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Posted by 八少女 夕

職人たちへのオマージュ

「Infante 323とポルトの世界」カテゴリーの記事です。オリジナル小説「Infante 323 黄金の枷」にはモデルとなったポルトの街が時々登場しますが、フィクションの部分と現実との混同を避けるためにあくまでも「Pの街」として書いています。そういうわけで、本文中には挿入できなかったポルトの写真をこのカテゴリーにてお見せしています。

小物屋のおじさん

主人公23(インファンテ323)を靴職人にしたのには理由があります。ポルトガルは手工業が盛んで、その質が高いことでも有名です。(あ、日本もそうですよね)

ヨーロッパの中で、ポルトガルという国は物価や人びとの平均賃金が比較的低めです。それに加えて真面目な人びとの氣質と出来上がってくる製品が良質であることが好まれて、ヨーロッパの他の国で販売する高級品をポルトガルで生産して輸入するということが、よくあるのです。

某国の有名百貨店で、その百貨店のロゴの入った高級品を買ったとして、その箱の裏をよく見てみると「Made in Portugal」と書いてあったりするのです。

ポルトガルの無名の靴職人が作った靴が、イタリアに運ばれて有名デザイナーの工房でロゴだけが刻印され、「Made in Italy」となり、その後三倍くらいの値段で売られているという話をポルトで聞きました。作中でアマリアがマイアに語っている話の元ネタです。最終加工をした国を「Made in XX」とする、というルールに基づいてそうなるらしいのですが、刻印以外は全てポルトガル製でもそうなるんですって。刻印がないだけで全く同じ靴が、ポルトガルに来ればとてもお買い得に手に入るというわけです。

靴修理のおじいさん

このおじいさんは、連れ合いの靴の修理をしてくれた方。言葉がほとんど通じなかったけれど、ちゃんとやってくれました。頑固一徹という感じで、最初は無愛想でしたが、最後ににっこり笑ってくれました。そして、仕事は完璧。ものすごい誇りを持ってやってくれます。お値段は、スイスでの四分の一くらいでしょうか。

作中で23がマイアに飲ませるコーヒーも、どこかの工場でロポットによって大量生産されているものではなくて、市内の店で豆のブレンドから焙煎まで自分たちでやっているという昔ながらのコーヒー豆専門店のことをテレビで見たのがヒント。テレビで紹介していたお店はポルトではなくてリスボンにありました。

23のいつも着ている洋服、使っている石鹸、その他どんなものでも、可能な限り地元の手工業をサポートする形で最高品質のものを用意させているという設定です。

名前のない靴職人を主人公にしたこの作品は、有名ではないけれど良質の製品を黙々と作り続けている世界中の職人たちへのオマージュでもあります。

この記事を読んで「Infante 323 黄金の枷」が読みたくなった方は……

「Infante 323 黄金の枷」「Infante 323 黄金の枷」をはじめから読む
あらすじと登場人物
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Comment

says...
靴をなおすのが職人って感じでいいですね。
臨場感もあっていいですね。最近は買い直すのが多くなっている靴。
それを修理するのも粋ですね。
2014.10.04 05:40 | URL | #- [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

そうなんですよ。最近はどんなものでも「修理するより買い直した方が安い!」ということが増えているように思います。それだけ大量生産で物の値段が落ちてきているということなんでしょうけれど。

でも、働く方としては、仕事に見合った賃金をもらえないと生活ができない。だから修理は高くなってしまうのですよね。もともとは高くても質のいい物を修理しながら大切に使うことをもっとしなくちゃなと思ったポルトガル旅行でもありました。

このおじいさん、笑うととても素敵だったんですよね……。

コメントありがとうございました。
2014.10.04 09:56 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
このプロの雰囲気、良いですね。
なんとなく自身と誇りのような物を感じます。
靴修理のおじいさんで思い出したんですが、サキの靴が壊れたとき、靴の修理屋さん?あちこちにありますよね?鍵の複製とかもやってくれるチェーン店みたいな感じの店、幾つか回ったんですけど無理って言われたんです。でもショッピングセンターの一角にひっそりとあった個人営業みたいな感じの修理屋さんに、ダメ元で持ち込んだら見事に直してくれました。おじさんと若いのと2人でやっておられたんですが、訊いてみると親子だそうです。
ここを直せるミシンが普通の店には無いんだ……とのことでした。
とても嬉しかったです。
でも暫くしてお店は無くなってしまいました。
どこかへ移転して営業してたら良いのになぁ……
あ、なんだか物語になりそうな予感。
2014.10.04 12:05 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

もう10月ですものね。日本も秋真っ盛りでしょうか。

そして、鍵の複製などもやってくれるチェーンとは、「ミスター・ミニッ○」のようなお店ですね。スイスにもあったりします。簡単な靴の修理はやってくれますが、難しいのはダメなんですね。

そして、個人営業のようなプロの修理屋さんのお店があったのですね。それは貴重な存在でしたよね。移転してしまったのかな、たたんでいないといいですよね。そういう貴重な技は生き残ってほしいです。

うん、素敵な物語になりそうですよ。このエピソードが、サキさんに調理されてどんな風に物語になるのかも楽しみ。主役でも、ちょっと脇役っぽくても、どちらもいけそうですよね! 読んでみたいなあ。

コメントありがとうございました。
2014.10.04 18:05 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
 こんにちは。
 名前が大切なのはわかりますが、名前だけに負けてしまう人間も悲しいですね。物の良し悪しなんてのは如何でもよくて、人の注目を浴びることができるものかどうかと言う虚栄心が値を決めている。それに便乗して汗をかかないで儲ける人々と、心をこめて造った物をまるで手柄を横取りされるみたいに名前を変えられてしまう職人。消費者が賢くなれば、中抜きのデザイナーなんか駆逐できて、職人の下に正当な評価と報酬が行くのに。
 ブランド品への眼がますます冷ややかになって行く私。
2014.10.05 00:57 | URL | #eRuZ.D2c [edit]
says...
おはようございます。

そうなんですよね。
このケースで言うと、消費者が買っている代金の2/3は刻印を打つだけしかしていないブランド会社の懐に入ってしまうのですよね。不思議な仕組みです。

いい物、手間のかかる物にはそれに見合った値段が付けられて当然だと思いますが、ただのタグや名前のためだけに倍以上の値段を払う人がいるということ、それにそれが高くて買えないから粗悪なコピーであってもブランド名の入った物を買うような消費者がいるのは残念ですよね。

以前、三週間猫の餌やりと庭の水やりをやったお礼にと某有名ブランドのハンドポーチをいただいたことがあります。私はそのポーチの値段を想像できたので恐縮しましたが、ブランドにはまったく興味のない連れ合いが「ただのプラスチックのちゃちいポーチ」と言い放ったのを思いだしました。確かにロゴがなければ、何の変哲もない無地のプラスチック。どうしてあの値段がするのかとても理解できません。でも、私が若かった頃はみなさん、目の色変えて欲しがっていたんだよなあと思いました。

私自身は田舎ぐらしでブランドショップとも無縁ですし、名前やマークにはこだわりがありません。その一方で、健康や環境への配慮から素材を吟味したり、製作・生産した人が不当に搾取されていないかを意識するようになったので、若いころよりは若干高価な物を購入するようになりました。同じ多めの出費ならば、そういう方向に遣いたいと思っています。

コメントありがとうございました。
2014.10.05 09:32 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
日本の職人さんもポルトガルの職人さんに負けてませんよ。
あの素晴らしい技法はマネしたくてもできません。

そして、その技は代々受け継がれていき、その時代時代を生きてゆく。

そうやって職人さんたちの意志と、技は伝承されていく。
本当に素晴らしい仕事ですね。
2014.10.05 18:03 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

そうですよね。日本の匠の技、素晴らしいと思います。
しばらく、海外の大量生産の物が、極端な安さからもてはやされていましたが、ここにきて日本の職人の伝統の技の素晴らしさが見なおされ、正当な評価を受けはじめているように思います。

技の伝統が続くためには、やはり正当な評価をされることが必要だと思うのですよね。失われないように大切にしていかなくてはなりませんよね。

コメントありがとうございました。
2014.10.05 20:41 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
この靴修理のおじさん、頑固そうで怖い感じだけど、絶対いい仕事しそうですね。
若いころは安物買いだったのですが、やはり職人の作った本物は、高い値段を出す価値があるなと、最近しみじみ思います。
だからよけいに、平気でコピー商品を出してしまう人たちが許せないですね。
職人さんたち、これからもいい仕事していってほしいです^^
そして、そんな空気がうかがわれる夕さんのお話、これからもいろんな意味で楽しみたいと思います。
2014.10.05 23:55 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こんばんは。

このおじいさん、本当に怖い顔だったので、嫌われているのかと思っていたんです。
そしたらさいごににっこり笑ってくれたので「なんだあ」って思いました。
ラテンだから適当だと思っていたら、北ポルトガルの人たちは真面目で、期日や仕事にこだわるんですよね。
ポルトを訪れた最初の年、びっくりしました。

そうですね。やはり本当にいいものは、それだけの値段がして当然なんですよね。
それを払わなくなると、それだけの仕事ができなくて技が失われていってしまうんですよね。
そして、おっしゃる通り、コピーをしてただ儲けようとする人たちを儲けさせるようなことを止めなくてはなりませんよね。

小説は、単純な「王子様」が「かっこいい仕事を適当にする」みたいな話にしたくありませんでした。私の中のポルトとポルトガル人像をうっすらと感じていただけたら嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2014.10.06 18:48 | URL | #9yMhI49k [edit]

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