そのハンカチから薫っていたのが『リリー・オブ・ザ・バレー』の香水だった。

「ほらみろ。買い食いなんてするもんじゃないだろう」
稔が言うと、レネは恥ずかしげに出しかけていた二つ目のどら焼きを袋にしまった。

「どうした?」
ヴィルが、蝶子に訊いた。蝶子は、やはり少し驚いた様子で、女性の連れの方を見ていた。
「あの男性……」
「知ってんのか?」
稔が訊くと蝶子は頷いた。
「大英博物館で逢った人よ。へえ。『スズランの君』と知り合いだったのね」
「そういえば」と稔は首を傾げた。「あの時のサツ野郎と一緒じゃないんだな……」

「ロンドンで逢った人たちと、日本で再会か……。不思議なめぐり合わせだな」
ヴィルが言うと、レネが息巻いた。
「運命ですよ!」

 蝶子と稔は吹き出した。それから稔が訂正した。
「『縁』だろ。島根県は『縁の国』だからな」

 四人は、道路の向こうの二人に会釈をして通り過ぎた。ところで、あの人は私のことを憶えているのかしら? 蝶子はちらりと考えた。

* * *

 
 松江城の観光を始める前に、まず松江歴史館から観ることにした。武家屋敷のような建物で、松江城とその堀川の景色ともよくマッチしている。もともとは四家の重臣の屋敷のあった場所で、その中の松江藩家老朝日家長屋の一部が今も残り、松江市指定文化財となっている。歴史館にはこの建物や復元された木幡家茶室や日本庭園と企画展示室が上手に組み合わされている。

 展示室では、松江藩の概要、産業、城下町の暮らし、それに水とともにある松江の暮らしなどをコーナーごとに解説し、模型、絵巻風のパネルや鎧兜、陶器、その他の展示で日本語が読めないものも飽きずに見学できるようになっていた。

 ひと通り見学を終えて、出口に向かう途中、売店の側でレネが足を止めた。喫茶店があったのだ。蝶子が辛辣なひと言を言おうとした正にその時、横をドイツ語で話しながら二人組が通り過ぎた。

「先生。ついさっき和菓子屋で食べたばかりじゃないですか。いちいち和菓子を見る度に食べようとなさらないでください!」
「失敬なことをいうね、フラウ・ヤオトメ。この前に通った、少なくとも二軒の和菓子屋では立ち止まらなかったぞ」

 蝶子は吹き出した。首を傾げるレネと稔にヴィルが素早く通訳した。それを耳にして、二人組は立ち止まった。一人は太い眉に銀のラウンド髭を蓄え、細かいチェック柄のツイードの上着を着た厳格そうな外国人で、もう一人は首までの茶色く染めた髪を外側にカールさせ、臙脂色のスプリングコートを着た日本人女性。

「この街で、ドイツ語のわかる人に逢うとは思わなかったな」
と、紳士は握手の手を伸ばし、スイスに住むクリストフ・ヒルシュベルガー教授であると自己紹介をして、同行しているのが秘書のヤオトメ・ユウであると言った。

「お知り合いになれて光栄です。ヴィルフリード・エッシェンドルフです」
ヴィルは、手を伸ばし礼儀正しく挨拶をした後、続けて残りの三人を紹介した。

「せっかくですから、ここの喫茶店でお茶でもしませんか」
教授がそう言ったので、蝶子はまた笑いそうになったが、必死で堪えて喫茶店『きはる』に入った。日があたり暖かいので屋外の濡れ縁で、和菓子と緑茶を楽しんだ。

「この後は、どこに行かれるのですか?」
ユウが訊いた。蝶子は日本語で答えた。
「ここ以外は、まだ、和菓子屋にしか入っていないので、これからちゃんと観光する予定なんです。まずはお城に行って天守閣に登りたいなと思っています。それから、できれば堀川遊覧船にも乗りたいですし、武家屋敷や小泉八雲記念館にも行きたいなと思っているんですが、あまりたくさん観光したがらないガイジン軍団がいるんで、計画通りにいくかどうか……ユウさんは?」

「ええ、和菓子屋めぐりはそこそこにして、イングリッシュガーデンにいくか、神魂神社への参詣ついでに『風土記の丘』や黄泉比良坂に行くのもいいかなと」
「氣になる所、たくさんありますよね」
「ええ。でも、外国人連れだと……何に騒いでいるのかわかってもらえない部分もありますよね」
「確かに」
妙な所で意氣投合してしまった。

「でも、外せないのは宍道湖の夕陽を見て、千手院でしだれ桜を見ることでしょうか」
ユウが言うと、稔が頷いた。
「確かにそれは見逃せないな。じゃあ、後でまた逢うかもしれないな」

 和菓子も食べて、レネとヒルシュベルガー教授も満足したようなので、六人は松江歴史館を出て再会を約束して別れた。

「さあ、とにかくお城に行きましょう」
立派な門を通って、小高い丘を登っていく。
「やっと入口か。天守閣に行くのもさらに登るんだよな。覚悟しろよ」
稔が言う。

「あ、あそこでお団子を売っていますよ!」
レネの叫びを、三人は無視することにした。

(初出:2015年3月 書き下ろし)

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【参考】
松江歴史館
http://www.matsu-reki.jp
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Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(3)堀川めぐり

「オリキャラのオフ会 in 松江」第三弾です。四月八日の昼、四人は、まだお城付近にいます。本当の松江の桜は、8日にはもう散っているかもしれませんが、こちらではちょうど満開ということで。
オリキャラのオフ会
このアイコンはご自由にお使いください。

TOM-Fさんの所のセシルとアーサー、それに彼らの目撃情報によると彩洋さんちのハリポタトリオ、けいさんのところの「半にゃライダー」コンビも目撃されている界隈、まだまだ目撃情報が続きます。すみません、ストーリーもへったくれもなく、食べて飲んで見学して騒いでいるだけです。なお、私以外誰も知らないイタリア系アメリカ人キャラが一人登場しています。「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」の終わった後に連載する中編の主人公です。知らなくても心配なさらずにスルーしてください。

【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ

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あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 〜 松江旅情(3)堀川めぐり


「参りましたね」
レネは、辺りを見回した。ヴィルの表情は変わっていないが、困っているのは彼も同じだ。よりにもよって、なぜ日本人二人とはぐれてしまったのか。しかもこんなジャパニーズな場所で。

 松江城の見学が終わってから、四人は一緒に塩見縄手と呼ばれる通りまではやってきたのだ。そして、武家屋敷の中を一緒に見学することにした。松江藩士たちが住んだ屋敷で、二百七十年前のものがとても良い状態保存されているのでショーグンの時代にタイムスリップしたかのようだとレネは大喜びだった。

 それだけなら良かったのだが、ついうっかり「お休み処」に心惹かれて、庭を見ている蝶子や稔と離れてしまったのがいけなかったらしい。レネを引き止めにきたヴィルも巻き添えで迷子になってしまった。

「そんな遠くには行っていないはずだ。次にはコイズミなんとかに行くと言っていたから、そこを探せばいいだけだろう」
ヴィルは通りを見回した。

 問題は、二人とも日本語が全く話せないということだった。そして、日本人たちというのは、外国人が簡易な英語で話しかけると、どういうわけだか、一様に意味不明な笑みを見せて逃げていってしまうという謎もあった。

「ああ、日本人じゃない人がいましたよ!」
レネが嬉しそうに叫んだ。ヴィルが振り向くと、門の前に、褐色の肌を持った女性が立っていた。どうやら彼女は写真を撮っている別の女性たちを待っているようだった。

「ちょっとお伺いしていいですか」
レネが近づくと、彼女は振り向いた。そしてはっきりとしたアメリカ英語で答えた。
「どうぞ」

「どうやら俺たちは仲間の日本人たちとはぐれてしまったようなんだが、コイズミなんとかにはどうやったらいけるんだろうか」
ヴィルが訊いた。

 彼女は、肩をすくめてから、庭をみている二人の女性のうちの一人に英語で声を掛けた。
「ミホ! コイズミなんとかって知っている?」

 写真を撮っていた白人女性に一声かけてから、日本人女性がこちらに歩いてきた。
「ええ、すぐ側よ。このあと、私たちもそこへ行こうかと思っていた所だわ。でも、こちらは裏門だから、ここで探しても見つからないわよ」

 ヴィルとレネは安心して頷いた。アメリカ英語だが、話の通じる女性がいたのはありがたい。
「すまないが、連れて行ってくれるとありがたい。俺はヴィル、こっちはレネだ」
「よろしく。私は美穂、こちらはキャシーです。それから、あそこで写真を撮っているのは……。ジョルジア! そろそろ行くわよ。じゃ、行きましょうか。ところで、その足元の猫は、あなたの?」

 そう言われて、足下を見ると、茶虎の仔猫がじっとこちらを見上げていた。見上げているというよりは、睨んでいると言った方がいいかもしれない。一度も見たことのない猫だった。
「いや、僕たちの猫じゃありません。なんか、おっかない猫ですね」
レネが狼狽えた。

Oresama

「そう、今日は、やけにたくさん猫がまとわりつく日なのよね。さっきも茶虎の仔猫にあったんだけれど、そっちはやけに可愛くて、しかも目の色が左右で違ったのよ」
キャシーが言うと、ヴィルとレネは顔を見合わせた。二人とも、今朝あった『スズランの君』と、昨日旅館で逢った高校生のことを思い浮かべていた。オッドアイの猫が、二人のオッドアイの人たちが偶然来ている街にいる? どんな確率で起こることなんだろう。

「それに、ニューヨークでも大人氣の『半にゃライダー』のロケ現場にも出くわしたの。本物のナオキを見られるなんて、日本に帰って来た甲斐があったわ」
美穂が嬉しそうに言った。『半にゃライダー』? どこかで聞いたような……。

「あっ。以前、バイトをしたあの番組!」
レネが叫んだが、ヴィルは、ため息をついた。
「ついさっき、お城でショーをやっていたじゃないか。あんたはどうせ団子屋しか見ていなかったんだろう」

「あ、あのショー、あなたたちもご覧になっていらしたんですか? ラッキーでしたよね。『やにゃれたらにゃり返す。あなたには500倍返しにゃ。それが私の流儀なんでにゃ』あの決め台詞を聞けたなんて」

 美穂がうっとりとするのに心動かされた様子は皆無で、ヴィルはキャシーに訊いた。
「あんたたちも、あのマスクを被った猫のファンか?」

 キャシーは肩をすくめた。
「よくわからないわ。ああいうのは子供のためのものだと思うんだけれど、日本人にとっては違うみたいね。ジョルジア、あなたはどう思う?」

 そう言って振り向くと、連れの女はまた遅れていた。写真を撮るのに夢中になっているらしい。
「ジョルジア! 今日くらいは仕事のことは、忘れなさいよ! 今度はあなたがはぐれるわよ」

 レネとヴィルは、急いでこちらに向かってくるその女をちらっと見た。黒いショートヘアに飾りのない白いTシャツ、ジーンズにGジャンという少年のような佇まいで、どうやらスッピンのようだ。だが意外と整った南欧系の顔立ちだ。「ごめんスクーザ 」と口にしたので、イタリア系なのだろう。

「イタリア語も話せるのか」
ヴィルがイタリア語に切り替えて訊くと、少し驚いたが首を振った。
「私はニューヨークで育ったの。相手の言っているイタリア語はわかるんだけれど、ちゃんとは話せないの。あなたたちの方が、私よりずっと上手だわ」
「だって、僕たちは、年の1/3くらいはイタリアにいるんですよ」
「そう」

 威張った顔つきの仔猫は、五人にしっかりついてきている。話が分かっているみたいに、時々、バカにしたようにこちらを眺めるのがおかしい。

「ああ! いたいた!」
「おい、お前ら、探したんだぞ!」
小泉八雲記念館のすぐ前にいた蝶子と稔が近づいてきた。

「すみません! つい、うっかり」
レネが謝ったが、その時には二人は、新しく増えた連れの方に興味を示していた。

「へえ。ニューヨークから来たんだ。女性三人で?」
「ううん。ここにいるミホの旦那も入れて四人で。この子たちはサンフランシスコでイタリア料理店を経営しているの。せっかくだからミホの故郷を見にこようってね。私と、ここにいるジョルジアは生まれてからずっとニューヨーク在住。この人は、私の勤めている食堂のお客さんで、フォトグラファーなのよ」
キャシーが簡単に説明した。稔は不思議そうに美穂を見た。
「旦那さんは?」

 彼女は肩をすくめた。
「なんだか旅の途中から、様子がおかしくて。具合が悪いのかと訊いてもなんでもないって言うし。なれない長時間旅行で疲れただけだから、三人で観光して来いって言われちゃったの。何度か電話を入れているんだけれど、急病ではないみたいなんで、少し休んでいれば治ると思うんたけれど」

「ジェットラグかしらね?」
蝶子が言って、「小泉八雲記念館」の入り口をくぐった。六人はそれに続いた。

 後に小泉八雲と名乗ることになったラフカディオ・ハーンはギリシャで生まれ、アイルランドやフランス、アメリカで暮らした後に、明治23年、日本へやってきて島根県の尋常中学校と師範学校の英語教師となった。そして、松江に住み小泉セツと結婚した。橋姫伝説などの怪異譚を知り、後に『怪談』をはじめとして、多くの日本の伝説や文化について海外に紹介する原点となった松江生活だが、実際には一年と三ヶ月ほどしかいなかったと言う。

「大雪と冬の寒さに堪えたんですって」
展示を見ながら蝶子が言うと、稔が頷いた。
「ここは山陰だからな。降るときはすごいんだろうな」
「春に来て正解でしたよね」
美穂も頷いた。どういうわけか足元の猫も頷いていた。

「私たちこれから堀川遊覧船に乗るんだけれど、よかったら一緒にどう?」
そう蝶子が訊くと、アメリカ組三人はすぐに頷いた。

松江城の堀川は3.7km、所要時間55分で城の周りを一周する遊覧船がめぐっている。すぐ近くにあった乗船場で七人は同じ舟に乗った。
「その猫もですかい?」
そう訊かれて足下を見ると、まだ茶虎の猫がそこにいた。「当然」という顔をされて、周りを見回してから「しかたないな」と抱え上げたのは稔だった。

 船頭はなかなかのエンターテーナーで、松江城や松江藩の歴史をよどみなく話し、さらには「松江夜曲」なる歌まで披露してくれた。もっともガイジン比率が高く、内容をわかっていたのは限られていたが。

 岸辺と松江城の桜が見事だった。春の陽が波立つ川に反射してキラキラしていた。泳いでいた魚がぴちゃんと跳ねると、仔猫はびくっとして、稔にしがみついた。

「なんだ、魚が怖いのか?」
そういうと、「失敬な」という目つきで睨んだ。稔は「しょうがないな」といって、猫の尻尾の付け根あたりをこすってやった。一瞬、きっと睨んだが、そのポジションからいっこうに動かない所を見ると、もっと撫でろという意味なのかもしれない。周りの全員が桜や松江城を堪能しているのに、どうして俺だけこの猫の面倒を看ているんだろうと、稔は首を傾げた。

 一周して同じ発着所で遊覧船を降りた。代わりに乗り込んできたのは、三人組の日本人だった。男性が二人と女性が一人。一番前が、ふわりとした栗色の髪に大きい瞳が印象的な美青年。その後ろから長い髪を後ろで縛っている筋肉質で背の高い女性が乗り込んだ。一番後ろの黒髪で鼻筋が通り切れ長の目の青年は、ハンサムと言っても過言ではないのだが、どういうわけか頼りない印象を与えた。彼は城の桜を撮影していたが、女性に「玉城、船頭さんが待っているんだから、さっさと乗れ」と叱られていた。

 稔にくっついていた仔猫は、すぐにその青年の所へ行って、批難のまなざしで見上げた。稔と背の高い女性の二人は、それに同時に氣がついて、顔を見合わせて笑い出した。船の中で桜を見ていた美形の青年と、カメラをしまって舟に乗り込もうとしていた玉城と呼ばれた青年は、何があったのかわからずにぽかんとして、女性と稔の顔を交互に見た。それから、玉城青年が足元の茶虎の仔猫に睨まれていることに氣がつき「ひゃっ」と言った。それで、こんどはその場にいた全員が笑った。

 それから仔猫はすっと稔の横に戻ってきた。会釈を交わすと、三人組をのせた遊覧船は、岸を離れていった。

 そのまま七人で昼食をとることにした。発着所の隣に『松江・堀川地ビール館』という建物があり、最高級の島根和牛を焼き肉で食べることができる。七人という大所帯なので、コースの他にいろいろな肉や野菜を少しずつ頼んで、地ビールも堪能した。

「なんだ、このビール。やけに美味いな」
ヴィルが首を傾げると、稔と蝶子はガッツポーズをした。
「インターナショナル・ビア・コンペティションで何度も入賞しているんですって。ドイツのビールにも負けていないでしょう?」
レネとヴィルは頷いた。キャシーはいける口のようで、陽氣に騒いでいた。一方で、ジョルジアはビールではなく島根ワインを頼み、静かに食べていた。

 島根和牛の美味しさは、格別だ。ヨーロッパの煮込まないと食べられないような大して美味しくない牛肉に慣れているArtistas callejerosの四人も、それから量だけはあるが大味なアメリカンビーフに慣れているアメリカチームも、焼き肉を食べるときはしばし無口になった。

「ああ、日本の食事って、おいしいですよね」
霜降り和牛と一緒に食べているお替わり自由のご飯を噛み締めるように、美穂が言った。

「カリフォルニアなら和食なんて珍しくもないかしら?」
蝶子が訊くと、美穂は首を振った。
「日本料理店は多いですけれど、私はほとんど行かないんです。なんせ自分自身がイタリア料理店で働いているので」

「じゃ、家で和食ってこともないんですね」
レネが訊いた。美穂は首を振った。
「和食って手間がかかるでしょう。仕事以外ではあまり調理に時間をかける氣にならないんで、食べたくて死んじゃうって時じゃないと、なかなかね」

「さっき懐石料理とかいう料理のパンフレット見せてもらったけれど、手が込んでいるんだものねぇ。あれを仕事のあとに作るなんて、私も嫌だな」
キャシーが言った。稔も蝶子も、懐石料理を家庭で作るわけないだろうと思ったが、家庭料理との違いについての説明が面倒だったのでスルーした。

「みなさんは、これからどうするんですか?」
美穂は稔に訊いた。

「松江フォーゲルパークに行こうと思ったんだけれど、ガイジンたちがもう動きたくないって言うんで、諦めて夕方までここで酒でも飲んでいようかと思っているんだ。宍道湖の夕陽を見た後、千手院のしだれ桜を見て、それから玉造温泉に戻るよ」
「えっ。玉造温泉にお泊まりなんですか? 私たち『長楽園』に泊るんですが」
「へえ。偶然だな、同じ宿だ。じゃ、また逢えるな」

「ええ。じゃあ、私たちは『八重垣神社』へ行ってきますから、後でまたお逢いしましょう」
美穂と、キャシー、そしてジョルジアは手を振って、出て行った。

 四人はそのまま地ビールとつまみで本日の宴会の第一弾を始めた。茶虎の仔猫は「しかたないな」という顔をして、大騒ぎする四人を片目で見てから丸まった。

(初出:2015年4月 書き下ろし)

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今回でてきた名所に興味を持たれた方は、こちらへどうぞ。
http://www.matsue-tourism.or.jp/buke/
松江市指定文化財 武家屋敷

http://www.matsue-tourism.or.jp/yakumo/
小泉八雲記念館

https://www.ichibata.co.jp/jibeer/index.html
松江・堀川地ビール館

内容もないのにダラダラと連載していますが、次回、フィナーレです。やっと(笑)
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Category : 小説・松江旅情
Tag : 小説 連載小説 コラボ オリキャラのオフ会 地名系お題

Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち 番外編 - 松江旅情(4)さくら咲く宵に

「オリキャラのオフ会 in 松江」第四弾です。これでおしまいです。長くても、無理矢理終わらせるために、一つにぶち込みました! (すみません)
オリキャラのオフ会
このアイコンはご自由にお使いください。

アメリカ組は八重垣神社に行き、Artistas callejerosは、昼から夕方まで宴会をしていました。そして、夕方。四人は宍道湖で夕陽を眺め、そして玉造温泉で打ち上げします。なお、私が書くのはここまでですので、話を上手く納める方、さらに混乱させたい方はどうぞご自由に!

【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ

「大道芸人たち Artistas callejeros」を読む このブログで読む
縦書きPDF置き場「scribo ergo sum anex」へ行く 縦書きPDFで読む(別館に置いてあります)
あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編
 ~ 松江旅情(4)さくら咲く宵に


「何やるの?」
キャシーは、八重垣神社の参詣がすんだ後に、奥の院にある「鏡の池」の前で、美穂に問いかけた。そこには、四人の女性がいて、池の水を覗き込んでいた。正確には、池に浮かべた紫色の紙のようなものとその上にのせられた硬貨を覗いていたのだった。

「で?」
「ほら、見て。さっき買ってきたこの占い用の和紙の上にね、ああやって硬貨を載せて浮かべるの。すぐ近くに沈んだ場合は身近な所に結婚に至るご縁があって、遠くに沈んだ時は遠方に、それにすぐに沈んだ場合は、すぐに……」
「でも、ご縁もヘったくれもあたしたち……」

「わかっているわよ。私たちは既婚だけれど」
美穂はそういってから、黙って写真を撮るのに夢中になっているジョルジアの方を見た。ああ、なるほど。キャシーはそういう顔をしたが、美穂がジョルジアを誘いにいったので、池を眺めている四人の女性の方を見た。

 一人の女性が格別目立つ。顔は見えていないが、ボブカットの髪の毛はまるで真珠のように白く輝いていた。その横に二人の女性がいて、あれこれ話していたが待つのに疲れたのか、あたりを散策に行ってしまった。屈んでコインを見ていた女性は、顔を上げて白く輝くボブカットの女性の方を見た。その女性は、何かを考えているかのように、奥の院の緑深い樹々の方を見つめていた。風が通って髪の毛がサラサラと泳いでいた。かがんでいる女性は、深いため息を一つつくと、決心したかのように人差し指を伸ばしてコインをつついた。

「あ」
キャシーが言うと、二人の女性は同時にこちらを見たかと思うと、キャシーの視線を追って沈んでいくコインと、まだ濡れている女性の人差し指に視線を合わせた。

「だからね、ジョルジア、この和紙にコインを載せてね……」
ジョルジアを連れて、美穂がやってくると同時に、他の二人も池の周りに戻ってきた。

「あ。ついに沈んだの?」
そういうと、屈んでいた女性は首を振った。
「もう待っていられないもの。神様の手伝いしちゃった」
そう言って指を見せた。「やだあ」二人の女性の笑い声が響いた。

「お待ちどうさま。さ、次に行こう。ほら、敷香も」
そう言って、屈んでいた女性は、先頭に立って歩き出した。そして、キャシーの横を通る時に、少し切ない微笑みを見せてから会釈して通り過ぎた。 

「キャシー、どうしたの?」
美穂が訊くと、キャシーはぽつりと答えた。
「あなたたちの神様って、容赦なく真実を語るんだ……」
「え?」

 キャシーは、ジョルジアの方に向き直った。
「やってみる?」
ジョルジアは、首を振った。
「そんなことをする必要はないわ。神様に訊かなくたって知っているもの」
そういって、カメラを持って去っていってしまった。

 美穂は、紫の紙を持ったまま、困って立っていたが「もったいないもの」と言って自分の財布から五円玉を取り出すとそっと紙の上に載せて水面に浮かせた。どういうわけだか、五円玉と紙は数秒も経たないうちに、手からほとんど離れない場所に沈んでしまった。

「わかりきったことをしなくてもいいのに」
キャシーが肩をすくめて、ジョルジアを追い、美穂も急いでそれに続いた。

* * *


 夕方、Artistas callejerosの四人と茶虎の感じの悪い仔猫は、宍道湖夕日スポット(とるぱ)にいた。
「夕陽を見るためだけに、こんななんにもない所に来たのか?」
ヴィルは、例によって身も蓋もないことをいうが、蝶子と稔は無視した。レネは、既にセンチな心持ちになっている。『スズランの君』に貰ったハンカチを取り出して、泣く準備も完了だ。

 直に、人びとが集まってきた。すぐ近くに、五十代くらいのとても品のいい金髪の女性が立って、その後ろからやってきたもっと年上の、しかし女性とよく似た風貌の男性が彼女のためにハンカチを広げて座るように促した。小声の静かな会話は東欧系の言葉のように聞こえた。それから女性がふざけてフランス語で「レマン湖に行ったときのことを思い出すわ」と言ったので。レネがびくっと振り向いた。

「あら、フランスの方?」
婦人は優しくレネに笑いかけた。
「はい。ご旅行ですか」
「ええ、そうね。そうと言えないこともないのだけれど……」
困ったように、連れの男性を見た。

「どうやら、紛れ込んでしまったようだが、あたふたしてもしかたないので、美しいと言われる城の桜を見学してから、もともと突然現れたこの湖畔に来てみたのだよ」

 豊かな人生経験があって、たいがいのことでは慌てたりしない人のようだと、レネは感じた。会話の内容を英語に訳して三人に話した。すると、次からは二人も英語で話しだした。見事な発音で、二人ともひとかどの人物に違いないと思わされた。

「夜桜でしたら、私たちこの後、タクシーで千手院という所へ行くつもりなんですよ。よかったらご一緒しませんか。その後、私たちは玉造温泉へ行く予定ですが、その前にまたここへお連れしますけれど」
蝶子が言うと、二人は顔を見合わせてから頷いた。

「私は蝶子、こちらはレネ、稔、そしてヴィルです。お近づきになれて嬉しいです」
蝶子が手を伸ばすと、紳士は古風にその手にそっと口づけをした。
「私はカロル・ルジツキー、これは妹のへレナです。どうぞよろしく」

「ルジツキー?」
ヴィルが少し驚いた顔をしたので、ルジツキー氏は少しだけ笑って「ご存知ですかな」と言った。
「父が取引をしていた有名な財閥の名前と一緒だったので」
「ほう、失礼だが、お名前は?」
「エッシェンドルフといいます」

「というと、ミュンヘンの?」
「はい。やはり、あのルジツキーさんなのですか?」
「どうだろうな。お父様の名前は、ルドルフ・フライヘル・フォン・エッシェンドルフではないだろう? おかしく響くかもしれないが、ルドルフとはただの知り合いではなく友人なのだよ。彼は典型的なバイエルン人でね、非常にドイツ的なものと徹底的に反ドイツ的なものを同時に持っている。その分、我々の間にも傍目には理解できないであろう強い愛憎がある」
「……。六代前はルドルフでした。彼は十九世紀の生まれです」
「そうか。我が家もエッシェンドルフ家も、長く安泰のようで何よりだ」

 他の三人は、ただ黙って何も聴かなかったことにした。

 宍道湖はオレンジに染まっていた。嫁ヶ島のむこうに夕陽が静かに沈んでいく。湖面は静かに波立ち、平和な一日が暮れていく。あたり前のようでいて、全くあたり前ではない一日。平和であることの美しさに、彼らはしばし言葉を失った。

 千手院で、多くの人びとと一緒にしだれ桜、枝華桜を見た時にも彼らは同じように無口になった。樹齢250余年の花は、オレンジ色のライトアップで妖しくも美しく咲いている。その間に起こってきた、人間たちの傲慢さや愚かさに満ちた行動も、それぞれの市井の人びとの歓びや哀しみにも、何も言わず、ただ黙々と毎年この美しい花を咲かせ続けてきたのだろう。

「ねえ、ルドヴィコ。あの人たち、今朝来たお客さんだよ」
その声に振り向くと、「石倉六角堂」で接客してくれた女性がそこにいた。レネがあまりに大量に買うので、稔と蝶子が大笑いしたので憶えていたのだろう。

「毎度ありがとうございます。お氣に召していただけましたか」
一緒に立っていた外国人が、あまりにもよどみない日本語で話したので、四人はびっくりした。

「ええ。とても綺麗な練りきりで、それに繊細な味付けでした。あなたもお店の方なんですか?」
蝶子が訊くと彼は頷いた。
「ええ。今朝の練りきりは僕が作りました。和菓子職人なんです」
「ええっ。こちらで生まれ育ったんですか?」
「いいえ、ミラノの近くです。こちらに来て、修行を始めて、そろそろ十年になります」

「げっ。なのに、俺よりも流暢な日本語」
稔がブツブツと言った。英訳を聴いて、レネ、ヴィル、ルジツキー兄妹も驚いて頷いている。

「十年勉強なさったのですか。では、ニホンシュとやらを飲んだわけではないんですね」
ヘレナがそっと訊いた。
「?」

 流暢な日本語と日本酒とのつながりのわからないArtistas callejerosの四人とルドヴィコに、ルジツキー氏が説明した。
「先ほど、ここに来たばかりの時は、日本語がまるでわからなかったんですよ。でも、あるお店でニホンシュなるものを飲まされたら、二人とも突然日本語がわかって、話せるようになりましてね。残念ながら、それが醒めてしまったら、また全くわからなくなってしまったんだが」
「え? それは普通の日本酒ではないです。僕たち散々飲んでいますけれど、一度も日本語がわかったことないですよ」
レネは哀しそうに答えた。ルドヴィコもおかしそうに笑って肯定した。

「ここ島根は日本の神々の集まる、特別な場所なんです。建国神話にも深い関わりがありましてね。不思議な話もたくさん伝わっているのですよ。だから、そういう不思議な力のある日本酒があっても驚きませんよ。そうですよね、怜子さん?」
ルドヴィコに突然振られても、英語がわかっていない怜子は首を傾げた。彼が素早く日本語に訳したので、笑って頷いた。

「さてと、この二人は時空を迷子になっているらしいんだけれど、どこに連れて行ったら一番簡単に帰れそうかな。怜子さん、そういう場所のことを聞いたことがありますか」
稔がルジツキー兄妹を示しながら訊くと、怜子は少しだけ首を傾げた。
「さあ、どこでそういうことが起こっても不思議はないと思いますけれど」
「いま、一番行きたい所に行くのが一番じゃないですか? たぶんお二人が心惹かれる所が、そのスポットなんじゃないかな」
ルドヴィコが言葉を継いだ。 

 皆の注目を浴びて、兄妹は顔を見合わせた。それから、ヘレナが静かに言った。
「実は、こちらの四人が温泉に行くとおっしゃるのを聞いて、私も行ってみたいと思っていたんです」
「君もか。私も、できることならその温泉に行って、月見酒とやらを嗜んでみたいと思っていたのだよ」

「じゃ、決まりですね。行きましょうか。ところで、怜子さん、あなたたちもご一緒にどうですか? 私たち今日たくさんの方と知り合ったんですが、みなさん、玉造温泉に行くみたいなの。こんな不思議なことって、滅多にないでしょう?」
蝶子が言うと、ルドヴィコと怜子は顔を見合わせた。怜子が少し赤くなって下を見たけれど、ほぼ二人同時に頷いた。

「そうと決まったら、早速、移動しよう」
稔が言って、全員は笑いながら大型のタクシーに乗り込んだ。

* * *


 桜の散りかけている花びらが吹雪のように湯面を覆っている。月が煌煌と明るい。奥出雲の方では、突然の嵐になって、樋水川は急に水量を増したと聞く。だが、玉造温泉は絶好の好天のままだった。

「さっきの宴会飯、上手かったよな」
ぴちゃんと湯を跳ねさせながら、稔は腹をさすった。昨夜入ったときは、蝶子しかいなかった大露天風呂に、今日はずいぶん沢山の人びとがいる。

 特筆すべきは、もちろん昨日から目を付けていたかわいい姉妹三人組だが、その他にも、綺麗めの女性四人組もいる。びっくりしたのは、その中の一人がまたしてもオッドアイだったことだ。いったいどうなっているんだろう? それに、不思議な額飾りをした男もオッドアイだったな。

「あとでまた、宴会場に戻るんでしたっけ。また、別のご馳走がでるんでしょうか」
レネは、月を見るか、女性を見るか、それとも日本酒を飲むか、どれをしていいのかわからず混乱しながら言った。

「なぜ俺たちが余興を用意することになったんだ?」
ヴィルが当面の問題について話しだした。もちろん盃を傾ける速度は変わらない。

「一番ヒマそうに見えたのか、それとも大道芸人だから? なんか案はあるか?」
稔は、さりげなくカワイ子ちゃんたちを観察できるポジションをとりながら答えた。

「あ、あれはどうですか? このあいだ憶えさせられた、あの踊り」
レネが恐る恐る訊くと、稔は腕を組んだ。
「ハイヒールを履いて、ビヨンセの音楽で踊るやつか? ウケるのは間違いないけれど、あの時とメンバーが違うからな」

「今度のメンバーの男と言うと……満沢はバッチリだろうな。あれは役者だから」
「あの和菓子職人もイタリア人ですからね、ノリでは問題ないでしょう」

「高校生は?」
「『級長』って方は、ノリノリだろう。オッドアイの方は……」
「冷静に、何やっているんだと見つめられそうです」

「額飾りをつけた、オッドアイの男は?」
「風呂に入るのですら恥ずかしがっているのに、無理だろう」
ヴィルは盃を飲み干した。

「さっきの挙動不審男は?」
稔が言及しているのは、アメリカから来たという四人のうちの一人で、風呂の水に飛び込んだかと思ったら、急に妻にキスの雨を降らせた謎の男だ。いたたまれなくなった妻に引きずられるようにして風呂から出て行った。
「あれか。妻を人質に取れば何でもやりそうだな。だが踊りが上手そうには見えん」
ヴィルが切り捨てている。

「あそこの二人は?」
「猫に睨まれていた玉城とかいう男の方は、『義務だ』とか言えば、やってくれそうだ。美形の方は……」
「あの人にそんなことをやらせたら、僕たち、あの偉丈夫なお姐さんに首の骨折られそうです」

「それに、あのスイスの教授にも踊ってもらうんですか?」
レネがおずおずと訊く。稔は、手酌をしているヴィルから徳利を奪って、自分の盃を満たしながら言った。
「あのおっさんは、食べ物で釣れば、大抵のことはやりそうだ。もっとも見たいヤツがいるかな? それに、お前のご先祖様の友達は?」

 ヴィルは眉をしかめた。
「やめた方がいい。あの人は、怒らせると怖いと思う」

「『スズランの君』と同行しているブロンドの長髪の人は……」
レネが訊くと、稔とヴィルは顔を見合わせ、それから同時に言った。
「命が惜しい。他の余興にしよう」

 稔たちが、熱心に語り合っている時に、噂になっているとも知らず、セシルとアーサーは並んで大浴場の上にひろがる星空を見て語り合っていた。
「こんなにゆっくりとできるのは、本当に久しぶりだな、セシル」
「そうだな、アーサー。ここでもロンドンと同じ星が見えるんだな」

 だが、湯氣が立ちのぼり、空にもヴェールがかかったようになっていた。
「ち。少し、晴れるようにするか」
セシルは、右手をすっと浴場の中心に向かって動かした。はっとして、アーサーが言った。
「やめろ。忘れたのか、今日ここには『ドラゴン』のエアー・ポケットが多数開いているんだ、下手なことをすると空間が予測不能に歪むぞ!」
その二人の動きが、わずかに空間を歪めた。一瞬だけ湯氣が完全に晴れ、おかしな渦が露天風呂の中を走った。

 その少し前に、キャシーは、洋子と並んで日本酒を飲んでいた。先ほど八重垣神社の池に指でコインを沈めた女性だ。

 美穂が、夫ポールの奇妙な行動に真っ赤になって、彼を引きずるように浴場から連れ出して消えると、それを面白くなさそうに見ていたキャシーの隣にいつの間にか来て、日本酒をついでくれたのだ。
「私、あなたとはいい友達になれそうって予感がしたわ」
洋子はそれだけ言うと、盃を合わせた。キャシーはニヤッと笑って言った。
「さっき、私もそう思った」

 それから、日本酒を立て続けに何杯か煽ってすっかりほろ酔いになったキャシーは、「スタンド・バイ・ミー」を歌いながら、上機嫌で風呂の真ん中まで移動していた。両手を挙げて踊りながら。そこを、先ほどの渦が通り過ぎたのだ。

 キャシーを覆っていた布が、ハラッとほどけた。途端につんざくような叫びをあげて、彼女はお湯の中に座り込んだ。事態を察知した洋子が、速攻で近くに寄り、布を拾って彼女の周りに巻き付けてやった。一秒後には、再び湯氣が辺りを覆った。

 セシルの手を見ていたアーサーをはじめ、それぞれ誰かと話をしていた人物は、場面を見ていなかったが、二人だけ偶然キャシーの裸の上半身を見た人物がいた。一人が『級長』こと享志で、目撃した物をラッキーと判断していいのか、自分の良心に問い合わせていた。

 それと、ちょうど対角線上にいて、キャシーの見事な胸を目撃した稔は、享志を見てぐっと親指を突き出した。「超ラッキー」という意味だ。それを見とがめたキャシーがすぐにやってきて、稔は散々お湯を引っ掛けられたので、享志はこの幸運については、自分の胸三寸におさめておくべきだと若くして学んだ。

* * *


 俺様は、宴会場で風呂チームが戻るのを待っている。ここには、俺様をはじめとして四匹の猫がいる。猫と風呂は相いれないから、これでいいのだ。ニンゲンのくせに、風呂に入りたがらないヤツらも二人ばかりここにいる。イタリア系アメリカ人の女と、国籍不明の、額に飾りをした男だ。それぞれ事情があるのかもしれん。いずれにしても、他の彼奴らが食い散らかした残りのサシミや松葉ガニなどをほぐして俺様たちに食わせる係として使ってやっている。

 俺様以外の三匹は、どれも甘え上手だ。白いヘブンは控えめなヤツで、俺様にも挨拶をした。「空氣を読む」猫の典型だ。世界的に有名な『半にゃライダー』ナオキは、スターの傲慢さが全くない。他の二匹にサインをせがまれて、背中に醤油に浸した肉球を押し付けていたが、どうせ価値のわからぬニンゲンどもが、数日でシャンプーしてしまうに違いない。

 左右の目の色の違うマコトとやらは、やたらとアメリカ女に対して質問が多いが、ニンゲンが愚かでその言葉を理解していないことには氣がついていないらしい。だが、そのことを指摘してやるほど親切な俺様ではない。猫たるもの、ニンゲンが愚かであることは、自ら悟るべきなのだ。

 さて、風呂組も、順番に宴会場に戻ってきている。最初にやってきたのが、やたらと妻に謝ってばかりいるアメリカ人とその日本人妻。妻は「もう、恥ずかしかったんだから」とか言って批難しているが、夫の方は謝りながらも妙に嬉しそうだ。言動が破綻しているぞ。

 次にやってきたのは、ああ、この二人は彼奴らの中ではもっとも賢そうな兄妹。
「カロル、本当に楽しかったですね。これでいつ帰っても悔いはないわ」
「そうだな。いい経験だった」

 なかなか品のいい二人だ。この二人の所になら、飼われてやってもいいかなと少し思う。毎日美味しいものも食えそうだしな。と思ったら、突然二人は姿を消した。なんと。『根の道』が再び開きだしているらしい。

 それを見ていた、額に飾りをつけた男も、はっとしてその閉じかけている『根の道』に飛び込んだ。なんだ、こやつも帰るのか。だが、アメリカ女よ。お前はもう少しここにいて、俺様たちにその白身魚をほぐすがよい。そこのしじみもな。

「じゃあ、やっぱり『半にゃライダー』ごっこでもするか。ちょうど満沢とナオキもいるし」
「俺はまたあのアバンギャルドな髪型をしなくちゃいけないのか」
「テデスコ。サムライ役は格が上なんですよ。ところで、そうなると入浴シーンは?」
「お蝶が、まだ入っているだろ。お色氣シーンは、あいつの独断場だ」

蝶子 in お風呂 by ダメ子さん
このイラストの著作権はダメ子さんにあります。無断使用は固くお断りします。

「ああ~、いい湯だった」
「よし。続きでここで飲むぞ!」

 そう言って、ぞろぞろとうるさいヤツらが戻ってきた。ちっ。俺様たちの食べ放題はこれでおしまいか。うむ。早く次のオフ会をしてくれないかな。俺様としては、次回は北海道辺りで開催してもらいたいものだ。なんせ、うまい海の幸には事欠かないからな。

(初出:2015年4月 書き下ろし)

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http://www.kankou-matsue.jp/shinjiko_yuuhi/spot-01.html
宍道湖夕日スポット(とるぱ)

http://www.senjyuin.com/
尊照山 千手院

第一回、オリキャラのオフ会に参加くださった皆さん、それに一緒に楽しんでくださった皆さん、本当にありがとうございました! もしよかったら、またやりましょうね。

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