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Posted by 八少女 夕

【小説】Infante 323 黄金の枷(11)作業

Stella用連載小説「Infante 323 黄金の枷」です。普通は月末なんですが、「scriviamo! 2015」がどうなるかわからないので、とりあえず空いている月初にアップする事にしました。

さて、今回はマイアに視点が戻ってきています。このストーリーのちょうど半分くらいまで来ています。(まだそんなにあるのかという話はさておき)

いつだったか、cambrouseさんと盛り上がったサンドイッチを食べるシーン、ようやく登場です。それから、外伝でちらりと出てきた四角い石の話、元ネタはここでした。(その元ネタはさらにありますが)


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あらすじと登場人物





Infante 323 黄金の枷(11)作業

「マイア、午後からはセニョール323の所へ行くように。靴型を整理してわかりやすくしまいたいので手伝ってほしいと仰せだ」
メネゼスに言われて、マイアは喜んだ様子が顔に出ないようにするのに苦労した。

「前からやりたかったんだ。一人だとどのくらいかかるかわからないので、始められなかった」
23は淡々と言う。そうだよね。浮かれているのは、私だけだよね。マイアは恥ずかしくなった。23が逢って幸せになるのは、逢いたくて待っているのはドンナ・アントニアだものね。唇を噛んだ。それから無理矢理笑顔を作った。少なくとも今は一緒にいられるもの。たとえ単なる仕事でも。

 マイアが靴型に書かれている番号と氏名、ついているメモの内容を読み上げ、23はそれを銀の小さいノートブック型コンピュータにそれを入力していく。それが済むと、マイアは箱に靴型を納めていった。しばらく作業すると23はコーヒーを淹れてくれ、しばらく休憩した。夕方までやったが、靴型の山は三分の二くらいになっただけだった。23はメネゼスに翌日もマイアを借りていいかと訊いた。その晩マイアはあまり嬉しそうで、マティルダに「どうしたの」と訊かれてしまった。

 翌日マイアはまず、食堂で朝食の給仕をした後に、23の三階と二階の掃除をフルスピードで終わらせて、工房に降りてきた。
「掃除は終わったよ。昨日の続き、もうできるよ。今日、一日かかるよね、きっと」
「そうだな。時間が惜しいので昼食を作って運んでもらうことにしたが、お前の分も頼もう。それでいいか?」
「もちろん」
 
 二人は慣れた様子で靴型をしまっていった。靴型の山はゆっくりと丘になっていった。

 昼食時間になると、マイアはキッチンに行った。クラウディオが用意してあったバスケットを渡してくれた。中には二人分のクラブハウスサンドイッチが入っていた。美味しそうな香りの漂うバスケットを抱えて工房に降りて行くと、23は中庭にテーブルを出しているところだった。花が咲き乱れて美しい。
「お庭で食べるの? ピクニックみたいね」

 はしゃぐマイアを見て23は笑った。
「何を飲みたい? ポートワインの白があるが、飲めるか?」
「え。飲めるけど勤務中に酔うと怒られるかな……。あ、もし炭酸飲料があるなら、それで割ってもいい?」
「炭酸飲料か……。スプライトはないが、これでもいいか?」

 それはマイアが一度も見たことのないトニックウォーターだった。Fever Treeのものだ。普通のトニックウォーターと較べてマイルドで、さらに23がレモンを浮かべてくれたので、マイアがいつも飲んでいた白ワインの炭酸割と較べてずっと繊細でおいしかった。

 マイアは中庭を見回した。ブーゲンビリア、ジャスミン、アラマンダ、ヒメヒマワリ、紫陽花、一重のつる薔薇、デルフィニウム、ナスタチウム。アイビーやベンジャミン、今は季節ではないので花はないが、ライラックやニワトコ、それに椿の樹がひしめいていた。一見思うがままに繁らせているかのようだが、実はよく考えられて配置・管理されていることがわかった。暗すぎず、けれどもテーブルに座る時、そして暑い午後に散歩をする時にも、直射日光に晒されないように優しい日陰を作り出していた。

「この庭、すてきだね。専門の庭師がいるの?」
「普段はフィリペがみてくれている。あいつは代々庭師の家で生まれたんだ。年に二度、あいつの父親と家族がやってきて剪定してくれる」

「24の所と全く違う庭なんだね。自分の好きなようにさせてくれるんだ」
「あいつの所はどんな庭なんだ?」

 マイアは、あ、と思った。そうか。23と24はお互いの居住区にいくことは出来ないんだ。
「あっちは、フランス風っていうのかなあ。幾何学的に剪定されていて、左右対称。お花は園芸品種っぽい高そうな薔薇がメインで、どれも色ごとに決まった所に植わっているし、しかも時々、総取っ替えされている。どれも向こうまで見渡せるくらい低い植物だけなんだよ」

「そうか。あいつらしいな。そういう庭の方が好きか?」
「わたし? ううん。ああいうのも綺麗だけれど、こっちのほうがいいな。花も樹も、のびのびとしてるもの。それに、たくさん秘密が隠れていそうで、飽きないし」

 ガーデンテーブルの上に置かれたワイングラスの中で踊る氷とレモン。チキンとレタスとトマトがたっぷり入った作りたてのクラブハウスサンドイッチ。
「美味しいね」
幸せそうに食べるマイアを見て、23は笑った。

「笑わないでよ。こんなしゃれたランチ、食べる機会はほとんどないんだから」
「そんなに氣にいったなら、時々、昼飯つきの作業をしてもらうことにするよ」
マイアがあまり嬉しそうな顔をしたものだから、彼は大笑いした。

 食事が終わるとマイアは23と一緒に中庭を散歩した。ジャスミンの薫りがシャワーのように降った。夏がやってくる。マイアが想像もしなかった美しい季節。世界がこれほどまでに輝くとは信じられない。いつもと同じ太陽、同じ大氣、同じ若葉なのに。わずかな風のそよぎが、柔らかい新緑への光の反射が、彼女の心を震わせる。

 彼に逢う度にたくさん笑って、感受性を鈍らせていた卑屈な心の錆が落ちた。幾晩も人知れず流した泪に洗われて、彼女の魂は剥き出しになった。マイアの心は、世界のどんなわずかな刺激にも豊かに反応するようになっていた。そして、この魅惑的な世界へと誘う彼と一緒にいられるわずかな時が愛おしかった。

 歩いているうちに足元で何かがカツンとなった。マイアが見ると土の中に四角い石が埋まっていた。
「あれ」

 23はそっとマイアの肩に手をあてて、マイアの足がその石から離れるようにした。石の上には何かが書かれている。マイアが読もうとした時に、23が口にした。
「《Et in Arcadia ego》」

「ラテン語?」
「ああ」

「あの、あそこにもあったよね」
「どこだ?」
「ほら。私たちが出会った、あの小屋の裏手。小さい石があって、こういうラテン語が彫られていたと思うんだけれど」
「そうかもしれない。実際のところ、この街とおそらく近辺の郊外にすくなくとも321は作られたはずだから」
「321? 」

 23は屈んで、碑文の上をそっと撫でた。マイアは少し不安になって一緒に屈み、23の横顔を覗き込んだ。
「どういう意味なの?」
「《そして、私はアルカディアにすらいる》」

「アルカディアって?」
「古代ギリシャの理想郷のことだ」
「じゃあ、私ってだれ?」

 23はマイアの方を見て言った。
「死だよ」

 マイアはぎょっとして先ほど自分が踏んだ所を手で触れた。
「いいんだ。この下にあるのは存在しなかったものだから」

 マイアにははっきりとわかった。この下にはインファンテの誰かが眠っているのだ。存在しなかったことになっているので、葬儀もしてもらえなければ墓標すらも立ててもらえなかった321人のうちの誰かが。そして、今ここにいる23も死んだら同じようにされるのだと。

「……なぜ?」
「誰かが冗談半分に、この有名な句を刻んだんだろうな。そして、それが伝統になってしまったんだ。街の礎の一つに、忘れられた屋敷の片隅に、この碑文の彫られた石があり、その下には人骨が埋められていることもある。だが、それについて言及されることはない」

「冗談半分ってどういうこと?」
「このラテン語の文字を並べ替えるとどうなるかわかるか?」
「並べ替える?」

「アナグラムだよ。《I tego arcana dei》」
「意味は?」
「《私は神の秘密を埋めた》」
「神の秘密……」
「こんな文句を刻んでも、ほとんどの人間は氣にもとめない。新しい家を建てる時にはブルドーザーがひっくり返していく何でもない石だ」

 23は口の端を歪めた。その表情は、いつもの23とは違って、24がよく見せる冷笑にそっくりだった。二人が兄弟であること、もしくは同じインファンテであることを思い知らされるような嘲笑。シニカルで享楽的に生きる24とは全く違う性格のはずなのに、ちょっとした横顔がこんなにも似ていることにマイアはぞっとした。けれど、23が馬鹿にしてあざ笑っているのは、使用人たちでも、この碑文を考えた人たちでもなくて、彼自身なのだと感じてマイアはとても悲しくなった。そうじゃない。あなたにそんなふうでいてほしくないよ。自分自身を好きになってもらいたいよ。

「23。もし、街でこの石の碑文を見つけたら、私、ちゃんときれいにするから。花を周りに植えるから」
「花?」
「うん。三色すみれを植えるから。下に眠っている人たちが寂しくないように」

 それを聞いて23は少し表情を緩めた。それから訊いた。
「なぜ三色すみれなんだ?」

 マイアは言葉に詰まった。それは、23と出会ってもう腕輪をしているたった一人のおかしな子供じゃないと勇氣づけられた時に見た花だった。あの日以来、三色すみれはマイアの一番好きな花になっていた。けれど下手な事を言うと、23に自分の想いを悟られてしまうのではないかと怖れた。それでなんでもないように言った。
「私、すみれが好きなの」

 彼はほっとしたように優しく笑うと答えた。
「すみれは俺も好きだ。ところで、そろそろ作業に戻ろうか」
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Comment

says...
更新、お疲れ様でした。

今回は、盛りだくさんでしたね。
庭園の植栽、サンドイッチのランチ、墓碑、そして三色すみれの話など、マイアと23の素敵なシーンがいっぱいあって、楽しませてもらいました。あ、勤務中にワインも(笑)

マイアの心情が、まわりの自然のうつろいとともに描かれていて、ちょっとキュンとなりました。こういう表現、好きだなぁ。

マイアと23、いい雰囲気なのになぁ。ドンナ・アントニアのことなんて気にしないで、もっと素直に甘えたらいいのにね~。いや、そう簡単に話が運んだら、面白くないか(笑)

次話も楽しみにお待ちしています。
2015.01.07 11:47 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

今回、けっこう頑張った回なので(何が?)、お氣に召して嬉しいです。
マイアはもう落っこちているので、こき使われようが、ファーストフードをあてがわれようが、23と一緒なら何でもヘラヘラ状態なのです。そうそう、白ポートワイン、美味しいんですよね。勤務中に何やってんだか。

裏テーマが「五感で恋するポルト」で、今回は特に嗅覚と視覚と味覚とが心を刺激していますね。ふだんはここまで書かないんですが、この小説に限ってはとことん恋愛感情ばっかり押し出しています。

で、マイアの目を通して、章ごとに仕事だったり、食べ方だったり、持ち物だったり、庭だったりで、その好みやあり方で主人公23の姿を浮き彫りに出来たらいいなと思っています。

この二人、いい感じでしょう? セリフやら状況証拠やら、普通に読めば「これってさ〜、当然……」なんですが、マイアは思慮が浅いし、23は人付き合いの経験が浅く、簡単には進みませんね。その辺を笑いながらでも応援していただけるとありがたいです。

コメントありがとうございました。
2015.01.07 21:12 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
マイアが超キュートです~^^

数々のエピソードをたっぷりと楽しませていただきました。待ったかいあったってもんです。
こんなピクニック付きのお仕事なら、毎日でもOKです。毎日ポートワイン^^
いえ、マイアの邪魔だけは絶対にしません。

お散歩ができるほどの庭師付きのお庭。欲しい~
あ、でもそのお庭に意味深な四角い石が。
アナグラムですか。なんか切ないですね。

自分自身を好きになってもらいたい。
これにジンと来ました。
お母さんからは愛されて育ったはずの23。
自分を愛するようになるためには、誰かを愛するといいかもね。
ほれほれ~^^ (一応、応援のつもり -_-;)
2015.01.08 10:39 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

おお、マイア、お氣に召していただけましたか。しかも待ってくださってありがとうございます。
一人で落ち込んだり浮上したり忙しい子ですが、一生懸命だけが取り柄!
応援していただけると嬉しいです。

いやあ、私もこんな仕事ならぜひ。
っていうか、マイア、ちゃんと仕事して!

中庭と言っても、お城並に広い敷地にあるお庭なので、東京辺りだと23の庭に三軒くらいは家が建つかも(笑)
不満が出ないように(どうやっても不満は出ると思うけれど)これだけ広い所に「飼って」いるのですね。
そして、四角い石が、インファンテたちの末期の象徴です。何の記録も残らず、存在の証も残らない。
でも、マイアにとっては「そんなのやだ」ですよね。まあ、この子は、革命的な事は何も出来ませんが。

くすくす。そして応援ありがとうございます。
23に必要なのはたぶん自分に自信を持つ事でしょうね。掛け値なしに愛される事も自信を持つ事に繋がると思うし、それに、そうそう、誰かを愛するといいかもね(笑)

来月もこんな調子で続きますが、また読んでいただけると嬉しいです。
コメントありがとうございました。

2015.01.08 18:05 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
マイア、舞い上がっていますね。(あ、ダジャレになってる)
夕さんはマイアへのご褒美のように色々なシチュエーションを詰め込みましたね。
マイアに入れ込んで読んでいると、ちょっとドキドキしちゃいますね。
靴型の整理の場面もいいのですが(ちゃんとPCでデータ管理してるんですね。性格が出てるのかな。サキはこういうのは苦手です)ピクニックのシーンなどは特に楽しいです。
マイアはこの時にポートワインの味を覚えたのでしょうか?この時は白を飲んでいますね。サキはポートの白は見たことが無いですから、好奇心をくすぐられます。
23のところの庭はイギリス式って言うんでしょうか?24のところはフランス式ですかね?
何となく2人の性格が出ているようです。
この後の散歩のシーンも素敵です。23本人はたぶん全く気が付いていないのでしょうが、こうやって付き合いながら23はマイアを成長させているのですよ。マイアはどんどん生き生きとして綺麗になっているはずです。ジョゼが感じたように仕草まで洗練されていってるんだろうなと思います。
そして四角い石の秘密は切ないですね。上手く言えませんが、存在しなかった…なんて言われてもね…。万一の場合のために用意されて、必要が無くなったら無かったことにされるなんて、と考えてしまいます。マイアの3色スミレが救いになったらいいんですけど。
この後ジョゼにとっての謎の事件が起こるのですね。次を待ちます。
2015.01.09 12:27 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
マイアと23のやりとりがいいですね。
今年も変わらず西洋の世界観が広がってきますね。
文章の構成や表現の仕方も読んでいてとても勉強になります。
また今年も読ませていただきます。
2015.01.09 13:20 | URL | #- [edit]
says...
三味線練習に追われていて、拝読後すぐにコメントを書けなかったら、最初に感じたことを忘れちゃったりするのですけれど……そう、最初拝読した時は、マイアの微笑ましい感じと、23ってこんなふうに笑うんだなって意外感とで、全体的に春らしい感じがしたけれど、2回目に拝読したら後半の墓石のことがすごく気になりました。
そうかぁ、いないことになっているんですものね。でも、誰にも気がつかれなくても、こうして墓碑銘がつづられていることにほっとしました。
そして、マイアの三色すみれが何とも言えず暖かい。ここでまた春を感じました。
探偵業はお預けになっているみたいですが、まだまだ波乱があるはずの物語の中で、やっぱり恋のシーンはいいものです。両者が気が付いてない分だけ、尚更いいんですよね。物語の醍醐味は、この「どうしてさっさとくっつかないの?」ですから……
あ。私も、「先にマコトを書くべきか、仕事の文章を仕上げるべきか」今悩んでます^^;
2015.01.09 14:18 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

あっ、サキさんさすが関西人です! 「しばれる」って言葉、サラッと使えるのはちょっと羨ましい。
それに駄洒落も関西人だあ! (そんな所に喜んでどうする)

あ、そうそう、説明が終わったので、このあとは「これでもか」マイアのドキドキシーンばかりになっていきます。
どんどんエスカレートしていきますので(笑)

靴型のデータ管理は、これからはじめてするんですね。
今までは、山の中から探し出していたのですが、さすがにこのままじゃまずいと思っていたようです。
でも、「手伝え」と言える人が一人もいなかったので、そのままで、雪崩なんかも起こしていた様子。
詳しくは書いていませんが、彼のコンピュータはMac Book Airです。
24と違って、DVDとかゲーム機とか何も持っていない23ですが、唯一このマシンだけはあって、たまにネットサーフィンしています。

ポートワインの炭酸割りをマイアに教えたのはマリア・モタですが、これまで彼女が飲んでいたのは「そこそこ」のポートワインです。で、23の所にあるのは、お値段が全然違うもの。超美味しいはずです。
白のポートワインも、おいしいですよ。知り合いのポルトガル人の実家が作っているポートワインの白が、とってもよかったです。スイスでも白は珍しいので、日本だとなかなか見つからないかなあ。でも、大阪にならあるかも。

庭、そうそう、フランス式とイギリス式、ですね。
食事のときもそうでしたけれど、何をどう好むか、そして、どう処分するか(飽きたら総取っ替えさせてしまうとか)もやはり持ち主の個性に関わってくるんですよね。兄弟の性格の違いを庭でも表せるかなと、がんばってみました。

23の変化の方がみんなの目につくと思うんですが、そうです、マイアもどんどん変わっていくんです。恋をすると綺麗になるっていいますけれど、それだけでなくて、23がズケズケと叱ったり、褒めたり、言いたい事を言ったり、微笑みかけたり、そう言う事の繰り返しで、マイアはどんどん成長していっているんですよね。

23の時間も止まっていたけれど、腕輪の件でウジウジしていてマイアの時間もあまり進んでいなかったのが、二人とも再会してから人間として成長を始めたという所なんでしょうね。

四角い石の件ですが、この話の中では「そんなことあるわけないだろ」のシステムが、腕輪をしている人たちやインファンテたちを拘束しています。で、実際の世界では、社会階級やら、人種やら、その他のいろいろなものが人びとの人生を拘束して、それを私たちは「運命」なんて呼んだりするわけですよね。

ストーリーとして「運命を変える」事が出来れば、それは劇的で素晴らしいのですが、実際には運命に屈服する人生の方が多いと思うのです。この小説は屈服型ですけれど、単純に負けるだけではなくて、救いがあるから「運命と和解」するという風に持っていきます。四角い石と三色すみれの話は、その「救い」の部分の象徴として書きました。

「なかったこと」として誰からも完璧に忘れ去られるとしたら、死んでも死に切れないけれど、誰かがそれでも想ってくれると想像できること、それが本人には救いになるんじゃないかな、なんて。だから、ここに注目していただけたのは嬉しいです。

ジョゼが「?」となる件が出てくるのはまだしばらく後です。マイア、ほんとロクな探偵じゃないなあ(笑)
次回はそうでもないですが、その次からまた大きく動きますので、もう少々、お待ちください。

コメントありがとうございました。
2015.01.09 22:40 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

《そして、私はアルカディアにすらいる》なんて言われても、普通の日本人だと「は?」っだと思うんですよ。
でも、それを地の文で説明すると「説明しています!」ってなるじゃないですか。
だから、いまいちわかりの悪いマイアに23が説明するというパターン、この小説ではよく使っています。

それと、最初から最後まで甘かったり、深刻だったりすると、読んでいる方は「なんだかなあ」かなと思って、あえて前半と後半でトーンを変えてみました。上手くいったかわからないんですが、お誉めにあずかって光栄です。

今年も読んでいただけて嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2015.01.09 22:59 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

三味線練習……。腱鞘炎、それじゃ治らないじゃないですか(泣)

で、23の笑い、意外ですか? 大笑いしている方かな、それとも冷笑の方?
前半の笑いは、マイアと同じで、感情が素直に出てきはじめている事の表現で、冷笑の方はかといってこじれていないわけではない事の表現ですかね。
23と24を見える部分では、意識的に対照的にしているのですが、実はこの二人はインファンテという存在の表裏一体の姿としても設定しているのです。墓石の話みたいな、本質的な部分に来ると、23にもその色が濃く出てくるという設定です。

サキさんへのコメ返でも書いたのですが、マイアの三色すみれの話は、どうにもならない運命に屈服する上での救いになっていて、救いを見つけた人たちは運命と和解していく、という話なんですけれど、まあ、その象徴の一つ……かな。

あ〜、マイア、探偵業は、もはやそっちのけ、で、恋ばっかりです(笑)
まあ、真みたいに本業じゃないんで許してもらおう。
ここで半分ぐらいなので、残りの半分、ずっとこんな感じです。「お前ら、本当にいい加減にしろ」ってなると思います。謝っておこうっと。すみません。

あ。マコトとお仕事か。悩ましいでしょうけれど、マコト書いてください(笑)

コメントありがとうございました。

> あ。私も、「先にマコトを書くべきか、仕事の文章を仕上げるべきか」今悩んでます^^;
2015.01.09 23:29 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
この回は本当にホッとして、マイアと一緒にウキウキさせてもらいました。
そういえば、私の物語は本当に心を惹かれあうものどうしが、温かい会話を交わしながらゆったりとした時間を過ごすことがないなあと感じました。
こういうシーンって、温かくていいですね。
(あ、私が恋愛ものを読んだことがないからだ・・・)
23の境遇や、自分の事を希薄なものに感じている彼の感情は悲しいですが、
マイアと笑い合えている時間が、彼を救ってくれそうな気がします。
ちょうど今、自作で煮詰まっているんですが、なんとなく方向性が見えてきたような気がします。
(サスペンスじゃないものに挑戦したら、出口に迷ってしまって・笑)
2015.01.10 00:17 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こんにちは。

浮かれまくっているマイアを見捨てずにウキウキしていただけたのは嬉しいです。

恋愛の話って、基本的には退屈だと思うんですよ。

自分の事や、キャラに入り込んでいる場合は別として、基本的には他人の惚れたはれたなんて、現実でも「はいはい。で、それがどうした」じゃないですか。反対にドラマよりも面白いドロドロの恋愛なんて、身近にそんなにあるものじゃないし、そういうのを小説として書こうとすると、エンターテーメントとして面白くても、共感がえられるかは別だったりしますよね。

前はあまり考えた事がなかったのですが、皆さんの小説で学んで、視点というものを明確にして書こうとしているのです。で、この小説にはマイアの視点はあっても23の視点がないのですね。それなのに読者に「この男もたぶん惹かれてるよね」と思ってもらえる描写やセリフのあり方を模索してみたり、大した事をしていないのに(サンドイッチ食べて歩いているだけ)恋愛中の乙女がどうなっちゃうのかを表現したりと、恋愛ものを書くのにもいろいろと技みたいなのがあるのかな、などど書きながら考えていました。

サスペンスだと「謎」と「答え」がはっきりしているじゃないですか。答えが一つだからこそ、作者が迷わないのは当然として、読者も作者の意図した通りにきっちり最後までついてきますよね。でも、「正解のない問い」を書くのって若干、勝手が違うように思います。作者にもパラレルでいろいろな回答があったりして「これでいいんだろうか」と思いながら書く事もあるように思います。読者の答えはまた違ったりして、それはそれで一つの小説の楽しみ方かなとも思ったり。

limeさんが煮詰まるなんて、ちょっと想像できませんが、そうやって生まれてきた物語をまもなく読ませていただけるのは嬉しいですね。楽しみにしています。

コメントありがとうございました。
2015.01.10 15:27 | URL | #9yMhI49k [edit]

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