scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

多民族のひしめく所

現在連載中の「郷愁の丘」。いただくコメントを読んでいて「あれ、やはりアフリカは日本から遠い?」と思う事がしばしばあります。中でも現地の人たちに関する記述で、「あ、これは全く馴染みのない事なのか」と氣づかされる事が多いです。

市場の女たち

「郷愁の丘」の舞台はケニアですが、実を言うと私のケニア、タンザニア、ジンバブエ、南アフリカ共和国で経験した事とその現地に住んでいる人たちと話していて感じた事を混ぜて記述しています。だから正確にはケニアだけの話じゃないのです。

だだ、ケニアと南アフリカが同じであるわけはありません。地理も歴史も文化背景も違います。

私が「郷愁の丘」で書こうとしているのは、アフリカの現状に関する問題提起ではないですし、歴史や文化の紹介でもないのです。その一方で、あの地を舞台にしたのならば、避けて通れない記述もあります。日本で「ケニア十日間の旅」などと聞いたときにイメージするのは、おそらくライオンやゾウなどの野生動物だと思うのですが、それだけではないのですよね。

ケニアは多民族国家です。「白人」と「黒人」という分け方は乱暴すぎます。が、どこまで分ければ適当であるかと考えると悩ましいところです。

いわゆる黒人で一番人数が多いのはキクユ族。テレビでおなじみでよく知られているのはマサイ族ですが、彼らは少数派で、その他に何十もの部族があります。言葉も生活様式も文化宗教もさまざまです。

白人といっても、植民地時代からいるケニア生まれケニア育ちの白人の他に、ここ何十年の間に移住した人たちやその子供たちもいますし、仕事で来たばっかりの人たちもいるのです。それぞれが、それぞれのコミュニティに属しながら、お互いに影響し合いつつ存在しています。

その他に、外国人では、白人による植民地時代より前に広がっていたムスリムの影響があり、インド人も多く、さらに政治的な関係が深い中国人もいます。

日本にとって遠いんだなと思うのは、「白人による黒人差別」とか「人類皆兄弟」とか、そういうキーワードによる観念が一人歩きしていて現状とマッチしていないと感じる時です。もちろんそれぞれのキーワードは間違いではないのですが、そんなに単純な問題でもないのです。

例えば「白人と黒人のもらっている給料が違う」という事実があって、それを「不平等」と断じるのは簡単です。でも、給料をある一定時間の労働量に対する対価と考えると、平均的な白人一人の労働量は、平均的な黒人数人の労働量に匹敵してしまうという事実があるのです。この辺は、白人よりもさらに(それも自主的に)働いてしまう日本人には目にしない限り理解できない事なのかなと思います。

差別して虐待したりする事は、決してすべきではないのですが、その一方で全く同じに扱う事が実質不可能であるのは、実際に彼らと知り合わない限りなかなか理解できないと思います。

これは本来は肌の色の違いによるものではないのです。それでも部族や民族、社会文化や風俗の違いによる集団の差異は存在するということです。もう少しわかりやすく言うと、同じヨーロッパにいる白人でも「ゲルマン人」と「ラテン人」は個別の人の事はさておき一般的には振舞いや考え方などが違うというのはイメージしていただけるでしょう。同様に「キクユ族」と「マサイ族」も全く違います。もちろん植民地時時代からいるイギリス系ケニア人とキクユ族のケニア人も違うのです。

私の小説は、日本社会を舞台に展開する事もありますが、そうでない事が多いです。登場人物も、日本人も結構いますが、相対的には外国人の方が多いでしょう。彼らを動かす時に、もちろん日本人である私の脳内から出てきたのですから全く自由にはなっていませんが、出来る限り日本人しかしないような言動や考え方を書き込まないようにしています。

出発点がそこにあるので、時おり読者の方には「?」と思われるような前提条件をあえて説明せずに書いている所があります。もしかするとその辺が、わかりにくさになっているのではと、少し不安になっています。というわけで、時おりこうやって、別記事で説明を入れようと思っています。
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Comment

says...
 基本的に働かないそうです。何処とも誰とも言いませんが、貧しい国でボランティア活動をしてきた方が言うには、現地の人は働こうとしないんだそうです。貧しい事は嫌がるし、良い暮らしがしたいのは変わらないそうですが、その為には働かねばならぬという事を理解してくれないそうです。また、何か役立つもの、例えば井戸を作ってあげても、直に壊され機材が盗まれてしまうのだそうです。彼は砂漠に水を撒くがごとしだったと嘆いていました。恐らく私たちとは価値観が違いすぎるのでしょう。それを悪いと断じてしまうのは簡単でしょうが、それが普通である価値観の国で否定するのはまた違うのかもしれません。価値観の押し売りになってしまい、時には反感を生み、争いに発展する。悲しいかな、人の善意の空回り。
2017.05.07 11:10 | URL | #eRuZ.D2c [edit]
says...
こんにちは。

そうなんですよね。
もちろん勤勉な人もいるんですよ。
でも、基本的に「一般的日本人の上司が、一般的日本人の部下に期待すること」は、世界中のどこでも常識ではないのですよね。

たとえば、日本だったら、バイトに初日に何かを教え、二日目にやっていなかったらまた教え、十日間同じ事を繰り返して教えてもまだやらなかったらキレるじゃないですか。それが永久に続くらしいです。つまり部下だけにして一日休むなんてことは不可能なんだそうです。チップや施しを乞うなどの、ほぼ何もしないで実入りが増えるための努力(?)の方は惜しまないらしいのですが。

「人類皆兄弟」「丁寧に話せばわかる」という理想的な概念は、そういう人たち相手だと何の役にも立たない事が多いです。人種差別や虐待などは絶対に肯定したり許したりしてはいけない事ですが、「人類がみな同じではない事」を理解しないでいるのも現実的ではないということなのでしょうね。

コメントありがとうございました。
2017.05.07 13:29 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
先の同僚の方と話す機会があって、その時「日本以外の国の人と付き合っていると、日本人だけが特殊なように感じる」と仰っていたのを思い出しました。
欧州やアフリカ、アジア等地域それぞれの間でも、北欧、中欧、南欧等比較的隣り合った地域の間でもこの違いは存在するのでしょうが、日本とそれ以外の違いは特に大きく感じるのだそうです。

そんな日本人であるサキが行ったこともないアフリカの空気を読む事はとても難しいのですが、未知との遭遇とでも考えながら(宇宙人とまでは行かないんでしょうが)、雰囲気を楽しもうと思っています。
何気ない日常の出来事が、すでに冒険であったりしてとても面白いです。
ガソリンの値切り交渉なんかも見て見たかったです。
そう、「こっちの世界ではこういうものなんだ」という覚悟が必要なんだと思います。

将来的にはグローバル化で日本の特殊さは解消され、このようなギャップは小さくなって行くのでしょうが、はたしてそれは喜ばしい事なのかな?なんて思っています。勝手な解釈のコメントになってしまいました。すみません。

ま、難しい話は置いておいて、ジョルジアとグレッグの恋の行方、どんなふうに展開するのか、楽しみに待っています。
2017.05.08 11:39 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

日本はもう蒸し暑いのですか。いいなあ。こっちは寒いです……。朝は手袋して出勤しています。

そうですね。
自分と他者の違いというのは、やはり関心も高いからよけいそう感じるのかもしれませんね。
日本社会では「そんなの常識でしょ」「考えられない」「普通こうだよね」とある一定の型に行動規範を押し込めようとする事が多くて、しかもそれが機能してしまうのですが、おそらくそれが機能するのは日本だけかもと思う事はあります。

私の小説のキャラが海外に住む日本人の場合は、日本人視線で「ええ、こんなのあり?」を書く事が出来るのですが、今回はイタリア系アメリカ人視点なので、「そんなのありか」の出発点を日本人っぽくはしたくないなと思いました。その分、ちょっとわかりにくいかなあと反省しています。

まあ、でも、根本的にはあまり詳細にはこだわらずに、軽く流してストーリーを追っていただければ(笑)
ジョルジアと、グレッグですか。進まないようで意外と進む。でも、根本的には全然進まない、という感じですかねぇ。
(なんだそりゃ)

グローバル化の話ですが、それでも日本の特殊性はあまりなくならないと思います。少なくとも喜ばしい事よりも問題の方が多くなるくらいの劇的なグローバル化は、まだ当分先のように思えます。つまり例えばスイスで「グローバル化が進みすぎで、自国文化が危機に陥っている」といわれるのは、「もう人口の1/7が異国人」という事実があってのことです。日本はそういう意味では未だに一種の鎖国状態だと思いますよ。鎖国もグローバル化も一長一短ですかねぇ。悩ましい所です。

コメントありがとうございました。
2017.05.08 21:49 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
確かにね。。。
アフリカは他民族国家なのに。
欧米諸国が赤線協定で適当に区分けしちゃって、
滅茶苦茶になってしまった経緯がありますからね。
考えてみれば、大変な地域ですよね。
そこを題材にしようとすると大変ですよね。
(-_-メ)
2017.05.10 12:51 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

まあ、そういう事情もありますね。
もっとも、正しい区分けというものがあるわけでもないのですよ。
それに歴史的に見ると、欧米人がアフリカの事の首を突っ込みだしたのは結構新しく、問題はもっと根深いのかなと思う事もあります。

もっとも私の作品は、そういう問題を掘り下げてはいないので、あくまで表面をサラッとなぞっている程度です。
基本的には二人の人間の人生と感情の話なので。

コメントありがとうございました。
2017.05.10 21:06 | URL | #9yMhI49k [edit]

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