scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【定型詩】孤独な少年のためのクリスマスソネット

月刊・Stella ステルラ参加作品です。クリスマススペシャルでフォトレタッチ作品を作り、それだけでは何なので、以前から興味のあった定型詩に挑戦する事にしました。ドイツ語です。文法の間違い、ソネットとしての形式の間違いなどのご指摘がございましたら遠慮なくどうぞ。生まれてはじめて作ったソネットですので、突っ込みどころは満載かと思います。

ドイツ語の下には一応日本語の訳を載せました。単純に意味を知りたい方のためのものですので、定型詩にはなっていません。また、逐語訳ではありませんので、ご了承ください。

追記に私が理解しているソネットとその形式について、ならびにこの作品を書くに至った経緯など書いてあります。

月刊・Stella ステルラ 12月号参加 イラスト・定型詩 月刊・Stella ステルラ


Frohe Weihnachten


Weihnachts-Sonett für das einsam Kind(孤独な少年のためのクリスマスソネット)

Warte, Kleine, bis morgen acht,
werden wahr alle deine Träume.
In weiche Gefühl von Seide,
traum, mein Schatz, den Zirkus der Nacht.

Einsamkeit hat die große Macht.
Spielzeuge haben keine Werte.
Komm Christkind hier auf die Erde.
Gib uns Liebe in deiner Pracht.

Sieh die Kerzen auf den Kranz,
Tannenbaum steht grün und dicht.
Flocken der Schnee fallen vom Himmel.

Die Stern leuchten in goldenen Glanz.
Deine Leben wird voll mit Licht.
Hier ertönt Trompete von Engel.

明日の八時までお待ちなさい。
あなたの夢は叶うでしょう。
柔らかい絹に包まれて
我が子よ、夜のサーカスを夢みなさい。

孤独には大きな威力があって
おもちゃもあなたを救えなかったわね。
赤ちゃんとなったキリスト様、この地においでください、
あなたの素晴らしい愛を与えてください。

リースの上の蝋燭をごらんなさい。
樅の木も緑に繁って立っているわね。
天からは雪片が降りてくる。

星は黄金に輝くわ。
人生は光で満ちるのよ。
ここに天使のトラッペットが鳴り響く。

(初出:2012年11月 書き下ろし)

この記事には追記があります。下のRead moreボタンで開閉します。

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ソネット(Sonette)とは14行から成るヨーロッパの定型詩です。いろいろな形式があるのですが共通した決まりは14行である事と、行の最後に韻を踏む事です。

今回私が採用した韻の踏み方は「a-b-b-a, a-b-b-a, c-d-e, c-d-e」の形式です。
この他に、弱強五歩格といって弱く発音する音節と強く発音する音節を五回ずつ繰り返して一行を構成するというお約束が特に英語のソネットにはあるようですが、ドイツ語のソネットにはその決まりはあまりない模様。で、わからないので今回はすべての行を八音節で作ってみました。

いきなり定型詩をはじめた理由は、表現形式の勉強です。なぜソネットにしたかというと、ルールが厳しくて、わかりやすかったからです。ルールのない自由詩だと散文との違いが不明瞭で、本当に詩になっているのかが自分でも自信が持てないのです。

なぜ日本語の詩にしないのかというと、これだけたくさんの方が素敵な詩を書いているのに、今さら私がはじめる理由が見当たらないから。とくに自由詩は表現したいことがメインになりますが、それは小説でやっているので、いまから参入する氣持ちになれません。日本語では韻を踏んだ定型詩は難しいですし、古来の定型詩(短歌や俳句)も、何もスイスにいる私が自己流ではじめる事でもないと思いまして。

そういうわけでヨーロッパの言語での定型詩に挑戦する事にしました。今回ドイツ語で作ることにしたのは、以下の理由です。
(1)一番身近だから、文法上の不安が少ない(それでもかなり間違っている可能性あり)
(2)小説「貴婦人の十字架」の中で使いたいと思っている詩の言語がドイツ語またはラテン語なので
(3)今回書いたネタはStellaでおなじみの「夜のサーカス」に関連していて、その人たちの言語はドイツ語

こういう詩作をしばらく繰り返して、形式を守れるようにし、それから形式だけでなくて、いずれは中身も満足のいくものに出来たらいいなと思っています。

あと、内容ですが。あと一年後くらいに発表する「夜のサーカス」を読んでくださると、もう少し意味が通じるかと思います。とはいっても、韻を優先しましたので、中身についてはあまり突っ込まないでいただけると……。すみません。
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Tag : 定型詩 月刊・Stella

Posted by 八少女 夕

女子と女性は違うと思う

訪問させていただいた方の氣になる記事から、勝手に話を発展させてしまう記事シリーズ。

今回取り上げさせていただくのは、「女子力」について書かれたウゾさんの記事です。


「女子力」「女子会」。日本の流行言葉で、どうしても好きになれないのがこの「女子」という言い方。あ、「弁当男子」「草食男子」の「男子」も同じく。学生ぐらいならいいですが、三十歳や四十歳となった人間が嬉しそうに自称しているのは、 ちょっと。

近年の欧米では、礼儀として女性を大人に扱います。具体的に言うと以前は未婚女性につけていた「ミス」や「マドモワゼル」、「フロイライン」という敬称は、最近では避ける傾向があります。「マドモワゼル」や「フロイライン」は「小さな女性」つまり「女子」と同じですが「一人前でない」という意味合いが含まれています。要するに子供扱いする事は失礼という流れなのです。その分、「ミズ」「マダム」「フラウ(ダーメ)」と呼ばれるからには大人としての自覚と責任も要求されるわけです。18歳くらいから。ちょっとくらい失敗しても若くてかわいいから許されるのは十代のうちくらいでしょう。実際に。

一方、日本では反対に、若作りや子供っぽさを容認する年齢がどんどん上がってきていて、それが目を覆うような事になっていると思うのは私だけでしょうか。先日も「女子会をしたんだ」と言われて、そのメンバーの年齢が一番下で三十代、上は五十歳だったと知り、おもわず「それを女子会というのってどうかしら」と言ったら、「今の日本ではそれは普通なのだ」と言われてしまいました。

オバさんになれとはいいません。欧米の真似をしろと言いたいわけでもありません。しかしねぇ。実年齢とそこまで乖離した存在を装って、何がしたいのかという事を考えるべきだと思うのですよ。男を捕まえたい? それとも一人前でないと卑下する事で、本来の年齢では許されないことを許して欲しい? 四十歳の人間が「私って、実年齢より若く見えるっていうかあ」などと言って十代と同じつもりになっているのは恥ずかしいを超えて痛々しいと思うのです。

「そういう意味ではない、女子というのは単純に女と同じ意味だ」とおっしゃる方もいます。お言葉ですが「女子」と「女性」は同じではありません。「女性だけの食事会」と「女子会」も違います。違うからわざわざ言い換えているわけでしょう。もしそれが同じと言い張るなら「メスのエサ会」だって同じではないですか。

「女子力」という言葉はさらに意味不明です。なんの力? 「女性としての魅力」ではないですよね。実体がなくて、流行だけで動いている言葉。こういう言葉を多用する事には抵抗があります。


そして 最近よく見かける言葉 女子力って何?????
初め見た時は 女子の力???? 筋肉質の スポーツ大好きの女性のことかと 思った…
其の後 どうも 気遣いの出来る 女性らしいとされる事柄が そつなく出来る女性の事らしいと
見当をつけているのだが…

百鬼夜行に遅刻しました - ツノゼミ 、君は 何がしたいのだ

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Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち (34)バルセロナ、計画

ほかの三人は、例によってバルセロナにおります。カルちゃんのお屋敷ですね。新しい登場人物の名前が出てきていますが、この方の登場は第二部になります。

あらすじと登場人物
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大道芸人たち Artistas callejeros
(34)バルセロナ、計画



「ああ、イライラする!」
稔は、バルセロナのカルロスの館の裏手の豚小屋で叫んでいた。

 昨夜、我慢できなくなって『外泊』に出かけた。好みの大人しめでかわいい金髪と一晩を過ごしたが、イライラはまったく解消されなかった。秋が迫ってくる。その切ない光に、蝶子もレネも影響されている。

「なんでブラン・ベックの野郎ばかり、めそめそ泣いてんだよ」
レネはリルケをフランスなまりのドイツ語で暗唱しながら、蝶子の心を慮って泣いていた。

 蝶子はまったく泣かなかった。寂しいとも辛いとも言わなかった。ヴィルの事を口にすらしなかった。そして、いつものように冷静に仕事に励んだ。この七ヶ月間ずっとだった。冗談をいい、酒を飲み、新しい服を買った。突然、脚を強調するような挑発的な服をまとい、それでいて男たちが近づいてくると強烈な拒否をした。ロンダに行った時には、プエルタ・ヌオボの上でしばらく立ち止まっていたのだが、口笛を吹いたマッチョな男にケンカを売ったので、稔とレネは慌てた。

 やがて、稔とレネは蝶子が精神不安定になるのは、ヴィルとの思い出のある場所に行ったときだと氣がついたので、夏の始まりに多数決を利用して強引にバルセロナに連行した。バルセロナではカルロスやイネスをはじめとする館の連中がなにかと面倒を見るので、旅先のような危険な真似はしなくなった。だが、時おり心がこの場を離れている。スペインの乾燥した大地では、広がる秋の訪れを身に纏った猛禽が、飽きずに飛んでいる事があった。そんな夕暮れには蝶子は一人でいつまでもフルートを吹いていた。

「泣けない女って、だから嫌だ!」
稔は、自分の中の苦しさを言葉にまとめて豚に投げつけた。
「テデスコに逢いたいと素直に言えよ。寂しいと俺たちの前で泣けよ。頑固なトカゲ女!」

 稔は、カルロスが一人で書斎にいるときを見計らって、二人に見つからないように入っていった。カルロスは稔の様子を察して、書斎の鍵を掛けた。稔は、カルロスの前で土下座した。
「頼む、ギョロ目。無力な俺に力を貸してくれ」

 カルロスは、サムライ式の土下座などされた事がなかったので、仰天した。
「どうしたんですか、ヤス君」

「あんたが俺のためにしてくれた事の恩返しも済んでいないうちに言うような事じゃないのはわかっている。それに、お蝶の事を好きなあんたに頼むのは筋違いだともちゃんとわかっている。でも、俺にはどうにもできないんだ。お蝶をもう一度テデスコに逢わせるために力を貸してほしい」

「お願いだから、立ってくださいよ、ヤス君」
カルロスは困惑して言った。

「あなたもヴィル君と同じ誤解をしているんだな。私は確かにマリポーサをとても深く愛していますが、ヴィル君のような愛し方ではないんですよ」
「へ?」

「違うんです。私とマリポーサはそういう関係じゃないんです。そうじゃなかったら、マリポーサがヴィル君という人がいながら、ここに来るわけはないでしょう」
「いや、あいつはトカゲ女だから……」

 カルロスは同意の印に笑った。そして片目をつぶって告白した。
「出会った最初の晩に間違ったんですよ。すぐにベッドに直行せずにチェスを始めてしまったんです。もちろんこっちはチェスだけのつもりじゃなかったんですが、仕事で疲れていたのでつい寝てしまったんです。朝にマリポーサはそのまま消えてしまい、それで何もしないまま、打ち明け話を聞きながらチェスをするだけの仲になってしまいましてね。まあ、父親のポジションというのもそんなに悪くないんで」

「え? じゃあ、前にこの館に来た時、あんたの部屋にこもってたのも……」
クイーンとビショップがどうのこうのってのはたとえ話じゃなかったんだな。早く言えよ。
「ええ。チェスをしていたんです。でも、あれもヴィル君に対する挑発でしょう?」

 稔は脱力した。かわいそうなテデスコ。あの狂ったようなピアノを聴いてトカゲ女はほくそえんでいたのかよ。

 カルロスは真面目な顔にもどって現実の問題を話しだした。
「私が、あの状態のマリポーサを見て手をこまねいていると思われたら困ります。ちゃんと手は打っているんです。ただ、そんなに簡単にはいかないんで、もう少し時間がほしいんですよ」
「って言うと?」

「ヴィル君は、ミュンヘンのお父さんの館にいます。怪我の経過も思ったより悪くないようです。だが、あの館にはスペインには多い、簡単に買収できるような使用人が一人もいない。難攻不落の城みたいなものです。アウグスブルク時代の彼の友人たちも、まったく近づけないみたいですね。お父さんは彼が演劇に戻るのも許しがたいらしく、一切のコンタクトを遮断しています。そんなわけで、どうやってヴィル君にコンタクトをとるか、策を練っているところです。失敗は許されませんからね」
「ギョロ目……。おれ、あんたを見直したよ。恩に着る」

「そうだ。君たちに手伝ってもらわなくてはいけないことがある。君とレネ君と、もちろんマリポーサにも」
「俺たちが何を出来る?」
「君たちだけが共有している記憶が欲しいんです。お父様にはわからない、ヴィル君だけに、これは君たちからのメッセージだとはっきりわかるモチーフがね」


 その日の昼食の時に、稔はイネスの態度が硬いことに氣がついた。それも、稔だけに。
「イネスさん、何か」

 イネスはじっと稔をみつめていたが
「何でもないんですよ。なんでも」
それでいて、稔の皿にスープをつぐ時など、やけに乱暴だった。

「マリサにいたずらでもしたの?」
蝶子が意地悪く訊いた。

 マリサは黒髪の美しい二十三歳になるイネスの娘で、優しく控えめで稔の好みにど真ん中、というタイプだった。最初に紹介されたのはこの館に入り浸るようになってから三回目くらいの時で、その時から稔はもちろん不必要にマリサに親切だったので、ほとんど言葉が通じないにもかかわらず、マリサも稔に好意を持っていた。その証拠に、Artistas callejerosがこの館に来る度に、マリサの英語はやたらと上達していたのである。

 しかし、稔はマリサに手を出すような無謀はしなかった。マリサは本人も合意の上でのアバンチュールを楽しむには若すぎる娘だった。そして、例の蝶子のコンピューターのたとえで言うと、イネスは最重要書類だった。稔が合法にヨーロッパに滞在できるのはカルロスの好意だけによるものだったし、毎年のクリスマスを暖かく豪華なこの館で、うまいものをたらふく食べて過ごせる四人の幸福を自分の行動一つで台無しにするわけにはいかなかった。だから、『外泊』だって、わざわざ村の実害も後腐れもなさそうな娘を選んでいるのに。

「するわけないだろ。イネスさんを怒らせたら俺たち何も食べられなくなるじゃないか。この間だって……」
と、つい口を滑らせた稔は、あわてて黙った。が、イネスはその言葉尻をとらえて稔に詰め寄った。
「それですよ。せっかく若い娘が勇氣を振り絞って迫ったのに、袖にしたって言うんですからね。それでいて村のほかの女といちゃいちゃしていたって、マリサは昨日から泣き通しですよ」

「あらら……」
蝶子はにやにやと傍観を決め込むことにした。レネは目を丸くした。
「マリサはかわいいし、ヤスのタイプじゃないですか」

「マリサにバレるように『外泊』しちゃあねぇ」
「ここにいたら、どうやったってバレちゃうじゃないか。イネスさんが逐一報告しちゃうんだから」
「私はそんなことはしません。マリサがあんなに思い詰めているのに」

 稔はマリサが泣いていると聞いて、心穏やかではなかった。蝶子の前だったので口には出さなかったが、以前のヴィルの心境がよくわかった。恋愛のデッドロックである。以前はもっと簡単だった。二週間ぐらいで動き回り、もう二度と顔を合わさないとわかっているので、簡単に口説き、一晩だけ一緒に過ごし、後腐れもなかった。必要以上に好きになることもなかったから、相手のことを心配することもなかった。

 だが、Artistas callejerosは動き回るよりも、決まった場所で稼ぐことが多くなってきている。十一月のコモ、一月のバルセロナは確定だ。コモに行く前にはレネの両親の家業を手伝うことになっている。ヴェローナのトネッリ氏もフェデリコの休暇の時期に来てくれとラブコールを送って来てくれているし、マラガのカデラス氏のクラブでも再び予約が入っている。カデラス氏が来てほしいのはヴィルなのだが、話は半年後なので間に合うはずだと稔は楽観していた。

 そして、このバルセロナのコルタド館だ。最初はそうとう遠慮していたはずなのに、この頃はすっかり自宅代わりだ。カルロスの客のためにエンターテーメントを担当し、雑用をこなし、適度に酒は買ってくるが、お世辞にもギブアンドテイクとはいえないたかりぶりである。違法滞在だった稔と蝶子のヴィザを用意し、日本行きのチケットを提供し、さらに、各地に現れてはしょっちゅう美味しいものをおごってくれるカルロスの常軌を逸した親切は、蝶子との恋愛関係がないとわかった今となっては全く理解に苦しむ。しかも、今はヴィルの逃走の手助けまでさせようとしているのだ。ここで、カルロスにとっては一番大切な使用人であるイネスと問題を起こすわけにはいかない。

 稔にとってマリサがどうでもいい存在であったなら、話はもっと簡単だった。だが、稔はマリサが好きだった。もちろんヴィルが蝶子のことを思い詰めていたほどではないし、レネがエスメラルダスの魅力に自分を失ってしまったほどではない。とはいえ、コルタドの館にいる時間が増え続けている今、マリサとのことは稔にとって次第に避けられない重荷になりつつあった。
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Posted by 八少女 夕

ムパタ塾のこと - 1 -

晩冬さんからリクエストをいただいていましたね。もう十●年前の事になってしまいますが、語ってみましょうか。と、いっても、今回はムパタ塾そのものではなくて、その前提条件になった当時の私の状態についてです。

かつて、私はライアル・ワトソンに傾倒していました。まあ、今でもですが。今風に言うと「厨二病」の壮大なものにかかったようなもので、これは卒業するか、もしくは行く所まで行っちゃうしかないわけです。そして、私は後者を選んでしまったという事ですね。

こういう本があるのですよ。「アフリカの白い呪術師 (河出文庫)」ライアル・ワトソン著

私は、「アースワークス」などから入ったのですが、この「アフリカの白い呪術師」ですっかりライアル・ワトソンとアフリカに傾倒してしまいました。彼のことをトンデモ科学だと批判する方があるのはわかっていますし、その事について議論するつもりはありませんが、世界に対する彼のアプローチは一読するに値するものだと思っています。ですから、彼に対する尊敬は今でも変わっていません。残念ながら亡くなってしまわれたのですが。

日本人の経営するケニアのマサイ・マラにあるムパタ・サファリ・クラブはこのライアル・ワトソンの監修によって建てられた、環境と自然に調和させた五つ星ホテルです。五つ星と言っても、マサイ・マラ国立公園のど真ん中にあるのですから、都会の便利な豪華ホテルとは全く違います。自家発電。しかもコンセントに差しても使えない時間がほとんどです。バスタブなどあり得ません。けれど、この地で受け取れるサービスとしては本当に最高のものです。

一人用の円形のバンガローにはベッドと小さな机と椅子、そしてシャワーと洗面台があるのみ。でも、パノラマ場の窓ガラスからはマサイ・マラ国立公園のどこまでも続く大地が一望のもとです。そして、なぜか食事はフランス料理のコース。ケニア人のコックが毎回腕によりをかけて作ってくれます。

このムパタ・サファリ・クラブ、滞在費は高いし、そもそも辿り着くまでに確実に二日はかかるので、バブルが弾けた後は一般人が簡単に行ける所ではありません。それで、閑散期に長期滞在して環境と自然に付いて学べる「ムパタ塾」を開催しようという事になったようなのです。そして、私はそれに飛びついたというわけなのです。

「ムパタ塾」の内容については、また次回。


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Posted by 八少女 夕

クリスマスを待ち望む

私はド田舎の村に住んでいるので、めったにデパートなどには足を踏み入れないのですが、11月の初めだけは必ず州都にいって買い物をします。日本の姪と甥へのクリスマスプレゼントを選ぶためにです。これをエコノミー便で送ると12月には届くのです。

クリスマスモードの売場

デパートはこうなっています。各家庭のクリスマスツリーにかける情熱は、たぶん日本よりも強いんじゃないでしょうかね。基本は本物の樅です。ですから、ツリーを飾るのは早くても12月22日ぐらいです。けれども、我が家のツリーはプラスチックのものを毎年使うので12月に入ったら飾り付けをはじめます。

「あらまほし」とされているツリーには、本物のロウソクがつけられますが、私はそんな事をすると火事が恐いのでまたしても邪道の電球。

ツリーの飾りはいろいろあるのですが、毎年少しずつ買い足したりして楽しんでいます。本当に色々な種類のものが売り出されていて、見ているだけでも楽しいのです。

この時期は、日々日照時間が少なくなり、実に暗くて寒いので、人々は心からクリスマス(冬至)を待ち望んでいるのです。みんなで集まって食べて飲んで、ツリーを飾り、薪の火を眺めるんですね。
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Posted by 八少女 夕

【小説】夜のサーカスとチョコレート色の夢

月刊・Stella ステルラ参加作品です。今回スポットを当てるのは、最初からでてきているおなじみの逆立ち男ブルーノです。彼の生まれ故郷は、はっきりとは書いていませんが、アフリカの旧イタリア植民地のとある国です。

Stellaの官能禁止ルールのギリギリまで行っていますが、ご心配なく。今回も、今後も、ヤバいシーンは、(ほぼ)なく、小学生でも読んでいいはず。たぶん。え〜と。

ところで、Stellaのクリスマススペシャルは、イラスト画像+ドイツ語のソネットという形で参加させていただきます。こちらは30日にアップの予定です。

月刊・Stella ステルラ 12月号参加 掌編小説 連載 月刊・Stella ステルラ


あらすじと登場人物
「夜のサーカス」をはじめから読む




夜のサーカスとチョコレート色の夢


夜のサーカスとチョコレート色の夢

 船をみながら、海の向こうにあるというユートピアの事を考えた。どんな夢も叶うその楽園は「ヨーロッパ」というのだと、アマドゥが語った。少年はまだ小さくて、二歳年上のアマドゥの話す事はすべてが真実だと思っていた。欲しいだけ食べ物が食べられる。飲みたいだけ水が飲める。毛布には穴が開いていなくて、新しい靴を履けて、ラジオやナイフを独り占め出来る。

 ラジオは「善きサマリア人の救護団」の事務所で見た。後ろに誰もいないのに、勝手に喋る魔法の箱。これはイタリア語というのだと、事務所のスタッフは言った。彼が住んでいる国には古来から話されている言葉があるが、植民地時代にはずっとイタリア語が公用語だったのだと、彼は言った。
「今は?」
「アラビア語だけれど、こういう奥地ではいまだにイタリア語しか出来ない人も多いのさ。それに、ヨーロッパではアラビア語のわかる人なんかほとんどいないからね」

 彼らはイタリア語が出来るというので「善きサマリア人の救護団」に雇われていた。飢餓や戦争孤児のための援助をしている「ヨーロッパ」の非営利団体だそうだ。アマドゥに言わせれば、あの事務所にあるものは、それだけでも村一番の長老を遥かにしのぐ財宝で、あそこに勤めている奴らは、いつも美味いものを食えるらしい。

「じゃあ、大きくなったらあそこに勤めればいいじゃないか」
「無理だよ。町に住む有力者の息子だけが、あの仕事を貰えるんだ。それに、たとえあそこで働けても、海の向こうに行くような幸せは手に入らない。海を渡った本当の勇者だけが二度と心配のない楽園に辿り着けるんだ」
アマドゥがそう言うと、すべてはそれらしく響いた。

「だからよ。俺は金がいるんだ。海まで行くだけの」
アマドゥは「善きサマリア人の救護団」の事務所に金を盗みに入り、牢屋に入れられた。少年は、そんな馬鹿な事は、捕まるようなヘマはするまいと決心した。十四歳の時に、「善きサマリア人の救護団」のトラックに忍び込んで港へと辿り着く事に成功した。あとは船に乗り込めば楽園が彼を待っているはずだった。

 楽園の人々は白い肌をしている。アマドゥはそう言っていた。白い肌だって? そんな馬鹿な。けれど、港には、本当に白い肌をした人間がいた。目深に白い帽子をかぶり、肩に金モールのある白い立派な服を着て、ピカピカの靴を履いていた。ああ、これがアマドゥの言っていた楽園の住人かと思った。その男は、波止場の立派な船に乗った。それは大きな船だった。長老の家の50倍近くあって、色とりどりの服を着た白い人たちが笑いながら甲板から海や港を眺めていた。

 少年は、暗くなるのを待って、船艙に忍び込むことに成功した。実際は、波止場に積まれた麻袋の一つからトウモロコシの粉を海に捨てて、その中に入ったのだ。それから暗い船底で数日間を過ごした。そして、着いたのがカラブリアだった。

 そこにはどんな夢も叶う楽園などなかった。「ヨーロッパ」という国もなかった。少年が辿り着いた所はイタリアだった。住人たちは、少年の故郷のようには飢えてはいなかったが、ダークチョコレートと同じ色をした少年を暖かく迎えてくれるほど余裕があるわけでもなかった。彼らも、生きるのに必死だったのだ。

 盗みをして捕まれば、アフリカに連れ戻されるのはわかっていた。だから、少年は金を稼がなくてはならなかった。出来る事は限られていて、貰える金も大したものではなかった。歌はうるさいと怒られた。ダンスをしたくても音楽がなかった。だから、逆立ちをしたのだ。軽々と両手で。ゆっくりと頭だけで。時おり片手で。これが一番実入りが良かったので、彼は、少しずつ難易度のある技に挑戦していった。

カラブリアに辿り着いて、半年ほど経った頃、はじめてあの男が観客に加わった。妙に背の高い、壮年の男で、ワインカラーに濃紺の縦縞のついた、目立つ上着を羽織っていた。そして、少年を念入りに見ていた。その男は服装も目立ったが、それだけではなかった。はじめて紙幣をもらったので、少年はどぎまぎした。

 翌日も男は観に来た。三日目になると、少年は確信を持った。こいつ、興味があるのは逆立ちじゃない。俺の体だ。少年は、既に故郷で村の伝令の慰み者になった事があったので、またかと思ったが、それで美味いものが食えるのなら構わないと思った。

 少年の印象は間違いだった。ロマーノは逆立ちにも興味があったのだ。

「お前、宿無しだろう」
ロマーノは聴き取りやすいイタリア語で話しかけた。連れて行ってくれたレストランで出てきたパスタに、少年は覆いかぶさるようにして食べた。噂に聞いていたコーラというものもはじめて飲んだ。少年は用心深く男の事を観察した。俺を当局に引き渡すつもりかもしれない。

「心配するな。私は法なんてものに、たいして価値を見いだしてはいないのだ」
ロマーノはくるんとした髭をしごいて言った。だから、なんだっていうんだよ。お前がしたいことは、わかってんだ。だけど、こいつは全部食わせてもらうぜ。少年ははじめて食べた、パフェというものに夢中になった。冷たくて、甘くて、美味しい。かかっているこの黒いものは、チョコレート・ソースっていうんだそうだ。

「私の所に来ないか」
ほら来た。
「今晩、ってことかよ」
ロマーノはにんまりと笑ってから、もう一度髭をしごいた。

 それが、チルクス・ノッテに入った経過だった。団長のロマーノは、ブルーノ・バルカという難民の書類を用意してくれた。少年はバルカなる人物が実在するのかにも、どうやってその書類を手に入れたのかにも興味はなかった。強制送還されることがなくなった、それだけで十分だった。その日から彼はブルーノになった。

 ロマーノは、まかないとはいえ、毎日うまい飯を食わせてくれた。ホットチョコレートという飲み物もあった。どろりとしたほろ苦くも甘い飲み物は火傷しそうに熱かった。いくらすすってもねっとりとした液体はカップにこびりつく。苛つくが、一度飲んだら忘れられない。

 それだけではない。ブルーノを曲芸師の学校に入学させ、きちんとした逆立ちの訓練もつけてくれた。華やかな逆立ち男の衣装の他に、スニーカーだの、Tシャツだの、すり切れていない自分だけの衣類を用意してくれた。穴の開いていない毛布もマットレスもある、凍えずに眠れる一人用キャラバンカーも貰えた。足りないものなどなかった。

 時おり、我慢すればいいのだ。ねっとりと暗いチョコレート色の時間を。

 大テントの東の入り口には、大きな姿見がある。鏡。故郷では、「善きサマリア人の救護団」の事務所で一度だけ鏡を見た事があるが、こんなにくっきりと姿が浮かび上がるものではなかった。そして、全身が映るものでもなかった。その姿見には、チョコレート色の男が映る。カジキの鱗のような青白いパンツを身につけ、頭には青と白のダチョウの羽を飾ったターバンが巻かれている。上半身は筋肉の盛り上がりごとに光が反射し、屈強な男の肉体美が強調されている。彼は、舞台の前にはこの鏡を絶対に見ない。

 鏡には魔物がいて、見たものの戦意を奪う。村の長老が言った。戦の前には絶対に鏡を見てはならないと。迷信と仲間は笑う。だが、姿見の前に立った時のあの感覚は何だ。異形のものがそこにいて、吸い込まれていきそうになる。お前は誰だ、そこで何をしていると、疑問を投げかけてくる。あの逆立ちが、あの技が、お前に出来るのか? 本当に可能なのかと。

 鏡を見る代わりに、ブルーノは仲間を見る。重い棒を抱えて綱を一歩また一歩と渡っていくルイージや、黒い鞭を操ってライオンを自在に動かすマッダレーナ、いくつものボールをジャグリングしながら滑稽な動きで観客を魅了するヨナタンを見る。入ったばかりのステラのブランコの演技も、最近はようやく安定してきた。舞台に輝くスポットライトと観客の熱狂。ロマーノを馬車に載せて駆けていく馬達の地響き。袖の暗黒の世界から垣間みる、白く輝く熱狂的な舞台の世界。「ヨーロッパ」という名の楽園が顕在する一瞬だ。

 そして、彼はそのかりそめの楽園に、厳かに足を踏み入れる。舞台の真ん中に置かれた円卓に昇っていく。熱いスポットライトがじりじりとチョコレート色の肌を焼く。グレゴリオ聖歌を彷彿とさせる男声合唱が響く。革製の取っ手を設置した身長ほどの棒が二本立っている。その取っ手を掌で包み込むように掴むと、腕の力だけでゆっくりと体を持ち上げていき、その上に逆立ちする。体の力が、血がゆっくりと中心に向かって固まっていく。完全な垂直になり動きが停まると、最初の拍手が起こる。それから足が開いていきTの字になって停まる。そのまま右手だけに重心を移して左手を真横にする。体をねじり足を前後に開いていく。

 また両手で体を支えながら、足をYの字にして観客の方を見る。驚き拍手をする大人たち、目を輝かせる子供たち、頬を紅潮させる若い娘たち。力強く、しなやかな動きは、人間の肉体がどれほど美しいものかを観客に見せつける。そこには、名前も移民も国籍も貧富の差もなくなる。輝くアダムの肉体だけがエデンに降り立つのだ。それがブルーノの逆立ち演技だっだ。

 舞台がはねて、ごく普通の男女に戻った仲間達とともに、共同キャラバンカーで食卓を囲む。ポレンタとウサギのラグーをかきこみ、赤ワインを流し込む。料理人のダリオが出してくれた、チョコレートソースのかかったパンナコッタをすくいながら、ブルーノは目をつぶる。少年はかつて夢みていた。いつか、遠い楽園に行くのだと。二度と飢える事のない、いくらでも水の飲めるユートピアに。ここは、思っていた楽園とは少々様相が違う。だが、苦さと甘さを備え持つ甘露チョコレートのある「イタリア」も悪くはない。仲間の騒がしい会話に加わるべく、ブルーノは瞳をあけた。

(初出:2012年11月 書き下ろし)
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Tag : 小説 連載小説 月刊・Stella

Posted by 八少女 夕

秋限定:フェルミセル

秋のデザートと言えばこれ。

フェルミセル

日本ではモンブランというのが普通です。まあ、ケーキではなくて、パフェみたいになっているのですが。要するに細く絞り出したマロンクリームをフェルミセルと呼ぶのです。メレンゲや生クリーム、もしくはバニラアイスなどと組み合わせて出すのが普通です。

この写真のものはさほど洗練された見かけではありませんが、味はどこでもほぼ一緒です。生クリームには砂糖が入っていません。マロンクリームの方が極甘なので、生クリームは甘さを和らげる役割なのです。
関連記事 (Category: 美味しい話)
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Posted by 八少女 夕

「ペラペラになりたい外国語」

ペラペラね。だったらイタリア語かなあ。

現状は簡単な挨拶して、レストランで注文して、ホテルで部屋を頼んだりチェックアウトが出来る程度なんです。旦那が現地人と会話しているのは黙って耳を傾けています。まあ、会話の内容は大体わかりますが、自分で意見をきちんと述べるほどには話せないんですよね。英語やドイツ語はそれが出来るので、一人で旅をしていても全く困らないし、現地の人と冗談を言い合ったりも出来て楽しいのですよ。イタリアでそれが出来たらいいですよね。

ま、それ以上は望みません。イタリア語どころか、英語もドイツ語も、完璧に話せるようになるなんて無理ですしね。

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Posted by 八少女 夕

西と東、昔と今

訪問させていただいた方の氣になる記事から、勝手に話を発展させてしまう記事シリーズ。

今回取り上げさせていただくのは、山西左紀さんの記事です。


 この記事がとてもツボにはまってしまいました。実はつい先日、東ドイツ時代の映像がテレビで流れていて(ドイツのテレビ局はヒトラー時代の話や東ドイツの話をほぼ毎週のように流すので珍しい事ではありません)、その鬱屈した重苦しい空氣をテレビを通して感じていたばかりだったのです。それは終わった事のようなのですが……。

 ベルリンの壁はもうないんですけれど、そして、かつてのDDRだった所も、大きく変わっているわけなのですが、それでもどこかにまだ「ベルリンの壁」がある。これが私の印象です。
 
 人々はいまだに「あいつは東だよ」といういい方をします。東ドイツ人と西ドイツ人は確かにどこかが違うのです。たった40年で、民族の氣質が変わるというのは驚くべき事ですが、共産主義時代に培われた人々の考え方、行動基準が十年経った今でも確かに残っているのです。

 経済格差は今でもあります。それに、ある種の差別、ある種の懐古主義もあります。恐るべき速さでやってくる変化にまぎれて、時としてそれは見えたり見えなくなったりするのですが、やはりどこかに壁があるのです。ドイツ語を話して、ドイツ人と個人的に知り合って話す、そこまでいかないとなかなか感じられないほどの微妙な壁です。

 そこは世界と世界、国と国の勝手な都合で生まれた不幸な都市、「東ベルリンと西ベルリン」です。

 東ベルリンについては山西なんかは映画から得た暗い抑圧されたイメージしかないんですけど、そこで人々はどんな生活を送っていたのか実際に見てみたかったです。実際に機能するベルリンの壁も見て体験したかったです。

 その当時、自由を謳歌していたように見えた西ベルリン、この孤島のように取り残された都市はどんな雰囲気だったんだろう。

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Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち (33)ミュンヘン、 秋

さて、今回のお話は、怪我からなんとか生還した金髪の誰かさんの方でございます。お父上様の屋敷に幽閉中です。

追記にですね。canariaさんからのリクエストにお応えして、一枚画像を……。しかしですね。ええと、やっぱり絵師様に描いていただいた方が。すみません。イメージ壊したかも。


あらすじと登場人物
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大道芸人たち Artistas callejeros
(33)ミュンヘン、 秋


「息子さんの回復ぶりには驚くばかりですな」
主治医のシュタウディンガー博士は、診察の後、エッシェンドルフ教授の書斎を訪れて経過を報告していた。
「私の予想では肺の傷が完全に塞がるのに一年かかるはずでしたが、まだ七ヶ月なのに既にほぼ正常化しています。何か特別のスポーツでもしていらしたのでしょうか」

「さあな、そんなはずはないと思うが。もっともここ四ヶ月ほど、毎日フルートを吹いている」
「なんですって?あの肺でフルートを? とんでもなく痛いはずですぞ」
「そうだろうな。最初はとても聴けたものじゃない音だった。ここ一ヶ月ほど、まともな音が出るようになってきた。いいことじゃないか? リハビリテーションになる」

「もちろんです。回復が早いはずだ。さすが教授の息子さんですね。不屈の意志の為せる技ですか」
「理由はともあれ、あれほど言っても再開しなかったフルートをようやくやる氣になったんだ。しかも、以前よりいい音を出している。私に異存はないよ。フルートも領地の方でも私の後継者にするために、急がなくてはならない。いつまでも病人のつもりでいてもらっては困る」

「しかし、教授。お言葉ですが、もう一つ申し上げたい事が」
「なんだ」

「息子さんが奇跡的に回復しているのは肉体的な部分だけです。私は精神的なケアをお勧めします」
「何が言いたい」

「息子さんには喜怒哀楽がほとんど見られない。事件のトラウマを考慮しなくてはなりません。一度専門医にご相談なさる方がよろしいかと」
「心配するな。事件のトラウマなどではない。あれは子供の頃からそうだった。もともと喜怒哀楽などほとんどないのだ」
「なんですって」

「フルートのコンクールで優勝したときも笑顔すら見せなかった。母親が死んだときも悲しそうな顔一つしなかった。だが、私は心配した事などない。音楽の表現力は十分に備わっているし、領地の支配にも喜怒哀楽は必須条件じゃない。感傷はむしろ邪魔だ」

 医者が去っていくのが窓から見えた。ほぼ傷は塞がったとシュタウディンガー博士は言った。ということはまだ完全ではないという事だ。ヴィルは胸に手を当てた。できれば半年でなんとかしたかった。だが、無理なものは無理だ。立って歩けるようになってすぐに逃げ出したかったが、自分を必死で抑えた。もし、途中でおかしくなったら、三人の足を引っ張る。再び父親につかまる。そうなったら次のチャンスはないだろう。逃げ出すのは一度だけだ。完全に健康になってから。

「時間がかかると思うけれど、あきらめないで。約束よ」
ささやきが甦る。諦めるものか。フルートを吹くときの肺の痛みは、日に日に減ってきている。けれどもう一つの痛みはそう簡単に消えはしない。

 そろそろ秋になる。季節は容赦なく移り変わっていく。三人は冬支度を始めるだろう。今どこにいるのだろうか。スペインか、フランスか、それともイタリアに移っているのか。バルセロナのコルタドの館でタンゴを踊っているかもしれない。コモ湖を見渡すバルコニーでまたカードゲームに興じているのかもしれない。

「やっと私にも笑顔を見せてくれたのね」
シーツにくるまりながら嬉しそうに微笑む蝶子の記憶。

「真耶にはこの素敵な笑顔を簡単に見せていたから。彼女に敵わないのはわかっているけれど、あれを見たときは死ぬほど悔しかったの」
「彼女は無害だから笑えたんだ。あんたには二十四時間振り回されているのに笑顔になんかなるか」
「もっと振り回したい」
蝶子は微笑んでヴィルの胸に顔を埋めた。二人だけの時にしか見せないはにかんだ素直な横顔。

 ヴィルはフルートを手に取った。息を吸い込むときの痛み。吐き出すときの痛み。思い出すときの痛み。


「アーデルベルト。一つだけ正直に答えてほしい」
ハインリヒは息子に静かに、しかし、いつもの有無を言わせぬ調子で問いかけた。ヴィルは黙って父親の顔を見据えた。

「私は、お前がなんと答えようとも、お前を責めるつもりはない。だが、知りたいのだ。お前とシュメッタリングは二人で示し合わせて私の前から姿を消す事にしたのか」

 ヴィルは首を振った。
「一度も会った事のない人間と、どうやって示し合わせられるんだ。俺はミラノで偶然会うまであいつを知らなかったんだ」

「私がそれを信じると思って言っているのか」
「信じられないなら、なぜ質問するんだ」

「お前たちが、なぜ出て行ったのか、それなら説明がつくからだ」
「俺はドイツであいつに会ったことはなかった。これは事実だ。あんたを納得させるために、真実でない事を告白するつもりはない」
「では、なぜ出て行ったのだ」

 あんたにはわからないだろう。俺があんたから受けた全ての恩恵に感謝しつつ、それでも出て行こうとする心は。あんたが愛し全てを与えた蝶子もまた同じ結論に至った理由も。俺は一度はあんたの言うように生きようとした。蝶子もそうだった。だが、あんたは俺たちをペットのように従わせる事はできない。そうしようとすればするほど、俺たちの心は自由に憧れ、あんたを憎むようになる。

 答えない息子を責めるようにハインリヒは続けた。
「お前は出て行く前にはその指輪をしていなかった。それには意味があるのか」

 ヴィルは何も答えなかった。細くねじれた銀の指輪。病院で見た蝶子の薬指に光っていた指輪と同じデザイン。それ以上質問する必要はなかった。答えを待つまでもなかった。この世で、誰よりも愛した二人が私を裏切った。ハインリヒは怒りを隠しきれずに息子の部屋を出た。

 ヴィルは父親が出て行ったドアを冷たく見つめていた。

「運命は偶然ではない」フランス人が、俺に無理矢理引かせたカードだ。運命や馬鹿馬鹿しい占いを信じるようになったわけじゃない。だが、俺にまともな説明はできない。少なくとも俺は、理性に従ってあいつに惹かれないように抵抗した。だが、そんな努力は全て無駄だった。愛は強制でも懇願でも理性ですらも得られない。しかし、それはそれらの努力を軽々と飛び越え、向こうから襲いかかってくる。あんたがあいつに与えた芸術も、宝石も、俺にはあいつに与えることはできなかった。あいつに愛を要求することもできなかった。それでも、あいつは俺のためにニース行きの電車から飛び降りて、無償の愛を注いでくれた。この指輪はその証だ。どう説明できるっていうんだ? あんたには理解できないとわかっているのに。

この記事には追記があります。下のRead moreボタンで開閉します。

read more




【小説】大道芸人たち (33)ミュンヘン、 秋

というわけで、いつものなんちゃって画像で作ったヴィルです。なんか暗いんですけれど、まあ、このシーンに合わせたので余計。これが私には限界です。絵師様、ひきつづき募集中です。
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Posted by 八少女 夕

健康保険の話

今日は、健康にかかるお金の話などを。

健康保険制度というものは国によって違うものです。アメリカはつい最近まで健康保険の加入義務はなかったですよね。スイスは義務なんですが、民間の保険会社と契約するしかないのです。そしてですね、異様に高いのです。

私はいまのところ持病にあたるものがなく、医者にも滅多に行かないので、最も年間保険料の支払いが少なくなるようなタイプの契約を選んでいます。

で、年間2000フラン(16万円ぐらい)までは全額自分で払う契約なのです。それでも月額135フランの保険料です。で、2000フランに達する事などないので、医者にかかるときは全額自己負担。簡単な健康診断をしてもらうだけで二万五千円くらいかかるのです。ちなみに、全額自己負担年間300フランにすると、月額250フランくらいでしょうか。全額自己負担分を超えると自己負担は一割から三割ですが、医者も病院も異様に高い上に、歯医者には保険が利きません。

入院すると、待遇は素晴らしく、食事もメニューから選べるし、部屋はきれいなのですが、私としてはあんなに高くない方がいいかなと。そのせいなのか、開腹手術の後でも四日くらいで退院するのが普通らしく、はじめてそれを聞いたときは仰天しました。

日本だと病院はいつもいっぱいだし、長く待たされたり、待遇もホテル並みとはいえないのですが、でも、どうなんでしょうね。日本からスイスに旅行にいらっしゃる方は、必ず保険をかけていらっしゃる事をお勧めします。万が一、スイスで入院するような事になって、保険がかかっていなかったら、請求書のショックはすごい事になると思いますので。
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Posted by 八少女 夕

チョコが並んだ

ハロウィングッズが撤収された後に来るのはこれですね。

クリスマスだ! チョコ商戦だ!

チョコ、チョコ、そしてまたチョコ。スイスのクリスマスはチョコなしには語れないのです。これがドイツだったりすると、シュトレーンやちょっとスパイスの利いたクッキーなど、もう少し別のものがクローズアップされるのです。スイスでももちろんそれらは販売されるのですが、このチョコレートの華々しい売場が目を奪うので……。

特設チョコ売場は三段階くらいで大きくなっていきます。プレゼント用のチョコ、子供が待降節に少しずつ食べていくタイプのチョコ、それにクリスマスツリーに吊るすオーナメントタイプのチョコなど、これでもかと売るわけです。

我が家では12月になったらプラスチック製のツリーを飾るのですが、そこにもチョコを飾るのがお約束。食べるのは連れ合いでございます。
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Category : 美味しい話

Posted by 八少女 夕

タイトルの話

小説書くときに、題名から出来る場合と、ストーリーから出来る場合とありまして。題名から出来る場合はもちろんそれで問題ないのですが、ストーリーが決まったあとに、はたと題名どうしようと悩む事があります。

「大道芸人たち」はストーリーから決まったもので、書きはじめた当初は題名がありませんでした。「Artistas callejeros」というチーム名が決まったあとで、しばらくはこのスペイン語だけを題名にしていましたが、公開するにあたって日本語訳をくっつけました。これは悪くない題でした。というのは、ヒロインだけ、もしくはヒロインと恋をする誰かさんだけを示唆するような題にしたくなかったからです。実際にそういう話でもないので。

「夜のサーカス」はもともと旅行中にiPhoneで書いた小説で、かなり適当につけた題名です。スカイさんのご要望は「サーカスのピエロ」だったので、サーカスが出て来ればそれでいっか、というような軽い感じでつけました。というか、サーカス団の名前を適当なイタリア語で、とやっているうちに「チルクス・ノッテ」になって、そこからの和訳なのです。でも、連載するにあたり、この題名から話のイメージを拡げたので、ストーリーとは合っていると思います。

ブログにお邪魔させていただく皆さんの小説を拝見すると、それぞれよく考えられた素敵な題名がついています。題名って「読んでみようかな」と思わせるとても大きなファクターなので、適当につけちゃダメだろうとは思うのですが、どうも、皆さんのような素敵な題名が浮かんでこないんですよね。ううむ、困ったものです。
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Posted by 八少女 夕

時計博物館

ウゾさんからもらっている、リクエストのうちのもう一つ。

其れと ムゼック城砦の時計塔等の スイスの建築物に付いての記事を
読みたいです。



なんですがね。これは本当に何も知らなかったのですよ。存在すらも。それで、もっとあとで、そばに行く事でもあったら書くとしてですね。あと、建築物の話も、いいネタがあったら書く事にします。もうしばしお待ちくださいませ。で、今回は時計つながりでスイスの時計博物館について書こうかな。

時計博物館

スイスには時計博物館がいくつかあるのですが、私が行ったのはラ・ショー・ド・フォンにある国際時計博物館(Musée international d'horlogerie)です。展示されている時計は十六世紀の懐中時計から、最新の衛星時計までまさに時計なら何でも来い状態なのですが、ただの展示じゃないんですよ。専属の職人がいてですね。全部動くようにしているのです。

時間によってですが、ガラス張りになった工房で職人さんたちが働いているのを見る事が出来ます。工具も展示しているのですが、もう、すごい世界ですよ。ミクロの世界。これをどう組み合わせるとどうして動くんだって、見れば見るほどわからなくなります。

普段、正確に動くのが当たり前と思っている時計も、こうやって中身の事を見ると、はじめに考案した人、こんなレベルにまで高めた人、そして、その技術を日々使っている人たちへの尊敬の念でいっぱいになります。スイス旅行の途中に、近くを通りかかったらぜひ立ち寄ってみてください。
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Posted by 八少女 夕

「いつか行ってみたい【秘境の地】はどこですか?」

私のためにあるような、トラックバックテーマですね(笑)

行きたいのは、ギアナ高地です。ベネズエラ、ガイアナ、ブラジルなど六カ国の国境に位置して、オリノコ川とアマゾン川にはさまれた秘境中の秘境。コナン・ドイルの「失われた世界」のモデルになった場所であり、世界一の落差のあるエンゼル・フォールもここにあります。

ゴンドワナ大陸の分裂した中心部にあって、ここだけほとんど当時から動いていないとも言われています。さらに、ここにはある特殊な岩石があるというのです。どこで得た情報か忘れてしまったのですが、さらに本当かどうかもわかっていない上うろ覚えなのですが、動く岩石なのだそうです。でも、生命ではない、もしかしたらそれこそが生命の始まりかもしれないと言われる、モノと生物の合の子のような物質。ロマンにあふれていますよね。

残念ながら、ここでも環境破壊が著しく進んでいて、「失われた世界」はいずれ本当に失われてしまうかもしれないと言われています。行きたいけれど、行かない方がいいのかもしれません。でも、行きたいなあ。

こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当加瀬です(^v^)/今日のテーマは「いつか行ってみたい【秘境の地】はどこですか?」です。加瀬は国内の観光名所もロクに回っていないですが、人知れずヒッソリと評価される「秘境の地」なる場所にとても興味があります!大自然に覆われた、人の少ない所で、つかの間の穏やかな時間を過ごすのが好きです…!先日、岐阜県の白川郷へ旅行に行ってきました!(秘境の地、と言って...
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Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち (32)ニース、 追想 -2-

昨日に続いての二回目です。この時点から七ヶ月経っているとの設定です。来週からは、時間軸がここから七ヶ月動きます。

あらすじと登場人物
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大道芸人たち Artistas callejeros
(32)ニース、 追想 -2-


 蝶子が打ちのめされて重い足取りで病室に戻り、ドアに手をかけるとレネの弾んだ声がした。
「ほら、テデスコ。パピヨンが戻ってきたよ!」

 蝶子は小走りにヴィルに近寄った。稔が頷いて言った。
「今しがた、目を醒ましたんだ。痛いに違いないから口をきくなと言ってある」

 蝶子はヴィルが見えるように近くに座ると、彼の手を両手で包むように握った。それからゆっくりと低い声で話しかけた。
「痛いでしょう。かわいそうに」

 ヴィルは青い目を輝かせて、わずかに首を振った。これだけでなんと安心することだろう。彼は生きている。
「ヴィル、聞いて。あなたにいいニュースと、悪いニュースがあるの」

 稔とレネは驚いて蝶子の顔を見た。
「いいニュースはね。あなたはまた健康になれる。いまは息をするだけで死にそうに痛いと思うけれど、それは怪我が肺に達しているからなの。それが完全に塞がるには一年くらいかかるらしいけれど、あきらめないで。きっとよくなるってお医者さまも保障してくれているの。傷さえ完全に塞がったら、何もかも元通りになるから」

 蝶子は少し言葉を切った。ヴィルは弱い力ながらも蝶子の手を握り返した。大丈夫だ、続けろ。青い目はそう言っていた。蝶子は目に涙を溜めて言葉を続けた。
「悪いニュースはね。いま、ここにあなたのお父様が向かっているの」

「お蝶!」
稔が仰天して立ち上がった。レネはすでにおびえて逃げ道を求めてキョロキョロした。

「そうなの。フランス警察がドイツ警察に報せたの。あなたの捜索願が出ていたから、それでお父様に連絡が行ってしまったの。ヘリコプターの手配までされていて、あなたの容態をみてできるだけ早くミュンヘンに搬送するんですって。私たち、あなたの家族じゃないから、それを止められないの。私は、あなたについていって看病してあげることもできない、わかるでしょう?」

 ヴィルは落ち着いて瞬きをした。蝶子を慰めるかのようにその手に再びわずかに力を込めた。蝶子は涙を拭いもしないで、しっかりと言葉を続けた。
「一年経ったら、迎えにいくから。だから、絶対にあきらめないで。また、一緒に旅をするの。いいでしょう?」

 ヴィルの表情が動いた。無表情に慣れている三人には、それがヴィルの微笑みだとよくわかっていた。
「約束よ」
蝶子も微笑んだ。

「だけど、お蝶。今ここに例の教授がくるんだろう? お前、逃げろよ」
蝶子は顔を上げた。
「だめよ。私たちは二人とも逃げてきたの。でも、ヴィルはいま動くことができないの。私だけ逃げ出すなんてことできないわ」

「でも、二人一緒にいない方がいいんじゃないですか……」
レネも稔の意見を後押しした。

「隠れても無駄なのよ。だって、私の名前はしっかり調書に載ってしまっているんだもの。逃げたりしたら、どんなことを勘ぐられるかわかったもんじゃないわ。私はここにいる。いつまでも逃げているわけにはいかないもの」

 蝶子はもちろん二度と教授に会いたくなかった。けれど、ヴィルとつまりアーデルベルトと生きる以上、この事件があろうとなかろうと、いずれはこの問題には向き合わなければならなかったのだ。教授は蝶子はあきらめても跡継ぎ息子はあきらめないだろう。

 それから小一時間、蝶子はずっとヴィルの側で微笑みながら話しかけていた。稔とレネもリラックスして、ごく普通の会話をしていた。すぐに別れなくてはいけないことなど、これ以上話す必要はなかった。

 そして、その平和な時間は、足早に近づいてくる何人もの靴の音と蝶子が忘れたくて仕方なかった声に妨げられた。
「どこだ、アーデルベルトは!」

 ハインリヒ。もう二度と会いたくなかったのに。稔とレネは息をのんだ。蝶子はゆっくりとヴィルの手をもう一度握りしめると、硬い表情で後ろのドアが開けられるのを意識した。

「アーデルベルト!」
よく響く声。取り乱していても、威厳のある声。
「なんてことだ。よく無事で。死ぬところだったなんて」

 父親をまっすぐに見据えてヴィルは蝶子の手を離した。

 こいつが、例の教授かよ。お蝶よ、お前の趣味は渋すぎる。こういうの、カイザー髭っていうんだっけな。仕立て屋で作ったに違いない高そうなスーツに、ウルトラ高飛車な態度。氣にいらねぇ。稔は教授が三人を無視しているのをいいことに念入りに観察していた。レネはただ、おろおろしていた。蝶子はもう迷いのないしっかりとした表情をしていた。

 エッシェンドルフ教授は、思い出したかのようにその場に付き添っている人間に目を留めた。
「ああ、息子と同行していたという方たちですね」
言葉は丁寧だが、大道芸人風情めがと思っているのが表情から読み取れた。一人は女か、と思ったようだった。蝶子がゆっくりと立ち上がって振り向いた。

 その顔を見て、教授の動きは止まった。

「お久しぶりです。先生」
蝶子はしっかりと言った。

「シュメッタリング……」

 稔とレネが驚愕したことには、突然高慢な男の態度が百八十度変わった。震え、泣き出さんばかりに顔を歪め、それから蝶子に近寄った。息子の一大事すら忘れたのではないかと思えるほどだった。

 蝶子は、後ろに退いたが、やがて壁に追いつめられてしまった。教授は蝶子の両頬を大きくしわのあるがっしりとした手で包むと、もう一度つぶやいた。
「シュメッタリング……」

 教授に抱きしめられている蝶子の上半分の顔が、稔とレネに見えた。伏し目がちだが、冷たすぎる光を宿していた。
「どれだけ心配して探したことか、私の宝もの」

 蝶子は低い声で冷静に答えた。
「先生、申し訳ございません。直接、お目にかかってお別れを申し上げなかったことをお許しください」

 レネと稔には二人のドイツ語の会話はわからなかったが、二人の会話に温度差があることはいやでもわかった。そして、教授は蝶子の他人行儀な言葉に傷ついて、その顔を見た。
「なぜ、そんなことを言うのだ」

「置き手紙に書いた通りです。私はあなたの妻になることはできませんでした。ご恩を仇で返すようなことをしたことを申し訳なく思っています。どうかお許しください」
「私があんな手紙一枚で納得できると思っているのか。私たちは年は離れていても五年間も幸せだったではないか。お前は芸術家としても女としても私に心酔していたのに」

 蝶子は何も答えなかった。蝶子はエッシェンドルフ教授の芸術に間違いなく心酔していた。尊敬していた。そして、蝶子の肉体も教授の虜になっていた。ハインリヒの言っていることは嘘ではなかった。けれど、蝶子は一度もハインリヒを愛したことはなかった。人を愛するという事がどういう事かも知らなかった。それを教えてくれたのは、今この場でこのような会話を聞かれている彼の息子だった。だが、それを今この場で言うわけにはいかない。

「お前は、マルガレーテの死にショックを受けて逃げ出した、そうだろう。あれはもうとっくに終わったことなのだ。戻ってきなさい、シュメッタリング。私は何も責めない。やりなおせばいいだけのことだ」

 それから、後ろを振り向き、その場に立っていた秘書のマイヤーホフに威厳のある声で言った。
「ヘリコプターにもう一人乗ることを連絡しなさい」

 蝶子はそれを遮った。
「先生。私は参りません」

「シュメッタリング」
「もう戻りませんし、やり直すこともありません。先生に申し訳ないことをしたとは思っていますが、私はあの決断を後悔したことは一度もありません」

 教授は蝶子の顔をじっと見つめた。それから、蝶子の予想していた質問をした。
「なぜ、お前が、アーデルベルトと一緒にいるのだ」

 蝶子は静かに教授を見つめ返した。
「旅の途上で、偶然知り合ったのです」

 教授が信じていないことは顔に書いてあった。だが、彼はそれ以上その話題に触れずに、冷たい態度で三人に英語で言った。
「これからアーデルベルトをミュンヘンに搬送します。あなた方は、どうぞどこへなりとお引き取りください。息子が大道芸人としてこのようなところに来ることは二度とないだろうし、あなた方と交際することもありえないから、これっきりになるでしょうな」

 蝶子は頭を下げたが、稔とレネはむっとして、教授をにらみつけた。

「行きましょう」
蝶子が壁際に置いてある四つの荷物のうち、自分の分を取った。それからヴィルの枕元に寄ると、顔を近づけて、低い声でささやいた。
「じゃあね。きっと元氣になってね。約束よ」
ヴィルは瞬きをして応えた。

 続いて、レネが近づいた。
「アデュー、テデスコ。お大事に」

 最後は稔だった。自分の分を肩に掛け、壁に一つのこった荷物を悔しげに一瞥して、ヴィルの枕元に寄った。
「じゃあな、テデスコ。あんたは最高の仲間だったぜ。親父さんは、もう会えないとか言っているが、俺はいつかどこかで会えると信じているぜ」
一年後に、絶対に迎えに行くからな。言葉に出さない稔の目の輝きに、ヴィルはやはり瞬きだけで応えた。

 病室を出て行こうとする蝶子の背中に、教授が声をかけた。
「私に許しを請い、戻ってくる氣になったら、いつでもミュンヘンに来なさい。私はお前が思っているよりもずっと寛大だ」

 蝶子は返事もしなかった。口をぽかんと開けている秘書のマイヤーホフと、医者たちの横を姿勢よく歩いて立ち去った。レネがそれに続き、稔が多少乱暴に病室の扉を閉めた。
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Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち (32)ニース、 追想 -1-

自分でも、連載している事を忘れそうになりましたが、第一部の最終チャプターが残っています。チャプター5です。七週間分ですので、年内に完結する事になりそうですね。もうちょっと、おつき合いください。

今回の展開は、本人も「……」ですが、ようやく例のあの方が登場します。お待たせしました。(誰も待っていないか)ちょっと長いので、明日と二回に分けての更新です。


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大道芸人たち Artistas callejeros
(32)ニース、 追想 -1-


 赤い「手術中」のサインが消えた瞬間のことを思い出すと、七ヶ月経った今でも血の氣が引いていく。灰色の廊下、濃紺の低い腰掛け。二時間にわたる手術の間、三人ともほとんど口をきかなかった。いや、レネだけは低い声でぶつぶつとロザリオの祈りを唱えていた。時折、稔は立ち上がって廊下の端の給水場から紙コップに水を汲み、蝶子のもとに持ってきて飲むように差し出した。

 三度目か四度目の時に蝶子はそれを取り落とし、稔のジーンズと靴が濡れた。
「ごめん!」
「謝らなくていい。大丈夫だ、ただの水だ」

 稔は冷静に、蝶子の肩を叩くと、紙コップを拾ってゴミ箱に捨てた。それから、自分も水を飲むと、また戻ってきて蝶子の隣に座った。レネはロザリオが一区切りつくと、自分で水を飲みにいった。

 蝶子は青ざめて、ずっと手術室のドアを見つめていた。悪いことを考えないように、動いたり、祈ったりしなかった。廊下の反対側にかかる時計の秒針の音だけを、機械的に耳にしていた。

 ふっと、赤い電灯サインが消えた。激しい鼓動で心臓が壊れるのではないかと思った。ふらつきながら立ち上がると、ドアが開いた。一番最初に執刀医が、それから看護婦や医師たちに付き添われたベッドが見えた。蝶子の腕を稔がしっかりと支えた。執刀医が三人に向かってきて、マスクを外すと安心させるように笑っていった。
「こんな運のいい人はなかなかいませんよ。大丈夫です」
レネが即座に訳した言葉を聞いた途端に、蝶子の緊張の糸は切れてその場にうずくまった。

 あれが起こったのは二月の終わり、ニースの裏町だった。

 なぜああいうことになったのか、蝶子にははっきりと思い出せなかった。確か、あの男が蝶子に口笛を吹き、酒臭い息を吹き付けてきたので、いつも通りにきつい言葉を返したのだ。攻撃的な男はさらに蝶子にまとわりついたので、ヴィルが蝶子との間に入った。ヴィルは蝶子と違っていっさいケンカを売るような言葉遣いはしなかった。黙って蝶子の腕をつかんでいた男の手を外し、蝶子の肩を抱いて、暗い街角から表通りに向かって歩き出した。むかっ腹を立てた男が奇声をあげて追いかけてきた。あっという間のできごとだった。

 変な音ともに、振り向いたヴィルの動きが止まった。震えていたのは刺した男の方だった。蝶子の目には暗闇の中で、ヴィルの胸元に刺さっているナイフの銀色がわずかに反射して見えた。周りの誰かがすごい悲鳴を上げた。前を歩いていた稔とレネも異変に氣づいて駆け寄ってくる。騒ぎが大きくなり、逃げだそうとした男は足下がふらつき倒れた。蝶子がその男を見たのはそこまでだった。蝶子はヴィルしか見ていなかった。
「誰か、誰か、救急車を呼んで!」

 救急車が来るまでの時間は永遠に感じられた。だが、その後のこと、手術室のドアが閉まるまでのことはほとんど覚えていない。


「心臓はもちろん、大静脈も大動脈も上手にそれていましてね。普通こんな上手には刺せないものなんですが。傷は肺に達していますが、現在のところ出血は止められています。麻酔が切れれば呼吸をするたびに大変な痛みを感じるかと思いますが、それでも一年ほどで元通りになると思います」
執刀医は三人にわかるように英語で説明をすると、警察に呼ばれて去っていった。

 三人は病室にいていいといわれたので、麻酔で眠るヴィルの脇の椅子に蝶子が座り、稔とレネは壁際のソファに腰掛けてその夜を過ごした。朝になると、稔とレネは交代で顔を洗いにいき、それから蝶子にも行くように促した。蝶子は黙って頷くと顔を洗いにいき、水を顔に浴びながらはじめて泣いた。

 それから稔はレネを残して、外に出てリンゴや水などを買いにいった。その間に警察が訪ねてきたのでレネがフランス語で応対した。

 警察の調書を三人ともとる必要があるので、警察に出頭してほしいといわれたが、いつヴィルが目を醒ますかわからないので、病院内でとることはできないかと、レネにしては果敢に交渉した。フランス人の警官は蝶子の様子に同情したのか、レネの願いをあっさりと聞き入れ、調書は階下の会議室で二時間後にとることになった。

 最初に行ったのはレネ、それから稔の調書が取られた。前日に目撃者の調書は取られていたので容疑者の特定はほぼ済んでいた。

 稔が持ってきたヴィルのパスポートを見てから、警官の態度が変わった。浮浪者同然の大道芸人が刺されて死にそうになった事件だったはずだが、被害者はドイツの貴族の可能性が出てきた。警官はすぐに上司に連絡し、その連絡がさらなる上司に伝わると捜査に関わる人間の数が四倍に増えた。

「お蝶、お前の番だ」
蝶子は黙って頷くと立った。警官に付き添われて部屋を出る時に、もう一度ヴィルの寝顔を見たが、変わりはなかった。そもそもヴィルは起きていても健康な時でも基本的に無表情なので、いま自分たちのやっている大騒ぎの方が異常に思えた。

 警察官が蝶子のパスポートを見ながら英語で氏名と国籍、生年月日を形式的に訊いた。傍らでは書記官が二人の会話をカタカタとノートブック型コンピュータに記録している。蝶子は警官をまっすぐに見つめて冷静に返答した。

「被害者との関係をお願いします」
関係。なんと言えばいいのだろう。警察の調書にふさわしい、公的な関係はなんだろう。
「大道芸人の仲間です」

「何があったかを描写してください」
蝶子は思い出せる限りのことをできるだけ正確に話した。警察官は頷いた。レネと稔もそうだったが、的確でよけいな感情がいっさい入っていなかった。そして三人の供述は一致していた。

「被害者はドイツ人ですが、どのような背景で大道芸人をしていたかの経緯はご存知ですか」
蝶子はわずかに反感の混じった目で警官を見つめた。
「多くは知りません。この事件と関係があるとも思えません」

「そうですか。これは調書とは関係のないことなので、記録しませんが、ドイツの警察からつい今しがた連絡が来ましてね。被害者に捜索願が出されていたことはご存知ですか」
「存じません」

「息子さんが見つかったこと、事件に巻き込まれ重傷を負ったことを知ったお父様が、すぐにこちらにおいでになることになっています。また、ヘリコプターの手配をなさって、容態をみて被害者をすぐにミュンヘンに搬送するということになっています。私どもとしては、あなた方が、一緒にミュンヘンに行かれるかどうか、つまり今後、ふたたびお話を伺いたくなった時にですね、連絡を取れるように、居場所をはっきりとさせていただきたいのです」

 蝶子は両手で顔を覆った。そんなことは考えてもいなかった。やがて蝶子は顔を上げて言った。
「彼は、ミュンヘンに行かなくてはいけないんですか」

「被害者本人が意思決定し、行動できる状態ではないので家族の意思が最優先になりますね。また、海外にいる場合は、保険の有無や病院への支払い能力なども問題になって来るんじゃないでしょうか」

 よくわかっているわね。教授には払えても浮浪者同然の私たちには払えないってことを。

「彼がミュンヘンに搬送されるとしても、少なくとも私はミュンヘンには参りません」
「では、連絡先は」
「私が現住所としてお報せしたバルセロナのコルタドの館にお願いします。週に一度程度は必ず連絡するようにいたしますので」
「わかりました」

「フォン・エッシェンドルフ教授は、いつここにお見えになるんですか? もし、伺うことが許されるなら」
「もちろんかまいませんとも。お父様は午後にはお着きになるそうです。お着きになったらすぐに病室にご案内いたします」
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Posted by 八少女 夕

ヒヒが座っていた場所

これは南アフリカのカルーの夕陽


思い出した光景があります。

ケニアのマサイ・マラ国立公園に三週間ほど滞在した事があります。ムパタ・サファリ・クラブという、日本人の経営するホテルに滞在しながら環境と自然について考えるムパタ塾に参加したのです。ムパタ塾の事は話すと長くなるので、今回はこれまで。

で、その中央棟の前にバブーン・バーと呼ばれていた場所がありました。テラスに大きな石でバーを作っていたのですが、誰もいない時にバブーンがぽつんと座って夕陽を眺めているのだそうです。

そこから見る夕陽の壮大さは、なんとも言葉を失うものでした。見渡す限りの草原に、点のように小さく見える草食獣たちの群れがいて、そのずっと先に地球が本当に丸いのだとわかる地平線が広がっているのです。そして、そのすべてが真っ赤に染まっていきます。赤く、赤く、暖かい色なのに、苦しくなるほどの切なさが胸に迫る色です。

あの時、私はまだ現在の夫に出会っていませんでした。彼に初めて会う、一ヶ月ほど前の事だったのです。ずっと一人だったし、これからも一人なのだと思っていました。しっぽは出さないように慎重にしていましたが、たぶん多くの人に見破られていたように、社会から浮いていました。無理矢理合わせて生きるには、違和感が大きくなりすぎていました。どこに行っていいのか、何をすればいいのか、わからなくなっていました。

群れから離れて、ぽつんと夕陽を眺めているというバブーンの話が、自分に重なりました。

日本に帰ってから、新しく学校に通って、再び食べていける職に就きましたが、たぶん心はまだあのバブーン・バーで夕陽を眺め続けていたのだと思うのです。彼から、最初の手紙が着くまで。

型破りな人で、たぶん99%の女性は、彼のような伴侶は絶対に選ばないと思います。現実に、私にはライヴァルの女性はまったくいません。(男性にはとてももてるのですが)
でも、たぶん、私と一緒にバブーン・バーに黙って座ってくれる、たった一人の人です。

この世は不思議に満ちています。あり得ないと思っていたことが起こりました。探していたものが見つかりました。私は、あまり信心深い方ではありませんが、ある聖書の言葉が心にしみます。「求めよ、さらば与えられん」
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Posted by 八少女 夕

スイスらしい雪山

以前、友人が日本から来た時に、天候が悪くて雨が降っていたのですよ。周りはどんよりと暗くて、高い山も見えず「なんかうちの田舎にいるのと変わらない風景かも」と首を傾げていました。それが翌日に晴れ渡って、青空に映える雪山を見た途端「やっぱりスイス!」と。つまり、スイスってのは、こういう風景なんですよね?

ベルニナ山

これは、グラウビュンデンのてっぺんを通るベルニナ急行の車窓から撮った光景です。たぶん、ピッツ・ベルニナ。でも、確かではありません。

もう、バイクの旅は難しくなってきたので、しばらくは遠出をするのは電車になります。車窓から眺めれば、凍える事もなく、雪山の光景もとても美しい。今年もスイスの冬も楽しもうと思っています。
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Posted by 八少女 夕

喫煙シーンの話

「夜のサーカス」の感想で篠原藍樹さんが目ざとく見つけてくださったのですが、実はこの小説では、私には珍しく喫煙シーンをたくさん書いています。

私は吸う方を毛嫌いする方ではありません。もちろん、閉め切った部屋でガンガン吸われるのは好きではありませんが。一方、私は非喫煙者です。今まで吸った事もないし、これだけ吸わずに来たのだから、これから始める事もないだろうと思います。それに、私が吸っても絵にならないのですよ。個人的には、マレーネ・ディートリッヒみたいだったら吸うのも絵になると思うんですけれどね。また値段も高いものですから、どちらかと言えばチョコレートやオレンジジュースにそのお金を遣った方がいいやと思ってしまうわけです。

まだ、煙草を吸った事のない若い方は、出来る事ならば、手を出さない方がいいと思います。理由は、ここに述べる必要もないと思うので、省略。

しかし。それでもなぜ「夜のサーカス」に喫煙シーンがたくさん出てくるかというとですね。単純に作者の都合です。とっても便利なのですよ。

小道具としては、吸い殻の扱い方で人物の性格を描写する事が出来ます。また、とても自然に「そこにいて欲しい人」を登場させたり、不自然にならないように退場させたりする事が可能なのです。

イメージとしては、マッダレーナはメンソール系の細い煙草を吸っていて欲しい。でも、ヨナタンはもうちょい男っぽいものを吸っていて欲しいですね。でも、セブンスターではありません。イタリアですから。
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Posted by 八少女 夕

秋の光景

先日、ちょっと書いた事で、心配してくださったみなさま、ありがとうございました。大丈夫です。大丈夫すぎる所が問題なのかもしれませんが、落ち着いて普通に生活していますのでご安心を。



水曜日に発表した小説「落葉松の交響曲(シンフォニー)」ではエンガディン地方の落葉松を取り上げましたが、グラウビュンデンの秋の色は黄色が主流です。真っ赤に紅葉する植物もあるのですが、やはり絶対数が違うのです。

秋のレ・プレーゼ湖

これは、私たち夫婦が大好きな、イタリア国境のすぐ側にあるレ・プレーゼ湖で見た光景です。弱い陽の光、透明な湖、そして黄葉。

筆舌に尽くしがたい光景があります。そこには入場料もなければ、期日もない、ただその場にいて、眺める時間を持てた者だけが享受できる至福の時間です。
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Posted by 八少女 夕

「自分の部屋のこだわりの一品、教えてください!」

飾っている絵やポスターの類いでしょうかね。我が家となっているフラット、日本のいい方でいうと1LDKなんですが、一部屋が大きいんですよ。寝室は、クイーンサイズのベッドが二つ置いてあって、まだ余裕があります。リビングはその三倍くらいありましてね。でも、あまり家具を置いていないんです。で、壁にはお氣に入りの絵がかかっているわけです。

ひとつは、彼がペンギン好きの私のために南アフリカの半素人の作家から購入したジャッカスペンギンの水彩画。もうひとつは、イタリアのストレーザで購入した、ちよっとレトロなポスター。それから別の壁には、友人が撮影して引き延ばしてプレゼントしてくれた私たち夫婦の写真。アルハンブラ宮殿のポスター、ヴェネチアで購入したエッチングを印刷したものなど、白い壁に少しずつお氣に入りの絵を飾っています。

こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当山本です今日のテーマは「自分の部屋のこだわりの一品、教えてください!」です。落ち着く場所はどこ?と聞かれたら、「自分の部屋」と答える方は、沢山いらっしゃるのではないでしょうか?部屋の香りだったり、ゆっくりできるクッションがあったり、大好きなものに囲まれている等、理由は様々だと思われますがそんなあなたの部屋にあるこだわりの一品をトラックバックで自慢しち...
トラックバックテーマ 第1544回「自分の部屋のこだわりの一品、教えてください!」

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狩猟料理の話

そろそろ狩猟シーズンも終わりなのですが、ちょっと紹介してみましょう。

スイスでは九月から十一月の初めくらいまでが狩猟シーズンです。狩猟は関係官庁によってきっちり管理されていて、誰が何を何頭(匹)猟っていいかまで決まっています。「お、あそこにちょうどいい鹿がいる、撃っちゃえ」というわけにはいきません。もちろん、免許が必要です。

野生肉の季節

で、そうして狩られた動物たちの頭は当然ながら剥製になって、狩った人たちのリビングに誇らしげに飾られるのですが、肉や皮は、専門家が引き取っていくのです。その肉が、秋の間「ヴィルド(ワイルド・ミートの意味)」として、レストランの特別メニューになるわけです。

レストランで出るのは鹿の類い、または野生の山羊の仲間がメインで、個人の家で調理されるものはこれにウサギなどが含まれます。

写真は狩猟肉のソーセージです。付け合わせに紫キャベツ煮、栗の甘露煮、芽キャベツ、スペッツィリというパスタの一種、それに洋梨のコンポートに赤いジャムを添えたものが見えます。大体この辺がお決まりの付け合わせなのです。なぜ食事にジャムが付いてくるのか、いまだにわかりませんが、とにかく、狩猟肉にはたいていこれらがついてくるのです。
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【小説】落葉松の交響曲(シンフォニー)

読み切り小説です。「十二ヶ月の組曲」の11月分。この小説は、ブログのお友だちである十二月一日晩冬さんに捧げちゃいます。何度もリクエストをいただいていた「○小説」の一部なので。晩冬さんが一日もはやくお元氣になられますように。「私○説」といっても、かなり色々と変更してあります。固有名詞、住んでいる所、二人の職業、出会った場所など。

で、来週から、再び「大道芸人たち」の連載を再開します。もうお忘れかと思いますが、まだ完結していませんので。




落葉松の交響曲(シンフォニー)
〜十二月一日晩冬さんに捧ぐ〜

 もう、ただのジーンズだけでは寒すぎる。タイツを履いて、ジーンズの上からは風を通さないバイク用のパンツを履く。ブーツもきちんと履かないと足首から冷えるだろう。ジャケットにもライナーを付け、もちろん厚手の下着としっかりとしたセーターを着込む。

 十一月の初め。年によってはもうバイクでの峠越えは不可能だ。雪が降ってしまったら峠は通行止めになる。エンガディンが小春日和に和んでいても、チャンスはなくなる。

 今年はラッキーだった。九月に一度は雪が降ったものの、その後は記録的な好天に恵まれた。そして、この週末は、スイス中で雨が降っているというのに、グラウビュンデンだけは紺碧の空が広がり格好のバイク日和になった。たぶん、今年最後の。

「ねえ。早く行かないと、夜になっちゃうんじゃないの?」
絵梨はしびれを切らして声を掛けた。リュシアンはどうでもいいことにやたらと時間がかかる。普通は出かける前に時間がかかるのは女と相場が決まっている。でも、この二人の場合は逆だった。絵梨はそのつもりになれば、五分で出かける用意ができる。化粧だの香水だのといった面倒は普段から省略していた。リュシアンは、もちろん化粧などはしない。しかし、どのサングラスを持っていくかとか、靴がもう一足必要だとか、出かけると決定してから実際にバイクに跨がるまでには常に一時間近くかかるのだ。

 絵梨がそれまで知り合った男たちにリュシアンのようなタイプはいなかった。車の免許を持っていないのはいいとして、自宅も普通のフラットとは違う。昔は納屋だった建物を改造した、誰かの趣味の小屋だった所を借りて改装して住んでいるのだ。職場もそこだ。農作業用の各種の車両、もしくは家庭用の芝刈り機などを修理して、場合によっては転売する。もちろんネクタイもジャケットも持っていない。客はリュシアンの礼儀や見かけにはまったく興味を示さなかった。人好きのするおしゃべりな態度と確かな技術、重要なのはそれだけだった。芝刈り機の修理などでまともな収入があるのかと絵梨は訝った。何の秘密もなかった。リュシアンの生活はかつかつだった。銀行預金が100スイスフランに達しない成人が存在するなんて絵梨には信じられなかった。

 絵梨がリュシアンに出会ったのは、ケニアのマサイマラ国立公園だった。会社を辞めてやって来たアフリカ旅行。サファリツアーがバンガローについてすぐ、他の客たちは最初のサファリに行きたがった。けれど絵梨は到着までのひどい道のりですっかり車酔いしてしまい、一人バンガローに残ったのだ。少し氣分がよくなった絵梨はメインバンガロー向かった。そこ世界中からの観光客たちが優雅に座っていた。日本人は絵梨一人だった。ほとんどは連れがいて絵梨はそっとバーの一番端に佇んでトマトジュースを注文した。その姿を見て話しかけてきたのが、一人でバイクで旅行をしているというリュシアンだった。スイス人という自己紹介を聞いて、絵梨はほとんど興味をそそられなかった。そんな寒い国に用はないと思ったのだ。それが、何故か絵梨はいまスイスに住んでいるのだ。しかも、納屋なんかに住んでいる男と。

「いますぐ、行けるよ。そんなに急いだって、アルブラ峠は午前中は寒いんだから」
リュシアンはようやくヘルメットを被り、ジャケットの中にマフラーを突っ込みながら出てきた。二時間。せっかくの土曜日、もっと寝ていればよかった。絵梨はほんの少し天を見上げただけで何も言わなかった。いちいち怒っても仕方ないのだ。十年も一緒にいれば、寛容の範囲はお互いに広がっていく。

 たぶん日本にいる友だちにはわかってもらえない、この奇妙な男との結婚生活について、彼女は失敗したと思ってはいなかった。絵梨は上手い具合に仕事を見つけた。スーパーマーケットの店員だが、ひと月に3300フランの給料をもらっている。ごく普通に生活していれば困ることはない。リュシアンの納屋改造住居の家賃はたったの850フランだが、夏は快適で、冬も暖かい。リュシアンはあいかわらず宵越しの金を持たなかったが、借金をしてくるわけではないのでそれでいいと思うようになった。日本の両親にはとても実情は口には出来ないが。

 絵梨はたくさんの選択の余地がある中からリュシアンを選んだわけではなかった。有り体にいえば、彼女に明白なプロポーズをしたのは、世界広しとはいえ、彼一人だった。だが、だから結婚したわけでもない。リュシアンは当たり前のように言った。
「僕たち、生涯一緒にいるよね?」

 そんな事を言われても、私、移住してこなくちゃいけないし、そんなに簡単じゃないんじゃ? 絵梨は人ごとのように考えた。だが、家族とも滅多に会えない異国に来ることになっても、この人となら人生を分かち合える確信があった。随分と変わった人生になりそうだけれども。

「お前の嫁、まだ、出て行っていないのか?!」
時々、口の悪い知人が数年ぶりにリュシアンを訪れてきては、まだ絵梨がいることに驚愕して言う。するとリュシアンは胸を張る。
「ふふん。日本人妻ってのは、スイス女とは違うんだよっ」

 それ、日本人だからじゃありませんから。絵梨は思う。普通の日本人の女の子は、納屋に住んでいる時点でアウト・オブ・クエスチョンだから。

 リュシアンはYAMAHAのXT 600 Ténéréのエンジンを吹かした。1987年モデルで鮮やかな青地に黄色いラインが走っている。絵梨は「いくね」と言って後ろに座った。真っ青な空には雲一つない。スイスの他の地域、たとえばチューリヒやルツェルンが、この時期にはスープのような霧に覆われて、骨がきしむような憂鬱な日々に苦しみだすというのに、グラウビュンデン州はヨーロッパ中が羨むような好天に恵まれるのだ。リュシアンと絵梨が向かうのは、エンガディン地方だった。鏡のように澄み切った青い湖、それに負けない紺碧の空。四千メートルアルプスの山々は新雪で輝き、もっと低い場所は落葉松の黄色に覆われる。鮮やかな色のシンフォニーだ。そこにリュシアンと絵梨は加わるのだ。青と黄色のTénéréに乗って。

 落葉松の葉が一斉に落ちる日があるという。それは《黄金の雨》と呼ばれているのだそうだ。風に吹かれて全ての針葉が一度に空中に舞う。風に旋回しながら、太陽の光に輝いて大地を次々と黄金色に染めていく。冬になる前の選ばれたたった一日にだけおこる、色の響宴だ。絵梨はいつかその現象をこの目で見たいと願い続けてきた。東京に住んでいるなら仕方ない。落葉松林に行くチャンスなんて、それこそ生涯に数回だから。でも、グラウビュンデンに住んでいるのだ。エンガディンには毎年行く。もちろん山が黄色に燃え立っている時だけではないのだけれど。

 絵梨は冷たい風と柔らかい陽の光を顔に浴びて、移ろいゆく景色を眺めていた。峠に至る道はアルブラ川沿いに蛇行してゆく。ゴツゴツとした岩場の両脇には豊かな森林が広がる。琥珀色、橙色、緋色、鬱金色。ありとあらゆる色が重なりあい、風に揺れ、射し込む陽の光に輝く。冬が来る、その前に生命の勝利を宣言している。そして、その美しい世界には、エンジン音を響かせて走るTénéréと、それを操り彼女を風の中へと連れて行くリュシアンだけが存在する。黒いジャケットの背中は、絵梨にとって唯一の確かな存在だった。

 ある夕暮れ、仕事から帰ってきた絵梨をリュシアンは急いで呼んだ。
「エリ、すぐに来て!」

 何事かと思って、声のする方に急ぐと、彼は空を指差した。薄葡萄色に暮れ泥んだ大空にぽっかりと三日月が浮かんでいた。見たことのないほど完璧な形だった。絵梨は泣きたくなった。東京で、こういう景色を見つけた時、彼女はいつも一人だった。誰も足を止めない。心に押し寄せるなんとも言い表せない想いは、誰にも打ち明けられなかった。誰にもそんなことを聴く時間と心の余裕もなかったのだ。誰かにわかってもらえると期待したこともなかった。でも、もう彼女は一人ではなかった。

 風の中で、彼の背中を見つめる度に、絵梨の心にはあの時と同じ想いが浮かんでくる。世界がその美しさをこれでもかと見せつける時に、彼と同じ光景を目にしていることが彼女の心を躍らせる。それは恋情とは違う種類の想いだった。もっと深い所にある歓びだった。ビッグバンが起きて一つの原子が宇宙へと広がった時に離ればなれになってしまった片割れと再会した、そのくらい深い歓びだった。他には何もいらない、この人と出会えて本当によかった、魂が大声で叫ぶのだ。納屋に住んでいることや、食費を出すことも出来ないほど財布が軽いこと、それでいて勝手に友だちを連れてきては食事を作るように突然頼んだり、連絡もしないでいきなりドライブに行ってしまうことなど、日々の生活の中では文句を言うことは山ほどある。それでも絵梨は日本に帰ろうと思うことはなかった。私はこの人と一緒にいるのだ。やっと出会えたのだもの。

 月面のような殺風景のアルブラ峠は肌を刺す冷たい風に凍えそうだった。その風の大半はリュシアンが受けている。首をすくめて彼の背中の影に隠れれば、耐えられないほどの寒さではない。空の色は更に青く透き通った。カーブを曲がり、ゆっくりと降りて行くと、目の前に明るい黄色い世界が広がる。当たり年だわ。絵梨は微笑んだ。世界に名だたるエンガディンの秋だ。降りて行くほどに、寒さは和らぎ、代わりに陽の光の優しさが増してくる。こんなに清冽な風景があるだろうか。Ténéréはサン・モリッツを通り過ぎ、青く輝くシルヴァプラーナとシルスの湖に沿ってオーバー・エンガディンを走っていく。落葉松の黄色は暖かい。

「ああ、素晴らしい……」
リュシアンがぽつりとつぶやいた。そうよね。今年も来れて本当によかったわよね。答える代わりに絵梨は夫の体に手を回してぎゅっと抱きしめた。彼は振り向いて笑った。ちょ、ちょっと。いいから、前向いて運転して!

 風は吹かなかった。そんなに都合いいものではなかった。太陽が柔らかく暖かく降り注ぐエンガディンの大氣はぴたりと静まり返り、落葉松林は絵画のように微動だにしなかった。こんなに晴れているのに雨は降らない。たとえ黄金の雨であっても。

「あちゃ~、今年もダメみたいだね」
リュシアンが言う。絵梨が《黄金の雨》を見たがっていることは重々承知しているが、ダメなものはダメだ。そう思っているような氣のない言い方だった。そう、待っていてもどうしようもないのだ。絵梨は微笑んだ。
「じゃあ、来年もトライしようね」

 リュシアンは笑って、絵梨の髪をくしゃりと乱した。

 来年も一緒に来る。再来年も、十年後も。リュシアンか、絵梨か、それともバイクがダメになるまで。遠く離れた所で産まれた二人が地球の果てで出会い、そして一緒にいる。その奇跡の確率は《黄金の雨》の場面に出くわすよりも低い。Ténéréの起こす風を受け止めながら、絵梨はリュシアンに抱きついた。

(初出:2012年11月)
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Posted by 八少女 夕

はまりまくり

先日、ハロウィン記念にとアップしたフォトレタッチ作品。あれ以来、フォトショップによるコラージュにはまっています。

「夜のサーカス」の各章に表紙的なイラストをつけたくなった最初のきっかけは「夜のサーカスと孔雀色のソファ」に出てきたレカミエ・ソファです。そういう種類のソファがあるのですが、どのくらいの方がその名称を知っていて、即イメージ出来るか怪しいと思ったのですよ。それで、写真で補足したくなったのです。

で、ただの写真じゃ我慢出来なくなって、レタッチして、色を変えて、さらにペイズリー柄をつけて、という具合にどんどん深みにはまり、さらにライオンをくっつけたりなんかしたものだから、午前様。そして、一つつけたら、全部につけたくなって、過去の分から、これから発表する分まで、合計で七枚のレタッチ+コラージュ作品がすでに出来てしまいました。こうなったら全部の章につけるつもりです。
ご覧になりたい方はこちら

可能な限り、自分の撮った写真をベースに作りますが、難しいものもありますので、著作権フリーの素材を組み合わせています。自分でイラストが描ければ、もっと自由になるんでしょうが、「夜のサーカス」に関してはこれでいいかなと思っています。
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Posted by 八少女 夕

寝ているには惜しい


この建物、何だと思います? 教会、修道院? そう昔は修道院だったのです。今は病院なのです。

Klinik St. Katharinental

写真だと、私がびっくりしたインパクトが伝わっていないような氣がします。門構えといい、秋の美しい樹々の様子といい、カフェテリアの横を流れていくライン川の光景といい、あまりの美しさに訪れた当初の目的を忘れそうになったほどです。そう、私たちはお見舞いに行ったのです。

病院と言っても、ここには大手術をするような施設はありません。そういう病院はもっと近代的な建物です。でも、術後の経過を見る、もしくはリハビリ目的で入院しているような人たちは、近代的な建物である必要はなくて、むしろこの美しい、静謐な空間でゆっくりと癒されていくのは素晴らしいことだと思います。

趣だけではない、けれど機能だけではない、そのバランスの作り方が、この国は本当に上手だと感心します。そう、スイスなので、たとえ昔に建てられた古い建物であろうと、超がつくくらいに清潔です。

この記事には追記があります。下のRead moreボタンで開閉します。

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コメでウゾさんが、ちょうどそういう設定の建物の出てくる小説をお書きだというので、嬉しくなってもう一枚。中の写真。それっぽいでしょう?

修道院を改装した病院の中
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Posted by 八少女 夕

これがたまらない

何故かはわからないのですが、私は落ち葉を踏むのが異様に好きです。フェチと言っても構いません。

彩る絨毯

スイスは乾いています。だから、落ち葉もかなりカラッカラになってくれます。ぱりぱりっ、しゃりしゃりっと、靴の下に感触を感じてつぶすのが、もうたまらないです。で、田舎なんで、落ち葉の量も半端じゃないんですよ。もう、宝の山。落ち葉フェチはこのあたりには他にはいないらしく、ひとりで踏み放題です。

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Posted by 八少女 夕

パルミジアーノ・レッジャーノ

今日は、食べ物の話です。「またかよ」ですか? はいはい。その通り。

ルッコラとエビのピッツァ

今は日本のちょっと大きな都市に行けば、当たり前のように食べられる本格的なイタリア料理です。スイスでは、う〜ん。やっぱりイタリア語圏に近い方がいいですね。

私の住んでいる地域は、100年ほど前に鉄道の敷設のために大量のイタリア人が出稼ぎに来たので、今でもイタリア人がそこそこいて、ちゃんとしたピッツァ窯のあるリストランテがあります。だから、けっこう美味しいイタリア料理が食べられるのですよ。

スーパーに行っても、スイスだけあって、チーズにかける情熱はすごく、かなりの面積のチーズ売場があるのですが、スイス産のチーズに負けずに大きな顔をしているのがイタリアのチーズ。特にパルミジアーノ・レッジャーノ、もしくはもうちょっとお買い得な値段のグラーナ・パダーノは必ずあります。

粉チーズになったものもありますが、私は時々固まりのままも買ってきて、薄く削ってサラダにくわえたり、ルッコラと生ハムに散らしてバルサミコ酢をかけて前菜にしたりと、楽しておしゃれにしたい時の決め手に使っています。お客さんが来る、凝った料理を用意する暇がない、というような時にはおすすめですよ。
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Posted by 八少女 夕

「暖房器具出しましたか?」

って……。朝の通勤は、氷点下なんですけど! あ、また秋が戻ってくるっていっているので、少しは持ち直すと思いますが。

暖房器具はセントラルヒーティングが8月末からついています。で、今は薪ストーブでガンガン火を焚いております。この間雪も降ったし。ふう、スイスって。

薪ストーブ

ストーブに薪をくべて、着火するの、最初は怖かったですね。いまは、ふつーにちゃっちゃと出来ます。灰をかいていると「あたしゃシンデレラか」と一人で突っ込みたくなります。

こんにちは!トラックバックテーマ担当の新村です今日のテーマは「暖房器具出しましたか?」です!いよいよ寒くなってきましたねー夜は結構寒いので、お風呂にじっくり入るようになりました(夏はシャワーで済ますタイプです・・・)風が吹くと最近はお昼でも少し寒いですねブーツを一回履くとやめられませんっ新村は、そろそろコタツを出そうか悩んでるところです。今から出すと冬がもたなくなるのではと不安で、何とか11月中旬...
トラックバックテーマ 第1540回「暖房器具出しましたか?」

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リンクのみなさんについて - 4 -

リンクしていただいているブログのお友達の紹介の第四弾です。



今日も今日とて自宅警備 ぴゃす〜さんのブログ
ご自身の好きな文学・音楽・小説などの紹介のほか、かつての愛犬シロちゃんの思い出、思わずマウスを持つ手が固まるすごい失敗談、人柄のしのばれるほのぼの話などが淡々と更新されていくブログです。つい最近、実は私と同じく青春の多くの時間を合唱して過ごしていた事が発覚! すっかり盛り上がりました。

なんとなく そうへいさんのブログ
きっちりとした視点でなさる本や映画のご紹介も見逃せませんが、なんといっても日本の伝統芸能である能のことを書かれる記事がすごい。何がすごいかと言うと、興味はあっても素人すぎてついていけない私のようなダメなやつにでもわかるように、とってもわかりやすく書いてくださるのです。今さら恥ずかしくて人に訊けないと思っていらっしゃる方はここでお勉強しちゃいましょう。

無限光線―歌うゆえに我はあり― Witmanさんの詩のブログ
もう一つ、写真のブログもお持ちですが、こちらで先に知り合ったので。郊外で無農薬のお野菜を作りながら、心の奥に染み入る詩を作っていらっしゃります。その晴耕雨読の地に足がついた生活にちょっと憧れている私です。



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