「オリジナル小説書きさんへバトン」やってみた
自分でHTMLを使わなくていいのはいいんですけれど、回答の字数が短いんですよね。まあ、だから短時間で回答できるんですけれど。でも、ちよっとこれでは伝わらないという部分もあって。仕方なく、敢えてHTMLで編集し直しました。
すでにご存知の方も多い内容もありますが、また改めて回答し直してみました。
- Q1. 小説を書き始めてどのくらいですか?
- 創作は長いけれど、文字オンリーの小説に転向してから……三十年は経っているかも。
- Q2. 処女作はどんなお話でしたか?
- 忘れたけれど、神話系の短編だったかな。あ、今流行っているゲーム系じゃなくて、民俗学から入ってます。それから、短編集みたいなのを書いていた時期もあったな。いまでいうと「十二ヶ月の〇〇」シリーズのようなオムニバスですね。
- Q3. どんなジャンルが書きやすいですか?
- ジャンル、わけにくいです。無理に押し込むと恋愛系になるけれど、恋愛そのものはテーマじゃないし。だから恋愛ものでもはっきりとしたR18シーンは少ないです。嫌いだからというわけではなくて、重点がそこにはないというか。
- Q4. 小説を書く時に気をつけていることは?
- わかりやすいこと。読み易い文章、その世界の事を知らない人でも理解出来る内容などですね。
私は海外在住で、その経験に基づいた旅行ものなども書くんですが、文字だけではまったく理解できないような風物はできるだけ登場させないようにしています。
また、時代や国家の違う題材で書く時に、その当時、またはその国で存在しない概念や口調などをしないように氣をつけています。同じ色を表すのも例えば現代では「ピンク」でも平安時代には「薄桃色」「朱鷺色」と表現するなど。
もう一つの例を挙げると、現代日本の話ではない場合に、いくらわかりやすくても「女子会」とか「リア充」などのスラングで表現せずに一般的な普通名詞を使うことをルール化しています。 - Q5. 更新のペースはどのくらいですか?
- ブログでは最低でも週一度は小説を発表しています。反対に更新が多すぎないようにも氣をつけています。
- Q6. 小説のアイデアはどんな時に浮かびますか?
- 通勤中、旅行中、ドキュメンタリーを見たり、本を読んだとき、あとは音楽を聴いているときに浮かんできたりします。
- Q7. 長編派ですか? 短編派ですか?
- どちらも書くけれど、力を入れるのは長編ですね。もちろん短いものでも言いたいことを伝えることは可能なんでしょうが、題材によってはそう短くはできないのです。
最近困っているのは、書き終えてから発表までにブランクがあるんですけれど、連載を終えるまでに勝手に続編の妄想が始まってしまい、書ける保証もないのについ「続編書きます」と宣言してしまうこと。これでまた続きがのびていく……。 - Q8. 小説を書く時に使うものはなんですか?
- Mac上で小説用エディタScrivenerで執筆。ePub形式に出力してiPhoneで校正と推敲します。
それから、資料は限られるんですが、可能な限り集めます。スイスに移住してから買った本のほとんどは小説用の資料だったりします。こちらで中世の城や博物館などを訪れる時もすぐに取材モードになります(笑) - Q9. 執筆中、音楽は聞きますか?
- 執筆中よりも、構想段階で聴きます。クラッシック、イージーリスニング系が多いかなあ。
- Q10. 自分の書いた小説で気に入っているフレーズを教えてください。
- 一つだけだと、なんか伝わらなかったので、三つほどピックアップしてみました。余計伝わらなかったりして。
流れ星がいくつも通り過ぎる。この人が無事に帰れますように。声に出したつもりはなかったが、肩にかけられた腕に力が込められた。
「大丈夫、帰れるさ。俺たちが出会ったあのバーで、もう一度テキーラで乾杯しよう」
私は少し驚いて彼の横顔を見つめた。それから黙って彼の肩に頭を載せた。嘘でも構わない。まだ夢を見続けることができる。今は少なくともこの男の恋人でいられる。星は次から次へと流れていった。私は夜が明けないことを願った。
「終焉の予感」より風の音に耳を傾けた。
人生とは、何と不思議なものなのだろう。閉ざされていた扉が開かれた時の、思いもしなかった光景に心は踊る。フルートが吹ければそれでいい、ずっと一人でもかまわないと信じていた。世界は散文的で、生き抜くための環境に過ぎなかった。
だが、それは大きな間違いだった。蝶子は大切な仲間と出会い、そして愛する男とも出会った。風は告げる。美しく生きよと。世界は光に満ちている。そして優しく暖かい。
「大道芸人たち Artistas callejeros 番外編 風の音」よりバスがカーブを曲がった時に、瀧が目に入った。勢いよくほとばしる水の流れが悲鳴を上げている。黒い瞳が心を射る。その光はチェロの響きのように泣いている。私は彼の心を殺した。彼を弁護しなかったからではなく、あの時に二人が共有した想いを、ただの幻影として切り捨ててしまったから。私は二人の魂が閉じ込められたままの鏡を壊してしまったのだ。マヤの瞳からは涙が溢れ出した。蓋をしていた想いだった。それは止まらない。存在しなかったはずの魂は、まだそこにあったのだ。
「夜想曲」より- Q11. スランプの時はどうしてますか?
- ご飯食べて、お風呂入って寝ます。出てこないものは出てこないんです。
- Q12. 小説を書く時のこだわりはありますか?
- 特にない……かも。敢えて言うなら「ウケるポピュラーなジャンル」ではなく「自分だからこそ書ける物語」を書く事かな。まあ、だからこういう地味な小説になるんですけれどね。
- Q13. 好きな作家さん&影響を受けた作家さんはどなたですか?
- H.ヘッセ、M.クライトン、G.マルケス、福永武彦
- Q14. 感想、誤字脱字報告、批評……もらえると嬉しい?
- もちろん嬉しいです。いいものも、悪いものも。誤字脱字報告はほんとうに有難いです。
- Q15. 最後に。あなたにとって「書くこと」はなんですか?
- このブログのタイトルどおり、「scribo ergo sum (書くからこそ私は存在する)」
やってみたい方は、どうぞおもちかえりください。- 関連記事 (Category: もの書きブログテーマ)
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【小説】郷愁の丘(6)シマウマたち - 4 -
主人公グレッグはカメラを持っていません。彼は視覚的な記録をすべてスケッチで残しています。これはこの人の特殊能力とも関連あるのですが、お金もあまりなくてインフラも整っていないサバンナの生活では、このウルトラアナログな方法が一番面倒がないという事情もあります。
かつてフィルムのカメラが主流だった頃は、旅から帰国すると現像して写真を整理してという面倒がありました。現在はデジカメになりましたが、今度は旅先で「あ、コンセントの形状が!」とか「iPhoneもカメラも充電しないと」というような面倒が増えました。記録を鉛筆一本と紙一枚さえあれば自由に残せる、グレッグのような能力があればいいなと、時々思います。「郷愁の丘」を読む
あらすじと登場人物
郷愁の丘(6)シマウマたち - 4 -
それから、不意に思い出した。
「でも、グレッグ。あなたは今日、ノートに文字だけを書いていたわよね。スケッチをする事もあるの? もしかして、私が横でいろいろと訊いていたから落ち着いてスケッチできなかったの?」
彼は首を振った。
「そうじゃないよ。スケッチは、いつも後でするんだ」
「後で? 写真にも撮らなかったのに、どうやって?」
彼は、一度室内に入ると、スケッチブックを持って出てきた。そして、座ると何も描いていない白いページを開けると、尖った鉛筆を一番左端の下方に持っていった。鼻先から始まってすぐにシマウマとわかる顔が現れた。耳とたてがみ、背中、尻尾。脚が四本揃うまで、鉛筆はただの一度も間違った所を通らなかった。次に縞が描かれていく。その斜め後に二頭目が現れはじめた。ジョルジアは自分の目が信じられなかった。
「あの群れが、どこに、どんな風にいたのか憶えているの?」
「うん。これを描こうと意識すると、その詳細を憶える事が出来るんだ。もちろんはじめから集団全体を憶えられたわけじゃないよ。いつもこればかりやっていたからね。子供の頃から動物の絵を描くのはわりと得意だったんだ。その代わり、そっちに夢中になりすぎて、約束したのにクラスメイトと遊ぶのを忘れてしまったり、宿題をやらなかったりで、親や先生を困らせたんだ」
ジョルジアは、彼が論文を確認するのに熱中して七時間も部屋にこもっていた事を思い出した。「あまり友達もいない、かなり変わったヤツなんですけれど」そうリチャード・アシュレイが彼について評していた事も。彼の集中力と才能は、おそらく多くの人間関係の犠牲を強いてしまったのだろう。
どんどんシマウマは増えていった。あっという間に、草食動物の群れがスケッチブックを埋め尽くしていく。サバンナの下草も、アカシアの樹も、側にいたインパラやヌーもまるで写真を「鉛筆スケッチ」というフィルターをかけて加工したかのように正確に描き込まれていく。
彼女は、黙ってスケッチを完成させていく彼を見つめた。彼は、彼自身の宇宙に籠っていた。ジョルジアの存在はたぶん完全に消え去っているのだろう。
それが無礼だと、多くの人が彼を責めたのかもしれない。もしくは自分が大切な存在と認められていないと判断して腹を立てたのかもしれない。けれども、そういう事ではないのだと、ジョルジアは思った。
先ほどサバンナで見かけたシマウマたちは、絶対に安全だと判断するまではこちらを観察するのをやめなかった。観察している人間が無害だと確信しなければ安心して草を食むことはないのだ。彼もまた、誰の前でもこれほど無防備な姿を晒せるわけではないだろう。
彼女は、彼女がシャッターを切る瞬間と同じ、ある種の真空を感じた。絶対に邪魔をしてはならない時間。完成するまで、黙って待つ事は彼女には困難ではなかった。
「す、すまない」
我に返った彼が動転して発した言葉が予想とぴったりだったので、彼女は声を立てて笑った。彼は、彼女の朗らかな様子にホッとして笑顔を見せた。それから、はにかんで出来た絵を彼女に見せた。
彼女はそれをしみじみと眺めた。先ほどのサバンナで、確かに彼女もこの景色を見た。デジタルカメラを再生するまでもなく、彼の描いたどこも間違っていない事を確信する事が出来た。
「素晴らしい才能だわ。信じられないくらいよ。画家になればよかったのに」
彼は首を振った。
「僕が描いているのは観察記録だよ。芸術とは違う。例えば、これをリビングに飾りたいかい?」
そう言われて、ジョルジアは首を傾げた。確かにリビングに飾る絵とは違う。
「う~ん。そうね。ちょっとバランスが。……このシマウマをここに移動することは無理かしら」
「移動?」
「そうよ。構図なんだけれど、ここにみんな固まっているでしょう。実際にそこにいたからなんだろうけれど。でも、この繁みと重なっていてシマウマの柄が上手く出ないから、こちらの何もないところだとすっきりすると思うの。空の割合とのバランスもよくなるし」
「構図?」
「三分割構図や黄金分割なんていろいろなメソッドがあるけれど、でも、印象的であればそれにこだわらなくてもいいのよ」
彼はページをめくると、面白そうに手の位置を動かした。
「ここかい?」
「ええ。それも少し手前に大きく」
彼女が想像した通りのシマウマが現れる。そして、アカシアの樹、遠くに見える《郷愁の丘》、遠くで眺める仲間のシマウマたちも。不思議な事に、それは彼女にとっても現実のサバンナとは違うファンタジーに見えた。
彼は楽しそうに笑った。
「本当だ。絵画らしくなってきたね」
「そうね……。でも、こうして見るとわかるわ。これは印象的だけれど、明らかに本物じゃないわね。それに、あなたの研究の資料としては間違いになってしまうわ」
彼はそれを聞いて、彼女の方を見た。ロウソクの暖かい灯り越しに、研究の価値を尊重してもらったことの喜びが伝わってきた。
彼はスケッチブックからその絵を切り取ると、彼女に渡した。ジョルジアはそれを両手で受け取った。
「皺にならないように持って帰らなくちゃ。宝物にするわ」
「そんなの、大袈裟だよ」
「いいえ。額に入れて飾るの」
そう言って彼女は、シマウマの背の部分をそっと指でなぞった。
彼女は、一日どこかに引っかかっていた何かにようやく答えが見つかったような氣がした。
「ねえ、グレッグ。私、今朝は望遠レンズと、リバーサルフィルム用のNIKONを持ってこなかった事を後悔していたんだけれど……」
「けれど?」
「わかったの。今回の私に、それらは必要なかったんだわ」
グレッグは首を傾げた。
「いまは景色や動物たちは撮らなくていいってことかい?」
彼女は首を振った。
「私がいま撮らなくてはならないのは、違うものなの。あの朝焼けの色でも、サバンナの雄大なドラマでも、そしてこの星空の輝きでもない。次の写真集に欠けている最後のピースなの」
新しいモノクロームの人物像だけで構成する写真集。彼女が撮ってきた写真に映っている陰影は、全て彼女の心の光と影だ。それでいて、モデルとなった人たちは、全て彼女からほど遠い人たちだった。彼女はかけ離れた位置に立ち、自らが立ち直れないほどに傷つくことはない光と影を映し出した。
けれど心の奥に、傷つきのたうち回っている弱い自分が待っている。正視する事の出来ない痣を持つ鏡の向こうの醜い化け物。理解してもらう事を求めながら、逃げ回る事しか出来ない臆病な生き物。それでいながら、わずかな居場所から生きる証を発信したいという願い。
ジョルジアは、どうしてもその陰影をも映し出さねばならなかった。
それと向き合えなかったのは、確信が持てなかったからだ。確信を持てなかったのは、自分が進んでいる道が正しいのか、報せてくれる道標を見かけなかったからだ。けれども、彼女は、自分の直感が導いたこの地で、十分すぎるほどの啓示を受け取ったと感じた。《郷愁の丘》と、グレッグという人間と。
これまで彼女が手探りで求めてきたものを、全く違う場所で、かけ離れたメソッドで、同じように探している「私に似ている誰か」。人間社会の決めた「呼び名」のどれに当てはまるのか、決める事は出来なくても、これだけはわかる。この人は私の人生にとって絶対的に必要な人なのだと。
彼は不思議そうに彼女を見ていた。ジョルジアは、身体の向きを変えて彼を正面から見据えて言った。
「あなたを撮らせてほしいの」
「僕を?」
「ええ。ここで、シマウマたちと対峙しているあなたを撮りたいの」
世界に作品を受け入れてもらえるかどうかはわからない。けれど、彼女が世界にさらけ出すのは魂の風景でなくてはならなかった。そして、今の彼女には、魂の心象とは彼を撮る事に他ならなかった。
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シュピューラー
というわけで、若干スクロール用空間を……。↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
そう、トイレで使う商品のお話です。「えっ。あの八少女 夕さんがトイレに行くの? ショック!」という方はさすがにどこにもいらっしゃらないかと思いますが、お通じの件を話題にするのはどんなものかと若干迷ったことも付け加えておきましょう。もっとも、冗談とは言え、風呂場で「はらり」なんて小説を発表してしまったブログですからね。何でもありでしょう。
今の日本の都会だと、どこに行ってもウォシュレットがついているじゃないですか。私が子供の頃は、そんなもののある家はありませんでしたし、当時は「洋式なんて汚いから和式にしか入らない」なんて事を言っている人も多かったのですよ。今は時代が変わったようですね。
ヨーロッパで、というか日本以外の国で、ウォシュレットを見たらかなりラッキーだと思ってください。今は売り出していますけれど、実際についているのを見たことはありません。今まで一回も。
イスラム系の国の田舎だと、紙がなくて常備してある水と自分の左手で綺麗にするらしいですが、私は幸いその事態にもなったことはありません。いや、慣れの問題だと思いますが、やっぱり抵抗ありますよ。
で、ヨーロッパでは通常どうなっているのかというと、普通に紙を使うか、いわゆるウエットティシューを使うのですね。普通のウェットティシューと違ってトイレに流してもいいというものがありまして、「ただし一度に三枚までにしてね」と書いてあったりします。
スイスのトイレは、基本的にどこも水圧が高いので、これでもいいのですが、例えばポルトガル辺りだと「トイレットペーパーも流さないでください」という所もあります。そういう場合、このウェットティシューは論外です。
それに、いくら流してもいいとは言え、このトイレ用ウェットティシューは長い目で見ると環境問題になっているのですよ。浄化の大きな負担になっているのですって。
私は、環境保護狂ではないのですが、やはり毎日のことですので地球に負担をかけ続けていると知っているのに続けるのは抵抗があります。それに、私は経費毒という問題にも敏感でして、たまになら全然氣にしませんが、毎日なんだかわからない化学薬品が肌に触れているのもなと思ってしまうのです。
じゃあ、高くても自宅にウォシュレットを取り付けるかというと、そんなことはしませんよ。電氣を無駄にしないというのも、ポリシーですから。
それで、考えたのですよ。ウォシュレットがないと生きていけない現代の日本人が、海外旅行に行く時に使う便利用品が絶対売り出されているはずだろうと。で、見つけました。幾種類もありました。二つほど買ったのです。というのは、ひとつは会社に置きっぱなしにしているからなのです。
どちらも中に水や温水を入れて、手で押すとノズルから水が出てくるという商品です。電源がいりませんので水さえあれば永久に使えます。バッテリーチャージみたいな手間もありません。水は使用する時に入れればいいので、持ち運ぶときは軽いです。
最初に買ったのが紫色の方で、水量たっぷりというのが売りでした。それに、ノズル部分が頑丈で全然壊れそうもありません。
でも、ちょっとみかけが微妙な感じです。しかも、ノズルを取り外して専用袋に入れても、いかにも大きくて邪魔です。しかも、トイレの個室の中に水道があればいいですが、普通は外にありますよね。取り出してこれに水を入れてセットするのはかなり恥ずかしいのですよ。そういうわけで、持ち運びはしたくなくなってしまったのです。これは自宅専用になりました。もっとも頑丈なので、いつまでも壊れません。このどぎつい紫をいつまでも使い続けるんだろうか……。
次に買ったのは、「シュピューラー」という商品です。入る水の容量は少ないんですが、実際には使い方の工夫次第で、この量でも十分だったのですよ。
これね、さすがに日本製でして、もう一つの商品で私の持った全ての不満が解消されているんです。ノズルを引き出して使うのですが、これをしまってしまうともう本当に何のボトルかわからないんです。水を入れるときにも、ノズルは仕舞ったままでいいので、なんのボトルに水を入れているのかわかりにくいのも○。色も白くてどぎつさがありませんし、それにこの小ささがポイントです。バックの中で全く邪魔になりません。旅行用と会社用と二つ買って愛用しています。
うちの会社のトイレは、男女別の個室にたった一つの便器と洗面台、その洗面台の上に棚という作りになっていて、棚の中におきっぱなしにした「シュピューラー」を取り出して、温水を設置、それから使用、そのあとに濯いで拭いてしまう、という一連の作業が密室内で可能。
ずっとその洗面棚に入れっぱなしだったのですが、だれからも「これ何?」と訊かれたことはありませんでした。本当にただの普通の空ボトルに見えるんですよね。たぶんバックに忍ばせていて、なんかの拍子に誰かに見られても興味を惹くことはないと思います。そういうことって、実はとても重要なんだよなあと思いました。
(ただ、残念ながら、ある日なくなってしまったのです。ゴミだと思われて捨てられてしまったのか、それとも「これは便利だ」と盗まれてしまったのか、なんか訊いて回るのも嫌だったので、黙ってもう一つ購入してそれからは置きっ放しにしないようにしました)
海外旅行で「ウォシュレットないと困る!」と思われる方、これ、本当におすすめですよ。ま、旅行程度なら、流せるウェットティッシュでも問題ないでしょうが。
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【小説】郷愁の丘(6)シマウマたち - 3 -
今回「たてがみの極端に短い雄ライオン」がでてきます。これはこの個体の話ではなく、マサイライオンという種類のライオンの特徴です。ツァボ国立公園にはこのマサイライオンがいるのです。ご存知の方もあるかと思いますが「ツァボの人食いライオン」で有名になったのもこのマサイライオンの二頭です。今回は人は食われませんでしたが。
また、後半でウルトラ・ロマンティックな舞台をガン無視して、相変わらず色っぽさゼロの会話をしている二人がいます。ここで迫らなかったら、いつ迫るんだ、まったく。あ、グレッグの絵を描く能力に関しては、次回までお預けです。すみません。「郷愁の丘」を読む
あらすじと登場人物
郷愁の丘(6)シマウマたち - 3 -
その話をしている間に、穏やかだったサバンナに異変が起きた。一番奥の方から、急激に頭を上げたトムソンガゼルに続き、シマウマたちがざわつきだした。その動揺は、緩やかな波のように群れ全体に伝わっていった。緊張が走り、やがて土ぼこりと共にまずグラントガゼルたちが、つづいて全ての草食動物たちが一斉にジョルジアたちから向かって左側へと走り出した。
「来た」
グレッグは、右のずっと遠方を指差した。
「何が?」
ジョルジアには、草とアカシアの樹々しか見えない。
「ライオンが、一、二、……五匹だ。ほら、もう君にも見えるんじゃないか」
その通りだった。土ぼこりを立てながら、駆けて来るライオンたちが見えた。
草食動物の群れは訓練されたように美しい隊列を組んで走っていく。土煙が、何千もの脚が、草が大きく動き、静かだった世界が、躍動に満ちたスペクタクルに変わる。けれどこれは舞台ではなく、生死を分ける真剣勝負だ。ジョルジアの心臓は激しく鼓動を打った。
生まれたばかりのまだ弱いヌーの仔が遅れて、やがて一番最後に取り残される。ライオンたちは、集中してその仔を追いはじめる。
「だめ!」
ジョルジアは、思わず叫んだ。一番先頭のライオンが追いついてその尻に飛びついた。たてがみが異様に短いが、それは雄ライオンだった。仔ヌーが倒れると、他の若い雌ライオンたちも飛びかかった。ジョルジアは顔を手で覆った。
十分に離れたところで、草食動物たちは停まり、世界は再び静かになった。狩りが終わった事を知ったハゲタカたちが空から舞い降りて来る。ジョルジアは瞼を開き、草食動物たちがゆっくりと去っていくのを確認してから、グレッグの方を見た。
彼は、彼女の方を見て頷いた。ほとんど無表情に近かった。けれど、その瞳には摘み取られてしまった小さな命に対する悲しみをたたえ、それでもそうして生きていくライオンたちの生命に対する尊重も感じられた。
「ここは、動物園じゃないものね」
ジョルジアが呟くと、彼は黙って頷いた。あの仔ヌーがかわいそう。そんな言葉はこのサバンナでは空虚な偽善でしかなかった。
二人は夕暮れ時に家に戻った。サバンナの夕焼けも美しかった。ヌーの事を考えてジョルジアは言葉少なめだった。彼は彼女の思考を遮らず黙って運転した。それに、ぬかるんだ道を崖の上を目指して走る事は慣れたグレッグにも困難で、彼は集中して慎重に運転せざるを得なかったのだ。
夕食の後、彼はテラスでワインを飲まないかと言った。ガラス製風よけのついたキャンドルに灯をともし、ガーデニアの樹の横に置かれたテーブルに置いた。少し厚めで頑丈なワイングラスに彼はワインを注いだ。
「まあ」
ジョルジアはいつの間にか広がっていた満天の星空に驚嘆の声を上げた。
地平線の上は巨大なプラネタリウムと化していた。天の川がくっきりと見える。星は瞬いていた。しばらく星を眺めているうちに、彼女の沈んだ心は慰められていった。
「サバンナに長く居ればあの光景に慣れざるを得なくなるけれど、はじめて見るとショックだろうね」
「テレビでは見た事はあるし、動物園のライオンだって、ベジタリアンではない事くらい知っているのにね。それに、実は、私もステーキが好きなのよ」
「僕もだ」
「私たちは普段そういう事から無意識に目を逸らしているのね」
「草食動物は、食糧でしかないみたいに言われる存在だし、サファリでは草食動物なんか見ても面白くないという人たちもいる。保護の観点でも、絶対数が多いせいかかなり後回しになる」
「あなたはどうしてシマウマの研究をしようと思ったの?」
彼は、少しの間言葉を切った。キャンドルの光に照らされたその口角は、優しく上がっていた。
「子供の頃に、シマウマの絵を描いて祖父に褒められたんだ。それでシマウマを描くのが好きになった。直接のきっかけはそれかな。でも、もう少しちゃんとした理由もあるよ」
ジョルジアはクスッと笑った。
「そちらの理由もきかせて」
「僕の曾祖父、トマス・スコットもまた動物学者だったんだ。彼は、現在の父のように権威ある職に就いたりしたわけではないんだが、やはりこのツァボ国立公園でフィールドワークをしていてね。当時のこの地域の実態を事細かに報告した日誌を残したんだ」
「日誌?」
「ああ、とても細かい人だったんだね。サバンナでは、年によって水場があちこちに移動したりするんだけれど、その位置や水場を訪れていた動物の種類や数なども詳細に報告している。また当時はこの地域に自生していた植物などもスケッチに残していて、植物の生態系の変化なども今と比較するいい研究材料になるんだ」
「その日誌はどこにあるの?」
「父が持っているよ。もっとも、現在一番活用しているのはレイチェルじゃないかな。曾祖父はゾウのこともよく調べていたからね」
「そう」
「ヒョウやサイなどの個体数がとても少ない野生動物は、追跡も楽だし緊急性があるから研究費も集めやすい。数の多い草食動物の研究はどうしても後回しになりがちだ。ましてや、単調で束縛される事の多い長期間の調査は皆やりたがらないんだ。僕は、父やレイチェルのような斬新な仮説や際立った研究をするほど頭がいい訳ではないんだけれど、でも、コツコツとフィールドワークをして現状に関する調査をする事は出来る。それも子供の頃から一番好きだったシマウマの研究でね。さほど目立った成果は出なくても、その調査を何十年も続ければ、曾祖父の日誌のように、後世の偉大な学者たちの役に立つものを残せるかもしれない。それが僕がここで研究をしようと思ったきっかけなんだ」
「素晴らしいと思うわ。地味だし、とても忍耐のいる仕事よね」
「僕のように、どこにも出かける予定のない人間に向いているんだ。仕事と趣味が一致しているようなものだし、ここに住むのは好きだ。パーティにもいかなくて済むし」
それを聞いてジョルジアは吹き出した。
「あなたは、曾お祖父さまの研究との比較をしているの?」
「いや、まだそこまではいっていない。いずれは現在の調査結果と曾祖父のフィールドワークを比較するアプローチをしたいと思っている」
「あなたの曾お祖父さまの遺産ですもの、いつかきっとあなたのものになるわよ」
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コップ代わりに
結論は「どちらかといえばドリンクボトル派かな」ですね。なぜそう歯切れが悪いのかというのも含めて書いてみようと思います。
まずペットボトルを全く買わないかと訊かれると、買うこともあるんです。でも、環境問題とBPA(ビスフェノールA)問題の両方の観点から、私はプラスチックの使用を意識的に減らそうとしているのです。といっても現代社会に生きる限り、ゼロにすることは不可能なので、「意識せずに使った場合の半分以下にする」程度のゆるい減らし方です。で、そうなると「ペットボトル飲料を常時買う」ような行動パターンは避けるわけです。それに、そもそも、通勤途上に買いたくなるようなペットボトル飲料がないんですよ。
珍しく長時間電車に乗るような時、スイス旅行したことのある方はご存知かもしれませんが、車内販売でペットボトルを買ったりすると、ただの水でも450円くらいかかります。海外旅行中で「それもいい思い出」の方はいいんですが、住人の私はそれはちょっと我慢ならないので、水くらいは持っていきます。かつては小さめのペットボトルの再利用をしていたのですが、今はこちらを使っています。
このドリンクボトル、タイガーのものなんですが、魔法瓶のように保温機能があるのにものすごく軽いのです。ペットボトルを持ち歩く利点は軽さと壊れないことに尽きると思うのですが、このドリンクボトルはそのペットボトルのアドバンテージに肉薄しているのです。かつ、半日経っても熱々という驚異の保温力や、ステンレス製で洗いやすいこと、色移りしないこと、熱い飲み物を入れてもBPAは大丈夫かと考えずに済むことなど、ほかの利点があるので、旅行や外出に持っていくことは多いです。
サイズは、一番小さいものにしています。200mlですね。これ以上はかさばりますし、本体は軽くても液体が入るとその分重くなりますから、大きなボトルにすると結局重くなります。「重いから持っていかなくてもいいか」と思うようになってしまうんです。
さて、上のリードで、私の歯切れが悪かった理由はこの辺にもあります。私はあまり持ち歩きのドリンクでこまめに水分補給ってしないんですよ。数時間続けて電車に乗るとしても、このボトルで一杯飲むかどうか、持っていなかったらそのまま次に停車したところでカフェに入って、そこで何か飲み物を注文します。
旅行をしたり、遠出をしたりする時に、特に目的もなくカフェなどでまったりすることが多く、さらに電車の乗り換えなどで三十分以上の待ち時間があったらカフェに行く、などということをしていると、結局飲み物を持ち歩くかどうかはそんなに重要じゃなくなることが多いのです。
連れ合いとバイクの旅行に行く時も持っていきますが、実を言うとあまり使わずに帰ってくることも多いんですよね。でも、いざという時には重宝するので、やはり「どちらかというとドリンクボトル派」ですね。こんにちは!トラックバックテーマ担当の三浦です今日のテーマは「ペットボトルを買う派?ドリンクボトルを使う派?」ですお水は常温で飲むのが好きな三浦です去年から節約のために水筒を持ち歩いています最近ではマグボトルというオシャレな名前がついていたり、透明なものや、スタイリッシュなデザインのものも増えていますよね冷たさや温かさをキープできるのも便利ですみなさんはペットボトルを買う派?ドリンクボトルを使う派...
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グレッグの研究対象であるシマウマの観察に連れて行ってもらうジョルジア。いわゆる「サファリ」ですね。草食動物は群れになっていることが多く、一度にたくさん眺めることができます。あまりたくさんいるので、そのうちに、人々は草食動物を見るのに飽きてしまいます。
私はシマウマが大好きだったので、シマウマに対しては飽きませんでしたが、そういえば滞在の終わりにはトピやガゼルを見ても「ふ~ん」くらいにしか思わなくなっていたかも。でも、どの動物も、動物園の動物とはまったく違う佇まいで、ちょっと神々しいほどでしたよ。というような話は、今回のストーリーとは関係ないですが。
今回発表する分もそうですが、この小説は主人公たちが二人でいることがとても多くて、会話の具体的内容にとても苦労しました。とにかく、この二人、ずっと恋愛とは無縁のことを話しまくっているんです。一緒にいる時間が長いのでそのボリュームも半端なく、しかも私は写真家でも動物学者でもないので、何を話すんだろうかというところから始めて、悩みまくりでした。しかもストーリーに絡まってないといけないし。自然に表現できていたらいいんですけれど。「郷愁の丘」を読む
あらすじと登場人物
郷愁の丘(6)シマウマたち - 2 -
その話をしている間、ランドクルーザーはゆっくりと進み、道の悪い長い坂をいくつか下っていった。しばらくすると切り立った崖を背にしてどこまでも広がる広大なサバンナを走っていた。そこは《郷愁の丘》のテラスから眺めているあの土地だった。やがて、彼の目指す水場が近づいてきた。昨夜の雨で広がった大きな水源で、今朝テラスからそれを見て見当をつけていたのだ。彼は、離れた木陰で車を停めた。
トムソンガゼルやインパラやヌーの大群が、ゆっくりと草を食んでいる。キリンの姿も見えたし、もちろん彼の観察対象であるシマウマもたくさんいた。陽炎の先に彼らが立ちすくむ。何頭かが、こちらを観察している。それ以上近づいて来ないかどうかを慎重に。安心したように頭を下げて食べだすものがいる。
それは子供の頃の絵本で見たエデンの園のようだった。ジョルジアは、無意識に装備を手にしようとした。そして、休暇中だった事と、今回の旅に望遠レンズを全く持ってこなかった事を思い出した。
彼は、固まっているシマウマたちを指差しながら、説明をした。
「あそこの二頭は姉妹だ。手前の子供は一週間ほど前に生まれた。かなり近くにハイエナがいたから随分ひやひやしたよ」
「まあ。ねえ、もしかして、シマウマを個別にわかっているの?」
「ここの調査は頻繁にしているから、特徴のある個体はわかるよ」
遠いせいでもあるが、ジョルジアには小さい仔シマウマ以外はどれも同じに見える。それを告げると彼は笑った。
しばらくすると、動かないランドクルーザーに興味を持ったのか、それとも安心したのか、もっとずっと近くに動物たちが近寄ってきた。もちろん、すぐ側というほどではないが、それでも背の高いキリンなどが通り過ぎると、その姿に圧倒される。ジョルジアはコンパクトカメラを構えて、何回かシャッターを切った。彼は、何かを手元のノートに書いていた。小さい几帳面な筆蹟だ。
氣がつくと昼どきになっていた。彼は、ルーシーに水と乾いた餌を少しやった。ジョルジアは、紅茶の入ったポットから二つのカップに紅茶を注ぎ、朝用意したランチボックスを開けた。
長時間の戸外で悪くならないように、ジャムだけが挟まったあっさりとしたサンドイッチと塩だけしかつけないゆで卵。ジョルジアが見慣れている物に較べて黄身が白い。それにいくつかのオレンジ。彼はポケットナイフを駆使してあっという間に皮を剥いてくれる。
ランチはあっさりしているが、目の前にたくさんの野生動物がいて、一緒に食事をしているのは愉快だった。食事の後も、観察と会話は続いた。
「先日した話の続きだけれど。人間の目は、シマウマの縞部分の写真を見てモノクロームとカラーを見分けられるものなのか?」
「ええ。見分けられるわ。もしそれがイラストで、全くただの二色だったらダメだけれど。もしわずかでもグラデーションがあれば、カラー写真にはいろいろな色が写っているの。もちろん、個人差もあるし、遠くから眺めたら、それだけで判断するのは難しいわね。でも、シマウマ自身はどうなのかしら?」
「彼らがモノクロームとカラーの違いにこだわるとは思えないな。少なくとも彼らと僕たちとは違う見え方をしていることはわかっている。ほ乳類のうち三色型色覚を持つのは霊長類だけでシマウマは二色型色覚だ。青と赤の違いは識別できないだろうね。黄色や緑は識別できるから新鮮な草とそうでないものは見てわかるのかもしれないね」
「色の違いを認識する必要はないってことね」
「そうだね。彼らにとってもっと大切なのは、周囲の動きを認識する事だからね」
「つまり?」
「目のついている位置を観察してごらん。横についているだろう? あの配置のおかげで視野がほぼ三百五十度あるんだ。背後で何かが動けばすぐに氣づく。肉食獣から逃げるために必要なんだね。ただし、両方の目で同時に見る両目視野はとても狭くて距離を測るのは得意ではない」
ジョルジアは、なるほどと思いながらシマウマを見た。確かに彼らは振り向かずに後も見ているようだ。
「ライオンやチーターは?」
「追う方の肉食獣は、距離の測定がとても大切なので、立体的に見える両目視野が百二十度あるかわりに後方に全く見えない領域が八十度ある」
「よく出来ているのね」
「そうだな。非常によく適応している事はわかっても、どうしてそうなったのかはわからないんだ。さっき話にでた、二色型と三色型の色覚も、魚類では三色型や四色型色覚を持っていたのにほ乳類は一度色覚を失って二色型になり、その後に霊長類が再び三色型を獲得している」
ジョルジアにとっては、色の違いはとても重要な関心事であると同時に、あたり前の事でもあった。色の違いによって表現するカラー写真と、陰影で表現するモノクロームの世界。それは人類がその違いを認識できるからこそ存在する表現方法だ。
そのシステムを考える事は、作品の根源を見極める事でもある。そして、写真家のジョルジアにとってだけでなく、この会話は動物学者であるグレッグにとってもなんらかのインスピレーションになっていればいいと思った。
「シマウマって、本当に斬新なデザインの毛皮を着ているわよね。あたり前みたいに思っていたけれど。よく考えるとどうしてあんな風に進化したのかしら」
「それはいい質問だね。実は未だにはっきりとはわかっていないんだ。わりと最近までは、あの模様が集団でいると個体の区別がつきにくくなり襲われにくくなるからと信じられていたんだが、群れから離れると反対に目立ちやすくなるだろう」
「最近は別の学説もあるの?」
「ああ。体温調節のためとも言われていたけれど、最近一番有力だとされているのは、ツエツエバエを除けるのに有効だという説だ」
「ツエツエバエ?」
「吸血蠅でね。睡眠病を引き起こすトリパノソーマの感染の原因になるんだ。研究ではツエツエバエから検出される血液の中から、シマウマのものは極端に少ない事がわかっているし、ウマ科の他の動物に比較するとシマウマが睡眠病にかかりにくいこともわかっている。そして、吸血虫は色が均一でない所には着地しづらいという研究があるんだ。つまり縞があると刺されにくくなるといってもいいね」
「それは人間でも有効なの?」
「そうだ。ツエツエバエに刺されると人間も睡眠病になる。だから、まだらな服を着ている方がいいってことになるね」
「自然の叡智ってすごいのね。縞のある方がいいとシマウマの遺伝子にプログラムが書き込まれるまで、随分とたくさんの試行錯誤をしたんでしょうね。私たちがあっさり『進化論』と呼んでいるものだって、細胞が知っているわけじゃないんですものね」
彼女の言葉に、グレッグは頷いた。
「進化論というのは、結果的に生き残ったものがどうして生き残ったかの理由付けとしてわかりやすいけれど、本当はそれだけでは片付けられない多様性もある。何千万年経っても、いまだに弱くて生存に向かない個体も普通に生み出され続けていることの説明はつかない」
「そうね。言われてみるとそうだわ。でも、絶対的な勝者じゃなくても、何とか生き延びる事が出来たなら、それはそれで生き残った事にならない?」
彼は、ジョルジアを見て驚いたような顔をした。それから答えた。
「その通りだね。生き残るというのは正にそういう事だ。そして、そうやってなんとか生き延びた弱い生命の中から、次の環境変化に適応できたものが、思いもしなかった繁栄に預かることもある。そう思うと、僕もなんとか生きていくことに希望が持てるな」
「私もよ」
ジョルジアがそう答えると、彼は笑った。それは「君は弱者ではないだろうに」という否定の笑い方だった。ジョルジアは、少しだけ不満に思った。彼女はいつも自身を光に満ちた人びとの蔭に埋没した取るに足らない存在だと認識し続けてきたから。- 関連記事 (Category: 小説・郷愁の丘)
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公爵のB&B
私と連れ合いは、一度行って氣にいったところがあると、何度もリピートして訪問するのです。北イタリアのアペニン山脈やピアチェンツァの界隈も、そんなこんなで何度も行っています。
もともとは、コルシカ島へ行くための通り道だったのですが、このあたりをもっとよくドライブしたいということで、時々ここを訪ねて回っているのですね。
そんなこんなで、何度も訪れることになった街の一つが、カステッラルクアート(Castell'Arquato)。人口5,000人に満たない小さな中世の遺構です。八世紀からの古い歴史を持つお城を中心に、いい意味で観光地ずれしすぎていないほっとする場所なのです。
今回みつけた宿は、Booking.comで予約したB&Bなのですが、地図上ではどう見ても中心の広場のところにあります。でも、あのあたりにあった高いホテルの横にB&Bなんてあったっけ? 首をかしげながらも、便利な場所なのに安いので急いで予約しました。しかも、鍵のかかる門の内側の敷地にバイクを駐車できるという利点もありました。夜間外に置いておくのは心配なので、パーキングは予約の大事なポイントなのです。
そして、たどり着いてみたら、本当にお高いホテルの隣にあった、以前「ここってすごいお館みたいだね」と言っていた建物がB&Bだったのです。もともとはピアチェンツア公爵のお屋敷だったそうで、かなり立派な建物。それを現代的に改装してあるのでとても快適な空間になっていました。
実は、泊まった二晩は私たち二人だけしか宿泊客がいなくて、しかもオーナーは別のところに住んでいるので、お城みたいな館を占有することになってしまいました。
そして、豪華な朝食。
イタリアの朝ごはんは、普通だと甘いジャムの入ったクロワッサン、パンとジャム、そしてコーヒーぐらいのことが多いので、そんなイメージでいたのです。でも、それらに加えて、毎朝違うタイプのお菓子と、フォカッチャのサンドイッチ、焼いたパイなどがこれでもかと並べられました。
オーナーの女性とおしゃべりしながらこれを二時間くらいかけて食べていました。このマリーナさん、イタリア人には珍しく(失礼)外国語が得意で、しかもものすごく歴史や文化にも詳しい方でした。連れ合いは、理解できる人だと突然フランス語で話しだしたりするので、会話はイタリア語とフランス語と英語が混在することに。ついていく私も、話すほうもコロコロ言語が変わるので大変だったかも。でも、いつもこうなんです。
マリーナさんとご主人は近郊に農場を持っているのですが、手作りジャムも出してくださいました。イチゴ、サクランボ、かりんなど農園で採れたもの、それにびっくりしたのがバラの花びらで作ったジャム、とても香りが良くておいしかったです。
ちょっとした王侯氣分を楽しめた二日間でした。- 関連記事 (Category: 旅の話 / スイス・ヨーロッパ案内)
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【小説】郷愁の丘(6)シマウマたち - 1 -
日本やスイスは、住むのに比較的安全な国です。そういうところから、そうではない国を訪問すると、安全であることに対して考えさせられることがあります。今回の部分は、そういった体験をもとにした記述が少し入っています。
それに、季節のあり方が日本とは少し違うので、そのことにも触れてあります(ここだけでなく、小説全体のあちこちに埋め込んであります)が、あまりうるさくならない程度の記述に抑えてあります。この辺は難しくて、伝わらないと困るのですが、一方で「説明しています」という感じになるのは嫌なので、毎回「どうしようかな」と悩むところです。
タイトルのシマウマは……。すみません、まだ出てきていません。「郷愁の丘」を読む
あらすじと登場人物
郷愁の丘(6)シマウマたち - 1 -
翌朝、彼はサバンナの調査にジョルジアを同行しようと言った。ルーシーにそれを告げると尻尾を振って、外へ飛び出そうとした。彼は、それを厳しく止めた。
ジョルジアは、彼がルーシーを連れいてかないつもりなのかと思った。けれど彼は外の様子を示していった。
「あそこで跳ね回られると、車の中が大変なことになるからね」
前庭は茶色い泥沼のような様相をしていた。ジョルジアは、昨夜の食事中に突然降り出した激しい雷雨の事を思い出した。
「雨季だから」
彼はその時、なんということはないという様子で言った。恐ろしい雷鳴や、屋根が抜けるのではないかと思うような大雨だったが、彼が落ち着いていたので、ジョルジアは思ったほど恐ろしさを感じなかった。ニューヨークで時々経験するハリケーンのような横殴りの風はなく、ひたすら大量の雨が降っただけで夜半までは続かなかった。だから、ジョルジアも安心して眠りにつく事が出来たのだ。
彼はリードをつけてルーシーに水たまりを避けさせ、指定席である最後部座席に載せた。
ジョルジアは、レイチェルの家で二匹のドーベルマンを見た時から疑問に思っていた事を訊いた。
「ルーシーをどこにでも連れて行くのね。家の番はいいの?」
彼は笑った。
「犬を泥棒よけとして飼う人の方が多いけれど、うちにその心配はないよ。盗まれて困るものはほとんどないし、それでもうちから何か盗みたい人はルーシーぐらいなら簡単に殺してしまうさ。僕やここに滞在している人に、誰か不審者が来た事を報せてくれるという意味では、ルーシーは番犬だ。でも、それ以外ではどちらかというと僕の唯一の家族みたいなもので、泊りの時や調査ですぐには戻れないかもしれないところに行く時にはいつも連れて行く」
それから、申しわけ程度の柵しかない表側の庭をジョルジアに見せて言った。
「この家には、野生動物よけの弱い電流を流す柵だけで、人間が侵入するのを防ぐ仕掛けは何もない」
確かにそうだった。《郷愁の丘》の門には何のロックもない。サバンナの景観を遮るような境界も全くない。崖に面した東側には柵すらない。だからこそ、ジョルジアは生涯忘れる事はないだろうあの朝焼けを寝室で見る事が出来たのだ。
レイチェルの家の塀には電氣ショックを与える柵があって、周囲からはあまり中が見えないように背の高い植木があった。その内側には鋭い針のあるアガベの仲間が隙間なく植えてあり、入り込んできた輩は怪我をするようになっていた。二匹のドーベルマンの他に、ガチョウを何匹も飼っているのは侵入者が入り込むと大きな鳴き声で騒ぐからだと説明してくれた。ゲートも電動だったし、さらに家のどの窓やドアにも鉄格子の侵入よけがあった。
「どうして? 何か他の仕掛けがあるの? それとも、性善説を信じているの?」
ジョルジアが訊くと、彼は笑って首を振った。
「ここがあまりにも人里から離れているから、何も必要ないんだ。この近くにいる人間はマサイのある部族だけだ。彼らは盗んだりはしない。牛以外はね」
「牛?」
グレッグは頷いた。
「彼らの信仰では、神は世界の全ての牛をマサイのものと定めたんだそうだ。だから、他の部族やその他のよそ者が牛を飼ったりすると、彼らは『正統な持ち物を取り返しに』行くんだ。でも、それ以外の金目のものや電氣製品などを盗るために家に入り込んだりするような人たちではない」
「それで、他の家のようにドアに鉄格子がついていないのね?」
「泥棒たちは、何もないとわかっているのに、こんな遠くまでやってくるような無駄な事はしないからね。引越したての頃、二回か三回ほど留守に入られた事がある。でも、あまりに何もないので呆れたんだろうね」
彼は居間を見回した。ジョルジアは改めて置いてある家具に目を留めた。ジョルジアの感覚では、そこにある家具の全てはアンティークと言ってよかった。
彼女がニューヨークでよく行くダイナー《Sunrise Diner》で友人となったイギリス人クライヴとクレアの働いている骨董店《ウェリントン商会》には、ここにあるような家具がびっくりするような値段で売られている。モダンで快適な家具に飽きた酔狂な金持ちか、古き良き時代に憧れる人たちが「ようやく見つけた」と喜んで買っていく。それほど、今やどこにも見かけなくなったような古くて使い込まれた家具だった。
ただし、この家具が作られた時代から高級品とは言いがたいクオリティで作られたもので、それが時代を経て使い込まれ、上塗りもあちこち剥げて色褪せたせいで、どことなく物悲しさが漂っていた。そして、その家具の中も上も、シンブルに徹した簡素さで、言われてみると金目のものなどどこにもなさそうだった。食器やカトラリーですら、特に高級なものは何もなかった。
この家までわざわざやってきて何かを盗んでいこう、それを更に売り払おう考えた泥棒が、運搬の手間すら惜しんでやめたことは十分に想像できた。
「僕は、せっかく書いた論文や資料を心配して青くなったけれど、興味も持たなかったらしくて、何もかも残っていてホッとしたんだよ。それから十年近く一度も泥棒には入られていない。時々、スプーンや砂糖などはなくなるけれど」
二年前にリチャード・アシュレイが黒人の使用人の事を罵っていたのを思い出した。カトラリーや食糧の備蓄がなくなるのは、こちらでは日常茶飯事なのだと。ジョルジアは、ここでもそれが起こっているのかと思った。つまり、想定される犯人は、あのアマンダだということになる。でも、グレッグの方はとくに彼女に腹を立てているように思えなかった。そういうものなのだと、受け入れてしまっているようだ。
出かける用意を済ませ車で待っていると、彼も戸締まりをして出てきた。ライフルを持っていたので、彼女はぎょっとした。彼は、笑ってそれを後の座席に置くと言った。
「まず使わないよ。でも、どうしても使わなくてはいけない時もあるから、ここに住むようになってから訓練した。人間の愚かさのため、使わざるを得ないときが一番辛い」
「使う羽目になった事があるの?」
「幸い、威嚇だけで済んだけれどね。キクユ族の男がハイエナに襲われたのを救った事がある。それに、僕はあまり観光客には関わらないようにしているんだけれど、レイチェルが案内したベルギーの金持ちは勝手に車から降りて、ライオンに襲われそうになったんだ。その時は同行していたレンジャーがそのライオンを射って怪我をさせたんだ。それが原因でしばらくして死んだ。彼女はその観光客の勝手な行動を止められなかったとずいぶんと自分を責めていたよ。」
「調査のためにも、氣を遣うのね」
「そうだね。撃つなんて事は論外だけれど、動物たちのストレスにならないようにしたいんだ。彼らの警戒心を起こさせるような行動は極力避ける」
「どういうふうに?」
「例えば距離だよ。ほんのわずかな違いなんだけれど、たった半メートル近すぎるだけで、動物たちは落ち着いて草を食めなくなるんだ。見えないテリトリーだね。長年の経験で、どこまでは近づいていいかはたいていわかるんだ。こちらが我慢して動物たちの安心できる位置に留まっていると、信頼してくれた動物の方から近づいてきてくれる事もある」
ジョルジアは、納得して彼の言葉を聞いていた。
「向こうから興味を持ってくれる事もあるのね?」
「馴染みの深い動物たちは、興味津々で観察してきたりするよ。何ヶ月か観察していると、お互いに知り合いみたいになるんだ」- 関連記事 (Category: 小説・郷愁の丘)
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目を守る
で、かけます。以前「眼鏡の話」という記事でも語りましたが、昔から酷使してきた目を、ここ数年必要にかられて保護しています。
昨年の秋に日本に行った時に、遠近両用眼鏡と中近両用眼鏡を作ってきました。中近両用の方はブルーライトのカットを強くしてもらって会社での仕事専用に置きっぱなしにしています。そして、下の写真の水色のフレームのものが、それ以外の時間に使っている遠近両用。JINSという会社で作ってきました。ほとんど違和感なく使い始められ、現在ではもともとの眼鏡に戻れないほど馴染んでしまいました。
そして、屋外に長時間行く時は、さらにサングラスを掛けています。色が変わるものや、そもそも完全に掛け替える度入りサングラスなども検討したのですが、現在一番都合が良くて使っているのが、このクリップ・オンタイプのサングラス。これは白内障や加齢黄斑変性の原因となる紫外線と青色光線(ブルーライト)をカットしてくれるそうです。通販生活で買いました。
色が黄色いので、眩しい昼間から、暗くなったり屋外に入っても特に問題なく見えます。もちろん屋外に長時間いる時には外しますが、キオスクに寄るときぐらいならこのまま。
こちらは以前もご紹介したことのあるオーバーグラスタイプのサングラス。主にドライブで使っています。これの優れたところは、前方だけでなくサイドもサングラスになっていて、ドライブ中に西日が横から入ってきて辛いときなどもカバーしてくれるのです。運転中は横を向いたりできないし、高速などでは勝手に停まれないので、このサングラスは本当に便利です。こんにちは!トラックバックテーマ担当の三浦です今日のテーマは「サングラスをかけますか?」です夏は日差しが強く、まぶしいですよね街中ではサングラスをかけている方が増えた気がします三浦は自転車通勤 なので、サングラスはマストアイテムです 車を運転される方 や、ファッションでかけている方も多いと思いますが皆さんはいかがですかあと、外国人の方はめちゃくちゃサングラスが似合ってかっこいいですよねサングラス...
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