scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】星売りとヒトデの娘 — 『星恋詩』二次創作

scriviamo!

月刊・Stella ステルラ 4月号参加 掌編小説 読み切り月刊・Stella ステルラ


「scriviamo!」の第十六弾です。スカイさんは、「大道芸人たち」の蝶子と、そのフルートに耳を傾ける私のイメージイラストを描いてくださいました。ありがとうございます! 

蝶子 from スカイさん

スカイさんの描いてくださったイラスト「Dedicate to 『scribo ergo sum』」

スカイさんは、おなじみ「月刊・Stella ステルラ」の主宰者さんのお一人で、とてもお世話になっている方です。学生さんで、星と空をモチーフにした素晴らしい小説やイラスト、私の大好きなノート生まれのキャラたちなどを次々と生み出されています。

さて、お返しは掌編小説にさせていただきました。スカイさんの代表作「星恋詩」から主役の星売りさまをお借りして、二次創作をさせていただくことにしました。


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星売りとヒトデの娘 — 『星恋詩』二次創作
——Special thanks to sky-SAN




 祭は終わった。年老いた賢人の瞳と、獣の尾をもち、過去の記憶を持たない少年が、暗闇の中を一人歩いていた。彼を祭に連れてきた鬼の子は、姫君の生み出した星に乗り、天上へと帰っていった。だから、彼は一人、祭に背を向けて、夜の暗闇へと潜り込もうとした。

 けれど、彼は星売りだったので、歩き動く度に、頭から金粉が舞落ちた。それが一つひとつ星となり、あたりを輝かせるので、完全な暗闇に沈むことは出来なかった。

 ザワザワンと打ち寄せる波を、遠くに聞いた。その繰り返す波にのせて、わずかなすすり泣きが届いたので、彼は足をそちらへと向けた。

 海だった。そこには、ぐっしょりと濡れた、赤い娘がいた。両手で瞳を覆い、ヒュクヒュクと震えて泣いていた。

「いったい、どうしたというのだ」
星売りは尾を振るわせて訊ねた。赤い娘は振り向いて星売りを見た。そして、彼の頭からキラキラキラと、星が舞落ちるのを見て、一層悲しげに泣き出した。

 星売りは困って、頭を傾げた。するともっとたくさんの星がこぼれ落ちてシヤンシヤンと音を立てた。そこで娘は泣くのをやめて小さく答えた。
「私は、海の底のヒトデでございます。海星と言われているのに、私は全く光ることが出来ません。それを申し上げたら、海神さまがお前はくだらないことを考えて本業をおろそかにしているとお怒りになられました」

 星売りはつと考えた。ヒトデならば、海の底の珊瑚の林で合唱をしているはずであった。確かに娘の声は鈴が鳴るように美しかった。

「海神さまは正しい。お前の美は体にではなく、その声にあるのだから」

「でも、私はあなたのように美しく光りたいのです。どうあっても、光ることは出来ないのでしょうか。たとえば、あの祭の火吹き男に松明をわけてもらうことはできないのでしょうか」

 祭の火吹き男は、アルデバランの赤蠍の一人息子であった。本当ならば真っ赤な玉座の上で、紅玉でできた盃から蠍酒を傾けている結構な身分なのだが、周り中が赤くてかなわんと言って、放浪の旅に出た王子だった。星売りはかつて赤蠍王からの使者に頼まれて、火吹き男に一瓶の蠍酒を届けた縁でこの男をよく知っていた。火吹き男の舌にはいつもチラチラと焔が燃えていて、蠍酒やその他の強い酒を飲もうとすると、大氣に酸素が多く含まれているこの星では、口から劫火が生まれてしまう。だから火吹き男は常に息を吹き出して焔が軀の他の部分に燃え移らないようにしていた。それがいつの間にか松明に火をつけて人びとを魅了する芸人のようになってしまったのだった。

 星売りは頭を振った。大好きな強い酒を飲む度に、焔を吐き出さなくてはならない火吹き男はヒトデの娘が思うほど幸せに燃えているわけではない。一方、この娘が同じような焔を口の中に持ったとしても、水の中では火は消えてしまう。それを避けようと焔を飲み込めば、その熱は娘の美しい声を生み出す黄金の喉を焼いてしまうだろう。
「だめだ。お前の大切な声を失わずに、その舌で火を安全に燃やすことは出来ないから」

「それでは、天上に輝く月の柔らかい光を、ぎゃまんの瓶に閉じ込めて、私の額にとりつけることはできませんか?」

 星売りは、そのアイデアについて考えた。天の川にいくらでも落ちいてる天のぎゃまんの瓶にならば、満月の冷たく明るい光を閉じ込めることができる。けれどその光は地上にいる時にだけ光り、海の底へ行くとぎゃまんの瓶をすり抜けて、泡となって消えてしまうのだった。

「お前が、ずっと海の上にいるならいいけれど、そうでないと月の光は一晩と持たないのだよ」

 それを聞くと、娘は絶望して、再び泣きはじめた。これではいけないと思った星売りは、尾を振ってもう一度考えた。考えて、考えて、考え抜いた。けれど、何も思いつかなかったので、残念だと頭を振った。すると星がふたたびシャラランと音を立てて、波間に落ちた。その星は、すぐに海の夜光虫になって、優しく輝きながら海の底へと泳いでいった。これだ。星売りは思った。美しく光る海の生きものもいる。それと協力すればいいと。
「いいことを思いついた」

「なんでしょう」
娘は涙を拭いて、星売りを見て首を傾げた。シャラララと麗しき音がした。

「星売りとヒトデの娘」イラスト by スカイさん
イラスト by スカイさん
このイラストの著作権はスカイさんにあります。スカイさんの許可のない二次利用は固くお断りいたします。


「美しく光るがためにいつも魚たちに追われている海の夜光虫と友達になりなさい。そして、彼らをその胸の中に隠してあげなさい。そうすれば、歌って息を吸い込む度に、夜光虫がお前の体を照らし輝かすだろう。美しく歌えば歌うほど、お前は輝くだろう」

 その助言を聞いて、海星の娘は大喜びになり、本来の姿を現した。それは、海神の美しき七人の娘の末っ子で、つやつやと滑らかな赤い腕の一つひとつに、ぎっしりと真珠がついていた。
「ありがとう、星売りさん。あなたに海のすべての幸運が授かりますように」

 そう言って、娘は海の底の珊瑚の宮殿へと戻っていき、姫君を待ち望んでいた合唱団の真ん中におさまり、コロラトゥーラソプラノで深海のあらゆる賛美を歌った。

 ザワザワンと打ち寄せる波の間に、その麗しき旋律を聴いた星売りは、満足して頭を振った。するとたくさんの星がシャラシャランとこぼれ落ちて、波の合間消えながら幾万もの海の夜光虫に変わった。小さな光る虫たちは、姫と合唱団のコーラスに惹かれて、ぐんぐんと海神の宮殿に向かった。それぞれが姫や合唱ヒトデたちの胸の中に飛び込んで、その歌を子守唄に眠った。

 夜光虫たちの夢みる輝きは、合唱団を光らせ、喜んだ姫たちはますます美しい歌を海神に捧げた。星売りは、ぼうっと光る海の底を眺めて、いたく満足し、シャランと音をたて、それからまた、尻尾を振りつつ、暗闇の中を星を振りまきながら歩いていった。

(初出:2013年3月 書き下ろし)
関連記事 (Category: scriviamo! 2013)
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Category : scriviamo! 2013
Tag : 小説 読み切り小説 月刊・Stella コラボ

Comment

says...
 こんにちは。
早いーーーーー もう Stella 提出ですかぁ!!!!!
僕 先月から書いているのに 進んでいないよ… 久しぶりに ワタリガラス書いたら 
妙に時間かかってるなぁ。

面白いです。
確実に スカイさんの世界観なのに スカイさんの色彩が少なく 八少女さんの色彩で
描かれている。
此の 深く 静かな濃紺の蒼に 小さな真珠色の微かな光… 其処へ 切り裂くかのような 鮮烈な赤。

ヒトデの合唱 可愛いなぁ 差し詰め クラゲは舞姫かな。
綺麗な 透明感を感じる作品でした。
2013.03.13 08:36 | URL | #- [edit]
says...
今、ゆっくりと『樋水龍神縁起』をありがたい縦書きで!少しずつ読ませていただいております。
感想を書くのがまだ先になりそうだったので、まずは短編にお邪魔させていただき、ごあいさつ文を書きにきました。
ハードな話も好き(ハードボイルドの話)、お堅い推理小説も好き、もっと堅い純文学も時々読む(師匠は勝手に夏目漱石とサリンジャー)、でも本質的には頭がお伽噺系を求めていまして…こういう世界、大好きです。
あれこれ大好きで、ややこしいんですが。

もう、デイズニーに映画化してもらいたいくらい、その絵が浮かぶようなお話ですね!
それに音楽も聞こえてきそう。
あるいは、星の王子様みたいな。
ちょっと示唆に富んでいて、でもあくまでも楽しくて。
これからいいことがいっぱいありそうな、とても素敵な読後感でした。

スカイさんのブログにもお邪魔してみているのですが(まだ読み逃げでして^^;)、まだ初心者で、二次創作の深みが分かっていないのですが、きっと素敵なコラボになっているんだろうなぁ、と思いました。
ついでに別のお話のコメントも書こうと思ったけど、長くなったので、別ページに行きますね(^^)
2013.03.13 17:27 | URL | #XbDIe7/I [edit]
says...
こんばんは。

えへへ。今月も三本になっちゃいました。でも、これを最後にしばらく大人しくしようかと思います。

スカイさんっぽく書くのはとても無理なので、とりあえずキャラだけお借りしましたよ。
クラゲの舞姫、いいですねぇ。
海のお話も悪くないですねぇ。ウゾさん書いてくださいよ〜。

コメントありがとうございました。
2013.03.13 20:44 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

「星恋詩」の世界は、いいですよ〜。
私のしょーもない二次創作で、あの世界観が壊されていないか心配です。
イラストもとても味があるので、ぜひお訪ねくださいませ。
それに、彩洋さんももし興味があったら、ぜひStellaへのご参加をご検討くださいませ。

「樋水龍神縁起」を読んでいただいているとのこと、ありがとうございます。
あれこそ、18歳以下の眼にさらすのは問題ありな小説ですが、まあ、そういう主題ではないので……。
まもなく、続編をこのブログで連載予定です。そちらの方共々、どうぞよろしくお願いします。

コメントありがとうございました。
2013.03.13 20:51 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

わあああ!!!ありがとうございます!!!
もう毎日読ませていただいています!!

もう何と言うか、言葉に出来ない、胸がギュッとなるあの感じ!
とても嬉しいです!!!

本当に、何というか、自分の世界ですから想像もしやすいですし、
其処に、夕さんの西洋の風が吹く……

ええと、何を言っているかよくわからなくなってしまいました……
少々興奮しているので(笑)

本当にありがとございました!!
2013.03.15 12:57 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

ああ、ご挨拶が遅れてしまいました。
お氣に召していただけましたか、ほっ。
なんか書けば書くほど、スカイさんの透明な空の世界からは離れていく、妙な深海の作品になってしまいました。
二次創作でStellaに出しちゃいましたので、どうぞよろしくお願いします。

ご参加、本当にありがとうございました。
2013.03.15 19:09 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんわ

バーっと読ませて頂きました。
おぉ、他の人も書いていますけど、スカイさんの世界観なのに夕さんの書き方だw
スカイさんの場合はもうちっと詩的で一部一文に区切りがある感じ、夕さんの場合は説明的なものが入って読者に対してわかりやすく出来て………る? ような? 気が致します。
芸人の文字が文中に出てきたときは、噴き出しましたw 
いえ、決して悪い意味じゃなくて、なんだか夕さんブランドの付き物みたいな感じで微笑ましい。すごくいいですb

以上です。
2013.03.19 10:41 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。
お、早々にありがとうございます。
スカイさんのように書くのは無理ですから(^-^)/
かえって自分らしいものが書ければ二次創作も本望かも。
微笑ましいと言っていただき嬉しいです。
このまま邁進しちゃう事にします。
コメントありがとうございました。
2013.03.19 20:36 | URL | #9yMhI49k [edit]

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