scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

方言の話

訪問させていただいた方の氣になる記事から、勝手に話を発展させてしまう記事シリーズ。あ、久しぶりだなあ、このフレーズ。

大海彩洋さんが取り上げていらっしゃった、「小説における方言」の記事、既に読まれた方も多いのでは。あ、ご心配なく、彩洋さんのブログに書いたコメントと同じことを書くわけじゃないですから。今日取り上げるのは、ヨーロッパ、ドイツ語圏における方言の話。そう、すでに話は明後日の方向に飛んでおります。

私の住む地域はドイツ語圏のスイス(他にフランス語、イタリア語、ロマンシュ語があります)です。そしてですね、わずかでもドイツ語を学んだことのある方が、このスイス方言のドイツ語に耳を傾けると、たぶん自信をなくされると思います。知り合いのドイツ人も言いました。「全然わからない」実をいうと、文法すら違いますしね。

で、このスイス方言には書き言葉がないので、新聞は正規ドイツ語で書かれています。でも、テレビのニュースはそれぞれのキャスターが自分の方言で話しているのですよ。連れ合いに訊きます。「え? いまなんて言った?」答え「わかんない」おいっ。ニュースなのにそれでいいわけ?

ドイツにもたくさん方言があります。たとえば「プラット・ドイチュ」といわれる北部の方言はスイス方言に負けないくらいなまっています。しかしですね。ドイツではどこの出身のキャスターであろうと完璧な正規ドイツ語で話すのですよ。これには訳があるのです。

ドイツの長い伝統として、(子供が大学に行くような)上流階級の家庭は、外でだけでなく家庭でも正規ドイツ語しか話さないのだそうです。つまり方言を話しているのは「シモジモ」の証なんですね。日本ではそんなことはありませんよね。お国言葉は上流下流とは関係がない、むしろ個性だとみなされています。スイスも日本と同じです。だから、大臣が方言丸出しで話しているのが普通な訳です。もっとも、ドイツのテレビでは、その発言の時、「翻訳されたドイツ語」がテロップでつきます。

「アルプスの少女ハイジ」でロッテンマイヤーさんがハイジに「正規ドイツ語でお話しなさい!」と言っているのはこのことなんです。「地方から来た田舎者め」と蔑んでいじめていたわけでなくて、クララの家のような上流階級で方言なんてドイツではありえないわけです。

たまに、私の携帯にスイス人からの間違いメッセージが届きます。私信なので方言を音表記したものです。みごとにわからない。私はこの地方の方言は聴き取れるようになっていますが、このメッセージはわけがわからない。たったの140字でもこの苦悩ですから、スイス方言ドイツ語で書かれた小説など死んでも読む氣になりません。やっぱり、標準書き言葉ってのは、どの言語でも必要だと思いますね。
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Comment

says...
なにかで読みましたが、アメリカ文学で「南部なまり」が今のように描かれることが多くなったのは、とある翻訳者が、「南部なまり」を訳すのに頭を抱え、

「青森県南部地方のなまり」で訳してしまったのが始まりとか。

ほんとかウソかは知りませんが、妙にリアリティのある話……。
2013.07.28 06:02 | URL | #0MyT0dLg [edit]
says...
ってことはドイツでは逆にシモジモの方々は正規ドイツ語で書かれた文章は
あまり読めなかったりするんでしょうか?
それとも日本の方言程度で普通に読める?

私は隣の県に行ったとき地元の人同士の方言が聞き取れませんでしたです
2013.07.28 09:49 | URL | #- [edit]
says...
方言を個性ととるか、下々の言葉と取るか……
ドイツとスイス、そんなにも違うんだ。お国柄が出るのですね。
それにしても、国の中でもすごく言葉が違うって、どの国でもありますよね。
イタリアなどもあくまで共和国で、地方で全然言葉が違って、せっかく何年も(標準語を)お勉強して行っても、地方に行ったらなんじゃ、その言葉は?でした。
毎年、GWに青森に行くのですが(三味線の大会で)、あそこは、町の中はともかく、ちょっと飲み屋に行くと外国語の中にいるようです。大会のアナウンスも聞き取れない。友人はつくば大学に行っていましたが、まるきり言葉が分からなかったそうです。
でも、テレビのニュースで分からない、というのはかなり特殊なのでは?
日本でも、方言でニュースはしてませんものね。
面白いなぁ。
2013.07.28 13:12 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

本当に説得力のある説ですね。
伝統って実際そんな風になんでもないきっかけから定着してしまうのかもしれませんね。

確かにアメリカ南部の訛りを訳すのに例えば関西弁を使われると、今となっては違和感がありますよね。
スイス方言もイメージとしてはやっぱり関西弁ではないですね。

コメントありがとうございました。
2013.07.28 16:03 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

普通教育は正規ドイツ語ですから、みんな普通には読み書きできますよ。
日本でいうとテレビを見て何を言っているのか理解するとか、外国人がドイツ語で話しかけて来て自分たちの言葉がわからなそうだったら正規ドイツ語で答えてみる、って感じでしょうか。大阪出身の方が、東京で就職試験を受けるので、あえて標準語で話したような「わざわざ使ってみました」感を持つってことですよね。で、上流階級の方は、生まれた時から標準語以外を話したことがないってイメージです。

日本でも方言同士で話されると、相当難しいですよね。私は沖縄と山形に行った時に聴き取れなくて涙目になりました。

コメントありがとうございました。
2013.07.28 16:32 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
スイスドイツ語は政治的状況が言語にも大きな影響を及ぼしたのですよね。
1800年代の初めまで、スイスはドイツ皇帝の支配下にありました。なんだけれど「俺たちはあいつらとは違う」と他の皇帝支配下にある他の国とは別行動を取っていたのです。で、書き言葉としては正規ドイツ語を使うものの、文化や自治に関しては頑固一徹で、完全に独立してからも「あいつらの言葉と風習を誰が真似するか」と一線を引いているんです。で、他のゲルマン系の国はオランダやスウェーデンのように王室があったりして中央集権が出来たために独立した言語になり得たのですが、スイスは現在「州」と訳されているカントンがもっと独立して平等な立場であったため、統一言語なんて作れず、公的な書き言葉としてはドイツ語が残っちゃっているんですね。でも、口語としては自分たちの言葉を喋っていると。さらにスイスの場合はフランス語やイタリア語もあるので「みんなちがってみんないい」状態。まあ、ニュースも本当に重要なことは(ネイティヴなら)大体わかります。私はついていけないことが多いけれど。

東北の方言は、標準語で話してくださっても聴き取りづらいですよね。ましてやネイティヴ同士の会話は外国語状態でしょうね。

コメントありがとうございました。
2013.07.28 16:49 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
わかる言葉で話してくれるチャンネルのニュースをみることになって視聴率が安定するの。とか計算してるわけでもないんでしょうけど、方言で何言うているかわからない。てなるくらいのニュース報道ってビックリですね。
生まれも育ちもスイスです。てのならそうでもないんでしょうけど、よその国からやってきました。て人にとってはなかなか大変そう。
話す言葉と書き言葉が違ってくるということは、スイス全体としては意外と識字率が低い国だったりするのかな?て思ってしまいました。

2013.07.29 00:43 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。そして、(たぶん)はじめましてですよね。
いつも読み逃げですみません。

本当に誤解なく知らせなくてはいけないことは正規ドイツ語を使い、どうでもいいニュースや「議事堂前の○○さん」と振られたレポーターがズーズー弁で喋っているように、なんらかの方言使用ルールがあるようです。また、ラジオのニュースはほぼ正規ドイツ語で話すようなので、映像で補完できるものは方言でもいいと思っているのかもしれません。ルールは不明です。

ニュースに限っていえば、スイス方言がわからない人は自分のわかる言葉のニュース(隣のチャンネル)を見ればいいのですし、もともと四カ国語もある国なので、他の言語圏またはよその国からやってきた人ははじめから完璧にわかろうとはしないんでしょうね。私もしていません。無理ですから。

識字率は高いですよ。沖縄の人が日本語の全国紙新聞を読めるように読めます。しかも三か国語くらいペラペラの人がとても多いです。レジのオバさんでもそうなんですよ。びっくりします。

コメントありがとうございました。
2013.07.29 19:53 | URL | #9yMhI49k [edit]

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