scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

カオスだった私の中のヨーロッパ

久しぶりに「 Cantum Silvaeの世界」。このカテゴリー、ずっと放置していました。今年のメイン連載だというのに。そして「Infante 323 とポルトの世界」カテゴリーの記事はあんなに書いているのに。思い入れがないわけではなくて、関連する写真があまりないんですよね。(あ、そんなの関係ないじゃないと、いま自分でも思いました)

だからというわけでなくて、語りたいことが出てきたので久々に。


薔薇


何度かお話ししているように「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」は高校生の時に私が描いていた手書きマンガ的ストーリーのリライトです。当時の「森の詩 Cantum Silvae」はおよそ200年くらいのアバウトな期間中の三つの王子様&お姫様ストーリーを書いた連作で、中でも現在発表しているこの二部が一番どうでもいい扱いでした。なぜか。ヒロインとヒーローが地味だから。(うん、今でも地味だし)

ところが、二年くらい前に「あの話をリライトして作品にしてみようかな」と思いついた時に、第一部と第三部は即却下して、この第二部だけが使えると思ったのです。当時から私の物語に対する姿勢が大きく変わったのですね。この話だけが、ストーリーとして意味があったということです。(いい話とか素晴らしいストーリーというのではなくて、残りの二つが意味不明すぎただけです)

そして改めて物語の設定を考え直した時に、自分で頭を抱えました。当時のストーリーは今もそのまま使っていますが、背景はほとんどスカスカでした。そのスカスカな枠組みがひどかったのです。

ご存知のように、中世ヨーロッパをモデルにした仮想世界として三つの王国(グランドロン=ドイツ風、ルーヴラン=フランス風、センヴリ=イタリア風)を設定していますが、その「モデルにした」私の中のヨーロッパ観がろくでもなかったのです。現在グランドロンと呼んでいる国は、地理上で西にあり「フランクライヒ」といいました。それ、ドイツ語でフランスのこと……。人名はドイツ風とフランス風が入り乱れていました。ファーストネームは主にフランス風。で、設定では今のグランドロンに近い、つまり民族的なイメージとしてはドイツに近い。そして対応するルーヴラン(当時の国名がどうしても思い出せない)の人名はなぜか英語風。でも、やっていることはどう考えてもラテン。つまり、当時私の中でのヨーロッパのイメージはそれほどにカオスだったのです。

現在、ヨーロッパに住んでいて、ドイツやフランスやイタリアやもちろんスイスのことを身近に見ている自分としてはそのままにできないトンデモ設定が多すぎました。

ああ、ダメだ、ダメだ〜と、まずは設定した全ての地名と人名を捨てて新しいものに変更することからはじめました。そんなの大した事ないじゃないと思うでしょう。でも、私の頭のなかにある名前と、入れ替えた名前がいつまでも一致しなくて錯綜するのです。こんな混乱した執筆ははじめてでした。

ラウラや《男姫》ジュリアはもともとグラウリンゲン侯爵家(なぜこれだけ英語系ではなくてドイツ風なのかも不明)に属していました。現在の設定をチェックしていただくとおわかりのように、この家名は現在グランドロン王家の苗字として使っています。そして、ラウラが養女となった侯爵家はバギュ・グリに変えました。どちらも同じ意味なので、もしかすると親戚である可能性もあるかもと、一人でかってにほくそ笑んでおります。あ、ストーリーにはこの辺は全く関係のないことです。そういえばハンス=レギナルドはこの話とは関係ないので名前を変えませんでしたが、これまたドイツ風ですね。ジュリアはそのままでよくて、ただし、この方はグランドロンではユリアと呼ばれることになります。

当時から一切変えていない名がフルーヴルーウー伯爵家(領)。現在の設定でのモデルはスイスとアルザス。もともとは誰も欲しがらなかった辺境なのに途中で重要性が変わり、今ではルーヴランも狙っている領国で、第一部のジュリアとハンス=レギナルドの奇妙な物語のために創り出した名前です。ドイツ風でもフランス風でもない珍妙な名前でやめようかとも思ったのですが、メインストーリーに関係のない山のような固有名詞の中で、ここまで変だったらかえって読者の記憶に残るかなと思ったので、これだけは昔のままにしました。



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Comment

says...
昔からTRPGの世界でも、女性キャラクターに「キャサリン・カテリーナ」なんぞという名前をつけるプレイヤーは掃いて捨てるほどいました。

間違っていたことに気づいたら書きなおせばいいんです。

明治時代に実在した料理店の看板には堂々と、「仏蘭西料理 独逸軒」と書いたものがあったそうです。

自分の美意識に合わないと思ったら何度でも書きなおせばいいんです。

……ちなみにわたしは自分の美意識のほうを優先させてしまうタイプです(^^;)
2014.08.02 08:31 | URL | #0MyT0dLg [edit]
says...
こんばんは

> 明治時代に実在した料理店の看板には堂々と、「仏蘭西料理 独逸軒」と書いたものがあったそうです。

これは、笑い話と受け止めてもらえるぐらい日本も変わりましたが
ヨーロッパは未だに「中華料理 スシ」みたいなのが存在してしまう世界だから、人間イメージかなりあいまいなまま使っちゃうものなんですよね。

ああ、美意識に合わないから変えたくないっての、ちょっとわかります。それにいくらこだわっても、本人ほど周りは氣にしていないという説も。

コメントありがとうございました。
2014.08.02 09:59 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんにちは。
なるほど…と興味深く拝読させていただきました。

きっと、当時も当時なりに考えて世界観や地名・人名などを
作っていらっしゃったことと思いますが、
「これは違う!」と気づいてしまったら
変更したくなっちゃいますよね。

新しい名前になかなか慣れるのは難しいかったと思いますが
ちゃんとこだわりを持って、書かれているんだなと
改めて感心すると共に、
私自身も見習いたいと思いました。
2014.08.03 14:46 | URL | #41Gd1xPo [edit]
says...
こんちには。

なんて言うでしょうかね。
例えば、東京に住んでいる人が「京都の話なのにお寺の名前は奈良」みたいな小説を書いて、実際に京都に引越して「これはありえない!」と氣づいてしまうような感じでしょうか。

はっきりいって当時は何も考えていなかったと思います。

私が高校生だったときって、今のようにインターネットもなかったので、今のように多くのことを家にいながら簡単に調べられるという状況にもありませんでした。さらに公開するつもりも全くなかったので、情報の正確さにこだわることもありませんでした。だからこその黒歴史が人知れず山のようにあるわけです。

もっともあの存在自体が恥ずかしい作品群の積み重ねが習作となって、現在書くものにつながっていますので、書かなかった方がいいというわけではありません。今のように簡単に公開できない時代に書き始められて本当によかったと思っています。

コメントありがとうございました。
2014.08.03 15:16 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
本当によく分かります。
「ロケ」に行ってみたら、あれあれ、ってこともいっぱいあるんだけれど、住んでみたらまた全然違うんだろうなぁ。
このあたり、自分の住んでいる場所以外を舞台にするのって、そして自分が生きている時代を舞台にするのって、ある意味恐ろしい部分があるのかも。
あるプロの時代作家さんが言っていたけれど「その時代ないものを書かないように気を付けている」と。せめて、そんなのないよ、ってのだけは書かないようにしなければ、と思うけれど、ある部分「賭け」のようなところもあります……こわいこわい。
でも、そういうところ、やっぱり自分では気が付かないことってありますよね。
人に読んでいただいて、指摘してもらうのって、とても大事なんだなぁと思ったのでした。
私など、ヨーロッパものを書いているけれど、いつもひやひやです。
でも、きっとブログで公開していると、夕さんのチェックが入っていいかも!なんて甘えたりなんかもしていて……(*^_^*)

でも、昔書いたもの(夕さんいわくの黒歴史!)って、冷や汗は出るけれど、その想像力のすごさって、今の自分には追いつけないものがあるなぁと思うことも……あれって、「事実」を知らなかったからこその爆発的想像力、だったんですね。
2014.08.09 00:22 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
おはようございます。

「ロケ」もいろいろな事がわかりますよね。地図上では1センチでも、実際に移動するには何時間もかかったり、行ってみないとわからない事がいっぱい。もっとも最近は、ネットでいろいろな方の体験を読む事ができるので行かなくてもわかる事も飛躍的に増えました。

いつだったか時代物を書いた時に「穀物と書くだけでなく具体的に書いた方がいいかも」というご意見をいただいた事もあるのですが、「じつはその裏が取れなくて書けなかったのに鋭い!」なんてことも。「大道芸人たち」では食事シーンの献立に悩んだ事は一度もないんですが、「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」は毎回裏取りにものすごい時間がかかったり。

ただ、引っかかるのは知っている数人だけ、残りの99%の読者にはどうでもいい事だったりしますよね。日本でものすごいブームを引き起こして映画にもなった小説で、ミラノやフィレンツェやスイスが出てきたんですが、私は何カ所もで「ありえない」と大失笑していたのですが、日本ではそういう批判は全くなかったみたいでした。プロですら売れれば何でもいいらしいと思いました。でも、自分の小説に関してはそういう事はしたくないんですよね。

黒歴史の話ですが、この記事を書くために久しぶりに手書きマンガを見たんですが。事実誤認とかいう問題以前に、その自己陶酔ぶりにいまの私が受けるダメージがひどく、もう二度と開けるまいと思うほどでした。本当に当時ネットが普通の時代でなくてよかった。あれを当時公開していたらと思うとぞっとします。チラ見で出せるクオリティだった彩洋さんが羨ましい。文章で書いていた第一部の方はまだマトモでしたが。やっぱり、私は文章の方が向いているらしい。でも、あそこを通ってきたから、今の自分がある事も事実なんですよね。

コメントありがとうございました。
2014.08.09 11:50 | URL | #9yMhI49k [edit]

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