FC2ブログ

scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】タンスの上の俺様 - 「カボチャオトコのニチジョウ」シリーズ 二次創作

この記事は、カテゴリー表示のためのコピーです。

scriviamo!


月刊・Stella ステルラ 3月号参加 掌編小説 読み切り月刊・Stella ステルラ


「scriviamo!」の第八弾です。
イマ乃イノマさんは、オリジナル小説で参加してくださいました。「月刊・Stella」をお読みの方にはおなじみの「カボチャオトコのニチジョウ」の中の一本です。本当にありがとうございます。



イマ乃イノマさんご指定の小説 「カボチャオトコのニチジョウ」(クリスマス編)
さらに使わせていただいた小説 新年に向けての「カボチャオトコのニチジョウ」


イマ乃イノマさんはStellaでお世話になっているブロガーさんです。たぶん、学生さん。別の記事で「カボチャオトコで書いてほしい」というご希望をちらっと目にしたので、こてこての二次創作にさせていただきました。たぶん、イマ乃イノマさんの設定の邪魔はしていないつもり。でも、していたら、笑ってスルーしてくださるとありがたいです。それから、まったく根拠もなく、威張って上から目線な「俺様」の存在も……。


「scriviamo!」について
「scriviano!」の作品を全部読む



タンスの上の俺様 - 「カボチャオトコのニチジョウ」シリーズ 二次創作
——Special thanks to IMANOINOMA-SAN


 俺様はタンスの上に鎮座している。カボチャオトコの野郎は、俺様をただの白い猫の置物だと思っているらしいが、もの知らずなのだから仕方ない。この右の前足をきちんと持ち上げて「幸福を招く」ところに俺様の本分がある。とある世界の、とある島国では、大層ありがたがられている縁起物なのだ。

「ねえ、カボチャオトコ~」
リリィが甘ったるい声を出す。
「なんだ?」
「何で、こんなところに猫を飾っているの?」

 カボチャオトコは首を傾げた。
「それがどうも思い出せないんだよな。どこでそんな変な置物を買ったんだろう?」

 なんて失敬な。変な置物とは何だ、変な置物とは。大体、お前が一人ほっちではなくなり、もったいないほどの美少女が入り浸るという幸福にひたれているのを、いったい誰のおかげだと思っているのだ。こんな失敬なヤツにも、いつも幸福を招き寄せる寛大な俺様なのだ。

 俺様が、恐れ多くも、魔界のこんな辺鄙な片隅にある、寂れたあばら屋に来てやったのは、そう、クリスマスの少し前のことであった。といっても、去年のクリスマスではないぞ、もっと前だ。思えばそれはちょっとした偶然であった。

「いつもすまないな」
サンタクロースの御大は、申しわけなさそうにカボチャ頭の若者に謝った。毎年、プレゼント配布にとても手が回らないので、ボランティアとしてこの野郎に手伝いを頼んでいるのだ。
「当日だけでなくて、こうして下準備にも来てくれるから、本当に助かるよ、カボチャオトコ」
「いいえ、大したことじゃありませんから。一人で家にいてもつまらないし」

 俺様はそのセリフを袋の中で聞いていた。こいつは、ひとりぼっちで、つまらない家なんかに住んでいるのか。ろくでもない野郎だ。

「どうだ、カボチャオトコ。お前さんには給料も払えないが、よかったら何かこの中からひとつ、プレゼントを持っていったら」
「えっ。いいんですか?」
カボチャオトコの野郎は、やけに嬉しそうな声になったっけ。サンタクロースの御大はニコニコと頷いている。

「じゃあ、この真っ白い肌が綺麗な女の子のお人形を」
カボチャオトコがそれに手を伸ばした時に、サンタクロースの御大の顔はさっと曇った。
「いや、それはだな。病で明日をも知れぬ女の子が、どうしてもと所望した……」

 おい、カボチャオトコ。そんなものを欲しがってどうするんだ。いい歳してままごとでもするのか。俺様は怒りに震えて、カタカタと動いてやった。

「えっ。いや、そんな事情も知らずに、すんません。じゃ、これでいいです。これも白いし」
おいっ。俺様に氣安く触るんじゃない! それに「これでいい」とはなんだ、「これでいい」とは。

「ほう。それを選ぶとは、お前も眼が高いな。大切にしてやれ。いいことがあるかもしれないぞ」
サ、サンタクロースの御大……。「かもしれない」っていい方、ひどくないですか? ともかくそんなわけで、カボチャオトコの野郎は、もったいなくも、この俺様をあばら屋に連れ帰ったという訳だ。

「ネコかあ」
家につくと、カボチャオトコは俺様を興味もなさそうにちらっとみて、ポンとタンスの上に置いた。失礼なヤツめ。お前だって、カボチャの頭をしている、大して強そうでもない魔物ではないか。よいか、この俺様の実力を見せてやる。憶えていろ。その日から俺様はタンスの上に鎮座して、カボチャオトコのために福を呼び寄せているのだ。ヤツは憶えてもいないらしいが。

 俺様がありがたがられている、とある世界の、とある島国では、俺様のような「福を招く」猫がたくさん作られている。ありがたがっている奴らは何も知らないが、実は、俺様たちにも天命というものがある。持ち帰ってくれた奴らが、いかに福の招きがいのない、つまらない野郎であろうとも、精魂込めて福を招くのだ。うまくいく場合と、いかない場合がある。俺様たちにも出来ないことだってあるのだ。俺様たちは、魔法を使うのではない。単に日々、夜な夜な、ひたすら「福よ来い」と招くだけだ。

 無事に福がそいつの家にやって来て、そいつの幸福度がアップすることが三度重なると、俺様たちの天命は全うされる。その時には、俺様たちは自然と壊れて土に帰る。そして、面白おかしく楽しい生命に生まれ変わることが出来るといわれている。本当かどうかは知らない。なんせ俺様はまだ壊れていないからな。

 だが少なくとも二つは変わったのだ。もちろん、俺様が思うには、だが。一つはリリィだ。俺様が、このタンスの上で渾身の力を振り絞り、福を招き出してから数日、この野郎はふたたび、サンタクロースの御大を手伝いに出かけていった。そして、帰ってきた時には、どういうわけか、肌の真っ白い美少女を連れてきていたのだ。

 考えてもみろ。「行く所がない」なんて理由で、得体の知れぬ美少女がそこら辺をウロウロしたあげく、よりにもよってカボチャ頭の男のもとに入り浸るか? こやつらは「不思議な偶然」などと呼ぶのかもしれないが、この俺様の実力のほどがわかるというものだ。

 そして二つ目がゲーム運だ。本日の今の話だぞ。俺様の目の前で、カボチャオトコはリリィとトランプをしている。年が明けようというのに、他にすることはないらしい。しかもこの野郎の弱さときたら眼を覆うばかりだ。こんなに弱いのに、なぜトランプなどをやろうと思うのだ。まったく理解に苦しむ。

「弱いわね、あなたって。」
10度目に勝って、リリィは鼻で笑った。

「……くっ、くそぉ! も、もう一回だあ!」
カボチャオトコはトランプをかき集めて、シャッフルする。やめておけ、無駄だって。そもそも、お前は腕力ですら常にリリィに負けているではないか。そっちこそ、なんとかしろ。俺様は、こっそりとため息をついた。

「いいけど……あなた勝てるの?」
リリィが心配そうにいうと、勢いよく立ち上がり、カボチャオトコの野郎は人差し指を美少女の鼻先に向けて宣言しやがった。
「ああ、今のカボチャオトコは今までのカボチャオトコではないッ!」

 このあと、二人だけではなく俺様も驚いたことに、この時、カボチャオトコの方に運が向いてきたのである。

 俺様が変えてやったとは言わない。実をいうと、どうやったら独り者の男がかわいい女の子に出会えるのかとか、へたくそで仕方ないゲームで勝てるようにしてあげられるのかとか、俺様はとんと知らないのだ。単に、俺様は福を招いているだけなのだ。しかし、これで二つと。三つ目の福が向いてきた時に、どうなるのか、俺様はドキドキしてきた。

 そう。今までは、俺様には縁のないことだったので、よくは考えたことがなかったのだが、もし、天命が全うされたら、どんな生命に生まれ変われるのかなど、多少は考えておくのも悪くはあるまい。うむ、そうだな。カボチャ頭なんぞになるのはごめんだ。それから、いくら綺麗でも、こんな怪力少女もな……。ふむ。平凡かもしれないが、ネコは悪くあるまい。希望をいえるなら、チンチラ……、いや、ブリティッシュ・ショートヘア……、やめとけ、キャットフードの宣伝じゃあるまいし。やっぱり、図太く、雄々しい虎猫だろうな。そうなるといいが。

 それまでは、俺様は、一刻も休まずに、このわりと恵まれた男に福を招き続けてやろう。よし、渾身の力を込めて……。う? なんか妙な音がしないか? この家の外だと思うが、風を切るような……。何かが近づいてくるよう……。

 ドッガァァァァン!

 カボチャオトコの家は強い光に満たされた。どういう訳だか、いや、つまり、近づいていた飛行物体が衝突したその衝撃で屋根に穴が穿たれ、そのために飛行物体そのものが輝いているのが視界に入ったという訳だった。
「わっ! まぶしっ!」

 その飛行物体は、次第に下降してきながら、光を弱めてきた。
「あれ、人間の子供じゃない?!」
リリィが叫び、カボチャオトコがあわてて、落ちてくるその子供を抱きとめた。

 カボチャオトコとリリィは、落ちてきた子供と、完全に破壊された天井の損害に氣をとられていて、まったく意に介していなかったが、つい先ほどまでタンスの上に鎮座していた白い猫の置物は天井の破片があたり、粉々に破壊されていた。これまで、幾度もリリィがカボチャオトコに戦闘をしかけ、家具やカボチャオトコその人がこの家の中を飛んでいても、一度たりとも当たったことなどなかったのだが。

 カボチャオトコとリリィが、派手に散乱した天井の破片とその他の壊れた品々を片付け、不思議な登場をしたばかりの子供が真っ青な瞳をぱっちりと開けてその二人を眺めているその時に、あらたな歳の到来を告げるチャイムが鳴った。

(初出:2013年2月 書き下ろし)


関連記事 (Category: 小説・タンスの上の俺様)
  0 trackback
Category : 小説・タンスの上の俺様

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:https://yaotomeyu.blog.fc2.com/tb.php/1327-244a78a1