scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち 2 (5)ミュンヘン、弔いの鐘 -1-

しばらく記念掌編や企画ものを続けて発表していたので、「大道芸人たち 第二部」ずいぶん空いてしまっています。チャプター1はまだ終わっていません。「教授は第二部もでてくるんですか」という質問にうやむやな回答を続けていましたが、ここでようやくはっきりしましたね。

今回も、長いので、3つに分けています。


「大道芸人たち 第二部」をはじめから読むこのブログではじめからまとめて読む
あらすじと登場人物




大道芸人たち Artistas callejeros 第二部
(5)ミュンヘン、弔いの鐘 -1-


 サンチェスの持ってきた電報をじっと見ていたヴィルに、蝶子が心配そうに声をかけた。
「どうしたの?」

 ヴィルは黙って、電報を蝶子に渡した。差出人はエッシェンドルフ教授の秘書のマイヤーホフだった。蝶子の電報を持つ手が震えた。
「チチウエ シス シキュウ レンラクサレタシ」

 ヴィルはカルロスに電話の使用許可を求めた。そして、マイヤーホフにではなく、ミュンヘンのシュタウディンガー博士という医者の診療所に電話をかけた。またしても父親の策略ではないかと思ったからだ。

「アーデルベルト・フォン・エッシェンドルフです。シュタウディンガー先生とお話ができませんか」

 博士は不在だったが、診療所の指示で博士の携帯電話にかけ直した。
「アーデルベルト君か。よく電話してくれた。いま、私はちょうど君のお父さんの館にいるんだ。そうだ。本当にお父さんは亡くなった。心臓発作だ。マイヤーホフ君がどうしても君と連絡を取りたがっている。ここにいるから話してくれないか」
「替わってください」

 ヴィルはしばらくマイヤーホフと話していたが、電話を切ってから蝶子に言った。
「ミュンヘンに行かなくてはならない」

「わかったわ」
「向こうに着いたら、すぐ連絡する。あんたはここにいるんだ」

「連絡がこなかったらまた迎えに行くから」
ヴィルは蝶子の頬に手をやって頷いた。

「で、行っちゃったのかよ?」
マリサとのデートから帰ってきた稔は驚いて言った。

「そうなんです。ミュンヘン行きの飛行機をサンチェスさんがすぐ手配してくれたんで」
レネがイネスの作ったチュロスを食べながら言った。

「大丈夫なのか? またしてもカイザー髭がなんか企んでいるんじゃないのか?」
稔はとことんエッシェンドルフ教授を信用していない。蝶子はそれももっともだと思った。

「信頼できるお医者さんが、本当に亡くなったっておっしゃったみたいなの。でも、連絡がこなかったら、迎えにいかなくちゃいけないでしょうね」
「おいおい。二ヶ月に三回もバイエルンとバルセロナ往復かよ」
「ごめんなさいね。私たちのことで振り回して」

「いいけどさ。だけど、テデスコは複雑な心境だろうな。いくら逃げ出したとは言え父親だからな」
「パピヨンも、大丈夫ですか?」
レネが蝶子を心配した。
「ショックなのは確かだけれど、でも、ヴィルの方が心配だわ」

* * *


「まあ、アーデルベルト様」
家政婦のマリアンが半ば泣いているように迎えでた。

「マイヤーホフはここにいるのか」
「はい。先ほどから応接室で顧問弁護士のロッティガー先生と一緒にお待ちです」
「そうか」

 ヴィルは応接室に向かった。
「お待たせしました」

「ああ、アーデルベルト様、お待ちしていました」
マイヤーホフは心底ほっとしたようだった。
「二度と戻ってくるつもりはなかったんだが」

 ロッティガー弁護士とマイヤーホフのお悔やみの言葉を、ヴィルは軽くいなして、先を続けさせた。
「先日、フロイライン・四条あてに招待状を送ったときの指示メモが残っていたのが幸いでした。アーデルベルト様がみつからなかったら、葬儀も今後の使用人の身の振り方もお手上げなんですよ。他に取り仕切る権限のある方がまったくいませんからね」

「あんたがすればいいじゃないか」
「私は単なる使用人です。法的にも全く何の権限もないんです。たとえば、もう銀行預金が凍結されているので葬儀の準備も私どもでは手配できません。かといって先生ほどの方の葬儀をしないわけにもいきません。また、月末までこういう状態だと、全使用人が給料をもらえませんしね」

 マイヤーホフの言葉に頷いてロッティガー弁護士は続けた。
「アーデルベルト君。君は、お父様の死で自動的にこのエッシェンドルフの領主になったんですよ。わかりますか」
「俺は、親父が遺言状をとっくに書き換えたと思っていましたよ」

 弁護士は首を振った。
「エッシェンドルフ教授があなたが十四歳の時に作成した遺言状は一度も変更されていません。つまり、あなたを跡継ぎとしたその遺言が有効なのです。もちろん、あなたには相続を辞退する権利もありますが、少なくとも葬儀並びにすべての手続きが終わり、彼ら使用人の身の振り方が決まるまでは、煩雑な義務の山からは逃れられないんですよ、残念ながら」

「もちろん、このまま我々が新しい職場を探さずに済むなら、それに超したことはないのですが……」
マイヤーホフが小さく付け加えた。ヴィルはため息をついた。
「わかりました。とにかくすべきことをしましょう」

「なぜこんな急に親父は死んだんだ? 心臓が悪かったのか」
弁護士が帰ると、ヴィルはマイヤーホフに訊いた。

「いいえ。時々不整脈がある程度でしたが、もともと大きな発作があったわけではないのです。それが……」

 マイヤーホフは言いにくそうにしていたが、意を決したように顔を上げた。
「申し上げておいた方がいいでしょうね。どうぞこちらへ」
そういって教授の書斎にヴィルを案内した。そして、デスクの上にあった一枚の書類を見せていった。

「実は、遺言状のことをもう一度きちんと検討したいとおっしゃって、私にいくつかの書類を用意するようにお申し付けになったのです。それで、言われたように準備してお渡ししたところ、これをご覧になって非常にショックを受けられ、それで発作を……」

 それはヴィルの、つまりアーデルベルトの家族証明書だった。結婚したばかりの妻、蝶子の名前が記載されていた。ヴィルは黙ってそれを見ていた。つまり、これが原因で命を落としてしまったというわけか。

「じゃあ、親父は遺言状を変えるつもりだったんだな」
「検討したいとおっしゃっただけです。どうなさるおつもりだったかはロッティガー先生も私も伺っていません」

「だが、あんたたちは、俺が相続するのは腹立たしいだろう。そんな事情では」
「どういたしまして。代わりに私を相続人に指定すると言われていたなら悔しいでしょうが、そんなことはあり得ませんからね。私としては、見知らぬ方に放り出されるよりは、これまでのことを知っているあなたに公正な処遇をしていただくのを期待したいわけでして」

「とにかく、葬儀を進めよう。相続については、いますぐは決められない。もちろん、あんたたちの給料が出ないままなんかにはしておかないから安心してくれ」
「それを聞いて安心しました」
関連記事 (Category: 小説・大道芸人たち 2)
  0 trackback
Category : 小説・大道芸人たち 2
Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
更新、お疲れ様でした。

読み終えて、しばらくぽか~んと絶句。
は?
なに?
なんで?
え~~~!
いや、この展開は、完全に意表を突かれました。読ませていただいた私の方が、発作を起こしそうです。

これ、このあとどなっちゃうんでしょう。むしろ、あれこれ嫌がらせでも仕掛けてくる方がカイザー髭教授らしいし、わかりやすい展開だったんだろうと思いますが。
それにしても、ヴィルは青天の霹靂というか、たいへんなことになりましたね。普通の家でも、ああいうことになるとけっこうたいへんなんですよね。まあ、ショックを受けている暇もないでしょうね。
蝶子は、気にするだろうなぁ……なんとなく、そんな気がする。
う~ん、先が見えない。なんか不穏だし、不安ですね。

とりあえず、次話をお待ちします。
あ~、びっくりした!!
2016.09.14 10:29 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

くすくす。浮かれた結婚なんて、吹き飛ぶでしょう?

普通にノンキに旅しているだけなら、第二部を書く意味もないんですが、こういういろいろが入ってきて4人を取り巻く環境は変わっていきます。
あ、でも、TOM-Fさん、発作は起こさないで〜。
このあとも「お前が何で出てくる!」な人とか、「そ、そういう展開?」になっていきますので、お楽しみに。
でも、まだ書き終えていないんですよ。
だからチャプター1だけで一度止めます。

コメント、ありがとうございました。

2016.09.14 21:46 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
おおおおおおお……、こ、これはまったく、本当にまったく
予想してなかった展開です!
夕さんがこれまで教授の行方を明言されていなかった理由がわかった
気がしました! いやはや、予想の斜め上を行く展開にびっくりです。わたしも
発作起こしそうです!
てっきり教授VSヴィル様対決が始まるとばかり思ってたんですが、
これじゃ出端を挫かれるじゃないけど、ある意味バトルをするより
大変?
ヴィル様もだけど蝶子さんがどんな反応をするのかがすごく気になります。
そして動画の意味深なセリフに繋がってくるのでしょうか?
今後どうなるのかちょっと予想がつきません。
正座してお待ちしております!
2016.09.15 06:42 | URL | #- [edit]
says...
なんとなんと。これは大変だあ。
これから慌ただしくなりそうですねえ。
外からのあれこれが入ってきて、大変そう……

ヴィルも蝶子もみんなも、色々なことに巻き込まれていくんだろうなあ。
これは壮大な物語の、ほんの、プロローグ……?
読むほうも覚悟だな。
2016.09.15 08:27 | URL | #- [edit]
says...
暫くは、あ!また親父さんの陰謀が始まったのかな?と疑ってかかっていました。
ところがなんと本当に亡くなった?そう行きますか。驚きました!
でもいざこうなってしまうとヴィルの立場が微妙ですね。好む好まざるにかかわらず、強大なエッシェンドルフ家がヴィルの双肩にのしかかってきそうです。
いえ、もうすでにその片鱗が・・・。
日本でも亡くなったら即口座は凍結されて、肉親しか触れなくなりますからね。それも結構面倒くさい手続きが必要だし。
お葬式とか盛大に行われると思うんだけど大丈夫かな。蝶子だって正式に結婚しちゃってるから、かえって放っておくわけにはいかなくなりましたしね。
ウムム・・・こう考えると一番厄介な展開かも・・・。
これは本当に読めなくなりました。

あ!稔はマリサとデートに出かけてたんだ!!!
なんて呑気に言ってられなくなってきました。
2016.09.15 12:07 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

あうあう、canariaさんまで発作だなんて!
バレバレかと思っていたのに(笑)

親子で普通に対決されても、パパに勝ち目ないじゃないですか。
ヴィルにとっては、こっちの方がキツい勝負になるような。
あ、対決させたかったわけじゃないんですけれど。

動画の意味深セリフは、ご想像の通り、この件を含めてのものです。
でも、実は、あのセリフはチャプター1じゃないんで、しばらくお預けなんです。すみません。

チャプター1の終わりの方で、今後の予想がつきそうな話がぼちぼち登場します。
大いにヤキモキしていただけると、作者としては書き甲斐があります。
(どんないじわる作者なんだ……)

コメントありがとうございました。
2016.09.15 20:36 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

そうなんですよ。
楽しく飲んで、無責任に旅して回るのが楽しかった第一部なんですが、そんなことだけをしているのなら更に長く書き綴ることもないかなと思いまして、第二部はこういう話になっていきます。

そしてけいさん、鋭い。
巻き込まれていくのはヴィルと蝶子だけじゃないんです。

このストーリー、もともと登場人物多いんですけれど、第一部でチョイ役だった人たちがどんどん中心的になって絡まってきます。
あ、でも、大して重い話じゃありませんので、お氣楽に(笑)
(っていうか、さっさと残りを書け……orz)

コメントありがとうございました。
2016.09.15 20:59 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

くすくす。
稔も同じことを疑っていたみたいです。無理もありませんね。
でも、本当に急逝してしまいました。

スイスでも口座は即凍結されます。肉親でも相続が済むまでは自分のためには使えません。でも、葬儀のための支払いは別なのですね。ドイツでも同じのはずです。しかし、相続人が生きているのに秘書が何かをするのは許されないので、マイヤーホフは途方にくれたはずです。

ヴィルが巻き込まれれば、蝶子も一緒くたです。

そして、稔は楽しくデートしていましたが、帰って来たらそんなことになっていました。

稔とレネも他人事じゃなくなってきます。
次回も読んでくださると嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2016.09.15 21:06 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
ああ~、遅くなっちゃいました><
第2部。
また新たな旅が……と思っていたら、とんでもなかったですね。
逃げ出した場所に、別の意味合いでヴィルたちは縛りつけられちゃいそう。
大きなお屋敷ですし、これから大変そう~~><
今回ばかりは、逃げ出すこともできないでしょうし。
どんな展開になって来るのかな・・・。やっぱり資産が絡んで来るのか。
それとも・・・。
また、楽しみに待っています^^
2016.09.16 23:48 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
う~~む。
人が亡くなると悲しいという感情もありますけど。
手続き上、色々と大変ですものね。
私はまだ両親は健在なので大丈夫ですけど、いずれは私より早く亡くなる、、、。。。
そうしたときの手続きとか税とか色々大変なんだろうな~~。
・・・とちょっと、同情してしまいましたね。

2016.09.17 00:00 | URL | #- [edit]
says...
夕さんがぼかしておられたので、何があるのかな、普通にお父ちゃんが邪魔しに来るってわけではなさそうだぞ、と思っていたら、そっち方向でしたか。ヴィルにしてみたら、親父に逆らう方がずっと簡単でしたよね。雇い主を失う(かもしれない)被雇用者の境遇を考えたら、放っておいて大道芸人やってる場合じゃなくなるかもしれないし、これはえらいこっちゃ。ずっとずっと足枷としては重いような気がします。
あ、でも実際にはえ~っと、そもそもエッシェンドルフ家の生業って何だっけ。大道芸人していて家督を継ぐってのもあり? どこかに子供が他に転がってたりしないのかな。

と、そんなところに感心するよりも、引っかかったというのか、笑っちゃいけないけれど「そうきたか~」と一番感心したのは、親父さんの心臓発作の誘因が、ヴィルの結婚! あ~、そういう形で知っちゃったか~、しかもそれが誘因だとすると、おやおや、結構かわいいおっちゃんだったのか? なんて、妙に感心したりしちゃって。蝶子の結婚にショックだったのか、ヴィルの結婚にショックだったのかもちょっと気になるけど^^; そんな形でとどめを刺しちゃったヴィルと蝶子も気分が悪いかも。でもまだそれだけではない展開もあるのかな。
でも決して、結構いい人だった、だけはないように願いたい、勝手な読者だったりして。ヒールは最後までヒールで、悪人らしくしていて欲しいと思うわがままな読者なのでした。
2016.09.17 03:43 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

第二部の始まりが、やたらと長い浮ついたケッコン祭で「これはただの前提条件なんだけど」と思っておりました。
そう、こういう流れなのです。
というか、前と同じことをやっているだけなら、わざわざ第二部にする必要はなく、たま〜に外伝でも楽しく書いていればいいだけなんですが、こういう話になるのでした。

普通の人生もそうですけれど、昨日まで反発していたのに「帰っておいで」と言われただけで急に仲直りして戻るというようなことはまずないですよね。でも、こういう事情だと「帰りたくありません」とか言っている場合ではなく。人生は、こういう不可抗力で道が変わったり扉が開いたりすることが多いんじゃないかなと思っています。

最初は、けっこう簡単に話は進みますが、あとからじわっと来る予定です。
まずは、その簡単に進んじゃうところまでの発表ですが、続けて読んでいただけると幸いです。

コメントありがとうございました。
2016.09.17 19:52 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

私は父親を急逝という形で失っていますし、義父もそうでした。
悲しいというのはありますけれど、やはりお葬式までは「それどころではない」という手続きの山になりますね。
これは日本でもスイスでも変わりありません。

相続などは、少しは猶予がありますが、お葬式は本当に待ったなしですし、とにかくやることが多いんですよね。

かつてはお祝い事の方が多かった身ですけれど、ある程度の年になってからはお葬式が妙に増えてきました。
こうやって、自分の番が来るための準備もしておくべきだろうと思うようになりました。
社会って、いろいろと上手く出来ているんだなと思います。

コメントありがとうございました。
2016.09.17 19:56 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

隠すほどの内容でもなかったんですが、とはいえ、言うとつまらないじゃないですか(笑)
生きていたらヴィルと蝶子の邪魔するつもり満々だったでしょうが、それを見越したヴィルの方の動きの方が早かったんですね。
これはハインリヒには本当に考えてもいなかったゆえの衝撃でした。

ハインリヒの心情は、以前書いた「教授サイド外伝」で開示したように、息子のことも蝶子のこともどっちも愛していて、いずれはどちらも自分のものにすると確信していたんですよね。あのパーティでヴィルと蝶子たちが演技をしていたなんて夢にも思っていなかったはずです。

生きている父親と蝶子をめぐって対立するのは、ヴィルにとっては楽勝です。でも、相手がこういう形で亡くなってしまうとヴィルの相手は生身の父親では亡くなってしまうんですよ。そこがポイントです。

跡継ぎにしても、父親の支配に屈して戻るなんてことは、彼のプライドと生き方が断乎拒否しますが、そういう問題ではないから、話が変わっていきます。そこが第一部と第二部をわけた理由でもあります。人によっては「こういう話が読みたいわけではない」って方もいるんじゃないかなあ。「あの自由な感じが好き」という方には、ちょっとつらい流れになっていくのかもしれないと思っています。

あ、エッシェンドルフ家はカルちゃん家と同じで、本業は「領主」です。今風に言うと「大家」です。ちょっとスケールでかいけど。それに付随していろいろと手広くやっている事業があります。

他に子供はいません。っていうか、ただ血がつながっていれば勤まるというものでもなく、ヴィルは相続人に指定されてからずっと立ち居振る舞いなどについても厳しく教育されていますし、怪我して幽閉されていた時にも領地の支配経営についての事務にも同席を求められていて、父親は譲るつもりで詳しく教え込んでいます。ヴィルは逃げだすチャンスを待っていて父親に怪しまれないためにちゃんとやっていましたが、それがこうなってから役に立つことになってしまったというわけです。

話はハインリヒは、別にいい人でも悪い人でもない、というのが私の立場かな。
この世には本当の意味での善人も、絶対的な悪人もいないというのは、前からよく彩洋さんともお話ししていることですけれど、なんていうんだろう、ストーリーの役回りとしての「悪役」ではあっても、別に悪い人じゃないんですよ。自分が100%正しいと譲ることのできないタイプの人間で、息子も愛する女も、いずれ自分の愛と思いやりがわかると信じ込んでいたところが、ちょっと悲喜劇なタイプです。

問題は、彼が実際に「いい人だったか、それとも悪い人だったか」ではないんですよね。実際のインプットがなくなった途端に、人間の印象というのは記憶だけに支配されるようになります。そして、たいていは悪い記憶の方が先になくなってしまうものなんですよね。

ハインリヒは決して多くの人に愛されていたわけではありませんが、記憶の中での彼は、おそらく、よく思われるようになることはあっても、もっと嫌われるということはなくなります。でも、この話の不安要素は「ハインリヒ vs ヴィル」ではないです。ハインリヒの死はわずかに絡みますが、そういう話じゃないんです。もっとも、「安心してください」っていうような楽しい話でもないけれど。ま、いろいろです。(意味不明)

このまま興味をもって読んでくださると嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2016.09.17 20:29 | URL | #9yMhI49k [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://yaotomeyu.blog.fc2.com/tb.php/1322-fb64ab0d