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Posted by 八少女 夕

ピアチェンツァ、食の魅力

って、新作短編じゃありません。今日は、先日の休暇で出会った美味しい話。

イタリアはどこに行ってもそれぞれ自慢料理のあるところです。そして、世界が認める美味しさ。レストランの「あたり度」はスイスの比ではありません。スイスにも美味しいものはありますが、較べる相手が悪い(笑)食にかける情熱の違いは歴然です。

そして、私と連れ合いが今回廻ったピエモンテ州とエミリア=ロマーニャ州は、そのイタリアの中でもグルメの中のグルメがそろっているところです。ワイン、米、パスタ、チーズ、きのこ、狩猟肉などなど。

イタリア料理を語るときに決して外せないパルミジアーノ・レッジャーノチーズは、パルマやレッジョ・エミーリア産、世界三大ハムの一つプロシュット・ディ・パルマもパルマ産でその名前を戴いています。旅をしているときにずっと通っていたブドウ畑では、Colli Piacentini Gutturnio (赤)やColli Piacentini Ortrugo(白)などの素晴らしいワインが作られています。

これらを食べて飲まなくてどうします!

今回の旅ではいくつかのラッキーがあったのですが、そのうちの一つ。ボッビオの近くで見つけたB&B。実際の経営者が旅行中だったために、その息子さんが代わりにもてなして下さったのですが、これが僥倖以外の何物でもなかったのです。

ちなみに、ボッビオは、県都ピアチェンツァの南西にある小さな中世の街で、莫大な蔵書のある図書館があったことで有名で、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』のモデルにもなりました。なんですが、車でないと行けないせいか、日本人観光客にはまだ会ったことがない街です。B&Bはそこからさらに5キロくらい離れた、村というよりは集落というような場所にあります。GPSなしではたどり着けないような場所です。州はエミリア=ロマーニャで、県がピアチェンツア、そしてそれぞれの市町村の名前があるわけですが、これ以上細かく書いてもわからないと思うので、これまで。

さて、B&Bで我々の到着を待っていてくれたサンドロさんは、普段はボッビオでバーを経営している40歳のかっこいい兄ちゃん。(なぜか日本の「タトゥー」に憧れて横浜に何ヶ月か滞在して本物の彫物師に刺青を入れてもらったそうです。遠山の金さんもびっくりのすごい刺青で、見せてもらった時はギョッとしました)

で、あっというまに連れ合いと意氣投合して、自宅から持ち出してきたビールを二人で飲みまくりました。話題は文化のことから、政治までいろいろです。そして、晩ごはんを食べようにも、田舎の山の上で、連れ合いがだらだら飲み出しちゃったから、もうどこにもいけないな、こりゃ晩ごはん抜きかと思っていたら、歩いて十分くらいのところにピッツェリアがあるというのです。それにしてもすごい山だしどうしようかとごちょごちょ相談していたら、サンドロが「なんなら今から車で一緒に行く?」というので大喜びで連れていってもらいました。

で、ピッツァを頼むのかと思ったら、「この店に来たら、ピッツァよりもオススメがある」と教えてくれたのが生パスタです。手作り生パスタというのは製造にものすごく時間がかかるので、ピアチェンツァ界隈ではもう五人ほどしかできる人がいないのだとか。その一人、九十歳のおばあちゃんが作っている生パスタです。

生マッケローニの一皿

これがその生マッケローニとポルチーニ茸の一皿。もうね。アルデンテというのはこういうことなのね、というか今まで食べていたパスタは一体なんなの、という美味しさです。例えて言うなら冷凍の伸びきったうどんしか食べたことがなかった人が、はじめて本場の讃岐うどんを口にした時のような衝撃。しっかりとコシがあるのに、固くはなくて、もちっとしていて美味しい。余分な味付けは何もしていないだけに、素材の美味しさがぐぐっとひきたっていました。

前菜詰め合わせ

その前に、サンドロがパパッとオーダーしてくれたのが、この前菜取り合わせ。二種類のチーズスフレに、プロシュット・ディ・パルマ、コッパ、サラメッティ、プロシュット・クラテッロ。塩けが絶妙で本当に美味しいんです。

白ワインはOrtrugoというやはりピアチェンツアの二種類のワインを合わせて作ったもので、とても飲みやすいクセのないワインです。私が飲んだ白ワインの中で、おそらく上から五位以内に入る美味しさ。この組み合わせを、ボッビオへ向かう緑豊かな谷間を見ながら戸外で食べるのです。小さな村なのにレストランは満杯。近くの人たちが皆通ってきているわけです。

チョコレートムース

食後のデザートは、やはり手作りのチョコレートムース。こうなってくるとカロリーはとんでもないことになっていますが、構うものですか。こんなに美味しい体験は生涯にそうそうありませんし。

私たちだけでは絶対に味わえなかった、最高のディナー。こうした幸運も、見ず知らずの人と楽しくペラペラ喋る連れ合いのおかげでしょう。実は、このサンドロ、イタリア語しか喋らないのです。私も彼の話していることは八割がたはわかりますが、さすがに自分の言いたいことを全て表現するにはイタリア語の能力に限界があります。どうしても伝わらない分、連れ合いが通訳してくれているわけですが、「私はイタリア語わかんない」と拗ねていたらこういうラッキーにはありつけないなと思うのです。

もう何年も前になりますが、一念発起してしばらくイタリア語を独学しておいて本当に良かったと思いました。

ちなみに、サンドロ、なんどこっちが奢ると言っても、俺が招待するといってきかず。結局ご馳走になってしまいました。B&B70ユーロ、払ってもらった晩ごはんのお会計55ユーロ。翌日ワインはもらうは、連れ合いはビールを飲みまくるわ、それ大赤字じゃない……。一応、普通じゃありえない高額のチップは置いてきましたが、少し涼しくなったら高級スイスチョコでも送ろうかなと思っています。
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Comment

says...
 とかなんとか。
 食の最高峰の地イタリアで良い出会いと上手い食事。言葉が出来ると言うのは素晴らしいですな。かくなるうえはわたくしも一念発起してせめて英語くらいは・・・と思ったのが20年前(笑。翌檜は未だもって檜に成っておりませんです。
2017.06.25 05:29 | URL | #eRuZ.D2c [edit]
says...
やっぱり夕さんは旅上手です!羨ましい。
そして連れ合いさんがまた素晴らしい。コミュニケーション能力に万歳です。こっちも羨ましい。
なんといっても地元の人しか知らないような美味しいものが食べられたことに万歳!ですね。
ワインに生パスタ、この前菜だってデザートだって、ジュルル・・・。
もしサキがこっちの地方に行くことがあったらエスを同行者に選ぼうかな。
コミュニケーション能力や女子力は劣りますけど、喋りますからね。
こういう所でも止まれそうですもの。
サンドロさんにも合ってみたいです。
オーナーさんでもサービス良さそうな気がしますけど。
2017.06.25 10:52 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんにちは。

本当におっしゃる通りですよね。
イタリア人もイタリア料理も、どちらも食事を美味しくするための条件が揃っているように思います。
どちらも敷居が低くて、かつ楽しく美味しい。

イタリア語は、ドイツ語やフランス語などと比べると、アレルギーになりがちなものが少ない。
イタリア人はイタリア語を話すとすごく喜んでくれる。
英語が母国語の人たちは「当然」という反応を示すし、ドイツ語を話す人たちは言い方を正したりするし、なんか頑張っても嬉しくないことが多いのですが、イタリア人は、半分身振り手振りも言語のうちに入れてくれるし、イタリア語を話すだけでたちまち対応が変わるのでこちらも頑張りがいがあるのです。

私のイタリア語、本当に挨拶レベルでひどいんですが、それでもコミュニケーションが成立するのは、そういうイタリア語圏の人たちの受け止め方もあるのかなと思います。

フランス語は、あきらめました(笑)

コメントありがとうございました。
2017.06.25 11:14 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんにちは。

旅上手というよりは、無計画なところがラッキーを呼んでいるのでは(笑)
とても美味しい体験でした。

連れ合いは語学学校に通ったりしたことのない人です。
教育は中学校と職業訓練学校までしか行っていません。
でも、フランス語とドイツ語から発展して、英語とイタリア語をコミュニケーションだけでペラペラにしてしまいました。
外国からの移民も、いわゆる教室の勉強ではなくて実地で習いながらいつの間にかペラペラになっています。
本来語学はそういうもので、「私は話せないから」「私は習ったことがないから」とトライしない人はいつまでも話せず
トライする人は文法はとんでもなくても、いつの間にかどんどん会話できてしまうものだと連れ合いに学びました。

エスが同行者なら、もちろん完璧な通訳をしてくれると思いますが、たとえ不完全でもご自分の力だけでコミュニケートする努力をしたほうがいいと思いますよ。興味深いトピックになればなるほど、通訳を待っていると、話に夢中になった人たちに忘れられてしまうのです。で、二十分くらい通訳してくれない時間を手持ち無沙汰に待ち、ようやく「何の話をしていたの」と訊くと最後の五分の分くらいしか通訳してくれなくて話がさっぱりわからない、という流れになるんです。私は結婚して最初の三年間くらいこれで苦しみました。たとえちょっとでもイタリア語を始めて本当に良かったと思います。

サンドロのご両親は本職はお医者さん、お父さんは且つ画家でもあるようです。おそらく別の意味で興味深い方達でしょう。
でも、サンドロのほうが多分食のことは詳しいと思います。とくにお酒についてはさすがプロでした。

それに日本滞在の話や、彫りものに関する話など、妙に盛り上がりました。

コメントありがとうございました。
2017.06.25 14:42 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
おお、生パスタ!!
私もパスタは好きですけど、つくるときは。
いつも既製品ばかりだじぇ。。。

そちらでは直に作るでしょうから、また店ごとで味わいが違って良いでしょうね~~。
ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
2017.06.29 10:17 | URL | #- [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

生パスタを食べられるところは少ないでしょうね。
レストランで「生パスタ」を大きく扱っているところだと、セモリナ粉ではなくて強力粉で作られる方が多いそうです。セモリナ粉だと技術の熟練が必要とされる上に時間がかかりすぎて、採算が合わないんですって。私が食べたところも、本当に一日に提供できる皿数も少ない上、若い人たちは学びたがらないそうです。だから、イタリアにどれだけ行こうとも、ああいう生パスタを食べられるのはもしかしたら生涯で何回、という単位かもしれません。

また同じところに行って食べられたらいいなとは思いますが。

コメントありがとうございました。
2017.06.29 19:24 | URL | #9yMhI49k [edit]

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