scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

虎視眈々と

「美味しい話」カテゴリーにしようか迷ったのですが、いちおう「写真」にしました。まだ食べられないし。

苺の花

一昨年だったでしょうか。元同僚が苺の苗を一つくださったのですよ。しかもスイスの平均的なまずいいちごと違って、かなりおいしい苺がなるのです。まあ、年に苺が二つ三つ食べられる、ちょっとしたお楽しみだったのです。それを去年の夏に連れ合いがかなり大きめのプランターに植えたところ、土の栄養価がよかったのか、ものすごい勢いで増えました。それが今年はほぼ全て花を付けだしたのです。

一つの苗に四つか五つの花が咲いていますので、順調に行けば50個近いいちごを食べられる事になりそうです。しかし、狙っているのは私と連れ合いだけではありません。

ここのところ雨が多くて、ものすごい勢いでカタツムリとナメクジが増えているのですが、奴らも苺を狙っています。私と連れ合いは厳しく監視の眼を光らせていますが、さてさて、この戦い、どうなることやら。
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Posted by 八少女 夕

「中華料理で好きなメニューは?」

今週二度目のトラックバックテーマ、実は先週アップ予定だった記事を後送りしたのでこういうことに。でも、美味しい話題は外せなかったかも。

で、「中華料理で好きなメニューは?」なんですが。

日本で外食する時、それからスイスの中華料理屋で食べる時、そして自分で作る時、それぞれに別のメニューが好きなのです。

日本にいる時に好きなのは八宝菜。とくにあの一番上のウズラの卵がたまりません。チンゲンサイのクリーム煮も好きだし、青椒肉絲も大好きです。大体において、日本で中華料理は二人で食べたりなんかしませんからね。好きなものをいろいろと頼んで楽しめますよね。

スイスでは、日本のようにみんなで少しずつ楽しむ習慣がなくて「自分の注文した一品を食べろ」という感じなんですよね。いや、お店の人はそうは言わないんですが、一緒に食べるヨーロッパ人がそういうオーラを醸し出してくれるんですよ。一応、うちの連れ合いには「ほら、いろいろ食べれた方がいいよね」と教育はしているんですけれどね。

で、出てくるメニューも日本と違って、八宝菜や青椒肉絲は滅多に見ないので、一番のお氣に入りの座は「焼鴨」に明け渡しております。皮をパリパリになるまで焼いたカモのお肉ですね。これはかなり好きです。

自分で作る時には、材料と手間と火力なども限られていますので、炒飯をつくり、エビチリソースかジャガイモと細切り肉の炒め物、それに、野菜炒めもしくは白菜のクリーム炒めなどを出しています。個人的にはちょっと手間がかかりますが春巻きを作るのも好きですね。

ああ、お腹空いてきた。次に日本に帰ったら中華街に行って飲茶したいな〜。

こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当加瀬です(^v^)/今日のテーマは「中華料理で好きなメニューは?」です。最近、いつもに増して食欲が旺盛な加瀬は、気がつけば中華料理屋でラーメンを食べている事が多いです…。ラーメンは毎日3食でも食べ飽きないくらい、大好物です!基本的に中華料理は大好きで、何かあったらすぐ大手中華料理屋へ駆け込むほどです。なんであんなに魅力的なのでしょうか…><特に好きな...
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Posted by 八少女 夕

【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (4)龍の宵 -2-

先週の続きです。このシーンは、いろいろとつっこみどころも満載かと思いますが、作者本人の一番のつっこみどころは「シン君、風邪ひくから」でした。十月ですからね。

本編を知らない方のために一つだけ解説をしておきます。『ヴィジョン』という言葉が出てきます。これは瑠水の母親である摩利子が持っている特殊能力で、相手が自分ではコントロールできないほどの強い感情を持つ時に、それが彼女には映像として見えてしまう、というものです。見えたからといって何か出来るわけではないのですが。(またしても繰り返しますが、フィクションです)

さて、6月に入ってから発表する次の章では、この小説の影の主役が登場します。といっても人物ではないですよ。ぜひまたお読みいただけると嬉しいです。


「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」を読むこのブログではじめからまとめて読む
あらすじと登場人物


この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物



樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(4)龍の宵 -2-


「瑠水!」
池から瑠水を引き上げると真樹は必死に胸を押した。消防士なので応急処置は身に付いている。大量の水が流れ出る。瑠水。いったい何をやっているんだ。何故こんなところで溺れかけているんだ。

 樋水村に戻ると、真樹は真っ直ぐにこの池にやってきた。村の全ての家は堅く扉を閉じていて、唯一明るいのは月だけだった。その月が異様に光りながら神社を照らしていた。胸騒ぎはどんどん強くなった。あのおかしな神社にいる。

 真樹の妙な予感は当たっていた。見ると風もないのに突然豪流になった池の中で瑠水が溺れかけている。真樹はすぐに飛び込んで瑠水の体ををつかんだ。やっとのことで意識のない瑠水を岸まで連れて行ったのだ。

 応急処置を終えると、真樹は改めて月明かりのもと周りを見回した。岸に池のほとりに次郎の住んでいる離れがある。広い縁側がやけに明るく月に照らされている。真樹は瑠水を抱いてそこに連れて行った。

 真樹自身にも次第におかしなことが起こりはじめていた。体中が痛くなってくる。血が激流となって流れている。欲望が身をもたげている。すぐ側に意識がない下着だけの姿の瑠水。瑠水に対して欲望を感じたことは今までもいくらでもあった。だが、これほどの激しさで感じたことはなかった。今は、そういう時じゃないだろう。真樹は瑠水から必死で離れた。あと一度でも触れたら、自分が何をするか保証できなかった。

 痛みに耐えながら、真樹は瑠水をそのままにして、神社を出た。『たかはし』までたどり着くと、必死でベルを鳴らした。茫然とした一と怒りに燃えた摩利子が出て来た。

 だが、二人はびしょぬれの真樹の様子を見て顔色を変えた。摩利子には真樹の体から、『龍の媾合』の時の金の光が飛び回っているのが見えた。

「今すぐ、次郎先生の離れに行って下さい。瑠水が、溺れかけた」
「シンくん。あなた、どうして……」

「何故戻って来たのかとか、どうしてわかったのかとか、訊かないでくれ。俺にも何もわからないんだ。ここに連れてくることもできなかった。俺はいま瑠水に近づけない。近づいたら、とんでもないことになる」
そういって、痛みによろめきながら、村の外へと向かって行った。

 一と摩利子は急いで神社に向かい、意識を失っている瑠水を見つけた。水は飲んでいなかった。


 翌朝、瑠水は自分のベッドで目を覚ました。だが、摩利子と一の様子から、昨日のことが夢ではなかったことを知った。摩利子たちは瑠水が『水底の皇子様』に助けられたと思っていることに驚いた。意識のなかった瑠水にも黄金の光が舞っていた。だが、『龍の媾合』の怪異現象には至らなかった。つまり、それは真樹があの状態で帰って行ったことに関係があるのかもしれないと思った。

「内密に話があるんです」
一夜明けて出雲から戻って来た次郎を捕まえると、摩利子は『たかはし』の裏手に連れて行った。

「どうなさったんですか」
「『龍の媾合』で何があるのか、教えてほしいの」
単刀直入に摩利子は訊いた。

 それだけで十分だった。九年前の『龍の媾合』で次郎の心に刻まれた深いショックは『ヴィジョン』となって摩利子の心に映像化された。

 龍王の池から起こる金色の光、次郎と恭子の二人に起こる激しい痛みと性衝動、体からこぼれた金色の光は、二人がひとつとなった時には激流となりお互いの中を駆け巡る。それから氣の遠くなるほどの絶頂感と裏表になった苦しみ。お互いに動くこともできないほどの苦痛の中で溢れる虹色に蠢く金の光。それが溢れて屋根を突き破り、外に溢れ出す。生と死、歓喜と苦痛、過去と未来、体と魂、愛と憎しみ、善と悪が全て同じものであるというカミとの統一体験をする。

 堪えられないほどの苦しみでありながら、そこに居続けたいと願う相反する経験は、心の準備をしていた次郎にとっても忘れられないトラウマになった。何も知らずに嫁いできた恭子のショックは計り知れないものだっただろう。次郎はそのために妻を失った。その果てしない無力感と喪失感が摩利子に伝わった。

 これが『龍の媾合』なんだ。武内宮司の奥さんを自殺に追い込み、新堂さんとゆりさんの人生も大きく変えてしまった。

「ごめんなさい。次郎さん。何も言わなくていいわ。私、いま見えたから」
震えながら、次郎は両手で顔を覆った。摩利子は申し訳なく思いながら次郎が立ち直るのを待った。

「摩利子さんは、見えるんですよね、忘れていました」
「強い感情のときだけね。ごめんなさい。普段は自分が知りたいことのために『ヴィジョン』を利用するなんてことは絶対にしないんだけど、今回だけはどうしても必要だったの。昨夜、瑠水に何が起こったか知りたかったから」

「瑠水ちゃん? なにか起こったんですか?」
「ええ。あの子、よりにもよって昨夜龍王の池で泳ごうとしたらしいの。何があったか一切言わないんだけれど、そこで溺れかけて。どういうわけだかシンくんがその場にいて、瑠水を助けてくれたの。でも、完全に介抱することができないで、私たちに助けを求めてきたの。その時にシンくんはものすごく体が痛そうで、今は瑠水に近づけない、近づいたらとんでもないことになるって。で、そのまま帰っちゃったんだけれど、シンくんにも瑠水にも金色の光が蛍みたいに飛び交っていたの」

「今は近づけない、といって痛そうに帰っていったんですね」
「ええ」
「だったら、瑠水ちゃんは無事ですね。シンくんは堪えたってことですよ。あれがはじまってしまったら、もう離れるのは不可能ですから」

「そう。でも、これって……」
「『背神代』と『妹神代』にしかおこらないことが、二人に起こったってことですよ。もし、シンくんが堪えきれなかったら、『龍の媾合』の異変が起こって完全にお社と樋水村の既成事実になってしまったことでしょうね」

「瑠水は樋水から遠ざけなくちゃダメね」
「瑠水ちゃんをあの苦しみから守るためには、そうするしかないでしょうね。ただし、守りきれるかどうかは自信がありませんが。もし、二人を次の『背神代』と『妹神代』にするという龍王様の決定なら、我々が何をしても同じでしょうから」

「ご神体はともかく、武内先生には隠せるでしょう、今なら」
「たぶん」

 一と摩利子はこのことはどんなことがあっても武内宮司に隠し通すことにした。次郎の協力もどうしても必要だった。瑠水に樋水の危険が迫っている。瑠水には真樹が戻って来て瑠水を救って行ったことは話さなかった。娘の命を救ってくれた真樹には申し訳ないが、このまま二人を放っておくわけにはいかなかった。
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Posted by 八少女 夕

「ヒゲに対する想い」

トラックバックテーマにこんなのがありましたよ。「ヒゲに対する想い」ですって。

日本だとつるつるにしていらっしゃる方が多く、同年代でひげを生やしている男性を滅多に見かけないのですが、私はかなりヒゲを好んでおります。はいはい、わかってますよ、オヤジ好きだって言いたいんでしょ。その通りです。

といっても、インドの聖人のように長ければいいってものではなく、必死に手入れする方が好ましいというわけでもありません。仕事で深夜になってしまい朝剃ったのに生えてきてしまっているなんてシチュエーションや、無精髭で適当に増えてしまっているなんてのにきゅんとなるのです。

成人男性が生きているかぎり、それは生えてくるもので、そこに女と違う男のフェロモンを感じるとでもいいましょうか。だから、個人的には男性がエステに行って毛を抜いているような絵柄は苦手です。

私の小説で、恒常的にひげを生やしていて、しかもきちんと手入れしているのは二人。「大道芸人たち」のカイザー髭ことエッシェンドルフ教授と、「夜のサーカス」の団長ロマーノです。この二人は個性としての髭男。どちらもクラッシックな髭のお手入れセットが洗面所に並んでいるはずです。

小説の中で普段は生やしていない人の髭が登場したのは憶えているかぎりでは二回ですね。「樋水龍神縁起」の「冬、玄武」で主人公が三日三晩不眠不休でいた後。それから「大道芸人たち」でとある人物が洗面室にこもってひげを剃っていたというシーンがあります。どちらも、生きている男ならこういうシチュエーションに髭が登場してもいいかなと。本当は毎朝の事ですが、それをいちいち登場させるほどの事でもないかな。


こんにちは!トラックバックテーマ担当の木村です。今日のテーマは「ヒゲに対する想い」です。ヒゲっていうと生える人と生えない人がいますが、生える人は自分のヒゲ、生えない人は...
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Posted by 八少女 夕

大好きなコレ

前回の「コーヒータイム」つながりで「美味しい話」カテゴリーは缶コーヒーの話題をお送りします。

UCCコーヒー

二年前に日本に行った時に、しかも出雲から「サンライズ出雲」に乗って東京に帰る時に、大好きなこのUCCコーヒーとともに乗り込みました。

缶コーヒーって、スイスにはないんです。それどころかアイスコーヒーも以前はありませんでした。最近は売り出すようになりましたが。だから、私にとって缶コーヒーは日本の味です。子供の頃から一番好きだったのがこのUCC。もし選択の余地があるなら、間違いなくこれを買います。いつまでもなくならないでほしいと思う、数少ない商品。それがこのUCCミルクコーヒーなのです。
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Posted by 八少女 夕

【小説】夜のサーカスと極彩色の庭

月末の定番「夜のサーカス」です。少しずつですが読者に誰かさんの過去が開示されています。といっても、何が何だかだろうな。
このストーリー、半年以上前から連載しているので、最近このブログを知った方は取っ付きにくいかもしれません。が、まだ「あらすじと登場人物」だけ読めば十分付いていけます。よろしかったらどうぞ。


月刊・Stella ステルラ 5,6月号参加 掌編小説 シリーズ連載 月刊・Stella ステルラ


「夜のサーカス Circus Notte」を読む「夜のサーカス」をはじめから読む
あらすじと登場人物




夜のサーカスと極彩色の庭

夜のサーカスと極彩色の庭


 レモン色のボールがくるくると宙を舞う。軽やかに弾んで、高く、低く、生きもののように整然と綺麗な放物線を描く。右の掌から飛び立って、行儀良く左の掌に戻ってくる。一つ、二つ、三つ、あまりに速いので、その数はなかなかわからないが、現在飛び立っているボールは六つだ。この辺までは熟練したジャグラーには余裕がある。ヨナタンの動きはおどけて滑稽だが、目は笑っていない。

 丁寧に一つひとつの動きを鍛錬する。本番でヨナタンが失敗することは至極稀だった。彼は覚えたての八ボール投げを興行で使用することはしない。練習で百回試して、すべて成功するレベルにならないと、誰に何を言われても興行には使わない。団長ロマーノやその妻のジュリアは、そのことに文句を言わない。彼が、どれだけの時間を割いて鍛錬を続けているかよく知っているからだ。

 チルクス・ノッテの出演者たちは、ジュリアのプランによって鍛錬をしていたが、基本的には本人の意思が最も尊重された。たとえば、早朝に大テントの舞台でステラがバレエのレッスンを自主的にはじめた時にも、すぐに許可がおりた。空中ブランコ、大車輪、馬の上での倒立、ライオン芸、空中綱渡りのレッスンは一人で行うことは許されない。事故が起った時に即座に応急処置ができるよう、かならず誰かが監視しなくてはならないからだ。マッテオにはエミーリオ、ルイージにはマルコが、ステラのレッスンには主にヨナタンがついた。

 そういうわけで、ステラが早朝バレエのレッスンをする時には、同じテントの端の方でヨナタンがジャグリングの鍛錬をし、それから引き続き二人でブランコの訓練をするというのがここ数ヶ月のパターンになっていた。ステラはヨナタンと二人で過ごす朝のひと時を大切に思っていた。もっとも、ここしばらくはブランコの時間には、ようやく起きだしてきたマッテオがバレエレッスンを同じテントではじめるので、完全に二人きりというわけではなかったのだが。

「今日の午後、何か予定はある?」
ステラはブランコから降りてくるとヨナタンに訊いた。この日は昼の興行がないので自由時間になったのだ。ヨナタンは首を振った。
「特に何もないけれど、どうして?」

ステラはヨナタンからタオルを受け取って、汗を拭くと小さな声で言った。
「あのね。肉屋に行きたいの。でも、一人で外出しちゃダメだって……」

 先日のチルクス・ノッテでの野犬騒ぎ、目撃譚によってそれが狼であったことが伝わると、町は大騒ぎになり、昼でも一人での外出は避けるようにとの通達が来たのだった。襲われかけた当のステラとしては、一人で外出するのが怖いのは当然だった。しかも、肉屋に行くというのでは。

「一緒に行こう。でも、なぜ、肉屋なんだ?」
ヨナタンが訊くと、ステラは少し顔を赤らめて答えた。
「ヴァロローゾにお礼をしたくて」
ヨナタンは笑って頷いた。狼に囲まれて絶体絶命のピンチに陥ったステラとヨナタンは、襲われる覚悟をした。あの時、マッダレーナが連れてきてくれた雄ライオン、ヴァロローゾが狼たちを追い返してくれなかったら、二人はこうして無事ではいられなかっただろう。

「なんだよ、それ」
マッテオが怪訝な顔で近づいてくる。この若い青年は、ステラとヨナタンが親しくするのを快く思っていないのだ。ましてや二人だけの秘密があるなんて聞き捨てならない。

「この間の、野犬騒ぎの件なの。マッテオには関係ないでしょ」
「ふ~ん。僕も、この後、町に行こうと思っていたんだ。ヨナタンに用事がないなら無理していかなくても、僕がステラと……」

 それを聞くとステラはものすごい形相でマッテオを睨みつけた。余計なことを言わないで! ヨナタンは肩をすくめて言った。
「用事はあるよ。注文したナットを取りにいかなくちゃいけないんだ」

 ステラは大急ぎで言った。
「ほらね。私たち、この後すぐに行くから、マッテオはブランコレッスンの後で、エミーリオといきなさいよ。団長の用事で町に行くって言っていたもの」
それから、ぽかんとするマッテオをそのままにして、肩をすくめるヨナタンの腕を取って大テントを出て行った。


 
 それは大きな肉のかたまりだった。もちろんステーキ用肉などではないので、キログラムあたりは廉価なのだが、ライオンへのプレゼントに一キログラムというわけにはいかない。

「ヴァロローゾ、喜んでくれるかしら」
ステラが心配そうに言うと、ヨナタンは笑ってその重い紙袋を持った。
「間違いなく喜ぶよ。他のライオンたちが妬まないといいけれど」

 キャラバン村へと戻る道すがら、ステラは紙袋が重すぎるのではないかと、心配そうにヨナタンを見た。
「心配いらないよ。そんなには重くないから」
「でも、あのね。もし、重すぎなかったら、二分ほど遠回りなんだけれど、こっちの道を行ってもいい?」
そう言って、左側の道を示した。ヨナタンは微笑んで頷くと、通ったことのない道へと向かった。

「こっちに何があるんだい?」
「あのね。とっても素敵なお庭のお屋敷があるの。この前通った時、花がいっぱいで、ヨナタンにも見せたいなって思ったの」

 そうして、ステラは長い塀のしばらく先にある華奢な鉄細工の門の前にヨナタンを連れて行った。
「ほら」

 それは、大きなヴィラだった。春から初夏の花がこれでもかと咲き乱れている庭が広がっていた。薔薇、飛燕草、ダリア、百日草、ナスタチウム、牡丹、かすみ草……。アーチに、華奢な東屋に、木陰にこれでもかと咲いた花が寄り添い、風に揺られて薫りを運んできた。ステラはこの庭が大好きだった。こんなに美しい庭は見たことがないと思った。

 ヨナタンも好きでしょう? そう言おうとして、彼の方を振り向いた時、青年の顔に浮かんでいる表情にドキッとして、押し黙った。

 彼は、眉をひそめて、むしろ泣きそうな表情でその庭を見ていた。どこか苦しげで悲しそうですらあった。

 その瞳が見ていたのは、イタリアの郊外の町にあるヴィラの庭ではなかった。現在、咲き乱れている花でもなかった。



「ねえねえ、パリアッチオ、この花。一緒に球根を植えたやつだよね」
金色の髪の少年が満面の笑顔で言う。ぷっくりとした小さな手がもう一人の少年の掌をそっと包む。嬉しくて嬉しくて仕方ない、幸せな少年。遅咲きのチューリップの、艶のある赤と黄色の花びらを愛おしそうに撫でる。その中には秘密のようにおしべとめしべが見えている。二人でその花を覗き込んで微笑みあう。

「あ、そうだ。ママに花束を作ろう」
「そうだね、ピッチーノ。花の女神様になるくらいたくさんの花を贈ろう」
二人で摘んでも摘んでも、その庭の花は尽きることがなかった。白、ピンク、黄色、赤、薄紅、橙、紫、青……。花の薫りにむせ返るようだった。青空には翳りがなく、陽射しが強かった。遠く薔薇のアーチから、すらりとした影がこちらに向かってくる。
「まあ、二人ともここにいたのね」

 鳶色の艶やかに輝く髪が、肩に流れている。金色の輝く瞳が微笑んでいる。あたりは薔薇の香水の薫りに包まれる。

「ママ! ほら、これ!」
「僕たち、花束を……」
「まあ、二人とも、本当にありがとう」

背の高い方の暗い鳶色の髪の少年は、金髪の少年が女性に駆け寄ってその首に抱きついたのを眩しそうに眺める。一幅の絵のような光景。完璧な美。
「まあ、ピッチーノ。あなたは本当に赤ちゃんね」
それから、彼女はたくさんの花を抱えて立っている少年の方にも顔を寄せて、その頬に優しくキスをした。

 何かを口にしようとした時に、向こうから駆けてきた年配の女性が、それを遮った。
「まあ、皆さん、こんな所に。若様、イタリア語の先生が書斎でお待ちですわ」

 彼は、その女性、マグダ夫人が持ってきたニュースに失望の色を見せた。
「でも、まだ時間は……」
「そうですが、先生をお待たせはできませんわ。奥様、そうでしょう?」

「パリアッチオ。マグダ夫人の言う通りだわ。さあ、お行きなさい」
そう言って、彼女はもう一度、濃い鳶色の髪の少年の頬に優しくキスをした。マグダ夫人と一緒に城の方へと向かいながら、少年はもう一度花園の方を振り返った。二人が笑いながら花を摘んでいた。青い空。眩しい陽射し。楽しげな歓声。

「さあ、若様。イタリア語の授業が終わりましたら、お母様と、それから小さい若様とお茶を召し上がれますよ」



「ヨナタン?」
その声で、彼は我に返った。
「大丈夫、ヨナタン?」
ああ、そうだった。僕はヨナタンで、ここはイタリアの……。肉の入った紙袋の重み。それからステラの心配そうな顔。金色の瞳。

「私、悪いことしてしまった? このお庭、嫌だった?」
ヨナタンはステラの方に向き直ると、優しく笑って首を振った。
「そんなことはないよ。本当に綺麗な花園だ。連れてきてくれてありがとう」
そう言うと、ステラの前髪を、その柔らかい金髪をそっと梳いた。鳥のさえずりが小さい少年の笑い声のように聞こえた。

(初出:2013年5月 書き下ろし)
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Tag : 小説 連載小説 月刊・Stella

Posted by 八少女 夕

もう一度、自慢(笑)

水曜日にお披露目したばかりですが、改めて。 羽桜さんが、「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」のために再び挿絵を描いてくださったのです。

龍の媾合 by 羽桜さん
イラスト by 羽桜さん
このイラストの著作権は羽桜さんにあります。羽桜さんの許可のない二次利用は固くお断りします。


「もしよかったら、また別のシーンも」って、物欲しげに書いてみたんですよ、ダメ元で。そうしたら、とても氣さくにOKしてくださったのです。時間もあまりなかったのに、しかも、水の中という難しいシーンだというのに、文句一つおっしゃらずに、こんなに素敵なイラストを! 

しかもですね。何も注文つけなかったのに、私のイメージ通りの、(セクシー系ではなく)「お子様肌着」で描いてくださったんですよ。瑠水は18歳とはいえ、精神的にはお子様なので、こういうの着ているだろうなあと思っていましたが、羽桜さんもそう思っていらしたみたいです(笑)

瑠水の後ろに見える光は、『龍の媾合』の宵の異様な満月の光でもあるし、樋水川の化身であるご神体、樋水龍王神や瑠水が惹かれて止まない青白い蛟の放つ光のようでもあります。いやあ、こんな風に描けるんですねぇ。小説の方は、ものすごく簡単なんですが、絵師さまは本当にすごいといつも思います。

羽桜さん、素敵なイラスト、本当にありがとうございました。
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Posted by 八少女 夕

【小説】バッカスからの招待状 -1- ブラッディ・マリー

ええ、書きましたとも。たまたま昨日の午後が空いたので、これはいま書けって天が言っているかなと思って。そう、自分でもぜんぜんやる氣なしで放置していた、例の「神話系お題シリーズ」です。で、勝手にオムニバスにしようかなと思って、導入編にしてみました。

で、この「神話系お題シリーズ」でみんなで書こうよ的な話がございまして、よかったらみなさんも勝手に書いてくださいね〜。



バッカスからの招待状 -1- 
ブラッディ・マリー


「いらっしゃい」
いつもの彼の声がする。落ち着いているけれど、冷たくはない。かといって、親しいという印象は与えない。そう、空氣のような存在だ。そのバーは大手町の近くにあった。昼はビジネスマンで忙しいけれど、飲食街からは離れているので夜はほとんど人通りのないとあるビルの地下。知っている人でないと見過ごしてしまいそうな小さな濃い紫色の看板に白い字で小さく書かれている。『Bacchus』と。

 奥に時おり見る男性客が一人。まだ時間が早いから空いている。すみれはほっとして、一番のお氣に入りの席に座った。カウンターの真ん中から二つほど入り口より。バーテンダーで店主の田中の横顔が自然に眺められる位置だ。

 といっても、田中に恋をしているのでその横顔を眺めたいというような理由ではない。正面切って座るとずっと話をし続けなくてはならないとストレスになるし、離れすぎると構ってもらえない、その中間の一番心地いい感覚を得られるのが、この席なのだった。田中の年齢は40を少し過ぎたところだろうか。きれいにオールバックに撫で付けた髪、線が細い体つきに合わない濃い眉、いつも微笑んでいるような口元。いつもと変わらない事がすみれの精神安定剤になるような風貌だ。

 すみれは元来ひとりでバーに来るような女ではない。それどころか、一人でレストランに行くことが出来るようになったのも最近だった。それをするようになったのは、彼女への対抗心からだった。

 広瀬摩利子。元同僚だ。すみれにこのバーを教えてくれたのも実は摩利子だった。

「久保さん、今日はお早いですね」
田中が程よい具合に温かいおしぼりを渡してくれた。この瞬間がとても好きだ。馴染みのバーでバーテンに名前を呼んでもらう私。まるで出来るキャリアウーマンになったみたい。本当はお茶くみコピー取りに毛が生えた程度なんだけれど。

「そうね。残業がなかったから」
以前は、残業なぞほとんどなかったので、恥ずかしくてファーストフードで一時間くらい潰してから来たものだが、最近は本当に残業が増えてきたので、こういうセリフも板についてきたように思える。といっても、そんな事を思っている時点で本当のキャリアウーマンじゃないんだろうけれど。

 摩利子はそんな事を氣にしたりはしなかった。彼女は、人からどう思われるかびくびくしたりする事がなかった。とても綺麗で人目をひいた。会社で身に付けている制服でも、どこがどうというのかわからないけれど他の女の子たちよりあか抜けて見えたし、私服に至っては追随を許さなかった。日本人がそんな色遣いをするのはどうかというような派手な服をよく着ていたが、それがまたよく似合った。


 三ヶ月ほど前のあの日もそうだった。蘭の地紋の入った黒いシルクのタイトなワンピースに若草色のボレロ、マラカイトの大振りな珠を贅沢に使ったネックレスをしていた。ハイヒールは濃い緑の7センチ。たまたまこの界隈を歩いていて遇っただけなのだが、50メートル先からすぐにわかった。

 すみれは摩利子と同期だったがさほど親しいわけではなかった。そもそも摩利子と親しい女なんかいるんだろうか。もしくは彼女が親しくしたがる女なんかいないかもしれない、そう思っていた。皆と会話しなくてはいけない時には、自然とグループの中にいたし話題の中心にいる事も多かった。でも、グループが男女混合になっている時には99%の確率で男性としか会話していなかった。「男狂い」「尻軽女」「カマキリ」いろいろな陰口をいう人たちがいた。もう少しソフトに言うと「恋多き女」ってところ。

 すみれは入社後すぐの同期会のカラオケで摩利子と隣になり、「東大君」とあだ名されていた銀縁眼鏡の同期との会話から、彼女の意外と理知的な手法を観察して感心した。「東大君」の右側には彼を狙う別の同期の女が張り付いていたのだが、よせばいいのに「東大君」に大学での専門の事を訊いたりして、素粒子の最新研究について語られて目を泳がせていた。この「東大君」は場の空氣を読んで適当に会話を打ち切るという事が出来ないタチらしく、他の人たちが無視して別の話をしている間も誰にも全く理解の出来ない用語を飛ばしていた。その収拾のつかなくなった会話を摩利子が引き受けたのだ。

「ってことは、たとえばそのヒッグス粒子ってのは、アイドルにまとわりつくファンみたいなものってこと?」
「え。そうだな。有名になるとますますファンがまとわりついて身動きが取れなくなる。そうするとさらにファンが寄ってくる。そういえば似てるかも」
「ふふん。じゃあ『東大君』に群がる女も似たようなものかもね。どんどん寄ってきて、身動きが取れなくなってるでしょ」

 自分がモテる対象だと自尊心をくすぐってもらって、「東大君」はちょっと嬉しそうになった。同期でも一番の綺麗どころである摩利子が隣に座っているし、しかも自分を狙うヒッグス粒子の一人だと告白したみたいなものだ、と思ったらしい。実際のヒッグス粒子は反対側に座っていたのだが、摩利子は場をしらけさせる素粒子論をやめさせる事が出来たので満足していたようだった。実際に、摩利子はその晩「東大君」をお持ち帰りしたらしいのだが、夢中になった「東大君」の方が簡単に振られてしまったらしい。

 入社当時の話はどうでもいい。三ヶ月前に、この大手町で摩利子にバッタリと出会った話に戻らなきゃ。すみれは記憶を揺り戻した。

「あら、久保さんじゃない。こんな所で会うなんて」
広瀬摩利子に名前を憶えてもらっていたということに少し驚いた。
「こんばんは。外出して直帰なんだけれど、大手町まで歩けば定期が使えるから。広瀬さんは?」
「ここで、彼と待ち合わせしているの」
 ああ、そうか。当然って感じよね。でも、こんな、何もなさそうなところで……。その思いが顔に出たのか、摩利子はクスッと笑った。

「ここは彼の職場に近いのよ。それに……」
少し言いよどんでから、ニッコリと笑って続けた。
「久保さんになら、教えてあげてもいいかな。ここにね。滅多な人には教えたくない隠れ家みたいなバーがあるのよ」

 言葉の魔法の使える女だった。「久保さんになら」と言われただけで、自分がほかの同僚たちとは違うと言ってもらえているみたいに。すみれのように大衆に埋没しがちな女にとって、この手の言葉は麻薬みたいなものだった。

 その店がこの『Bacchus』だった。
「彼が教えてくれたの。もともとは彼も尊敬する会社の先輩に連れてきてもらったらしいんだけれどね。ほら、いかにもただの会社って表構のビルの地下に、こんなバーがあるようには思えないでしょ? でも、知る人ぞ知る名店なのよ」

「ああ、広瀬さん、いらっしゃい」
入っていった時に、バーテンの田中が親しげに声を掛けたその様子に、軽く嫉妬した。馴染みのバーのある自立した美女。同じ年に入社したのに、どうしてここまで違っちゃうんだろう。すみれは小さくため息をついた。

「一は?」
摩利子が訊くと田中は笑って答えた。
「いまお電話がありましたよ。高橋さん、少し遅くなるそうです」
「そう、ちょうどいいわ」
そう言って、摩利子はカウンターの田中の前に座ると横の席をすみれにすすめて言った。
「偶然の出会いに乾杯しましょうよ」

 二人が座ると、田中はアボガドとエビのカクテルソース和えの小皿をすっと出した。カクテルの事など詳しくなくてメニューを見ながら慌てるすみれを見てクスッと笑った摩利子は、田中にマティーニを注文した。
「ジンを少し多めに。でも、ドライ・マティーニにならないくらいで」
かなり無理な注文だが、田中は口先だけで笑いながら摩利子が満足する完璧な「ややドライ・マティーニ」を出してやった。

 すみれにはその注文がとても素敵に聞こえたので小さな声で続けた。
「じゃあ、私も。でも、ジンを少なめに……」
田中と摩利子が同時に吹き出した。

 それから三十分ほどして、摩利子の彼が姿を見せた。とても意外だった。摩利子は羽振りのいい男や見かけの突出していい男ばかりをあさっていると評判だったのに、その男ときたら背が低くて、なんだか四角い感じのごく普通の青年だったのだ。摩利子の彼とは信じられないほどに洋服のセンスも変で、しかも安物のように見えた。けれど、どういうわけだか初対面だというのに心が和んでくる不思議な魅力を持っていた。そして、その青年と話す摩利子は、未だかつて見た事がないほど生き生きとして幸せそうに見えたのだ。へえ。まるで別の人みたい。摩利子という人物は、すみれが思っているよりかなり奥が深そうだった。デートの邪魔をしたくはなかったので、すみれは早々に別れを告げて帰る事にした。

 この秘密の店を知って、摩利子とも少し親しくなれるかも、そんな思いを持って帰ったすみれに、次の衝撃が待っていた。摩利子が寿退社をして東京から離れる事になったのだ。あの四角い青年と結婚するんだあ。広瀬さん、なかなかやるじゃない。でも、もう会えなくなっちゃうのは残念だなあ。

 それから、すみれは時々一人で『Bacchus』を訪れるようになった。同じカウンター席に座り、カクテルを一杯注文する。小さいつまみも出してもらう。隣の青年が田中に今日あった事を話すときにそっと耳を傾ける。いい事があった時には、自分の話も田中に聴いてもらう。

 かつては、勤務中も、それからフリーの時間も、誰か親しい友達と一緒でないとならないかのような焦りを持っていた。実際には、あまり友達もいなくて一人でいる事が多かったのだが、それを楽しむまでには至らなかった。それが、このバーに来るようになってから、すみれは一人を楽しめるようになってきた。摩利子のように「恋多き女」になりたいわけではないが、すみれはどこかで摩利子の超然とした生き方に憧れているところがあった。そして、それは彼女の彼女の体型や装いではなくて態度から生まれてくるのだという事を少しずつ理解していたのだった。

 今日も、お氣に入りの席にすっと座ると、もう逢えなくなってしまったかつての同僚に敬意を込めて「忌々しい摩利子」と脳内翻訳している赤いカクテルを颯爽と注文した。

「ブラッディ・マリーをお願い。ウォッカを少し……」
強くと言ってみたいけれどどうしようと口ごもっていると、田中が優しく微笑んで言葉を継いだ。
「はい。少し、弱くしましょうね」
う〜ん、ちょっと悔しい、でも心地いい店なのよね、ここ。

ブラッディ・マリー (Bloody Mary)
標準的なレシピ
ウォッカ - 45 ml
カット・レモン - 1/6個
トマト・ジュース - 適量
作成方法: ビルド



(初出:2013年5月 書き下ろし)
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Tag : 小説 連載小説 神話系お題

Posted by 八少女 夕

幸せになるために

お知らせでございます。先日、ウゾさんの記事を元ネタにお題だけガンガン出して、そのまま放置しようとした「神話系お題シリーズ」ですが、本当に書いてくださった方が続出。言い出しっぺも書けという流れになって参りましたので、近日中になんか書こうと思っています。ま、「バッカスからの招待状 -1- 」ってな感じかな~。「みんなで書いて、Stellaをこれで埋めよう」陰謀大作戦(by 紗那さん)も持ち上がっております。せっかくだから皆で遊びませう。参加者、募集中。連絡事項はここまで。



唐突な話題です。

子供の時はみな張りがあって綺麗な顔をしているので、さほど氣にならないかと思いますが、中年にさしかかってくるとその人の性格や普段思っていることが、顔に表れてくると思うのですよ。たとえば眉間に深いシワが刻まれている人は常に物事を思い悩んでいるからというような。

そして、子供の頃や若い時代に「幸せになるための条件」と一般に思われていたものや事を手に入れた方でも、意外と「幸せ」という顔でない場合が多いのですよね。

子供の夢物語でいうと「パイロットになる事」「優しい旦那さんのお嫁さん」というような夢を叶えること、若者の言う「一流企業のエリートになること」「白金の億ションにすむセレブライフ」などはすべて外的な条件なのですが、実は幸福は外側に存在するわけではないのです。

あ、外的なものがまったく関係がないという意味ではありませんよ。例えば戦争や大きな災害による影響で、幸福になる事が難しい状況に置かれてしまう事だってあります。私がここで問題にしているのは「幸せになるためにはこれとこれが必要」と条件を設定しても、それを全て満たしたから幸福になれるというわけではないという事です。

何故こんな事を書き出したかというと、最近二つの氣になる情報を目にしたのです。ひとつは、まあ冗談でしょうが「二次元と恋をすれば大抵天国に行けるけれど、三次元との恋はどこかで必ず生き地獄に」というチャートを目にした事。それから、「ある新入社員が自分が幸福になるにはこれだけの金額が必要で、この会社ではその金額をもらえないので辞めると言った」という話。

幸福は心で感じるものです。で、この世の中には、この幸福を感じるセンサーが簡単に「感じたぜ!」と触れるタイプの人と、全然動かないタイプの人がいるんですね。そして、センサーが動かないかぎり、どんな条件を満たしても幸せにはなれないというわけなのです。

衣食の心配のない有閑マダムの顔が幸せに輝いておらず、四畳一間で暮らす人の方が生き生きしている事があるのはこのような事情によるのです。

で、幸せセンサーを動かすためにとても大切なのは「ないものねだり」をしないことだと思っています。お金持ちの家に生まれてこなければ幸福は手に入らないと思い込んだり、理想の彼女は二次元で三次元ははじめから論外だと決めつけたり、幸福センサーを動かすための基準を、絶対に針が振れないところにセッティングしてしまうと、センサーは絶対に反応しません。

ご推察の通り、私のセンサーはかなり簡単に動きます。容姿にしろ、性格にしろ、資質にしろ、私には人に誇れるようなものはほとんどないのですが、この幸福センサーの性能の良さだけは、たぶん世界に誇ってもいい類いのものなのかもしれません。
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Posted by 八少女 夕

【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (4)龍の宵 -1-

今回は、ちょっと自慢が……。 羽桜さんに、ダメ元で頼んでみたら、快くOKしていただき、また挿絵を描いていただいたんです。このシーンのために実に幻想的な、それでいて緊迫感あふれるイラストを用意してくださいました。なんて嬉しい。本当にありがとうございます!

今回は、九年に一度、十月の特別な満月の深夜に樋水村でおこる怪奇現象の話です。(あ、もちろんフィクションですから!)

本編を読まれた方は、このシーンに対する私の思い入れをご存知でしょうが、「Dum Spiro Spero」だけの読者の方は反対に引かれるかもしれません。ちょっと妙な世界なのですが、ご安心ください。この普通でない世界は、この作品ではここまでです。あとはごく普通の(?)人間界の話に戻って参りますので。

さて、「樋水龍神縁起の世界」の記事で予告したように、この話でBGMにしていた曲を追記につけておきますね。


「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」を読むこのブログではじめからまとめて読む
あらすじと登場人物


この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物



樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(4)龍の宵 -1-


「こんな遅くまで何をしていたの!」
摩利子の声は厳しかった。剣幕が普通ではなかった。取り乱しているといってもいいくらいだった。真樹はきちんと謝った。
「申し訳ありません。届ける途中でバイクがエンコして、なんとか動くようになるまで時間がかかったんです」

「よりにもよって、この晩に。瑠水、今すぐ家に入りなさい。シンくんは届けてもらって悪いけれど、今夜はすぐに帰って」
「でも、お母さん。こんなに寒いんだし、熱いお茶でも……」
「ダメよ。シンくん。今すぐに樋水村から離れて。日付けが変わるまでに出雲に戻ってよ、いいこと?」

「お母さん?」
「瑠水、言ったことを聴いてなかったの。早く入りなさい」

「失礼します」
真樹は黙って引き下がった。噂で聞いている樋水村の『龍の媾合みとあたい』は今夜なんだ。だから、この村ではみなぴりぴりしているんだ。よそ者は帰れってことか。

「シン、ごめんね。ありがとう。また来週、逢おうね」
真樹は、笑って手を振った。

 戸口が閉められる音と、中で瑠水と摩利子が言い合っている声が聞こえた。こんな風に神経を尖らせている摩利子を初めて見た。自分があまり歓迎されないのは無理もないと思う。が、そうであっても高橋一と摩利子はフェアな方だった。姉の早百合は馬鹿にした目で見るし、幼なじみとかいう早百合の恋人にはゴミのような扱いをされている。そんな扱いを受けるいわれはないのに。

 冷えきった道を、真樹はゆっくりと出雲に向かって走らせていた。満月が明るい夜だった。『龍の媾合』って、いったいなんだろう。なぜ、常識的な瑠水のお母さんがあそこまで取り乱しているんだろう。

 出雲市内に入りもうじきアパートにつく頃に、ふいに、真樹に、妙な予感がした。ばかな。もう十一時半だ。早く寝よう。だが、その嫌な感じはどんどん大きくなる。いても立ってもいられない。どうにもならない胸騒ぎだ。何故だ。理性的になれ。今から戻ったりしたら、こんどこそ高橋家に出入り禁止になる。変な村のおかしな風習に首を突っ込む必要はない。

 瑠水。真樹は彼女の笑顔を思い浮かべた。樋水川に映る黄金の月がやけに強く輝いている。胸騒ぎはどんどん強くなる。いま行かないと、瑠水が大変なことになるという予感。ちくしょう。真樹は毒づきながら、再びバイクに跨がった。


 瑠水は摩利子と言い争った後に、泣きながらベッドに入った。摩利子ももう寝室に入った。『妹神代』がいない上、『背神代』も今夜は宮司の命令で出雲に行っている。だから、本当は何も起こらないはずであった。だが、『背神代』と『妹神代』のどちらも死んだわけではない。不在の『龍の媾合』に何が起きるか、誰にもわからなかった。宮司の通達に従って、全ての村人は、『龍の媾合』が起こる場合と同じように扉を閉め切って備えた。高橋家でもぴりぴりしていた。だが少なくとも早百合は東京に行っているし、瑠水もシンくんからは引き離した。摩利子はとりあえず安心して眠りについた。

 瑠水は今度という今度は我慢がならなかった。誰も信じてくれない。瑠水が大切にしているものを皆が否定する。シンとはいやらしい変な関係じゃないとあれほど言ったのに。龍のことは誰も否定しないのに『水底の二人』のことは誰もが否定する。今夜だってへんな神事のことでは大騒ぎしたのに、私のいうことはひと言も信じてくれない。

 悲しくて悔しくて仕方ない瑠水は、そういう時にいつもするように、龍王の池にいこうとした。もちろん真夜中に行ったことなどなかった。だが、今夜は『龍の媾合』とやらで、幸い誰もお社には近づかない。池の側に住んでいる次郎先生も不在だ。行ってみよう。瑠水はこっそりと足を忍ばせて神社へと向かった。

 満月が輝いている。龍王の池は金色の光で満ちていた。月の光かと思っていたが、近くに寄ってみるとそれは水の底から湧き上がってくる淡い光だった。どうすることもできないほどの歓びが胸を締め付ける。いつもよりも強い。瑠水は澄んだ水の奥に、いつも感じている皇子様とお媛様を見た。水紋に揺らされてはっきりしないが、二人がいつもより近くにいることを感じた。見えるかもしれない、瑠水は近づこうとした。

「冷たい」
池の水が足に当たった。瑠水はひるんだ。それから、池が虹色にリズミカルに光る金色の光でどんどん満ちていくのを見た。

 九年に一度の特別な満月の夜。もしかしたら二人の姿をはっきりと見ることが出来るのは今夜だけかもしれない。そう思った途端、瑠水は服を脱いで水に入った。泳ぎながら、光のもと、『水底の二人』のいる瀧壺の方、下へ下へと向かっていった。

 冷たかったのは最初だけだった。直に寒さは感じなくなった。二人は近くにいるようで、もっと寄ると蜃氣楼のように更に遠ざかった。ある時は青白い蛟に見え、次の瞬間には夫婦桜の老木のようにも見えた。かと思えば、もう少しで二人の顔がはっきりわかるほどにまで人らしく見えた。底に向かって泳げば泳ぐほど歓喜も強くなり、どうしてもそこに加わりたいという思いが湧いた。

 もう少し近づけば、あと、少しだけ、それを繰り返しているうちに、突然瑠水はかなり深くまで潜っていることに氣づいた。これ以上は危険だ、戻らなくちゃ。でも、あと少しだけ……。しかし、近づいてみればそれは単なる幸福ではなかった。哀しさや苦しみも含まれた感情だった。自分の感じている歓びと息苦しさがほぼ同じものだと意識した時に瑠水は恐怖を感じた。

龍の媾合 by 羽桜さん
イラスト by 羽桜さん
このイラストの著作権は羽桜さんにあります。羽桜さんの許可のない二次利用は固くお断りします。


 突然目の前を大きな白く黄金に輝くものが、遮るように泳いだ。あまりに近かったので、瑠水にはそれがなんだかわからなかった。だがよく見ると、それは自分の身丈ほどもある大きな目だった。その横に、もう一つ目がある。白い、巨大な龍だった。龍王様! こんなに大きかったはずはない。だが、小さかったという証拠もない。それは光り、黄金に燃えたっていた。強い激しい意志を持っていた。瑠水と二人の間に厳しく断固として立ちはだかり、瑠水を押し返した。

 それまで鏡のように静かだった龍王の池に、竜巻のごとき水流の嵐が起こった。その激流にのまれ、瑠水は助けを求めてもがいた。

 瑠水の体を、何かがしっかりとかき抱いた。そして、力強く月に向かって泳いだ。誰?『水底の皇子様』? そこで瑠水の意識は途絶えた。

この記事には追記があります。下のRead moreボタンで開閉します。

read more

本編の「和解」の章のイメージがモーツァルトの「レクイエム」の「イントロとキリエ」だったのに対して、こっちのBGMはガブリエル・フォーレの「イントロとキリエ」でした。この動画でいうと最初から6:50くらいまでの部分です。

「レクイエム」はもともと死者を弔うためのミサ曲なのですが、ここでは「誰か」(例えば瑠水とか)を弔うという意味ではなく、龍王の池の底に存在する(または底ではないところに、そして存在しない)生であり死である厳かなもののイメージとして使っています。



Gabriel Faure "Requiem"
BBC Symphony Orchestra
Nadia Boulanger
30 October 1968
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Category : 小説・Dum Spiro Spero
Tag : 小説 連載小説

Posted by 八少女 夕

ムパタ塾のこと - 13 -

お忘れかもしれませんが、終わっていません。まだ続けます。「ムパタ塾のこと」です。

遊園地のアトラクションや映画と違って、野生動物の世界に台本はないので、望んでも簡単に見られないものがあります。それだけに、遭遇してしまった時の驚きとドキドキは強くて、生涯忘れられない経験になります。

誕生

私たちがそんな場面に遭遇したのは、旅も後半に入った頃だったでしょうか。トムソンガゼルが、群れから離れてたった一匹でいたので変だなと思ったのです。そしたら、私たちの目の前で出産がはじまったのです。草食動物は生まれてすぐに立ち上がり、すぐに歩くという事ぐらいの知識は持っていました。人間の出産ほど長くはかからない事も。とはいえ、人間の出産の大変さ、子供が立ち上がって歩き出すまでの長い時間を考えると、そのプロセスの早さには驚きます。

私たちの車が近くに陣取ってすぐに出産ははじまりました。お尻から黒いものが出てきたなあと思ったら、それから十分くらいでもう半分以上出てきたのです。そして、生み終わるまでに30分はかからなかったように記憶しています。

けれど、その時間が私には永遠のように思われました。もし、馬小屋で馬が生まれるような事であれば、こんなにスリルは感じなかったと思います。けれど、そこはマサイマラ国立公園のど真ん中で、いつライオンやチータなどの肉食獣がやってくるかわからない状態なのです。トムソンガゼルの母親もその緊張を感じていたと思います。急かすように仔の周りの粘液をなめていました。

仔ガゼルは、ヨタヨタとなんども倒れながらもついには立ち上がりました。そして、母親の乳房に吸い付きました。でも、それでめでたしめでたしではありません。母親は、いま生まれたばかりの仔ガゼルを急かすように歩かせていくのです。仲間のもとへ、安全な群れのいるところに。子供が生き延びるためには、ゆっくりと出産のあとの幸福をかみしめている時間などないのです。

これが野生の世界なんだなと思いました。私たちは、そのガゼルを群れのもとに送り届けたり、肉食獣が来ないように見張ったりする事は出来ません。そういうことは許されていないし、たとえ許されたとしても全ての生命を食物連鎖の厳しい掟から守る事は出来ないのです。

ガゼルたちは「生き甲斐がない」とか「貧富の差がある」などということに迷う事はないでしょう。彼らの目的はただ一つ、生きて、生き延びて、子孫を残す事です。

用意された感動ではなく、ありのままの生命の神秘を目にして、私はアフリカまでやってきた意味があったなと思ったのでした。
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Category : アフリカの話

Posted by 八少女 夕

光を撮りたい

日常の中でカメラを向けたくなるのは、光の織りなす特別な光景である場合が多いのです。でも、実際に出来上がった写真はそこまで印象的でないことも。

林檎いとしや 遠雷の光景

この二枚はどちらも愛機OLYMPUS SZ-31MRで撮影したものなんですが、本人としては70点。林檎の花の方は、実際には花にもっと明るい光が当たって透き通っているようでしたし、リラの方は、バックがもっと暗い曇り空なのにリラと木に光が当たってとても印象的だったのです。もちろん、以前のカメラだったら、もっと平坦な写真だったことでしょう。iPhoneのカメラでもここまで光は映らないので、カメラに文句を言うつもりはありません。やっぱり私の技術がいまいちなんでしょう。

写真は一瞬の美を簡単にとどめることの出来ます。偶然、自分が思っている以上の傑作が撮れることもあります。それでも、もう少し何とかならないかなあと思ってしまう私なのです。あ、一眼レフやフィルムでプロっぽく撮る選択肢は消しました。さすがにそこまで走ると大変なことになるので。コンデジの範囲で頑張ります。
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Category : 写真

Posted by 八少女 夕

お題で遊べる?

ブログのお友だちのウゾさんがね。おっしゃっていたのですよ。

「イカロスの末裔」って 題名だけが降ってきた…


きっと、ここから素敵な掌編にしてくださると思うんですけれど。(お待ちしています)

で、それからこっちにもいろいろと降ってくるようになってしまいました。神話ものの題名のみ。ストーリーなし。ウゾさんのと違って、文学的な薫りはゼロ。なんか下世話なストーリーになりそうなのばっかり。ちょっと開示してみましょう。

「バッカスからの招待状」 → これは、たぶん「大道芸人たち」系(笑)
「アフロディテーの夢想」
「ヴァルキュリアの恋人たち」 → この二つは、ハー○クイン・ロマンスのよう。
「ユグドラシルの暗い影」 → どうしようって言うんだろう。
「テュールの帰還」 → マニアック過ぎ? でも「マルスの帰還」よりは語感がいいような。
「アリアドネの憂鬱」 → 昔書いた話に使えるかも。
「ヴァルハラ炎上」 → 吉原じゃないんだから……。
「ロキの恋」 → 勘弁して。

こうやって考えると、いつも悩みまくりの題名つけが嘘みたいだなあ。問題は、いま書いているものには、どれも全く使えないって事なんだけれど。

上の題名からストーリーが浮かんだ方は、どうぞご自由にお書きくださいませ。



5/22 追記
「みんなで書きましょう」話が持ち上がってます。といっても、とくにルールはなくて、お題を使って、掌編や詩やイラストを創作して、ブログに発表するだけ。でも、よろしかったらタグつけてStellaにも、提出しちゃいましょう。せっかくですからこの記事のコメントにいただいた他のお題もここに追加しておきます。

大もとのウゾさんのお題「イカロスの末裔」
ぴゃす〜さんのお題「ワルキューレの気功」「ニーベンルンゲンの鼻輪」
ぴゃす〜さんの実在のお題「鍋奉行おーでぃーん」
イマ乃イノマさんのお題「トールの涙」
山西左紀さんの実在のお題「アルテミス達の午後」

この他、神話っぽい単語が入っていればなんでもOKです! 


もちろん神話は題名だけでOKです。
ちなみに、実はブログ開設直後に私が発表した「夜のエッダ」なんて作品もございます。
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Tag : 神話系お題

Posted by 八少女 夕

樋水龍神縁起の世界 - 8 -

今日は、普段なら写真を使って、連載小説「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」に興味を持っていただこうとするコーナーですが、動画を貼付けています。



「樋水龍神縁起」の本編、「第二部、冬、玄武」には、モチーフとしてこのモーツァルトのレクイエムが出てきます。主人公の一人、新堂朗が若くしてなくなった友人の葬式代わりに開催された「レクイエム」の演奏会を聴きに行くシーンです。冬をモチーフにしたこの作品の中で、私は死と喪失についての考え方を朗の思考という形で綴りました。

私は小学校で同級生がアイドルの歌に夢中になっている頃に、父親にテレビを観る事を禁止されて一緒にクラッシック音楽を聴かされていました。その中で好きで印象に残っている曲の一つがこのモーツァルトの「レクイエム」でした。「フィガロ」や「魔笛」などの他のモーツァルト作品はあまり好きではなかったのですが、この「レクイエム」だけは、ものすごく好きでした。父の持っていたレコード(そういう時代です)のジャケットは、本当に亡くなった方の青くなった足がアップで並んでいるショッキングなもので、それ自体は怖くてしかたなかったのですが、「三つ子の魂百まで」なのか、いまだに「レクイエム」はどなたかが亡くなったというようなこととは無縁によく聴いています。

本編の「第四部 春、青龍」の「和解」の章は最後の最後に書き直したのですが、その書き換えをした時にBGMとして聴いていたのは、実はこの「レクイエム」の一番最初「Intros」の部分でした。来週の「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」の更新では、その章を書く時に聴いていたBGMを追記につけようと思っています。ちょうど、二つの物語が似て非なるものである事、それでいてリンクしていることを表すもう一つの選曲、そちらも聴いていただければと思っています。



「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」を読む この記事を読んで「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」が読みたくなった方はこちらへどうぞ

官能的表現が一部含まれるため、成人の方に限られますが……「樋水龍神縁起」四部作(本編)は別館にPDFでご用意しています。
縦書きPDF置き場「scribo ergo sum anex」へ行く 縦書きPDFで読む(scribo ergo sum: anex)
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Category : 樋水龍神縁起の世界

Posted by 八少女 夕

「最近あなたや身の回りで起こった【変化】は?」

トラックバックテーマです。「身の回りで起った変化」ですか。

あまり春は関係ないんですが、二つほどあります。一つは、先日カミングアウトしたギター事始め。一日三十分ぐらいしかやっていませんが、大切なのは毎日続ける事で、これが続いています。

私は、皆さんもご存知のように、非常に熱しやすく冷めやすい性格です。で、毎日やるものは続くのですが、やらないとあっという間に忘れます。完膚無きほどに。で、今のところギターは続いています。せめて少しは弾けるようになってからやめたいです。

もう一つの変化は、あまり最近とは言えませんが、今年に入ってからの変化です。ブログのお友だちで小説に興味を持ってくださる方とそうでない方の割合が逆転したという事。昨年も小説に丁寧なコメントをくださるありがたいお友だちはいらっしゃったのですが、人数比でいうと少数派でした。それが今年に入ってから立て続けに小説関係のお友だちが増えて、割合が逆転したのです。

どんな記事にでもコメントをいただければ嬉しいですし、「小説なんか読んでられるか」と思われる方がいらしてもまったく構わないのですが、ブログをはじめた頃のように、小説を発表する度に拍手もコメも他の記事から激減(コメはゼロも多かったし)というのは、かなり悲しかったので。それが今では拍手数による人氣記事にかなりの小説が入っているし、コメもたくさんいただけて「小説のブログとして開設してよかった」と思えるようになってきたのです。かなり嬉しいです。

こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当加瀬です(^v^)/今日のテーマは「最近あなたや身の回りで起こった【変化】は?」です。春は別れの季節でもあり、スタートの季節でもありますね。この春社会人になったの方や、入学された方は、新生活エンジョイされていますか?そんな始まりの季節、皆さんの周りで起こった変化などはありますか?加瀬はものすごく個人的な事なのですが、気持ちの変化があり、思い立って髪の...
FC2トラックバックテーマ 第1651回「最近あなたや身の回りで起こった【変化】は?」

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Posted by 八少女 夕

バランスの話

小説の話です。ということは、私の場合は自分の人生観の話なんですが。

この世で起こることには全てバランスが必要、というか、自分でどうにか出来るものではなく、本人の意思とは関係なくプラスマイナスが相殺されていくものだと思っています。

で、私の小説に出てくる人物は、突出した幸運を持ち続ける人や、逆に悲惨のデパートになるようなことはあまりないのです。理想の男と、なりたい自分の条件を全て並べて作った非の打ち所のない女の二人がハッピーエンドになるという事もありません。誰からも愛される人が出てこないかわりに、問答無用で成敗されてしかるべき極悪人もでてきません。光だけで影のない人間、もしくは黒いだけでいい面のない人間ではバランスがとれません。

もう一つ、別の角度からアプローチしましょう。例えばあるキャラクターが誰かを深く傷つけたとします。その人物が、最高のパートナーと出会ってお金持ちになって順風満帆になるということはありません。因果応報というと説教臭いですが、そうでなければ決してとれないバランスもあるのです。

反対に言うと、完全な幸福に至れるほど、何もマイナスとなることをしていないキャラクターというのは、書けません。好きなものを集結した夢物語ではなく、人生を書きたいと思っている以上、どんなにそれをやりたくても、その方向にはならないのです。

これをひっくり返せば、私の小説で「散々な目に遭っている」がデフォルトのキャラクターは、かなりの確率で幸せをつかみます。これまたバランスの問題だと思うのです。「天網恢恢疎にして漏らさず」って感じでしょうか。
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Posted by 八少女 夕

【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (3)新しい媛巫女さま -2-

ちょっと間があきましたが「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」の二回にわけた「新しい媛巫女さま」の後編です。「樋水龍神縁起」本編をお読みになった方は、この樋水龍王神社の特殊性や次郎こと関大樹禰宜の変わり者っぷりには慣れていらっしゃることだと思います。今回の話は、本編を読んでいらっしゃらない方もわかる形で、かつお読みになった方に本編のことを彷彿とさせるストーリーになっています。

繰り返しますが、この小説はフィクションです。実在する団体、人名、地名、宗教とは一切関係がありません。


「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」を読むこのブログではじめからまとめて読む
あらすじと登場人物


この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物



樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(3)新しい媛巫女さま -2-



 瑠水や繁く通った樋水村の影響で、真樹はこの村の奇妙な常識にすっかり馴染んでしまっていた。瀧壺に白い龍が住んでいることや、時にその龍にまとわりついて現れる青白い蛟のことも、見えないにも関わらずまったく疑わなくなってしまった。それと同時に、二十一世紀とは思えない前時代的な樋水龍王神社の支配にも慣れてしまった。

 たとえば、この神社には変な役職があり、神主やその妻の人格を無視したことが平氣で行われていた。その決定は神社の神職の長である宮司の権力に絶対的にゆだねられており、神職たちや氏子の代表である総代たちも一切口が挟めなかった。それどころか出雲大社や神社庁ですら、この神社の伝統には一切手が出せなかったのである。

 この神社には、樋水川の瀧そのものをご神体とした樋水龍王神と千年前に実在した巫女を神格化した媛巫女神瑠璃比売命、その夫であった背神安達春昌命の三柱が祀られている。二人の悲恋と死の後、この神社には他の神社には全くない特別な役職が設けられるようになった。それが『背神代』と『妹神代』である。

 表向きには『背神代』は宮司を継ぐもの、もしくは宮司と兼任すべき神職とされ、その妻である『妹神代』は神事で媛巫女神を憑りつかせて龍王の神託を伝える巫女の役割をするということになっている。

 だが、この村にとってもっとも重要だったのは、九年に一度の六白金星の年、秋の六白の月の満月になった真夜中に起こる『龍の媾合みとあたい』での憑り代としての役割だった。この神事は現代に至るまで、二職が空位でない限り行われており、その晩には一切のよそ者が排除される。ただし、その晩に村の者と同衾する者だけは恩恵にあずかれ、そのために出雲地方では樋水村の秘密の神事で何が起こっているかの情報が秘めやかに語り継がれているのである。

 村中で普段ではあり得ない性体験ができるということになっており、実際に経験したものあるのだが、口外したりおおっぴらに自慢したりすると神罰が下るらしい。実際に神罰を受けたものがいるかどうかの正確なデータはない。過去百年に噂を聞きつけて記事にしようとしたマスコミ関係者が、何度も何らかの圧力により遠ざけられたり、企画が通らないようにされたりしたことから、出雲周辺ではこの噂に手をつける者はもういなかった。

 九日間にわたり閉め切られた神社の内部で実際に何が起こっているかは、村人にすらわからない。これを知っているのは神社の神職と限られた総代、それに出雲大社の要職にある者ぐらいである。ここ数代の『背神代』と『妹神代』は揃って幸せとは言い難い状態になった。しかし、表向きには何もおかしなことはなかったことになっている。

 現在の『背神代』である通称次郎先生こと関大樹禰宜は、十二年ほど前に大阪出身の娘と結婚した。宮司の手配による本人たちの意思はまったく考慮されない見合い結婚であったにもかかわらず、二人の仲は悪くなかった。しかし、九年前の『龍の媾合』の神事を境に、妻の恭子は急に変わり、ひと月も経たないうちに逃走した。それ以来、その行方は知られていない。

 真樹は長く樋水に通ううちに、断片的な情報からそれらのことを知るようになった。次郎についての瑠水の態度は微妙だった。それは、次郎が瑠水に対して特別な態度を取ることが原因だった。二人で龍王の池に行った時に、真樹は何度か次郎に会っていた。親切できちんとした神主というごく普通の印象を持ったが、瑠水は居心地悪そうだった。

「次郎先生はね。どうしてだか、私を特別扱いするの。誰かに似ているからみたいなんだけど」
瑠水は後で真樹に打ち明けた。

 瑠水が七歳くらいのときのことだった。手のつけられない悪ガキだった当時の彰と早百合が、『お社のジローセンセ』をからかう面白いネタを見つけた。小さな瑠水に対しては次郎が恭しいといってもいい丁寧な調子で話しかけるのに、早百合に対してはただの子供として扱うことが面白くなかったのかもしれない。瑠水の大切にしているウサギのぬいぐるみを人質にとり、瑠水に対して次郎に命令を下すように言いつけたのである。
「今から、お社の鳥居の前で裸踊りをしろって言え」
「媛巫女様の命令だっていうのよ」

 それをみて囃し立てるというのが二人の悪戯のプランだった。瑠水は小さな胸を痛めた。ウサギを返してもらえないのはものすごく辛かった。だが、子供心にも理由はわからないが自分を特別に大切に扱ってくれる大人に大恥をかかせる命令なんかしてはいけないことがわかっていた。一や摩利子に言いつけたりしたら、二人がものすごく怒られて、あとで瑠水が二人に虐められるのは火を見るより明らかだった。

 瑠水は泣きながら、二人にせき立てられてお社に向かった。次郎が泣いている瑠水を見て心配して寄ってきた。
「瑠水ちゃん、どうしましたか」

 瑠水は、後ろに二人が監視しているのを感じながら、どうしていいかわからないままに、ウサギがウサギがと泣いた。そして、次郎に促されてやっと二人に何を命令するように言われたか告白した。

「瑠水ちゃんが泣かずに済むなら、僕はよろこんで裸踊りをしますよ」
次郎は優しく言った。その途端に瑠水は二人の意地悪に屈服してはいけないという雄々しい氣持ちになった。
「だめ。絶対に裸踊りなんかしないで。お願い。しないで」

 それを聞いて次郎はとても嬉しそうに頷いた。それから二人の悪ガキの元に行き、今すぐウサギを返せ、今回は見逃してやるが、次回は一さんにはっきり言うからな、と断固として言った。

 その時は、早百合と彰に軽く叩かれたくらいでウサギも無事戻り、瑠水は全てが上手くいったと思っていた。

 しかし、その一週間後の秋の祭礼で問題が起こったのだった。この祭礼では樋水龍王神社の斎主である宮司を除いた全神職と出雲大社から応援に来た数名の神職が奉納舞いをする伝統になっていた。しかも、その舞は彼らが褌姿で樋水川に禊に入り、大祓詞を唱えた後にそのまま川の中で行う特別の舞いだったのである。しかし、次郎が頑としてこの舞いに参加することを拒んだ。宮司がなんといっても首を縦に振らず、理由もいわなかった。

 去年までは普通に参加していた神事だった上、次郎が普段はどんなことでもまじめに精進するのは有名だったので、宮司も村人も首を傾げた。摩利子と一が不思議そうにそのことを話すのを聞いて瑠水は青くなった。瑠水は命令なんかしたくなかっただけなのに、次郎を困らせる大きな命令をしてしまっていたのだ。もちろん早百合も彰もそのことには氣がつかなかった。瑠水があわてて次郎の元に行き、そんなつもりじゃなかった、命令なんかしたくなかったのにと泣いて謝ったので、結局次の年からは次郎も奉納舞いに再び参加するようになり、この件のことは誰にも知られなかった。だが、この時から瑠水は次郎に対して何かをいう時には慎重にしなくてはならないことを学んだのである。

 真樹はその話を瑠水から聞いて、改めて次郎を見た。とにかく変わった男だった。名前は関大樹なのに誰もが次郎と呼ぶし、本人もそれでなければ返事をしないという。媛巫女神に対する異常なほどの畏敬ぶりも有名だった。なぜ瑠水のことを『新しい媛巫女様』扱いするのか真樹には皆目分からなかったが、樋水特有の特別な理由があるに違いないと思った。どちらにしても真樹にはわからないことばかりで、それがひとつ増えたからといって、大して意味はなかったのだ。

 少なくとも、次郎は瑠水にまとわりつく真樹に対して、剣呑な態度は取らなかった。ただ、瑠水が樋水にとって特別な存在だということはわかった。次郎だけでなく、たぶん龍王や蛟といわれる存在や、『鬼』と陰で呼ばれる武内宮司にとっても。それは、真樹の瑠水に対しての行動ひとつで、出雲大社や神社庁を引っ張りだしての大騒動になることを意味していた。

 瑠水に対して真剣な氣持ちになるにつれ、真樹は樋水村や神社を強く意識せざるを得なくなった。
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Tag : 小説 連載小説

Posted by 八少女 夕

リラの花咲く頃

我が家のボイラーが壊れて業者が入ったり、その後片付けがあったりしたので、皆様の記事の読み逃げ状態になっております。お許しくださいませ。本当はコメしたい記事がいっぱいあって、遅れても書きにいく氣満々です。

リラの花咲く頃

宝塚で有名な「すみれの花咲く頃」という歌、ドイツ語やフランス語だと「リラの花咲く頃」であるのはご存知でしょうか。日本でスミレが咲くような時期はまだ少し肌寒さが残り、その時期に出会った少女との仲もまさに「清く正しく美しく」の清潔感の漂う、いかにも日本的浪漫のイメージですが、「リラの花咲く頃」となると少し違います。

日本の、私の知っている東京の春は、二月の沈丁花や梅からはじまって、じわじわとやってきます。三月いっぱいを使って三寒四温という感じでゆっくりと春になっていきます。それが恋とも友情とも言えないような淡い想いを抱える爽やかな出会いに似ているし、今はともかくかつての日本ではそういう淡白に見える関係からじわじわと愛が育った、そんなイメージがあるのです。

こちらの、私の今住んでいるスイスの春はそういうものではありません。昨日は冬なのに突然爆発するがごとくやってくるのです。ある時は一日で、長くても一週間でやってきます。ありとあらゆる花が、申し合わせたかのように花ひらき、香りに満ち、世界が鮮やかな色彩に溢れます。そのパワーと力強さは信じられないほどです。

「大道芸人たち Artistas callejeros」で、ヴィルが蝶子をたとえた花はこのリラでした。すみれのようなおしとやかな花ではなく、溢れるばかりのパワーを秘めた香り高い花。そう、私の大好きな花なのです。
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Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち Artistas callejeros 番外編 〜 Vivo per lei — featuring「誓約の地」

昨日の今日で、切り換えが早すぎるヤツと思われるでしょうが、それでもあえてアップします。それが毎日更新を決めた私のブログスタイルだし、それに、このシリーズの話は、canariaさんも喜んでくださったので。

22222Hitリクエストの最後はYUKAさんからいただきました。20000Hitの時に『大道芸人たち Artistas callejeros 番外編 〜 熟れた時の果実 — featuring「誓約の地」』という小説を書かせていただいたのですが、その続きをとのリクでございます。

YUKAさんのブログで連載中、それも大変たくさんのファンを持つ『誓約の地』と当ブログの『大道芸人たち Artistas callejeros』とのコラボです。

今回お借りして登場していただいたのは、ヒーローのヒョヌさまです。韓流スター、見目麗しく才能がありしかも性格もいいという欠点のないお方。で、私の書く小説の中ではほぼ唯一といっていい見かけのいい男ヴィルがお相手を務めています。ただ、こちらは見かけだけはいいけれど、屈折しまくっている無表情男。

この二人に歌わせるために選んだ曲「Vivo per lei(彼女のために生きている)」。もともとの歌詞では「彼女」とは「音楽(女性名詞)」のことですが、この二人が「僕は彼女のために生きている」と連呼すると……。まあ、ヒット曲ですし、彼女とは「音楽」のことです。そういうことにしておきましょう。

自分で書いておいてなんですが、こういう書き方をしてしまうとこの話は、どう考えてもあと二回は必要です。前回は杏子姐様+稔、今回がヒョヌさん+ヴィルと来ていますので、どう考えても優奈さん、修平さんとレネ、蝶子を組み合わせて出さないと……。ま、残りはYUKAさんが書いてくださるかも。(こちら、何も考えていません。前回も今回も行き当たりばったりの綱渡りで書いています。すみません……)


【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ

「大道芸人たち Artistas callejeros」を読む このブログで読む
縦書きPDF置き場「scribo ergo sum anex」へ行く 縦書きPDFで読む(別館に置いてあります)
あらすじと登場人物



大道芸人たち Artistas callejeros 番外編 〜 Vivo per lei
 — featuring「誓約の地」


 ウフィツィ美術館に入るための人びとの列を横目で見ながら、ヴィルはシニョリーア広場を横切った。現役のフィレンツェ市庁舎でもあるヴェッキオ宮に所用で寄って、ついでに『秘密のツアー』に参加してくるつもりだった。

 ミケロッツォの中庭はみごとな漆喰装飾とフレスコ画で埋められていた。贅沢な市庁舎だと小さくつぶやきながら、階段を登っていった。昨夜カルロスに会った時に、急ぎの書類提出があるのだが市庁舎の開いている時間帯には商談で行けないと困っていたので、代行を申し出たのだ。

「どうせあそこに行くなら、『秘密のツアー』に参加していらっしゃい。私が予約を入れておきますから」
カルロスはそう言った。そんなものがあるとは知らなかったが、滅多に行く機会はないだろうから断らなかった。

 言われたツアー開始場所に行くと、もう一人の男性が立って待っているだけだった。東洋人だが、平均的な日本人よりは体格と姿勢がいい。それに美麗な男だった。男に対する、しかもサングラスをしている人間に対しての形容として正しいのかどうかわからないが、それが第一印象だった。

「あんたも『秘密のツアー』とやらに参加するのか」
ヴィルが訊くと、男は短く頷いた。やはり日本人ではないみたいだ。頷き方、振舞いが少し違う。
「中国人、いや違うな、韓国人か」

 男はちらっとヴィルを眺めると、サングラスを外した。思った通り、欠点のないほど整った顔だった。東洋人には珍しい。
「よくわかったな。君は、北欧の出身かな」
「ドイツ人だ」
ヴィルは答えた。

「さ、ようこそ。ツアーはこちらです」
中年の女の声がしたので、二人は振り返ってドアの方を見た。鍵を開けてもらって、中に入ると彼女の後ろについて細い階段をひたすら上っていく。

 説明によるとこの秘密の部分は分厚い壁をくりぬいて作られたものだそうで、いざという場合の抜け道、秘密の通路として建設されたらしい。中には書斎として使っていた部屋もある。壁といい天井といい、豪華な絵や装飾で埋め尽くされた贅沢な部屋で、緊急用の狭い小部屋を想像していたヴィルは驚いて見回した。韓国からの男も目を細めて見回していた。

「これはすべて寓意画なのですね」
男が質問するとガイドは深く頷いた。
「そうです。この絵は母性を象徴しています。だから人間だけでなく動物たちが母乳をもらおうと待っているわけです。こちらは四元素をあらわしているアレゴリーです……」

 ガイドの説明を聞きながら、ヴィルは部屋を見回した。黄金の見事な装飾と絵。天井も十分に高い。けれど息が詰まりそうだった。窓がない。光が射さない。閉じこめられているようだ。

 かつてのヴィルならばこの部屋に何も感じなかったもしれない。彼はいずれにしても父親と土地と日常生活に閉じこめられていた。そして、そこから出て行けるなどと考えたこともなかった。だが、今の彼はもはや当時のアーデルベルトではなかった。黄金の檻は彼には息苦しい。

 やがてガイドは二人を連れて500年代広間の天井にあたる場所へと連れて行った。たくさんの梁に支えられたこの宮殿の裏側を垣間みることが出来る空間だ。天窓から入る光が暗闇の中から出てきた二人には眩しい。ツアーの終了した後に500年代広間から階段を登ってテラスに出て、フィレンツェの街を見回した。

「こんな風にゆっくりと街を眺めたことってどのくらいあっただろうか」
男がぽつりとつぶやいたので、ヴィルは改めて男の顔を見た。

「時間に追われた生活をしているのか」
「ああ。朝から晩まで。世界中のあらゆる美しい街に行ったが、いつもホテルと名所とレストランと仕事場にしかいかなかった。屋根裏や市役所の上のテラスから街を眺める時間を持った記憶はないな」

 ヴィルはこの男に一種の共感を感じた。彼もまた黄金の檻に息苦しさを感じることがあるのかもしれない。

「それで一人で旅に出たのか」
ヴィルがそう訊くと、男は小さく笑って首を振った。
「いや、一人じゃない。今日は自由行動なんだ」
「そうか。じゃあ、俺と同じだな」

 二人はヴェッキオ宮から出て通りをしばらく歩いた。韓国人は白麻のジャケットの袖を少しずらして時計を見た。正午を少し過ぎていた。
「昼時だし、一緒に食事でもしないか。一人の時間を楽しみたいのでなければ」
そう誘われてヴィルは首を振った。
「一人になりたかったわけじゃない。ただ、さっきもらってきた書類を依頼者に届ける予定になっているんだ。ちょうどリストランテで逢う予定だから、そこに行っても構わないか?」

「もちろん」
男が微笑んだ。妙に魅力的な笑い方をする男だ。ヴィルは思った。一方、男の方は先ほどから一緒にいるドイツ人の顔に一度たりとも喜怒哀楽が現れないことに驚いていた。

 ヴィルはカルロスと待ち合わせしたドゥオモにほど近いリストランテに入って行った。
「『リストランテ・ムジカ』か……。音楽の聴けるレストランなんだろうか」
ヴィルは奥にグランドピアノがあるのを目にしたので、男の問いかけに答えようとした。だか、その時、リストランテの中にいた男が素っ頓狂な声を出したので、それは中断されてしまった。
「カン・ヒョヌ! なんてことだ! 君と、このフィレンツェで再会できるとは!」

 その人物は、カルロスと同じテーブルに座っている初老の東洋人だった。ヴィルの連れの男は、思わぬ知人との再会にかなり動揺している様子だった。
「パクさん……」

 その後のちょっとした騒ぎと韓国語と英語の会話の後で、カルロスが商談相手であるパク氏とヴィルを、パク氏がカルロスとヒョヌをそれぞれ紹介した。

「ご存知かもしれませんが、ここにいるカン・ヒョヌはわが韓国を代表する映画俳優で人氣スターなんです」
ヴィルは、少し眉を持ち上げて再びヒョヌを見た。なるほど、映画俳優か。

「ヒョヌ君。ここでキミに逢えたのだから、どうしてもあの美声を聴かせてもらいたいな」
パク氏は唐突なことを言った。ヒョヌはにこやかに、けれど明らかに迷惑しているとわかる声音で答えた。
「他ならぬパクさんのリクエストにはぜひお応えしたいのですが、ここには伴奏してくれる人もいなさそうですし……」

 それを聞くと、カルロスは嬉しそうに言った。
「おや、伴奏と言ったら、ここにいるヴィル君に勝る適任者はいませんよ。私もぜひ韓国が代表するスターと、わが敬愛するArtistas callejerosのヴィル君の競演が聴きたい」

 ヒョヌはぎょっとしてヴィルを見た。
「君、音楽家なのか」
「すまない。言いそびれたがそうなんだ」

 諦めたようにピアノの側に向かいながら、ヒョヌはヴィルに囁いた。
「君はあの眼の大きい紳士のいう事は断れないのか」
「断ってもいいんだが、あの男には今晩、フィレンツェで一番酒のうまいレストランに連れて行ってもらうことになっているんだ。俺の一存で機嫌を損ねると、大騒ぎして怒る輩が三人もいてね。それはそうと、あんたもあの韓国人には頭が上がらないみたいだな」
「ああ、駆け出しの頃、相当世話になったんだ。枕営業をさせられそうになった時にも、あの人が助けてくれたんでやらずに済んだし。でも、苦手なんだよ、あのじいさん」

 ヴィルは氣の毒にといいたげに肩をすくめた。
「で、何を弾けばいい?」
ヒョヌは少し考えていたが、やがてヴィルをじっと見つめてイタリアン・ポップスの題名を言った。
「Vivo per lei」

「あれはデュエットじゃないか」
ヴィルが言うと、ヒョヌは韓国や日本の女性ファンたちが卒倒するような魅力的な笑顔を見せた。
「そう。君にも歌ってもらうよ」

 フィレンツェ一うまい酒を待つ仲間の無言の圧力と、この魅力的な男を殴って逃走する爽快さを秤にかけたあと、小さく肩をすくめると、ヴィルはピアノの椅子に腰掛けてイントロを静かに弾いた。低めでセクシーな東洋のスターの歌声がレストランに響きだした。

(初出:2013年5月 書き下ろし)

この記事には追記があります。下のRead moreボタンで開閉します。

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「Vivo per lei」は、イタリアの有名なヒット曲でかのアンドレア・ボチェッリとジョルジアもデュエットしています。普通は男女のデュエットなのですが、今回は男二人にデュエットさせたので、あえて男デュエットバージョンを探してきました。この動画の歌詞は少し変えてあるようですが、下には最も有名なアンドレア・ボチェッリのデュエット曲でのイタリア語の歌詞と、私の訳した日本語を載せておきます。



Vivo per lei
by Andrea Bocelli & Giorgia

Vivo per lei da quando sai
La prima volta l'ho incontrata
Non mi ricordo come ma
Mi entrata dentro e c'è restata
Vivo per lei perche' mi fa
Vibrare forte l'anima
Vivo per lei e non un e' peso

Vivo per lei anch'io lo sai
E tu non esserne geloso
Lei e' di tutti quelli che
Hanno un bisogno sempre acceso
Come uno stereo in camera
Di chi da solo e adesso sa
Che anche per lui, per questo
Io vivo per lei
E' una musa che ci invita
A sfiorarla con le dita
Attraverso un pianoforte
La morte lontana
Io vivo per lei
Vivo per lei che spesso sa
Essere dolce e sensuale
A volte picchia in testa ma
E' un pugno che non fa mai male
Vivo per lei lo so mi fa
Girare di citta' in citta'
Soffrire un po' ma almeno io vivo
E' un dolore quando parte
Vivo per lei dentro gli hotels
Con piacere estremo cresce
Vivo per lei nel vortice
Attraverso la mia voce
Si espande e amore produce

Vivo per lei nient'altro ho
E quanti altri incontrero'
Che come me hanno scritto in viso:
Io vivo per lei

Io vivo per lei
Sopra un palco o contro a un muro...
Vivo per lei al limite
...Anche in un domani duro
Vivo per lei al margine
Ogni giorno
Una conquista
La protagonista
Sara' sempre lei

Vivo per lei perche' oramai
Io non ho altra via d'uscita
Perche' la musica lo sai
Davvero non l'ho mai tradita
Vivo per lei perche' mi da
Pause e note in liberta'
Ci fosse un'altra vita la vivo
La vivo per lei
Vivo per lei la musica
Io vivo per lei
Vivo per lei e' unica
Io vivo per lei
Io vivo per lei
Io vivo
Per lei


知ってるだろう、僕は彼女のために生きている
彼女と初めて出会ったときから。
どうやってかわからないが、彼女は僕の中に入ってきて、
そしてそのままいる。
僕は彼女のために生きている、
なぜなら彼女は魂を激しく震わせるから。
彼女のために生きて、それは辛いことではない。

知ってる、私も彼女のために生きている。
でも、妬かないでほしい、
彼女は部屋の中のラジオのように、
必要とする全ての人のもの。
誰だってそう、だから彼だって。
だから、
私は彼女のために生きている。

彼女は僕らを呼び寄せるミューズ。
彼女が指でピアノに触れる。
死は遠ざかる。
僕は彼女のために生きている。

私は彼女のために生きている、
彼女は優しく官能的にもなる。
時には頭を叩かれることもあるけど、
その握り拳で傷ついたりはしない。

彼女のために生きているんだ、そう、
町から町へ巡ることになって少し苦しむ。
でも少なくとも僕は生きている。

彼女が去るときは苦しい。
私は彼女のためにホテル暮らし。
喜びが無限に広がっていく。
彼女のために渦の中で生きている。
私の声を通して、それは広がり愛が生まれる。

彼女のために生きて、他には何も持っていない。
僕は他に幾人にも会うだろう、僕と同じように顔にこう書いてある、
「彼女のために生きている」って。

私は彼女のために生きている。
舞台の上でか壁に向かって
彼女のためにギリギリのところで生きている。
たとえ明日がどんなに厳しくても。
たとえ人生が制限されるとしても。
毎日、追い求めている。
主役は、いつも彼女。

僕は彼女のために生きている、それは今ではもう、
僕には他に行くところはないから。
音楽は本当に一度も僕を裏切ったことはないから。

私は彼女のために生きている、
私にやすらぎと自由の音色をくれるから。
もし別の人生があるとしても、私は彼女のために生きる。

彼女、音楽のために生きる。
私は彼女のために生きる。
たった一人の彼女のために生きる。
私は彼女のために生きる。
彼女のために生きる。
私は生きている、
彼女のために。

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Tag : 小説 読み切り小説 リクエスト コラボ キリ番リクエスト

Posted by 八少女 夕

ありがとう、canariaさん

今日は、本当はコラボ小説をアップする予定でしたが、一日延期します。リクエストをくださったYUKAさんもたぶん私と同じ氣持ちだとおもうので、一日長く待ってくださると思います。

ブログの世界は意外と狭いのでご存知の方も多いと思いますが、ブログのお友だちの一人であるcanariaさんがブログをおやめになる事になりました。

ここを以前から訪れてくださっている方はご存知のように、ブログをおやめになる方の話ははじめてではありません。最初の時はものすごく慌てました。ある大切なお友だちがやめると宣言なさった時には、大騒ぎして引き止めました。でも、その引き止めるという行為が、おやめになりたいと思っていらっしゃる方にとってストレスになるのだという事を理解するようになってから、引き止めるという事はやめました。どんなにやめてほしくないと思っていても。

canariaさんはイラストと絵画と詩と小説の総合芸術である「侵蝕恋愛」を発表し続けてこられた方です。ブログの内容や更新スタイルというのは、人によって千差万別で、肩の力を抜いてひたすら楽しむ方、生活の合間に思い出したように更新なさる方、コンスタントに黙々と更新する方と、いろいろなスタイルがあり、どれが正解という事はまったくないのですが、canariaさんの場合は「魂を削るように」更新なさっていらっしゃいました。これは比喩ではありません。私にとっては断じて。

canariaさんにとっての「侵蝕恋愛」と創作は、寝食よりも大切なものだと想像しています。散文的で手間のかかる生活を泳いでいく中で、この創作のための時間を確保するのはとても大変な事でしょう。同じブログ上の創作と言っても、私が鼻歌まじりに適当なものを書き散らしているのとは、重みが全く違います。

芸能人やプロの作家は別として、ブログ運営は自分の記事を更新するだけにはとどまりません。コメントに答えたり、応援してくださる方の作品を読んで回ったり、そこにコメントを入れたりと思った以上の時間と手間がかかります。その行為をまったくせずに、ご自分の作品にだけ時間をかけている方もいらっしゃいます。コメントに返事をしない方もあれば、他の方の作品もほとんど読まない方も。ブログが人氣で、訪問者が多くなればなるほど、そういう方向を選ぶのは必至でしょう。私だって、いらしてくださる方全員のブログに、同じだけの情熱を持って訪問する事などできはしません。そう、私はそれを「しかたのないこと」と心のどこかで処理するちゃらんぽらんさを持っています。

でも、canariaさんはそういう方ではありません。どんなに体調が悪くても、どんなに創作に時間をかけたくても、私のブログにまでいらしていただき、長編小説を読み、丁寧な感想をくださいました。たぶん自由に使える時間が100だとしたら200ぐらいかけていらしたのではないかと思います。かなり前のことになりますが、canariaさんがご自身のコメント欄を閉じたいとおっしゃった時に「私は交流したい」と軽々しく書いたことがありました。そのことがcanariaさんを苦しめたのではないかと、ずっと申し訳なく思ってきました。

なぜブログをおやめになるのか、具体的な理由は訊いていません。それを問いただしたところで、canariaさんを助けて差し上げる事も出来ないのです。決意なさるまでに、どれだけたくさんの葛藤がおありになったか、訊くまでもありません。

私は「侵蝕恋愛」の続きを読みたいです。canariaさんにこれまでのようにお付き合いしていただきたいと心から願っています。でも今は、「たまにはうちに遊びにきて」や「これまでのブログを残しておいて」といったわがままを言わずに、手を離す事がcanariaさんに私がしてあげられるたった一つのことだようやく悟りました。canariaさんが地球のどこかで「侵蝕恋愛」を完成させるその日を待っています。たとえ、目にすることが出来ないとしても。大事だから手を離さなくてはいけないなんて、この歳になってもあまりしたことがないつらい体験です。まるで、「侵蝕恋愛」に出てくる 主役の一人ファーン先生の心持ちそのままです。

canariaさんが読んでくださった私の小説の中にも、ある女が愛する男に別れを告げるシーンがあります。「そして、あなたは、自由になって」と。その女と同じくらい強い想いを秘めてcanariaさんを送り出して差し上げたいと思っています。

大好きな、大好きなcanariaさん、どうか心のままに自由になってください。これまで本当にありがとうございました。
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Posted by 八少女 夕

詩を書いていただきました

ブログのお友だちakoさんが、私の写真をつかってとても素敵な詩を書いてくださいました。

akoさんの書いてくださった詩 「宵の明星」
宵の明星
この詩の著作権はakoさんにあります。無断引用は固くお断りします。携帯待ち受画面など個人でご使用なさることはOKのようです。くわしくはakoさんのブログで

この詩は、ちょうど今akoさんが読んでくださっている、私の「樋水龍神縁起」(本編)にインスパイアされて書いてくださった詩だそうで、ううう、なんてもったいない。透明な言葉が胸に染み入ります。この話の主人公の一人新堂朗は、私が作者として惚れ込んだ数少ないキャラでして、思い入れはとても強いのです。こんな風に素敵に表現していただけるのは涙が出るほど嬉しいです。

akoさん、本当にありがとうございました! 大切にさせていただきます。
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Posted by 八少女 夕

黒歴史の話

キリスト昇天の祝日で昨日から四連休です。洗濯しかしていないけれど……。と、どうでもいいことを語ってみました。今日の話題は全くそれとは関係なく。

さすがにもう時効だと思うし、ちょっと語ってみようかな。私の創作の原点の話です。

私は、四歳か五歳、つまり記憶にあるもっとも昔の時点から、物語の妄想癖がありました。何故だかはわかりません。もちろん当時は文章に書いていたわけではなく、マンガにしていたわけでもありません。一次創作と二次創作の区別もつかない段階で、ストーリーもあってなきがごとし。

で、そういうことをペラペラ話す子供ではなかったし、小学校に入ってからもそのことを話すような友人はいなかったので、勝手に一人で黙々と妄想していました。

で、四年生ぐらいの時でしょうか、クラスで交換日記なるものが流行りました。親しい友達と一日おきにノートを受け取り、何かを書いて翌日渡すもの。今でもそんなことをやっている子供っているんでしょうか。私は当時一番親しかった友と交換日記をはじめました。そのノートに文字で「あったこと」「おもったこと」のようなごく普通の日記を書いていた時期があったかは、もう憶えていません。どういうわけだか私たちは交換創作マンガを書くようになってしまったのです。

当時私の通っていた私立小学校にはフランス語の授業があり、クラスの生徒はそれぞれ授業時間はフランス語の名前で呼ばれていました。交換日記の主人公たちは、私とその友達のフランス語名を持った、(たぶん)フランス人の女の子たちでした。どんなストーリーだったかも忘れましたが、やけにドラマティックでした。とっくになくなってしまったその何冊かのノート、見つけることがあっても頭を抱えるに間違いありません。

「scriviamo!」の「二十年後の私へのタイムマシン」で書いた「タイムマシンの出てくる話」は実話で、この交換日記の直後に私が一人で描きはじめた作品です。このストーリーはよく憶えていて、今から廃品利用しようにもキャラの名前くらいしか使えるところがありません。まさに黒歴史です。

でも、あの作品で書いたように、私はその誰にも見せられないひどすぎるマンガに愛着を持っています。あれからずいぶん時間が過ぎて、私は厚顔無恥にも作品をバンバン公開するようになりました。その原点があの時代のショウワのノートに書かれた稚拙な作品にあります。(もう地球から消滅してしまいましたが)

今でもまだまだ発展途上ではありますが、少なくとも当時よりは上達していることは間違いありません。そう考えると黒歴史を通るのもさほど悪いことではないのではないでしょうか。
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Posted by 八少女 夕

「旅行の必需品!」

さてさて。本日はトラックバックテーマです。旅行の必需品ね。

旅行にもいろいろとあります。一泊、飛行機で行く一週間の旅行、バイクで行く二週間の旅行、日本への里帰り、それに働いていない時に限りますが三ヶ月ぐらいの旅行。で、それぞれの必需品があるわけなんです。

私が(旅行とは関係なく)日常で使っている鞄には、旅行に行っても即使える必需品が入っています。お財布、歯ブラシ、リップと口紅、iPhoneと緊急チャージ用の電池とケーブル、カメラ、ミニタオルとそれを濡らしてもおしぼり状にして持てるケースなど。

一泊旅行に行くためにこれに加えるのは、帽子と最低限の下着と着替えと携帯スリッパのみです。あ、必要な場合はパスポートやチケットとカード類も。

一週間の旅行ともなると、洗顔用具セットとスリッパの代りにサンダル、そして着替えの量が少し増えて鞄が大きくなります。

バイクの旅行の場合は、このままですが、二ヶ月の海外旅行になると、少し場所を作って小さなたらいになるプラスチック製のタッパを忍ばせます。洗濯をしたりシャワーのところで体を洗ったりするのに必要になりますから。場合によっては、日焼け止めやカトラリー付きアーミーナイフなども加わります。

日本に里帰りするときの必需品。それはお土産です。配らなくてはならないところが多いので、このお土産の分量がものすごく多いのです。そして、スイスに戻る時には、代りに日本で調達したものがぎっしりと入ることになります。

こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当山本です今日のテーマは「旅行の必需品!」です。ゴールデンウィークも後半戦に差し掛かっておりますが、旅行されている方や予定のある方も多いのではないでしょうか?旅行といえば準備が必須ですが、山本は面倒臭がりのため、いつも旅行前日か前々日からやってしまいます。準備も大切な旅行だと思いますが、皆さんは旅行する際の必需品はありますか??山本は、デジタルカメラ・...
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Posted by 八少女 夕

【小説】リナ姉ちゃんのいた頃 -5-

今日の小説は紗那さんからいただいた22222Hitリクエスト。本日5月8日は、紗那さんのお誕生日なのです。そして、リクは「リナ姉ちゃん+誕生日」だったらどうしても今日公開しなくっちゃ! 紗那さん、お誕生日、おめでとうございます。健康で楽しい一年になりますように!

「リナ姉ちゃんのいた頃」の-4-までを読んでいない方のために。このシリーズの主人公は日本の中学生の遊佐三貴(もともとのリクエストをくださったウゾさんがモデル)とスイス人高校生リナ・グレーディク。日本とスイスの異文化交流を書いている不定期連載です。前の分を読まなくても話は通じるはずですが、先に読みたい方は、下のリンクからどうぞ。


リナ姉ちゃんのいた頃 をはじめから読む




【小説】リナ姉ちゃんのいた頃 -5-

 僕は典型的な牡牛座だと思う。安定した規則的な日々を好み、我慢強く物事をじっくり進めていく方だ。柔軟性やロマンに欠けることは認めるけれど、この性格、そんなに嫌いじゃない。安定した規則的な生活は、リナ姉ちゃんが我が家にやってきてからは吹っ飛んでしまった。リナ姉ちゃんは絶対に牡牛座じゃないよね。

「ミツ~。このゲーム、クリアしちゃった。続編ないの?」
リナ姉ちゃんがコントローラーを振り回している。姉ちゃんは日本語の勉強がどうのこうのと言いながら、毎日せっせと僕のゲームに取り組んだ。ついに全部終わっちゃったんだ。

「もうないよ。正確には市場には出回っているけど、うちにはない」
「購入の予定は?」
「うん。日曜日の誕生祝い何が欲しいかって母さんに訊かれたから、ちょうどそのゲームをリクエストしたんだ。だからちょっと待って」

 僕は、誕生日のプレゼントを開封して最初にプレイするのが自分ではないことを既に諦観していた。リナ姉ちゃん相手に正論を述べても意味なさそうだし。

「え。今度の日曜、ミツの誕生日なの?」
「うん」
プレゼントなら、別にいいんだよ、そう言おうとしたのに姉ちゃんは意外な言葉を続けた。

「やったっ。私ね、苺大福が食べたい! ひゃっほうっ」
なんで姉ちゃんが希望を述べるんだろう。
「僕の……誕生日なのに……?」

 リナ姉ちゃんはこれまたちょっと不思議そうに答えた。
「だから、ミツがお茶をごちそうしてくれるんでしょ?」

「なんで?」

 噛み合ないやりとりのあと、僕は驚くべき事実を知った。リナ姉ちゃんの国スイスやその近隣の国では、誕生日を迎えるものが、同級生や同僚にお茶を振る舞うものなんだって。プレゼントをもらうのではなくて。

「子供はプレゼントをもらうけれどね」
僕は中学生だよ! 子供じゃないの?

 リナ姉ちゃんは僕の心の叫びは軽く無視して、誕生日プレゼントを早めに買えないか母さんに交渉するためにルンルンと階下に行ってしまった。しかたないなあ。苺大福、いくつあればいいのかな。リナ姉ちゃん一人で三個は食べると思うんだけど。

 土曜日、リナ姉ちゃんが来てはじめて、僕たちは別行動をすることになった。僕は栄二兄ちゃんの高校の見学会に行くことになったのだ。最近、受験生を対象にした見学会がけっこうある。で、今回は栄二兄ちゃんが生徒会長に就任して最初の大舞台だから、受験しようがしまいが絶対に来いっていわれちゃったんだ。別の高校に通うリナ姉ちゃんは連れて行けないので、この日は下宿している一美姉ちゃんが帰宅して代りに面倒を見てくれることになった。女同士で買い物に行くって、二人は朝から騒いでいる。大丈夫かなあ。

 兄ちゃんの学校は、妙に明るい。まだ受験もしていない僕たちに、入学したらうちのクラブに入れとか、オーストラリアの姉妹校との交換留学制度に応募しろとか、やけに話を進めている。一番テンションが高いのは、やっぱり栄二兄ちゃんみたいだ。そんなにストレスになるなら、なんで生徒会長に立候補したりするんだろう。優等生だった一美姉ちゃんと違って、栄二兄ちゃんは生徒会長ってキャラじゃないと思ったんだけれどなあ。

 兄ちゃんの渾身のギャグに、微妙な愛想笑いをしている大人しい中学生たちの間に座っていて、僕はちょっとだけ退屈していた。夏から、週末はいつもリナ姉ちゃんと一緒だった。あの無茶苦茶な大騒ぎにはほとほと疲れていたはずなのに、いないとけっこう寂しい。いまごろ一美姉ちゃんと百円ショップにいるのかなあ。

「おい、三貴!」
見学会が終わったので帰ろうとしていた僕を後ろから呼んだのは、栄二兄ちゃんだ。兄ちゃんももう帰れるらしい。
「なあ、どうだった、俺のスピーチ。生徒会長としての威厳あった?」
「う、うん、まあ」
「なんだよ、その中途半端な返事は。ま、いいや。とにかくまずは終わったからな。おい、どこ行くんだよ」

 僕は先に見えているいつもの和菓子屋を指差した。
「明日のために、苺大福を注文しなくちゃいけないんだ」

そういうと、栄二兄ちゃんはカラカラと笑った。
「はは。心配するなよ。三日も前に、リナが母さんに言って注文してもらってたから」
な、なんだって? そのぶん僕のお小遣いから天引きなの? リナ姉ちゃん、いったいいくつ注文したんだろう。

「それだけじゃないぞ。なんか、明日のことを企んでいるらしい」
栄二兄ちゃんはそっと耳打ちした。ええっ。どうなるんだろう。こんなに不安に満ちた誕生日前夜ってなかったかも。

 そして、誕生日当日。僕の不安をよそに、真っ青な五月晴れだった。若葉の間からなんともいえないいい香りが漂ってくるこの季節はとても好きだ。朝から僕は緊張して、新しいTシャツをおろして袖を通した。さて、何が起こるかわかんないけれど、心頭を滅き……。

「ちょっと、ミツ! 何してんのよ、早く早く!」
バタバタと駆け上がってきたリナ姉ちゃんは騒ぐ。見るといつもより派手な恰好だ。いや、いつも通りか。そのショッキングピンクのミニフレアースカート、昨日買ったわけ? カチューシャもおそろいだ。でも、サテンの黒いシャツの襟がピンと立っているので、かわいいというよりかっこいい。

 手を引っ張って、僕を階下に引きずりおろすみたいに連れて行ったかと思えば、玄関でサンダルを履いている。
「何してんのよ。早く靴はいて!」
「え? どっかでかけるの?」
「そうよ。あと十五分しかないから急いで!」

 何がなんだかわからないまま、僕はリナ姉ちゃんに続いた。向かっている先はあれ? 「丘の上の教会」だ。僕は仏教徒だし、その教会には行ったことがない。かつて一美姉ちゃんがボランティアでオルガンを弾きに行っていたから、知っているけれど。

 で、どういうわけだか僕はリナ姉ちゃんと一緒に、教会の十時のミサに参列することになってしまった。荘厳なオルガンの音色にあわせて、けっこう上手いグレゴリオ聖歌風の男声合唱がついているから退屈しないけれど、よりにもよって誕生日に仏教徒の僕が教会に行かなくても……。

 僕はちょっとキョロキョロした。びっくりしたことに後ろの方に父さん、母さんそして栄二兄ちゃんまでも座っていた。なんで? 謎は全く解けないまま、みごとなテノール、バリトン、そしてバスのソロ三重唱でミサは終了した。

 神父さんは、典礼の詠唱が終わると、僕たちの方を向いてにこやかに話しかけた。
「今日の素晴らしい歌を聴かせてくれた合唱団と、ソロの三人をご紹介しましょう、さあ、皆さん前に」
階段を下りてくる音がして、後ろの合唱席にこもっていた男性陣、そして一美姉ちゃんが現われた。

 僕は、一番前にならんだ三人を見て、目を疑った。ええっ。あれは若田高校の! そう、夏にリナ姉ちゃんと友達になりたいから紹介しろと言って僕に迫ってきた不良の三人組、自称《バカタの三羽がらす》じゃないか。そういえば、一美姉ちゃんと知り合いだったみたいだからどうしてか訊こうと思ってすっかり忘れていたよ!

「ご紹介しましょう。本日の素晴らしいソロを聴かせてくれた若き才能です。洗礼名、アンブローズ、ルーカス、テオの三人です」

 わーっと、拍手が響き、三人はちょっと照れくさそうに笑った。へえ~。意外。有名な不良の三人組が、洗礼も受けているキリスト教信者だったなんて。

 そんなことを考えているうちに、合唱団と三人、それに一美姉ちゃんに向けられた拍手は、アンコールを求める規則的なものに変わった。一美姉ちゃんは、頷いてちょっと指揮をするように手をあげた。そして、聞こえてきた合唱は……。

「Happy birthday to you,
 Happy birthday to you.
 Happy birthday dear Mitsutaka,
 Happy birthday to you!」

 僕は不覚にも、うるっときてしまった。一美姉ちゃんと、リナ姉ちゃん、そして家族のみんなに《バカタの三羽がらす》と教会のみんなが、こっそりこれを準備していてくれたんだと思うと。

「ありがとう、みなさん、ありがとうございます」
僕は立ち上がってお礼を言った。そしたらリナ姉ちゃんがぱっと立ち上がって叫んだ。
「さ。信徒会館でパーティよっ」

 信徒会館といわれる建物の一階の集会室は紙テープと風船で飾り付けられていた。そしてそこには、ポテトチップスやドラムチキン、巻寿司やいなり寿司、野菜スティック、チーズ、柿の種などがたくさん並べられていて、信徒の皆さんや合唱団も混じえてジュースで乾杯することになった。

 僕、小学校の低学年以来、誕生日パーティなんてしたことがなかったので、恥ずかしかったけれどすごく嬉しかった。

「よう」
その声にびくっとすると、後ろに《バカタの三羽がらす》が立っていた。右からアンブローズ、ルーカス、テオだっけ。大和民族特有の顔に、そのネーミング。服装もいつもの腰パンじゃなくて真面目な感じだし、なんかイメージが……。

「き、今日は、ありがとうございました」
「いいってことよ。一美姐さんとリナさんの両方に頼まれたんだ。断ったら男がすたるってもんよ。誕生日ってのはめでたいよな」
「そうそう。誕生日おめでとう」
「おめでとうっす」

 三人に祝われて僕は眼をしばたいた。

「あ。悪いけど、今日のことはオフレコにしてくれよ」
「そうそう。イメージ戦略に関わるし」
「俺たち、ハードボイルド路線だから」
はあ。そうなんですか。僕はしっかりと頷いた。もちろん誰にも言いませんよ。クラスのみんなに今日のことを言っても誰も信じなくて僕がほら吹きだと思われるだけだろうし。

 そのあと、父さんと母さんがやってきて、約束のゲームの入った包みを渡してくれた。父さんはちょっと嬉しそうに僕の頭をこつっと叩いた。栄二兄ちゃんはCDを、一美姉ちゃんは水彩色鉛筆のセットを渡してくれた。

「おめでとう、ミツ!」
そう言って、リナ姉ちゃんは僕に抱きつくと、頬にキスをしてからはいっと封筒みたいな何かを手渡した。何だろうと思って開けてみると、青い色をした紙の束が出てきたた。子供銀行のお札みたいに見えるけれど、なんだろう。マッターホルンの絵と10という赤い字。

「これ、本物?」
「そうよ」
「どこで使えるの?」
「スイス」

 そう、それは交通機関やホテルなど旅行の時に使えるスイスの金券、Reka-Checkだったのだ。

「スイスって……」
「ミツが私のところに遊びにくる時に、使ってね」

 そういうと、リナ姉ちゃんはニコニコと笑いながら、感無量で立ち尽くしている僕からゲームの包みをぱっと取り上げた。帰ったら早速プレイする氣、満々らしい。僕は、会場の片隅におかれているお盆の上に、50個近い苺大福が載っているのを見てぎょっとした。ええっと。苺大福は全部僕持ちかな。それどころか、この会場の食べ物、全額なんてことないよね……。

 会費制だから心配しなくて大丈夫よと一美姉ちゃんが耳打ちしてくれるまで、ぼくは半ば涙目で会場の騒ぎと飛び跳ねるリナ姉ちゃんを眺めていた。会場では、《バカタの三羽がらす》が再びみごとなアカペラを響かせていた。

「Happy birthday to you,
 Happy birthday to you.
 Happy birthday dear Mitsutaka,
 Happy birthday to you!

 Happy birthday to you,
 Happy birthday to you.
 Happy birthday dear 紗那さん,
 Happy birthday to you!」

(初出:2013年5月 書き下ろし)

この記事には追記があります。下のRead moreボタンで開閉します。

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スイス人留学生が日本にやって来て異文化交流をするという趣旨に則って、このシリーズでは毎回日本人の知らないスイスと、スイス人の知らない日本を少しずつ埋め込んでいます。

今回は、誕生日の習慣の違いと、スイスで発売されている金券Reka-Checkのことを埋め込みました。

Reka-Checkに関しては、この辺の記事はいかがですか。(英語です)
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Tag : 小説 読み切り小説 リクエスト キリ番リクエスト

Posted by 八少女 夕

検索キーワードのこと

月初になると、いろいろなブログで検索キーワードの話になりますよね。で、私も毎月見てみるんですが、何故かあまり面白くありません。

検索を通してこのブログに辿りつく人の8割くらいは、Macで小説を書くにはどうしたらいいかということを探しているらしいのです。あんまり、役に立たなかったでしょう、すみません。

それから毎月定番になっているキーワードが、「シルク・ド・ソレイユ アレグリア 歌詞」ってタイプ。いや、確かに訳しましたよ。でも、私イタリア語もスペイン語も専門外だし、しかも意訳だから……。

これらにくわえて「大道芸人」関係も多いけれど、どうやら本物の大道芸人のことについて調べていらっしゃる方のようで、お役に立てなかったことだと思います。

で。なんで「スイス」に関する検索では誰も来ないわけ? これほど毎日連呼しているのに? まあ、いいんですけれどね。スイスに関する素晴らしい情報があるわけではないので。でも! ウゾさんのところに「スイス 小説」で行った方、なんでうちにきてくれないの?
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Posted by 八少女 夕

有機農家リターンズ

冬のあいだ閉まっていた有機農家の野菜直販が再開されました。

私は週に一度まとめて買い物をします。そして、野菜はこの農家から買うのですよ。有機農法で作られた野菜は安全でかつ美味しい。しっかりとした野菜の味がぎゅっと詰まっています。そして、もちろん新鮮です。

で、当然ながら冬の間は野菜が穫れないので閉まっているわけです。

スーパーに行けばいつでも野菜が買える。しかも真冬に夏野菜が山積みになっていることは、先進国の都会では当然のことになってしまっています。でも、冬に夏野菜を食べるのは体にもあまりいいことではありませんよね。夏野菜は体を冷やします。また、ハウスでの大量栽培は科学薬品で培養されたサイボーグみたいなもの。

この有機農家が閉まっている間は、もちろんスーパーで買い物をしたのですが、出来るかぎりスイスの農家の作っている冬野菜をメインに買っていました。地元で出来るという事はかなり旬に近いという事ですし、スイスの法律は周辺諸国や海の向こうの無法地帯と違ってかなり厳しいので、私の求める自然の形に近い野菜を手にできるからです。

そして、先週の土曜日から再び有機農家の野菜に戻したのですが、いやあ、おいしい。歯ごたえも味も全然違う。また野菜の消費量が増えることでしょうね。
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Posted by 八少女 夕

【小説】リナ姉ちゃんのいた頃 -4- Featuring 「254」

今日の小説は、左紀さんからいただいた22222Hit記念リクエスト。私の大好きな左紀さんの「254」のコトリとヤキダマ(共に敬称略)は、「リナ姉ちゃんのいた頃 -3- Featuring 「254」」に入り込んで共演してくださり、さらに別の小説でも、うっすらと登場させるというとんでもないことをしているのですが、それを快くご承諾いただいただけではなく、「噂のツーリングを書いて」とリクまでいただいてしまいました。左紀さん、ありがとう! そして、二輪車の技術的ヘルプも本当に助かりました。御礼申し上げます(^o^)/

なお、リクエストの順が前後していますが、「リナ姉ちゃん」シリーズの時系列の関係で、こちらを先に公開することになりました。紗那さんからいただいたリクも、近日中に(特定の日に)公開予定です。

「リナ姉ちゃんのいた頃」の-3-までを読んでいない方のために。このシリーズの主人公は日本の中学生の遊佐三貴(もともとのリクエストをくださったウゾさんがモデル)とスイス人高校生リナ・グレーディク。日本とスイスの異文化交流を書いている不定期連載です。前の分を読まなくても話は通じるはずですが、先に読みたい方は、下のリンクからどうぞ。


リナ姉ちゃんのいた頃 をはじめから読む
山西左紀さんの「254」を読む



【小説】リナ姉ちゃんのいた頃 -4-
Featuring 「254」


 リナ姉ちゃんが、コトリさんとヤキダマさんと一緒にツーリングに行く、出来れば僕もつれて行きたいと言った時、いつもはあまり口を挟まない母さんが珍しく反対した。
「三貴はまだ中学生だし、危ないんじゃないかしら。先方にご迷惑をかけることになるし」

 父さんは、リナ姉ちゃんがいう事は、それまで何でもOKしてきたのだけれど、こういう風に母さんが言う時には問答無用で母さんの味方をする。僕はリナ姉ちゃんが頑張ってくれることを期待したけれど、あっさりと言った。
「わかったわ。残念だけれどしかたないわね」

 僕はリナ姉ちゃんが諦めたんだと思っていた。もちろん行きたかったけれど、リナ姉ちゃんすら加勢してくれないなら、僕に出来ることなんて何もない。だから、翌日、会社から帰って来た父さんがこっそり僕を呼び出してこう言ったとき、心底驚いた。
「お前、うちの斉藤専務と知り合いなのか?」

 まさか。知り合いなのは父さんじゃないか。僕は、斉藤専務の名前ばかり聞かされているだけで、もちろん一度だって会ったことなんてないよ。やっぱりリナか、そういって父さんは肩を落とした。

 今日、父さんが出社すると、斉藤専務が上機嫌で父さんを手招きしたらしい。
「いやあ、嬉しいねぇ。三貴君が親切なお友だちと、リナさんをツーリングに連れて行ってくれるらしいね。大変楽しみにしているらしいとリナさんのお父さんから丁寧なお電話をいただいてね。私からも信頼できる部下の子息なので安心してまかせられますと答えておいたよ。いや、いいねぇ。私も若いころにはずいぶんツーリングに行ってね。今度ご子息とツーリングの話でもしたいね」

 そう言われて、まさか息子は行かせませんとは言えなかった父さん。母さんと話をしなくてはならないことに苦悩の色を隠せなかった。リナ姉ちゃん、また国際電話を使ったんだね。やった! そういうわけで、僕はツーリングに行けることになったんだ。

「とても早く出るんだけれど、大丈夫?」
コトリさんはさらさらのおかっぱ頭をほんの少し傾けて訊いた。大人の女性に失礼だと思うんだけれど、こういうちょっとした仕草がとてもかわいい人だ。話し方や表情のつけ方はむしろぶっきらぼうと言った方がいいような、さっぱりしたものなんだけれど、それでも時々見せるこのかわいさが、僕を安心させる。つまり、その、嫌われていて冷たくされているのとは違うんだなって思えて。

「大丈夫です。僕、遠足の日はいつも明け方に目が覚めちゃうんです。嬉しくて」
そう僕がいうと、ヤキダマさんがカラカラと笑った。ヤキダマさんは明るい大学院生だ。大学院に行くんだからもちろん頭がいいに決まっているけれど、すましたところがまったくない。僕は大学院に行く人って、もっと取っ付きにくい人だと思っていた。だから、ヤキダマさんを知ってから、将来、研究者になるのも悪くないかなあって思うようになったんだ。

「どこに行くの?」
リナ姉ちゃんが訊く。訊いて日本の地名がわかるとは思えないのに。

「日帰りにはちょっと遠いんだけれど、湯河原の方まで。まだ朝晩はとても冷え込むはずだから、暖かく着込んでおいてね」
コトリさんが言うと、ヤキダマさんが続けた。
「湘南の方を走ってから、湯河原の親戚のところで甘夏みかんを狩らせてもらうんだ。そして、食事をして帰ってくる。いいだろう?」

 リナ姉ちゃんは、湘南も湯河原も全くわかっていなかったが、みかんというところだけには反応した。結局食べられればなんでもいいらしい。僕もワクワクしてきた。

* * *


 当日、僕はだるまのように着込んで二人を待っていた。リナ姉ちゃんは鼻で笑った。
「暖かくしろって言われただろう」
「そんなみっともない恰好したくないわ。それに、そんなに寒くないもの」

 リナ姉ちゃんは黒革のパンツに黒いブーツ、それに首のところをきっちりと閉められる革ジャンを着て、赤いスカーフをしている。髪の毛は後ろで束ねているけれど、それ以外は防寒って感じじゃなかった。
「革は風を通さないからけっこう暖かいのよ」
 
 僕は、二枚もセーターを着込んで、ダウンのジャケットまで着ているので、ちょっと恥ずかしかったけれど、こうしないと母さんが行くのを許してくれないからしかたなかった。

 実際に、バイクの上での風は、外で普通に立っているときよりもずっと冷たくて寒かった。コトリさんと母さんの言ったことは正しかったのだ。僕はヤキダマさんのスクーターHONDA PCX150の後ろに乗せてもらった。ヤキダマさんの背中が風よけになって首をすくめると明らかに寒さが和らぐ。小柄なコトリさんの後ろに座っているリナ姉ちゃん、あんなかっこうで本当に大丈夫なんだろうか。大体、風景が氣になるらしく、ちょくちょく顔を左右に乗り出しているし。

 道のことは、よくわからないからどこを通ったのかははっきりしないけれど、高速道路から降りて普通の道を行った頃になって、だんだんと暖かくなってきた。もちろん走行速度も落ちているから受ける風も違うんだろうけれど、真っ青な空に燦々と降り注ぐ太陽がぽかぽかにしてくれる。休憩の度に僕は一枚ずつセーターを脱いでリュックサックに仕舞った。

 細い道をガタガタと進んで行く。右も左も野菜畑だ。風に葉っぱがそよぐたびに青臭い何とも言えない香りがする。土の香りも。ああ、いいきもち! 僕は、バイクやスクーターに乗る人のことを誤解していたかもしれない。速く走るかっこよさを追求しているんだと、何となく思っていたんだ。だけど、そうじゃない。きっとバイクが好きな人たちは、この肌に触れる爽やかさが好きなんだ。要塞みたいに守られた車の中では決して感じられない、空や大地と一体になった走り。風になるって表現が、よくわかる氣がした。

「すごい! これ全部野菜なんだ」
リナ姉ちゃんも騒いでいる。僕はリナ姉ちゃんが畑から野菜を失敬したりしないか、ハラハラしてみてしまった。ふと見ると、ヤキダマさんとコトリさんが海の方を見ながら、まっすぐに立っていた。背の高いヤキダマさんがほんの少し頭を傾げるようにして小さい声で話すコトリさんの言葉に耳を傾けている。あそこに見えているのは房総半島だというような、ごく普通の会話なんだけれど、しかも、二人はベタベタしていなくてとても爽やかな感じなんだけれど、でも、とても仲がいいんだなあって思う。この春の湘南みたいに爽やかだけれど暖かい、そんな二人なんだ。

「で、みかんはどこ?」
ちょっと、リナ姉ちゃん! ふたりがせっかくいい感じなのに、なんでそういう雰囲氣ぶちこわしなことをいうんだよ。でも、二人は怒った様子もなく、笑って戻ってきた。
「湯河原まで、また走らなきゃね」

 それから、僕たちはずっと海沿いを走った。春の海って、どうしてこんなに青くて綺麗なんだろう。ついこの間まで、肌寒くてつらい冬だったなんて、誰も信じないような色だ。道にならぶ家の庭に植えられた梅や桃や早咲きの桜、レンギョウなどが咲いていて、とても綺麗。僕は右の花を見ていいんだか、それとも左の海を見ていいんだか決められなくてキョロキョロしてしまう。やがて、「西湘バイパス」って書かれた、高速道路みたいなところに入った。コトリさんはぐんぐんとアクセルを吹かしてスピードを上げていく。Moto Guzziの254っていうバイクは、真っ赤でかっこいいけれどかわいらしいコトリさんにぴったりだ。リナ姉ちゃんが嬉しそうに周りを見回している。後ろからぴったりとつけていくヤキダマさん。僕も大きくなったら二輪車を運転できるようになりたいな。

 また普通道に入ってから、あちこちにみかんのなった木が見えるようになった。甘夏みかんがもう採れるだけあって、この辺りは本当に温暖なんだろう。ヤキダマさんの親戚の農場は、ちょっとした小高い丘の上にあった。エンジン音を聞きつけて優しそうな背の低いおばさんが出てきてくれた。
「よくきたね」

 甘夏みかんが採れるのは、三月上旬から六月頃までだそうで、普通は4、5キロ入る袋を販売して後はご勝手にと採ってもらうんだそうだけれど、おばさんは僕たちに袋をくれて料金は受け取ってくれなかった。それどころか、朝ご飯を食べていないんだろうと、農園の真ん中の木のテーブルにおにぎりとお茶を持ってきてくれた。

「わあ。昆布おにぎり。おいしいわねぇ」
リナ姉ちゃんが、甘夏狩りもそこそこにおばさんと食べだした。おばさんは英語が全く話せないので、コトリさんが察してすっとそばに座ってくれた。僕とヤキダマさんは黙々と甘夏をもぐ。僕たちが両手に重い袋を持って戻ると、リナ姉ちゃんはおばさんの出してくれた手作りのこんにゃくの煮物をほおばっていた。

「これ、ご自分でお作りになったんですか」
コトリさんがちょっとびっくりしている。こんにゃくは、スーパーで買うのと違って、少しざらざらさているけれどしっかりとした歯ごたえと、こんにゃくらしい強い味があって、とても美味しい。

「これなに?」
リナ姉ちゃんはこんにゃくをはじめて食べる食品だと思ったらしい。すき焼きに入っていた糸こんにゃくと同じものには確かに思えないし。

「こんにゃくだよ。お芋の一種を加工しているんだ」
「ええええ〜。これがあの?」

 これがあのってどういうことだよ。
「驚異のダイエット食品! これを採ると三ヶ月で二十キロ痩せるんでしょ。こんなに食べて大丈夫かな?」
「は?」

 みんなで少しずつ情報を引き出して理解したところによると、ヨーロッパでは「奇跡の植物 コンニャク」を粉末にしたダイエットパウダーを何万円にもなる値段で売っているようだ。だから、リナ姉ちゃんはコンニャクを体内に入れると激やせするんだと思ったらしい。

「確かにダイエットしたい人がコンニャクを食べることはある。でも、それはコンニャクに痩身効果があるんじゃなくって、単にカロリーがないのにお腹にたまるからだよ」
ヤキダマさんが上手に説明してくれたので安心したのか、リナ姉ちゃんは再び煮物に手を出した。だけど、この後に別のところで食事をするはずなんだよな。入らなくなっても知らないから。素朴なおにぎり、狩ったばかりの甘夏の香り、そして柔らかい番茶の味わい。甘夏農園の春っていいなあ。

 スクーターの座席の下にも、コトリさんのサイドボックスの中にも、ぎっしりと甘夏みかんの袋が詰め込まれた。僕たちはおばさんにお礼を言って、またしばらく海沿いを走った。そして、辿りついた先は温泉旅館だった! ここの旅館は宿泊客だけでなく、日帰り客用に入浴とお昼ご飯のセットを用意しているんだって。だから、僕たちはまず温泉に向かった。僕とヤキダマさんが男湯の露天風呂でまったりとくつろいでいると、竹垣越しにリナ姉ちゃんがキャーキャーいう声が聞こえてきた。コトリさんは小さくて聴き取れない声で、何かを説明している。でも、リナ姉ちゃんのリアクションが大きいので、何を話しているのか、みんなわかってしまう。

「へえ〜。すご〜い。外で入るんだ! わっ、熱っ。え。うん、大丈夫。岩がある。この竹のカンカンいうのはなあに?」

「君も大変だね」
ヤキダマさんがぼそっと言った。
「はあ」

 僕は肩までざぶんとお湯につかると、今日のツーリングのことを考えた。リナ姉ちゃんはひっちゃかめっちゃかだけれど、ああやって嵐みたいにみんなを巻き込んでくれるから、僕もこんなに楽しいツーリングに参加できた。ため息をつきつつ、ヤキダマさんもコトリさんも、それからヤキダマさんの親戚のおばさんもみんなリナ姉ちゃんのことを楽しんで、かき回してくれることを喜んでいる。僕は、年甲斐もなく「縁」のことなんかを考えていて、もう少しで熱い温泉で茹だってしまうところだった。

(初出:2013年5月 書き下ろし) 
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Category : 小説・リナ姉ちゃんのいた頃
Tag : 小説 読み切り小説 リクエスト コラボ キリ番リクエスト

Posted by 八少女 夕

樋水龍神縁起の世界 - 7 -

三つの記念リク、書き終わりました! 日曜日から、順次発表する予定です。そういうわけで、私も通常空間に復帰しました。

さて今日は、写真を使って、連載小説「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」に興味を持っていただこうとするコーナーです。


玉造温泉にて

「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」に当たり前のようにポンポンと出てくるフレーズ、「生まれ変わり」「オーラ」「龍」などなどに抵抗のある方って多いんじゃないでしょうか。ラノベで「魔法」が出てきてもすんなりと受け入れる方でも「なぜこの話で、この単語?」と戸惑われるんじゃないかと。

基本的に、私の書く小説でこの手の話がでてくるのは、「樋水龍神縁起」関係だけです。私自身はこの小説でいうところの「見えぬ者」です。つまり霊感ゼロ。前世の記憶なんてものも全く持ち合わせていないし、つぎに何かに生まれ変わろうと野望に燃えているわけでもありません。

でも、「フィクションだから、ありえない」と完全否定しているわけでもありません。「見えている」とおっしゃる方々の意見が一致しているなら「存在しているかもね」と思うのです。

そもそも、私は小説の世界をフィクションとノンフィクションにわけて考えたことはありません。反対に言うと、現実に起らないことを単なるエンターテーメントとして書くために長編を書くことはありません。それは私が小説で伝えたい事ではないので。(短編や掌編ならありですが)

話がどんどんずれていますが、要するに、瑠水や摩利子が見ているように世界を見ている人たちも存在するんじゃないかなと思っているのです。

言葉で表現する時にそれはさまざまな形をとります。例えば東京からやって来た摩利子は「オーラ」という表現をつかう「何か」を平安時代の記憶を持ち続けている(という設定の)次郎は「氣」と表現します。見方によっていろいろな形をとるという意味では、ある人には「樋水川」である存在が別な人には「龍王」であることもありえるのではないでしょうか。そう、日本の現実の河川である斐伊川が神話の世界では「八岐大蛇」という形をとったことがあるように。



「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」を読む この記事を読んで「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」が読みたくなった方はこちらへどうぞ

官能的表現が一部含まれるため、成人の方に限られますが……「樋水龍神縁起」四部作(本編)は別館にPDFでご用意しています。
縦書きPDF置き場「scribo ergo sum anex」へ行く 縦書きPDFで読む(scribo ergo sum: anex)
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Posted by 八少女 夕

「アイスの味は何を選びがち?」

ここ数日、ブログ訪問はしていますがコメントが滞っております。あちこちでしたいなと思っているのですが、実は記念小説を三本同時進行で書いていまして、ちょっとテンパっています。「テンパるぐらいなら一つひとつ書け」という声が聞こえてきそうですが、三つ同時進行で妄想が進んでいまして、即書き留めないと、逃げてしまうのです。ひと息つきましたらコメントに伺いますのでお許しくださいませ。

今日は、トラックバックテーマですね。「アイスの味は何を選びがち?」ですが、三つほど「選びがち」なパターンがあります。

まずは、単純にアイスとして食べたいとき。日本では、ストロベリー系。ただし人工的香料のついたピンクのものではなくて、つぶつぶが入っていそうな感じのものに限ります。そうでなければチョコ。これは当たり外れが少ないです。

いわゆるパフェ的に食べたい時には、バニラにチョコがかかっているもの。スイスでは「クーペ・デネマーク」(デンマーク風クーペ)と言います。

そして、食後にデザートを食べたいけれどもう胃に余裕のない時のチョイスは、レモン・シャーベットですね。

共通しているのは、当たり外れが少ないものを選ぶことです。

あ、余談ですが、バニラアイスの話。スイスではサルモネラ菌への心配からアイスクリームに卵黄をくわえることが禁止されています。だから日本のような美味しいバニラアイスは食べられないのです。

こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当ほうじょうです。今日のテーマは「アイスの味は何を選びがち?」です。突然真冬に近い寒さに戻ったり、いきなり暑くなったり、不安定な気候が続きますね突然暑くなった日にアイスクリームを売ってるお店の前を通りかかるとあー今食べたいな~と思って、ついフラフラと寄ってしまいます。氷菓でもアイスでも、ほうじょうはラムネ味のものを好んで選んでしまいますね。ラムネ風のシ...
FC2 トラックバックテーマ:「アイスの味は何を選びがち?」


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Posted by 八少女 夕

ひとり静

スイスに住んでいるというと「いいなあ」と言われます。ところが、その光景が実は日本の田舎の風景とあまり変わらないと指摘しても、東京に住んでいる友人で「田舎に移住したい」と口にする人はいません。テレビのチャンネルが少ない、面白い展覧会や映画やお店が少ない、終電が早い、など都会に住んでいる人にはどうしても手放せないものが多いようです。とくにエンターテーメントの面で。

五月一日、釣りの解禁


私は、東京からド田舎に移住することに全く抵抗がありませんでした。言葉が日本語でなくなり、ふらっと入れる日本の書店が一軒もなくなり、村に一軒の店も存在しなくなっても、何の抵抗もありませんでした。それは、私の適応力が並外れているせいではなく、私が脳内自己完結型の人間だからなのではないかと思います。

私はテレビや映画やラジオを必要としません。日本語の新刊が全く読めなくても、なんでもありません。それどころか日本語ないし他の言語で話せる友人も本質的にはいらないのです。「彼がいればそれでいいの」ですらありません。いなくても生きていけます、間違いなく。

スイスである必要もありません。まあ、今いる所は安全で快適で生活も楽なので、どこか他に行きたいかと訊かれると困るのですが、それでも取り上げられてしまうことを怖れているわけではありません。

電力供給のない、ネットに接続も出来ないところに行くとなると、このブログで何かを発信することや、皆さんと交流すること、それどころか考えたストーリーを電子データにしたり印刷したりすることも出来なくなるわけですが、そうなってもたぶんそれを受け入れてしまうような氣がしています。

究極的に私が必要なのは、自分の思考だけ。ひとり静かに話の続きを生み出しているかぎり、勝手に幸せでいられるんだろうなと、そんなことを思っているのです。
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