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Posted by 八少女 夕

豪華な建物の話

エジプトのピラミッドを建てる時に、奴隷をこき使っていたという絵柄は定番なのですが、最近の研究ではあれは一種の公共事業だったと、つまり農作業のない乾季にあの労働をすることで収入を得ていたと聞いたことがあります。そんな昔のことはさておき、ヨーロッパにおける豪奢な聖堂や宮殿を見る度に「貧しい人たちから搾り取った金で建てた」という人たちがいて、その時に私はいつも上のエジプトの話を思い浮かべるのです。

ドレスデンにて

ヨーロッパの宮殿や聖堂はこれでもかというくらい豪華に飾られています。大理石、漆喰、絵画、壁画、金箔、時には宝石なども使って。確かに貧しい人たちの労働から吸い上げた一部の権力者が命じて作らせたものです。そんなものは必要なかったと言われればそれまでです。

でも、共産党時代の東欧でつくられた灰色で装飾も何もなく、さらに悪戯書きされて朽ちる一方の建物を目にする時、建てた大工たち、働いた人たちは嬉々として働けたのかなと思ってしまうのですよ。

以前ロシアのエカテリーナ宮殿の琥珀の間で働く職人たちに焦点を当てたドキュメンタリーを見た事があるのですが、琥珀のエキスパートとして働く彼らの顔は誇りに満ちていたんですよね。

偉大なドームや見事な彫刻、美しい絵画、それに外側で風雨を受けるガーゴイルなども含めて、私は神や王家の偉大さにはまったく感銘を受けず、常にそれを作った一人一人の職人たちに想いを馳せます。鑿を一つひとつ当てながら自分の仕事に誇りを持って作っていった名もなき人たち。(有名な人もたくさんいますけれど)

写真はドレスデンの聖母教会です。爆撃で壊滅的被害を受けたこの教会は世界中の寄付で再び元の姿を取り戻しました。寄付した中には爆撃を命じた英女王の名前もありました。どんなに長い時間をかけて多くの人が魂を込めて作った建物も、爆弾一つで瞬時に消え失せてしまいます。世界の多くの素晴らしい作品、有名無名の人びとが一生懸命作った貴重な作品は、この瞬間にもたくさん破壊されていっています。

豪華な建物を建てることには、賛否両論があって当然だと思います。でも、有無を言わさずに破壊されてしまうのは、魂を込めた先人に対してとても失礼で悲しいことだと思うのです。
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Comment

says...
あのピラミッドの建設が、純然たる労働だったら、なんとも嬉しいですね。
奴隷の呻きが聞こえてきそうで、ピラミッドを見るのもなんだか、痛々しかったのですが。
私たちが学んだ太古の歴史は、もしかしたら間違いもいっぱいあるのかもしれませんね。

確かに苦しみぬいた庶民からしたら、豪奢な建造物は反感の対象でしょうが、・・・そうですよね、あれを作ったのは職人であり、生まれたのは芸術品ですもんね。モノにあたって、破壊するのは悲しすぎる。
破壊で救われるのもは、何もないはずだから。

しかし、こんな美しい建造物を見るたびに、人間ってすごいなあ・・・と思ってしまいます。
あ・・・すごいのは、職人さんですね^^;(すぐ仲間に入りたがる)
2013.08.13 09:50 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こんばんは、TOM-Fです。

エジプトのピラミッドが公共事業だったという研究成果には、びっくりさせられた記憶があります。労働者には、衣食住の他に有給休暇まで保証されていたみたいですね。羨ましい(笑)

建設に動員された職人や工夫の存在感って、実際にその建物を見に行くと結構感じられるんですよね。見えないところに、家紋を彫ったりサインしたりとか。
そういう人々とともに、私はそれを作らせた者たちの情念にもとても興味があります。ノイシュヴァンシュタイン城を作らせたルードヴィヒ2世とか、ちょっとどっかにいってしまったような人物には、妙に惹かれますね。あ、いえ、物書きとして興味があるというだけですよ。

いずれにせよ、トプカプ宮殿もアルハンブラ宮殿もシェーンブルン宮殿もエカテリーナ宮殿(宮殿ばっかりだ)も、タージマハルも、アヤソフィアも、サグラダ・ファミリアも、モン・サン・ミシェルも、その他諸々の華麗な建築物も、私が見に行くまで誰も壊さないで下さいねっ!
2013.08.13 10:27 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
ヨーロッパの建築物ってどれも幻想的なもの、神秘的なものばかりですよね。

ドイツにあった有名建築物はほとんどが第二次大戦時の戦火で焼失してしまったのが
何よりも残念な話ですが……。

建築物と聞くと、サグラダファミリアがいつになったら完成するのかが俺は気になりますね^^
2013.08.13 15:46 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

当時、奴隷制度があったことは間違いないのですが、ピラミッドの建設についてはちゃんと根拠があって「働けぇ〜(びしっ)」だけではなかったことがわかったようですよ。

人間って、強制されて食べるものも食べずに働かされる状態では絶対にできないことがあると思うのですよ。エジプトのことはわかりませんが、たとえばヨーロッパの教会の外に装飾としてつけられているガーゴイル、あれをよく見るととてもユーモアがあるんですよね。作った人は楽しんでいたに違いないと思うのです。大きな宮殿や教会を建てる時に財政が傾いたという話もよく聞くし、たぶんそれぞれがちゃんと払ってもらっていたんだろうなと思います。誰がたくさんポケットに入れたかはまた別の話ですけれどね。

だから、建造物や文化遺産を見る時に「貧しい人から搾取して……」という方向ではなくて純粋に作った人びとの労働に関心することにしています。本当に人間ってすごいですよ。私も仲間に入りたいですけれど……。

コメントありがとうございました。
2013.08.13 18:33 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

おお、有給休暇もですか?
ということは現代日本の労働者よりもいい条件だったかも……。

そうですよね。画家だと、自分をちゃっかり登場人物に加えたりして楽しんでいたりもしますよね。

ルードヴィヒ二世の情念もすごいですが、その横で「ちょっ、そんなにお金使うなよ!」と慌てていたらしいですね。自殺か他殺か未だに意見は分かれているようですが、とにかく王が亡くなった後、速攻で観光客に公開して建設費を回収しようとやっきになったという話を聞いて、切実問題だったんだなあと思いました。

ロシアの宮殿とタージマハール、それにアンコール・ワットは死ぬまでに見てみたいです。あとのTOM-Fさんのご希望のところは、もう行っちゃいました。すごく良かったですよ〜。

コメントありがとうございました。
2013.08.13 18:39 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

ドイツはこてんぱんにやられましたからね。
でも、ドレスデンはびっくりするくらい、元に戻っていますよ。もし機会があったらぜひいらしてみてください。

サグラダ・ファミリア、完成するんでしょうかね? たぶん私が死ぬまでには完成していないだろうなあ。

コメントありがとうございました。
2013.08.13 18:42 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
大きなものにはそれだけの金がかかっているわけですが、やはりこれは為政者の我儘だけではなかなか出来上がらないものであろうと思うのです。
作っている人の意気込みとか誇りとか(宮大工さんなんてそうですよね)、何か見えないものに対する畏怖の念とか、ま、多少は為政者への恐怖とかもあったりするかもしれないけれど、それでもあれだけのものができるには、目に見えない大きな力が働いていますよね。
ソ連(当時)の宮殿、いくつか見ましたが、ただただでかい。宮殿って、見ていると食傷気味になります^^;
アンコール・ワットは確かに素晴らしい遺跡でした。でも、もともと脆い石で造られているそうで、どんどん風化していくのだとか。一生懸命修復しているらしいけど、終わりが見えない。サグラダ・ファミリアみたいですね(こっちは修復ですが)。風化が先か、修復が追いつくか……てな話を、うちの父が、地雷がその辺にまだ埋まっている頃にアンコールワットで行方不明になったと思ったら、修復作業中の著名な早稲田の教授と話し込んでいました。

エジプトの公共事業はかなり立派だったようですね。労働者の食事もかなり良かったようですし、労働者のための町もあって、結構豊かな暮らしをしていたようですし。あの辺の気候を考えたら、仕事があって何か見返りがもらえるというのは大事なことだったんでしょうね。勤務表もあって、シフトも組まれていたらしいし、休みももちろん。
もちろん、身分制度はがっしりあったんでしょうけれど、民がいなくては国力を保てないことをファラオがよく知っていたんでしょうね。
ただ、タイのキラキラの宮殿の横に貧しい家々が並んでいるのを見ると…う~ん、と思ったりしました。
私も、タージマハルは見たいなぁ。
それと……実は琥珀の間、ちらりと出てくるのです、海に落ちる雨に。思わずニヤッとしてしまいました。でも実は、いずれちゃんと琥珀の間の話を書くつもりの前ふりなんですけれど。
2013.08.13 19:21 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

うおおおお。アンコール・ワット、行かれたのですね。いいなあ。あれは行ってみたいです。ジャングルで樹が生えてきちゃって、それでも崩壊しかけているようなイメージがあります。それに、今でもいつ過激な思想を持った人たちに壊されるか、ヨーロッパのものよりもアジアやアフリカの世界遺産はいつも危険と隣り合わせなところがありますよね。

いろいろな思想をお持ちの方がいて、それぞれが尊重されるべきだとは思いますが、その思想に固まりすぎるがために攻撃的なのはちょっと苦手です。「ブルジョワ世界のものは悪だから破壊せよ」みたいな。私がヨーロッパで堪能している芸術や美のようなものは、「計画的生産」「ブルジョワ的所有の廃止」といった理想をもつ世界からは生まれてこないと思うんですよね。確かにその時代の極貧の人たちからしたら悪魔の搾取があったのかもしけないけれど、いまこうして決して特権階級とは言えない私ですら満喫できる美を用意しておいてくれたことに対しては感謝したいなあと思うのですよ。

ただ、王様が宮殿に住むのはありとして、あまりにも眼に見える形で貧富の差がありすぎるのは、確かにう〜んと思いますよね。かえって昔の方が、この眼に見える形での不公平は少なかったんじゃないかなあと思います。情報も少なかったし。

ええっ。琥珀の間がでてくるのですか? それは嬉しい。出てくるということは、彩洋さんがご覧になって印象が強かったからかな。実際に目にしたことがないので、読むのが楽しみです。「海に落ちる雨」も、もっと大きく取り上げるお話も。

コメントありがとうございました。
2013.08.13 22:09 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
美は細部に宿る。
絶対に手を抜かないことなんて不可能だけれど、
そう思います。
それに関わる一人一人が誇りに思える程大切に仕事をする
それだけで、その出来がいかに素晴らしいか予想できますね。
2013.08.13 23:26 | URL | #HL2jsdHs [edit]
says...
でも、世の中には豪華だけれど趣味の悪い建物があるからなあ。

20世紀以降の独裁者が鉄筋コンクリートで作ったような建物とか……。
2013.08.14 14:52 | URL | #0MyT0dLg [edit]
says...
こんばんは。そして、はじめまして。
いつも読み逃げしていて申しわけありません。どうぞよろしくお願いします。

おっしゃる通りですよね。建物だと下からみてもほとんど点のようにしか見えない細部にまで魂を込めて作っていることがわかります。そういう一見無駄に思える贅沢は近年のモダンな建物にはほとんど見られないのですよね。

きものでもそうですけれど、本当に手間ひまのかかる美しさを出すためには、絶対に抜かせない工程があり、氣が遠くなるような時間がかかり、その技術を習得する時間と試行錯誤も含めて、とてつもないお金がかかってしまうものですが、近年ではどうしても「そこにそんな金をかけるのは経済的でない」という理由で省略されてしまうことが多いと思うのですよ。

絶対権力者の贅沢というのは、それぞれの仕事に対して、惜しみなくお金を払い、そのことで技術と美を支えてきたという面もあるのではないかなと、実は考えている私です。

職人たちが誇りを持って仕事をできる環境があることも、必要なんじゃないかなあと思うこの頃です。

コメントありがとうございました。
2013.08.14 19:16 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

おっしゃる通りです(笑)
ものすごく趣味の悪いのも、ありますよね。
あと、納得がいかないのは、ものすごいお金をかけて、風土に合わない建物を建ててしまう為政者やお金持ち。例えばアジアなのにベルサイユ宮殿の真似とか。隣の建物と合わない。

そういうものには、どう考えていいのか、困ってしまいます。

コメントありがとうございました。
2013.08.14 19:55 | URL | #9yMhI49k [edit]

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