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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012

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Posted by 八少女 夕

Canção do mar 海の歌

今日は、現在連載中の『Usurpador 簒奪者』の脳内テーマ曲にしている歌をご紹介しようと思います。

先日、エッセイでもご紹介したのですが、数いるポルトガルのミュージシャンの中でも特に私が入れあげているのは、ドゥルス・ポンテスです。この方は現在エンニオ・モリコーネをはじめとする世界各国の巨匠と仕事をしているのですけれど、世界的に名前を知られるようになったのはおそらくこの曲が映画『真実の行方』で印象的に使われてから。リチャード・ギア主演で日本でも公開されたのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。



もともと、このメロディはポルトガルの伝統音楽ファドで使われていたようです。ここで説明しなくてはいけないのですが、ファドでは同じメロディに、自分が歌いたい別の歌詞をのせて歌うという伝統があるそうです。このメロディを使った『孤独』というタイトルの曲を、ファドの伝説的名歌手アマリア・ロドリゲスが歌った録音も残っています。

さて、ドゥルス・ポンテスは、このメロディに漁師と思われる男の悲しい詩をのせて歌いました。『海の歌』といってもフランスのシャンソンやハワイの音楽や、加山雄三の歌のようなポジティヴな海を歌うものもありますが、この歌は荒れ狂う厳しい海をイメージして歌われています。ポルトガルの海は、大西洋ですしね。

この"Canção do mar"は、とても有名になったので多くの歌手がカバーしていますが、この迫力はやはりドゥルス・ポンテスならではだなと思います。

さて、私の作品『Usurpador 簒奪者』の核となった筋は、この曲のイメージから生まれてきました。だから作品のバナーは荒れ狂う海のイメージなのです。こちらに歌詞と、それから私が訳したものを置いておきますね。

Dulce Pontes ドゥルス ポンテス
"Canção do mar" 『海の歌』
Frederico de Brito 作詞

Fui bailar no meu batel
Além no mar cruel
E o mar bramindo

Diz que eu fui roubar
A luz sem par
Do teu olhar tão lindo

Vem saber se o mar terá razão
Vem cá ver bailar meu coração
Se eu bailar no meu batel

Não vou ao mar cruel
E nem lhe digo aonde eu fui cantar
Sorrir, bailar, viver, sonhar…contigo



(和訳:八少女 夕)

俺はおのれの舟の上で踊ろうとした
荒れ狂う海のさらに向こう
海は吼えていた

海は言った。俺が奪ったのだと
お前のあんなに美しい
かけがえのない瞳の光を

ここへ来て、海の言葉に理があるのか確かめるがいい
ここへ来て、俺の心が踊っているのか見るがいい
もし舟の上で俺が踊るのなら

俺は荒れ狂う海には行かない
お前には言わない
どこで歌い、微笑み、踊り、生き
……お前を夢みていたか



この記事を読んで『Usurpador 簒奪者』が読みたくなった方は……

『Usurpador 簒奪者』を読む「Usurpador 簒奪者」をはじめから読む
あらすじと登場人物

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Posted by 八少女 夕

【キャラクター紹介】萱

普段、水曜日は小説を発表しているのですが、現在旅行中につき、一週お休みすることにしました。で、久しぶりのキャラクター紹介の記事です。発表済みの作品や、まだ発表していない作品のキャラクターをちょこちょこっと紹介して、作品に親しみを持ってもらおうかな、という姑息な企画ですね。

今回は「scriviamo! 2019」でフライイングで一瞬出てきた「樋水龍神縁起 東国放浪記」の重要女性キャラ、萱をご紹介します。


【基本情報】
 作品群: 「樋水龍神縁起 東国放浪記」
 名 前: 萱 (かや)
 居住地: 若狭国小浜
 年 齢: 二十代後半
 職 業: 濱醤醢(はまひしお)造りの元締め

* * *


すでに外伝「能登の海」で、登場していますが、本来は「樋水龍神縁起 東国放浪記」のメインキャラです。

萱は濱醤醢の元締めの娘として生まれました。

濱醤醢とは、ニョクマクなどと同じタイプの、魚で作った発酵食品で魚醤です。この話の設定では、朝廷への献上品にもなる極上の濱醤醢づくりの秘伝を受け継ぐ特殊な職人の家系があることになっています。

父親は萱に優秀な若衆の一人を婿に取るつもりでいましたが、その青年は海難で亡くなっています。そして、萱自身には恋仲になっていた商家の男がいて、恋と家業の間で悩んでいた時期がありました。

若衆の事故死に続き、元締めであった父親も数年後に亡くなってしまったため、萱は女の身で元締めになり、家業か自分かの選択を迫った恋人とは別れを選びました。

まだ父親が生きていた頃、その名代として奥出雲の樋水龍王神社へ赴いたことがあり、当時「当代きっての御巫」として名を知られていた媛巫女瑠璃と知り合い親交を深めたことがあります。瑠璃媛の郎党であった次郎とも顔見知りでした。その縁で、若狭国にたどり着いた安達春昌と次郎を自宅に滞在させしばらく養生させることになります。

萱の従姉妹で大領の渡辺氏の落胤である夏と共に、この後、寄る辺なき春昌たちの唯一の湊のような役割を果たすことになる女性です。

* * *


こちらは、私が「大道芸人たち Artistas callejeros」の稔の脳内イメージによくしている上妻宏光の一曲ですが、このイメージでお月見シーンを書く予定。素敵ですよね、この曲。

上妻宏光 風林火山~月冴ゆ夜~

そして、なぜフランス語なんだとツッコミ必至の妄想テーマ曲はこちら。しかも、書こうとしているシーンには、この曲を題材にしたとは到底思えない、日本的メンタリティの筆致で書こうと画策中です。きっと誰にもわからないだろうなあ。

Lara Fabian - Je t'aime


【参考】
「樋水龍神縁起 東国放浪記」をまとめて読む 「樋水龍神縁起 東国放浪記」
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