ラディッキオ・タルディーヴォを見つけた
そして、目に入って来たのがある野菜でした。

日本はとんでもないものがメジャーになっていたりするので油断がなりませんが、少なくとも私はずっと知らなかった高級野菜、「トレヴィーゾの花(il fiore de Treviso)」とも呼ばれているラディッキオ・タルディーヴォです。あ、正式名称は「Radicchio di Treviso rosso tardivo」もしくは「Radicchio tardivo di Treviso」というようです。
そもそもラディッキオといわれても「?」な方もいらっしゃると思いますが、「チコリ」や「エンダイブ」の仲間だと思ってください。「え、苦そう」と思われた方、そうなんです、この仲間の野菜は苦みが特徴なんですけれど、ラディッキオ・タルディーヴォは苦みが少なくて上品な味、さらにシャキシャキとした歯ごたえがいい上、この鮮やかな赤紫と白のコントラストが美しい野菜なんです。
しかも、ヴェネト州やヴェネチア州の一部で伝統的に作られているのですが、氣の遠くなるような手間をかけて作られているのですね。−7℃まで下がって霜が降りてしおれたものを一度掘り起こした後、水栽培で新芽を出させ、その新芽だけを売るらしいのです。他の地域の人たちには氣候や水の状態が違うのでマネが出来ないと思うんですけれど、この作業を知ったら真似したくなくなる、そんな野菜です。もちろんドイツ語圏スイスの田舎では探しても見つかりません。
というだけあって、お高いんですよ。1kg16フランでしたよ。もちろんそんなに大量には買いませんでした。どんな味か知らないし、上手く調理できる保証もないし、でも、ものは試しで食べてみたいじゃないですか。だから、二株だけ。
で、かじってみたら、確かに上品でシャキシャキしておいしいです。苦みはほとんどありません。でも、かじるだけもなんなので、残りは保存食にしてみました。「ラディッキオ・タルディーヴォのオイル漬け(Radicchio tardivo di Treviso sott’olio)」ですね。
白ワインビネガー(私はバルサミコ・ビアンコ)と白ワインと少量の水を沸騰させてラディッキオ・タルディーヴォを茹でます。それを塩こしょうとニンニクとローリエとともにオリーヴオイルに浸すだけ。酸味が脂っこさをとってくれます。これを少しずつサラダやパスタに混ぜる高級アンティパストのつもり(笑)

自己満足な一品でした。まあ、生まれて初めて本物に出会ったのだもの、はしゃいでしまいますよね。イタリア語圏の人がこれ読んだら呆れるだろうな……。
ちなみに、イタリア語ですけれど、どうやってこの野菜が出来るのか説明した動画を貼付けておきます。
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サン=プルーにはまっています
Saint-Preux Légende
フランスのサン=プルーという作曲家の「Légende(伝説)」という曲だったのですね。これを見つけてから、サン=プルーの他の作品も氣になって、結局iTuneストアで買いまくりです。
ちなみに、日本の方でもたいていの方が聴いたことがあるほど有名なこの人の代表曲は「Concerto pour une voix(一つの声のためのコンチェルト/邦題・ふたりの天使)」です。
で、私は、代表曲ではないものばかりダウンロードしていますね。
たとえばこの曲は「Sur les Ailes du Temps(時の翼にのせて)」というんですけれど、ヴァイオリン協奏曲風。同じアルバムに入っていた曲ですが、とても素敵なので、こちらもダウンロードしました。
(ちなみに、このアルバム、ジャケットが私の大好きなマックスフィールド・パリッシュ!)
最近、クラッシックではないけれど、クラッシックに近い作曲をする人の曲をたくさん聴くようになりました。クロード・ボーランや、アルノー・ババジャニアンなど、私の作品で既にモチーフにしている作曲家もありますけれど、このサン・プルーも直に仲間入りですね。
メロディアスで、ドラマティックで、さらに物悲しい。かなり私の好みにど真ん中です。(こういうのばっかり聴いているから、小説もああなるのか……)
こういう音楽に会えるようになったのも、インターネットのおかげなんですよね。
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【小説】Infante 323 黄金の枷(25)雪の朝
宣告という形で愛する23と一緒に暮らすことになったマイア。自分に触れようともしない彼の態度に傷ついて一夜を過ごしました。彼の真意はどこにあるのでしょうか。
最終シーンのイメージBGMは前回の記事で歌詞とともにご紹介しましたが、サブタイトルとなっている雪の朝のイメージBGMがあります。後書きとともに追記でご紹介しています。
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Infante 323 黄金の枷(25)雪の朝
パチパチと何かが爆ぜる音で目が醒めた。隣に23はいなかった。起き上がって最初に目に入ったのは、暖炉の中で赤く燃えている焔だった。火をおこしたんだ。今朝はそんなに寒いのかな。
彼女は23の姿を探した。広い部屋のずっと先にいた。いつもの服を着て髪をきちんと結った彼は窓の向こうを見ていた。はらはらと舞い落ちる雪が静かに鉄格子の上に積もっている。
この街を彩る赤茶色の屋根はすべて雪に覆われて、静かに眠っているようだった。いつもは騒がしく朝を告げるカモメたちも、震えて羽の間に頭を埋めているだろう。楽しいこと、つらいこと、歓び、悲しみ、そのすべてを紡ぐ活氣ある街を覆うように、雪は静かに降り積もっていた。
23は黙って窓の外を見ていた。その姿がはじめて彼に逢ったあの日の記憶に繋がった。彼はあの日も格子の向こうの世界を見ていた。彼には出て行けない世界の輝かしい美しさと、そこを自由に飛び回るカモメたちの羽ばたきを眺めていた。生け垣の向こうから入ってきて言いたいことをいいながら帰って行くマイアを、鍵を開けて鉄格子の中へと入ってくる召使いたちが用事を終えて出て行くのを、この館から離れて街の中を自由に動く姉の姿を見ていた。その心持ちがどんなものだか、マイアは今はじめて思い至った。
マイアにとって、ドラガォンの館に入ってくることも、23の居住区に入ることもつらいことではなかった。ここ鉄格子に区切られた空間は、彼女にとって一度たりとも牢獄ではなかった。昨日まで自由に出入りできた職場の一区画だったからではない。自分が鍵をかけられて閉じこめられる存在となってもつらくはなかった。その理由を突然彼女は悟った。
それは、ここにいつも23がいたからだ。ここは彼の空間、マイアがもっと近づきたかった愛しい男の住まいだった。
けれど、23にとって、そんな甘い意味はどこにもなかったのだ。彼はいつも牢獄の中で一人で孤独と戦ってきたのだ。マイアが仕事を選び、買い物を楽しみ、自由に散策しながら、パスポートがもらえない、船に乗れないと文句を言っていた間、彼はそれよりもずっと強い悲しみと戦ってきたのだ。存在することを否定され、名前ももらえず、心を込めて働いても認められることもなく。
彼はいつもこうやって窓の外を眺めてきたのだろう。そして、その後に、誰かが自由に動き回り、世界を快適に旅して回ることのできる、あの素晴らしい靴を作るために暗い地下の工房へと降りて行くのだろう。今すぐ駆け寄って抱きしめたいと思うと同時に、そんなことをしてはいけないと思った。彼が雪と、全てを包む込む大いなる存在、父なる神と対峙しているこの神聖な時間を邪魔してはならないのだと思った。
頬に熱いものが伝う。23、23、23……。痛いよ、心が痛い。あなたのために何をしてあげたらいいんだろう。
「起きたのか」
振り向いた23はマイアが泣いていることに氣がついた。
「どうした」
「……」
「閉じこめられたのがつらいのか?」
マイアは激しく頭を振った。
彼は大きくため息をついてベッドに戻ってきた。それから彼女の頬に手を当てて、その瞳を覗き込んだ。瞳には初めて会った時と同じ暗い光が浮かんでいた。
「泣かれるとこたえる。嫌なのはわかっているが一年だけ我慢してくれ」
「何を?」
「俺と一緒にいることを。心配するな、何もしないから」
「イヤだなんて……。どうして何もしないの? 私じゃ全くその氣にならない?」
23は首を振った。
「無理矢理に俺の自由にして苦しめたくない。お前の意志も訊かずに決めたことは悪かった。でも、信じてくれ。お前のためにこうしたんだ」
マイアは自分も手を伸ばして23の頬にかかる髪に触れた。
「私のためって?」
彼はマイアの手の上に自らの手を重ねた。彼女の心臓はまた強く速く動いた。23の声がすぐ近くで響く。
「一年経っても子供ができなければ、お前は用無しとみなされて、ここを出て行くことができる。そうなったらライサと同じように腕輪も外してもらえる。パスポートももらえるし、どこにでも好きな所に行って、どの星のある男にも邪魔されずに愛する男と結婚することもできる。お前が夢みていた自由を手に出来るんだ」
「どうして? どうして自由にしてくれるの?」
マイアがそう訊くと、23は泣きそうな顔をした。
「わからないのか。誰よりも大切だから。もう一度逢いたいとずっと願っていた。このままずっと側に居られたらと思っていた。だが、俺の望みと好きな男がいて自由を夢みているお前の幸せとは相容れないだろう。だから、俺がお前のためにしてやれることは、これしかないんだ」
マイアは震えた。この人は、何を言っているんだろう。
「一年経ったら、あなたも一緒にここを出て行けるの?」
23は黙って首を振った。口元は微笑んでいたが、その瞳は十二年前のあの日と同じように泣いていた。
「だったら、そんなの、私の夢でも幸せでもないよ……そんな自由なんかいらない。あなたのいない所には、どこにも行きたくないよ」
「マイア」
「一年だけなんてイヤだよ。あなたがここに居続けるなら、ずっとここに、あなたの側にいたい」
23はようやくマイアの言っていることが理解できたようだった。震えながら両手をマイアの頬に当てた。
「俺でも、いいのか」
「『でもいい』じゃないよ。あなたがいいの。好きな人ってあなたのことだもの。他の人じゃだめなの」
彼は泣きそうな顔のまま笑った。
「生まれてくる子供たちも孫たちもみな《星のある子供たち》になるぞ」
「星があっても、悪いことだけじゃなかったもの。腕輪をしていたから、私は23の側に来られたんだよ。生まれてきたから、私たち出会えたんだよ。そう思わない?」
答える代りに23はマイアを強く抱きしめた。彼女はそのぬくもりに酔った。
春が来た。風に散らされたアーモンドの花びらが緩やかに舞う河沿いを、古い自転車が走って行く。
黒い巻き毛を後ろで束ねた少し猫背の青年が、風を起こしながらペダルを漕いでいる。
その後ろに、茶色の髪をなびかせた若い娘が乗っている。青年の腰に腕をまわし、しっかりと抱きついて、D河の煌めく波紋を眺めている。
カモメを追い越し、路面電車のベルと車輪のきしみを耳にして、自転車は大西洋をのぞむフォスへとさしかかる。
波が岩場に打ちつけて、白いレースのように花ひらいて砕け散る。繰り返す波。海のそよ風。カモメの鳴き声。クリーム色のプロムナードに辿りつくと、青年は自転車を止めた。
二人は自転車から降りて海を眺めた。どちらからともなく差し出した手を繋ぎ、波のシンフォニーに耳を傾けた。
言葉はいらなかった。パスポートや船も必要なかった。お互いが切望していた約束の土地は重ねた手のひらの中にあった。枷だった金の腕輪は、いつの間にか絆の徴に変わっていた。
(初出:2016年5月 書き下ろし)
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MacBook Air 買った
十月に日本に帰国するんですが、今回はじめて一ヶ月帰国して、そのうちの一週間を日本で働くことにしたんですよ。遠隔接続ですね。で、こちらからリモート用のアプリケーションを入れたマシンを持っていく所までは決めていたんです。
で、問題は何をどう持っていくか。現在使っているMac miniは2008のものでOSは二代前のMervericsなのです。そろそろMac miniを買い替えるかなとは思っていたんですが、そうなると日本でディスプレイとキーボードを調達しなくちゃいけない。レンタルもありますけれど、もし万が一上手く繋がらなかったらなどと心を悩ませていたのです。

で、次の候補がMacBookシリーズでした。が、なんせ高い。ディスプレイとキーボードついているんだから当然なんですが、値段でいうと日本円にして四万円くらいの差があります。
で、ネットで中古がないかなと探したらあったんですよ。MacBook Air 13インチ 2014ものが、新品のMac miniと同じくらいの値段で。
中古の販売って、詐欺のようなことも横行しているので激しく不安だったのですが、どうやら本当にラッキーだったらしく、この値段で、ほとんど触ってもいなかったように思えるくらい新品同様のマシンをゲットしてしまいました。しかも、なんとマウス付きで。売り主も女性で、だから氣弱な値のつけ方だったのでしょうか。とにかくラッキーでした。
しかもMacBook Air ですからね。本当に軽いんですよ。以前持ち歩いていたiBookの半分。たぶんiPad Proとほとんど変わらない程度です。日本に行くときに手荷物で持っていくのだから少しでも軽い方がありがたいし、これなら旅行にも持ち歩けます。
ただ、愛機Mac Miniと違って、SSD容量がだったの125GBしかないので、たくさんのデータは入れられないという難点はあります。なので、外付けのHDDも購入してみました。どっちにしても、そういうのは必要なので。
さて、限られたアプリは何を入れよう、と見回して、最初に決めたのがOpenOffice(これは妥当)でしたが、次はなんとscrivernerでした。そうです。私が小説執筆に愛用しているアプリですね。その後にMac Keeperというユーティリティを導入。ここで、Mac Miniの中にマルウェアがいたことが判明! あわてて、そっちの対策をしたり、かなり慌ただしい週末になってしまいました。でも、とりあえず心配が一つ片付いたのでホッとしています。
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旅の荷物の話
「旅の必需品は何ですか」という質問で、「パスポートと、現金と、iPhoneと、歯ブラシと……」というような身も蓋もない回答をしましたけれど、実は旅の荷物というのは永遠の課題です。
もともと日本人というのは海外旅行に行くときの荷物が多い謎の国民として、私の周りのガイジンたちの間では有名だったりします。たった一週間の旅行に大の男でも簡単には持ち上げられない荷物を持ち、しかも毎日違うホテルにチェックイン、つまり旅のほとんどをその重い荷物を引きずっているのは何故なんだと……。
例えばヨーロッパの鉄道で旅をするとわかると思いますが、車両に乗り込むにはかなり段差があったり、ドアが手動だったりするので慣れないと昇降が大変なのです。これを20キロもの大きい荷物を持ってやるとなるとかなりストレスですよね。
私が旅行するときは、(お土産&スイスに持って帰るものが多い)日本に行く時を除いて、片手で持ち上げられるサイズの荷物で行くようにしています。機内持ち込みギリギリくらいのサイズですね。これはその荷物を持って階段を下りるときに足にぶつけたりしないし、片手で手すりにしっかりつかまれることが大事だから。
そのサイズにお土産も詰め込むことも想定して、往きは4割くらいガラガラ(重量も、往きが8キロ以内、帰りが多くて15キロってところでしょうか)にしていきます。つまり衣類はとても少ないです。
一週間くらいの旅行で下着もTシャツも三組程度、ボトムスは着ているものの他に着替えが一つ、上着の類いは着た切り雀です。もっとも、ヨーロッパは寒暖の差が激しいので、ブラウスやカーディガン、ジャケット、大判ストールなどを重ね着して調節するので、組み合わせで変化も出ます。たたむと小さくなるウルトラライトダウンジャケットやウィンドブレーカーなど、旅用の衣料もかなり厳選しています。
「もしかしたらいるかもしれない」と思ったものは心を鬼にして切り捨てます。これだけ旅をしていると本当になくて困ったものが何かくらいはわかるので、それは入れます。たとえば、充電ケーブルの類いは現地では簡単に手に入りません。また、歯ブラシを備えてあるホテルはほとんどないので、絶対に忘れられません。日本と違って日曜日には何も買えないなんてことも多いので、1日でも無しではいられないものは、忘れずに。そして、私はホテルでは靴を脱ぎたい人なので、ぺったんこに出来るスリッパもいつも持っていきます。バイクの旅のときは、スリッパの代わりにローマ風のサンダル。

これは、ちょっとした工夫です。ハンカチタオルを無印良品の歯磨きセット用ケースに入れています。そして、必要なときに濡らしてオシボリとして使うのです。このケースに入れればバックの中が濡れることもないですし、シャワーのときに使うタオルにもします。ウェットティシュー、浴用タオル、ハンカチを一つで済ませているわけです。
一つで済ませるといえば、iPhoneを持つようになって以来、旅の必需品が減ってとてもありがたいです。前は、音楽を聴くための機械、アドレス帳、予定表のある手帳、航空券のコピー、文庫本、携帯電話、地図、ガイドブックなどを個別に持っていましたからね。便利な時代になりましたね。
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【小説】大道芸人たち 2 (2)フュッセン、白鳥の城の下で -1-
ところが、こちらでは「教会で神の前で愛を誓う」のとは別に、役所でサインするときにも式があるのですよ。役人が神父の立ち位置で、「夫婦とは」などとあれこれ話したあと、二人の証人の前で「結婚しますか」「はい」というのをそれぞれ言わないと結婚が成立しないのです。つまり、日本のような本人たちが揃わない状態で役所に行き籍を入れるなんて事はありえないのですね。今回は、その「役所での婚式」です。フュッセンの話は、次回。また2つに切りました。
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大道芸人たち Artistas callejeros 第二部
(2)フュッセン、白鳥の城の下で -1-
「ヤスミンからメールが届いていますよ」
レネが図書室から呼んだ。三人は、図書室のコンピュータの前に集まった。
ヴィルはメールを読んでいたが、蝶子の方に振り向いて言った。
「来週の金曜日に、フュッセンの戸籍役場で婚式を執り行ってくれるそうだ。思ったよりも早く決着がつきそうだ」
「来週? 真耶に頼んだ書類、昨日届いたばかりでまだここにあるじゃない。どうやったらそんなに早く出来るの?」
蝶子はびっくりした。
書類はバルセロナのドイツ大使館に提出すると聞いていた。それがミュンヘンに送られて審査が行われるので、婚式は早くても一ヶ月後だと思っていたのだ。
「昨日、ヤスミンにFAXしたんだ。劇団の同僚のベルンの叔父がフュッセンの戸籍役場に勤めていて、審査をすべて飛ばしてくれたんだ。バロセロナでやると、問い合わせがミュンヘンに行くから、親父の息のかかった連中に捕まる可能性もある。ドイツに行かなくてはいけないが、フュッセンの方が安全だと思う」
「フュッセンは、ノイシュヴァンシュタイン城のあるところね」
蝶子はにっこりと笑った。
「俺、そこには一度行ってみたかった」
「僕もまだ行ったことがないんです」
稔とレネもすっかり乗り氣になった。
「ハロー、ヴィル。久しぶりね」
ヤスミンがヴィルに抱きついて、頬にキスをした。
「ブラン・ベックのメイクは見事だったよ。手品が始まるまで、まったく氣がつかなかった」
ヴィルは言った。
ヤスミンは意地の悪い目をして言った。
「そっちも負けない大芝居をしたみたいじゃない。全員騙されたのよ」
「あんたは俺の演技を知っているだろう」
ヴィルはむすっと言った。あの大芝居以来、三人に散々な扱いを受けてうんざりしているのだ。
「私はその場にいなかったけれど、居たってどうせ見破れなかったでしょうよ。あなたの悪役ぶりは本当に板についているから」
それからヤスミンは蝶子にも抱きついてキスをした。
「おめでとう、シュメッタリング。私、あなたたちの結婚式に立ち会えて本当に嬉しいの」
「どうもありがとう。ごめんなさいね。急にこんなことをお願いしてしまって」
「カイザー髭の目をくらますために急いでいるんでしょう。私、手伝うなと言われても勝手に協力しちゃうくらいよ」
それからヤスミンは稔とレネにウィンクをした。
「急ぎましょう。あと三十分後に婚式が始まるのよ。戸籍役場は、ここから歩いて十五分ぐらいだから。ベルンもあそこで待っているはずよ」
戸籍役場と聞いたので、つまらない四角い役所を予想していたのに、それは小さいながらもヨーロッパらしい美しい装飾のされた部屋だった。十八世紀くらいの建物だろうか。細やかな彫刻の施された木製の天井、細かな浮き彫りのある白い漆喰で囲まれたワインカラーの壁、時間の熟成を思わせる木の床。稔は「ほう」といって見回した。
熊のように大きい青年ベルンはヴィルとしっかりと抱き合い、それから蝶子の手に恭しくキスをしてから、ヤスミンに頼まれて用意してあった花嫁用の花束を渡した。
ベルンの叔父のスッター氏は、書類を抱えて嬉しそうに待っていた。
「さてと、始めましょうか。ええと、結婚指輪の交換しますか?」
そんなことは、何も考えていなかった二人だったが、笑ってそれぞれずっとしていた銀の指輪を外して、スッター氏に渡した。
婚式が始まった。スッター氏は二人に対するはなむけの言葉と、結婚生活のこつについて話した。それは二十分近く続き、稔やヤスミンがあくびを噛み締めるようになってから、ようやく一番メインの儀式に入った。
「アーデルベルト・ヴィルフリード・フォン・エッシェンドルフさん、あなたは四条蝶子さんの夫になりますか」
ヴィルは「はい」とはっきり答えた。あまりにも迷いがなかったので、蝶子は意外に思ったほどだった。あのパーティでのヴィルの言葉は今でも蝶子の心にくすぶっていて、もしかしたら最後の最後に否定されるのではないかと思っていたのだ。
蝶子は、ヴィルが自分を見ているのを感じた。同じ返事をしてくれるのを祈るように願っている青い瞳を。
「四条蝶子さん、あなたはアーデルベルト・ヴィルフリード・フォン・エッシェンドルフさんの妻になりますか」
蝶子は「はい」と答えてからヴィルを見て微笑んだ。
スッター氏は二人が夫婦になったことを宣言し、蝶子とヴィルに結婚証書にサインするように促した。続いて稔とレネも証人として同じ書類にサインした。蝶子とヴィルはお互いの左の薬指に銀の指輪をはめ、それから短いキスをした。
後ろでベルンとヤスミンが用意してきたシャンペンを抜いて、グラスに注いだ。それからその場の全員で乾杯をした。
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ジンジャーエール
そして夏の家仕事といったら果実のシロップだったんですけれど。今年から今まで行っていた有機農家が土曜日は営業しなくなってしまったので、いちごやラズベリー、ブルーベリーの大量購入は出来なくなりました。それで代わりにいろいろと試しているのです。その一つが自家製ジンジャーエールです。

やってみようかなと思ったのは、実は数ヶ月前までスーパーで買えるショウガは中国産だったのが、タイ産に変わったこと。まあ日本産があるわけでなし、スイス産なんて考えるだけ無駄なので、とりあえずタイならいいかなと。氣安めですけれど。
で、自家製ジンジャーエールの作り方というのは、何種類もあって、たとえばパン用の酵母をつかって炭酸の部分まで作ってしまう本格的なものもあるんですけれど。
手作り炭酸って、加減を間違えるとふたを開けた途端、振りまくったシャンパンみたいになってしまうこともあるので、私は「ジンジャーエールの素」をつくり、飲むときに炭酸水で割るタイプを採用しました。
で、作り方ですけれど、ざっくりいうと「薄切りショウガと同量の砂糖を寝かせて水分をだし、水とスパイスを加えて煮たものを漉す」わけです。このやり方自体は、果実のシロップとほとんど同じなので、とくに目新しいものはありませんでした。
(興味のある方は、ネットにいろいろとレシピが載っていますよ〜)

出来上がったのがこちら。私はショウガの皮も使い、さらに砂糖はすべて非精製糖(白砂糖でないもの)を使っているので色は濃いです。でも、この砂糖のさまざまなミネラル類が複雑な味わいを出すらしく、美味しいと思うんです。
割るのは炭酸水ですけれど、甘いのが苦手の方はスパークリングウォーターでもOK。また、これをお湯で割ってもなかなか美味しいです。紅茶に混ぜれば風邪をひいた時のショウガ紅茶にもなります。
問題はですね。今年初めて作ったんですけれど、とんでもない人氣なんですよ。連れ合いの工場兼店舗に持っていくと、彼と客(というか冷やかしの常連)が数日で空けちゃうんです。これは大人も子供も飲めますし、アルコールほど「飲ませてくれ」というハードルが高くないらしく……。
というわけで、なくなってはまたショウガを買ってきて作っています。
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「旅バトン」やってみました
今回は小説のバトンではなくて、「大道芸人たち」つながりで「旅に関するバトン」でございます。
旅バトン (13問)
- ■旅行するのは好きですか?
- 大好きです。億万長者に全遺産をもらって、生活に困らなくなったら旅だけして暮らしたいくらい旅が好き。
- ■絶対旅にかかせない持ち物リスト
- 「絶対」と言われたら、これだけですかね。
パスポート、クレジットカード、iPhone、現金、歯ブラシ、カメラ、充電グッズ、イヤホン。 - ■海外で今までどんなところに行ったことがある?
- トランジットで一瞬だけ滞在という所は全て無視して、ちゃんと目的地としていった所は:
スイス、リヒテンシュタイン、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、バチカン市国、スペイン、ポルトガル、英国、チェコ、ギリシャ、トルコ、マルタ共和国、モロッコ、エジプト、ケニア、タンザニア、ジンバブエ、南アフリカ共和国、オーストラリア、アメリカ合衆国、サイパン。
なんだ、これだけ? もっと多いかと思っていた。 - ■一人旅が好き?
- 好きです。ネックは、シングルの部屋は割高なのと、「この荷物を見ていて」と頼む人がいないのと、食事のときに寂しいことなんですけれど、それ以外は一人の方が自分勝手に行動できるので。時折やっています。
- ■国内旅行?それとも海外が好き?
- う〜ん。今は日本は遠いんで、その区分けは無理。
長時間フライトがキツくなってきたのでヨーロッパ旅行の方が好き。 - ■いつかは行ってみたいところベスト3
- *アンコールワット(カンボジア) - 崩壊する前に一度この目で。
*ハワイ(米国) - 祖母の散骨に行く予定なんだけれど常に後回し。
*峨眉山(中国) - パンダと仙人(え?)がいるところ。四川料理がネック。辛いの苦手なんで。 - ■行きたいけどいけなさそうなところベスト3
- *ギアナ高地(南米) - もはや体力的に無理かも。
*イースター島(チリ) - これは遠くて難しい。飛行機の乗り継ぎを考えるだけで辛い。
*パルミラ(シリア) - 私が生きているうちにシリアが平和になってくれる日は来るのかな。 - ■私のオススメスポットベスト3(国内編)
- *出雲(島根) - 「樋水龍神縁起」以来、私の中では島根が特別になってしまいました。
*別府(大分) - 友達が住んでいる。温泉が五千もあるのって、この世の極楽!
*熱海(静岡) - だいぶ昔ですが祖母が住んでいたので、強いノスタルジアがあります。温泉とみかんと花火と干物。好きなものが揃っているところ。 - ■私のオススメスポットベスト3(海外編)
- *ポルト(ポルトガル) - 「黄金の枷」シリーズの故郷です。街は綺麗、食べ物はおいしい、英語が通じる、人びとは親切。文句なしのベストワン。
*ザンジバル島(タンザニア) - 哀愁漂う美しい島でした。
*ザルツブルグ(オーストリア) - 美しい街並がコンパクトにまとまっていて、素敵な街でした。 - ■ズバリ!恋人と行くなら?
- う〜ん、ありがちハネムーンなら、ニューカレドニアだけれど、小説の題材としては面白くなさそう。モロッコ辺りに行かせて、はぐれさせるといろいろ起きそうじゃないですか?(誰もそんなこと訊いていないか)
- ■最近行ったところは?
- ポルト(3月末)
- ■近々行く予定は?
- *ウィーン(7月末)
友達が来るというので週末に合流予定。往きと帰りは寝台車で行く予定。ウィーンも大好きな街です。言葉(ドイツ語)が通じるのも楽で嬉しい。
*日本(10月)
これは要するに里帰りです。もう少し近かったら、もっと頻繁に帰るんですけれどねぇ。 - ■次にバトンの旅に出てもらう7人
- これは指定できませんよ。やってもいいかなという方がいらしたら拾ってやってくださいませ。
このブログの常連の方はご存知ですが、春にポルトに行くというのをもう5回も繰り返しています。でも、まだ飽きない! 素晴らしい所ですよ。
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このバトンのURL:
http://www.baton-land.com/baton/614
バトン置場の『バトンランド』:
http://www.baton-land.com/
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【小説】大道芸人たち 2 (1)バルセロナ、祝い酒 -2-
さて、今回は二つに切った「バルセロナ、祝い酒」の二回目です。ロマンティックのカケラもないプロポーズにもかかわらず、結婚式のことで盛り上がっていた仲間たちにヴィルは水を差します。「ばか騒ぎはどうでもいいが、手続きはすぐに始めたい」と。
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大道芸人たち Artistas callejeros 第二部
(1)バルセロナ、祝い酒 -2-
「なぜそんなに急ぐのよ」
蝶子には訳が分からなかった。
「親父はまだあんたに未練があるんだ。あれだけの人前で釘を刺されたから、そんなに簡単には行動を起こさないはずだが、いつ氣が変わって訴訟準備を再開するとも限らない。その前にこっちの法的手続きを成立させてしまうんだ」
「訴訟って何の?」
「婚約不履行のだよ。幸いあんたは金目のものは何も持ち出してこなかったらしいから、金品では争えないだろうが、五年間の滞在費やレッスン代で争われる可能性もある。あれだけ法曹界に知り合いがいて財界にも影響力がある親父だ。訴訟に持ち込まれたらあんたに勝ち目はない。あいつはたぶん和解と婚約履行を狙っているんだろうから、出鼻をくじく方がいい。息子と結婚した女とはどうやっても結婚できないし、その女相手に訴訟を起こすのは世間の笑い者だからな」
「それで、結婚するっていいだしたの?」
蝶子は少しだけがっかりしたようだった。確かに重要な理由ではあったし、急ぐのも無理はないが、あまりロマンティックではない。
その蝶子の反応を見て、ヴィルはやむを得ず、言いたくなかったことを口にした。
「それだけじゃない。もし、また何かあった時に、結婚していれば離れずに済むだろう」
それを聞いて蝶子は嬉しそうにヴィルに抱きついた。照れているヴィルを見るのはかなり稀だった。稔とレネ、カルロスとイネスもまた笑って祝いの準備を始めた。
酒を買いにいくと言って席を立った稔とレネに、蝶子は言った。
「ねえ。結婚式の後のパーティって、みんなダンス踊るのよ。だから、二人とも意中の女性にパートナーになってくださいってお願いを早めにしておいてよ」
レネと稔は顔を見合わせた。
「ヤスミン、頼んだら、パートナーになってくれるかなあ」
レネはもじもじと下を見た。
稔は笑った。
「大丈夫だろ。イヤだといっても、あっちから押し掛けてくるって」
「ヤスもよ。もうパートナーは心に決めているんでしょう」
蝶子が畳み掛けた。
それで蝶子の策略にようやく氣がついた稔は、腹を立ててふくれっ面をした。
「おい、ギョロ目。イネスさんに特別ボーナス出してくれよ。マリサのパーティ用のドレス新調しなくちゃいけないだろうから」
イネスは大喜びで稔にキスをして、カルロスも嬉しそうに頷きながら稔の頭を小突いた。
「蝶子なの? 久しぶりね。どうしたの。電話なんて珍しい」
懐かしい真耶の声がする。
「ごめんね。真耶。急いで訊きたいことがあるのよ。あなたと結城さんが少なくとも四日間まとめて休める一番早いスケジュールを教えてほしいの」
「どうして?」
「バルセロナまで呼びつけるからよ」
「何のために?」
「私の結婚式」
「ええ~っ? 本当に? おめでとう。で、お相手は?」
「それがね。私、結局、フォン・エッシェンドルフって人と結婚することになっちゃった」
「え……」
「大丈夫。真耶が心配するような相手じゃないから。いま、代わるわ」
頭の中が疑問符でいっぱいになっている真耶の耳に、聞き慣れた声が飛び込んで来た。
「ハロー、真耶。元氣か」
「ヴィルさん? あなたなの? まあ、よかったわ。おめでとう。でも、どういうこと? フォン・エッシェンドルフって……」
「そのことについては、拓人に訊いてくれ。それより、スケジュールのことだが、できるだけ早く確認してほしい。外野が話をどんどん大きくするんでね。さっさと済ませないととてつもない大事になってしまう」
そう言うと、ヴィルは受話器を蝶子に戻した。
「そういうわけで、真耶、わかり次第報せてね。挙式の日取りはそれに合わせるから。それと、申し訳ないんだけれど、また私の戸籍謄本をはじめとする書類がいるみたいなの。明日にはエクスプレスで委任状を送るから、そっちもお願いしていいかしら」
「もちろんよ。まあ、蝶子ったら、本当に心臓に悪いことばかりする人ね。でも、おめでとう。楽しみにしているわね」
電話を切ってから、蝶子はヴィルに詰め寄った。
「どういうこと? 結城さんに訊いてくれってのは」
「あいつ、俺のことを知っていたんだ。でも、本当に真耶にまで黙っていてくれたみたいだな」
「なんですって?」
「いつまでも隠しておくなと忠告された。俺はあいつに恩を感じているんだ。そうでなかったら未だに黙ったままでいたかもしれない」
「呆れた。結城さんたら、どうして私に言ってくれなかったのかしら」
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いつかアフリカに帰る

先日、「陽炎レールウェイ」というお題に合わせて小説を書くにあたって引っ張りだしてきたのが、1996年の暮れにおよそ2ヶ月滞在したアフリカの記憶でした。
ケニアに1ヶ月ちょっと、それからジンバブエとタンザニアのザンジバル島に滞在したんですよね。そのジンバブエで知り合ったのが、現在の連れ合いです。予定もなかったのにスイスに流れてくることになったきっかけがこの旅でした。
それから、スイス移住後しばらくしてから、遅れたハネムーンみたいな形で、1ヶ月ほど南アフリカ共和国にも滞在しています。
また、ブラックアフリカとは違いますけれど、エジプトやスペイン領セウタとモロッコなども折にふれて訪問していますので、おそらく一般の日本人よりはたくさんアフリカ大陸に行っている方かなと思います。
でも、「本当にアフリカの好きな人」ほどはたくさん行ってはいないなと思います。つまり「アフリカに魅せられて、血が騒ぐ」という方ですね。そういう方こそ、本当の意味でのアフリカ好きだと思うんです。それでいうと私は、まだまだ「エセ・アフリカ好き」ですね。
「一度アフリカに行ったものは、必ずアフリカに帰る」
この言葉は、アフリカに行った人は必ず耳にすると思います。「もう一度アフリカに行く」じゃないんです。「帰る」なんですよ。例えば私がアメリカに行っても、そこは単なる滞在先で、決して私の帰属する場所にはなりません。「一度スイスに来たものは必ずスイスに帰る」と言われても私の心は「嘘つき」と反応します。帰属意識というものはそんなに簡単には生まれません。
でも、アフリカだけは、そういわれることに、私の心も納得するのです。
アフリカの大好きな方は、アフリカに旅行することを「里帰り」と表現します。遠くて、費用もかかり、トラブルに遭う確率も多くて、なぜそんな苦労していくんだと思われるでしょうが、アフリカというのはそういう風に人を呼ぶのです。
「エセ・アフリカ好き」の私にも、その「呼ぶ力」は効力を発揮し続けていたようです。小説を書くために一度考え始めたら、サバンナの強烈な記憶がしつこく呼び覚まされるようになったんですよ。
で、予定もなかったのに、「ニューヨークの異邦人たち」の構成の一部を変更して、アフリカの話も入れようかなと思っています。(どうせあれはオムニバスの予定だったし)
いや、そうじゃなくてアフリカ編だけ切り離して中編になっちゃうかもしれません。って、あれはアメリカの話じゃ……。

さてさて。判官びいきの私が、一番親しみを持っている野生動物。プンダ・ミリアことシマウマです。アフリカ滞在中も、どういうわけかこの動物のことにばかり頭がいっていました。
サファリを愛する方々はご存知の通り、シマウマは「その他大勢」扱いの動物です。ライオンやチーターを好んでウォッチしたい方にとっては、ただの食糧でしょう。でも、私はシマウマを見る度にワクワクしていました。つまり、サファリの間、かなりの時間ワクワクしていたことになります。シマウマは、きっと私のトーテムに違いない(笑)
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【小説】夏、花火の宵
今日発表するのは、読み切り短編集「四季のまつり」の第二回、夏の話で「花火」を題材にした掌編です。
というところまでは、ずっと前に決まっていたんですが、最初に出来た作品はあまりにも地味なのでボツりました。ですが、この作品で、canariaさんの主催するwebアンソロジー季刊誌「carat!(カラット)」に参加するつもりなので、書かないで放置は出来ません。
二つ目挑戦しました。最初のよりはいいかなと思ったんですが、「黄金の枷」の外伝にしてしまったので、本編を読んでいない人は、あの特殊設定の山には全くついていけないという現実を思い出しました。「四季のまつり」だけならいいけれど、「carat!」でそれはないわ、とこれもボツ。考えてから書けばいいものを。
三度目の正直。今度も外伝ですが、まあ、「ファインダーの向こうに」は読んでいなくても特に問題のある設定はないので、これで押し通すことにしました。canariaさん、ごめんなさい。でも、もう締切間近ですし、これで許してくださいまし。
夏、花火の宵
7月4日、独立記念日。この日を心待ちにしていたのは、ハドソン川沿いに集まって花火が上がるのを今かと待っている観客だけではない。
マンハッタンのパークアベニュー、32階建ビルの最上階で開催されるパーティに招待された人たちも同じだ。華やかで朗らかな魅力ある成功者、マッテオ・ダンジェロのペントハウスで独立記念日を祝うのは、ある種の人びとにとっては自慢すべきステイタスであり、また、彼の妻の座を狙う女性軍にとっては輝かしい未来への前進であった。
パーティールームに用意された巨大なスクリーンには、ハドソン川で打ち上げられる花火の中継が映し出されることになっている。子供を肩車した一般人に視界を遮られつつ屋外で花火を鑑賞するより、ルイ・ロデレールのシャンパンを傾けながら女優や銀行家たちと上品な歓声を上げる方が自分にふさわしい。参加者たちの多くはそう考えていた。
楽しく談笑しながら、客の間をまわっているマッテオ・ダンジェロ自身は、しかしながら、今年はこの日が彼主催のパーティでなければどんなに良かったかと思っていた。もし、この日に予定が何もなかったならば、彼はイタリア産の軽いスプマンテを持って、ロングビーチに住む妹を訪ねたことだろう。
彼の大切な妹、取り巻きの女性たちの言葉を引用するならば「その価値もないくせにミスター・ダンジェロに溺愛されている」ジョルジアは、毎年一番最初に独立記念日の招待状を手にするにも関わらず、一度も姿を現さなかった。
「だって、兄さん。私はあなたのビジネスやロマンスの邪魔はしたくないの。それに、ああいうパーティは私には場違いだわ」
例年ならば、この日ジョルジアと逢えなくとも、また別の日に食事に誘えばいいと思っていた。だが、今年は、出来ることなら彼女と一緒に花火を見てやりたい。彼は、客たちににこやかな笑顔を向けたままで、半年前の光景に想いを馳せた。
それは、スイスのサン・モリッツでのことだった。もう一人の妹、アレッサンドラの結婚披露宴の直後で、引き続き滞在している招待客たちと一緒に大晦日を迎えていた。クルム・ホテルの豪華なダンスホールには、新郎の親戚である貴族たち、某国の元首や総理大臣、ハリウッドスター、そうした人びとに混じって参列を許された富豪たちとその妻たちが華やかに年の瀬を楽しんでいた。
マッテオは、世界中のVIPが集まる厳戒態勢の結婚式の総監督的役割をこなしていたので、この日でようやく重責から解放されることを喜んでいた。
三度目の結婚とはいえ、永遠の愛を誓ったばかりの妹の幸せに溢れた様子は、疲れと緊張を忘れさせてくれた。美しく立派なカップルの幸福に満ちた様相は、招待客たちに伝染して、ダンスホールは華やいだ幸福感で満ちていた。そして、夜は更けていよいよ新年へのカウントダウンが始まると、人びとはシャンパンのグラスを片手にそれぞれのパートナーとその瞬間を待った。
「ハッピー・ニュー・イヤー!」
グラスの重なる音、新しいシャンパンの開く音、人びとのキス。そして、大きな花火が開放的な窓ガラスの向こうに広がり、感嘆の声があちこちからあがった。楽団はウィンナ・ワルツを演奏し、人びとは新年を祝った。
マッテオは、多くの人と乾杯しながら、まだ新年を祝っていないジョルジアの姿を探した。
彼女は、ダンスホールではなく、その外側のバルコニーになった回廊に一人で立っていた。ガラスで覆われているので寒くはないが、熱氣のこもるダンスホールに較べると涼しい。
ドアが閉まり、楽団の音と楽しくはしゃぐ人びとの声が聞こえなくなると、まるで別の世界に来たかのように、寂しくなった。マッテオは、華やかな世界に背を向けて夜に佇む妹の背中に、ブルー・ノート・ジャズを感じた。
幸せに酔っているアレッサンドラの前では決して見せない遣る瀬なさ。華やかな世界に馴染めない居たたまれなさ。そして、手にすることが出来ないものを想う苦しみ。どうしてやることも出来ない妹の寂しい姿に彼の心は締め付けられた。
「ジョルジア、ハッピー・ニュー・イヤー」
五分以上経ってようやく声を掛けると、彼女は振り向いた。彼女は泣いてはいなかった。苦しんでいる表情もしていなかった。微かに笑うと「ハッピー・ニュー・イヤー、マッテオ兄さん」と返した。彼は、妹を抱きしめた。
「あら、ジョルジア。いらっしゃい」
キャシーは入って来たジョルジアを歓迎した。
《Sunrise Diner》は独立記念日だからといって休みではないので、キャシーはテレビをつけて花火を楽しもうと待っている。もっとも、常連客で店はそこそこ埋まっているので、のんびりと花火を眺めている時間はなさそうだ。
サンフランシスコから遊びに来ている元同僚の美穂、この春からほぼ毎日やってきては居座っている英国人クライヴとその従業員クレアが同じテーブルに座っていた。彼らは、椅子を動かして彼女の場所を作った。
ジョルジアは感謝してその席に収まった。
「いいタイミングで来たわね。ちょうど花火が始まるところよ。何を飲む?」
キャシーが訊き、ジョルジアはグラスワインの赤を頼んだ。
「今、話をしていたんですよ。花火の時にはどんな音楽が似合うのかってね」
クライヴが自分の店から持ち込んだボーンチャイナで紅茶を飲みながら口火を切った。
「ほら、ハドソン川の花火だと、ミリタリーバンドによる吹奏楽と合唱じゃない? でも、国によって違うらしいのよね、いろいろと」
キャシーが説明する。
隣の席にいた常連でオーストリア人のフェレーナが口をだした。
「私は、『美しき青きドナウ』だって思うわ。とくに、新年の花火はやっぱりウィンナ・ワルツじゃないと」
ジョルジアは、そういえばサン・モリッツの新年の花火でもウィンナ・ワルツを演奏していたなと思い出し頷いた。
「僕の意見は誰にも賛同してもらえないと思うけれど」
そう言って話しだしたのは、フェレーナの連れのスイス人ステファン。
「8月1日のスイスの建国記念日は、花火を見ながら野外クラッシックコンサートってことが多くて、スイスの建国記念日のコンサートだとロッシーニの『ウィリアム・テル』が定番なんだよね。だから花火というとどうもあれが……」
「いや、やはりベルリンではなんといっても『第九』だよ。東西統一の記念祭を思い出すから」
マルクスがドイツ人らしい断乎とした口調で主張する。
クライヴも負けていなかった。
「いや、花火と言ったらなんといってもエルガーの『威風堂々』ですよ。毎年『プロムス』の最終夜で演奏されますし」
「それに、『ルール・ブリタニア』と『ジェルサレム』でしょ」
と、クレアが彼の愛国主義を茶化した。
「日本はどうなの?」
キャシーに訊かれて美穂は首を傾げた。
「う~ん、どうかな。花火大会で曲はかかるけれど、あまり特徴のない映画音楽みたいなものかしら。そもそも、花火の方がすごくてどんな曲がかかっているかなんてほとんど考えたこともなかったし、まさかこんなに国によって違うものだとは思わなかったわ」
ジョルジアの前に赤ワインのグラスを置いて、キャシーは訊いた。
「あなたにとっては? ジョルジア」
そうね、と微笑んでから彼女は《Sunrise Diner》の店内を見回した。
「ここでかけている曲、かな」
キャシーは、「え」といった。有線放送をかけているが、夜は少し賑やかなボサノヴァ風ジャズが多い。花火って感じじゃないなあ。
「どうして?」
「私、これまでわざわざ花火を観る習慣がなかったの。だから、特にかかる曲のイメージはもっていないの。でも、ここの曲、いま、映っている花火とけっこう合っているわよ」
そう言って、テレビの花火に目を細めるとワインを飲んだ。
彼女は去年の秋から冬にかけて、キャシーとその家族が写真のモデルになって撮影していた頃と較べてリラックスしている。ここでかかっているボサノヴァ風ジャズみたいに。それと同時に、少しずつではあるが、ウルトラ個性的な常連たちに馴染んで来た。
いつも一人カウンターに座ってテレビのニュース番組を観ているか音楽に耳を傾けているだけだったのが、呼ばれると彼らのテーブルに移ってきて一緒に時間を過ごすようになっていた。
時間をかけて重い鎧を脱いで、剣を身から離すことが出来るようになって来たのかな。それとも、この間のアフリカ旅行で何か特別な経験でもしたのかな。
客たちは、次々上がる花火の映像に歓声を上げて、それぞれの日々の苦労や腹立ちを忘れて楽しんでいる。一年に一度の浮かれた祭りの宵。
どこで観るのも自由。どんなこだわりがあっても構わない。大切なことはみんなでワイワイ楽しく観ることだものね。
店の有線放送の『ワン・ノート・サンバ』に合わせて打ち上げられる花火か。うん、本当に悪くない。キャシーもまた、サンバのような軽快な足取りで、次々入る新しい注文を華麗にさばいていった。
(初出:2016年6月 書き下ろし)
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「創作者バトン」もらってきました
今日は、バトンをやることにします。しかも一度答えたことのあるバトンです。大昔(ブログを始めた頃)だけれどね。
で、なんでやろうかと思ったかというと、canariaさんのところで見て、なんか自分の回答が当時と変わったかもと思ったからでございます。その後にも、創作や小説に関するバトンは既にいくつも答えているのだけれど、けっこう大事かなと思った質問に変化が出ているので、最新回答として再トライすることにしました。
創作者バトン
- Q1 小説、漫画などの創作媒体は何ですか、またそれを選んだ理由はありますか。
- 小説。
消去法です。マンガとイラストは、絵を描くのが大変で挫折しました。つまり表現したいことを自在に描写するのに、文章しか残りませんでした。そして、詩は、ソネット(十四行定型詩)をたまに作りますが、とにかく難しいですね。 - Q2 主に行っているのは一次創作ですか二次創作ですか。
- 一次創作です。誰にも氣兼ねなく登場人物や物語を動かしたいので。
- Q3 得意なジャンルは何ですか、また苦手なジャンルは何ですか。
- 得意: って、訊かれると「ない」としか答えられないなあ。よく書くというか、そういうのしか書けないから書くものは、日常の中で心の動きが変化するタイプの小説か、異なる文化から来た人たちの交流の小説でしょうか。
苦手: 絶対に書けないものは、戦争や社会問題に深く切り込むような小説。圧倒的に知識が足りないから。書けるとしても今後も書くつもりのないものは、BLと魔法もの。山のように書きたい人がいて、実際にそういう方がたくさん書いているジャンルに、わざわざ足を踏み込む必要はないと思うから。 - Q4 作品を作る際にプロットや設定資料のような物を作りますか。
- 長編は作ります。というか、どこかにまとめておかないと、途中で忘れちゃいます。「森の詩 Cantum Silvae」シリーズや「黄金の枷」シリーズのような、現実に存在しない設定を作らなくてはならない時はなおさらです。地図、年表、人間関係、年齢なども適当にダラダラ書いていると、あとから矛盾が見つけにくくなるので、要注意ですかね。短いのは、プロットもへったくれもなく、そのまま書いちゃいますが。
- Q5 創作中に設定の練り直しや、文章の推敲等は行いますか。
- 推敲は、章ごとくらいに一度します。長編の場合、始まりと終わり、それに主要シーンが脳内で確定してから書きはじめるので、設定を大きく変えることは稀です。でも「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」はやりましたね。ストーリーそのものは変えていないんですが、構成を組み替えて主人公たちの物語よりも、背景となる中世ヨーロッパの時代の方にもっと重点を置く話に書き直しました。
- Q6 Q5を答えた方でその際に修正に気がとられて創作が先に進まなくなることはありますか。
- 細かい推敲では影響はありません。話を書き進める時間と、推敲をする時間が違うので。推敲は、会社の昼休みや夜寝る前、もしくはブログで公表する前などにちょこちょこします。
それよりもブログの記事に時間をとられて、創作が進まなくなることの方が……。 - Q7 ジャンル、メディアを問わず、自分に大きな影響を与えていると思う作品はありますか。
- へルマン・ヘッセ「デミアン」
マイクル・クライトン「北人伝説」
ジェームズ・グリッグ「カオス」
ガルシア・マルケス「エレンディラ」
フェンテス「アウラ・純な魂」
ライアル・ワトソン「アフリカの白い呪術師」
それにあちこちの神話伝承かな。
クラッシック音楽やニューエイジまたはヒーリングといわれるジャンルの音楽も創作の源流だったりします。 - Q8 スランプ等は経験したことがありますか、その原因は何だと思いますか。
- スランプというほど、追いつめられたことがないかも。書きたいときにしか書いていないので。ブランクはいつも適度にあって、長かったのは1991年から2010年までで、この間は10作品も書いていないかも。もっともそれはスランプで書かなかったのではなくて、単に書くつもりがなかった、他にやることが山ほどあったからですね。妄想は常に頭の中にありましたから、創作そのものをやめていたわけでもなかったんですよね。
- Q9 自分が創作を行う際の目的や原動力はなんだと思いますか。
- 目的はないです。勝手に出てくるものを書き留めるか、そのまま行ってしまうにまかせるか。
- Q10 作った作品は公開していますか、またその方法は何ですか。
- かつては同人誌や参加費無料の商業誌にも書いていましたが、現在はこのブログで発表するものがほとんどです。
- Q11 こういった作品は好きになれない、苦手だというようなものはありますか。
- 好きになれない、苦手とまではいきませんが、日本から離れて長いので最近の常識のような知識が欠けています。ですから、たまに前提知識が全くなくて、何の話をしているのかついていけない小説にあたることがあります。魔法ファンタジー系やラノベに多いですかね。単語の意味が分からないレベルですから。そもそもそういう読者は想定していないと思うので、そっと読むのをやめています。それとホラー、スプラッタ系は本当に苦手です。
- Q12 あなたの作品を色にたとえると何色だと思いますか。
- グレーとか、焦げ茶とか、その手の地味な色合い。
- Q13 あなたの作品を風景にたとえるとどのような風景だと思いますか。
- どこにでもある、なんの変哲もない日常風景かな。
- Q14 自分的には良い出来だと思う作品、真剣に作った作品が、他人からは評価を受けなかった場合はありますか。
- 自分が思った以上の評価をいただいてばかりいるように思います。
- Q15 Q14とは逆に自分では失敗作だと思った、手を抜いていた作品が、他人から評価された場合はありますか。
- 手を抜くというような器用な書き方はできない(笑)失敗作だと思ったら公表しないんですが、内容から「これはきっとドン引きでスルーされるな」と思った作品が評価されて驚いたことはあります。
- Q16 自分の作品はどういった人に評価してほしいですか、またどのような人に見てもらいたいですか。
- 評価していただけるならどんな方でも嬉しいですとも。評価していただけなくても読んでいただけるのは嬉しいです。
- Q17 科学的な根拠や、現実性の追求等、リアリティにこだわりますか。
- そうですね。基本的には現実、もしくはその時代になかったものを登場させないように心を配ります。「樋水龍神縁起」関係では陰陽師や「見えないものを見える」人たちがでてきますが、ここにも当時の役所であった陰陽寮や学問であった陰陽道の部分を強調したり、「見えない人たち」を配置して両方の視点を持ちながら書くようにしています。
- Q18 創作を始めたきっかけは何ですか、またそれはいつ頃ですか。
- 記憶にある限り昔から「お話」を考えている子供でした。最初の記憶は幼稚園に入る前です。稚拙なマンガを描き始めたのは小学校。文字だけで作品を書きだしたのは高校生の終わりくらいからです。
- Q19 ストーリーを前半、中半、後半に分けた場合、それぞれの場面でどういったことに注意しますか。
- 前半は説明の部分が多くなるので、丁寧にしますけれど、しつこくならないようにしますかね。中盤部分には飽きないように盛り上がるシーンを入れます。起承転結の承や転がわざとらしくならないように考えます。後半は、ちゃんと畳むことが大事だと思っています。でも、説明くさくならないようにしたいですよね。
- Q20 創作をしていてよかったことはありますか、また苦労したことや悩みはありますか。
- 小説ごとにいろいろな人生を生きるようなものですから「こういう風に生きたかったのに、生きられなかった」と悩むことから解放されます。苦労や悩みはないですよ。私はアマチュアですから悩むほど大変ならやめます。プロはそうはいかないから大変でしょうね。
- Q21 自分の作品に共通するようなテーマやキーワードはありますか。
- これは何度も書いていますが、発表したすべての作品に共通するメインテーマがあります。読者の方の自由な読み方を制限したくないので、公表していませんが、どの作品も似たような傾向になるのは、このメインテーマのせいです。メインテーマは漢字にすると二文字です。あ、「恋愛」じゃないです。それとは別に作品ごとに、個別にサブテーマも設けています。サブテーマに関しては公表することが多いです。
- Q22 自分の作品の気に入らないところ、改善したいところはありますか。
- う……。実は、公表したものはみな氣にいっています。素晴らしいとは全く思っていませんが、氣にいらないものは公開しないし、そもそも書かないです。でも、改善すべき所はありますね。文章のクセで良くない所もあります。あと、何度校正してもくだらない変換間違いを見逃したりするのは悲しい。(ご指摘くださるみなさん、本当に助かっています)
- Q23 過去の創作で一番気に入っている作品は何ですか、またその作品のどのような点が気に入っていますか。
- う~ん。一つだけって言われるとなあ。「樋水龍神縁起」と「大道芸人たち」のどっちがと言われても困るし、「Infante 323 黄金の枷」も「夜のサーカス」も「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」もどれも可愛いんだ……。(そういう問題じゃないって)
いいや、これにしよう。「十二ヶ月の野菜」毎月ひとつの野菜(というか食卓に上がる植物)を取り上げて小説を書いた連作なんですけれど、話のバラエティもいろいろとあって、さらに、それぞれの野菜を割合に上手く生かせたかなと思っているので。 - Q24 その作品のキャッチコピーを考えてみてください。
- こんな野菜がある。こんな人生もある。
- Q25 主要登場人物の年齢や性別に傾向はありますか、また作中の人物の男女比などを気にしますか。
- 比較的成年が出てきやすい傾向はありますかね。男女比は、偏りすぎない程度は氣にします。
- Q26 未完成で投げてしまった作品はありますか、またその作品を完成できなかったのはなぜだと思いますか。
- ありますよ。時間を置いているうちに根本的な設定を「くだらない」と思うようになってしまったから。
- Q27 その時の流行等を意識して作品を作りますか、またそういった作品に対してどういった考えを持っていますか。
- 意識します。というか、極端にサイクルの短そうな流行は書き込まないように意識します。例えば「ヤバい」は会話の中で使いますが「萌える」は使わないようにしています。理由は「ヤバい」は30年ほど生き抜いている言葉ですが「萌える」はいつ死語になるかわからないからです。
- Q28 その時自分が熱中している物事の影響が作品に出やすいですか。
- 出やすいですね。
- Q29 自分の作品が販売されることになったとします、表紙等はどのようにしたいですか。
- プロのイラストレーターさんに描いていただけたら、そりゃ嬉しいですよね。なくても販売されたらそれだけで嬉しいけれど。
- Q30 登場人物を作る際、どのようにして人柄やイメージを作りますか、また人物で重要視することは何ですか。
- モデルがいる場合は、その人の言動を思い出しつつエピソードごとの言動を考えます。いない場合は、自分の都合でキャラクターの言動がコロコロ変わらないように注意します。
- Q31 自分は登場人物を殺す方だと思いますか。登場人物を殺すことに対してどのような考えを持っていますか。
- あまり殺さない方です。作品で扱う話が、そう簡単に人が死ぬような極限のシチュエーションでもないので、バンバン死ぬのは不自然です。ストーリーの進行上それが必要な場合は死なせることももちろんあります。
- Q32 暴力やグロテスクな表現、性描写に対してどのようなスタンスを持っていますか、また自分は使用しますか。
- 扱っているサブテーマによります。大人の人生や恋愛を扱っている場合は性の問題は入れない方が不自然なので入りますが、官能小説ではないので、あまり具体的には描写しません。具体的に書いてもうっすらと匂わせても、表現できることが同じ場合はうっすらと。最近の傾向として「恋愛ものを描くならR18描写をしないと評価されない」的にわざわざR18シーンを書かれる方が多いようですが、そういうものを目的に読まれる方には別に読んでもらわなくてもいいと思っています。暴力も必要なら書きますが、性描写よりもっと少ないですね。
- Q33 日常的(食事風景等)な描写に対してどのような価値観を持っていますか、また自分は使用しますか。
- 「この人はきちんとした性格だった」と一文で書くよりも、例えばどんな風に食事をしているかを描写して表す方がいいかなと思います。お箸の持ち方、コーヒーカップの置き方、どんな料理をするか、どんなものを注文するか、洗濯のし方、部屋の様子などなど、日常的な描写はものすごく大切だと思っています。
- Q34 作品の評価ポイントはどこにあると思いますか、他人の作品を見る際はどのような点に注目して見ていますか。
- この方は何を伝えようとしているのかなと最初に考えます。例えば「ひたすらエンターテーメント!」な作品なら一緒に楽しみますし、社会の不条理に対する怒りから書かれたものならそのポイントに注目します。でも、「こうあるべき」というような思い込みで頭から判断をしないようにしています。ものを書く者としては「自分には書けない点」を何か学ぼうとは思っています。思っているけれど、たいていはマネすらも出来ないんですけれど。
- Q35 意図的であるなしにかかわらず作中で多用する表現、台詞、描写などはありますか。
- ありますね。文章のクセという困った問題もあるんですけれど、別の作品で似たようなシチュエーションになってしまうこともあり「しまった。あっちの作品でこれを使わなければ良かった」と後悔することもしばしば。
- Q36 登場人物と自分とを切り離して考えていますか、性格や思考などが登場人物に出やすいことはありますか。
- これ、みなさんきっぱり別れるんですよね。「投影派」と「絶対に投影させたくない派」と。私は「投影派」です。まあ、全員じゃないですが、主要人物は、入り込んで書きますので、その人物の思考回路が出来ないと書けません。というわけで主役級は私自身の考え方に近いことが多いです。
- Q37 他の創作を行っている人に対して聞いてみたいことはありますか。
- みなさん、かなり専門知識のいる小説をどんどん発表なさっていらっしゃるんですけれど、専門知識はどこで仕入れていらっしゃるのかなあと。インターネットが使えるようになってずいぶんと楽になりましたけれど、それでも私はよく七転八倒しているんですよ。みなさんはどうしていらっしゃるのかなあと。
- Q38 今後はどのように創作と関わっていきたいと思いますか、あなたにとって創作とは何ですか。
- 脳内での創作は寝たきり老人になっても勝手にやっていることでしょう。創作は私にとっては人生そのものです。実際に文章にするかはまた別の話で、今のところ可能な限り、こうやって書いて公表していけたらいいなと思っています。
- Q39 おつきあいくださり有り難うございました。バトンを回したい方がいましたらあげてください。
- な、長かった。こんなに長かったっけ……書いていても疲れましたが、ここまでおつきあい下さった皆様、ありがとうございました。どなたかやりたい方がいらっしゃいましたら、どうぞ~。
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【小説】大道芸人たち 2 (1)バルセロナ、祝い酒 -1-
長い話は、適当に切って公開していきます。今回も二つに分けました。
大道芸人たち Artistas callejeros 第二部
(1)バルセロナ、祝い酒 -1-
食堂での四時のコーヒーはコルタドの館のいつもの習慣だが、この日はイネスにとって特に感慨深かった。ずっと空だった席に当然のようにヴィルが座っている。蝶子を氣遣ってヴィルの話を避けていた稔やレネの腫れ物に触るような態度もすっかり消えていた。それどころか、帰って来たばかりのヴィルを三人はぞんざいに扱っていた。が、本人が氣に病んでいる様子もなかった。イネスはミュンヘンでのヴィルの大芝居の話を聞いていなかったので、全く訳がわからなかった。
四人は、今後の予定の話をしていた。稔は既に予約の入っている仕事のことを筋立てて説明し、まじめに聴くレネと、ちゃかして冗談ばかり言って話を進ませない蝶子の舵取りに苦労していた。
例のごとくほとんど口をきいていないヴィルが、突然言った。
「ところで、日本人が国際結婚する時の書類手続きは、みんなバルセロナでできるんだろうか」
稔とレネはびっくりして蝶子を見た。
蝶子はにこりともせずに言い返した。
「できるんじゃないの? いくつかの書類は日本から送ってもらう必要があるだろうけれど、ヨーロッパ式の婚姻が成立してからは、領事館への届けで済むんじゃないかしら。詳しくは知らないけれど。なんで?」
「手続きが済むまでは、小さい都市に移動するのを待ってもらいたいからだ」
稔とレネは半ば立ち上がって笑いながら二人の顔を見比べた。しかし、蝶子の顔はむしろ険しくなった。
「誰と、誰が、婚姻の手続きをするのよ」
ヴィルはむすっとしたまま答えた。
「ここに日本人は二人しかいないし、俺がヤスの婚姻手続きのことに首を突っ込むわけがないだろう」
「ってことは、あなたはもう一人の日本人である私の結婚の手続きのことを言っているわけ? でも、私、まだここにいる誰からもプロポーズされていないわよ」
「だから、今、その話をしているんだろう」
稔とレネは椅子に座った。稔はこりゃ面白くなって来たぞと傍観を決め込んだ。
レネはおずおずと口を挟んだ。
「テデスコ、パピヨンが言っているのは、役所の手続きのことじゃなくて、その、結婚の申し込みのことじゃ……」
蝶子は大きく頷いた。
ヴィルは馬鹿にしたような顔でレネを一瞥すると蝶子の目をじっと見据えて言った。
「あんたは、俺がバラの花束を抱えながら跪いて訊かないと返事ができないのか。つべこべ言わずに答えろ。
蝶子は怒りに震えながら、何か言おうとしたが、ヴィルの青いまっすぐな目を見て考えを変えたらしく、口に出すのはやめてむすっと横を向いた。それから小さな声で、さもイヤそうに答えた。
「
「ひゃっほうっ!」
「ブラボーっ!」
稔とレネが同時に飛び上がり、一緒に腕を組みながらドタドタと踊りだした。
その騒ぎを聞きつけて奥からイネスが飛び出て来た。
「どうしたんですか」
「乾杯だ! たった今、テデスコがプロポーズに成功したんだ」
稔の言葉を聞くなり、イネスはやはり大声で叫びながら蝶子とヴィルの二人にキスをした。それからカルロスを呼んでくると言って出て行こうとした。
「カルちゃんはサンチェスさんと会議中でしょう」
蝶子があわてて止めるとイネスは断固として言った。
「これより大切なことなんてありませんよ。だいたいあの二人がコーヒーに遅れているのが悪いんです」
「よっしゃ、俺は酒を買いにいく!」
稔が立ち上がるとヴィルはそれを止めた。
「俺の話はまだ終わっていないんだが」
「そうよ。こっちの話も終わっていないわ。あなた、まさか書類の提出だけで終わらせようってんじゃないでしょうね」
蝶子が自分のペースを取り戻して詰め寄った。
「それが一番簡単じゃないか」
「簡単かどうかなんて、この際関係ないの。あなたが何を言おうと、結婚式は私のいいようにさせてもらいますから」
ヴィルはむっとして、腕を組んだ。
「希望を言ってみろ」
蝶子は勝利を確信してにんまりと笑った。
「証人はヤスとブラン・ベックよ」
「当然だな」
ヴィルもまだ余裕だった。
稔とレネは嬉しそうに顔を見合わせて、再び椅子に座った。
「ちゃんと教会で結婚式をして、ウェディングドレスを着るわ」
ヴィルはうんざりして頭を振ったが、援護射撃は期待できなかったので、反論しなかった。
蝶子はさらに続けた。
「父親役は、カルちゃんにしてもらうから」
ヴィルが賛成とも反対とも言わないうちにドタドタと入って来たカルロスが叫んだ。
「もちろんですとも! 大聖堂の予約をしなくては。可能なら大司教に来てもらいましょう」
今度は四人が慌てる番だった。
「待ってくれ。大聖堂が埋まるようなゲストは全く期待できないんだ。とくに、俺の親族に出席を期待されては困る」
ヴィルが迷惑そうに言うと、蝶子もうろたえて言った。
「私の方も誰も来ないわ」
「大丈夫ですよ。野外パーティ目当てに領民が山ほど来ますから入りきれなくなるはずです」
蝶子は大聖堂でなくてもいっこうに構わなかったが、教会での結婚式が現実のものとなりつつあるのが嬉しかった。
「私、真耶を招待したいわ」
蝶子が夢見るように言った。
ヴィルはいいとも悪いとも言わなかったが、しばらくしてこう続けた。
「じゃあ、俺は拓人を招待する」
それを聞いて蝶子は勢いづいた。
「レネのご両親も招びましょうよ」
「アウグスブルグの連中にも声かけようぜ」
稔が笑いながら言うと、カルロスも続けた。
「私はカデラス氏やモンテス氏にも招待状を送りましょう」
「じゃあ、トネッリ氏やロッコ氏には僕から連絡を入れますね」
レネも笑った。
「とにかく一番に真耶と結城さんのスケジュールを訊かなくちゃ。あの超多忙な二人が、一緒に少なくとも四日も休むなんて可能かしら?」
大騒ぎになって眉をひそめていたヴィルは蝶子の腕をとって座らせ、冷静に言った。
「いいか。こっちのばか騒ぎはいつでもいいが、書類の方は即刻始めるんだ。できれば今週中に手続きに入りたい」
水をかけられたように、全員が騒ぐのをやめてヴィルの顔を見た。
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【小説】大道芸人たち 第二部 あらすじと登場人物
【第一部はこちら】
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大道芸人たち Artistas callejeros 第二部
【あらすじ】
偶然の出会いからヨーロッパを旅して周ることになった蝶子、稔、レネ、そしてヴィル。チーム名「Artistas callejeros」はまた四人揃い、一緒に大道芸をしながら旅をすることになった。
【登場人物】
◆四条蝶子(お蝶、パピヨン、マリポーサ、シュメッタリング)
日本人、フルート奏者。ミュンヘンに留学していたが、エッシェンドルフ教授から逃げ出してきた。
◆安田稔 (ヤス)
日本人、三味線およびギター奏者。数年前より失踪したままヨーロッパで大道芸人をしている。
◆レネ・ロウレンヴィル(ブラン・ベック)
フランス人、手品師。パリで失業と失恋をし、傷心の旅に出た。聖歌隊にいたことがあり、テノールのいい声をしている。南仏のワイン農家の一人息子。
◆アーデルベルト・W・フォン・エッシェンドルフ(ヴィル、テデスコ)
ドイツ人、演劇青年で、もとフルート奏者。父親の支配を嫌って失踪した。偶然逢った蝶子に1年以上自分の正体を知らせずに同行していた。紆余曲折を経て蝶子と結ばれる。
◆カルロス・マリア・ガブリエル・コルタド(カルちゃん、ギョロ目、イダルゴ)
裕福なスペイン人の実業家。蝶子に惚れ込んで四人を援助している。
◆ハインリヒ・R・フォン・エッシェンドルフ男爵(エッシェンドルフ教授、カイザー髭)
ドイツ人、蝶子の恩師で元婚約者。アーデルベルトの父親。
◆ヤスミン・レーマン
ドイツ人。ヴィルがかつて所属していた劇団『カーター・マレーシュ』で広報をつとめている。
◆マリサ・リモンテ
スペイン人。コルタドの館で家政を取り仕切るイネスの一人娘。
◆ヨーゼフ・マイヤーホフ
エッシェンドルフ教授の秘書。
◆エスメラルダ
カルロスの前妻であるスペイン人。絶世の美女。
◆安田陽子(旧姓・遠藤)
かつての稔の婚約者。現在は稔の弟である優の妻。
◆ヘイノ・ビョルクスタム
ノルウェー人のコントラバス奏者。
◆パオラ
チンクェ・テッレ、リオマッジョーレに住む少女。母親に育児放棄されている。
参考:イラストを描いてくださる方用 オリジナル小説のキャラ設定 「大道芸人たち」編
この小説のイラストを描いてくださる奇特な方が参考にするためのキャラクター設定をまとめたものです。第一部本編を読まなくても描けるように若干のネタバレが含まれています。
【予告動画】
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「大道芸人たち Artistas callejeros」第二部はじまります

この第二部チャプター1が完成したのは実は2年以上前のことなんです。だから、連載を始めるにあたって読み返してちょっと新鮮でした。忘れていた所がいっぱいあったりして(笑)
「大道芸人たち Artistas callejeros」は、私にとっても、このブログにとっても、特別な作品です。このブログで最初に連載した長編小説で、さらに、おそらく皆様に一番親しんでいただいている作品ではないかと思います。
かつては「この作品が完結するときに、ブログを閉鎖するかな」と思っていたこともありました。これが終わってしまうと、もう外伝も書けなくなると思っていましたし。ブログと運命共同体になるくらい、他にポピュラーな作品もなかったのですよね。
でも、第二部を出し渋っている間に、このブログでは他のいろいろな長編が完結し、多くの方に読んでいただき、私の中でもたくさんの新しい世界が花ひらくようになりました。
だから完結させることを怖れる必要はなくなったのです。だから、そろそろ本当に「書く書く詐欺」はやめて、この作品のもう一つの側面を公開しようと思うようになりました。
第二部は、第一部とは少し違った流れになります。自由に憧れて、世界から逃げていたも同然の4人は、同じ強い絆を保持したまま少しずつ変わっていきます。
また読んでいただけたら、これほど嬉しいことはありません。
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