scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

何も予定のなかった日々

「アフリカの話」カテゴリーをずっと放置していましたね。久しぶりに戻ってきました。あのアフリカ旅行は、多くの意味で私の人生のターニングポイントになったのですが、その一つが「ただ心と体を休める滞在」という体験でした。

ハイビスカス

それまでの私は、いわゆる休暇というものの意味をわかっていませんでした。休暇というのは休むためのものです。でも、たとえば「十日も休みがあるのだから旅行に行かないと」「海外に行ったんだから観光しないと」という具合に予定を入れてしまっていたのです。さらにいうと「せっかくの機会に何もしないのは怠惰だ」という強迫観念にさらされていたのかもしれません。

ムパタ塾を終えて、一人旅でアフリカを周ることにした時も、せっかくアフリカにいるのだから何かをしたいと思っていました。でも、もちろん自分で行き当たりばったりで周るほどには無謀でなければ、それが出来るほどの知識があるわけでもなかったので、いくつかの希望を言って現地の旅行会社の方(日本人)にアレンジしていただいたのです。ジンバブエやザンジバル島にも行きましたが、それ以外にケニアでしばらく過ごしました。日本人のお宅にお邪魔して滞在させていただいたりもしたのですが、リゾート・ホテルに泊ったりもしました。

わざわざアフリカに来てリゾートホテルと思うかもしれませんね。私も思いました。でも、ナイロビは安宿に泊れるような治安ではなかったですし、泊ったとしてもやはり危険で現地の人なしには外には出られないのですよ。で、たまにはいいかとウィンザーホテルというリゾートホテルに泊まる事にしました。ここはゴルフリゾートなんですが、私は一人だしゴルフもしないので、はっきりいって何もやることがないのです。

ムパタ塾でお世話になった方が「これ、面白いからヒマなとき用に」と貸してくれたのが、先日ご紹介したクィネルの「燃える男」をはじめとするクリーシィシリーズでした。で、私は庭を散歩するか、この本を読むか、レストランに食事に行くか、そうでなければお風呂に入るという二泊三日を過ごしたのです。ずっとシャワーしかなかったので、バスタブは嬉しかったので、九回も入りました。

今のようにスマホやタブレットなんかありませんでした。ブログもやっていませんでした。家族との連絡はこちらが一方的に送りつけるハガキだけなので、リアルタイムでは誰ともコンタクトできません。もっというとコンタクトしなくてはならないプレッシャーもなかったのです。

そのときに、これまで自分がどれだけ必要のない「予定」というものに追い回されていたのかわかったのです。好きなだけ眠っていい、好きなだけお風呂に入っていい、誰とも連絡が取れないし、取らなくてはいけないと心を砕くこともない。たった三日でしたがそのリフレッシュ効果は考えてもいなかったものでした。

やがてスイスに来るか、日本で暮らすかという決断をする時に、私は便利で「やることの選択には困らない」東京よりも、平和で何もないスイスの田舎生活を選択しました。

現在の私の生活は、それまでと同じように、仕事をして、家事をして、それから余った時間で創作をしてという、かなり詰まったスケジュールです。健康に恵まれ、チャンスもずいぶんたくさん与えてもらったおかげで、「やることがない」状態や「やりたくても何も出来ない」状態になったことはほとんどなく、普段はやるべきことで埋まっています。だからこそ、週末や休暇の過ごし方だけは必要以上に追われずにのんびりできることを優先するようになりました。

土日ごとに何をしようかと考えることはありません。新刊情報や新製品、話題のドラマもここにはありません。代わり映えのしない田舎ですが、私には必要でない予定には追われない生活のほうが幸せに思えるのです。それを氣づかせてくれたのは、いま思えばあの何も予定のないホテル滞在でした。あの体験が、私の世界を変えるきっかけとなったのかもしれないなと思うのです。
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Comment

says...
私も暇があってもつい何かしなきゃと思ってしまうことが多いです
インターネットがあると特に…
結局何もたいしたことはせずに終わるのですが

心からゆっくり過ごすのが一番有意義な時間の使い方なのかもですね
2014.05.21 11:10 | URL | #- [edit]
says...
休んでいると言いながら、結局何かをしている、よくあります。というよりも、そればっかりです。
休んでいるようでいて、休んでいない。手許に何かがあると、ついついそれに手を出してしまいます。
本当の意味での休日、日本人の最も苦手とすることですよね。

私の場合も……まさに休みの日は休みの日であれこれすることを自分で作っちゃっていますし。
(いや、でも、最近は気ままに庭仕事をして、気ままに三味線を叩いているかも。)
本当に周りに何もないところに行って、そこで何もしないって、ほんと、難しい。もしできたとしても、あれこれ考えすぎちゃって、結局休めなくなったり。
う~ん。悩ましい問題です。

旅行も、頑張りすぎちゃっていることも多いなぁ。もっとも、最近は出張にくっつけてしか休みを取れないので、それも悪いかも。以前みたいに、海外で何もしない旅行をしたいなぁ(観光はするけど、基本滞在型)。

でも、こうして夕さんが素晴らしい時間を過ごされたことは、今の夕さんの糧になっているのですね。
2014.05.21 16:17 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

iPhoneを持つようになり、海外のホテルでもフリーのWifiが標準になってきたので、もうだめですね。ああいう隔離された時間はもうほとんど過ごせないかも。

心ゆくまで思索にふけるというのは、なかなか貴重な体験でした。
今度はどこかの砂漠あたりでやるしかないですね。

コメントありがとうございました。
2014.05.21 18:55 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

そうなんですよ。日本人の休日は「予定を入れること」なんですよね。
「たった十日の休暇でなぜ五カ国も?」とこちらでは呆然とされますが、じっとしていられないんですよね。日本人的には。

「大道芸人たち」に出てきたセビリアの近くのカルモナという街に一週間滞在した時、セビリアからバスに乗ろうとしていたら日本人に偶然会いました。セビリアに二泊なんだけれど、セビリアだけじゃもったいないので「白い町」を観るために半日でカルモナに行こうとしていました。ああ、日本人的な発想だと思いました。

いくつ名所を回れるかって、ゲームみたいになっちゃっているじゃないですか。また、たとえば出張で大分まで行ったら湯布院まで行っちゃおうみたいな無理もしがちで。その分、なんでもないカフェにぼーっと座っている方が体は休まるのに頑張っちゃって、ゴールデンウィークも人ごみや渋滞との戦いみたいになって。

で、こっちに来てから、ヨーロッパ風にすることにしたのです。毎年三月の旅行は一週間なので、行く所は一カ所にして、同じホテルに連泊する。そして、観光などをほとんどせずにぼーっと座っている日を何日も持つ、みたいに。

でも。日本に帰ると、なぜか日本式に忙しく動き回っています。日本人に戻っちゃうみたい。だから、日本に帰国する時はいつも疲労困憊です(笑)

コメントありがとうございました。
2014.05.21 20:36 | URL | #9yMhI49k [edit]

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