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【小説】追跡 — 『絵夢の素敵な日常』二次創作

Posted by 八少女 夕

scriviamo!


月刊・Stella ステルラ 3月号参加 掌編小説 二次創作 月刊・Stella ステルラ


「scriviamo! 2014」の第九弾です。山西左紀さんの今年二つ目のご参加は、大好きな『空気の読めない(読まないかな?)お嬢様』絵夢の活躍する「絵夢の素敵な日常」シリーズの最新作です。私の大好きな街ポルトを題材にした作品、私の写真も共演させていただいています。ありがとうございます。

山西左紀さんの書いてくださった掌編 絵夢の素敵な日常(12)Porto Expresso

山西左紀さんは、ブログでの小説交流をはじめたもっとも古いお友だちの一人で、私の作品にコメントをくださるだけではなくて、実にいろいろな形で共演してくださっています。先日発表した「夜のサーカス」のアントネッラと「もの書きエスの気まぐれプロット」のエスの交流や、「254」シリーズのコトリたちとうちの「リナ姉ちゃん」シリーズだけでなく、そしてこの「絵夢」シリーズでもArtistas callejerosと共演してもらったり、リクエストをして脇キャラストーリーをたくさん作っていただいたり、毎回無茶をお願いしてもちっとも嫌がらずに、ほとんどオーダーメードのように作品を書いてくださるのです。

今回の話は私の休暇の話からイメージをふくらませて書いてくださった、ポルトが舞台のお話。とてもよく調べてあって「本当に行ったことがないの?」とびっくりするくらい細かい所をご存知でした。で、せっかくなのでポルトの話を続けます。個人的にツボだったサキさんの作品の最後の一文からふくらませたしょうもないトーリーです。短いんですが、これ以上引き延ばすほどの内容でもないので(笑)左紀さん、キャラ四人まとめて貸していただきました。ありがとうございました。



「scriviamo! 2014」について
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追跡  〜 『絵夢の素敵な日常』二次創作
——Special thanks to Yamanishi Saki-san


 最高の秋晴れだ。幸先がいい。

 アパートを出て、最初に寄ったのはセウタ通りの菓子屋。何種類もの菓子パンやミニタルト。ばあちゃんに頼まれたものだけれど、アリアドスにつくまでに二つ胃袋に消えた。ここの坂は勾配がきつくて転げ落ちるみたいに小走りになる。たくさんの車が市役所前広場を通って、サン・ベント駅の方へと曲がっていく。僕も同じ方向へと行く。徒歩だから橋まではちょっとあるけれど、それでも渋滞中の車よりも早く着くだろう。

 リベルダーデ広場にはいくつものカフェの椅子とテーブルがでていて、観光客たちが眩しい陽光を楽しんでいる。通りの向こうには、赤や黄色の観光客用の二階建てバスが出発時間になるのを待っていた。真っ青な空、白い市庁舎、ドン・ペドロ四世の銅像。僕が生まれ育ったこの美しい街の誇りだ。

 経済の悪化とともにリスボンの治安はとても悪くなったが、ポルトガル第二の都市ポルトは危険なこともほとんどなく観光客の受けもすこぶるいい。だから、いつもたくさんの外国人が来て、旅を楽しんでいる。真夏はさすがにとても暑いけれど、さすがに過ごしやすくなってきた。

Porto


 今日は休みなので、僕は橋を渡ってワイン会社が軒を重ねる対岸へ行く。観光客のためにポートワインの試飲をやっているので、適当に混じるのだ。たぶん、もう僕が観光客じゃないのはバレていると思うけれど。でも、僕はちょっとだけ東洋人みたいな顔をしているので、彼らについていく。最近は中国人観光客の方が多いのだけれど、彼らは独特の騒ぎ方をして、僕は上手く溶け込めないので、日本人をさがす。あ、いた! あの三人は日本人っぽいぞ。

 一人は年配の女性、それから髪をツインテールにしたティーンエイジャー、そして髪が長くて綺麗な女性だ。妙なことに三人は英語で話している。年配の女性が二人をワイナリーに案内するらしい。しめしめ。上手く警戒されないくらいに近くに行って、試飲のご相伴に……。

 そこで僕は妙なことに氣がついた。僕よりも三人に近い位置に、妙な黒服の男がいる。やはり東洋人だ。三人の連れではないようなのだが、男はじっと例の若い女性の方を見ている。年配の女性が何かを説明するために立ち止まったら、そいつもぴたりと止まった。なんだあいつ、あの三人、いや、あの女性を付けているのか?

 三人の誰もあいつには話しかけないから、知り合いじゃないだろう。大体、コソコソ付けているなんて普通じゃない。あの服装は、いかにもマフィアらしい! 東洋人なのは変だけれど、日本にもマフィアはきっといるんだろう。僕はどうしたらいいんだろう。このままにしておいたら、近いうちにあの女性は誘拐されるかもしれない。そうだ、ワインでほろ酔いになるのを待っているんでは。このままにしておいたら彼女が危ない!

 僕は男が女性に意識を集中しているのをいいことにそっと近づいた。そして一氣に足にタックルして男を突き倒した。そして反撃されないよう、全力でふくらはぎに抱きついた。

「うわっ!」
男は情けない声を出した。それを聞いて、周りの観光客と一緒に例の三人組もこちらを振り向いた。すぐに行動を起こして駆け出したのは例の女性だった。
「山本!」

「何、何が起こったの?」
年配の女性が叫んだ。あれ、ポルトガル語だ。この人、もしかして日本人じゃないの?

 日本語で何かわめく男と、びっくりして助けに来る女性、それに年配の女性の言葉で、僕はわけがわからなくなってきた。

「あんた、いったい、何やっているのよ」
腰に手を当てて、両足を肩の広さに広げてツインテールの女の子が言ったので、僕はしぶしぶ彼のふくらはぎから手を離した。

「こいつが、その人を尾行していたみたいだったから」
「尾行じゃないわよ、警護でしょ! だいたい、あんた、どこの子なのよ」
「え……」

 どうやらこの男はこの人たちの知り合いみたい。じゃ、マフィアが誘拐しようとしているってのは、僕の勘違い?
「その人の誘拐を企むマフィアだと思ったんだ」

 僕の説明を年配の女性が訳してくれて、一同はどっと笑った。きれいな女性は僕の頭を撫でて
「助けてくれようとしたのね、ありがとう」
と言った。

「私は絵夢。はじめまして。こちらは、メイコにミクに山本。あなたは?」
女性が順番に紹介してから、僕に手を差し出した。僕は助けてもらって立った。そしたら彼女の胸までにも届かない背しかなかった。

「僕、ジョゼです。この近くの小学校に通っています」
「地元の小学生が、こんな所で何してんの?」
ミクが痛い所を突っ込んでくる。ポートワインの試飲の話をしたら、四人は目を丸くした。
「一緒について来てもいいと言いたい所だけれど、ワインはダメよ」

 それでも、四人は僕を川岸の眺めのいいレストランに連れて行ってくれた。大人三人はポートワインで、そしてミクと僕は絞りたての葡萄ジュースで乾杯した。こうして僕には、新しい友だちができたんだ。

(初出:2014年2月 書き下ろし)
.17 2014 scriviamo! 2014 trackback0
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comment

says... "こんばんは!"
押しかけのような作品に二次創作をしていただくとは!
感激です!ありがとうございました。
とっても嬉しいです。
やっぱり、実際にポルトに滞在されているので描写が生き生きしますねぇ。
サキも行ってみたかったなぁ。
オリキャラのジョゼ、とっても可愛いですね!下町に住むいたずらっ子の雰囲気、正義感だけは満載でとても微笑ましかったです。
山本は災難でしたが良い経験と、普段の出張には無い楽しい思いをしたんじゃないかと思います。
昼食?にポートワイン付きですからね。絵夢の配慮があったのかもしれませんね。普段なら目につくことはないと思います。
え?そういえばジョゼは未成年ですよね。なんとなくポートワインの試飲に出かけても、違和感を感じませんでした。
3人が英語で会話していること、メイコが驚くとポルトガル語のなること、ミクの腰に手を当てるポーズ、ミクはポルトガル語で質問してるんですよね。想像するだけで楽しくなってしまいます。
短いですけれど、最初から最後までワクワクドキドキ、ずっとしっぱなしの楽しいお話しでした。
サキ専用に書いていただいたような、エッセンスたっぷりの、とっても嬉しい作品でした。
本当にありがとうございました。
ポルトの5人の様子が頭に浮かんで、今夜は眠れそうにありません。
2014.02.17 14:18[edit]
says... ">>サキさん"
こんばんは。

結局今年もポルトに行くことになってしまい、ちょうどホテルを決めるために地図をずいぶん眺めていた所でした。そうすると、去年行った所が記憶に甦ってきて、ばっちり使えましたよ。

山本にタックルしてしまい、お怪我がなかったか心配です。ポルトガルはもちろん、スイスでも車を運転しない人は昼間っからお酒を飲んでいますので、メイコとしてはランチでも「ワインを注文しましょう」となるように思います。もっとも山本は「どうか黒磯さんにはご内密に」と祈っていたりして(笑)

ジョゼはお酒を飲める年齢の青年にしてもよかったのですが、そうするとタックルできないし、それに山本に後ほど警戒されちゃうので小学生にしてみました。たぶんミクの年齢の欧米人だと一杯くらいのポートワインはOKのはず(もっともミクは日本人で、アルコールを分解する酵素がないはずなので、大人になるので飲まない方がいいでしょうね)ですが、小学生はヨーロッパでも完全にアウトです。でも、きっと家で親がちょっと飲ませているんでしょうね。まさか、味をしめて試飲に行っているなんて夢にも思わないで。

小学生にしたので、ジョゼは英語がよくわかりません。日本語はもちろん。だから、メイコとミクがポルトガル語で会話して絵夢と山本に通訳をしてくれたということにしてあります。だからミクのセリフの二人称が日本語なら言わないだろう「あんた」になっています。

深い内容も何もないお遊び作品ですが、ポルトでの休日を楽しんでいただけるといいなと思っています。また、次回、ここでのコラボがあるとき用に、三月のポルトではまた現地取材をして来ようと思っています。

ご参加、ありがとうございました!
2014.02.17 21:00[edit]
says... ""
みんなでレストランいいなあ
川を眺めつつゆったりと…
私も鱈を干してフライにするの試してみようかな?
家で食べても雰囲気は出なさそうですが

リスボンはやっぱり大変なんですか?
2014.02.18 09:35[edit]
says... ">>ダメ子さん"
こんばんは。

ポルトガルは物価も安いので、レストランでも美味しいものがたくさん食べられますよ。

アジの開きみたいな、美味しいものもありますからねぇ、日本には。けっこう近いかも。
焼いたアジの開きをほぐして、ボテトコロッケに混ぜたらかなり近い味になるかも。
ビールだけでなく、ご飯も進むかもしれません。

リスボンはちょっと治安がいまいちだそうです。
日本人は歩きスマホしたりブランドもののバックもって歩いたりしてるので狙われるって聞きましたよ。
ポルトは夜でも危険って感じはなかったですし、治安はだいぶ違うみたいです。

コメントありがとうございました。

2014.02.18 22:52[edit]

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