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Posted by 八少女 夕

【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (16)命ある限り

ちょっと感無量です。最終回にたどりつきました。瑠水もまた、帰るべき所に帰り着きました。羽桜さんの素晴らしい挿絵とともに、最後の「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」をお送りします。追記にBGMと後書きがあります。お時間がありましたらそちらもどうぞ。

「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」を読むこのブログではじめからまとめて読む
あらすじと登場人物


この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物



樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(16)命ある限り


 病院を出ると、瑠水は家に帰らず、石材工房を探すためになつかしいあの街に向かった。あたりはほとんど変わっていなかった。工房もきっとあの頃からあったのだろう。でも当時は、消防士だった真樹自身もその工房には興味を示していなかったにちがいない。

 工房は直に見つかった。引き戸は開いていて、中で誰かが会話をしているのが聞こえた。瑠水は背中を見せている女性の張りのある笑い声に耳を傾けた。
「じゃあ、生馬さん、来週時間を取ってくれる?」

 瑠水は、動きを止めた。女性はシンに話しかけているんだ……。
「わかりました。よろこんで」

 忘れもしない真樹の声だった。そのひとのために喜んで時間を取るんだ。じゃあ、今、私が入っていったら、迷惑かもしれない。出直そう。瑠水は、黙ってもと来た道を引き返そうとした。だが、中にいた真樹は、瑠水の姿に氣がついた。
「瑠水!」

 瑠水は背を向けたまま立ち止まった。女性を店の中に残したまま、真樹は急いで出て来た。
「瑠水だろう?」

命ある限り by 羽桜さん
イラスト by 羽桜さん
このイラストの著作権は羽桜さんにあります。羽桜さんの許可のない二次利用は固くお断りします


 瑠水はゆっくりと振り返って真樹を見た。強い目の輝き。ほとんど変わっていなかった。ほんの少し、歳を取った。目尻にしわがある。前よりも落ち着いて見えた。作務衣を来て、歩く時に左足を引きずっている。瑠水はものも言えずに真樹を見上げていた。真樹の顔は喜びに輝いていた。あの時の氣まずさなどすべて吹き飛んだようだった。

 女性は、その雰囲氣を察知して中から出てくると、
「じゃ、来週、よろしくね」
と去っていった。

「いいの?」
瑠水は去って行く女性の背中を見ながら真樹に訊いた。

「あの人? オーナーの奥さんだよ。来週、売店の棚卸しの手伝いをしろって。君はいつ、島根に戻って来たの?」
「昨日。しばらくお休みなの。来月からこっちに転勤にしてもらったの」

「何をしているの」
「地質学協会ってところで働いている。種類は違うけど、やっぱり石の仕事よ」
「そうか」

 真樹は、しばらく黙ってみつめていたが、やがて訊いた。
「どうしてここがわかった?」
「次郎先生が、教えてくれたの。事故のことも……」
「あいつ、約束を破ったのか」

「次郎先生、病氣なの。とても悪いの。お墓に嘘を持っていきたくないって。私、シンがどうしているか知りたかった。あの時のことも謝りたかったし、それにシンが一番辛い時に側にいられなくて……」
「もう時効だろう。お互いに」
真樹は、昔のように瑠水の頭をなでて笑った。

 工房はあまり大きくないけれど、よく整頓されていた。勾玉やペンダントトップなどの納められた箱が大きな箱の中にいくつも並べられていた。

「それは、大社の前の土産物屋にいく分だ」
道具を洗ってしまいながら真樹は言った。いま加工しているのはもっと大きい彫刻のようなものだった。
「これは?」

「何だと思う?」
柔らかな青と薄緑色のグラデーションのかかった石だった。二人の男女が抱き合いながら上を見ている。水の中にいるようだ。なんてきれい……。
「水底の皇子様とお媛様」

「そうみえるか?」
「違う?」
「違わない」

 瑠水は、微笑みながら石に触れた。
「シンだけは、絶対に嗤ったり馬鹿にしたりしなかったわよね……」

「もう、いなくなっちゃったのか?」
瑠水はすっかり大人になっていた。都会の暮らしであか抜けて前よりもずっときれいになっていた。

「いいえ、樋水にはいつもいるわ」
「それを聞いて安心した」

 真樹は、全ての片付けを終えると、カーテンを閉めて戸締まりをした。
「店じまいだ。アパートに行って話をしよう」
瑠水は黙って頷いた。


 アパートは、まったく変わっていなかった。同じように適度に乱雑で生活の香りがした。結城拓人の都会的な高層マンションの部屋を思い出した。もう現実のものではない遠い夢みたい。瑠水は足下に落ちている新聞やTシャツをさりげなく拾った。真樹は肩をすくめるとCDの棚を指差した。
「何か好きなものをかけて」

 真樹は、キッチンに向かった。瑠水がCDの乱雑に入った棚を見ていると、向こうから声が聞こえた。
「ごめん。コーヒーが切れている。ほうじ茶しかない」
「構わないわよ」
この際、飲み物なんかどうでも。

 瑠水はようやく見つけたお目当てのCDをプレーヤーに入れようと、スイッチを入れた。中にはエリック・サティが入っていた。「あなたがほしい」そうね。これが私だったらいいんだけど。瑠水は大きく息をつくと、彼女にとっての大きな賭けをはじめた。プレーヤーを閉めて、再生ボタンを押した。ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。

 響いてくる最初の和音と一緒に、真樹が近づいて部屋に入ってきた。どんな顔をしているのか見る勇氣がなかった。呆れているのか、怒っているのか、それとも……。真樹はテーブルにお盆を置いた。恐る恐る顔をみると、真樹は笑ってもいなければ、怒ってもいなかった。ただ、瞑想するような真剣な表情だった。それから、黙って隣に座った。あの時のように、不必要に近く。けれど、あの時と違って、真樹は第二楽章の終わりまで悠長に待ったりはしなかった。


「これ、何?」
手を伸ばして、瑠水はベッドに彫られた文字をなぞった。- Dum spiro, spero.

「生きている限り、希望を持つ。キケロだそうだ」
真樹は瑠水の顔にかかった髪の毛に触れて言った。瑠水は目を丸くした。
「どこで習ったの?」

「次郎センセが教えてくれたんだ。あの時、病院のベッドでよほど絶望した顔をしていたんだろうな。ここに戻ってから、彫った。助けられたよ。くじけそうになると、これを唱えて堪えた。何もかもダメになったと思っていたけれど、時間が経ったら、歩けるようになった。新しい仕事も見つかった。またバイクにも乗れるようになった。それに……」
そういって真樹がキスをしながら覆い被さってきたので、瑠水はもう今日のバスには乗れないなと思った。

 帰宅が遅い瑠水を心配する摩利子が送ったメールが携帯で点滅していた。ひどく怒られるだろうし、呆れられるだろう。でも、きっとお父さんとお母さんは、祝福してくれるに違いない。ようやく私の皇子様にたどりついたのだ。


 携帯にメールが届いた。摩利子は東京の早百合から電話を受けているところだった。
「お母さん? 聞いているの? それで瑠水ったらね、私に何にもいわないで東京を引きはらっちゃったのよ。信じられない。あの結城拓人のプロポーズを断ったなんて。いったい何を考えているのかしら。ちょっと話させてよ」

 摩利子は、瑠水からのメールを横目で見て、眉をひとつ上げた。私には何が起こっているか明白だわ。

「早百合、瑠水は今夜は戻らないそうよ。シンくんのところに泊まるって」
「な、なんですってぇぇ? あの子、まだあのロリコン消防士と切れていなかったの?!」
「その言い方は、もうやめなさい。近いうちにあなたの義弟になるかもしれないんだから」

 早百合との通話を終えると、摩利子は瑠水にメールを送った。
「了解。シンくんに『龍の媾合』の時に命を救ってもらったお礼を忘れずに言いなさい」
これで、二人の恋路の邪魔はおしまい。それで幸せなら、勝手にしなさい。


 次郎を見舞うために、二人は総合医療センターに向かっていた。次郎は『あたらしい媛巫女さま』がようやく見つけた幸福を喜んでくれるだろう。バイクを走らせる真樹の後ろに座って、瑠水は樋水川の輝きを見ていた。『水底の二人』の幸福は、今や瑠水のものだった。

 遠い東京では、拓人が真剣にピアノに向かっている。真耶が喝采に応えている。瑠水はそれを感じることが出来た。

 この世界に満ちる特別な存在には、みながそれぞれの方法で仕えている。音楽で、神職として、病と闘いながら、水底にいることで、おいしいコーヒーと料理と笑顔で。瑠水と真樹も二人なりの方法で仕えることが出来る。この奥出雲で、風を感じながら。

 病室のベッドでは、次郎が肩で息をしていた。息をする限り、希望を持ち続ける。かつて、生馬真樹に語った言葉を、次郎は思い浮かべた。

 次郎には確信があった。あの二人は一緒になるだろう。千年前の瑠璃媛、この世で数年だけ一緒にすごした新堂ゆり、二人の媛巫女が次郎の前から姿を消して、彼自身の『妹神代』も去り、次郎の心は何度もくじけそうになった。けれど、樋水はくじけなかった。次郎の目の前で、新しい希望が育っていく。

 瑠水と真樹のカップルは、樋水の新しい至福の風になるだろう。そして樋水には、生まれ変わりかどうかに限らず、永遠に新しい媛巫女と背の君、そして至福の風が鎖として繋がり伝わっていく。そして、次郎もいずれ、あの瀧壺の底の歓喜の光に加わることが出来るだろう。次郎は希望に満ちて息を吸った。

(初出:2011年4月 書き下ろし)

追記


ここから先は、後書きです。でも、その前にこの回のイメージソングに使っていた曲を貼付けますね。大好きなMichael Bublé の曲の中でも一番好きな「Hold On」です。


Michael Bublé "Hold On"



「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」は、長編「樋水龍神縁起」本編を書き終えた翌月に一氣に書いた小説です。書いた順番としては、昨年発表した「大道芸人たち Artistas callejeros」よりも早く(といっても一ヶ月ですが)この世に送り出されたのですが、不特定多数の方に読んでいただくのは今回がはじめてです。

本編が構成と思想を優先させて書いた小説だったのに対して、こちらはほぼフリーハンドで書きました。そして本編が最終的に「カミ」の領域の話になったのに対して、こちらはあくまで「ヒト」の話として書きました。ヘタレで未熟なヒロインが大切なものを見つけるまでのストーリーですが、それと同時に彼女に関わった人間たちの変化の話、そして、変化する人間界と循環する「樋水」の世界の話でもあります。

この「樋水龍神縁起」シリーズを通して、つまり、書くために調べるという行為を通して、私は島根県や出雲を知りました。中学や高校の地理の時間に習ったような知り方ではなく、つまり詰め込まれた数ある知識の一部としてではなく、もっと強く意志を持ってかの地を知りたいと願って近づいたのです。そして、二度出雲を訪れ、すでに私にとってあの土地は東京に匹敵する近さで私の中に息づくようになりました。

それは私にとって神道や文化を含めた日本という国を知る事でもありました。日本を離れて、物理的には遠くなりながらも、この小説を通して私は以前にも増して日本人である事と、故郷を愛する氣もちを深く持つようになったのです。その意味で、このシリーズは私にとってものすごく重要なのです。

長い連載期間を通して、多くの方々からもったいないようなお言葉をたくさんいただきました。頼りなく右往左往するヒロインにもたくさんの励ましをいただきました。小説を書く喜びと小説を読んでいただく喜び、ブログっていいですね。

そして、このシリーズを通して、毎回素晴らしいクオリティで挿絵を描いてくださった、羽桜さんに心からの謝意を表したいと思います。羽桜さんのイラストのおかげて、超ヘタレヒロインにも、ちょっとありえないスーパーサブキャラにも、私が思った以上の好意的な印象を多くの読者の方に持っていただけたようです。面識もなく、描く義理もない私とこの小説のために、毎回、心を込めて新しいアイデアとともに描いてくださったこと、感謝してもしきれません。

最後に、長い間、この連載を楽しみにしてくださった貴重な読者様たちに、心からのお礼を言わせてください。「樋水龍神縁起」シリーズの現代もの作品は、これで一応終わりです。読んでくださり、本当にありがとうございました。
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Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
こんにちは。

まず読み終わってホッと一息。
胸に満ちる充足感を感じています。

長いようでいて、案外短かったのかな、ここまで辿り着くのも……
きっと、色々な思いが交錯して、想いに満ちていたから、密度が違ったのでしょうか。

瑠水は想いに迷って右往左往して、それでも自らにとっての一番を見つけられたことに安堵しています。
それは真樹にとっての幸せでもあるのですから、これほどの大団円はないでしょう。
拓人は恋愛についてはともかく、芸術家として一段上に行けたようですし、真耶はそんな彼とともに輝き続けるのでしょうね。



それにしても、なんというか真樹はとても心が広いというか……うん、詳しくは書かないで置こう。


素敵な物語をありがとうございました。
読者として、最後まで見届けることが出来て光栄です。

ではではてん
2013.12.04 08:32 | URL | #T7ibFu9o [edit]
says...
こんんちは、TOM-Fです。

更新、お疲れ様でした。
ついに完結ですね。おめでとうございます。
短時間で書かれた作品とのことですが、「樋水龍神縁起」のイメージを残しつつ、現代の人間の物語として書き上げられた本作のクオリティの高さに、あらためて感心しました。

瑠水と真樹の再会シーンは、もっと劇的なものを予想していましたが、お互いの反応が大人なものだったことに、驚きとともになにか納得するものもありました。それぞれ、年月を経て成長しているんですよね。
ラストは、希望に満ちたとても素敵なものですね。変化すること、成長すること、それは水が流れるように、自然なことなんでしょうね。そして、水はまた天に昇って、地に降り注ぐ。パスタやほうれん草を茹でながらほくそ笑んでいる、龍王さまの姿が思い浮かびました(笑)

素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました。

それから、八少女夕さんの日本に対する「思い」には、この国に住み続けている私たちには見えていない事柄がたくさん含まれているように思います。これからも、素敵な小説や記事を書いてくださいね。
2013.12.04 08:42 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
何だか、ほっとしました。大団円、まさにそんな感じですね。
『樋水龍神縁起』を書いたすぐ後にこれを仕上げておられたんですね。何だか、あの長編を書いた後で、これを書きたかった、書いておきたかったという夕さんのお気持ちが分かるような気がしました。
それはきっとこの小説の副題にすべて籠められているんでしょうね。
最後はやはり、みんなに分かりやすい形で希望を伝えたかった……そしてそれが自然な形で、直球で胸のここんところ(どこ?)にきましたよ!
素敵な物語をありがとうございました。
そう、2人の再会は想像よりもシンプルだったけれど、夕さんは再会自体よりも、物語の流れていく先、大きく動いている風を大事にされたんだなぁと思いました。

『この世界に満ちる特別な存在には、みながそれぞれの方法で仕えている。音楽で、神職として、病と闘いながら、水底にいることで、おいしいコーヒーと料理と笑顔で。』
この一文にちょっと泣けてきました。そうですよね。どんな形でも、みんなでこの世界を作っている、支えている。
素晴らしい言葉をありがとうございます。私も頑張るぞ!
2013.12.04 11:14 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

そもそも、こんなに引っ張るほどの最終回ではなかったのですが(笑)特に書いた方は、第一回から最終回まで、20日くらいで終了しているので。

そう、なんだかんだ言って主役の二人はお互いに望んでいた所に落ち着いたので、私の小説にしては珍しく大団円になりました。とはいえ、あまりに能天氣で終わるのが小っ恥ずかしかったので、最後にハッピーなんだかアンハッピーなんだか微妙な次郎の人生の話が来ています。

そう、真樹ね。ごく普通の男性なら「ふざけんな」かもしれませんね。この人、振られた直後の事故以来、かなり自分に自信をなくしていたので、瑠水が帰って来た事に舞い上がって細かい事には目を瞑っちゃったって事なんでしょうかね。

最後まで二人を見守ってくださり、そして拙い小説を読んでいただき、本当にありがとうございました。
2013.12.04 20:42 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

初回から最終回まで暖かいコメント、とても嬉しいです。

劇的な再会シーンとか、書けないかも(笑)
この再会シーン、本人たちはドキドキのはずですが、端から見るとあっさりしていますよね。
再会シーンにおけるヴィルみたいな強烈な行動は、やはり日本の風土には合わないような感じがするのですよ。でも、機をとらえてやる事はやっているようですが。

ええ、一番ニヤリとしているのは、やはりあの方でしょう。っていうか「当然」なのかも。こうやって戻って来たからには、瑠水は樋水龍王神社からのオファーを断れないし、真樹もその条件をのまないと瑠水と結婚させてもらえないと覚悟するだろうし、神社としては前回の背神代、妹神代よりも扱いやすいに違いありません。

日本への想いということでは、たぶん、高校生くらいの時にものすごく強くて、それからなんとなく薄れて、そして今また離れたから盛り上がっているというのはあると思います。あれでしょうか、普段一緒にいる三段腹の奥さんはいても、(実際にはたぶん三段腹になっているだろうけれど)もう逢う事のない初恋の○○子ちゃんへのほのかな憧れ、みたいな感じでしょうか。(どういう比喩だ)

今年のメイン長期連載、無事に終了しましたが、これからも頑張って書き続けていく所存です。応援のほど、よろしくお願いします。

長期にわたるご愛読と暖かいコメントの数々、ありがとうございました。
2013.12.04 21:22 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

そうなんです。変な言い方ですが、本編のあのラストを自分の力では変えられなかったので、代りに書いてみました、みたいな作品なんです。(なんだそりゃ)

初出の日付を見ていただくとおわかりいただけるかと思いますが、実は本編を書き終えたと同時に東日本大震災が起きてしまったのです。もともとネットなどで公開するつもりで書きはじめた本編でしたが、ラストが全くシャレになっていなくて、あの時点では公開を断念しました。で、十年間のブランクから復帰した勢いを止めたくなくて、ついでに本編のリベンジのつもりで怒濤のスピードで書き上げたのです。(その割にヘタレヒロイン)

この再会シーン、実は没作品の使い回しでもあります。もっと悲惨な事情があって逢いたくてもどうしても逢えなかった二人がいて、その想いの方がものすごく強い分、再会シーンが押さえたあっさりだったのですが、それを継承しています。空想で何度も願った再会、それが現実にならない苦悩を繰り返した二人には、再会シーンってかなりデジャヴなはずで、脳内で慣れている再会だからこそ、あっさりになるんじゃないかなと。

「この世界に満ちる特別な存在には……」の文では、拓人と真耶、タヌキ宮司、次郎、朗とゆり、そして一と摩利子を意識して書きました。瑠水は憧れの『水底の二人』や樋水龍王神社にこだわり過ぎて、あたりまえの世界の事を軽視していたけれど、真耶や拓人と出会う事で、世界との関わりについてもっと地に足の着いた考えを持つようになった、それが結果として「妹神代」への道になってしまうという皮肉はありますが、そういうことをこの外伝では書きたかったのです。だから、そこに何かを感じていただけてとても嬉しいです。

長い間のご愛読と、心に響くご感想、ありがとうございました。

P.S. 腰というか背中の一部ですが、痛みはだいぶ減ってきました。ご心配いただき、ありがとうございました。
P.S.2 コメントが承認なしで表示されるくらいしか特典ないんですが、もしお嫌でなかったらブロとも申請してくださいませ。なっていただきたいのは山々なのですが、お断りなさるのは心苦しいだろうという理由で、こちらからの申請は控えております。(もしそのつもりがなければスルーしてくださいね)
2013.12.04 21:59 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
子供だった二人が色々考え大人になって再会…
なんとも憧れる展開です
子供な私は拓人くん瑠水さんを見てあわわとなってしまいましたが///

そしてこの二人はこっちにも登場してたんですね
拓人くんざまああと誰かが言ってたような言ってなかったような
2013.12.12 10:06 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

ええ、こっちでもあわわな展開でございます(笑)
大人って! って、そういう話じゃなかったっけ。

拓人くん、いい面の皮でしたが、そんな彼にもいずれ春は来るのか?
っていうか、普段からやっている事が常春だからなあ。

コメントありがとうございました。
2013.12.12 21:27 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
コメントを書きにくるのがすっかり遅くなってしまいました><
読み終えたあと、なんだか感無量な余韻にひたりながらも
大好きなお話が終わってしまった寂しさを感じました。
思えば、私が最初(本編)から読ませていただくキッカケになったのが瑠水なんですよねぇ。
『水底の二人』
え?それ誰ー??ってとこからはじまり・・(笑)
瑠水に感謝です^^

「けれど、あの時と違って、真樹は第二楽章の終わりまで悠長に待ったりはしなかった。」
泣けるほどこの一文で伝わってくる・・。
私の中で、時が一気にさかのぼりましたよー。

瑠水も真樹も、けして遠回りしたわけじゃない。
たくさんの想いを知ることで(経験することで)大きくなった。
そして、次郎の「ぼくたちはみな、とても君のことを大切に思っていたんだ」って言葉。
とっても印象深く残ってます。
うんうん、そうだよねぇぇぇえ!! って。
『水底の二人』を知っているからこそ・・。
主人公だけではなく、登場人物の感情やその変化も、とても素敵なお話でした。

命ある限り。
うん、、うん。
水底の二人も、きっと祝福してる^^

んー。。 でも。。 でも。。
終わっちゃってやっぱり寂しいよぉ><
2013.12.26 04:08 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

ええ、いいんですよ、いろいろと大変だった時に、すみません!

最後まで読んでいただけてとても嬉しいです。
あ、そうだったんですね。「水底の二人」から興味を持ってくださった……。それはこっちを発表してよかったな。

「樋水龍神縁起」の世界は、十年間の創作ブランクの後に作り上げた、私の小説群の中ではかなり大きな世界なので、お氣に召していただけてとても嬉しいです。実をいうと瑠水はかなり「ついで」に近い感じで生まれてきた子で、「あたらしい媛巫女さま」なんてわりにはウルトラヘタレで、でも、ようやく自分を見つけて、ちゃんと待っていてくれた皇子様のところにたどり着きました。

> 「けれど、あの時と違って、真樹は第二楽章の終わりまで悠長に待ったりはしなかった。」

あちこちの作品に書いている本人がお氣に入りにして酔っている一文が所々にあるんですが、実はこれ、その一つでして、注目していただけてとても嬉しいです。

瑠水の右往左往も、真樹の辛苦も、樋水龍王神社に取り込まれて起こるこれからを考えると、やはり必要な道のりだったのだと私は思っています。次郎の経験、高橋夫妻の見てきたこと、その経験のもとで愛する人を守り、でも、最後は本人たちの決断に任せて見守って……。樋水の世界はフィクションですが、それでも現実の人びとも同じように月日を重ねているんじゃないかと思いながら書いていました。きっとakoさんはご自身のお子さんやお孫さんがいて、そういうことをもっとよく知っておられるんだろうなあと思ったり……。

いちおうこれで完結なんですが、でも、昨年TOM-Fさんに掘り起こしてもらって外伝を書いて以来、平安時代の方のキャラたちがけっこう勝手に動くようになってきたので、そちらの方でまた「樋水龍神縁起」ワールドが再登場するかと思います。また見かけましたら読んでいただけると幸いです。

コメントありがとうございました。
2013.12.26 21:07 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんわ。今日読了しました。
瑠水ちゃんと真樹君がハッピーエンドに収まってホッとしました。
とても後味の良い終わり方だったと思います。
軟派の拓人君も根はいい奴っぽいですね。
覚醒後の活躍もちょっと見てみたいです。
真耶さんは理想的なサブヒロインでした。
あとなにげに、瑠水のお父さんが男親なのに妙に寛大なところが面白かったです。

音楽が効果的に使われているのが印象的でした。
クラシック好きの消防士という主人公像は新鮮でしたね。
好感の持てるキャラだったので、最後は幸せになれて良かったなあと。
章の合間に音楽の動画が貼ってあるなんて何という親切設計でしょうか。

絵師さんの素敵な挿絵も入ったりして、豪華だなあと思いました。
瑠水の無垢なヒロイン像によく合った絵柄でしたね。

とにかく、素晴らしい作品をありがとうございました。
ヨイショする訳ではないですが、こんなにレベルの高い小説ブログは初めて見ました。
プロ並といいますか、下手なプロ作家なんかよりずっと上手いんじゃないかと。
色々と凄いと思います。
ただ、ブログ主様の作品を全体的に楽しむには、読み手にもある程度の教養や素養が求められるような気がします。高級な香りがするといいますか。
僕はあまり教養がないので(苦笑)、少しずつ八少女さんワールドに慣れていこうと思います。
それでは!
2015.10.04 16:06 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

わあ、最後まで読んでくださったのですね。それも、こんなに早く!


この話、「樋水龍神縁起」という長編の続編で、世界観や設定などの説明をすっ飛ばしているところも多く、戸惑われたんではないでしょうか。でも、投げ出さずに最後まで読んでくださって感謝です。

各キャラもお氣に召して、嬉しいです。
拓人と真耶は、他の作品にもちょくちょく顔を出していて
「大道芸人たち 外伝」というカテゴリーに入っている読み切り短編によく登場させています。
書きやすい二人です(笑)

ご指摘の通り、この作品は特にですけれど、私の小説のなかではクラッシック音楽がモチーフとして使われることが多いです。
このブログで一番読まれることが多い「大道芸人たち Artistas callejeros」という長編でもよくクラッシック音楽が出てきます。
もともとクラッシック音楽を聴いているうちに筋を思いつくということが多いので、そうなるのですけれど、技法など専門家でないとわからないことはでてきませんので、たぶんクラッシック音楽に興味のない方でも大丈夫のはずだと自分では思っています。
(だといいなあ)

ただ、この作品だけは、何曲かが筋に影響しているので、一応動画を貼りました。
ブログだと、そういうこともできるので便利ですよね。

イラストを描いてくださった羽桜さん、今はブログをお止めになってしまわれたのですが
交流を通して、一枚だけ描いてくださらないかと怖々お願いしたのです。
全く見ず知らずの者がお願いするので、とても心苦しかったのですが。
そうしたら、快く描いてくださっただけでなく、そのあと何枚も描いてくださって
しかも、全てが素晴らしいクオリティで、本当に感謝しています。

「レベルの高い小説ブログ」「高級な香り」とおっしゃっていただけるのは、本当にもったいないです!
どの作品も一生懸命書いていますし、けっこう歳も食っているので、それにふさわしい中身があればいいとは願っていますが、現実にはなかなか難しいです。でも、こうした過分なお言葉を励みに、これからも精進していこうと思います。また読んでくださるとのこと、とても嬉しいです。

これからもどうぞよろしくお願いします。

ご通読と、コメント、ありがとうございました。
2015.10.04 20:31 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんにちは、GTです :)

このチャプターを読んだら次週へ…と思っていたのですが、一気に読んでしまいました

あまりにも感無量すぎて言葉がうまく出てきません、瑠水ちゃんも大人になって…ちょっと寂しかったりしますが、二人はきっと末永く幸せに暮らすのでしょう

心がいっぱいと申しましょうか…自分でも驚いています、読んでよかったです

ではでは :)
2016.08.06 04:24 | URL | #mQop/nM. [edit]
says...
こんにちは。

あわわ、いろいろとお忙しい時に、ありがとうございます!

この小説そのものもけっこう一筆書きのようにあっという間に仕上げたものです。
一ヶ月ぐらいでしたかね。
あの時はブログも始めていなかったので、集中して書けたんですよね。思えば。
いずれまたしばらく閉店して、まとめて書くことが必要になるのかなとも思ったりしています。

この話は、「樋水龍神縁起」の結末がああだったので、そのかわりに書いたものです。
カミレベルではなくて、人間レベルでそれぞれが頑張って普通の幸せを目指す人たちを書こうと思ったんですね。
それが伝わったのなら、嬉しいです。

読了とコメントありがとうございました。

2016.08.06 10:55 | URL | #9yMhI49k [edit]

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