創作のメモ
わたしの小説は読んでいなくて、別の記事だけが目当てでいらっしゃっている方は、何がなんだかさっぱりで、しかも、あまり興味はないかもしれません。が、ここは(いちおう)小説のブログだから、こういう記事も許していただくということにしましょう。
昨日、無事に22222Hitとなりました。足繁く通ってくださる皆様に心から御礼申し上げます。記念リクエストですが、紆余曲折を経まして(なんだそりゃ)、「リナ姉ちゃん+誕生日」「リナ姉ちゃん+ツーリング+コラボ」「大道芸人たちinフィレェンツェ+コラボの続き」と三本書かせていただくことになりました。(順に紗那さん、左紀さん、YUKAさんのリクです)またしても小説爆弾連続投下になりますが、どうぞご了承くださいませ。
で、レギュラー(?)の小説でございますが、現在、執筆準備中、というか書き出したけれど途中で止まって勉強しなおしたり、展開を考えている長編小説は二つ。
「大道芸人たち Artistas callejeros 第二部」と、それから「森の詩 Cantum silvae - 貴婦人の十字架」
毎月一つずつと発表時期が決まっているので、優先して書いているのが二シリーズ。
「夜のサーカス Circus Notte」と「十二ヶ月の歌」
書くことに決めているけれど、まだ手を付けていない作品が二つ。
「Vive la vita ただ生きよ」と題名は決まっていないけれど「大道芸人たち」の外伝でカイザー髭のお話(かいじさんからのリクです。忘れてませんので。ただし、第二部のネタバレにつながるので、もうしばしご猶予を)。
不定期連載で何も決まっていないけれど、設定だけ少しずつ決めているのが二つ。
「リナ姉ちゃんのいた頃」シリーズと「樋水龍神縁起」の外伝で平安時代の男二人旅の話。
その他に、アイデアだけ、キャラだけいるなんて小説もそこらへんに転がっています。たとえば考古学の話やカンポ・ルドゥンツ村もので《ふざけたエステバン》がメインの話。誰からも再登場のリクはなかったのに、勝手に構想が進んでいる和菓子職人ルドヴィコと怜子の話(彩洋さんの小説から雑誌をお借りしたい話)。
ううむ。どれから手を付けよう。まあ、当分は書けそうですね。
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コメントの代りに
また、どうやら22222Hitは今日にあたってしまいそうです。この重い記事に記念リクエストは入れにくいでしょうから、その場合は、こちら(リクエスト置き場)にコメントで入れていただければ……。

人間社会の中で生きていると、かならずどこかに「勝者」と「敗者」ようなものが出来てしまい、「強いもの」と「弱いもの」にも別れてしまうような氣がするのです。
勝者云々については、目に見える簡単な形で言えば、どんな仕事をしているとか貯金がどのくらいあるのかというようなものもあるし、ネットの皆さんの大好きな「リア充」かどうかなんて基準もある。実際には、お金があっても不幸な人はいっぱいいるし、愛だって明確に計れる基準なんかないから、いりゃあいいってものでもないのですが、それはまた別の問題。
「強い、弱い」に関して言えば、筋肉体力の問題だけではなく精神的なものや、運のようなものもありますよね。ここまでが前提の話。
で、私が考え込んでしまったのは、その敗者なり弱い立場の人の心の中のことです。勝者や強い人に対する憧れや羨む感情もあるでしょうが、それ以外に、自分の心の中で前向きになることのできない、自分で自分を苦しめてしまう負の感情のこと。
「前向きになりなよ」そういってしまうことは簡単です。そして、それ以外に負のスパイラルから抜け出す道がないこともまた事実です。でも、それでも、前向きになれない人の苦しみを土足で踏みつけることの罪に、怯えてしまうのです。
私は社会的に言えば、勝者でもあるし敗者でもあります。強いものでもあるし弱いものでもある。その違いは基準をどこに置くかだけで、たとえば「結婚しているか」もしくは「一生をこの人と過ごそうと思える人間にめぐりり逢えたか」ということを基準におけばいわゆる「リア充」に組み込んでもらえる立場でしょう。別の基準に照らせば「どう考えても敗者」なこともたくさんあります。けれど、私が私についてラッキーだと思えるのは、どんなことであれ、自分の人生にあったこと、現在の状態を全肯定してしまえる「おめでたい」思考回路を持って生まれてきたことでしょう。
私は自分の人生をよりよくしていくために踏み出すことは出来ます。けれど、そうなれない人、もっと深い暗闇を抱え、希望も見出せず、全く必要のないことにまで怯えている人にどうしろという、上から目線のアドバイスの出来るような立場だとは思っていません。
私が今日この記事を書くきっかけとなった、あるブログの記事に対してはアドバイスもコメントもできません。でも、もし、誰か愛している人があなたに刃を向けて襲ってきたとしても、私はあなたの盾になるために飛んでいってあげたいと思っているから。物理的にも、それ以外のことでもそれが不可能だと知っていても、それが私のあなたへの想いだから。
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【小説】夜のサーカスと鬱金色の夕暮れ
![]() | 「夜のサーカス」をはじめから読む あらすじと登場人物 |

夜のサーカスと鬱金色の夕暮れ
日はずいぶんと長くなってきた。夜の興行がない日は、皆が町にでかけることができるように六時に夕食だった。そして、食べ終わった面々が次々と出て行ったあとも、まだ完全には暗くなっていなかった。
片付け当番にあたっていたマッダレーナは、立ち上がって、ヨナタンの席を見た。「舞台の下のナットのいくつかに問題があるので、先に食べていてほしい」と言われて、他のメンバーは待たなかったのだ。しかし、ヨナタンが食べ終わっていないのに、テーブルクロスまで片付けるのはためらわれたので、彼女は他のすべてのテーブルを片付けてから様子を見るために共同キャラバンの入り口に立った。
灰色と白の雲が交互に空を覆い、そこにあたる夕陽が暖かい色彩の複雑な綾織りを拡げていた。マッダレーナはケニアで過ごした少女時代を思い出してため息をついた。
「すまない」
小走りの足音に意識を元に戻すと、ヨナタンが戸口に向かっていた。
「ああ、手こずったみたいね」
そう訊くと、彼はわずかに肩をすくめた。
「相当すり減っていたみたいで、締まらなくなったのが二つあったんだ。予備がなくて、町に買いに行ったので遅くなった」
マッダレーナは、ワインを彼と自分のグラスに注ぎながら言った。
「でも、どうして、いつまでもあなただけが点検作業をやっているわけ? 最初の頃はともかく、今は道化師としてもジャグラーとしてもちゃんと働いているんだし、点検はこの片付け当番同様、みんなで持ち回りにするように団長に掛け合えばいいのに」
ヨナタンは首を振った。
「別に、掛け合うほどのことじゃないよ」
こうヨナタンが断言すると、あとは何を言っても会話が続かないことを知っていたので、マッダレーナはそれ以上言わなかった。実際にはマッダレーナも、この仕事をやれと言われても、きちんとできるとは思えない。舞台の点検は、仲間の命に関わる重大事だ。ちゃらんぽらんなマルコや、入ったばかりだけれど態度がでかく面倒なことを嫌がるマッテオが適当にやるよりは、十年以上にわたり黙々と点検を続けているヨナタンに任せておくのが安心なのは間違いなかった。
マッダレーナは、立ったままワインを口に運ぶ。食事をしながらヨナタンは言った。
「みんなは町に行ったんだろう。君も行っていいよ。終わったらちゃんと片付けておくから」
「ああ、言い忘れていたけれど、町役場からの伝達があったの。野犬に襲われる被害が続いているので、夜に一人で外出するなって。つまり今からは出かけられないの。どうせだから、このままつき合うわよ」
そういうと、マッダレーナはヨナタンの後ろの壁ぎわにおいてある古い木製のラジオのつまみを回してスイッチを入れた。
騒がしいロックに眉をひそめてチューニングをしたが、次に聞こえてきた曲で手を止めた。
「あ」
それは子供の頃に繰り返し聞かされたメロディだった。マッダレーナは、曲をそのままにして、椅子に座ってワイングラスを口に運んだ。
ヨナタンは静かに食事を済ませると、やはりワイングラスを傾けながら、クラリネットと弦楽器の静かな対話に身を置いていた。マッダレーナは、そのヨナタンの様子を見て、小さく微笑むと、ためらいがちに口を開いた。
「誰の曲だか知っている?」
ヨナタンは小さく頷いた。
「モーツァルトの『クラリネット協奏曲』だよ。これは二楽章だ」
「そう。父はいつも『愛と追憶の日々』の曲って言っていたわ」
「映画で使われたんだろう」
「そう。父がアフリカ狂いになる手助けをした映画よ。すっかりかぶれちゃって、こればかり聴いていたの。今日みたいに夕陽のたまらなく綺麗な日にはお約束みたいなものだったのよね」
少年だったヨナタンの周りには、アフリカ狂はいなかった。彼がこの曲を知っているのは、映画の挿入曲としてではなくて、純粋にモーツァルトの協奏曲としてだったが、やはり思い出に郷愁を誘われていた。
彼の思い出が連れて行った先は大きくて明るい広間だった。多くの人びとが着飾り、手にはさまざまな形のグラスを持ちざわめいていた。広間の奥には室内楽の楽団が陣取り、『クラリネット協奏曲』を奏でていた。残念ながら多くの客たちは、会話に夢中で音楽を聴いていなかった。少年だった彼は、その曲をゆっくりと聴きたかった。大切な人と何度か一緒に聴いた思い出の曲だったから。けれど、けばけばしく着飾った客がグラスや皿をがちゃがちゃ言わせてひきりなしに語りかけてくるので、彼は曲を静かに聴くことができなかった。
ヨナタンは、ワインを傾けながら、ラジオから流れてくるクラリネットの響きにしばらく耳を傾けていた。暖かい夕陽が最後の光を投げかけてから、テント村に別れを告げた。後ろにいるマッダレーナのわずかな氣配は彼の郷愁を邪魔しなかった。
マッダレーナは、何も言わないヨナタンの様子に、過去のことを訊いてみたい衝動に駆られたが、これまでも絶対に口を割らなかったので、無駄だろうなと思った。けれど、いつもよりもリラックスしている様子の彼のことを少し身近に感じた。ワインや夕陽でメランコリーな心地になったせいもあったかもしれない。ヨナタンのすぐ後ろに椅子を近づけて座ると、低い声で語り出した。
「あたしね、ライオンたちがいつも閉じ込められているのが可哀想だったの。今日みたいな夕陽の綺麗な時にはね、父さんに知られないように、ライオン舎に行ってジャスィリを連れ出してね。一緒に丘の上のガーデニアの樹のあるところまで駆けっこしたのよ。父さんは、蓄音機でこの曲をかけていて、その音が途中まで聞こえていた」
「ライオンと。綱が付いているわけじゃないんだろう? 逃げだしたりしなかったんだ」
マッダレーナは笑った。
「しないわ。だって、ジャスィリは、うちで生まれたんですもの」
共同キャラバンから漏れてくる光と、クラリネットの音色、そして二人の和やかな会話。ほんの少し離れたところに立っている少女の影は項垂れていた。ステラもみんなに誘われて町に行こうとしていた。でも、ヨナタンを待っていたのだ。もう点検が終わったか、大テントに確認に行ったら暗くなっていたので、共同キャラバンに探しにきたのだ。
ステラはこの曲を知らなかった。二人が浸っている思い出の世界に入っていくことができなかった。二人の会話のウィットや大人の機智、静かな目配せや微笑についていくことができなかった。自分だけが子供で、二人は大人に思えた。
ステラは、項垂れたまま踵を返すと、自分のキャラバンに向けて歩いていった。マッテオたちと一緒に町に行っていればよかった。そしたら、こんな光景は見ずに済んだのに。目の前がにじんできた。私、いったい、何をしているんだろう。何を泣いているんだろう。ヨナタンは何も悪いことをしていない。ただ、私が勝手に好きになって、勝手に期待して……。
その時、ガルルルといううなり声が聞こえた。ステラは、涙を拭いて振り向いた。暗闇の中、四対、いやもっと、目の光が浮かんでいる。野犬……。町役場から言われていた……。一人で外にいるなって言われていたのを忘れていた。ステラはそっと、後ずさりながら、共同キャラバンの方へと戻ろうとした。あそこには、ヨナタンとマッダレーナがいるから……。
「助けて…」
小さな叫び声だったが、共同キャラバンの扉が開いていたので、ヨナタンとマッダレーナはすぐに氣がついた。マッダレーナはすぐに立ち上がって、ラジオを消した。走るステラの叫びと、獣のうなり声が聞こえて、ヨナタンはすぐに走り出した。
「ステラ!」
ヨナタンはステラの側に駆け寄ると、少女と獣たちとの間に立ち、小石を拾って投げた。獣たちはそれに怯んで、動きを止め、一度下がった。だが、すぐに体制を整えて、再び近づいてくる。月明かりの中、獣たちの姿が浮かび上がる。野犬なんかじゃない、野生の、狼だ……。ヨナタンは心の中で呻いた。だめだ、石なんかでは追い払えない。怯えるステラをかばいながら、彼は飛びかかられるのを覚悟した。
その時、突然、恐ろしい咆哮がとどろき、二人と狼たちとの間に何かが飛び込んできた。巨大な獣の登場に狼たちは仰天した。それはヴァロローゾだった。マッダレーナはすぐにライオン舎に行って、頼りになる雄ライオンを連れてきたのだ。狼たちはライオンに脅されるなどという経験はしたことがなかったので、慌てて尻尾を後ろ足の間に隠して逃げ出した。
ステラは体の力が入らなくなり、その場に座り込むとガタガタと震えて泣き出した。ヨナタンは、そっと彼女を抱きしめると背中をさすって言った。
「大丈夫だ。もういなくなったから」
それは、温かい手だった。静かな声でそう言われると、本当にもう二度と恐ろしいことはおこらないように思われた。
ヨナタンが来てくれて、守ってくれたことが嬉しかった。この人はやっぱり私の王子様。わたし「だけ」の王子様でなくてもかまわない。願いが叶わなくてもしかたない。ただの子供と思われていてもいいから、どうしても側にいたい。ステラは気持ちの抑えがきかないまま子供のように泣きじゃくった。
ステラが落ち着くのを辛抱強く待ちながら、ヨナタンはマッダレーナに礼を言った。マッダレーナは首を振って言った。
「私は何もしていないわ。ヴァロローゾが追っ払ってくれただけ」
それからヨナタンにウィンクすると、共同キャラバンに鍵をかけて、雄ライオンと一緒にライオン舎に向かってゆっくりと歩いていった。
(初出:2013年4月 書き下ろし)
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こっそり、報告

二週間前の土曜日に、ギターを買いまして、毎日少しずつ練習しています。といっても、本当の素人でまだまだ本当に続くのかわからない状態なのですが。
実は、「大道芸人たち Artistas callejeros」を書いている頃から、何か楽器がやりたいなあと思っていました。私は合唱以外は音楽をまともにやったことがなくて(両親が音楽家だったにもかかわらず)、楽譜もぱっと見ただけでは追えないのですが、でも、老後に何か音楽を奏でられるようになっていたいなあと。
まあ、稔ぐらいちゃんと弾けるようになる日は永久に来ないでしょうが、自分が楽しめる程度にはなりたいなと秘かに夢みていたりするのです。
そういうわけで、ここ二週間、ずっと左の指が痛いままの私なのでした。
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「値下げして欲しいもの」
お題は「値下げして欲しいもの」なんですけれどね。なんか、お題にたてついているみたいで悪いんですが、最近「安い方がいい」という風潮に、いま一つ納得がいかないのです。
サービスにしろ、物にしろ、それにふさわしい対価を払うべきじゃないかって。私たちは「一円でも、一フランでも安く安く」と言い過ぎたせいで、大切なものを失っているんじゃないかって思うのです。
一枚のTシャツのことを考えてください。もし自分が布を買ってきて、ミシンの前に座って一枚のTシャツを作るとしたらどれだけの原材料費と労働時間が必要でしょうか。アルバイトとしてその仕事をするならどのくらいのバイト料を欲しいと思うでしょうか。ところがそのTシャツが500円だとしたら、あなたの手に渡るバイト料は100円くらいかもしれません。
だから安い物の多くは発展途上国で、とても安い賃金で生産されています。食べ物もそうで、とにかく安くするために私たちが想像するまともな形での生産はされていません。非人道的で、時には危険すら伴うことが、消費者の眼には触れない形でたくさん行われています。
その仕組みに、氣がついてしまったので、私は「安く安く」と言わないようになりました。できるかぎりちゃんとしたものを、数少なく、でも丁寧に取り扱う。
もし、ある商品が別の商品よりも安いのならば、その理由を知ろうとしています。たとえば、賞味期限が迫っているので半額などというものは買ってすぐに使うなんてこともします。家電などは少し高くても日本製の物を買います。別のアジアの国のメーカーのものを安さに釣られて購入し、不具合に泣かされたことがありますから。
こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当山本です今日のテーマは「値下げして欲しいもの」です。何か欲しいものややりたいことがあった時、もうちょっと安かったら!!など、思ったことありませんか?山本は貧乏性なので頻繁に思うのですが、最近思ったのは「電子レンジ」だったりします!高性能なレンジがどんどん出ていますが、機能が良いだけにお値段もそれなり…しかしレンジにそんなにお金をかけていいものか…と、...
FC2 トラックバックテーマ:「値下げして欲しいもの」
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広告が出たブログ
で、なんらかの事情でお別れの記事とともにブログをおやめになる方もいるのだけれど、中には普通に更新していたのが何の前触れもなくぴたりと更新が止まってしまう方もあるんです。
私のように毎日更新しているブログだと、一週間更新がなかったら「どういうこと?」と思うだろうけれど、多くの方は毎日は更新しないので、「お忙しいのかな」と何も考えずに毎日訪問していたりするのだけれど……。
そして、広告が出るんですよね。こちらはびっくりする。「えっ、もうひと月、経ったわけ?」
毎日、忙しく生きていると、一ヶ月なんて本当にすぐ。だから、そんなに経ったなんて意識はないのです。
広告でちゃって、数ヶ月になる方々、どうしていらっしゃるんだろう。ブログなんてどうでもいいような楽しくて充実した日常を送っていらっしゃるといいなと願ってみもしますが。つい最近お二人ほど、そういう方々が復帰なさったのですよ。二度あることは三度あると言うし、また、ひょっこり戻ってらっしゃるかもしれないから、もうしばらくはリンクも訪問も続けてみようかなとは思っています。
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【小説】なんて忌々しい春
「十二ヶ月の歌」はそれぞれ対応する歌があり、それにインスパイアされた小説という形で書いています。四月はロレッタ・ゴッジの“Maledetta Primavera”を基にした作品です。日本だとあまり有名ではないのですが、イタリアの懐メロとしてはかなりの知名度がある曲です。スイスでもかなり流行ったらしく、ある程度の年齢の方はみな知っています。
日本の方には馴染みのない曲ですし、ネットではなかなか全文の和訳が見つからないので、私の訳で申しわけありませんが追記にくっつけておきます。言っておきますが、私はイタリア語は素人ですので、大体こんな意味程度に思ってくださいね。Youtube動画と一緒にどうぞ。

なんて忌々しい春
Inspired from “Maledetta Primavera” by Loretta Goggi
丘の上から一陣の風が吹くと、湖の果てまで突然色が変わる。それはまるで、モノクロだった映像が突如として総天然色のフィルムに置きかえられたかのよう。草原の緑は茶色めいていたはずなのに青みが増して瑞々しくなる。タンポポやスミレ、咲き乱れる桜。湖をわたる白い船。春の訪れだ。
大臣の母親であるダゴスティーノ夫人が主催する湖畔のヴィラのパーティは、この魔法のような日からいつも一週間以内に開催されるので、みな不思議に思っていた。招待状が来るのは二ヶ月も前なのだから。
シルヴィアはコーラルピンク色のシフォンに、白と黄緑の造花風レースで縁取りをした華やかなワンピースドレスを小粋に着こなして、薔薇の香りに満ちた庭に華やかさを添えていた。彼女の周りには、いつも人びとが集い、笑い、スプマンテのグラスを重ねる音が響いた。
「あいかわらず、美しいね、シルヴィア。モレーノは本当に幸せ者だな」
「ありがとう、アンドレア。あいかわらずお世辞が上手なのね」
「お世辞じゃないよ。君がモレーノと結婚するって聞いた時に、そこのオルタ湖に飛び込もうって本当に思ったんだぜ」
笑い声を聞きつけて、ダゴスティーノ夫人がこちらに向かってきた。
エメラルドグリーンの袖無しのロングドレスに、白いボレロを羽織った夫人は、もう八十近いというのに腰も曲がらず、矍鑠とあたりをはらう足取りで、周りの人間は自然と道をつくった。
「ようこそ、シルヴィア。クリスマス以来だわね」
「ますます綺麗になられて、大叔母さま」
「ほほほ。女盛りは五十からですからね。あなたもようやく本当の色氣が出てきたわね」
北イタリアの社交の中心である二人は、いつもこのパーティの花形だった。そう、夫人の息子であるダゴスティーノ大臣やその年若き妻のクレアがいつもかすんでしまうように。北イタリアの、ということはつまり、イタリアの経済界で活躍するものならば、だれもがダゴスティーノ夫人の春のパーティに招待されることを夢みていた。このパーティに顔を出しているということは、とりもなおさず重要人物になったということだった。ここでスプマンテやワインで乾杯し、グリッシーニやポモドーロ・セッキの載ったクラッカーを口にし、キスを交わし、たわいもない社交話に興じる。重要人物の妻と知り合ってビジネスが波に乗る実業家も、首相と握手をして貿易上の便宜を手に入れた外国人もいた。
主催者でいながら夫人が全く知らない有名人も多かった。だが、誰もそんなことは氣にも留めていなかった。ふさわしくないものは、招待状を手にすることはできないのだから。
シルヴィアは、もちろん毎年このパーティに参加していた。モレーノ・フォルトゥナートと結婚してから十四年間、夫が政治の世界に進んでからは、このパーティでの役割も大きく変わった。頭は切れるが社交的な才能は今ひとつの夫をサポートするのに、シルヴィア以上の適任者はどこにもいなかっただろう。彼女は、笑顔を振りまきながら、広い庭園を歩き回った。
「シルヴィア。紹介したい人がいるんだ。先日、ミラノの会議で知りあった富豪なんだけれど」
モレーノの弟ルチアーノが人びとをかき分けて誰かを連れてきた。
「ヴィーコ夫妻だ」
シルヴィアの笑顔は固まった。
彼はまったく変わっていなかった。精悍な鼻梁。濃い眉。鋭い眼光。ティーンエイジャーだったシルヴィアが、ひと目で恋に落ちたあの頃と。そう、服装が全く違っているだけで、あの時のままだった。
「シルヴィア、久しぶりだね」
ルチアーノが眼を丸くしているのを無視して、ジャンカルロはシルヴィアの頬にそっとキスをした。昔の親しい友達のように。そうじゃないでしょう。あなたは、そんな生温いキスをしたことはなかったじゃない。あなたはいつも私の唇を激しく奪ったのに。
「紹介するよ。妻のクラウディアだ」
シルヴィアは、ジャンカルロが微笑みながら紹介した女性にはじめて意識を向ける。群青色のシンプルなワンピースに身を包んだブルネットの女性。なんて言ったの? 妻って言った?
むさぼるようなキス。力強い抱擁。世界が終わっても一緒にいたいと思った。一緒に笑いこけ、ワインを飲み、ロウソクの焔をはさんで見つめあった。他には何もいらないはずだった。それなのに、シルヴィアは、家族に反対された時に、家を出てまで愛を貫くことができなかった。
「ダゴスティーノの娘が、貧乏学生と結婚するなんて、到底無理よ」
母親と、大叔母に断言されて、親友に心配されて、あんな貧乏な暮らしに堪えられるはずがないと諭されて、結婚するなら一切の縁を切ると父親に怒鳴られて、彼女は彼の手を離してしまった。
「君しかいらない。だから、僕を選んでくれ」
ジャンカルロの目を避けるように、指輪を置いて走り去った雨の夜。シルヴィアは心の芯まで濡れた。
その女は誰なの。どうして当然のようにあなたの隣にいるの? なぜスプマンテのグラスを重ねてあなたとキスをしているの。
「シルヴィア。どうした?」
はっと意識を戻すと、となりには夫がいた。モレーノは丸眼鏡のふちをちょっと持ち上げながら、赤ワインを飲んでいる。
「なんでもないわ」
自分の人生のことを思い出した。政治家の妻としての、華やかで忙しい日々。ワインと、花束と、買い物と、それからあまり好きではないけれど教会の集いや学校や老人ホームの訪問。この十五年は慌ただしく過ぎ去った。その間、何度もこれでよかったのだ、私にはこの暮らし以外は無理だったと思ったのだから。あの狭いアパートで、トマトしか入っていないフェッチトーネだけを食べて暮らすことなんかできやしないって。
けれど先ほど見かけた、あのクラウディアって女は、そんな暮らしはしていなさそうだった。ワンピースの生地の質は悪くなかったし、帽子も今年の流行のものだった。ジャンカルロ、あなたの趣味は悪くないわね。とてもきれいな人。ファッションも振舞いも合格よ。もちろん、私の方がずっと綺麗だけれど。
ルチアーノは彼のことを富豪だって言っていた。だとしたら、私は何のために泣いたのだろう。もし、あの夜にあのアパートを飛び出していなかったら……。
シルヴィアは、パーティの終わる前に洗面室に行くふりをして、取り巻きの連中から離れ、庭の間を歩いた。黒髪の巻き毛、精悍な瞳の男の面影を探して。あなたが富豪になったのは、私と同じレベルに上がってきたかったから? そうではなくて? あの言葉を忘れたの?
「君しかいらない」
湖には光が煌めき反射して、眩しかった。つる薔薇のアーチの向こう、人びとから少し離れた所に、シルヴィアは白いトーク帽と群青色のワンピースを見つけた。その隣には忘れもしない後ろ姿の男がいて、妻の腰に手を回し、湖を見つめている。彼女は、幸せそうに頭を彼の肩にもたせかけた。彼はゆっくりと妻の額にキスをした。
シルヴィアは黙ってその場に立ちすくんだ。あなたはその女性を愛しているのね。何かと引き換えに仕方なしに結婚したのではなくて。しばらくそうしていたが、やがて背中を向けると、取り巻きたちの待つバルコニーへ、夫や大叔母のいる社交の中心へと戻るべく、引き返していった。
ふと振り向いたジャンカルロは、邸宅の方へと歩いていくコーラルピンクのドレスの後ろ姿に目を留めた。シルヴィア。愛と憎しみで昼も夜も、何年も想い続けた女。そのエネルギーが彼をただの貧乏学生から、ミラノの成功者に押し上げた。だが、そのエネルギーは使い果たしてしまったのだろう。再び彼女の姿を目にしても、喜びも、怒りも、何も浮かんでは来なかった。この日を怖れつつも期待して待っていたはずだったのだが……。
「フォルトゥナート夫人と知り合いだったなんて、知らなかったわ」
クラウディアがぽつりと言った。
「君に訊かれなかったからね」
ジャンカルロは短く答え、付け加えた。
「それに十五年も、一度も会っていなかったんだ」
忌々しいほどに華やかで美しい春だった。そこにはフォルトゥナート夫妻の歴史や、ヴィーコ夫妻の物語しか存在していなかった。過去にシルヴィアとジャンカルロが夢みた永遠の愛は、ただの愚かな幻想に変わり果てていた。
あれは春だった。狂おしい、大切な時間だった。もうどこにも存在しないとしても、歌って、トマトだけのフェッチトーネを作って、そして力のかぎり抱きしめあったその二人の、遠い遠い笑い声だけが春風に乗ってこの丘を通り過ぎていく。
あれは忌々しい春だった。シルヴィアとジャンカルロがもう一度戻りたくても戻れない、たった一つの春だった。
(初出:2013年4月 書き下ろし)
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宵のひと時

田舎暮らしも十数年。この静かな環境に馴染んだなあと思います。
私は東京育ちで、都会も大丈夫なタイプです。多少車がうるさくても眠れるし、たぶん東京に戻ることになっても狭い空間に簡単に馴染むだろうと思います。それでも、今いるこの村で見つける日常のふとした美しさには、毎回感動し、ここにいられることを心から喜んでいるのです。
これは、先週、台所の窓から撮った宵の光景。三日月と宵の明星、それに空の色。静かで心洗われる時間でした。ぶれないように写真が撮れてよかった。
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コーヒータイム
この写真の下の方のしまうまのエスプレッソ・カップ、これとお揃いのマグカップを彩洋さんはお持ちなのですよ。

私が、このエスプレッソ・カップを買ったのは、結婚してまもなくの頃でした。ミラノだったでしょうか。当時ははじめて所帯というものを持ち、完全に独立したので食器などもこれから増やして……と浮き浮きしていた頃でございました。で、「旅行に行く度に、一つずつエスプレッソ・カップを増やしていくぞ」という野望を持ったのです。
直に、それは不可能なことがわかりました。私たち、本当によく旅行に行くのです。その度に買っていたら食器棚から溢れてしまう! それで、その計画は頓挫しました。でも、あの当時からの大切なカップは健在です。隣にあるのはスペインで買ったオレンジ柄。
で、普段はエスプレッソは飲まないので、後ろにあるマグカップが活躍しています。どなたかのお土産にいただいたもので、たぶんユーゴスラビアのもの。だから書いてある文字もよく意味が分かりません。でも、旅心を誘われるいいマグカップです。たっぷりミルクをいれて、熱いコーヒーを飲むゆったりとした時間、かなり好きです。
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君の瞳は……
で、その続きです。
連れ合いは当然ながらスイスのパスポートを持っているのです。で、今のパスポートにはなくなってしまったのですが、前のパスポートには「瞳の色」「髪の色」って欄があったんですよ。日本のパスポートでそんなことを記載したら全部同じになってしまう(笑)
で、瞳の色ですが、「(パスポートに書いてある)茶色じゃないじゃん」とツッコんでおりました。彼の瞳の色なんですが、茶色っぽく見えるけれどオリーブみたいな色なんですね。「そういう色で、世界は私と同じに見えているのか?」といつも思います。その部分で見ているわけではないんでしょうが、感覚的に。
彼は身近なので、瞳の色も知っているのですが、実は、他の人の色は全く憶えていません。たとえば義母の瞳ってどんな色だろう? 髪はたいていの知り合いについて憶えているのですが、瞳はちゃんと見ていないことが多いんですよね。
ブログの小説だと、オッドアイ(両目の色の違う人)キャラをよくみかけますが、本当の世界では、犬やネコはともかく人間にはそんなに頻出しないだろうと思って、しばらく周りを観察したことがありました。そしたら、身近にいたんですよ。事故で後天的になった同僚なんですが、私はその人の瞳の色が違っているのを五年ほど氣がついていなかった……。全く見ていないらしい。
日本の人の瞳の色はわかりますよ。全員茶色でしょう?
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遊びゴコロ
す、すみません。取り乱しました。本文とは、全く関係ありません。
私は、あまり面白みのない人間で、ジョークを言って周りを和ませたりするのが苦手です。周りを笑わせるのって、特別の才能だと思うのですよ。人に笑ってもらおうと頑張ると、すべる。だから「これは考えに考え抜いたジョークです!」と言わんばかりの話では人を笑わせることってできないのですよね。
本当に上手な方は、たとえそれが計算尽くされたものであっても、さらっと出てくる。小説でも、マンガでもそうです。
で、ケーキ一つにしても、こんなのを作ってしれっと売ってしまうお菓子屋があるのですね。これは春のポルト旅行で見かけたのですが、かなりの脱力ものです。スイスでは絶対に売っていなそう。さすがラテンの国、ポルトガル。

よく見ると、台になっているケーキ自体も、あまりおいしそうではないのだけれど、何故か目が釘付けになってしまい、地元民でプレゼントする相手がいたら、絶対買ってしまいそう……。
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「初対面で一番最初に見るところ」

今日はトラックバックテーマです。
「初対面で一番最初に見るところ」ってテーマなんですが、最初は「そんなの顔に決まっているじゃない」と思ったんですけれどね。実は、何も見ていないかも……!
とても失礼なことなのですが、私はなかなか人の顔を憶えられません。で、よく考えたら見ていない可能性が。
スイスに来たばかりの頃、もちろんまだ仕事もなかったので、私は暇でした。で、連れ合いの仕事場でぼーっとしていました。連れ合いは二輪車の修理と販売を生業としているのですが、直したものを試乗していたり、客の代りに車検に行ったりして私だけがそこにいるということもたまにあったのです。
で、その間に誰かが来る。特に用事があるわけでもなさそうだが、会話ができるわけでもない。で、その人は去っていく。帰って来た連れ合いに訊かれます。「どんな人だった?」
「え〜と、ヨーロッパ人」
すみません。人の顔をまじまじ見るのって失礼だからと、全く見ていなかったことが判明しました。
こんにちは!トラックバックテーマ担当の新村です今日のテーマは「初対面で一番最初に見るところ」です!!「初めまして」の人とお話するとき、あなたはどこを見ていますか?私はその人の雰囲気に注目します。初対面だと誰しも気を使うし、緊張してあまり話せないのでなんとなーくの空気というかその人らしい雰囲気を見るようにします一番わかりやすいのは笑顔ですね基本的に笑顔だと、すごくいい雰囲気に見えますが笑い方とか笑顔...
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この世は毒ばかり
ベルトコンベアー式に「生産」されるひどい養鶏の話や、肉を新鮮に見せるためにガスを注入する大手スーパーの話、または大手通販のブラック企業ぶりなどをガンガン告発しちゃっているわけです。テストも「これはいい」「この部分はアウト」をはっきり言ってくれるので、値段との折り合いでどの商品を選ぶかは視聴者、消費者に任されるわけですが、このスタンスは日本のテレビよりもずっと信頼できるなと思うのです。
で、今日の本題。ビスフェノールAという物質をご存知でしょうか。食品の包装容器からレシートのインクにまで広く使われている物質です。神経異常を引き起こす可能性があり、特に胎児や乳幼児の影響が強いと言われています。日本語で、この物質のことを検索すると「有害とは認められない」という方向に近い書き方をされていますが、ヨーロッパではかなり黒に近いグレーで、妊娠中の人間はレシートに素手で触れるなという人もいます。
で、じゃあ、これを避けようかと思うとですね。本当に難しいのですよ。ペットボトル、旅行の必需品です。しかも、暖めると水中に溶けやすくなるってことは、ペットボトル入りのお茶暖めたのはアウトですよね。私が普段使っている計量カップ。プラスチックです。熱湯を計ってますね、アウト。缶詰のトマト。缶詰の錆び止めに使われているんだそうで酸味のあるトマトなどで溶け出すんだそうです。トマト缶、はい、大量に使っています。今月は仕事で、大量のレシートを印刷。料理の保存にポリ袋。もしくはタッパウェア。
たった一つの物質でこの騒ぎです。で、有害だといわれている物質は、これだけではないんですよ。さて、聞かなかったことにすればいいのか、それともできる範囲で生活を変えていけばいいのか。現代社会を生きるのは、いろいろと大変です。
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【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (2)百花撩乱の風 -3-
前回、真樹の同僚の「樋水村……。そりゃ、ヤバいぞ」で切ったのですが、その続きです。いかにも「続きは次号で!」や「衝撃の事実はCMの後!」のような引っ張り方ですが、まあ、例に漏れず(以下省略)。
それと、おわかりだと思いますが、この小説はフィクションです。実在する団体、人名、地名、宗教とは一切関係がありませんので、混同なさいませんようお願いいたします。
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この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物
樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(2)百花撩乱の風 -3-
「何がヤバいんだよ」
「あの村は特別なんだよ。樋水龍王神社はあんなに小さいくせに、やたらと崇敬者が多いし、宮司には出雲大社を動かすほどの力があるんだ。村人の四人に一人は霊感があるって言うし、変な事が実際に起きるらしい。それだけに結束がやたらと強くて、よそ者に厳しいんだ。以前、若い娘を松江の男が孕ませたら、徹底的に破滅させられたって話だぜ。お前も氣をつけろよ」
小さな神秘的な村。瑠水はその四人に一人の能力があるのだろう。神社の池に龍がいるなんていう高校生がいれば、そりゃあクラスメイトはひくだろう。だが、たぶん瑠水の今までの環境では、それは当たり前のことだったのだ。
「龍って、どういう形をしているわけ? 絵に書かれているのと似てる?」
好奇心から真樹は訊いてみた。
「龍王様の方は、ほぼ同じ。角があって、鱗のある長い胴体があるの。顔はトカゲみたいでもあるし、おじいさんみたいな感じでもあるかな。色は真っ白なのよ」
「龍王様の方はってことは、他にもいるのか?」
「青白いのがね。お母さんは龍とはいわないで
「どうして?」
瑠水は戸惑った。龍のことや蛟のことは樋水村では事実として受け止められていた。『見える者』とそうでないものがいたが、とにかく存在するのだということは、宮司のお墨付きで認められていた。けれど『水底の皇子様とお媛様』のことは、瑠水の妄想だということになっていたのだ。瑠水にとってはあの二人が本当でないなら龍だって同じなのだが、他の人にはそうではないらしかった。
「あのね。子供の頃から大切にしている夢物語があるの。それは蛟が通る時にとても強くなるの。だから、私は蛟が好きなの」
真樹はちっともわからないという顔をしていた。瑠水はため息をついた。せっかく仲良くなったのに、こんなことで氣味の悪い子と思われたくない。
「池の底にね。誰かがいるの。二人。その二人はいつも一緒で、とても幸せなの。私は、子供の頃からその二人を感じていて、皇子様とお媛様って呼んでいるの。その二人を感じる時には、心の中に風が吹いてきて、幸せで泣きたくなるの。ちょうどバイクに乗っているときみたいな風なの」
「なんで瑠水はそんな悲しそうな顔で、その二人のことを話すんだ?」
瑠水は、驚いて真樹を見た。真樹はうんざりした顔も、馬鹿にした顔もしていなかった。
「だって、みんなそんな二人はいないって言うんだもの。私だけの妄想みたいに言われているの。だから、二人のことは子供の頃からずっと誰にも話していなかったの」
真樹はぽんと瑠水の頭を叩いた。
「自分が見えないからって、威張ることはないよな」
真樹はもちろん龍とも霊とも無縁だった。だが、自分の感性だけを基準にして相手の感性を全否定する人たちの心ない言葉のことはよくわかっていたので、この感受性の鋭い少女の孤独がよくわかった。
「シンはこういう話、氣味悪くないの? 出雲の人たちはみんな私のことを変な子だって言うよ」
「お前がへんなのは間違いないけれど、その二人が見えるからじゃないよ。俺にはお前に見える龍だの皇子様だのはたぶん見えない。でも、俺はお前が馬鹿げた嘘をつくような子じゃないことはわかっているよ。それに、その風がバイクの風だっていうなら、なおさらだ」
「どうして?」
「具体的だからさ。どういう感覚か、俺にもわかるもの。なあ、大切なものはいずれにしても人の目には見えないんだ。そうだろう? クラッシック音楽を聴いた時に湧き上がる感情や、バイクに乗るのが好きな理由、それに人を愛することだって数学の公式みたいには証明できないんだ。お前はお前のままでいいんだ。見えているもの、大事なものを大切にしろ」
「うん。ありがとう。そんな風に言ってくれたの、シンが初めて」
それから、瑠水と真樹は定期的に出かけるようになった。
一は早百合が生まれた時に、いずれは自分も娘のボーイフレンドに大騒ぎするようになるのかと思っていたが、早百合が幼児の頃から早良彰にべったりだったのでそのチャンスを逃していた。いよいよ、騒ぐべきときが来たかと思ったが、意外にその氣になれなかった。真樹はぶっきらぼうだったが礼儀正しくて、しかも、毎回堂々と『たかはし』に瑠水を送り迎えするので特にケチを付けるところもなかったのである。しかも、瑠水は完全にお友達感覚で、男とつきあっているという意識がなかった。
真樹が帰った後に、摩利子がぼそっと言った。
「仲いいみたいだけど、このまま恋仲になるのかしらねぇ。どうしたものかしらね」
「シンくんは瑠水の相手としてはダメかい?」
一は摩利子に話しかけた。
「ダメだなんて言っていないわよ。でも、別におすすめじゃないわよね」
「なんでさ。バイクに乗っているから不良って言うんじゃないだろうね。新堂さんだってバイクに乗っていたよ」
「不良だとは思ってないけど、でも、そういうシンクロが氣になるのよ。瑠水はやけに樋水や龍王の池に固執するし、六白金星だし。シンくんだって六白なのよ。タヌキ宮司に目を付けられて『背神代』と『妹神代』にでもされたら困るじゃない」
「武内先生をタヌキっていうのやめろよ」
「ふん。新堂さんだってタヌキって言っていたわよ。タヌキはタヌキだもの」
「せめて外や子供たちの前では言うなよ」
「わかっているわよ」
一は深く息をついた。
摩利子は意地悪そうに言った。
「普通は、娘に虫がつかないように騒ぐのは男親の方なんじゃないの?」
一はムッとしたように言った。
「虫はつけたくないけど、シンくんは悪い子じゃないよ。それに、俺だって摩利ちゃんのお父さんから見たらロクでもない虫だったんだろうから、俺はシンくんに同情するんだよ。誰もが新堂さんや彰くんみたいに出来た男じゃないんだ」
「彰くんねえ。勉強はできるし、エリートコースまっしぐらなのは間違いないけれど、新堂さんと較べるのはちょっと。大体、早百合の勢いに押されっぱなしで」
「まあ、それはそうかも。早百合は彰くんに夢中だからな。ま、平凡だけれどいい奥さんになるんじゃないか」
「そうね。でも、瑠水はねぇ。我が娘ながら、どっか超越しちゃっているのよねぇ。次郎さんは媛巫女さま扱いだし……」
「だから言っているだろ。瑠水はゆりの生まれ変わりなんかじゃない。ゆりはきっとどこかで生きているんだ。それにシンくんだってあまりにも新堂さんとはキャラが違いすぎるよ」
「シンくんが新堂さんの生まれ変わりじゃないことははっきりしているわよ」
「なんでさ。オーラの違い?」
「馬鹿ね。計算してみなさいよ。シンくんが生まれた頃は、新堂さんはうちで山崎を飲んでいたでしょ」
「あ、そっか。千年祭の年の生まれなんだ」
「私は瑠水もゆりさんの生まれ変わりではないと思うのよね。オーラの色は似ているし、『見える者』であることも間違いないけど、でも、なんとなく違うと思うのよ。でも、それでも心配なの。あまりにも樋水の申し子っぽくて『鬼』に目をつけられるんじゃないかって。だからボーイフレンドが申し合わせたように六白だったりバイクに乗っていたりすると、よけい心配になっちゃうのよねぇ」
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ムパタ塾のこと - 12 -

ムパタ塾のカリキュラムの一つとして、現地の小学校を訪ねて、彼らと触れ合い、サッカーボールや文房具などを寄付するという日がありました。でももちろん子供たちとはひと言もコミュニケーションできないわけなんですが(子供は英語も話せませんしね)、わーっと寄って来たり、一緒に歌ったりして少し触れあったわけです。
この子供たち、屈託のない年相応の子供たちではありますが、それでも日本の子供たちとは少し違うような氣がします。中には、赤ん坊の妹を背中に背負って十キロも歩いて学校に通う子供がいるとききました。両親がいなくなってしまい、隣人や救済機関の援助を受けながらも妹の面倒を見ている十歳くらいの子供もいるとか。学校から帰って、かまどに火をおこし、煮炊きをする子供。それができるんだというのは驚きでした。
かつては、女性は初潮と同時に結婚していた、つまり十二、三歳で大人扱いだったことを考えると、もともとヒトはそのくらいで独り立ちできたということなのかもしれません。社会が複雑になり、子供が親の元で過ごす時間が長くなった先進国では、エネルギーのすべてが脳の発達に向けられているのか、小学校卒業ぐらいの年齢で「さあ、後はご自分で」といわれても困るのが普通だと思います。スイスもそうです。二十五歳になっても料理どころかまともに掃除すらできない人もいます。
アフリカの子供たちと、日本やスイスの子供たちでは置かれた環境が違います。だから簡単には比較できないことはわかっていますが、それでも、人間の成長の速度というのは、実は育てている方(親や社会)が決めてしまっているのではないだろうかと、思ったのです。
私の母親は、あまりこまこまと世話を焼かない人でした。そのおかげで私は中学生の終わり頃にはガスの火でご飯を炊いたり、簡単な食卓を用意することができる程度にはなっていました。塾に行ったりもしていなかったので、親を手伝う時間もありましたしね。
いまの私は、全く怖がらずに薪ストーブに火をくべたり、十キロ以上を歩いたり、ドイツ語しか通じない人たちと会話したり、日本にいた頃には「無理!」ということをあたりまえにしているわけですが、これも歳を食ったからではなくて、必要ならば10歳でもできるんだろうなと。
小学校訪問のことを思い出しながら、そんなことをうっすらと考えた私でした。
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春だから、注意しましょう

これ、わかります? 冬眠していたカエルが出てくるから、ひかないでね、という標識です。確かにこの時期はカエルやら、蛇やら、いろいろ轢かれてしまいがちなので、運転する方も氣をつけるべきなんですけれどね。わざわざ公式に立てるのかとびっくりしたわけです。
鹿の飛び出し注意というような標識は前からよく見ていて、それは事故が起きると車に乗っている方も危険だからだと思っていました。でも、カエルは確実にカエルのことを心配しての標識です。優しい。
田舎だから、平和だから、他にやることがないから、なのかもしれません。そうであっても、この心に余裕のある交通標識の世界はいいなと思います。なごみました。
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『Seasons-plus-』2013 春号
今日は、「Seasons」の宣伝です。このブログ、もともとは「Seasons」への参加をきっかけに、読者との交流目的で作ったのです。もっとも当初の目的は、とっくに明後日の方向に行ってしまいましたが……。
『Seasons-plus-』2013 春号の予約が開始されました。

2008年夏に創刊された、詩・短編小説・イラスト・フォトで綴る季刊誌『Seasons-plus-』。
詩、短編小説、ショートエッセイ、俳句、短歌、歌詞、イラスト、写真で綴る参加無料の商業誌です。
私の参加はこれで五回目となります。短編小説と写真、それにショートエッセイも投稿しています。今回も、リアル友でもあるうたかたまほろさんが小説に素敵なイラストをつけてくださっています。
興味のある方、ご購入は、こちらからどうぞ。
ポエトリーカフェ武甲書店
専用ブログ
太陽書房
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樋水龍神縁起の世界 - 6 -

三回に分けてアップしている「百花繚乱の風」の章のイメージは、やはりスイスで私が連れ合いにバイクに乗せてもらって知った幸せな感覚から来ています。
日本では、バイクに乗ったことはありませんでした。車の中で、電車の中で観る光景と、風を受けながら感じる光景は全く違っています。
子供の頃から、私は風が好きでした。風は気象の一形態にすぎないのですが、私にとっては空氣がある場所から別の場所に移動する、それだけの現象とは全く違っています。
「樋水龍神縁起」で主人公の幸福を表すのに使った、二人で受ける風の世界を、続編でも繰り返すことによって、同じ人間ではなくても感じることのできる普遍的な想いを表現できたらいいなと思っていました。
この写真の花水木はイタリアのオルタ湖の近くで撮影したものです。長い冬が終わり、バイクを引っ張りだしてイタリアまで行きました。湖は輝き、丘の上にはありとあらゆる花が咲き乱れて、春らしい香りに満ちていました。
自然は、生命を謳歌していました。どれほど灰色で冷たい冬が永遠に思われても、大地はやがて甦り、このように誇らしくも輝かしい春が生命をほめ歌うのです。自然の不思議と美しさを実感する時間です。真樹と瑠水がバイクの上で共有した時間は、このイメージからできているのです。

官能的表現が一部含まれるため、成人の方に限られますが……「樋水龍神縁起」四部作(本編)は別館にPDFでご用意しています。

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「春っぽい写真、見せてください!」
氣をとりなおして。本日はトラックバックテーマです。

春っぽいと言われると思い浮かべるのは今の時期の花よりも少し後の花。この写真はリンゴで、他にはリラなどを思い浮かべます。日本だとやっぱり桜でしょう。
春の始まりは、水仙やスミレの開花です、そのあと、レンギョウが咲き出します。今は、ちょうどそんな感じです。その後、梨の花が清楚な白い花を咲かせます。その後は、何もかも一緒くたです。桜、八重桜、リンゴ、リラ……。うちのすぐ側にはライン川の支流が流れているのですが、その対岸にはタンポポが一面に咲く所などもあります。
リンゴの花が終わると、こちらでは速攻で夏が来ます。でも、それは五月の半ばぐらいですからね。そう、春といったら、私には四月の終わりから五月のイメージなのです。
こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当ほうじょうです。今日のテーマは「春っぽい写真、見せてください!」です。今年は突然暖かくなって、桜が早いうちに一気に咲いてもう散ってしまってるところもあるかもしれませんねまだまだ雪も降っているところもあると思いますが、周りの雪が少し溶けてきたり、春の植物が生えてきたり…何かしら、春のきざしはありませんか?今日のトラックバックテーマでは、「春っぽい」写真...
FC2 トラックバックテーマ:「春っぽい写真、見せてください!」
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ポルトの風景
山西左紀さんの小説「絵夢の素敵な日常(10)Promenade」
さて、近年の日本でも(もちろんスイスでも)西洋風の建物を意識的に建てているのですが、その光景がどうも私の馴染んでいる「美しいヨーロッパの街」の建物と違う。別にそれでもいいのですが、人間の目というのは実に良くできていて、その違いを一瞬でとらえてしまうのだなと思いました。
で、何が違うのかというと、装飾です。壁の装飾、アーチの複雑さ、彫刻、タイル、窓枠飾り、そう、非経済的であるという理由でだれもつけない不要な飾りの数々が街の景観の美しさを創り出しているのです。下の写真、マグノリアに隠れている建物、時計の周りの装飾がありますよね。東京で言うと、国会議事堂や日銀、三越本店など大正時代までの石材建築物にはこうした美しい装飾があります。こうした陰影のある、自然素材を生かした美しい建物は、時を経て、雨風や生活によって朽ちていく時にも、えも言われぬ雰囲氣をもたらすものです。そう、古くなればなるほど円熟して味が出るのです。

今の建築物には、まずありません。第一に何の役にも立たない、それに、メンテナンスに手がかかる、こんなところに手をかけるぐらいなら、高層にして中に近代的なエレベータを設置することでしょう。しかし、こういう無駄な装飾が街を美しくしているのです。それもバラバラにではなくて、街全体の多くの建物がこうであることが。(日本の木造建築もとても美しいものです。複雑な梁や扉がシンプルでいながら単調にならない、眼を楽しませる作りになっています。年を経るに連れて色が変わりしっとりとしてくるのも美しい。ただ色あせていく廉価な素材とは明らかな違いが出ます)
さて、この下にもポルトの街を興味深くしている写真をたくさん並べました。写真が多くて困る方もいらっしゃると思うので、一応閉じてあります。
他の写真も表示する クリックで開閉します
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【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (2)百花撩乱の風 -2-
マーラーの「巨人」は、のめり込むタイプの人が好きになる音楽じゃないかなあと思います。私がこの曲を知ったのは、ずいぶん子供の頃でした。父がソロ部分を弾くのでかなり練習していたのです。ヴァイオリンなどと違って、オーケストラでソロになることなどほとんどない楽器でしたから、父のソロはかなり珍しかったので記憶に残っているのでしょう。あ、すみません。本文とは全く関係のない話でした。
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この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物
樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(2)百花撩乱の風 -2-
「あ。いた、いた」
その声に目を開けると、瑠水が覗き込んでいた。
「この間も火曜日だったから、今日はここにいるんじゃないかと思ったの。大正解だったね」
「お前、また道草か」
「今日は、道草じゃないもん。シンに会いにきたんだから」
「俺に?」
「うん。この間のお礼。昨日お母さんがクッキー焼いたの、とっておいたの。どうぞ」
「それは、ありがとう。でも、俺がここにいなかったらどうするつもりだったんだ?」
「もちろん自分で食べちゃう。ここ、いい場所よね。ピクニックに最高」
真樹は笑って、クッキーの包みを開けると瑠水に差し出した。瑠水は当然のごとくそれを頬張った。遠足に来たガキみたいだな、そう真樹は思った。
「今日は、何を聴いているの?」
「マーラーの交響曲第一番『巨人』だよ。聴くか?」
「うん。あれから出雲のCDショップに行って、クラッシックのコーナーに行ったんだけど、あんまりたくさんあって何がいいのかわからなかったの。シンにもっと教えてもらってから買おうかなと思って」
真樹はうれしそうに笑った。
「お前、足はもういいのか?」
「うん。三日くらい痛かったけど、もう大丈夫。この曲、すてきねぇ。春にぴったりね」
「そうだね。一楽章は、まさにそんな感じだね」
瑠水は、ちらっとYAMAHAを見た。あれに乗りながら聴いたら素敵だろうなあ。そのYAMAHAの停まっている隣に、奥出雲の方から走ってきた車が急停車した。中からはすごい勢いで若い男が出てきた。
「瑠水! 何をやってるんだ」
「あれ? 彰くん。来ていたんだ」
「今、早百合をお宅に届けてきたところだよ。こんなところでいったい何をしているんだ」
早良彰は真樹を厳しい目で見た。どう考えても自分より若い、免許の取り立てのような男に睨まれて真樹はとまどった。
「クラッシック音楽を聴いているのよ」
「制服のままで。学校の帰りだろう。その男は誰だ」
「友だち。シンっていうの。シン、こちらは彰くん。東京に住んでいる幼なじみ」
「はじめまして」
真樹の挨拶を彰は軽く無視した。
「お父さんとお母さんが心配するぞ。バスも来ないところだし」
「俺が送っていきますよ」
少しだけムッとして真樹は言った。その言葉に彰はさらに剣呑な目を向けていった。
「いや、瑠水は僕が送っていく。来なさい、瑠水。何かあったら、お父さんとお母さんに僕が怒られる」
何だこいつ。真樹は思ったが、瑠水が困るだろうからあえて逆らわなかった。瑠水は悲しそうな目を向けていった。
「じゃあね、シン。続きはまた次回聴かせてね。バイクにも乗せてね」
次の日曜日は、珍しく非番だった。そして、二日ほど前から山おろしが吹き、突然暖かくなったので、初夏のような暖かさになった。山は一斉に芽吹いているに違いない。こんなうってつけのバイク日和はなかなかない。真樹はいそいそとバイクの用意をした。
iPodにはマーラーが入ったままになっている。その時にふと瑠水のことを思い出した。続きが聴きたいって言っていたよな。今日みたいな日にドライブに連れて行ってやったら、喜ぶだろうな。まあ、こんないい天氣の日曜日にはもう家にいないかも知れないけれど。真樹は、サイドボックスに、もうひとつヘルメットを入れて、とにかく樋水村へと向かった。
バイクの音を聞きつけて、瑠水が二階の窓から顔を出した。
「シン! 今日もドライブに行くの?」
「ああ。よかったら一緒に行かないか。山は花でいっぱいだ」
「行きたい!」
瑠水は、すっ飛んで降りてきた。姉の早百合があわてて止めた。
「ちょっと瑠水! あの人誰よ」
「友だち。シンっていうの」
「友だちって、そういう歳じゃないでしょ。あんた、なに簡単に誘いにのっているのよ」
「シンはいい人よ。それに、私、バイク好きなの」
「なんで」
瑠水はそれに答えなかった。『水底の二人』の話は早百合にはしたくなかった。いつも馬鹿にするのだ。
摩利子が一階で二人のやり取りをきいていた。瑠水は十六歳だわ。ボーイフレンドの一人や二人、いてもおかしくない。私があの子の年齢の時には、もう初キスだって済ませていたし。摩利子は黙って考えた。
シンくんは悪い人には見えない。オーラも明るいきれいな水色だ。だいぶ歳は違うみたいだけれど、振る舞いは紳士的だし、ここに堂々と来たってことは乱暴なことはしないだろう。瑠水が見かけよりもずっと子供だってことをわかってくれる人だといいけれど。
「瑠水、待ちなさい。その格好で行くの?」
瑠水はジーンズに薄いジャケットを着ていた。
「だめ?」
「ダメよ。バイクなんだから」
摩利子は、地下にある物置に降りていくと、しばらくしてから黒地に水色のラインの入ったバイクスーツと黒いヘルメットを持って上がってきた。新堂ゆりが残していったものだった。
次郎が結婚してあの龍王の池のほとりの離れに引っ越すことになった時に、新堂朗とゆりの荷物を運び出すことになった。一部は朗の父親やゆりの弟の早良浩一がひきとったが、大半の荷物は一と摩利子が引き取って、地下の物置に保管したのだ。もしかしたら、いつか必要になるかもしれないと思って。しかし、もう二十年近く経っている。Kawasakiももうないのだ。瑠水がバイクに乗るというなら、使って悪いことはないだろう。ゆりさんだって、瑠水の役に立つなら喜ぶと思う。
「お母さん。これどうしたの?」
「友だちにもらったものよ。最新流行のものじゃないけれど、文句言わないで着なさい」
「ええ。暑いんじゃないの? 上にいってGジャンとってくるから、それじゃダメ?」
「それを着た方がいい」
そういったのは真樹だった。真樹はスーツの肘や膝の部分を瑠水に触らせた。
「ほら、ここに保護材が入っているだろう。何かあった時に、専用のスーツの方が安全なんだ」
「ふ~ん」
瑠水は大人しくパンツとジャケットを身につけた。摩利子は頷いた。ぴったり。我が子がゆりさんのサイズに育つほど時間が経ったとはねぇ。それにしても、シンくんはけっこう信用置けそうね。摩利子は安心して二人を送り出すと、文句を言う早百合をなだめた。
山は本当に花でいっぱいだった。山桜、八重桜、山吹、山藤、遅れて咲いた木蓮や誰かが植えた花水木までなにもかも一緒になって花ひらいていた。風に吹かれて桜吹雪がおこり、二人に襲いかかる。力強く萌えたつ新緑がきらきらと輝いている。
瑠水は『水底の二人』の幸福感を感じていた。横を流れる樋水川から溢れてくるいつもの至福の他に、この風の中に特別な歓喜がある。空が広がり、森が揺れる。そして、自分の目の前に、確かな存在感で生身の人間がいる。
シンはわかってくれる人だ。瑠水はそう直感していた。真樹の聴かせてくれた音楽は、瑠水にとって本当に『新世界』だった。
瑠水はいつも孤独だった。一や摩利子は愛情と慈しみを持って育ててくれたが、瑠水にとって一番大切なものだけはわかってくれなかった。学校の友だちや姉の早百合は、まったく違う世界に住んでいた。つまり龍や神域の存在しない世界だ。その代わりにアイドルや人氣俳優が存在していた。アメリカのスターに憧れ、年頃の男の子と恋をして、化粧法や最新ファッションの研究に余念がない。瑠水が憧れ夢見ている『水底の皇子様』とは相容れない世界だった。
真樹が連れて行ってくれる世界は、その二つの世界の中間にあった。むしろ、瑠水の世界に近かった。自然と、風と、クラッシック音楽と。どれもが瑠水の樋水と『水底の二人』への憧れと似ていた。真樹は瑠水が変な事を言っても嗤ったり馬鹿にしたりしなかった。それが瑠水にはとても嬉しかった。
「お社のね、一番奥にご神体の瀧があるの。あそこの池に龍がいるって言ったら、クラスのみんなに嗤われたの」
瑠水は悲しそうに言った。
樋水村には高校はないので、出雲の高校に通うことになった。そして初めて樋水村の常識が、外の世界では通じないことを知ったのだった。
真樹はその瑠水の告白を聞いて、先日同僚に言われたことを思い出した。早良彰が睨みつけて瑠水を連れ帰った翌日のことだった。
「よう、シン。お前、昨日、奥出雲樋水道で女の子と一緒にいなかったか?」
「ああ、いたよ。あそこを通ったのか?」
「うん。ちらっと見た時に、お前に似たヤツがいたなと思ったんだ。でも、もう一人が高校生だったからまさかなと思って」
「まさかと言われても、別に変な関係じゃないよ」
「うん。お前に限ってな。お堅いヤツだからさ、お前は」
「べつに、お堅くはないさ」
「どこの子だ?」
「出雲の高校に通っている子だよ。樋水村に住んでいるんだけど、よく道草をしているみたいだ」
「樋水村……。そりゃ、ヤバいぞ」
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ムパタ塾のこと - 11 -

アフリカというと時おりこんな意見を耳にします。「なんてかわいそうな貧しい人たち。誰もが幸福になる権利があるのに」この手の言葉を聞いたら、どんな人が発しているのかまず知らなくてはなりません。もしその人がアフリカのことをテレビでしか知らない人であるのなら、その言葉にはあまり重みはありません。
誤解されると困るのですが、人種に優劣があるとは思ってはいません。そして、アフリカやアジアやその他の開発途上の国で悲惨な状況のもとで暮らしている人がいることも確かです。だから発言が間違っているといいたいのでもありません。
ただ、「人はみな同じ」という発想には賛同できません。「豊かさ=西欧資本主義国の暮らし」という基準にも納得がいきません。何千万年もの間、自然とかかわり合いながら大地のもとでエコロジカルに生きてきた人たちにプラスチックの買い物袋とウォシュレットのある生活を「ほら、幸せでしょ」と押し付けることはナンセンスだと思うのです。
彼らは私たちとは別の時間感覚を持っています。「ほら、このデジタル時計をはめることができる生活をするためには、きちんと時間通りに蟻のように働かないと」と説教をしても意味がないと思うのです。
彼らが平均で受け取る給料はとても額が低いのです。はじめにそれを聞いた時、私も憤慨しました。けれど、あとで彼らの仕事ぶりとそれを監督する人を見て思いました。「まあ、ちっと安いかもしれないけれど、安すぎるってほどでもないかも」
生産性というものはほとんどなく、一人でできることを十人ぐらいがだらだらとやっている。言われたことを憶えるのも当たり前ではなく、監督者はほぼ同じ小言を毎日言っても改善されないことに慣れています。でも、彼らはそれに不満を持っているわけでもない。日本の企業戦士のほうがずっと不幸せそうです。
物質的で、生産性が高く、変化がめまぐるしく、大量の人間が絶えず移動している社会を、何を置いてでも手に入れるべきユートピアだと思うアフリカ人は少ないに違いありません。彼らは一日中家の戸口に座って、ビールを飲みながらだらだらと話をするのが大好きです。給料をもらったその日のうちに全額を酒に換えてしまう男たち、十以上の数を使う必要のない生活、歌と伝承とダンスに満ちた夕暮れ。
「かわいそうな人たちを救うためには、教育が肝心です」
そういう力説を聞く度に、ある意味では正しいかもしれないけれど、それが本当に幸せになる唯一の道かなと考えてしまうのです。
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ストーリーを感じる瞬間

カメラを構える時、その対象は人によって違うと思うのですよ。私の場合、一番最初は、スナップ写真を撮ることでした。修学旅行などで行った場所と、その名所の前でピースをしている同級生などを撮っていたわけです。
アフリカに行って、プロの写真家の方や、学生時代に写真部に属していたという友人の撮り方を知って、それからは単純にシャッターを押すだけではなくて、何をファインダーに収めたいのかを考えるようになりました。必然的に動かない植物や建築物の写真が多くなりました。停まっていてくれる親切な動物がいれば、それも撮ります。
それから、連れ合いの写真の撮り方を知ってから、また少し変わりました。彼は誰かに習ったことはないのですが、構図の決め方、どこをどう切り取ると印象的になるかについて天性的な勘を持っているんですよ。彼ならこう撮るだろうなと意識してファインダーをのぞくようにしたら、また違った写真の撮り方になってきたようです。
私自身は写真に撮られるのがあまり好きではありません。友人のスナップ写真にもあまり興味がなくて、帰ってくると写っている人物は連れ合いと知らない人ばかりになりました。
そう、知らない人の写真を撮るようになったのですよ。ふとした横顔や、恋人たちの語らいや、ウェイターの笑顔など、物語を感じる瞬間を切り取りたくなったのです。
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お勉強の日々
で、打ちのめされております。ダメじゃん、私。何もわかっていなかったじゃん。で、四冊の本を並行して読み進めているのですが、新しいことを知る度に、ここはああ変えた方がいい、あそこにはこのエピソードをくわえた方がいいと焦るばかり。既に八割方書いたつもりだった小説は、ほぼ全面書き直しになりそうです。
実をいうと、まだ読んでいないブログのお友だちの長編小説がいくつかあって、氣持ちとしては一刻も早く読みたいのですが、もうちょっとお預けになりそうです。ここしばらく、コラボ小説のお話をいただいてから慌てて読破する、あまりにも失礼な状態が続いていまして、それは避けたいとは思っているのですが。
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【小説】大道芸人たち Artistas callejeros 番外編 〜 熟れた時の果実 — featuring「誓約の地」
優奈や杏子がヨーロッパを旅して、大道芸人たちと出逢えたらいいなって思ってました^^
実は私が書きたかったともいいますが(笑)
YUKAさんのブログで連載中、それも大変たくさんのファンを持つ『誓約の地』と当ブログの『大道芸人たち Artistas callejeros』とのコラボです。そして、その後の確認でご指定の都市はフィレンツェということでございました。
『誓約の地』は、事故で無人島に漂着した主人公たちが、その遭難生活の中で恋に落ちていく、長編恋愛小説です。もちろん、小説の中ではまだみなさんは漂流していますので、フィレンツェに観光旅行にいらしたりはしないのですが、こちらは番外編ということで、ちょっと息抜きにワープしていらしたということになっています。(YUKAさんご了承済み)
まずはじめにお詫びを一つ。私はこのリクをいただいてから『誓約の地』を読破しました。そういうわけでいまだに『誓約の地』の素人です。そして、ヒロイン優奈さまを動かすには、私の筆力ではあまりにも力不足、ファンの方々を満足させられるようなコラボは書けないと(満足させるつもりだったのかというツッコミはさておき)判断し、私の筆力でも「しかたないわね、動いてあげるわよ」と姉御肌でご了承くださった杏子姐さまだけを出演させています。
もう一つ、お詫びを。すみません。完全に「to be continued...」状態です。誰か(YUKAさんに言っているのか、『誓約の地』のファンにお願いしているのか)、続きを書いていただけると。いや、自分で書けというご要望があれば、そのうちに……。
【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ


あらすじと登場人物
大道芸人たち Artistas callejeros 番外編 〜 熟れた時の果実
— featuring「誓約の地」
彼女は背筋を伸ばして佇んでいた。つばの広い帽子から流れ出た波打つ豊かな髪が風に踊る。絹かシフォンのように柔らかい素材のベージュのパンツも、トスカノの秋の小麦畑のような波紋を見せていた。
カルロスがその女性に目を留めたのは、彼の親しくしているある女性と同じ民族のように見えたからだった。そのマリポーサこと四条蝶子とその仲間たち、つまり彼がことあるごとに援助をしているArtistas callejerosと呼ばれる大道芸人たちのグループとは、今晩リストランテで逢う予定になっていた。カルロスはここフィレンツェに来たそもそもの目的すなわち商談に向かう最中だった。スケジュールを組む秘書のサンチェスは時おり文句を言う。
「フランスやドイツ、それにわが国のクライアントも次々に面会を依頼してきているのですよ。商談相手の優先順位を決めるのに、Artistas callejerosの滞在先ばかりを考慮に入れるのはやめていただきたいのですが」
「まあ、いいじゃないか。彼らはそのうちにドイツやフランスにも向かうんだから。それに、緊急の商談にはちゃんと対応しているしな」
サンチェスはため息をもらした。
ところで、いまバス停に佇む女性の方は、特に困っている様子も見られなかった。さすがに「日本人に見えたから」という理由で声をかけるのもはばかられ、カルロスは黙って同じバス停の前で待っていた。バスがやってきた。彼は女性に先を譲る仕草をした。
「ありがとう」
女性は微笑みバスに乗り込んだ。車内は混んでいるというほどでもなかったが空いている席はなかった。カルロスと女性は手を伸ばせばやっと届く程度の距離を置いて立っていたが、次のバス停でカルロスの前に座っていた女性が降りて行った。カルロスは女性に英語で声を掛けた。
「どうぞ。あなたの言葉でいうとドーゾになるのかな」
女性は微笑むとその席に座って英語で答えた。
「そんなに長くは乗っていないんですけれどありがとう。私が日本人だと、どうしてわかりました?」
「実をいうと、確信はなかったんです。でも、私には親しくしている日本人女性がいましてね。だから、アジアの女性を見るとまず日本人かなと思ってしまうのです」
「私にもヨーロッパの方の国籍の違いは、わかりませんのよ。あなたは、イタリア人かしら。それとも……」
「スペイン人です。カルロス・ガブリエル・マリア・コルタドと申します」
「私は相田杏子です」
「杏子さんはご旅行中ですか?」
「ええ、三人の友人と来ているんです。今日は、それぞれ別行動なんです」
「そうですか。フィレンツェは見所も多いですからね。興味対象が違うなら別行動するのはいい選択でしょう。特にあなたのようにしっかりなさった方なら」
「しっかりしているように見えます?」
杏子は艶やかに微笑んだ。自信のある対応は蝶子に似ている。長い海外生活もその佇まいを変えただろうが、やはり個性によるものが強かった。カルロスが出会った平均的な日本女性像とそれはかなり離れていた。この相田杏子という女性も一目見ただけでわかる強烈な個性を持っていた。
「その質問は、必要ないのではありませんか?」
杏子は再びミステリアスに微笑んだ。手強い女性のようだ。バスがサン・ロレンツォに着くと彼女は再び礼を言うと立ち上がった。
「よいご旅行を。再びお目にかかれることを祈っていますよ」
そのカルロスの言葉に、彼女は振り向いた。
「では、またお逢いする時まで」
杏子はバスをしばらく見送っていた。時になんでもない言葉が予言となることがあるのを彼女は知っていた。今かわした会話もその類いの言葉ではないかしら。だからといってどうだと言うのだろう。不思議な人。びっくりするくらい目が大きいから、次に逢ったら瞬時にわかるだろう。
杏子はゆっくりとサン・ロレンツ教会の方に歩き出した。そして、ふと、教会脇の露天をふらふらと歩いている見知らぬアジア人に目を留めた。背中にかかっている袋から三味線の竿と天神が顔を出している。ツンツンとした髪をカリカリとかきながら、露天を眺めていた。その後ろからいかにもジプシーの風袋をした女が、そっと近づいていっている。杏子はそれを見るとさっと男に近づき、その腕を引っ張って自分とジプシー女が男の目に入るようにした。
「ごめん、待たせた?」
男はかなり面食らったようだが、途端に目に入ったジプシー女の姿に即座に事態を把握し、背中の三味線の袋をさっと腹の前に抱えて女を睨んだ。それで女はすぐにその場を離れていった。
「助かったよ。ありがとう」
やっぱり、それは日本人だった。
「どういたしまして。たまたま目にしちゃったので、放っておけなかったの」
稔はまじまじと杏子を見た。すげぇ、美人。お蝶や園城も顔負けだ。しかも、性格もあの二人に負けてなさそうなタイプだな、こりゃ。くわばら、くわばら。
「あの女に氣づいてからの反応は早かったから、あの手の輩には慣れていそうね。何に氣をとられて注意力散漫になっていたのかしら」
「ああ、せっかくフィレンツェに来たんだから財布を買おうと思っていたんだ。でも、どうもピンと来なくってさ」
「あら、ここで探しても、フィレンツェのものは見つからなくてよ。ここは外国産の安物しか売っていないもの」
「へ?」
杏子は、稔のラフな服装をじろりと見てから付け加えた。
「とはいっても、ブランドものを買いたいわけでもないようね。だったら、サンタ・クローチェのレザー・スクールはどう? 職人学校の直売所」
稔は肩をすくめた。
「そりゃ、いいかもな。あんた、詳しいな。ここに住んでいるのか?」
「いいえ。旅行よ。でも、フィレンツェに来るのは三回目なの」
「へえ。で、そこはここから遠いのか?」
「バスでも歩いてもあまり変わらないくらいね。何なら、今から一緒に行く? 私も行きたいとと思っていたところだし」
「そいつは、ありがたいや。頼むよ。俺、安田稔っていうんだ」
「私は相田杏子よ」
それで二人は、アルノ川の方へと歩き出した。稔はちらっと杏子の方を見た。いいもん着てんな。ヨーロッパの観光地ではいくらでも見る、廉価品のカジュアルに身を包んだ二人連れや三人連れの日本人女性とはあきらかに違っている。柔らかいドレープの絹のブラウスも、大きなつばの白い帽子も、名のあるブランドのものに違いないのだろうが、そんなものは毎日身につけているのだろう、完全に自分のものにしていた。園城クラスの金持ちか。しかも、一人で俺みたいな浮浪者同然の男にも平然と話しかけるんだから、ただのお嬢様じゃないな。
サンタ・クローチェのレザー・スクールは、フランチェスコ会が戦争孤児の職業訓練のためにはじめた革工芸の学校でかつての僧房が工房と、作業所ならびに販売所となっている。
「あれ、ずいぶん日本人がいるな」
作業所を覗き込んで稔は言った。
「三時間や一日の体験コースがあって、有名なのよ」
杏子の説明に稔は肩をすくめた。なるほど。
稔は販売所で、期待していた本革のしっかりとした財布を見つけた。
「これこれ、こういうのが欲しかったんだ」
露天の店よりは、かなり値が張ったが、しょっちゅう買うものではない。日本を発ってからずっと使っていた財布は壊れかけていた。彼はその財布と、メディチの百合をあしらった大きめのチャックつきの小物入れを買った。化粧するわけでもないのにそんな袋をどうするのだろう。杏子は思った。
「ところで、あんたはあそこを散歩していたんじゃないだろう? 本来の目的はいいのか?」
外に出てから、稔は杏子に訊いた。
「そうね。本当はサンタ・マリア・ノヴェッラの方に歩いて行くつもりだったの」
「中央駅に?」
「いいえ、教会。あそこに13世紀からの薬局があるのよ。職業的興味があって行こうと思っていたんだけれど……」
稔は歩みを止めた。ここに来るのに、サンタ・マリア・ノヴェッラから遠ざかったのだ。
「そりゃ、悪かったな。俺、助けてもらって、アドバイスももらって、さらに邪魔したのか。礼をしなきゃ」
「別にいいのよ。明日にでも行くわ。いずれにしても三回も来ているんだから、どこだって既に一度は行っているのよ」
「あんたはよくても、こっちの氣が済まないよ。これでも礼節ってもんにはうるさいんだ。飯をおごるのがいいか、それとも?」
杏子は稔を見てため息をついた。やけにきっぷがいいけれど、江戸っ子かしらね。大したことじゃないのに。
「ご馳走にならなくていいわよ。下手なことすると、連れが焼き餅焼いて面倒なことになるし」
「へ? 一人旅じゃないんだ」
「ええ。今日は単独行動の日なの。あとで友人たちと待ち合わせしているのよ。どうしてもお礼をしたいなら、こうしましょう。あなた、音楽家なんでしょう? 私のために何か演奏してよ」
「何を?」
杏子はにやっと笑った。リクエストを訊いてきたわね。この私が簡単なものを頼むと思ったら甘いわよ。
「それ三味線でしょ。でも、ここフィレンツェだから、クラッシック音楽の方がいいわ。何か、この街にぴったりの、でも、暗くない曲を弾いて」
「いいよ」
稔はあっさりと言った。そして、袋から三味線を取り出すと、簡単に調弦をした。そして、バチをとって体を大きく動かすと、いかにもバロック的なメロディを弾きだした。杏子は知らなかったが、それはJ. S. バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」から「ソナタ第二番イ短調、アレグロ」だった。
杏子はその音色に聴き入った。三味線で自由にバロックを弾けるものだとは夢にも思っていなかったが、その音色はクラッシックの単なるまねごとではなかった。この男は、このような曲を自由に弾くプロなのだ。
ルネサンス様式の建築は人体の比例と音楽の調和をとりいれた。だから、その代表的な街フィレンツェは、開放的で丸みがある。数学的比率で緻密に計算されているからこそ、目に優しい美しさなのだ。この耳に心地よいバッハの和音は、現在目にしている街の調和と同じ比率で杏子の体の中をめぐっていく。ルネサンスの栄光である街は、時を経て、雨風にさらされ、微妙に色を変えている。それは実りたての固い果実ではなく、美酒のごとく熟れて芳醇に薫りを放っているのだ。樺茶色のレンガ屋根に暮れはじめた暖かい光が彩りを添える。
曲が終わっても、杏子は黙っていた。拍手や「上手だったわ」などというありきたりの言葉では、今の曲にはふさわしくない。
拍手が聞こえて、コインがチリンチリンと音を立てたので、彼女ははっとした。いつの間にか、周りには野次馬がたかっていて、さまざまな国籍の人びとがコインを投げていた。稔は躊躇もせずに、そのコインを拾い集めて買ったばかりの小物入れにおさめた。
「あなた、大道芸人なの?」
杏子が歩きながら訊くと、稔はにやっと笑った。
「ああ」
「ヨーロッパで、一人で?」
「いや、俺も仲間と旅をしているんだ。あんたと違って、期限はないけどな」
「さあ、どうかしら。私は期限がある旅なんて言っていないわよ」
稔は訝しげに杏子を見た。杏子はウィンクをした。
「期限がないとも言っていないけれどね」
杏子はドゥォモの前に来ると、右手を差し出した。
「じゃあ、ここで。友人たちと待ち合わせしているから」
「ありがとう。助かったよ。またいつか逢えるといいな」
稔は、杏子の手をしっかりと握った。
「さっきもそんな事を言われたわ。私の勘って、よくあたるの。近いうちに二つとも現実になりそう。その時には、赤ワインでもごちそうしてね」
「おお、まかせとけ」
そして杏子はすぐ眼のまえのしゃれたカフェに入って行った。稔は一人の女性と二人の男性が杏子の方に手を振るのを見届けてから、Artistas callejerosの仲間たちと待ち合わせたサン・ジョバンニ洗礼堂の前のバルへと去って行った。
(初出:2013年4月 書き下ろし)
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地元民を追え!

先日紹介した、有名店「Abadia」に、私たちはついた翌日に行こうとしていたのです。けれどそれは日曜日で「Abadia」の定休日でした。「ううむ。もう歩き疲れたし、お腹空いたよー」と思いつつ、ふたりでキョロキョロしていたところ、いい香りとともにやけに地元民が出入りする小汚い感じの店を発見。よく見ると「創業以来50年」とかなんとか看板に書かれています。そんなに長く続き、いまだに地元民が出入りするなら美味しいに違いない! そう思った私たちはそのお店に入って行ったのでした。
まず目に入ったのは、串に刺されて開店する鶏の丸焼きの山。このお店はどうやら鶏の丸焼きで有名なお店のようでした。一階はカウンター席、二階はテーブル席になっていて、私たちは二階に。テーブルクロスの上には紙をかけているし、店内の装飾も安っぽくて、おしゃれさはまるでないのですが、とにかく地元のおじさんやおばさんがどんどん入ってきてすぐに待ち行列ができていました。私たちは、幸い待たずに座れたのですが。
サラダとチキングリルを頼みました。飲み物は半リットルのワインと水。パンはいまいちな感じで、サラダもシンプルすぎるし、お皿も安っぽいのですが、チキンがとにかく美味しい。そして、予想通り、愕然とするほど安かったのです。このボリュームで二人で10ユーロしなかったのですから。
女性の一人旅などにはお薦めしませんが、私の連れ合いのようにごつい男が旅の伴ならば、やはり一度は地元の人の集う所を試してみる価値はあるでしょう。ポルトのように比較的安全な街ならなおさらです。
ああ、おいしかった。ごちそうさま。
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「こわい動物は何ですか?」
さて、テーマは「こわい動物」です。本当に怖いのはたった一つ、あの黒光りする昆虫です。でも、あれのことは思い出したくないくらい怖いので、ここでは別の動物について書こうと思います。

女性が、金切り声を出して逃げ回る動物の代表と言ったら、ねずみですよね。英語では「マウス」と「ラット」が分かれているのですが、日本語ではどちらも簡単に「ねずみ」で済ませることが多いのではないかと思います。「ラット」の方、ドブネズミには私もびびりますが、「マウス」のほう、ハツカネズミはかなりキュートです。
田舎ですからね、いるんですよ、ハツカネズミ。この写真は、我が家の窓の外にいた子です。屋根の上に積もった雪にパン屑を払ったのですが、それを食べにきたらしいのです。家の中に入らないでくれれば、もうかわいいことこの上ないです。
もっとも、一度だけ大騒ぎがありました。隣家の猫が、これと同じようなハツカネズミをつかまえて持ち込んだらしいのです。そして、そのねずみは死んだフリをしていたのか、氣絶していたのかはわかりませんが、隣人が外に持ち出そうとした途端、ばーっと走って台所の奥に隠れてしまったのです。隣人は半狂乱でわが連れ合いに助けを求めてきました。
それからは三人で捕獲大作戦。紆余曲折の末、無事に生け捕りにして、屋外に放しました。かわいいけれど、やっぱり外にいてほしい……。
あ、ねずみ穫りにしかけるエサは、チーズよりもチョコレートの方が効果的です。知っていました?
こんにちは!トラックバックテーマ担当の新村です今日のテーマは「こわい動物は何ですか?」です!好きな動物はよく聞きますがあなたにとってこわい動物って何ですか?私はカラスですあの集団を見ると、ヤクザの集団よりもゾッとします。黒いし!大きいし!!いっぱい集まってるし!!!目を合わせてはいけないといいますが、友達は目を合わせなくても襲われたことがあるそうです。なんて理不尽な・・・関東のカラスは大きいってこ...
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【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (2)百花撩乱の風 -1-
この章は、先週の章からしばらく時間が発っています。とても長いので三週間にわけての発表となります。
![]() | このブログではじめからまとめて読む あらすじと登場人物 |
この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物
樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(2)百花撩乱の風 -1-
今年も春が来た。生馬真樹は愛車のYAMAHAのXT500を引っ張りだして、今年最初のドライブに行った。四月とはいえ、まだ風は身を切るようだが、光のまぶしさがたまらない。奥出雲をひと回りしてから、去年の夏に見つけた奥出雲樋水道の脇のベンチに横たわった。いい具合に木漏れ日が差してくる大きな楠の下にあるのだ。さわやかな風を感じながら、ここで昼寝をするのが楽しみだった。もちろん、愛用のiPodをつけて。
生馬真樹は仲間内では多少変わり者とみなされていた。彼は快活で、学校時代からの友だち、すなわちこの小さな社会では幼なじみである、出雲市内の青年たちとごく普通の友情関係を持っていた。つまり、たまに一緒に飲みに行ったり、出雲大社の祭礼に参加したり、それなりの社会生活をしていた。それでも周りは「あいつは少し変わっているから」と感想を漏らすことが多かった。幼なじみと週末に一緒に遊びに行くようなことは少なかった。というのは、真樹は消防士だったので、土日に決まって休めるということがなかったのである。
だが、周りが真樹を変わり者扱いしたのは、消防士だからではなかった。むしろ彼の音楽の趣味からだった。真樹はロックやラップを好きではなかった。周りがJポップやアメリカのヒットチャートの話をしている時にも、まったく加わってこなかった。真樹はクラッシック音楽を好んだ。
東京や大阪ならまだしも、出雲辺りで若者がクラッシック音楽に夢中になるというのはかなり稀なことだった。親に言われてピアノやヴァイオリンを習っているならともかく、誰にも言われないのに勝手にクラッシックのCDを買ってきては聴くような人はほぼいない。真樹は周りに理解してもらえないこの趣味を一人で楽しむのに慣れていた。
今日も、真樹は買ったばかりの小沢征爾指揮のボストン交響楽団による『新世界から』をiPodに落としてきたので、木漏れ日の下で心ゆくまで堪能するつもりであった。
「え。え。きゃぁっ」
素っ頓狂な声がしたので、真樹は起き上がって周りを見た。木立の向こうの樋水川の土手に制服姿の女学生がしがみついている。どうやら、道をそれて落ちたらしい。
「おい、大丈夫か」
「ええ。あ、あたた」
娘は顔を歪めた。足首を痛めたらしい。真樹は、その娘を助け起こしてやって、ベンチに座らせ、足首を調べた。軽いねんざのようだった。
「こんなところで、何しているんだ」
「歩きながら樋水川を覗いていたら、すみれを見つけたの。採ろうとしたら落ちちゃった」
人なつっこい笑顔でその娘は言った。高校に入学したばかりかもしれない。制服が新しくていまひとつ体に合っていない。丸い形のいい顔、髪の毛も眉も少し茶色がかっている。への形をした薄い眉が笑っていても少し泣いているような印象を与える。しかし、実際には娘はニコニコと笑っているのだった。
「お前、学校の帰りだろう。こんなところで道草食っていていいのか」
「いつも、お母さんに怒られるの。でも、こんな春の氣持ちのいい日に、真っ直ぐバスで帰るなんてつまらないじゃない?」
「しょうがないヤツだな」
真樹は笑った。その氣持ちはよくわかる。
「あたし、高橋瑠水。お兄さんはこんなところで何をしているの?」
「俺は生馬真樹。まさきだけど、仲間はシンキとかシンとか呼ぶな」
「じゃあ、あたしもそう呼んでいい?」
「ご随意に」
「ねえ、シンはここで何をしていたの? やっぱり道草?」
「道草じゃないよ。今日はオフなので、お氣に入りのベンチで音楽を聴いているんじゃないか」
「あら。あたし邪魔しちゃった?」
「別にいいよ。ラジオじゃないから、好きな時に聴けばいいんだ」
「何を聴いているの?」
「アントン・ドボルザーク。交響曲第9番ホ短調作品95『新世界より』」
真樹はどうせまた興味を持ってもらえないと思い込んでむすっと言った。瑠水はちょっと首を傾げてから訊いた。
「どんな曲? ちょっと聴かせてもらってもいい?」
へんな子だな。真樹はイヤフォンを貸してやった。瑠水は黙って聴いていた。普通のティーンエイジャーならば「もういい」と返す頃になっても、ただでさえ大きな目をさらに丸くして聴いていた。
「すごい。こんな曲、聴いたことない」
やがて、にっこりと笑った。
「あ、これは知ってる。『遠き山に日は落ちて』でしょう」

イラスト by 羽桜さん
このイラストの著作権は羽桜さんにあります。羽桜さんの許可のない二次利用は固くお断りします。
第二楽章まで来たんだ。真樹は意外に思った。それから目を閉じて氣持ち良さそうに聴いている瑠水を真樹は面白そうに見ていた。へんなヤツだ。すみれを採ろうとして川に落ちかけたり、足首をくじいているのに、のんきに知らない人に『新世界』を聴かせてもらったり。怖れってものを知らないらしい。
瑠水は、初めて聴くクラッシック音楽の世界に魅せられていた。きらきらと輝く奥出雲の春と、なんとよく合う音楽なんだろう。耳だけでなくて、お腹の底まで響く深みのある音、心を絞られる切ない旋律。驚かせる打楽器とともに激しく動き回る音のダンス。こんな音楽があったなんて。この人、こういう曲をたくさん知っているのかなあ。瑠水は真樹を観察した。ぶっきらぼうだけれど、笑顔が優しい。黒くて短い髪、太い眉が目に近い。目は切れ長で少し目尻が上がっている。少しだけ口が前に出ていて、ともするとむっとしているかのようにも見えるが、機嫌が悪い訳でもないらしい。二十五歳くらいかしら。オフってことは土日に働く仕事をしているのかなあ。
瑠水は三楽章になってもイヤフォンを返さなかった。それどころか、最後まで聴くつもりだった。
「いつまで聴いてんだよ」
真樹は瑠水の左耳からイヤフォンをひとつ取り上げた。ちょうど第四楽章がはじまったところだった。二人は頭を寄せるようにして華やかなフィナーレに聴き入った。ティンパニと弦楽器の掛け合う威厳あるコーダ。力強く歌い上げるそのメロディは、真樹のお氣に入りだった。曲が終わっても、しばらく瑠水は呆然としていたが、やがて言った。

イラスト by 羽桜さん
このイラストの著作権は羽桜さんにあります。羽桜さんの許可のない二次利用は固くお断りします。
「もう一度言って。なんて曲? どこでこんな曲買えるの?」
真樹は笑って言った。
「そんなに氣に入ったんなら、こんどプレゼントしてあげるよ。でも、今日はもう帰らなくちゃダメだ。足をくじいているのに、こんなところで遊んでちゃ」
瑠水は現実的な問題に行きあたった。前のバス停にも、次のバス停にも三キロぐらいある。どうやって行こうかしら。
「お前、どこに住んでいるんだ?」
「樋水村よ」
「OK。じゃ送っていってやるよ」
そういって真樹はYAMAHAを顎で示した。
「あ。バイク」
「怖いか?」
「怖くなんかないけれど、でも、乗ったことないの」
「後部座席は座っているだけだよ」
真樹は、ヘルメットを瑠水に被せた。
「でも、シンは冠らなくていいの?」
「本当はダメだけど。でも、お前の安全の方が大事だろ。女の子だし」
そういうと真樹は瑠水を助けて、後部座席に座らせた。そして、怖がらないか確かめるように、ゆっくりと発車して、山道を登りだした。
あ……。瑠水は、つぶやいた。『水底の皇子様とお媛様』の風だ。物心ついた頃から、いつも感じていた龍王の池から流れ込んでくる幸福な風。その感覚がなんだかこれまで瑠水にはわからなかった。けれど、バイクの後ろで感じる風は、まさに瑠水がいつも感じている『水底の二人』の幸福感そのものだった。龍に乗っているのかと想像していたけれど、あれはバイクだったんだ。
「瑠水! いったいどうしたの?」
バイクの音に驚いて出てきた摩利子が言った。
「お母さん。ねんざしちゃった。この人が送ってきてくれたの。シン、これ、私のお母さん。お母さん、生馬真樹さんよ。さっき友達になったの」
いつ、友達になったんだ。真樹は心の中でつぶやいたが、とくに訂正はしなかった。
「まあ、それはお世話になりまして、ありがとうございました。瑠水、また道草していたんでしょう」
大当たり。真樹はちらっと瑠水を見たが、特に反省している様子はないようだった。
「ありがとう。シン。また今度、音楽聴かせてね」
「いいよ。じゃあな」
真樹は、ヘルメットを冠るとスターターに体重をかけた。
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樋水龍神縁起の世界 - 5 -

「樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero」は、本編の方が完結して放心した後に書いた小説です。実をいうと、本人としては本編で書きたいことを究極に書ききってしまったつもりだったので、もう何も書けないのではないかと思っていました。小説を書くことも、これでおしまいかと思ったのです。でも、「もう一度だけ、ここまで行かない、人間視点の物語を書いてみよう」と思ったのが、この作品の誕生のきっかけでした。これがなんとか書けたので、それから「大道芸人たち」が生まれ、そして、ブログをはじめて現在に至ります。反対にいうと「Dum Spiro Spero」を書かなければ、このブログは存在しなかったということになります。だから、私にとっては、かなり思い入れの深い作品なのです。
さて、樋水龍王神社で咲く桜のイメージは、実は八重桜です。ソメイヨシノでもいいのですが、禰宜がぶつぶついいながら掃いている絵柄からすると、儚さの象徴のソメイヨシノよりは、ピンクの鮮やかな八重桜がイメージなのです。
それに、今回の連載とはあまり関係ないのですが、本編の方でとても重要な役割を持っていた、龍王の池のほとりに立つ二本の桜が絡み合った夫婦桜も八重桜です。この桃色は、媛巫女瑠璃を象徴する色でもあります。
スイスの田舎である私の村にも、たくさんの八重桜が咲きます。真っ白いアルプスと、青空をバックに花見をするのは最高の贅沢です。五月までお預けかな……。

官能的表現が一部含まれるため、成人の方に限られますが……「樋水龍神縁起」四部作(本編)は別館にPDFでご用意しています。

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新連載のお知らせです。
緊告です。「scriviamo!」に関するアンケートで人氣の高かったオリキャラ、クリストフ・ヒルシュベルガー教授と、(タンスの上の)俺様を主人公にした小説を、明日からこのブログで連載することになりました。全部で八回の中編小説となります。

【あらすじ】
ブロガーでもある小説家「ヤオトメユウ」の招待によってスイスにやってきた六人のブロともたち。空港にあらわれなかった彼女は行方不明になったことがわかりました。はじめてのスイスで、言葉も話せない六人は右往左往。滞在場所の確保と、ユウの失踪の原因を探るために、彼女の上司であるヒルシュベルガー教授の助けを求めます。彼らを助ける氣があるのか、それともマツザカ・ビーフが食べたいだけなのか、意図のわからぬヒルシュベルガー教授を中心とした七人の動向を、全く役に立たないにもかかわらず上から目線で威張る教授の飼い猫オレサマの語りで綴っていきます。
なお、ブロとも六人のペンネームは、このブログで実際に交流しているブログのお友だち(リンクをしている方です)、六名様のものを使わせていただくことになります。どうぞご了承ください。また、舞台がスイスとイタリアのため、リナ姉ちゃん、チルクス・ノッテの面々、Artistas callejeros、そして東野恒樹も乱入する予定です。
どうぞお楽しみに!
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