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Posted by 八少女 夕

フォスのあれこれ / O Infante

「Infante 323とポルトの世界」カテゴリーの記事です。オリジナル小説「Infante 323 黄金の枷」にはモデルとなったポルトの街が時々登場しますが、フィクションの部分と現実との混同を避けるためにあくまでも「Pの街」として書いています。そういうわけで、本文中には挿入できなかったポルトの写真をこのカテゴリーにてお見せしています。

作中で、マイアと23が出かけたドウロ河ならびに大西洋に面したフォス(河口)と呼ばれる場所は、光に満ちた美しい一画です。かつては郊外、田舎に属し追いはぎなどを怖れなければならなかった場所ですが、いつの間にかお金持ちたちがリゾートとして利用する賑やかな場所になったそうです。

路面電車

ポルト市内からは、普通のバスでも行く事ができますが、この路面電車で行くのはかなりのおすすめです。レトロで素敵ですし、周りがよく見えます。さらに、いつ降りるのかとびくびくしなくても済みます。23とマイアは《監視人たち》に見つからないように交通公共機関は避けました。「午餐の後で」で彩洋さんちの詩織が乗りたがったのはこれです。たぶん彼らは乗ったのでしょう。

漁師たちの舟

河口、大西洋の始まるところには、今でも漁師たちが小さな舟で伝統的な漁業を行っています。ポルトガルの人たちの海に対する強い想いはかなりのものです。だから、魚もとても身近。日本人がポルトガルでホッとするのはこういう所にあるのかなと思ってしまいます。

チーズのお城

これは「Castelo do Queijo(チーズのお城)」と呼ばれている城塞です。形が平ぺったくてチーズみたいに見えるからですね。フォス周辺にはこのような城塞がいくつもあり、ここが防衛上とても大切な場所だった事がわかります。

パーゴラ

そして、ここがクリーム色のパーゴラ。「恋人たちのデートスポット」ときいて「絶対に本編に登場させるぞ!」と誓った場所です(笑)実際にも、幸せそうな恋人たちが楽しく歩いているのも見ましたが、普通にジョギングしたり、散歩している人たちも。あたりまえですね。

海は、ポルトガル第二の都会であるポルトから数キロなのに、とても綺麗です。魚釣りをする人もいました。私が行ったのは四回とも三月でさすがに泳いでいる人はいませんでしたが、夏は賑わうのでしょうね。

ドウロ河岸のレストラン

なお、このドウロ河沿い並びに大西洋に面したフォス地区には、対岸を眺められる素敵なレストランがたくさんあります。夜もなかなか素敵。ポルトにいらしたら、一度はこういう所でお食事もいいですよ。

* * *


最後に、ここで一曲ご紹介しましょう。「マイアと大西洋」に関するイメージソングは、ボサ・ノヴァの「Brisa do mar (海のそよ風)」で、これが章のタイトルにもなっているのですが、その曲は最終回に取っておくとして、今回は、「23たちインファンテと大西洋」に関するイメージソングにしている曲で、私の大好きなファド歌手ドゥルス・ポンテスが、ポルトガルを代表する詩人フェルナンド・ペソアの「Mar Português, (ポルトガルの海)」から「I. O INFANTE」に作曲して歌った「O Infante」です。

ポルトガル語の「O」とは定冠詞、つまりこの題名は英語でいうと「the prince」つまりエンリケ航海王子の事を示していると思われます。世界が一つになるという事は、彼と彼を支える人たちには「大ポルトガル帝国の完成」を意味していたと思われますが、もはや大ポルトガル帝国はなくなってしまいました。けれど、神が彼らを欺いたのではなく、たった一つの大きな青い惑星がひとつ存在している、その意味を彼らがわかっていなかったのではないでしょうか。ペソアの詩、ドゥルス・ポンテスの哀愁ある歌声が訴えかけてくる世界と、「誰かが始めて、もはや意味を失ってしまったのに、誰にも止められないシステムがあり、その中に生きる人びとの悲哀がある」という小説の設定がどこか重なるのです。だから、この曲は、この「黄金の枷」シリーズの裏テーマとしてBGMにしているのです。



歌・作曲:ドゥルス ポンテス Dulce Pontes
詩:フェルナンド・ペソア Fernando Pessoa

この下に、ペソアによる詩と、拙いながら私の調べて訳した和訳を置いておきます。

O infante

Deus quer, o homem sonha, a obra nasce
Deus quis que a Terra fosse toda uma
Que o mar unisse, já não separasse
Sagrou-te e foste desvendando a espuma
E a orla branca foi
De ilha em continente
Clareou correndo até ao fim do mundo
E viu-se a terra inteira, de repente
Surgir redonda do azul profundo
Quem te sagrou, criou-te português
Do mar e nós em ti nos deu sinal
Cumpriu-se o mar e o império se desfez
Senhor, falta cumprir-se Portugal
E a orla branca foi
De ilha em continente
Clareou correndo até ao fim do mundo
E viu-se a terra inteira, de repente
Surgir redonda do azul profundo

神は望み、男は夢み、その事業は生まれた
神はこの地球が一つになることを望んでいた
そして海は繋がり、もはや隔てられなくなった
お前は祝福されて、そして泡を取り除くために出かけて行った

白い海岸線は
島から大陸へと消えながら
世界の果てまで走っていった
そして、お前がこの全ての地を見ると
突如として、深く青い球体が現れた

誰がお前を祝福し、ポルトガル人にするのか
海と私たちは、お前に神の徴を与えた
その海は満たされ、そして帝国は崩壊した
わが主よ、まだポルトガルは完成していません

白い海岸線は
島から大陸へと消えながら
世界の果てまで走っていった
そして、お前がこの全ての地を見ると
突如として、深く青い球体が現れた




この記事を読んで「Infante 323 黄金の枷」が読みたくなった方は……

「Infante 323 黄金の枷」「Infante 323 黄金の枷」をはじめから読む
あらすじと登場人物




【次回予告】「Infante 323 黄金の枷」 (16)休暇

「休暇中はたぶんお前の家の近くの《監視人たち》が観察をするだろう。怪しまれるような行動は避けた方がいい」

 言われてみればその通りだった。マイアはひどくガッカリした。23は失望しているようには見えなかった。それまで作っていた靴を脇にどけると、作業台の引き出しから型紙を探し出した。忙しそうだなとマイアは思った。洗濯物の籠を持って退散することになった。落ち込んだように去っていくマイアの後ろ姿を、23はじっと見つめていた。


マイアは、二ヶ月に一度の一週間の休暇を貰える事になりました。せっかくの休みなのに、23に逢えなくなる事にがっかりするマイア。誓約に縛られながら過ごす長い一週間が始まります。

来月末に発表予定です。お楽しみに!
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Category : 黄金の枷 とポルトの世界

Comment

says...
うう~ん、風情とヨーロッパの世界観が漂っていますね~~。
よい感じですね。
写真から潮風が感じてくるようです。。。
こうして作品を読むとまた風情が出てきますね。
(*^-^*)
2015.05.31 00:50 | URL | #- [edit]
says...
ポルトの美しい景色と香りと、歴史、そして美しくて抒情的な歌、いろんなものがこの物語を作る上で、大切な要素になってるんだなあ~と感じます。
夕さんの、この街に注がれる想いと愛情も、しみじみ伝わってきます。
夕さんのお話に厚みや重厚感があるのはきっと、こういう世界観や知識がしっかり土台としてあるからなんですよね。
歴史に疎く、行ってみたい場所は?と聞かれてもまるでどこも出てこない悲しい私には、こういう書き方は出来ないけれど、お話の中でそれらを感じることが出来て楽しいです。

あ、つぎはマイアの休暇なんですね。
いやあ、23から離れて楽しい休暇を過ごせるとは思えないし。一体どうやって過ごすんでしょうね、マイア^^
2015.05.31 04:51 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こんにちは。

本当は「文章だけが全て」と言い切れるほどの描写力があればいいんでしょうけれど、そうもいかず(笑)
それにいくらポルトが大好きと言っても、主題がそれでない以上描写だけにたくさん文字数を割くとこれまた作品のバランスが……。というわけで、姑息ながら発表した直後に関連写真を追加して、イメージを膨らませていただいています。

で、作品とは別に、とてもいい所なんですよ。二重丸のオススメスポットです!

コメントありがとうございました。
2015.05.31 10:51 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんにちは。

ペソアの「ポルトガルの海」は日本語訳されて出版されているのです。そちらはもっと素晴らしい訳だと思いますが、それはネットでは見つからなかったし、みつけても転載は著作権に触れてしまうと思うので、私はドゥルス・ポンテスのサイトの英訳を参考に訳しました。それと日本語として意味が分かりにくい所は少し意訳してあります。

「湘南の海」と「津軽海峡」では、同じ海であっても受けるイメージが違うように、ポルトガルにとっての海も、やはり独特のイメージがあるのですよ。で、私の海の写真だと物語のトーンにとって少し明るすぎる、そのイメージの修正のためにファドや詩に歌われたポルトガルの「海」を持ってきました。

マイアの海はこの写真のような明るいものに近くて、23の海はもう少し哀しみが強い、そんな風にとらえています。海は海なんですけれど(笑)

他の作品だと、その街に行かなくてもそこそこ書いているんですが、この作品だけはポルトに行くことなしには生まれてこなかったと思います。そして、この作品が生まれてしまったので、よけいポルトに行くのが止まらない、そんなループに……。

でも、「こんどパリに行くから、パリのお話を書いてみよう」と決めても、そんな簡単には生まれてきません。パリの方がずっとたくさんの題材に恵まれていて、実際に多くの名作が生まれてきた街ですが。だから、こういうのも一期一会なんでしょうね。

で、ようやく休暇です。なんと三回分のボリュームがあります。マイアは楽しくないと思いますが、読者には楽しんでほしいです。limeさんが描いてくださった歩きやすい方の靴も、次回登場です。

コメントありがとうございました。
2015.05.31 11:06 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
このポルトの町シリーズ、いつも楽しみにしています。
ポルトガルの街はリスボンしか知らないのですが、本当に何だかノスタルジアという言葉が似合う町だなぁと思いました。ファドの響き、やっぱりいいですね。
う~む、これに乗せてマイアや23の物語が展開しているのかぁ。そう思うと、また少し違ったイメージが出てきます。マイアのお花畑脳?にも、どこか哀愁が漂うというのか……
その場所に立ったからこそ生まれる物語。いいですね。何だかとても共感します。あの町に住んだから生まれた物語というのは、私にとってはやっぱり京都かなぁ。そして今は止まっている青森の物語。うん。夕さんのこのコーナーに触発されて、私もまた頑張ろうという気になりました(^^)
2015.05.31 11:48 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

リスボンは行ったことがないのですが、テレビで見る限りは、似た雰囲気の建物や路面電車もあって、人によってはそんなに違わないのかなとも思いますが、たぶんサイズが小さいのと、それに北に行くと氣質が違うのと、それにやはり首都にはいろいろな人が集まるので、ポルトで感じるものとはきっと違うんだろうなと思います。

マイアか……。あ〜、マイアのお花畑脳の中には、ファドの哀愁はほとんど存在していないかも(笑)
いや、本人にしてみれば存在しているつもりでしょうが、その深さとか、やり切れなさとかが、ドラガォンの主要メンバーたちとは全く違うかもしれません。
たぶん同じ海を見ていても、23とマイアでは感じるものが違うんじゃないかと思います。

思うんですけれど、もし私が行ったのがリスボンだったなら、この話は生まれてこなかったんじゃないかと思います。そういう意味では、この話の本当の主役はポルトの街そのもの。写真で作品に興味を持ってもらう「○○の世界」カテゴリーはいろいろな作品用に作っていますが、この「Infante 323 とポルトの世界」カテゴリーへの熱意のかけかたは、ほかの物の比じゃありません。

そうそう「清明の雪」からは、彩洋さんの京都愛がにじみ出ていましたよね。それに「猫」のお話でのシエナ。そういう場所に出会えるかどうかは、本当に縁があるかどうかだと思うんです。青森もそうなんだ。それはぜひとも読んでみたいです。【雨】の次でしょうか。楽しみに待っていますね。

コメントありがとうございました。
2015.05.31 15:13 | URL | #9yMhI49k [edit]

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