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Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち (20)東京、 園城家にて

先日のオリキャラ紹介で出て来た結城拓人が登場です。ま、彼は断片小説で一度登場しているんですけれどね。今回、出てくるピアノ曲は私の尊敬する高校時代の先輩(今はプロのピアニスト)がコンサートで好んで弾く曲で、もちろんBGMにして書きました。

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大道芸人たち Artistas callejeros
(20)東京、 園城家にて


 拓人は、真耶の家の居間で、リストの「コンサート用エチュード三番」を弾いていた。真耶が好きでよく弾かされる曲だ。弾きながら、目はさりげなくヴィルを観察していた。先ほどここについて紹介された時に、もう少しで声を出すところだった。ピアノの上手い謎のドイツ人だって? 蝶子も真耶も何を言っているんだ? 拓人は二人がふざけているのかと思った。

 ミュンヘンに留学していた時に、拓人がしばらくつきあっていたのはイギリスからのフルートの留学生だった。彼女がコンクールで六位入賞した時に、会場で有名なエッシェンドルフ教授を見た。

「ほら、あれがエッシェンドルフ教授よ。フルートで身を立てるなら師事したい先生ナンバーワンでしょうね」
「なぜ、君は頼まないの、エヴェリン?」

「そう簡単に見てもらえないわ。お眼鏡にかなった本当に上手い人しか見ないんだって。それにね。たとえ教授が見てくださるとおっしゃっても、私の親が許してくれないと思うの」
「何を?」

「女があの教授に教えてもらっているってことはね。お手つきになる可能性が高いってことなの。私はフルートで食べていきたいとは思っているけれど、親は私に立派な人と結婚してもらいたいと思っているから、そういう噂の起こりそうな先生はね」

 拓人は、そりゃ羨ましい教授だ、と心の中で思った。
「だけど、さっき優勝した教授の弟子は男だったぜ?」

「やだわ。名前を見なかったの? あれは教授のひとり息子よ」
「へえ。家庭があるのに、好き勝手しているんだ。さすがヨーロッパの上流社会は……」
「あら。教授は独身よ。昔、名家のお嬢さんと結婚していたけれどすぐ離婚したんですって。今日優勝したアーデルベルトのお母さんとは結婚していないの。お母さんも昔の教え子みたいね。でも、教授は息子の才能に惚れ込んでいるみたいよ。教授の後ろ盾があって、さらに両方からの遺伝であの腕ですもの、きっとすぐに有名になるわね」

 優勝に笑顔を見せるでもなく、真っ直ぐ背を伸ばして教授と並んで立っていた金髪の男を拓人は十年以上経った今も忘れていなかった。髪型と服装は違うけれど、まちがいなくそこにいるドイツ人だ。

 だが、本当に蝶子と真耶は、ドイツ人をただの演劇青年だと信じているようだった。


「ねえ、いいでしょう。ヴィルさんも何か弾いてよ」
「たった今、その達者な男が弾いたその後に?」
嫌がらせにもほどがある、という顔だった。

 だが真耶は満面の笑みで強制した。稔は、ここにもひどい女がいるぜ、と思った。ヴィルが渋るので蝶子もカルロスに夕食をねだる時のような笑顔を追加した。ヴィルは諦めたように、拓人の空けたピアノの椅子に座った。

「短いので勘弁してくれ」
そういうとエルガーの『愛の挨拶』を弾いた。真耶は拓人にほらね、という顔をしてみせた。

 優しく明るい音色だった。カルロスの館で、それともマラガで聴かせたような、重く苦しい響きを想像していた蝶子は少し驚いた。彼はどこか変わった。蝶子は思った。真耶に会ったからなのかしら。

 でも、あの晩、私の告白のあとに真耶が突っ込んでも、彼は自分の事を何も話さなかった。蝶子はそれを残念に思っていた。どうして何一つ話してくれないんだろう。


 お茶が済むと、真耶が庭の薔薇を見せるといった。レネは飛び上がらんばかりに大げさに喜んで同意し、蝶子も、座っているのに飽きた稔も席を立った。

 拓人は言った。
「僕は、遠慮するよ。ヴィル君、君も薔薇の間の散歩が好きか?」

「いや、俺は薔薇にはそれほど興味がないんだ」
それは蝶子に向けていった台詞だった。

「だったら、ちょっとピアノの技術的な事について君と意見を交わしたいな」
ヴィルは特に何も言わずに残った。


「結城さん、素敵になったわねぇ」
外に出ると、蝶子は言った。真耶は微笑んだ。
「ね。いい音を出すようになったでしょう?」

「そうね。昔から上手だったけれど、深みが違うわね。それに、いい男になったわ。今だったら二つ返事で付いていくのに」
「なによそれ」

「大学生の時、他の子たちと同じように一度は迫られたのよ。でも、返事を渋っているうちに、さっさと次のターゲットに行かれちゃった。今から名誉挽回させてくれないかしら」
蝶子はぺろりと舌を出した。

 真耶は厳しい顔で言った。
「ダメよ、絶対に」
「なんでよ。あの人あいかわらずプレイボーイなんでしょ? 真耶は氣にもしていないんじゃないの?」

「他の女の人はいいの。遊びでも本氣でも。でも蝶子だけはイヤ」
「どうして?」
「彼と奏でる音楽は私の聖域なの。蝶子はそこまで入って来れるから」

 蝶子は真耶をちらりと見た。何を心配しているのよ。そんな深くに私が食い込めるわけないじゃない。

 稔は、こいつらなんて会話をしているんだ、と呆れた。テデスコがここにいなくてよかったよ。また思い詰めるからな。


 蝶子がまだ学生だった頃、ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』をフルートで吹いたのを拓人は憶えていた。美しい響きだったが、今、ヴィルがピアノで弾いているような、強い情感はなかった。あの頃は拓人も真耶も蝶子もまだ若かった。技術を切磋琢磨していたが、心はまだ音楽にふさわしくなかった。十年経ち、人生経験を繰り返して僕たちは音楽家になりつつある、そう拓人は思った。それはここにいるこの男も同じなのだ。

 四人が庭にいるのを窓越しに確認して、拓人はピアノの上に身を乗り出し、ヴィルの顔を見据えて言った。
「君が誰だか蝶子がまったく知らないとは驚きだな、エッシェンドルフ君」

 拓人の言葉にヴィルは大して驚いた様子をみせなかった。演奏の手を止めると立って窓辺に行き、真耶と連れ立って薔薇を見ている蝶子を見ながらぽつりと言った。
「まさか、東京で名前を知っている人間に会うとは予想もしていなかったな。どこでそれを知った」

「僕もドイツに留学していたんだ。蝶子より三年くらい前に。君がフルートのコンクールで優勝した折に、お父様のエッシェンドルフ教授と一緒にいたのを憶えているよ」

「で、どうする氣だ? なぜわざわざ誰もいない所でそれを俺にいうんだ」
「何か事情があると思うからさ。蝶子が教授のもとから去った理由を僕は知らない。君が父上の広大な領地を継いで結構な暮らしをする代わりに、大道芸人をしている理由も。だが君は蝶子のことを知っていたんだろう?」

「ミラノで会うまで面識はなかった。名前は知っていた。シュメッタリングは過去の事を何も話さなかったが、バイエルンなまりのドイツ語を話すフルートの達者な四条蝶子がそんなにたくさんいるはずはないからね」

「君はもうフルートは吹かないのか」
「だいぶ前にやめた」
「残念だな。あんな卓越したフルートはなかなか聴けないのに。蝶子のフルートを聴いて吹きたくはならないのか」

 ヴィルはしばらく答えなかったが、やがて言った。
「吹いたら最後、正体がばれるだろう。俺はまだもう少しあいつといる時間がほしいんだ」

 拓人は納得したように頷いた。
「僕は部外者として君の事を蝶子や真耶に黙っていてもいいが、条件がある」
「なんだ」
「蝶子に危害を加えるな」

 ヴィルは眉をしかめて目を閉じた。それから吐き出すように言った。
「危害を加えられているのはこっちだ」

 拓人はちらりとヴィルを見て頷くと、黙って『亡き王女のためのパヴァーヌ』を弾き出した。この男は、何か事情があって本名を隠して蝶子と同行する事になった。けれど、その目的を達成する前によりにもよって当の蝶子を好きになってしまった。もはや目的を実行する事も出来なければ、正体を口にする事も出来ない。そんなところだろう。

 蝶子はこの事を知ったらどうするのだろう。Artistas callejerosのメンバーに対する強い信頼は、拓人には蝶子の信仰のようにすら見えた。もしそれが崩れたら、彼女はもう二度と人間を信用できなくなるかもしれない。

「忠告しておくよ。あまり長く待たない方がいい」
拓人はヴィルに言った。ヴィルは黙って窓の外の蝶子たちを見下ろした。

「君は多くを語らない人だ。想いは君の中でどんどん育っていってしまう。君はそのうちに黙っていられなくなる。蝶子のフルートを聴き続ければフルートも奏でずにはいられなくなる。だが信頼も日々育っている。大きくなればなるほど、壊れたときの衝撃に君も蝶子も堪えられなくなるだろう」
「あんたの言う通りだろうな」

 もう既に遅すぎるのかもしれなかった。ロンダで蝶子の言った言葉が甦る。
「失いたくないものが出来てしまったの」

 その通りだった。Artistas callejerosに加わるまで、ヴィルにも失いたくないものなど何もなかった。音楽は常に自分の中にあった。けれど今、彼が必要としているのは内なる響きだけではなかった。もう一人には戻りたくなかった。


「テデスコは日本の旅行なんか行きたくないんじゃないかしら」
蝶子は拓人とヴィルの姿のよぎる窓を見上げて言った。

「なぜ?」
「日本の薔薇を愛でるために、ここに居たいんじゃないかと思って。ずっと日本に残りたいなんて言い出したりしてね」

 蝶子の意味ありげな微笑を見て、真耶は蝶子の顔を真剣に覗き込んだ。
「蝶子。それ、嫉妬なの? それとも、あり得ないと思うけれど、まさか、氣がついていないなんてことはないわよね」

「何に?」
「だから、ヴィルさんが、誰のことをいつも見つめているのかって話」

 蝶子はしばらく答えなかった。やがて真耶を見ずに小さくつぶやいた。
「そうかな、と思った事はある。でも、きっと勘違いだったのよ。真耶にはとっても素敵に笑いかけていたもの。私はそれで構わないのよ」

 真耶はため息をついた。
「あきれた。本当にわかっていないのね」

 五分でも側にいれば誰でもわかるほどなのに。彼は苦労するわね。それにしても、なんでさっさと行動に移さないのかしら。小学生じゃあるまいし。
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Comment

says...
こんにちは、TOM-Fです。

ほほぅ、ヴィルと拓人にそんな繋がりがあったとは。
ヴィルと拓人の、「危害を加えるな」「危害を加えられているのはこっちだ」というやりとり、蝶子の友人と、蝶子との当事者という立場の違いが面白いですね。
自身では多くを語らないヴィルだけど、周りには見え見えだったんですね~。

蝶子と真耶の微妙な会話も、いろいろ下世話な想像をしてしまいます(笑)
ヴィルと拓人の関係が、蝶子と真耶の関係とかぶっていて、面白いお話でした。

2012.07.26 01:44 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

真耶や拓人は基本的に部外者なので、書いていてとっても楽しいです。
少女マンガでいうと美味しい役割で、好き勝手しています。
自分の投影がゼロな分、臆面もなく書けるのがなによりですね。

ヴィルは完全にバレバレ状態になっています。
この人は、本当にいじめがいがあるので、ドSの蝶子のおもちゃにはぴったりですね。
(作者だからって、ひどいいいよう)

コメント、ありがとうございました。
2012.07.26 20:33 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
追いつきましたですw

最初は気の合う仲間同士の旅でなんとなくうらやましい
って感じだったんですが、だんだんと関係が…
すてきな時間ってやっぱりいつまでも続かないのかなあ
とちょっと寂しく思いつつも
蝶子さんとヴィルさんの展開に期待ですw
2012.07.28 11:52 | URL | #- [edit]
says...
な、なんと!ダメ子さんも読んでくださったんですね。な、長いのに……。ありがとうございます。

そうなんです。だんだんと関係が……。とはいえ、酒飲んで大騒ぎしているのは一緒なんですが。
日本編以降は、これまでよりも話がサクサク進みますので、ご安心ください。

今後ともどうぞよろしくお願いします。
コメントありがとうございました!

2012.07.28 12:47 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
いちいちコメントを書いたら忘れないのに、ついついそのまま読み進めてしまうので、何を書きたかったのか分からなくなってしまうということに気がつき!
なんと、創作メモ帳に感想をメモしてみたんですが……後から見たら、やっぱりわからない??
メモが汚くて、というよりもあっちこっちに飛んでいて、どう繋がっているのか分からない^^;
ということで、私の頭の中のままバラバラですが。

別のところのコメントにも書きましたが、実は(幻の猫にご登場いただくに当たり)一度ざーっと拝読したのです。でも走り読みになっちゃって、細かいところを読めていなかったので、今回は一度めと言えば一度目、二度めと言えば二度目なのですが、展開を面白がるより人物の感情を面白がって読ませていただいております。じっくり読むと、【幻の猫】の中での登場の仕方、あれで良かったかなぁと、悩みが倍増。

やっぱり、このお話は、本当に不思議というのか、視点の移動が気にならないなぁと思いました。視点が移動する話って、読んでいると自分まであちこちに意識が飛ぶんだけど、すでに4人の中に自分が入っているからなのかも、と思えます。親近感というよりも、誰の視点でも見れるようになっている。
最初の頃、夕さんが自由に書いている印象があると感想に書いたのですが、少しずつ縛りが(書き手としての)が増えて行っている(=ちゃんとした物語になってきている、というのか)のが分かります。それは多分、夕さんの思い(思い入れ)とか愛情が育ってきている過程でもあるのだなと思います。
そうか、ブログ小説って、読むほうも書き手も、一緒に育っていく(大きくなっていく)のが魅力なんだな、と改めて思いました。この物語、読み始める前は、こんな世界が開けているとは思っていなかったので、今とても楽しく読んでいます(って、筋を知っているって書いたのに? いや、でも初めて気分)。

以下、細かいところへの感想。
まず、「下世話な味を無性に食べたくなる」に1票。これ私の友人も言っていました。ときどき無性に、不二家のアップルパイが食べたくなるって。
(16)の後半あたりのムードが好きです。微妙な人間関係が風景/背景に溶けている。
カルちゃんっていい人だなぁ。
「人間はこれだけのものがあれば生きていけるのだ」ここにも1票。最近、物持ち過ぎだなぁと思うことが多くて。
真耶って、人間がでかいなぁ。持てる者のでかさかもしれないけれど、それだけではない気もする。
変なハガキがいっぱい来ていて、で、自分もきっとその一員のような気持ちになってたんですね。
そして新堂和尚さん、再登場。これは嬉しいなぁ。
「この5年間で、稔の不在を乗り越え、稔なしの日常を紡ぐようになっていた。そのことはショックでも何でもない」ここにも1票。そうなんですよね。どんなに大事なものでも、絶対なくてはならないもの、というわけじゃないんだよなぁ。今手にしているものが一番大事。もしも無くしたものに執着したら、それは辛いですよね(いずれそうなる、ジョルジョの話。でもそこから再生する予定、かな?)。

というわけで、次ページ(21~)に入ります。
じっくり読むと、ますますいいなぁ。
日本で(時代が全然違うのを無視して)、やっぱり稔とセッションをお願いしなくちゃ。

長々と失礼いたしました。
でも、また来るよ(^^)
2013.07.15 18:27 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

も、もしかして、読みにくいブログで読んでくださっているのですか? 確かにブログで読むと、前文はついてきますけれど……。メモまでしていただいて感想をいただき、ほんとうに嬉しいです。

この話は、かなりフリーハンドで書いています。といっても、一応いつもたとえるように「特急の停まる駅」から書いているので、構成はズレていないはずですが、例えば蝶子や稔の心のセリフやら、会話などはほぼ即興的に頭の中に出てきたものを映し出すように書いていて、「樋水龍神縁起」と較べるとかなり適当です。だから視点もすぐに飛ぶは、地の文とキャラのセリフが混じっているは、セオリーからしたらダメな書き方をしている可能性が強いです。単純に勢いを優先しました。

「幻の猫」での四人は、もちろんOKですよ。基本的に私のところのキャラは「殺さない」「(結婚など)社会的状況を変化させない」程度のタブーさえ破らないでいただければ何でもOKです。他の方とのコラボでも若干の問題(タイムスリップとか、どうしてそんなに何度も日本に来れるのかとか)は、一切不問に処しています。いざとなったら「龍王様が適当に消去してくれるから」の手もありますので、どうぞご遠慮なく。

実をいうと、話を書きはじめた頃から、バレンシアの「月夜の対決」シーンははっきりしていたので、最初の方で恋愛が見えないように視点がだらだらしているのはわざとです(笑)あと、常識で考えたら「親子で同じ女」はかなりひく設定なので、そこに至る葛藤は長過ぎるくらいに書いています。「美人だからついうっかり」のようにはしたくなかったので。ただ、これだけ引っ張ると、チャプター2の本題に入る前に、脱落者が出るかもとは思います。まあ、それはしかたないかなと。

マラガの後半のお話。「マラゲーニャ」ですね。そういえば、この小説「愛している」みたいなセリフが皆無です。私本人が苦手ということもあるのですが、あえて「愛している」を全く別のセリフや行動で表す描写を繰り返しています。「マラゲーニャ」はその中でもかなり思い入れの強いシーンなので、お氣に召していただけてうれしいですね。あ、カラマーレ・フリットは私の好物でございます。下世話な味、好きです。

真耶は、「Dum Spiro Spero」で神業を見せてくれるシーン(実は、いちど断片小説として公開していたりしますが、この夏に完全な形で読めます)があり、それ以来私の中ではかなり大事なキャラなのです。お蝶夫人、京極小夜子、姫川亜弓的なキャラですが、蝶子にとってはライバルではなくて尊敬できる友達。って、蝶子は友達のいなかったキャラなので、尊敬のできる同級生どまりだったんですけれどね。一方的ハガキで親友になるのって変な話ですが。

カルちゃんは理想のパトロンです。同じ立場でも教授の立場にならなかった賢さに救われているかもしれません。沢永和尚は、「見える、祓える」ゆえに息子夫婦の運命をわかってしまったかわいそうな人ですが、救いとして「親戚の稔くん」を配置しました。私、けっこう自分の作ったキャラに愛着を持ってあとからフォローしたりするのが好きのようです。

それと、例えば稔は私にとっては大事なキャラですが、だからといって五年も失踪しても居場所はばっちり、みたいな都合のいい話にはしたくないというのはあります。蝶子も美人だけれど、好かれるより嫌われる方が多い、というのも同じような理由です。本人にとってはちゃんとした理由と事情があってのストーリーでも世間から見たら「婚約者の金をつかいこんで逃げた男」「恩のある婚約者から息子に乗り換えた女」であることも忘れずにいないと独りよがりになってしまう、というのはあります。

「無くしたものに執着」するのは、確かに辛いです。でも、この四人もじつは完全に自由になったわけでもなくて第二部では第一部ほど爽快な話ではなくなっていくかもしれません。だから二つに分けたって言うのもあるんですけれどね。

二度にわたって、じっくり読んでいただけて作者冥利に尽きます。あと半分くらいですね。どうぞよろしくお願いします。

コメントありがとうございました。
2013.07.15 20:57 | URL | #9yMhI49k [edit]

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