暮れていきますね
今年一年のご訪問、そして、小説を読んでくださり、本当にありがとうございました。
去年にならい、今年あったことを振り返ってみようと思います。
悪かったことは、忙しい十二月なのに体調を崩してしまったこと、久々の高熱に全身の痛み、医者の所ではおどされるし、心底ビビりましたが、おかげさまですっかり元氣に戻りました。普段、バカがつくほど丈夫なので具合の悪い方への配慮が足りない所があるのですが、今回は具合が悪いといかに何も出来ないかを思い知り、自分の傲慢さを思い知りました。いい経験だったと思います。もう一つよくなっかったのは、仕事でちょっと失敗をしたこと。まあ、くよくよしてもしかたないし前向いて行きましょう。反省終わり。
そして、よかったこと。
今年もかなりの数の小説を発表し、それにありがたいコメントをたくさんいただけたこと。
- 中編・夜想曲
- 長編・樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
- 長編・夜のサーカス
- 短編集・十二ヶ月の歌
- 企画もの・scriviamo!の作品群
- 企画もの・神話系お題シリーズ
- その他、いくつかの外伝とリクエスト掌編
おつき合いいただけているお友だちのブログでたくさんの素敵な交流が出来て、それに創作系のところでは大好きな作品とキャラたちに出会えたこと。これって、普通の日本の方がドラマやアニメでお氣にいりの作品とキャラに出会うのと同じ感覚です。もっと近いけれど。(なんせうちのキャラたちと無理矢理共演してもらったりしているし)
それから、日本に行って美味しいものをたくさん食べて、温泉や大浴場を楽しみ、それにたくさんの人に逢えたこと。出雲大社と伊勢神宮のダブル参拝をさせていただいたこと。
愛車TOYOTA YARISでかなり遠くまで運転できたし、春のポルト旅行も楽しかったし、今年も恵まれた一年でした。

そして、これですよ。ギターをついに始めたこと。いや、半年経っても未だにろくでもないんですが、それでもちょっとはギターを弾いているって感じになってきたかな。可能なかぎり毎日練習しています。
来年は、「夜のサーカス」も完結するので、新作の連載が二つになります。また、去年に続き「scriviamo!」を懲りずに開催する予定で、また多くの皆様にご参加いただけることを願っています。いろいろと言葉が足りなかったり、配慮も足りず、年齢の割に困ったヤツなのですが、来る年も懲りずにおつき合いいただけるといいなと思っています。
では皆様、よいお年をお迎えください。
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いつか住むなら

松江で夕食を食べることになった時に、真っ先に思い浮かんだのがTOM-Fさんおすすめの「皆美館」でした。で、私にしては首尾よく、ばっちり予約もして、食べにいったのですよ。おすすめだったから味は間違いないだろうとは思ったものの、ほら、有名店で急がし過ぎてサービスがいまいちなんて事もあるので、どうかなと思っていったのです。私一人じゃなくて母も連れていたので。でも、それも杞憂でした。とっても美味しかっただけでなく、ゆったりと丁寧に接客もしていただいて、母には今回の旅で一番よかったと思ってもらえたようです。
で、この写真は、その「皆美館」に置いてあったランプなんですが。「目玉のおやじ」だあ、とへらへら喜びました。でも、あとで「ゲゲゲの鬼太郎」で有名な境港は島根じゃなくて鳥取じゃない! と心の中でつっこんでしまったのですよ。
島根県って、かの出雲大社があるにも関わらず「マイナーな県だし」の自虐ムードがあるんですよ。特に「鷹の爪団の吉田君」というキャラを起用して、その自虐をアピールに使っているので、余計そのイメージが強いんですが、「鳥取だか、島根だか、その辺に行ってきました」の土産物があったり、「砂丘はありません」と訴えたり、「鳥取じゃないもん」アピールもけっこうあるのです。で、「樋水龍神縁起」つながりで勝手に島根びいきになっているせいもあって、私自身が「鳥取じゃないもん」に敏感になってしまっているらしく、上のランプをみて「松江の有名料亭が目玉のおやじをアピールしてどうする!」と反応してしまったというわけです。
そんなこんなで、私の島根びいきは、年々しょうもないことになりつつあります。実は、もしスイスライフを終了して日本に帰国することになったら、東京には帰りたくないと思っていて、ずっと「もしもの時に住みたい所」の候補が北海道だったのですが(土地が広くて、家の作りがしっかりして冬に暖かい上、ゴ○ブリがいないところがスイスに酷似して住みやすそう)、なんだか島根県に住みたいなあとまで思い出している始末。
どうでしょうかねぇ。そうなったとしたら受け入れてくれるでしょうかねぇ。
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【小説】夜のサーカスと漆黒の陶酔
それと、かつてバトンでちらっと開示したある人物のセリフが今回ついに登場です。
![]() | 「夜のサーカス」をはじめから読む あらすじと登場人物 |

夜のサーカスと漆黒の陶酔
クリスマスの喧噪が過ぎ去った後、ご馳走の食べすぎで疲れた顔をした人びとが、つまらなそうに街を行き来するようになる。石畳は冷え込み、夏の夜は遅くまで賑わう広場も中途半端に溶けた雪が出しっ放しのスチール椅子の上に汚れて光っているだけだ。カーニバルの狂騒が始まるまでのひと月間、サーカスの興行を観に隙間風の吹くテントへと向かう観客は恐ろしく減る。
とはいえ、完全に閉めてしまうと、団員や動物たちの食い扶持がかさむ一方なので、「チルクス・ノッテ」は昼の興行を中心に営業していた。ステラは開いた時間にエアリアル・ティシューの訓練に余念がなく、その横ではヨナタンが次の興行でいよいよ披露する事となった八ボール投げを根氣づよく訓練していた。
マッテオは大車輪の大技を訓練している事もあったが、時おり外出の身支度をして出て行った。
「どこに行くの?」
「ちょっと。コモまで」
ステラはマッテオの様子が少し氣になる。なんかコソコソしているのよね。企んでいる感じ。まあ、いいけれど。
「ねえ。この間からマッテオは何をしているんだと思う?」
大テントに戻ってヨナタンに問いかけようとすると、もういなかった。
「知るかよ。ガキはあっちへ行け。どうでもいい事を嗅ぎ回るんじゃない!」
野太い声が上から降ってきた。ブルーノだ。ポールに登っているらしい。虫の居所が悪い時に来ちゃった。ステラは慌ててテントから逃げだした。すると後ろからあざ笑うように言葉が落っこちてきた。
「お前の大好きな道化師は、共同キャラバンで逢い引き中だよ! 邪魔すんなよ」
ステラは走ってテントから離れた。それから、共同キャラバンの方を見た。また音楽を一緒に聴いているのかな。それとも……。見に行くつもりになれなかった。どうしてなんだろう。氣にしないようにしようって、決心したのに。頑張ろうと思ったんだけれどな……。まぶたの辺りを拭いながら、ステラは反対の方に歩いた。
ライオン舎が見えた。ヴァロローゾ、いるかな。話、聞いてもらおうかな。ステラは雄ライオンの姿を探して覗き込んだ。あ、いたけれど、寝てる……。
ヴァロローゾはステラが檻の前に立つと、ちらと瞼をあげたがすぐにまた閉じた。そして、彼女がその前に立ち続けても動こうとしなかった。当てが外れたステラは所在なくライオン舎を見回した。二匹の雄ライオンと二匹の雌ライオン、そして仔ライオンのアフロンタが目に入った。他のライオンたちは横たわって目を瞑りじっとしていたが、アフロンタだけはステラに興味を示して柵の方に向かってきた。
仔ライオンは少し大きめの猫のようだ。それでいて、犬のように人間に媚びた目つきをする。つぶらな瞳で見つめられ、小さな舌がヒュルリと動くと、思わず笑顔になってしまう。遊んでほしいとねだられたようだ。ステラはアフロンタを撫でようと柵の中に手を伸ばした。
すると、ものすごいスピードで小麦色の固まりが柵の方に向かってきた。眠っていたはずの母親ライオン、ジラソーレだった。我が子に害をなそうとしたと判断したのだろう。わずかの差でステラが手を引っ込めたので噛まれずに済んだ。けれど、ライオン舎はすごい騒ぎになった。他のライオンたちが全て目を覚まし、いくつもの咆哮が轟いた。ステラは耳を塞いでうずくまった。
二分もしないうちに、鞭の音が空氣を引き裂いた。それと同時にライオンたちは吼えるのをやめた。突然の静寂は、ステラには轟音よりも恐ろしかった。怖々、顔を上げて振り向くと、明るい外からの逆光を背負ってマッダレーナが立っていた。その後ろには、息を切らして走ってきたヨナタンのシルエットも見えた。
マッダレーナはつかつかと歩み寄ると、ステラの襟首をつかんで立たせた。
「ここは私のいないときは立ち入り禁止だって、よくわかっているはずよね。いったい何のつもりなのよ」
「ご、ごめんなさい。何もしていないの……」
「何もしていないのに、この騒ぎ? 出て行って! 二度とここに近づかないで」
ステラは泣きながら、ヨナタンの脇をすり抜けて自分のキャラバンへと帰っていった。
「ステラ!」
言い訳をしても無駄だった。近づいていけないのは知っていた。理由を訊かれても話せない。ヴァロローゾに愚痴を聞いてもらいたかったなんて。アフロンタと子猫と遊ぶみたいに遊びたかったなんて。馬鹿みたいだ、どんなに背伸びをしても、私はどうしようもなく子供だ。ヨナタンも呆れたに違いない。馬鹿だ、馬鹿だ。
ステラが走り去った後、興奮したライオンたちを順に毛繕いして落ち着かせると、マッダレーナは自分のキャラバンに戻って煙草に火をつけた。ヨナタンが近づいてきて言った。
「少し歩かないか」
彼女は煙草をくわえたまま、黙って頷くとゆっくりと大テントの方へと歩いていった。この時期は日が暮れるのが早い。四時だというのに、周りはすでに夕暮れに染まっていた。
「あの子はわかっていないのよ。あそこにいるのは大きな猫じゃないのよ。ライオンなの」
「僕は、君を諌めたいわけじゃない」
「私が十三のときだったわ。近隣に住む間抜けな男の子が、勝手にライオン舎に入り込んだのよ。そして、子供のライオンを抱こうとしたの。あたりまえだけれど、母親ライオンが飛んできてね。その子は金切り声を出したわ」
ヨナタンは、ぎょっとしてマッダレーナの横顔を見た。
「私の父さんが、ライフルを持って飛んできた。その男の子はちょっと足をかじられただけで済んだけれど、ライフルの音にライオン舎はパニックになった。そして、妻を守ろうとしたジャスィリが父さんに飛びかかったの。私の母さんもライフルでジャスィリを脅そうとしたけれど、もともとライフルなんてまともに使えない人だったから、すぐにやられてしまった」
マッダレーナは、深呼吸をして空を見上げた。両親は助からなかった。そして、ジャスィリはすぐに処分された。少女は楽園から追い出され、それからずっと楽ではない浮き世を歩き続けている。ヨナタンは、大人のたしなみとしていつもは隠しているマッダレーナの疼みを感じた。
「あの子は何もわかっていないのよ。もし、私のライオンたちが人に危害を加えたら、私は彼らを処分しなくてはならない。だから、嫌われたって、ひどいと言われたって、私は……」
「ステラは、君を嫌ったりしていない。むしろ尊敬しているよ」
「どうかしら。いいのよ、わたし世界中の人間に愛されたいなんて思っていないから」
やはりきちんと謝ろうとマッダレーナを探して歩いてきたステラは、ヨナタンの声を聞いて、あわててテントの影に身を潜めた。夕闇の中で、ステラの心には十一歳のときの、忘れられない光景が浮かび上がった。一人でそっと煙草を吸っていた、優しく孤独なヨナタン。その横顔に夕陽があたっていた。今、目にしている光景は、その絵にとてもよく似ていた。けれど、その脇に美しく憂いに満ちた大人のマッダレーナが立っている。ストロベリーブロンドに夕陽が輝く。今にも泣きそうな彼女が弱さをさらけ出している。ステラは項垂れた。松明の火がチラチラと背中に火花を届けて熱いが、つま先と心が冷えていった。
「そんな風に、投げやりになるな」
マッダレーナは、そういいながら、ヨナタンが別に意識を逸らしたのを感じた。
黙ってヨナタンの視線を追う。テントの向こうからチラチラと動く影を見つけてマッダレーナはそっと笑った。彼女は、意地悪な氣持ちになって、ことさら柔らかくヨナタンに近寄るとよく通る声を出した。
「じゃあ、私を慰めてよ。今晩、月があの山にさしかかる頃、あなたのキャラバンカーに行くから。ノック三回が合図よ。鍵はかけないでね」
走り去るステラの足音を聴きながら、ヨナタンは呆れたように言った。
「わざと嫌われるような事をしなくてもいいんじゃないか」
マッダレーナはクスクスと笑った。半分は本音なんだけれどね。言葉を飲み込む。
夜半。震える拳が月の光に浮かび上がる。トン、トン、トン。
カチャリと音がしてドアが開くと、力強い腕が彼女を中に引き入れ、すぐにドアが閉められた。完全な暗闇の中で、施錠される音が響く。そして、彼女を力の限り抱く。あきらかに、待っていたのだ。こんなに情熱的に切望して。
知らなければよかった。ヨナタンはこんなにマッダレーナの事を愛しているのだ。夢にまで見たひとの腕の中にいるのに、ステラの涙は止まらなかった。悲しくてつらくてどうしていいかわからなかった。
暗闇の中で、彼が小さくため息をつく。それから、くしゃっとステラの前髪を乱した。
「自分から男の部屋に押し掛けてきて、そんなに泣く事はないだろう? ステラ」
彼女は、仰天した。
「わかっていたの?」
「当たり前だろう。あの時うろちょろしていたから、絶対来ると思っていた」
そういってヨナタンはステラの額と、それから頬にキスをした。
彼女は慌てた。彼がマッダレーナと愛し合っていること、だから迫っても拒否される事しか予想していなかったので、キャラバンカーに入り込んだ後に何が起こるかは考えていなかったのだ。そもそも、マッダレーナのふりをして、どうするつもりだったのだろう。
どうしていいのかわからなくて硬くなっていると、わずかなため息とともに、彼が体を離すのを感じた。
「ヨナタン?」
カチャリと鍵の音がして、淡い月の光がキャラバンカーの中に入ってきた。彼の柔らかいシルエットが浮かび上がる。
「そんなに震えていちゃね……。次回は、ちゃんと覚悟をしてから忍び込んでおいで。さあ、おやすみ」
ステラは、とても幸福な氣持ちになって、泳ぐような足取りで自分のキャラバンカーに戻って行った。今までの百倍、いえ、百万倍、ヨナタンの事が好き。大好き。
ふわふわと去るステラの様子を目で追い、ヨナタンのキャラバンカーの扉の施錠の音がして静寂が戻ると、自分のキャラバンカーの前に立っていたマッダレーナは、山の上に差し掛かった十七夜の月に向かって煙を吐きかけた。今夜の星ときたら、まあ、寒々しい事。参ったわね。
ギシリと音がしたので暗闇の中に目をやると、それよりも黒く屈強な男のシルエットが浮かび上がっていた。何だって言うのよ、まったく。
「ガキをからかうのはやめろ」
「あんたに言われたくないわ。ちょっとは落ち込んでいるのよ、これでも」
「お前はブランコ乗りのために我慢するように生まれついているんだよ」
ブルーノが古傷にまで塩を塗り込んだので、マッダレーナはキッと睨んだ。
「じゃあ、あんたはオカマ掘られるように生まれついたってわけ?」
ブルーノはにやりと笑って「まあな」と答えた。マッダレーナは月の光に沈むブルーノの暗い顔色を覗き込み、星のように浮かぶ双つの眸を見つめた。
「じゃあ、今夜くらいは、お互いにその忌々しい運命に休日をあげない?」
そして、口の端を曲げて笑うブルーノを自分のキャラバンカーに押し込むと、自分も入ってカチャリと鍵をかけた。
(初出:2013年12月 書き下ろし)
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創作のイメージづくりになりそう
「Melodyphony~Best of Joe Hisaishi~」というアルバムです。
私は日本に住んでいないので、可能ならiTuneストアで購入します。早く手に入りますし。で、まずはスイスのアカウントで探したのですが、発売されておらず。次に日本のアカウントで。あった。2000円でした。ぽちっ。即購入。
もともと知っている曲もけっこう入っていたのですが、全部別アレンジですし。ロンドン交響楽団が演奏していて、オーケストレーションが華麗だと感じます。例えば「千と千尋の神隠し」など、オリジナルのサントラも持っていて、それはそれでとても好きなんですけれど、あれはあくまで映画と一体化していて、こっちは別に純粋に音楽を楽しむアルバムとして聴いています。
で、個人的には、こういうドラマティックな演奏を聴いているうちに、また次の作品への妄想が動き出すんですよ。勝手に自分の作品のサントラ化。来年以降の創作の源としてしばらく聴いていようと思います。
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「大道芸人たちの足跡をたどる」ツアー、組んでみました
こんなプランはいかがでしょうか。行きたいと思う方はいらっしゃいますかね〜。
(あ、この企画はあくまで自作小説から発展した妄想です。募集予定は今のところ全くありませんので、検索等でいらっしゃった方はご注意くださいませ)
【大道芸人たちを知らない方のために】
「大道芸人たち Artistas callejeros」は2012年に当ブログで連載していた長編小説です。興味のある方は下のリンクからどうぞ


あらすじと登場人物
「大道芸人たちの足跡をたどる旅 スペイン・イタリア周遊12日間」

1日目:
日本(成田または関空)を出発して一路スペインへ。快適な空の旅をお楽しみください。到着後は、蝶子たちが滞在したバルセロナ郊外のコルタドの館で夢の滞在。
バルセロナ(スペイン)泊
2日目:
サクラダ・ファミリア教会をはじめ、ガウディの様々な建築の溢れるバルセロナを観光します。ハイライトはArtistas callejerosが『銀の時計仕掛け人形』の芸を披露したグエル公園。ご希望の方は同じメイクで記念撮影も可能!
バルセロナ(スペイン)泊
3日目:
アンダルシアのイスラムの香りの残る古都、グラナダへ。アルハンブラ宮殿、バザールなど、Artistas callejerosがたどったのと同じ道へとご案内します。お泊りはアルハンブラ宮殿内のパラドール。王侯貴族氣分をお楽しみください。
グラナダ(スペイン)泊
4日目:
セビリヤへバスで移動。四人が稼いだヒラルダの塔をはじめ観光名所にご案内します。午後はアンダルシアの白い街、カルモナへ。ヴィルの愛した小さな城下町です。夜はセビリヤのタブラオ、「エル・ソニード」で、マリア=ニエヴェスらヒターナ(ジプシー)による本格フラメンコショーをお楽しみください。
セビリヤ(スペイン)泊

5日目:
崖の上にある街、ロンダを訪問した後、太陽海岸のリゾート、マラガへとご案内。蝶子とレネが戯れた海岸や、四人で働いた高級バーなどを自由にご訪問ください。四人のようにバルで昼食をとってみては。
マラガ(スペイン)泊
6日目:
空路、イタリアのミラノへ。Artistas callejerosが全員揃った街。ドォーモ前広場で大道芸人たちのパフォーマンスを楽しんだ後は、ショッピングをどうぞ。アウトレットへご案内します。
ミラノ(イタリア)泊
7日目:
様々な映画にも用いられたコモ湖畔のヴィラで室内楽アンサンブルを聴きながらランチをどうぞ。その後、四人がドライブしたのと同じルートでスイスのルガーノに行きます。
コモ(イタリア)泊

8日目:
バスでフィレンツェへと移動。Artistas callejerosが本編や番外編でそれぞれにめぐった場所を追体験できます。パラティーナ美術館、レザースクール、ウフィツィ美術館、ヴェッキオ宮、ボーボリ庭園、プラトリーノなど。
フィレンツェ(イタリア)泊
9日目:
フィレンツェに別れを告げてローマへ。ローマでは、蝶子とカルロスの出会った最高に美味しいビストロへとご案内します。イタリア料理の真髄をお楽しみください。
ローマ(イタリア)泊
10日目:
蝶子が願いを込めてコインを投げ込んだトレヴィの泉や、スペイン階段、そしてバチカン市国などを訪問。終日ローマ観光とお買い物をお楽しみください。

ローマ(イタリア)泊
11日目:
楽しい旅の想い出を胸に、帰国の途に。再び快適な空の旅をお楽しみください。
機中泊
12日目:帰国
ご参加の方全員に「大道芸人たち Artistas callejeros」のサイン本と、サントラをプレゼント! ご希望により、ビジネスクラスへのグレードアップも承ります。
どうでしょうか。私はすごく行きたいなあ。っていうか、自分で勝手に行けってことでしょうかね。この他にフランス・ドイツ10日間の旅ってのも計画できそう。
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【小説】希望のありか
「十二ヶ月の歌」はそれぞれ対応する歌があり、それにインスパイアされた小説という形で書いています。十二月はA. ヴィヴァルディの「Nulla in Mundo Pax Sincera」を基にした作品です。これは映画『シャイン』のエンディングに使われていた曲で、といっても私は観ていなくて、サントラだけを持っているのです。
この話は、少し肩すかしを食わせるかもしれません。先月分のような劇的なドラマは何もありません。「十二ヶ月の歌」では、いろいろな歌の歌詞からイメージする人生のいろいろな局面を掌編にしてきましたが、十二月、小さな灯とともにキリスト聖誕祭を待ち、除夜の鐘とともに静かな年の暮れを待つ今月は、人と信仰のあり方について小さな考察をしてみることにしました。
なお、この作品に出てくる日本人ですが、もしかしたらデジャヴを感じられる方がいらっしゃるかもしれません。はい、そうです。「樋水龍神縁起」の本編の一キャラです。もちろん、本編を読んでも読まなくても、このストーリーには全く関係ありませんのでご安心を。

希望のありか
Inspired from “Nulla in Mundo Pax Sincera” by Antonio Vivaldi
白くうずたかい雪が、教会の屋根を15%太らせている。その先は丸くなって、空の深い青に引き立てられて美しい。
ジャン=ノエルは、緑と赤の瓦で菱の模様が浮き出ているはずのこの屋根は、雪に濡れて濃い色になっているのだろうかと、奇妙な事を考えた。考えなくてはならない事は他にたくさんあったが、今は考えたくないのかもしれなかった。
はじめて故郷から遠い地に赴任した若き神父であるジャン=ノエルは、神学校で学んだはずの理論と、人びとの生活に触れる現実との違いを痛感し、自分の無知と無力に歯嚙みしていた。
サミュエルは真面目に働いて妻と子供を養ってきた。ところが妻がアメリカ人と逃げだした上、長男が窃盗団に加わったと逮捕された。リリーは78年間に渡り爪に灯をともすように慎ましく暮らしてきた。けれど、わずかな貯金を預けていた銀行が倒産した。フランソワは酒も煙草も不摂生もした事がなく、真面目に教会に通っていたが不治の病にかかった。
ジャン=ノエルは彼らが受けなくてはならない試練が、彼らの生まれ持った罪によるものだとは思えなかった。「悔い改めなさい」と説教を口にする時にも、何にに対してと考え込んでしまうようになった。
神の平和と正しい裁きは、この世ではなく天国にて得られると口にする事も出来た。だが、一方で特に信心深くもなければ人格者でもない村人たちが現世を面白おかしくとまではいかずともそこそこ満足して暮らしているのを見ると、自分の言葉が虚しく響いてくるのだった。
この村の四季は美しかった。春には桜やリンゴが咲き乱れ、夏には川で子供たちが戯れた。秋は葡萄の複雑な紅葉に優しく彩られ、冬は静謐で空が高かった。人びとは素朴で、聴き取りにくいドイツ語に近いフランス語を話し、パリからやってきたジャン=ノエルに対して距離感を持って接するものの、攻撃性は少なく扱いやすい信徒たちだった。
ニューヨークのブロンクス辺りや戦火の国で、命の危険を感じながら使命を果たしている仲間たちもいる。自分の悩みなど小さなものだと思った。だが、それでもジャン=ノエルはサミュエルやリリー、フランソワたちに会って話をしなくてはならないのが苦になっていた。
「○×☽☉∆∞」
全く意味の分からない言葉が耳に入ったので振り返ると、そこにはいつの間にか東洋人が立ってやはり屋根を見上げていた。
「何とおっしゃいましたか」
ジャン=ノエルは、念のために英語で語りかけてみた。
「お。英語がおわかりになるのですね。これはありがたい」
男は奇妙な発音だが、きちんとした言葉遣いの英語で話しかけてきた。
「あそこの雪の形、丸く大きく盛り上がっているんですが、バランスとして変だなあと思ったのですよ。あれはなんでしょう」
ジャン=ノエルは微笑んだ。
「コウノトリの巣ですよ。今はアフリカに渡っているので空ですが」
「ああ、そうなんですか。見てみたいものですね。春にまた来たら見られますかね」
「四月には。その頃まだヨーロッパにいらっしゃいますか」
「はい。一年ほど教会建築を見ながらヨーロッパの各地をまわる予定でしてね。では、春にまたこの地方に来る事にしましょう。雪が溶けたら全く違う光景が待っていそうだ」
「では、次回いらしたときは、また、私をお訪ねください。このあたりの興味深い建築へとご案内しましょう。春は格別に美しいのですよ」
男は山高帽をちょっと上げて微笑んだ。
「それはご親切に。私は峯岸裕次と申します。日本人です」
「どうぞよろしく。ジャン=ノエル・ブノワです。暖房は効いていないのですが、よろしかったらこの教会の内部をお見せしましょう」
ジャン=ノエルは峯岸と一緒に教会の戸口に向かった。きちんとした厚手のコート、山高帽など昨今なかなか見かけないきちんとした服装で、しかも戸口をまたぐ時に帽子を脱ぎ何か小さくつぶやいて礼をしたのでおやと思った。十字を切ったわけではないのでカトリックではなさそうだが、深い敬意の見せ方が特別な教育を受けた人間に思えた。
「この辺りではかなり古い教会でしてね。最初の礎石は九世紀と言われています。この柱のあたりが当時からのものです。アーチがここだけロマネスクなんですよね」
「ああ、これが見たかったのです。大雪に悩まされましたが来てよかった」
「ロマネスク建築に興味がおありなのですか」
「ええ。実は私は日本で他の宗教の神職にあたっているものなのですが、昔からヨーロッパのロマネスク建築が好きでして」
「ああ、やっぱり」
「やっぱりとは?」
「いえ、教会への敬意のあり方から、宗教関係の方ではないかと思っていたものですから」
ジャン=ノエルがはにかみながらそう言うと、峯岸はじっと神父を見つめて言った。
「よく観察なさっておられますね。それに感受性のお強いお方だ」
ジャン=ノエルは訝しげに峯岸を見た。彼はただ微笑んでいた。
「あなたの信じている教えの話を伺ってもいいですか。カトリックとは相いれない信仰をお持ちなのでしょう?」
ためらいがちにジャン=ノエルは口を開いた。何も聖堂で訊くべき事ではないかもしれないが、他では神に対しての裏切りのように思え、堂々と神の家の中で話すべき事のように感じられたのだ。それに、今なら信徒の誰にも聞かれていないと確信が持てた。
「相容れないというわけでもないのですよ。もっともあなた方からすると、受け入れがたい信仰かもしれません。私たちにとっては、全てが神なのです。太陽や大岩、それから何百年も生きつづける古木、河川、山、先祖の霊。それぞれが一番に信仰する神がいる。もしくは漠然と願いを託す存在がいる。だから、隣人が仏教徒やキリスト教徒であっても、ああ、あなたが一番身近に祈っているのはその神なのですねと受け入れるわけです。一神教の方々からすると間違っているということになるのでしょうが」
「あなた方がそれぞれにちょうどいい神を選ぶという事なのですか?」
ジャン=ノエルが困惑した様相で訊いた。峯岸は笑った。
「そう言う面もあります。学業に関する願い事をするならこの神、恋愛成就はこの神という具合に。まあ、ギリシャやローマの信仰に似ていない事もありません。でも、それは一時的なものです。多くの方は普段からある特定の存在に多くの祈りを捧げますね。土地の守り神や、先祖代々信仰している神、もしくは本人が名前すら意識していない何かである事もあります」
「現世利益を願うのですか」
「あなた方と同じですよ。現世利益を願う方のために祈り、お守りを授与する代わりにお金をいただく事もあります。有り体にいえば商売です。けれどそれは信仰の本質ではありません」
ジャン=ノエルは口ごもってから真剣なまなざしで峯岸を見た。自分の嵌まった信仰の袋小路についてこの男がどう考えるか質問したくなったのだ。
「あの……。もしお差し支えなかったら、私の直面している問題の事を聞いてはいただけませんか」
峯岸は、青年神父の告白とも悩みともつかぬ話をじっと聴いていた。若くまじめで正義感に満ちている。使命感が強く、はじめての大きな壁に戸惑っている。彼自身の若かった頃を思い出した。
「私はいったいどうしたらいいのでしょう。私の信仰は間違っているのでしょうか。どのようにあの人たちに接していいのかどうしてもわからないのです。そして氣がつくと遭わないように居室に籠ってしまいたくなるのです」
ジャン=ノエルはそういって話を終えた。
峯岸は小さく首を振った。
「それはいけません。逃げだしても何の解決にもなりません。その信徒たちの問題ではなく、あなたの問題の話ですよ」
「私の?」
「私にあなたがどうすべきかを具体的にいう事は出来ません。あなたの信仰が正しいか正しくないかも、あなたの心が告げるべき事です」
ジャン=ノエルは小さくため息をついた。
「私の心は、ずっと大声で叫んでいました。この信仰は正しいのだと。この教えを広める事こそ私の使命だと。それなのに、今は蚊の鳴くような声になっているんです。ずっと心から信じていました。どんな事も祈れば叶うのだと。でも、今はそうではないと思いだしているのです」
峯岸は小さく笑った。
「祈りと魔法の呪文は同じではありません。叶えられる事の保証と引き換えに唱えるものではない。あなたもそれは知っているでしょう」
ジャン=ノエルは峯岸をじっと見て答えた。
「おっしゃる通りです。私は信仰というものについて考え違いをしていたのかもしれません」
峯岸は柔らかな光を運んでくる、ロマネスク式アーチにはめられたごくシンプルなステンドグラスをそっと見上げた。彼の神社で大楠の木陰から漏れてくる差し陽といかに似通っている事だろう。
「答えはあるのかもしれませんし、ないのかもしれません。だが、我々が理不尽と感じるとしても、『世界が間違っている』ということにはならない、そうではありませんか。世界には、正しいも間違いもないのです。存在するのは間違っていると感じる『私』だけです」
若き神父は東洋人の佇まいをみて身震いした。この礼儀正しい人物は、小さく何でもないように見えたのに、突如として至高の存在から送られてきた使者のように感じられたからだった。
男は静かに続けた。
「宗教は完全無欠ではありません。祈れば不老不死となり裕福になれるような宗教を探しても見つからない事ぐらいはおわかりでしょう。私たちにはどうしようもないことも存在するのです。けれど、あなたが職業宗教家として出来る範囲で、その人たちにしてあげられる事は何もないのでしょうか」
ジャン=ノエルは黙って峯岸を見つめた。それから、ゆっくりと聖堂の奥、十字架にかかった基督像を見上げた。彼は少し前へと歩み寄ってから聖壇の前に膝まづき、一心に祈った。単純な淡い色のステンドグラスから差してきた光が青年神父を照らし出し、その光の中で埃が踊る様子をしばらく見つめていた峯岸は、彼をそのままにして黙って小さな聖堂を後にした。
春になったら、またここを訪れてみよう。雪に埋もれていたコウノトリの巣がにぎやかになり、花が咲き乱れ、そしてあの青年の心に光が戻っているといいのだが。
それからジャン=ノエルは不幸な信徒たちを避けるのをやめた。
大司教に掛け合って、新たに出来た貧民救済施設の簡単な仕事をリリーに紹介した。そこは住み込むことが出来たので、彼女は衣食住の問題を解決できて大喜びだった。サミュエルの息子の裁判に関しては熱心な嘆願の手紙を書いたので執行猶予つきの刑が確定した。やがて逃げた妻が男に捨てられてすごすごと帰って来た事もあり、夫妻は熱心に教会に通ってくるようになった。
フランソワに対しては、多くの事は出来なかった。ただ、病室に足繁く通ってその手を握り、望まれるままに聖書の朗読をした。
「『旧約聖書』の方にしてくだせえ。どうも『新訳』は説教臭くていけねえ。『旧約』はなんだかんだ言って、好き勝手やってますからね。聞いていてワクワクしてきまさあ」
それで、ジャン=ノエルは、『旧約聖書』の中でも、とくに荒唐無稽な話を選んで朗読してやった。
「ありがてえ。こうして何度も来てくださって」
最後に聞いた言葉は、こんなだった。春になる前にフランソワは旅立った。
ジャン=ノエルは、教会に戻ってくると屋根を見上げた。青い空はいつもと変わりなかったが、いつの間にか雪が消えて屋根瓦とコウノトリの巣が姿を現していた。溶けた雪で湿った濃い色が、乾いて本当の鮮やかな色に戻るまでにはまたしばらくかかるだろう。彼はコウノトリがいつ帰ってきてもいいように、信仰に恥じない毎日を送ろうと思った。
(初出:2013年12月 書き下ろし)
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「くじや抽選でコレ当たりました!」
Euro Millionというものがありまして、日本では買えないと思いますが、一等の賞金がすごい時には二億ユーロくらいになってしまう桁違いの宝くじです。つい先日は五千百万ユーロ、ジャックポットに入っていました。仕事の話なんかを書いている事から、おわかりでしょうが、私はこのすごい大当たりを引き当てた事などありません。当然ながら。
でも、二度くらい、せこく当てた事はあるのです。まあ、当選金が50ユーロから、100ユーロくらいの可愛い金額です。
皆様ご存知のように、スイスというのはユーロ圏には入っておらず、スイスフランという通貨を使用しています。レートは大体1ユーロ=1.2スイスフランと計算してくださればいいです。で、50ユーロ当たった時には、そのまま60スイスフランほどをいただけたのですが、100ユーロを当てた時にはそうは問屋が卸しませんでした。日本の宝くじと違ってヨーロッパの宝くじ当選金は無税ではないのです。そしてその課税は100スイスフランを超えると発生するのですね。
「おお、100ユーロ当てましたね。これは現金では渡せません。この特別口座を作ってください」と言われ、120CHFもらえると嬉々として作ったはいいものの、振り込まれたのは80フラン以下。かなり納得いきませんでしたよ。
さて、抽選と言って思い出すのは、別の話です。
まだ日本にいたずっと若いころ。「アンコールワット展」が東京で開催されて、インターネットから応募すると抽選で鑑賞券がもらえるというニュースをどこからかキャッチしました。確か有名な「ジャヤヴァルマン七世の頭像」が日本初公開だった時じゃないでしょうか。まさか当時は後に何度も来るようになるとは夢にも思わず、一世一代のチャンスだと思ったのです。で、自分で払ってもいいなと思ったのですが、ダメもとで応募してみた所、あっさりあたったのですよ。

Portrait Head of Jayavarman VII(Phnom Penh National Museum)
そんなこんなでこの展覧会の事はいまでもとても印象ぶかく思い出すのです。現在の日本の多くの展覧会のように、いつ行っても混んでいるということはなくて、ゆっくりと何度もこの美しく柔和な石像の謎の微笑みを堪能した記憶があります。
こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当山本です今日のテーマは「くじや抽選でコレ当たりました!」です。冬になるとついつい宝くじを買いたくなり当たったら…というムナしい妄想をしてしまいますが皆さん、くじや抽選でどんなものが当たったことがありますか?山本は最近500円の金券が当たりました宝くじに比べると小さいかもしれませんが、とてもうれしいものですね抽選といえば、現在FC2ブログでは映画「バイ...
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『メディアミックス妄想バトン』だそうで
自身の作品が、もしメディアミックスされたら……。という設定だそうで。
アニメ好き、ゲーム好きではまったくない私には、かなり無茶ですが、それでもやってみました。
私でも出来るんだから、アニメやゲームの好きなもの書きさんは、みんなやってね!
では、いきます。作品はおなじみ「大道芸人たち Artistas callejeros」でございます。
【メディアミックス妄想バトン】「大道芸人たち Artistas callejeros」編
- 【1.あなたの作品のアニメ化が決定しました! プロのライターさんがキャッチコピーと、CMのナレーションを作ってくれます。「これだけは入れて」というキーワードを教えてください(自分で文章を作ってもいいですよ)】
- 「自由」とか? やっぱり「ヨーロッパ」は入れてほしいよね。
- 【2.作画はどのようにいたしましょう。イメージに近いアニメ作品や、お気に入りの監督さんなどがあれば教えてください】
- すみません。本当に二十年来アニメ、宮崎駿監督作品しか見ていないし、誰とか言えません。でも、宮崎アニメのイメージではないです。本音を言うと、実写の方が好みなんだけれど、実写だとガイジン俳優、全ロケ、四カ国語+字幕で予算がなくなるからやっぱりアニメかな。
- 【3.戦闘シーンは剣や武闘などのリアル重視? それとも魔法や超常の力で幻想的にしたい?】
- 戦闘シーン、ないです。蝶子とヴィルの喧嘩、教授との対決、あ、蝶子とエスメラルダの対決か。全然戦闘にならないや。
- 【4.「グッズ展開できそうなアイテムないですか」と言われました。アニメ会社のみなさんも生活かかってますので、可能な範囲で協力したいところ。商品化してみたい作中アイテムはありますか?】
- レネの使っているタロットカード。四人のイラスト入りで。え、他に? あ、「イネスおばさんのタパス」シリーズを冷凍食品で。それってグッズじゃない?
- 【5.テーマソングを好きな人に依頼できます。さあ誰にしようか! イメージに近い曲があれば、そのタイトルも教えて。いくつでも可です! ※歌詞は書かないでくださいね! 法に触れますゆえ!】
- え。だったら、久石譲さんに。いいですよ、わかってますよ。無理でしょう。妄想だからいいの! いっそフランスのC. Bollingに頼んじゃいたい。
- 【6.原作者の協力が功を奏して、アニメは大成功。なんと今度はゲーム化です! ばりばりRPG! さて、お金はどうやって稼ぐシステムがよいですか?(モンスターと戦ってゲット、報酬、宝物を発掘して転売、…などなど)】
- 大道芸人だからね。大道芸で稼ぐんですよ。頑張れ。(RPGの仕組みというものがわかっていない発言)
- 【7.そうそう、キャラクターのイメージボイスの人を教えて】
- すみません。声優の声で浮かび上がる人がいなくて調べてみました。
で、イメージに近かったのがこんなかんじです。現役の方かすら知りません。
稔:土田大 さん
蝶子:湯屋敦子 さん
レネ:浪川大輔 さん
ヴィル:津嘉山正種 さん
カルちゃん:江原征士 さん
エスメラルダ:田中敦子 さん(突然出すな)
声を調べた音源はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=5HiUlVljWdQ - 【8.上記イメージボイスにて、ぜひとも音声化して聞いてみたい、自分のキャラの名台詞をお願いします!】
稔:「泣くな、ブラン・ベック。今夜は俺がとことんつき合ってやるからさ」
蝶子:「ヤスこそ忘れているんじゃないの? 来月のホワイト・デーは倍返しでよろしくね」
レネ:「なんてきれいな人なんだろう」
ヴィル:「ヤスならまだしも、あんたに従うなんてまっぴらだ」
カルちゃん:「マリポーサ。あなたは夜明けの荒野に立ちのぼる金星です」
エスメラルダ:「逢ってあげてもいいのよ結局の所、彼はまだ私に夢中みたいだから」- 【9.ひとつだけ、他者さまの作品と好きなようにコラボレイションできます。何をどのようにしてやりましょう。「なろう」でもそれ以外でも自由で】
- ここでのコラボという意味が分かっていないけれど、バトンをいただいてきたTOM-Fさんのところの「フェアリーテイルズ・オブ・エーデルワイス」はアニメ化しているという設定なので、その人氣にあやからせてもらおう。抱き合わせで売る新人タレントみたい。
- 【10.おつかれさまでした。次の走者の指定があれば、お書きください】
- ほかのバトンより、すらすら書けましたよ。実現しないだろうと思ってますからね。そういうわけで、あなたもやってみよう!
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憶えている? と言われても
うちは九つ離れているので、ジェネレーションギャップを感じないかと言えば嘘になるのですが、それ以前にベースとなる記憶が、なんか遠いんですよね。
子供の頃に、印象を受けたニュースとか、流行っていた音楽とか、「なんとなく」ではなくて「全く知らない」という事が多いのです。
今でもそうなんですけれど、日本で流行っている洋楽の大半はアメリカのものですよね? で、日本にJ-POPや演歌があるようにスイスにもスイスの歌手による音楽があると同時に、海外の曲も流行するのですが、ヨーロッパのヒットも多いのです。イタリアやフランスのものとかね。中近東のものも東欧のものもたまにあります。だから、「子供の頃これ流行らなかった?」といわれて「さあ?」ってことが多いのです。ABBAやビートルズはわかりますが。
ニュースもそうで、多分日本でも流されていたニュースだろうけれども、さほどセンセーショナルではなかったせいか、ほとんど憶えていない事件というのも多いのです。パレスチナのテロリストによるルフトハンザのハイジャック事件のことをドキュメンタリーで観たのですが「えっ、憶えていないの?」と驚愕されてしまいました。いや、子供だったし!
ヨーロッパにとっては、ヨーロッパや中近東やバルカンなどは近くて、アジアはかなり遠いので、うちの旦那が知らない事もかなりあります。最重要ニュースはスイスでも報道されますが、それ以外は彼は何も知りません。
言語は習得すれば、それなりに上達しますが、なんていうんでしょうかね、共通の記憶みたいなものは、あとからだと作れませんよね。変な話だけど、昔、こういうブームがあったよねとか、この曲聴くとあのコマーシャルが浮かぶよね、というような共通の記憶です。まあ、なくても夫婦生活には全く支障はありません。説明しても通じませんしね。
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【小説】樹氷に鳴り響く聖譚曲(オラトリオ)
ブログのお友だちの間で、クリスマス掌編を書くのが流行っています。これも無理矢理入れられない事もないのですが、あまり「めでたく」ない話でして……。ただ、クリスマスを強く意識して書いた話です。途中ででてくる現象は、私が実際に目にしたもので、この世でもっとも美しいと思ったものの一つです。
樹氷に鳴り響く聖譚曲(オラトリオ)
目に痛いほどの青空が広がっていた。昨日の雪雲はどこに消えたのだろう。慎一は訝しんだ。沙羅は少し離れて歩いている。昨日、この通りを歩いた時よりは近いが、昨夜ほどは近くない。彼女はウィンドウを眺めてふと足を止めた。観光客向けのどこにでもあるような土産物屋だ。ヨーロッパに住む彼女が欲しがるものがあるとは思えない。
「どうした?」
慎一は訊いた。
「姫とお嬢さんにお土産を買わなくていいの?」
冷静な提案の奥に、痛みがこもっている。高校生の時は、この痛みを聴き取れなかった。
卒業寸前の三月、最後の委員会が終わり、帰ろうとする沙羅を慎一は呼び止めた。
「沙羅、話があるんだ」
沙羅はいつものしっかりとした目つきで慎一を見据えて言った。
「別の機会にしない? さっきから姫が委員長のことを待っているわよ」
別の機会などないことを沙羅は知っていた。慎一が近づこうとする度に沙羅はいつも麻紀の存在に触れた。ちょうど今のように。慎一はそう言われるまで麻紀のことも彩花のことも完全に忘れていた。
「空港で何か買うよ」
「そう」
昨夜、降っていることすらも感じさせないほどの粉雪が、次第に慎一のコートの千鳥格子を消していくのを見ながら沙羅は言った。
「こんな風に、なにもかも消えてしまえばいいのに」
慎一がヴェローナに住む沙羅に連絡したのは一週間前だった。沙羅が美術の修復家としてイタリアで活躍していることをインターネットのニュースで偶然発見したのは麻紀だった。二年ほど前のことだ。大して興味のないふりをしていても慎一の心は穏やかではなかった。だが、どうすればいいというのだろう。いずれにしても二十年も経ってしまっているのだ。高校時代からずっとつき合い結婚した麻紀との間に生まれた彩花は小学校に入ったばかりだった。
だが、サン・モリッツで開かれる学会に一人で出席することが決まり、地図を見ていた慎一はふいにどうしても沙羅に逢わなくてはならないと思った。インターネットで検索し、再び彼女を見つけ、メールを送り、そして、学会の後にサン・モリッツ駅で待ち合わせたのだ。
「委員長って、全然変わっていないのね」
久しぶりに会った沙羅は開口一番に言った。沙羅もまったく変わっていなかった。お互いに歳を取り、服装も変わったが、あの頃に時間が戻ったようだった。
「びっくりしたわ。まさか各務くんが私を憶えているとは思わなかったから」
「忘れる訳はないだろう」
慎一は少し傷ついて答えた。沙羅と自分には誰にもわからない絆がある、そう思っていたから。実際には何もなかった二人なのに。
高校一年の頃から常に選ばれていた学級委員。一年の頃には麻紀も委員会にいた。それから懐かしい他のメンバーも。三年になるまで一緒だったのは、副委員長を務めた沙羅だけだった。まじめで統率力のある慎一と冷静で穏やかな沙羅のコンビは教師達の信頼が厚く、学級委員会は例年よりも多くの自治を獲得することとなった。常に共にいることが自然だった二人はお互いに淡い恋心を抱えていた。が、沙羅は、明るく奔放で皆から姫と呼ばれていた麻紀に慎一への恋の相談をされ、橋渡し役を務めることになった。二年生の夏だった。沙羅にそのことを告げられて、彼女が自分を何とも思っていないと失望した慎一は、麻紀とつき合うことを承知した。沙羅は落胆して心を閉ざしてしまった。あの時、慎一が断っていたなら、もしくは自分の氣持ちを沙羅に打ち明けていたら、二人の人生はまったく違ったものになっていたかもしれない。
卒業間近に慎一ははっきりと自覚した。沙羅と進路が別れていく。このままにしたくない。慎一は想いを伝えようとした。沙羅はそれを許さなかった。それでいてずっと慎一への想いに苦しんでいた。それを彼がようやく知ったのは昨夜のことだった。
二十年ぶりの再会。慎一は大学で経済学を教え、専業主婦となった麻紀と家庭を持っていた。沙羅は大学卒業後に美術館に勤めた後に、修復の勉強のためにフィレンツェに渡り、バリオーニという画家と出会い、一緒に暮らすためにヴェローナに移った。
二人でピッツァを食べながら、時を忘れたように話をした。あの頃と同じだった。話題はぴったりと合い、興味深く、感性も一致していた。離れていた二十年にできた距離は急速に埋まっていった。赤ワインがグラスに注がれる度に、ずっと蓋をしていたために無駄に育ってしまった想いが、慎一の中に浮かび上がってきた。二本目の瓶が空く頃、彼は高校の時に言い出せなかった言葉を口にした。沙羅はうなだれてしばらく何も言わなかった。やがて、窓の外の雪を眺めたままぽつりと答えた。
「ずっと私だけの夢物語にしておきたかったのに……」
冷静で穏やかな瞳の奥の願い。慎一はすでに二十年前に知っていた。二人ともお互いの心を知っていた。それをひたすら「そんなはずはない」と打ち消して来ただけだった。ワインと雪のせいにして、二人は慎一のホテルに向かった。慎一は二度とこの女を離すまいと思った。この二十年間の後悔を繰り返すまいと。
だが、朝になった。二人の酔いは醒めた。服を着てレストランに座り朝食を摂ると、昨夜の一体感は現実に吹き飛ばされた。彩花は中学受験の準備のために塾に通い始めたばかりだった。沙羅は美術界に影響力を持つバリオーニの後押しを受けて、カラバッジオの修復に関わらせてもらえるかどうかの瀬戸際にいた。二人とももう委員長と副委員長だけの存在ではなかった。

それがわかっているから、未来はないのだと思うからこそ、今は離れがたかった。二人であてもなくサン・モリッツの街を歩いた。氷点下が身にしみるのでセガンティーニ美術館へ行き、カフェに座り、夕暮れまで過ごした。
やがて沙羅が静かに言った。
「ありがとう。一生忘れないわ」
黒めがちの瞳でしっかりと慎一を見据えて。その声に強い痛みが隠れている。
「また逢おう」
たまらずに慎一は言ったが、沙羅は小さく首を振った。
「姫とお嬢さんに捨てられたら、その時は連絡してちょうだい」
沙羅はいつもこうだった。強い自制心。現実的な選択。二人でサン・モリッツ駅に向かい、そこで別れるつもりなのだ。もう雪は降らない。麻紀の選んだ千鳥格子のコートはくっきりとした文様を再び現わしていた。
駅につき、沙羅は窓口で切符を買おうとした。流暢な英語を話す沙羅に圧倒されて慎一は黙った。
「一つは、クール経由でチューリヒ空港まで、もう一つは……」
沙羅はそこで言いよどんだ。
係員は助けようとして、発音から推定したのかイタリア語に切り替えて質問して来た。それでも沙羅はしばらく答えなかった。慎一は行き先を言えないはずのない彼女の様子に戸惑った。
「沙羅?」
やがて沙羅は頭をまっすぐにもたげ、はっきりとした口調の英語で続けた。
「トゥージス経由でヴェローナ行きにしてください」
駅員は首を傾げた。トゥージスからイタリアに向かうにはベリンツォーナまでのバスを使うしかない。ヴェローナならベルニナ線に乗りティラノ経由にする方が近いし簡単だと、わかりきった説明をした。が、沙羅はきかなかった。
「もう少しだけ、今夜一晩だけ、一緒にいてもいいでしょう?」
そう慎一に問いかけた。慎一は黙って頷いた。
赤いレーティッシュ鉄道はホームで待っていた。一番前に、たった一つだけ濃紺の車両があり、中は柔らかなランプが灯っていた。レトロなインテリアの食堂車だ。
「あそこに座ってワインを飲みましょう」
沙羅は微笑んだ。二十年間の夢をたたき壊したばかりだというのに、まだ笑うことができる自分がおかしかった。こんなものわかりのよさじゃ、姫に勝てるはずがなかったわね。
麻紀は、沙羅が慎一に対して持っている恋心を知っていた。知っていて、一番のライバルだとわかっていたからこそ、相談という形で先制攻撃をかけて来た。沙羅はそれに対抗する強さを持たなかった。麻紀が悪かったのではない。すべて自分のせいだった。これほど長く引きずるのならば、自分から何か行動を起こすべきだった。何もしなかったのに、突然のメールに心を躍らせてここに来たりするべきでもなかったのだ。本当は少しだけ期待していた。彼がもう自由な存在だと言ってくれることを。
「こんな感じのいい食堂車があるんだ」
慎一は木の天井や壁で覆われた、オリエント急行の映画に出て来るような車両を珍しそうに見回した。テーブルはきちんとテーブルクロスで覆われ、クリスマス前なので置かれた飾りは松かさや色とりどりの球に人工雪がかかったもので、ロウソクの灯と白熱灯のレトロなランプの光で暖かく瞬いた。おどけたポルトガル人のウェイターは白ワインをきちんとしたグラスに注いでくれた。列車が動き出した。二人はグラスを重ねた。
列車は雪に覆われたエンガディン谷を走ってゆく。日暮れとともに氣温は更に下がっていた。二人は窓の外の光景が普通でないのに氣がついた。青緑色に光っているのだ。それは電線に霜がつき、列車が通るときの通電でスパークする、氷点下を走る列車の最前車両で観られる特別な現象だった。列車は花火のような激しい光を放ちながら、一面の銀世界を通り抜けていく。スパークのもたらすジジジという音と車輪の音が神聖なる静寂を切り裂いていく。
そして、次に二人の目に入って来たのは、凍える樹氷の林だった。大きく育った氷の結晶は、スパークの光に照らされて一斉に、何万個のダイヤモンドのように輝いた。閃光を放ち、夜空を映し、暗闇の雪原はしばし地上の宝物殿になった。世界中のどの都市のクリスマスツリーも、これほどの輝きを持つことはなかった。冷たく静かに心を射る神秘の結晶。このような山の中に、誰にも知られずにひっそりと、自然はこれほどの財宝を用意していたのだ。

それはほんの数秒の光景だった。その後しばらく二人は口をきかなかった。話す必要もなかった。
今夜を境にまた二人はお互いの社会的・物質的な生活に戻っていく。教授会や娘の教育やカラバッジオの修復などに心を煩わせるあたりまえの日々。麻紀や彩花やグイドー・バリオーニとの日常生活が待っている。二人の愚かな未練の存在する余地は、この地上のどこにもない。
奇跡など信じてはいない。高校時代の思い出が現実の生活より大切なわけでもない。二人の行為は永く想っていたからといって許されることはない、ただの不義密通でしかなかった。こうなったのは、自分たち以外の誰かが悪い訳ではない。全てはそうなるべくしてなったのかもしれない。列車は日々、様々な乗客を運んでいく。二人のように事情を抱えたカップルは他にもいるだろう。何一つとして特別なことはなかった。時刻表通りの運行。
世界は、自然はそんな人間社会とは関係なく、ひたすら美しいもので満ちている。認められようとも、知られようともせず、ただそのままで、輝かしく神々しい。姑息な計略も、認められたいと思う野心も、マーケティングのための街の装飾も、不義に被せた愛という名の仮面も、はるかに及ばぬ純然たる崇高美だった。
「み使いのほめ歌う 天の讃歌は
荒野に響き 山々にこだまする
その妙なる調べを 繰り返す
天のいと高き所には 神に栄光
地の上には 御心にかなう人々に平和あれ」
(Gloria 栄光頌)
トゥージスは小さな駅だった。列車から降りた住人達は慌ただしく姿を消した。静まり返り道往く人影もない通りを歩き、小さな宿をみつけた。清潔で簡素な部屋は、言葉少ない二人に似ていた。すぐ近くの教会からミサを報せる鐘が鳴る。この世に降誕する救い主を祝う準備の儀式。荘厳なる音色を聴きながら二人は身を寄せ合った。鐘が鳴り終わったその余韻の後に、最終列車が暗闇に消えていく音がした。

(初出:2012年12月 Seasons 冬号)
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ぷち報告
昨日39℃あった熱が、本日は38℃以下になってきたので、若干はよくなっているのだと思いますが、あまりに色々な変調が続くので、お医者さんもかなり細かく調べてくれました。
血液検査の最初の簡単な結果ではかなり高い炎症を示す数値がでていることや、若干の血尿があるということで精密検査待ちになりました。レントゲンや超音波でも調べてもらったのですが、前回の激痛の場所の腎臓をはじめ今のところ目立った内蔵の変化はないそうなので、大人しく精密検査の結果を待つ事にします。
いや〜、めったに病院にも行かないウルトラ健康体でも、こういう事もあるのですよね。歳が歳だけに、これからはこういう事も増えていくんでしょうけれど。とにかくよく寝て早く熱を冷まします。
そういうわけで、ご報告まで。
(12/12 追記)
精密検査の結果「どうやら、何でもないようです」ということになりました。結果を待っている間に、お薬も何もいただいていないのに、熱は下がり、あちこちの痛みも止り、ようするに大騒ぎし過ぎただけか、ということになりました。ご心配をおかけした皆様にお詫び申し上げるとともに、ピンピンしてきました事をご報告申し上げます。皆様、ありがとうございました。
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いろいろありまして
今日は、報告やら今後の事やらいろいろと。

まずは、先日わりと暖かかったお昼時の「カモのお池」の様子などを。池の九割くらいが凍っちゃっています。現在は残った一割を泳いでいるのですが、これも塞がってしまうとカモたちは飛んでいってライン河やアルブラ川の中で冬の間を過ごすのです。でも、ちょっと不安なのが、以前この池の横に「地元の鴨肉をどうぞ」みたいな看板が立っていた事があって、もしかして一部はクリスマスのご馳走になっちゃうのか? とぎょっとした事。まさかね。
さて、ここ数日の事なんかを。
先週の日曜日にちょっと腰の辺り(正確には腰よりちょっと上の左側の背中)が筋肉痛っぽいかな、と思っていたのですがその夜はどういうわけだが眠れないほどの激痛に。といっても、三週間の帰国休暇のあとで仕事がすごい事になっていて、とても休める状態ではなかったので行きましたよ。車で。その日は激痛で泣きそうでした。原因もわからないし、もしかしたら大変な内臓疾患だったらどうしようと思ったり。それともぎっくり腰かなあと。
で、その日帰宅した後に連れ合いに泣きついたら「風呂に入って暖まれ。そのあとタイガーバームを塗ってやる」と力強く言われ「そんなんで大丈夫か」と半信半疑でいう通りにしました。タイガーバームで燃えるような背中のまま、前日よりは眠れたもののそれでも何度か起きたので、ダメかなあと思っていました。でも、翌朝起きたら確かによくなっていたのですよ。で、もう一晩同じ療法でほぼ完治。その間はもちろん自動車通勤。長く座っていられないのでほとんど小説も書かず、ギターも弾けず。
そんなわけで、家事などもかなり停滞してしまいました。で、現在はそのしわ寄せが来ていて、けっこう忙しいし、まだ時おり痛む腰をかばっているので、本調子ではないのです。
そして、今後のブログの予定など。
毎週水曜日の小説投稿は続きます。まず、明後日は投稿チャンスを逃して一年経ってしまった「十二ヶ月の組曲」の十二月分を発表します。その次の週は、今年のシリーズ「十二ヶ月の歌」の十二月分。(これ、まだ出来ていない! まずい……)そして、今年最後の小説はStella用に「夜のサーカス」となります。
日本旅行の報告や、TOM-Fさんにいただいたバトンなども順次載せていくつもりです。
来年の予定ですが、また「scriviamo!」をやろうかと思っています。今年の「scriviamo!」で一氣に皆様親しくなったし、新たに親しいお友だちもたくさん出来たんで、味をしめました。ほぼ去年と同じ要項でやりたいなと思っています。新年早々ぶち上げると思いますので、参加してもいいなあとお考えの方はどうぞよろしくお願いします。
いろいろあって執筆も一部停滞しているのですが、脳内では再び色々なものが動き出しています。来年のメイン連載は予定通り「貴婦人の十字架」で行こうと思っています。まだ完結していないので不安ですが。それから四月で「夜のサーカス」が完結するので、その後には「バッカスからの招待状」をオムニバスで連載しようかなと思っています。
まだ形になっていないけれど妄想が進んでいる小説は、「樋水龍神縁起」の外伝的位置づけで、安達春昌と次郎の二人旅の話。それから、断片的なストーリーとして「明日の故郷」「終焉の予感」「赴任前日の事」の続編、それに今年中に書くといって書けなかった「だだ生きよ」などがあります。
そんな感じで、つれづれの報告でございました。
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最後は二人で

イラスト by 羽桜さん
このイラストの著作権は羽桜さんにあります。羽桜さんの許可のない二次利用は固くお断りします
最初に羽桜さんにイラストをお願いした時には、本当に最初の「百花繚乱の風」のシーン、瑠水が真樹と音楽を聴いているシーンだけのつもりだったのです。有名なアニメなどの二次創作ならまだしも、見ず知らずの人間のオリジナル小説でいきなりイラストを描けと言われても面食らいますよね。羽桜さんはとてもそんな私の申し出に快く応えてくださいました。そして、最初にお渡しした設定のわかる一文だけでなくて、「Dum Spiro Spero」全部を読んでくださったのです。
どんな服にするか、どんな背景でどんな時間帯の光にするか、髪の長さは、表情はと、本文を書いた私でも意識していなかった部分まで丁寧に読み込んで下絵を作ってくださったのです。
この最終回のシーンは、最初に出てきたシーンと共通する点がいくつかあります。二人が一緒にして、時間帯が夕方です。でも、この小説を通して二人が変わってきたその違いも丁寧に描き込まれています。
私が感心したのは、二人の周りに散っている黄金の光です。少女マンガ的な「キラキラ」と思ってもいいんでしょうけれど、これは私にとっては「龍の媾合」というシーンで二人の間に特別な絆がある事を示唆した記述があるのですが、そこで「見える者」にだけは見える不思議な光として登場したものなんですよ。
そりゃ、私は「樋水龍神縁起」オタクですが(作者だからあたりまえ)、この光をみてひとりで「よっしゃ!」と叫んでいる図は、さすがにアブナイものがありました。
そういうわけで、羽桜さんには連載の開始前から、最後まで、本当に驚かされっぱなしでした。体調が良くないときや、とてもお忙しい時にも、連載に穴があかないようにと無理をしてくださった事、心から申し訳なく思っています。
羽桜さん、本当にありがとうございました。そして、また機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします。
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【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (16)命ある限り
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この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物
樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(16)命ある限り
病院を出ると、瑠水は家に帰らず、石材工房を探すためになつかしいあの街に向かった。あたりはほとんど変わっていなかった。工房もきっとあの頃からあったのだろう。でも当時は、消防士だった真樹自身もその工房には興味を示していなかったにちがいない。
工房は直に見つかった。引き戸は開いていて、中で誰かが会話をしているのが聞こえた。瑠水は背中を見せている女性の張りのある笑い声に耳を傾けた。
「じゃあ、生馬さん、来週時間を取ってくれる?」
瑠水は、動きを止めた。女性はシンに話しかけているんだ……。
「わかりました。よろこんで」
忘れもしない真樹の声だった。そのひとのために喜んで時間を取るんだ。じゃあ、今、私が入っていったら、迷惑かもしれない。出直そう。瑠水は、黙ってもと来た道を引き返そうとした。だが、中にいた真樹は、瑠水の姿に氣がついた。
「瑠水!」
瑠水は背を向けたまま立ち止まった。女性を店の中に残したまま、真樹は急いで出て来た。
「瑠水だろう?」

イラスト by 羽桜さん
このイラストの著作権は羽桜さんにあります。羽桜さんの許可のない二次利用は固くお断りします
瑠水はゆっくりと振り返って真樹を見た。強い目の輝き。ほとんど変わっていなかった。ほんの少し、歳を取った。目尻にしわがある。前よりも落ち着いて見えた。作務衣を来て、歩く時に左足を引きずっている。瑠水はものも言えずに真樹を見上げていた。真樹の顔は喜びに輝いていた。あの時の氣まずさなどすべて吹き飛んだようだった。
女性は、その雰囲氣を察知して中から出てくると、
「じゃ、来週、よろしくね」
と去っていった。
「いいの?」
瑠水は去って行く女性の背中を見ながら真樹に訊いた。
「あの人? オーナーの奥さんだよ。来週、売店の棚卸しの手伝いをしろって。君はいつ、島根に戻って来たの?」
「昨日。しばらくお休みなの。来月からこっちに転勤にしてもらったの」
「何をしているの」
「地質学協会ってところで働いている。種類は違うけど、やっぱり石の仕事よ」
「そうか」
真樹は、しばらく黙ってみつめていたが、やがて訊いた。
「どうしてここがわかった?」
「次郎先生が、教えてくれたの。事故のことも……」
「あいつ、約束を破ったのか」
「次郎先生、病氣なの。とても悪いの。お墓に嘘を持っていきたくないって。私、シンがどうしているか知りたかった。あの時のことも謝りたかったし、それにシンが一番辛い時に側にいられなくて……」
「もう時効だろう。お互いに」
真樹は、昔のように瑠水の頭をなでて笑った。
工房はあまり大きくないけれど、よく整頓されていた。勾玉やペンダントトップなどの納められた箱が大きな箱の中にいくつも並べられていた。
「それは、大社の前の土産物屋にいく分だ」
道具を洗ってしまいながら真樹は言った。いま加工しているのはもっと大きい彫刻のようなものだった。
「これは?」
「何だと思う?」
柔らかな青と薄緑色のグラデーションのかかった石だった。二人の男女が抱き合いながら上を見ている。水の中にいるようだ。なんてきれい……。
「水底の皇子様とお媛様」
「そうみえるか?」
「違う?」
「違わない」
瑠水は、微笑みながら石に触れた。
「シンだけは、絶対に嗤ったり馬鹿にしたりしなかったわよね……」
「もう、いなくなっちゃったのか?」
瑠水はすっかり大人になっていた。都会の暮らしであか抜けて前よりもずっときれいになっていた。
「いいえ、樋水にはいつもいるわ」
「それを聞いて安心した」
真樹は、全ての片付けを終えると、カーテンを閉めて戸締まりをした。
「店じまいだ。アパートに行って話をしよう」
瑠水は黙って頷いた。
アパートは、まったく変わっていなかった。同じように適度に乱雑で生活の香りがした。結城拓人の都会的な高層マンションの部屋を思い出した。もう現実のものではない遠い夢みたい。瑠水は足下に落ちている新聞やTシャツをさりげなく拾った。真樹は肩をすくめるとCDの棚を指差した。
「何か好きなものをかけて」
真樹は、キッチンに向かった。瑠水がCDの乱雑に入った棚を見ていると、向こうから声が聞こえた。
「ごめん。コーヒーが切れている。ほうじ茶しかない」
「構わないわよ」
この際、飲み物なんかどうでも。
瑠水はようやく見つけたお目当てのCDをプレーヤーに入れようと、スイッチを入れた。中にはエリック・サティが入っていた。「あなたがほしい」そうね。これが私だったらいいんだけど。瑠水は大きく息をつくと、彼女にとっての大きな賭けをはじめた。プレーヤーを閉めて、再生ボタンを押した。ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。
響いてくる最初の和音と一緒に、真樹が近づいて部屋に入ってきた。どんな顔をしているのか見る勇氣がなかった。呆れているのか、怒っているのか、それとも……。真樹はテーブルにお盆を置いた。恐る恐る顔をみると、真樹は笑ってもいなければ、怒ってもいなかった。ただ、瞑想するような真剣な表情だった。それから、黙って隣に座った。あの時のように、不必要に近く。けれど、あの時と違って、真樹は第二楽章の終わりまで悠長に待ったりはしなかった。
「これ、何?」
手を伸ばして、瑠水はベッドに彫られた文字をなぞった。- Dum spiro, spero.
「生きている限り、希望を持つ。キケロだそうだ」
真樹は瑠水の顔にかかった髪の毛に触れて言った。瑠水は目を丸くした。
「どこで習ったの?」
「次郎センセが教えてくれたんだ。あの時、病院のベッドでよほど絶望した顔をしていたんだろうな。ここに戻ってから、彫った。助けられたよ。くじけそうになると、これを唱えて堪えた。何もかもダメになったと思っていたけれど、時間が経ったら、歩けるようになった。新しい仕事も見つかった。またバイクにも乗れるようになった。それに……」
そういって真樹がキスをしながら覆い被さってきたので、瑠水はもう今日のバスには乗れないなと思った。
帰宅が遅い瑠水を心配する摩利子が送ったメールが携帯で点滅していた。ひどく怒られるだろうし、呆れられるだろう。でも、きっとお父さんとお母さんは、祝福してくれるに違いない。ようやく私の皇子様にたどりついたのだ。
携帯にメールが届いた。摩利子は東京の早百合から電話を受けているところだった。
「お母さん? 聞いているの? それで瑠水ったらね、私に何にもいわないで東京を引きはらっちゃったのよ。信じられない。あの結城拓人のプロポーズを断ったなんて。いったい何を考えているのかしら。ちょっと話させてよ」
摩利子は、瑠水からのメールを横目で見て、眉をひとつ上げた。私には何が起こっているか明白だわ。
「早百合、瑠水は今夜は戻らないそうよ。シンくんのところに泊まるって」
「な、なんですってぇぇ? あの子、まだあのロリコン消防士と切れていなかったの?!」
「その言い方は、もうやめなさい。近いうちにあなたの義弟になるかもしれないんだから」
早百合との通話を終えると、摩利子は瑠水にメールを送った。
「了解。シンくんに『龍の媾合』の時に命を救ってもらったお礼を忘れずに言いなさい」
これで、二人の恋路の邪魔はおしまい。それで幸せなら、勝手にしなさい。
次郎を見舞うために、二人は総合医療センターに向かっていた。次郎は『あたらしい媛巫女さま』がようやく見つけた幸福を喜んでくれるだろう。バイクを走らせる真樹の後ろに座って、瑠水は樋水川の輝きを見ていた。『水底の二人』の幸福は、今や瑠水のものだった。
遠い東京では、拓人が真剣にピアノに向かっている。真耶が喝采に応えている。瑠水はそれを感じることが出来た。
この世界に満ちる特別な存在には、みながそれぞれの方法で仕えている。音楽で、神職として、病と闘いながら、水底にいることで、おいしいコーヒーと料理と笑顔で。瑠水と真樹も二人なりの方法で仕えることが出来る。この奥出雲で、風を感じながら。
病室のベッドでは、次郎が肩で息をしていた。息をする限り、希望を持ち続ける。かつて、生馬真樹に語った言葉を、次郎は思い浮かべた。
次郎には確信があった。あの二人は一緒になるだろう。千年前の瑠璃媛、この世で数年だけ一緒にすごした新堂ゆり、二人の媛巫女が次郎の前から姿を消して、彼自身の『妹神代』も去り、次郎の心は何度もくじけそうになった。けれど、樋水はくじけなかった。次郎の目の前で、新しい希望が育っていく。
瑠水と真樹のカップルは、樋水の新しい至福の風になるだろう。そして樋水には、生まれ変わりかどうかに限らず、永遠に新しい媛巫女と背の君、そして至福の風が鎖として繋がり伝わっていく。そして、次郎もいずれ、あの瀧壺の底の歓喜の光に加わることが出来るだろう。次郎は希望に満ちて息を吸った。
(初出:2011年4月 書き下ろし)
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紀ノ国屋で買った

とはいえ私は大金持ちではないので、食べたいものの山の中から厳選して美味しいものを買ってくるのですが、中でも絶対に外せないのが、カスタードプリンと粗挽きのソーセージ。泣きたくなるほど美味しいのです。ドイツ語圏に住んでいたって、こんなに美味しい粗挽きソーセージは滅多に食べられないのですよ。プリンは何をか言わんや。
みかんも見えていますね。うん、日本のみかん美味しかったな。あと、この日はカキフライも買いました。私はあまりカキフライというものを好んで買わない人なんですが、食べたらとっても美味しかった。ああ、幸せでした。ええ、日本帰国で太りましたとも。
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