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Posted by 八少女 夕

【小説】樋水龍神縁起 東国放浪記 - 秘め蓮

月に一度発表する読み切り短編集「十二ヶ月の野菜」の八月分です。このシリーズは、野菜(食卓に上る植物)をモチーフに、いろいろな人生を切り取る読み切り短編集です。八月のテーマは「蓮根」です。というのは、ちょっとこじつけ。じつは「ユズキさんのイラストにストーリーつけてみよう」企画の方がメインです。今回お借りしたのは、美しい蓮の花。

ユズキさんの記事 「蓮の花絵フリー配布

六月に拝見したときから、ぜひ使わせていただきたいと思っていたんですが、蓮は難しいですね。「桜」と「三色すみれ」のときのように氣軽には使えず、悩みに悩んでこの話を創り出しました。この作品は、「樋水龍神縁起」のスピンオフです。平安時代編。男の二人旅の話。行き詰まっていた時に、助け舟を出してくださったのは、ウゾさん。「大和高田市奥田の蓮取り」という素晴らしいヒントをくださいました。本当にありがとうございました。

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樋水龍神縁起 東国放浪記
秘め蓮


 蓮の葉が広がる池だった。風が細かい水紋を起こした。次郎は故郷を思い出した。遠く離れ、戻るあてもない。深い森の奥に俗世界から守られるようにして記憶の中の池はあった。正面に瀧があり、常に清浄な氣に溢れていた。彼はそこに住む神聖なるものを見ることができた。それは、常にそこにいた。彼が生まれる前から。

 神社付きの郎党であった次郎は生まれてからずっと出雲国から出たことがなかった。今、彼が仕えている主人が彼の住んでいた神域にやってくるまで。次郎は馬の手綱を握り直して、馬上の主人を見上げた。主人は何も言わずに目の前の池に目をやっていた。彼もまた思い出しているに違いない。樋水の龍王の池と、その池のほとりに住んでいた御覡を。彼のせいで命を落とした媛巫女を。

「春昌様。あちらに小さい庵がございます。そろそろ今宵の宿を探した方がようございます」
次郎が話しかけると、安達春昌は黙って頷いた。

 池のほとりにある庵は村から離れて寂しく建っていた。よそ者を快く泊めてくれるかどうかはわからぬが、そろそろ陽は傾きだしている。次郎は庵の戸を叩いた。
「もうし」

 誰かが出てくる氣配はなかった。中から苦しそうな咳が聞こえる。次郎はどうしようかと迷い、馬上の春昌を見上げた。主人が次郎に何かを言おうとしたとき、馬の後ろから声がした。

「何かご用でございますか」
二人が振り向くと、泥だらけの誰かがそこに立っていた。声から推測すれば娘のようだが、そのなりからは容貌もほとんどわからなかった。

「旅の者でございます。一夜の宿をお借りできないかとお願いに参りました」
次郎が丁寧に申し出ると、娘はそっと馬上の春昌を見上げた。

 安達春昌の服装は、大して立派とは言えなかった。かつて次郎がはじめて春昌に逢った時は、右大臣の伴をして奥出雲にやってきただけあり、濃紺の立派な狩衣を身につけた堂々たる都人であった。が、道を踏み外し流浪の民となってから数ヶ月、狩衣の色は褪せ、袴もくたびれていた。もっとも、都を遠く離れたこのような村では狩衣を身に着け郎党を従えた男というだけで、十分に尊い貴人であった。そして、娘が驚いたのはまだ年若いと思われるその男の何もかも見透かすような鋭い目つきであった。

 娘は慌てて春昌から眼を逸らすと、頭を下げて「ばば様に訊いてまいります」と中に入っていった。娘の抱えている緑色の束から、微かに爽やかな香りがした。

 ほんのわずかの刻を立ち尽くしただけで、二人は再び娘が玄関に戻ってくる音を聞いた。娘は狭い土間にうずくまり頭を下げた。
「病に臥せっている者がおり、狭く、おもてなしが十分にできませぬが、それでよろしければどうぞお上がりくださいませ」

「お心遣い、感謝いたします」
春昌が言うと、次郎も深々と頭を下げた。

 次郎が馬をつなぎ、荷を下ろしてから家の中に入ると、春昌は案内された小部屋ではなく、隣の媼が伏せている部屋にいた。

「春昌様」
次郎が声を掛けると春昌は振り返った。
「次郎、頼まれてくれぬか」
「なんでございましょう」
「林の出口付近に翁草が生えていた。あれを三株ほど採ってきてほしい。汁でかぶれるので直接手を触れぬようにいたせ」
「はい。しばしお待ちくださいませ」

 娘は、目鼻がわかる申しわけ程度に顔と手を洗って媼の横たわる部屋にやってきたが、先ほどまで苦しそうにしていた老女のひどい咳が治まっているのに驚いた。客は媼の手を取り瞳を閉じて何かの念を送っているように見えた。

 半時ほどすると、馬の蹄が聞こえて、次郎が戻ってきたのがわかった。郎党は足早に上がってきて、部屋の入口に座り懐から紙に包まれた翁草を取り出して主人に手渡した。春昌は立ち上がって娘に言った。

「これを煎じたい」
「でも、それは……」
娘は困ったように春昌を見つめた。
「わかっている。この草には毒がある。毒を薬にする特別な煎じ方があるのだ」

 娘は頭を下げると春昌を竃の側に案内した。娘は春昌が慣れた手つきで翁草をさばき、花や根を切り捨てるのを見た。それから何かをつぶやきながら、今まで見たこともない方法で葉と茎を煎じるのを不思議そうに見た。彼はそれから煎じ液の大半を捨て、水を加えて再び煮立てた。それを何度か繰り返し、見た目には白湯と変わらぬ煎じ薬を茶碗に入れると、再び媼のもとに戻った。

「さあ、これをお飲みなさい。今宵は咳に悩まされずに眠れるでしょう」
媼は黙って薬を飲んだ。娘は再び驚いた。翁草には毒があるので触ったり食べたりしてはいけないと教えたのは他ならぬ老女自身だったから。普段一切よそ者を信用しないのに、今日に限り従順になったのはなぜだろうと訝った。老女は春昌に耳を近づけてようやく聴き取れるほどの声で礼を述べると横になり、次の瞬間にはもう眠りについていた。春昌は何もなかったかのように立ち上がり、自分たちにあてがわれた小さな部屋に戻った。

 娘は若い蓮の実とできはじめたばかりの蓮根を洗って調理を始めた。そしてわずかに残っていた粟とともに粥にした。それから二人のもとに運んで言った。
「こんなものしかございませんが、どうぞ」

 春昌は手を付けずにその粥をじっと見ていた。
「いかがなさいましたか」
「この蓮は目の前の池のものですか」
「はい」

「春昌様?」
次郎が不思議そうに見た。主人は不安がる郎党を見て少し笑った。
「素晴らしい蓮だ。次郎、心して食しなさい」

 それから娘を見て言った。
「明朝、この蓮を穫った場所へご案内いただけますか」
娘は「はい」と答えて粥をかき込んだ。春昌が椀に手を付けたので、次郎もほっとして箸に手を伸ばした。娘は客人を待たずに食べだしたことにようやく氣がつき赤くなった。次郎は貧しく泥まみれの娘を半ば氣の毒そうに、しかし半ば軽んじて見やった。

* * *


 明け方に次郎は隣の間から聞こえてくるバタバタした音で目を覚ました。身を起こすと、春昌はすでに起きて身支度をし夜が明け白んでくる蓮池を見やっていた。

「もうしわけございません」
慌てて次郎が起き上がると春昌は振り返った。
「よい。あの蓮が効き、よく休めたのであろう」

 急いで身支度をしながら次郎は主人に訊いた。
「あの蓮は何か特別なのでしょうか」

 陰陽師である主人はわずかに微笑みながら答えた。
「そなたもあの波動は感じたであろう。五色の氣は見えなかったか」
「五色? いいえ。普通の蓮よりも強い氣を発しているのは感じましたが。穫れたて故、あれほど美味なのかと思っておりました」

 次郎が袴の紐を絞ると同時に、部屋の外から娘の声がした。
「お目覚めでしょうか」

 次郎が破れかかった障子をそっと開けると、昨日の汚れが乾いたままの様相をして、娘は頭を下げた。
「お早うございます。よくお休みになれたでしょうか」
「ああ。礼を申す」
そういって春昌は娘が横に置いた籠に目をやった。
「池にいくのか」
「はい。もし、よろしければどうぞご一緒に」
「ぜひ見せていただこう」
立ち上がった春昌の後を、次郎は慌てて追った。

 ようやく昇りかけている朝日を浴びて、蓮池は霧を少しずつ晴らしている所であった。樋水の龍王の池にも劣らぬ清浄な氣を感じて、次郎は身震いをした。昨夕は全く感じなかったのに一体どうしたことであろう。

 娘が庵と反対側にある非常に多くの蓮の葉が集中している所に来て、そっと薄鴇色の花を指差した。

蓮の花 by ユズキさん
このイラストの著作権はユズキさんにあります。ユズキさんの許可のない使用は固くお断りします。

 それは明らかにただの蓮の花ではなかった。二輪の花が並んで咲いている。その花の周りに次郎にもはっきりとわかる強い氣の光輪が広がっていた。赤、青、黄、紫、そして白。よく見るとその二輪の花は一つの茎からわかれ出ていた。次郎は思わず息を飲んだ。春昌は何かを小さくつぶやいていた。

「奥田の香華……」
「春昌様?」
「わが師は賀茂氏であった。大和国葛城に戻られる時にはよくお伴をしたものだ。一度、奥田の捨篠池に私を伴われたことがあった。その時に、かの役行者と縁深き一茎二花の蓮花は、失われたのではなくいずこかに今でもあるはずだとお話しくださったことがあったのだよ」
「役行者の蓮でございますか?」

「かつて尊き五色の霧をともなった神の蓮がかの池を覆っていたというのだ。言い伝えでは役行者の母君が金の蛙に篠萱を投げつけて、その目を一つ射抜いてしまい、それ以来、一茎二花の蓮も普通の蓮になってしまったということになっている。わが師は、珍しくて尊い花ゆえ人びとが競って朝廷へ献じたために、失われてしまったのであろうとおっしゃっていた」

「いま見ているこの蓮が、その尊き花なのですね」
「そうだ。最後の花の種はどこか、都人の口の端に上らぬ所に隠されたとおっしゃっていた。あれはここのことだったのだ。見よ、何と美しいことか」
「朝廷に奏上した方がいいのでしょうか」
次郎がいうと、娘は怯えたように二人を見た。

 春昌は首を振った。
「同じ間違いを犯してはならぬ。私は師の期待を裏切り、慢心し、決して失われるべきではない尊い神の宝を死なせてしまった。神がここに咲かせた花は、ここで咲かせるべきだ。そうではないか」

 娘は泥池の中に入り、蓮根と、花の終わった青い花托をいくらか収穫してきた。泥に汚れ、またしても男だか女だかわからなくなってしまった娘を、次郎は少し呆れた様子で眺めていた。だが、特別な蓮の花托を抱えているせいなのか、次郎にもわずかに見えている娘の氣は、朝の光の中でやはり五色にうっすらと輝いて見えた。次郎は思わず目をこすった。春昌は口先でわずかに笑った。

 庵に戻り、出立の支度をしていると、再び娘がやってきた。
「ばば様が目を覚まし、旦那様にお礼を申し上げたいそうです。お邪魔してもよろしいでしょうか」
「まだ起きるのはつらいであろう。私がそちらへ行こう」

 隣の間で布団の上に起き上がっていた媼が、春昌の姿を見てひれ伏した。
「何とお礼をもうしていいやら。息をするのも苦しく、幾晩も眠ることもできませんでしたのに、嘘のように咳も苦しさも治まりました」

「呪禁存思にてそなたの体内に流れていた風を遮った。翁草は滅多にしない荒療治であったが効いたようで何よりだ。そなたたちが同じことをすると危険ゆえ、代わりに大葉子を煎じて一日に三回飲むようにするとよいだろう」
「あなた様は、いったい……」

「道を踏み外し、名を捨てた者だ。だが、心配はいらぬ。わが呪法は京の陰陽寮で用いられているものと同じ。暖かきもてなしと、神の蓮に逢わせていただいた礼だ」

 それを聞いて媼はびくっとした。春昌は媼をまっすぐに見据えて続けた。
「尊き蓮を守られるご使命をお持ちですね」
「はい。私は、かの蓮をさるやんごとなきお方よりお預かりし、時が来るまでここで泥の中に隠すように申しつかっております」

「賀茂氏のご縁のお方か」
「はい」
「では、蓮を受け取りにこられる時に、安達春昌より心からの恭敬と陳謝の意を伝えていただきたい」
「承知いたしました。必ず」

* * *


 媼と娘に別れを告げて、二人は森を通りさらに東に向かった。
「春昌様。お伺いしてもいいでしょうか」
次郎は馬上の主人を見上げた。

「なんだ」
「いずれはあの蓮の花を、陰陽寮の方がお引き取りにお見えになるということなのですか?」
次郎は、媼と春昌の会話の意味が半分も分かっていなかった。

「蓮の花ではない」
「え?」

 春昌は次郎を見て笑った。
「そなたも氣がついたと思ったのだが」
「え? 何をでございますか」

 春昌は前を向いた。
「あの娘だ。あれは特別な女。おそらく三輪の神にお仕えする斎の媛にするつもりなのであろう。師も苦労の絶えぬことだ。蓮のように泥の中に隠さねばならぬとは」
「泥の中に隠す?」

「あの娘を湯浴みさせ、髪を梳き、それなりの館にて育てたら、その美しさにたちまち噂が広がり、やれ我が妻に、やれ皇子様の后にと大騒ぎになるはずだ。あれは蓮女パドミニ だからな」
「ぱどみに? それは何でございますか」
「天竺では女を四つに格付けしているのだ。下から象女ハスティニ貝女シャンキニ伎女チトリニ 、そして滅多にいない至高の存在が蓮女パドミニだ。清浄で見目麗しく香わしいだけでなく、褥の中で男を天上に連れゆく性をも生まれながらに持っている」

 次郎は目をしばたたかせた。なぜそれを昨夜教えてくれなかったかと、つい言いそうになったが寸での所で留まった。

 次郎も、もう一人の至高の女を知っていた。やはり神に捧げられた尊い媛だった。ひと言も口にせずとも、主人が何を想っているかがわかる。春昌にとって生きることと旅をすることは、償いであり神罰でもあった。彼はいくあてもなく彷徨うしかない存在だった。

「ゆくぞ」
木漏れ日の中を馬上にて背筋を伸ばし進んでいく主人の色褪せた狩衣を追い、次郎は再び歩き出した。

(2014年8月書き下ろし)
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Tag : 小説 読み切り小説

Comment

says...
夕さんの平安ワールド、短い物語の中にもどっぷりと浸らせていただきました。
ほんとうに、夕さんの引き出しの多さには頭が下がります。
これはいつぞや書きたいと言っておられた春昌と次郎の道行き、のひとつなのですね。
蓮の花と蓮根に籠められた色々な意味や思いが感じられて、一気に時代を遡った気がしました。

このお話って、特に何かはっきりと書いているわけでもないのに、どこかしらに色気がありますよね。泥まみれの女性が泥の中に入って蓮根を採っているだけなのに、何となく色香が……と思ったらそういうことでしたか。
春昌にはちゃんと見えるのですね。
でも、彼には苦しい道行ですよね。次郎にも。
あ、でも、このお話、春昌の高貴さと次郎のちょっと俗物的な対比も書かれていて、そこもミソです。

12月の野菜シリーズに平安時代が出てくるとは思わなかったので、その時点でやられたって感じでした(^^)
2014.08.10 05:48 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんにちは。

いや〜、「十二ヶ月の野菜」かなりもがいているのですよ。
そうそう簡単にネタが転がっているわけではなく……。
で、本来は独立して書こうと思っていた話に蓮根が入っているのをいい事に。
「東国放浪記」も次があるかわかりませんし、次を書いたら独立カテゴリーにすればいいや、みたいな。

もともとはユズキさんの絵をどう使わせていただこうかという所から始まりまして、イメージがインドのラクシュミーだったんですね。聖なるものと性的なものが一致する世界。で、「scriviamo! 2014」の時に登場させたマハーマーユーリーの再登場にするか、それとも「樋水龍神縁起」かなあと。で、こうなりました。

この「東国放浪記」シリーズの構想は「今昔物語」を元ネタにして二人の放浪の旅を書こうというものなのですが、まだそれ以上決まっていませんでした。で、今回が初のお目見えで、ネタとなる話を探したんですが、ぴったりくるものが見つからず、困って泣き言を書いたらウゾさんがいいネタを教えてくださったのです。

設定として春昌と次郎、両方とも「見える者」なのですが、その力に格段の差があって、春昌(や瑠璃媛)にはバッチリ見えているけれど、次郎にはぼんやりとしかわからない、ということにしてあります。今回は次郎視点にしているので、春昌の葛藤みたいなものは全く表に出ていませんが、この人はもともとコンプレックスの固まりで野心家な上、いわゆる生命力もものすごく強くてこの特別な蓮や、特別な女を見てどうにかしたいと思ってしまう衝動はとても強いはずです。でも、自分のやってしまった事を思い出してそれを押さえつけている。その点、次郎はかなりストレートにいられる立場ですかね。よく見えないというのも、この人の場合ラッキーなのかも。なんて裏設定を持ちつつ、この話をそのうちに書こうかな〜、と思っています。

また出てきたら、応援していただけると嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2014.08.10 10:03 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
この独特の平安の世界観も面白いですね。
現代にある源氏物語みたいな感じがして。
少女小説に近いものがあるんですかね。
煎じ方で毒にも薬にもなる。
それは今の薬でも同じことですね。
怖いものです。
2014.08.11 00:31 | URL | #- [edit]
says...
「十二ケ月の野菜」シリーズに「樋水龍神縁起」とは、嬉しいサプライズです。
 蓮は扱いが難しいですね。私は今のところ、手が出せていません。
 さてさて、本編ですが。
 冒頭のセンテンスで、一気に春昌と次郎の貴種流離譚に引き込まれました。そして、いたるところに仕掛けがしてあって、しかも、それをきちんと回収して終わらせているあたりは、さすがですね。短編なのに、すごく読みごたえがありました。
 終盤の媼と春昌の会話がすごいです。すべてを知った者同士の空中戦、いいですね。こういう会話、大好きです。
 娘の外見ではなく本質の価値を一見で見抜くあたりは、さすがに春昌です。女を見る目は、少しも曇ってませんね(微妙に笑) 「見える」けれど、普通の人っぽい次郎が、春昌の規格外っぷりを際立たせていて、いいコンビだなと思います。
 普通の子かと思った娘は、文字通り「泥中の蓮」だし、すごい顔ぶれですね。この子も「見える」んですよね、きっと。それにしても、出雲の龍神さまの次は、大神神社ときたか。うむむ……。
 久しぶりに平安時代に接して、またこの世界を書いてみたくなりました。ってまた言ってるし。そろそろ「書く書く」詐欺になりそうです(爆)
2014.08.11 15:43 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

スピンオフなのですが、じつは本編は現代の話で、この平安時代編はもともと一章しかなかったものです。
陰陽師と御覡の悲恋が本編のストーリーの遠因になるというものだったのですが、それだけに留まらずに勝手に動き出しちゃいました。

薬については昔も今もそうですが、効果のある薬はもともと毒草から抽出したものが多く、それを扱える人間は特別な知識を必要としたと思われます。ここにひと言だけ出てくるのですが、平安時代には「呪禁道」というものがあったそうです。今で言う医学は呪術の一部だったのですね。

今回出てくる翁草の葉と茎が氣管支炎に効くという漢方療法が存在するのも、また毒草で触るとかぶれるのもすべて事実ですが、その煎じ方は呪禁道は知らないので私が勝手に設定しました。実はホメオパシーのレメディの作り方を参考にしています。真似をする方はいないと思いますが、念のため。

コメントありがとうございました。
2014.08.11 20:07 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

いやぁ、ネタに苦労している様子がお分かりいただけるかと思います。いくら食いしん坊でも野菜で十二ヶ月は無謀だったか……。

花にしても野菜にしても蓮は本当に難しいですね。
でも、TOM-Fさんと彩花里の蓮のお話、あったら読みたいなあ〜。ユズキさんのイラストもありますし……。

貴種流離譚っていうとかっこいいなあ。単に押し掛けで治療してタダ飯と宿泊を提供してもらっているだけかも。後で英雄になったりしないし。

ウゾさんに教えていただいた「大和高田市奥田の蓮取り」と、ラクシュミーの両イメージをどう平安っぽく重ねられるかなといろいろ試行錯誤してこうなりました。能力は高いかもしれないけれど、この礼儀知らずでバタバタした娘を斎媛に仕立てるのは大変だろうと思うんですが、まあ、いいや。二度と出てこないだろうし。たぶん。

そうです。女を見抜く眼力は春昌の真骨頂(笑)

次郎はずっと「見えるだけの人」で、しかも中途半端にしか見えていないので、ポジション的にはちょうどいいのです。全く見えない人だと春昌が胡散臭くしか見えないだろうし。

三輪の大神神社の話を出したのは、ウゾさんにいただいたヒントが役行者つながりだったからです。実は、陰陽頭である賀茂保嵩という人物を作ったのはTOM-Fさんとの合作の時で、今回「おお、つながったぞ」と勝手に喜んでおりました。

あ、私が平安を書くと、TOM-Fさんが「妹背の桜」続編を進めてくださる? だったらそれを目当てにまた書いちゃおうかな〜。お待ちしています。

コメントありがとうございました。
2014.08.11 20:33 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
サキは最初からこの泥まみれの娘に注目しておりました。
言葉づかいがただ者ではないし、読んでいて物腰が素敵ですし、色気がムンムンです。
でも春昌が注目しているのは、とても珍しい蓮の品種なんだろうと思っていました。
まさか娘の方だったとは、サキもぼんやりとしか見えていませんでした。
おおっと思いながら、すっかり泥まみれの容姿に騙されていました。
天竺の女の話、ちょっと女性蔑視すれすれですが面白かったです。
アゲマンなんかもこういう分類に含まれるのでしょうか。
蓮は花を水上で咲かせますが本体は泥の中です。泥の中で栄養をでん粉に変えて蓄積しているのですね。
泥の中に密かに隠された蓮女、これを平安時代に持ってきて「樋水龍神縁起」と絡める……これは凄い発想だなぁ。
彼女の名前、知りたかったです。
2014.08.12 14:30 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

娘、きっと本人は色香がある事をまったくわかっていないでしょう。言葉遣いは大丈夫でも基本的礼儀はまだいまいち。12歳前後かなあ。今の年齢で言うと18歳くらいのイメージでしょうか。

春昌は蓮と娘と両方に注目していました。次郎の方は夕闇の池ではよくわかっていなかったのですが、春昌の方は池に着いた途端「ここは!」って感じでわかったって感じです。池はただ事ではないし、娘もとんでもないし、媼もただ者ではない。見えていると便利ですね。

そう、ここが重要なんですが、サンスクリットの世界だと最高の女というのは聖と性と両方なんですね。分けられるものではないのです。欧米的な価値観になれていると「聖母マリア型」と「リリス型」は全く別物なのですが、この世界ではどちらも尊く兼ね備えているべき美質なのです。私の他の小説はどちらかというと欧米型なのですが、「樋水龍神縁起」の世界はこの「聖俗」が揃っているのが正解なのです。ですから、この春昌のいい方は最高の讃辞でもあるわけです。現代の感覚では十分セクハラ発言ですが。

蓮って、あの美しさに加えて、泥から出てきている事、さらに葉が水を弾く事から、どんな汚れにも染まらない清浄の寓意なんですよね。しかも、蓮根はただの根っこではなくて、滋養たっぷりで実際に役に立つ植物でもあります。しかも極楽に咲く花といわれるワンクラス上の花。扱いがちょっと難しかったです。でも、「東国放浪記」のオープニングにはよかったかも。続きがあるかわかりませんが。

あ〜、名前。つけていませんね。再登場するなら、その時に考えなきゃなあ……。(すみません、設定ゼロです)

コメントありがとうございました。
2014.08.12 20:09 | URL | #9yMhI49k [edit]

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