scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】ありがとうのかわりに

scriviamo!


「scriviamo! 2017」の第十四弾です。けいさんは、毎年恒例の目撃シリーズで書いてくださいました。この作品は、当scriviamo! 2017の下のようにプランB(まず先に私が書き、それに対して参加者のブロガーさんが創作作品や記事などを書いてくださる参加方法)への返掌編にもなっています。ありがとうございました。

プランBで、拍手絡みの物語を、うちの「シェアハウス物語」とコラボでお願いしても良いですかね。それを受けて、私も掌編を描く。それのお返事掌編をまたいただく…B→B(A)→A混合サンドイッチ、みたいなの。


この二つ書けとおっしゃるうち、ひとつはちょうどブログトップのFC2拍手を1000カウント目にしてくださった記念掌編です。

けいさんの書いてくださった『とある飲み屋での一コマ(scriviamo! 2017)』

けいさん、実はどうも今、公私ともにscriviamo!どころではない状況みたいで、いま発表するのはどうかなと思ったんですが、こちらの事情(後が詰まっていて)で、空氣を全く読まない発表になってしまいました。ごめんなさい!

今回の掌編は、けいさんの掌編を受けて、前回私が書いた作品(『頑張っている人へ』)の続きということになっています。そっちをお読みになっていらっしゃらない方は、え〜と、たぶん話があまり通じないかもしれません。

今回は「シェアハウス物語」のオーナーにご登場いただいていますが、それと同時にけいさんの代表作とも言えるあの作品にもちょっと関連させていただきました。

で、けいさん……。大変みたいだけれど、頑張ってくださいね。応援しています。


「いつかは寄ってね」をはじめから読むいつかは寄ってね


「scriviamo! 2017」について
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ありがとうのかわりに - Featuring「シェアハウス物語」
——Special thanks to Kei-san


 東京は神田の目立たない路地に『でおにゅそす』はひっそりと立っている。ママと呼ばれる涼子が一人で切り盛りをするこの飲み屋は、二坪程度でカウンター席しかないが、そのアットホームさを好む常連客で毎夜そこそこ賑わっていた。

「いらっしゃいませ。あら、葦埜御堂あしのみどうさん。今夜はお一人?」
涼子は現に微笑んだ。

「残念ながらね。でも、みんなここがとても氣にいったようで、近いうちにまた来たいらしいよ。その時には、またよろしく頼むよ」
シェアハウスのオーナーである現は、先日シェアハウスに住む国際色豊かな四人をこの店に連れてきたのだ。

 今日は、会社が終わると一目散にやってきて現が来る頃には大抵でき上がっている西城と、少しは紳士的なのに西城にはハッシーと呼ばれてしまっている橋本が仲良く並んで座っていた。そして、カウンターの中には、涼子ママと、常連だがツケを払う代わりに料理を手伝う板前の源蔵がいた。

「よっ。現さん、この間は驚いたよ。あのガイジンさんたち、すごかったよねぇ」
西城は、あいかわらずろれつが回っていない。

「何がすごかったんですかい?」
あの時、一人だけ店にいなかった源蔵が訊いた。橋本が答えた。
「現さんのつれていらした人たち四人のうち三人が外国の人たちだったんですが、みなさん、日本語ぺらっぺらで、しかも鶴まで折っちゃって。日本人の僕たちよりも上手いのなんの……」

「それに、あのアジアのおねーちゃん! あの人形の折り紙はすごかったよなあ。アレを折り紙で折るなんて、目の前で見ていなければ信じられなかったよ」

 涼子はもう少し説明を加えた。
「源さんも知っているでしょう、時々やってくる、小林千沙さん、あの方の従兄の方が闘病しているって話になって、だったらみんなで応援しようってことになって、あの夜、ここでみんなで鶴を折ったのよ」

 現はその間にメニューをざっと検討して、まずヱビスビールを頼み、肴は適当に見つくろってほしいと頼んだ。源蔵がいる時は、料亭でしか食べられないような美しくも味わい深い、しかもメニューには載っていない一皿にめぐりあえることがあるからだ。

 源蔵はそれを聞くと嬉しそうに、準備に取りかかった。現は、突き出しとして出された枝豆の小鉢に手を伸ばしながら訊いた。
「その後、どうなったんでしょうね」

 涼子は微笑むと、カウンターから白い紙袋を取り出した。
葦埜御堂あしのみどうさんがお見えになるのを待っていたのよ。実はね、四日くらい前だったかしら、小林さんがいらっしゃってね。これを、皆さんにって」

 現は「へえ」と言いながら紙袋の中を覗き込んだ。中には、赤と青のリボンで二重に蝶結びにして止めた、白い袋が五つ入っていた。そして、それぞれに付箋がついていた。

「ゲンさんへ、か。これが僕のだ」
彼は、一つを取り出した。残りの四つには「ワンさんへ」「ニコールさんへ」「ムーカイさんへ」「ソラさんへ」と書いてある。あの時、耳にしただけで漢字がわからなかったので全てカタカナなのだろう。ワンちゃんだけ「ちゃん」付けするのはまずいと悩んだんだろうな。うんうん。彼は笑った。

「西城さんたちももらったんですか?」
現が訊くと、二人は大きく頷いた。

「もちろんさ。俺っちたちは、千沙ちゃんが来た時にここにいたからさ、直接いただいちゃったって訳。開けてごらんよ」

 中には透明のビニール袋に入ったカラフルなアイシングクッキーと、CDが入っていた。彼は取り出して眺めた。

 ピンクや黄色や緑のきれいなアイシングのかかったクッキーは、全て紅葉の形をしていた。それはちょうどあの日ワンちゃんが折った拍手に見立てたたくさんの紅葉に因んだものなのだろう。

「小林さんの手作りですって。いただいたけれど、とっても美味しかったわ」
涼子が微笑んだ。

「それは嬉しいね。少し早いホワイトデーみたいなものかな。で、こちらは?」
彼はCDをひっくり返した。それはデータのディスクか何かを録音したもののようだった。

「それさ。例の闘病中の従兄が演奏したんだってよ」
西城が言った。

 現は驚いて顔を上げた。橋本が頷いた。
「そうなんだってさ。先日、無事に放射線療法がひと息ついて、退院して自宅療養になったんだって」

 涼子がその後を継いだ。
「あの皆さんからの折り紙がとても嬉しかったんですって。絶対に諦めない、頑張るって改めて思われたそうよ。それで退院してから小林さんと相談して、みなさんに何かお礼の氣持ちを伝えたいって思われたみたい。それで、ギターで大ファンであるスクランプシャスっていうバンドの曲を演奏して録音したんですって」

「歌は入っていなくてインストだけれど、すごいんだよ。俺たちもらったCD全部違う曲が入っていたんだ。だから現さんたちのとこのもたぶん全部違う曲だと思うぜ」
橋本は興奮気味だ。

「そうですか。僕のはなんだろう。あ、裏に書いてあるぞ『悠久の時』と『Eternity Blue』か。デビュー・アルバムからだね」
「あら、葦埜御堂あしのみどうさん、お詳しいのね」

「もちろんだよ。僕は自慢じゃないけれど、スクランプシャスのアルバムは全部持ってんだから」
現が言うと、皆は「へえ~」と顔を見合わせて頷いた。

「だれが『夢叶』をもらったのかな」
現が皆の顔を見回して訊くと、涼子は笑った。
「私たちじゃないわ。たぶんワンさんじゃないかしら。あの時、いつか折り紙作家になりたいっておっしゃっていたから」

「俺っちもそれに賭ける」
西城が真っ赤になりながら猪口を持ち上げた。

「宇宙かもしれないぞ。あいつもこれから叶える夢があるからな」
その現の言葉に、皆も笑って頷いた。

 涼子が現のグラスにヱビスビールを注ぎ、源蔵が鯛の刺身を梅干しと紫蘇で和えた小鉢を置いた。

 現はプレゼントを紙袋に戻すと、嬉しそうに泡が盛り上がったグラスを持ち上げた。

(初出:2017年2月 書き下ろし)
関連記事 (Category: scriviamo! 2017)
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Category : scriviamo! 2017
Tag : 小説 読み切り小説 コラボ

Comment

says...
夕さーん^^ まずは、88888のぞろ目Hit突破! 
おめでとうございます! 私、088880だったんです~^^

そして! おおお(@@) ありがとうございます。
現さんの苗字、久しぶりに見た(←作者なのに…^^;)
涼子ママはご丁寧な方ですね。
ハッシーも西城さんもご健在^^
今回は源さんと現さんのダブルげんさんの共演も。

そしてなんと、千沙さん・従兄さんからのプレゼントがっ!
うおうおー^^ 懐かしー(←作者なのに…-_-;)
一作で二作分おいしい物語をありがとうございました!

えっと、今大変で…(T^T)
そんな時のこの嬉しいお話でちょい元気が戻ってきました。
ただ今、PC内の全データ消失からの復帰作業中です。
何年か前、LINEの乗っ取りに遭ったときは、システムの総取り換えで3か月くらい大変だったのですが、今回はデータ。ぜーんぶ。
アイコンが全くないトップスクリーンというのを初めて見ました(T^T) 
古いのはバックアップあるのだけれど、最近特に今年に入ってからのが大きい。
仕事も復帰で新しいものを立ち上げていたので…
執筆関係も、サイトにアップしてあるのが元原稿という状態です。
アップしていないのはさよ~なら~~(T^T) 
日々は進んで行くので、頑張るー(-_-;)

実は夕さんの8ぞろ目Hitの折にはやろうと考えていたことがあったのですが、すみません、次の機会にということで~(><)
とりあえず、お祝いのエアハグで~~♪
2017.02.27 23:29 | URL | #- [edit]
says...
おおー、けいさんのシェアハウスだー。
私も読んでますよ。
国際色豊かで楽しそうですよね。
もう英語も10年ぐらい話してないじぇ。。。
私は日本人だらけしかいないからなあ。
外国人が来たらどうしよう。
( ̄~ ̄;)
2017.02.28 01:30 | URL | #- [edit]
says...
こんにちは!
従兄さん、自宅に帰れて良かったです\(^^)/
クッキーと演奏を録音したCDとは、粋なお返しでしたね!
こういうやり取りのあるお店って素敵だなぁ……と、しみじみいたしました。
2017.02.28 06:53 | URL | #- [edit]
says...
88888ヒット超え、おめでとうございます。
「scriviamo! 2017」期間中でなければ、イベントものでしたね。

さてさて。
執筆、お疲れ様でした。

前話のラストも希望が持てる感じだったので安心していましたが、意外に早く、いい方向に向かっていることがわかって安心しました。

折鶴、千沙と時夫は、嬉しかったでしょうね。そのお返しが、手作りクッキーと自演のCDとか、ほんとうに温かい感じがして素敵です。
けいさんのところの皆さんも、困っている人を見たら助けちゃう系の方たちだし。うん、八少女夕さんの「お店」に来るお客さん、いい人が多いですね。
2017.02.28 11:40 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
ん?葦埜御堂さんは現さんと同じ方かな?
源蔵も居るし、少し混乱。
けいさんの「シェアハウス物語」の登場人物たちと少しお近づきになったように感じられて、ちょっと嬉しいお話でした。
千沙と時夫のお返し、もみじのクッキーとか素敵ですね。手作りでクッキー焼くのは結構大変。スクランプシャスには付いていけてませんが(けいさんの作中登場グループ?)、1人1曲づつ演奏して録音するのは、自宅療養になったとはいえ、病の体でこっちも大変だったろうと思います。
1つ1つのプレゼントから感謝の気持ちが伝わってきます。
なんかオフ会でいただいた夕さんのプレゼントを思い出してしまいました。
こういう気配り、サキにはなかなかできないんですけれど、素敵です。
時夫、完治、少なくとも寛解出来たらいいのになぁ。
そして、ヱビスビール、これもいいですね。
サキはあまり飲めませんが、ビールなら少しは行けますから・・・。

え?けいさん、データが全部飛んだんですか?
これも大変!
アイコンが全くないトップスクリーンなんてウィルスにやられたんでしょうか?
「アップしていないのはさよ~なら~~(T^T)」なんておっしゃてるし。
なんか半分やけくそみたいだし・・・。
なるべく被害が少ないことを祈っています。
2017.02.28 12:17 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

うぉう。なんと88888Hit、すっかり忘れていて見てもいませんでした!
幸い、scriviamo!中だったのでスルーできました。これ直後だったら、体力が足りなくなってた(笑)
でも、なんかいいのを踏んでくださいましたね。088880もちょっとめずらしい感じですよね。

そして、現さんの苗字、思いっきりコピペしました。書けない私……。
涼子や田中は、基本的にお客様は苗字で呼びます。
源蔵だけは半分従業員化しているので、ああ呼びますが。
現さんとダブルになったので、私も笑っちゃいました。
ハッシー&西城はレギュラーですな、ここでは(笑)

そして、スクランプシャスです。けいさんの作品はつながっているからこの流れもありだと思って。
調べたら、CD二つ分しかわかんなかったんですが、
きっともっといっぱい出ているだろうなと予想しています。
書きながら楽しませていただきました。

そして、PCですよ!
なんとか救出できそうなのでしょうか。
私は数年前にMacの突然死を経験しました。
タイムマシンで毎日バックアップしていると慢心していたんですが、Mac内にパーテーション切ってそこにバックアップしていたので道連れでした。
仕事のものはなにも入っていませんでしたが、小説は諦められなくて、ドイツの会社に依頼してデータを救い出してもらいました。日本円にして10万円くらいかかりましたけれど、全部戻ってきて嬉しかったなあ。
けいさんのデータも復活することを祈っています。そして、バックアップはどうにかして、毎日……。
うるうるうる。

こんな時にウチなぞをお氣遣いいただき恐縮です。
エアハグ、しっかり受け取りました。
うちの次の企画はたぶん10万ヒットだな。いつだろ。その時は、一緒に遊んでくださいね。

ご参加と、こんなときのコメント、ありがとうございました!
頑張れ〜!
2017.02.28 22:29 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

あはは、あそこの外国人のメンバーは、大丈夫ですよ。
なんせ全員日本語ペラペラ(笑)

もっとも、最近私の言葉はすごいことになってきています。
ドイツ語、英語、フランス語、イタリア語、日本語と使える単語は何でも使うので
会社で連れ合いからの電話を受けていると同僚がみな笑います。
「何でそんなチャンポンの言葉を」という感じで。

通じりゃいいんです(笑)

コメントありがとうございました。
2017.02.28 22:33 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

時夫も、少なくとも一段階、治療がひと息ついてホッとしているところでしょうか。
このまま快方に向かうといいなあ。
(すみません。設定考えてないです)

暖かい手作りの応援へのお礼なので、お金で買うものじゃなくて、何か手作りのものがいいと思ったんですよね。
で、千沙が食べるもので、時夫はなんにしようかなあって考えて、どうせならばもう一つコラボしちゃえということでけいさんの代表作「夢叶」から曲をお借りすることにしました。

小さい家庭的な店なんで、こういう人情話は結構合いますね。
ちょうどいい舞台があってよかった(笑)

コメントありがとうございました。
2017.02.28 22:39 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

88888、全然チェックもしていなかったのですが、アブナいったらありゃしない、あと二日後だったら何かやらなきゃいけないところでした(笑)今回は華麗にスルーということで、次は、10万かな〜。ずっと先だ(ニコニコ)

このエピソードは、ハートフル満載のけいさんのところのキャラとのコラボですから、心持ちいつもよりハートフルになっています。西城&ハッシーはただの酔っぱらいだし、源蔵はつけ払えないし、涼子はこじんまりと経営しているので、よく見るとなんですが、基本的にこのシリーズは、あまりひどいことは起こらない……と思いたい。

しかし、次のお返しは、TOM-Fさんになんだけれど、ハートフルの対極をいくような(あわあわ)

コメントありがとうございました。

2017.02.28 22:45 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

そうです。涼子が「葦埜御堂さん」と呼びかけて現に微笑んでいますからね。
けいさんのところのシェアハウスのオーナーで他のシリーズでもこの苗字を持つ一族が、いろいろと出てきます。

で、西城&ハッシー&源蔵はうちのレギュラーなので、名前は変えられないんですよね。

スクランプシャスは、けいさんの代表作「夢叶」の主人公がボーカルやっているバンドですね。
うちで言う「Artistas callejeros」みたいに、コラボするとしたらたいていこのバンドじゃないかなあ。
オリキャラのオフ会にもバンドメンバーがいらしていましたよね。

退院したばかりで何かするとしたら、外に買い物などはいけないでしょうし、自分の慣れている好きなことで、さらにリハビリも兼ねてかなあ、なんて思いました。

私の知り合い、一人は亡くなってしまいましたが、同時期にやはり癌になった別の友人は寛解して、いまは全く問題なく普通の生活をしています。時夫もそうなるといいなあなんて思っています。

そして私はビールが嫌いなのでほとんど飲みませんが、選べるとしたらヱビスだけはなんとか飲めるんですよ。
関西では、あまり見ないかなあ。あ、でも、いまは全国どこでも飲めますかね?

けいさん、本当に大変そうですよね。
でも、復旧中ということは、もしかしたら救い出せるのかも。
お仕事のデータも大事ですけれど、作品は世界中でそこにしかないですからね。
(データ喪失→大金で復旧・経験者)
救い出せることを祈りましょう!

コメントありがとうございました。
2017.02.28 22:56 | URL | #9yMhI49k [edit]

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