FC2ブログ

scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】郷愁の丘(11)君に起こる奇跡 - 2 -

「郷愁の丘」の続き、四回に分けた「君に起こる奇跡」の二回目です。

グレッグに引き合わせてくれようとしていた大富豪マッテオ・ダンジェロがジョルジアの兄だということを初めて知ったレイチェルとグレッグ。一方、マッテオも溺愛している妹がいつもとまったく違った態度をグレッグに示していることを見てとり興味を持ったようです。ジョルジアはマッテオにも何も話していませんでしたから。

横文字の名前を覚えるのが苦手という方のために、ここでもう一度解説しておきますが、ジェームス・スコット博士は、グレッグの父親(グレッグが十歳の時に離婚)でレイチェル・ムーア博士の恋人です。マディというのは、二人の間の娘で、グレッグの腹ちがいの妹です。そして、お忘れかもしれませんが、アマンダというのはジョルジアがグレッグとの仲を密かに疑っていたキクユ族の手伝いの少女ですね。

そして、最後に登場する人は……前作をお読みの方なら予想がつくかもしれませんね。すみません、わざとじゃないですけれど、今週はここでお預けです。


郷愁の丘「郷愁の丘」を読む
あらすじと登場人物




郷愁の丘(11)君に起こる奇跡 - 2 -

 バーの方に二人が歩いていって、声が届かなくなるのを確認すると、マッテオはレイチェルの方に向き直って微笑んだ。
「レイチェル。どうして今まで教えてくれなかったんだい?」

「何を?」
「君が、ジョルジアのボーイフレンドを紹介してくれるってことをだよ」

「ねえ、マッテオ。私はジョルジアがあなたの妹だって本当に知らなかったのよ」
「ああ、そうか。彼女は君にも黙っていたんだね。彼は、ジェームスの息子だって言ったね」
「ええ」

「ジェームスから一度も息子が同じ畑にいるとは聞いたことがなかったので、今回の依頼メールを読んだ時にはずいぶん驚いたんだぜ」

「わかっているわ。実を言うと、今回の依頼も私が個人的にヘンリーに奨めたの。正直言って、ジェームスと彼は、あまり交流がないのよ。ケンカしているわけじゃないんだけれど、ヘンリーは人付き合いがあまり上手な方じゃないし。ジェームスも、彼のお母さんとひどく憎み合っていたので、離婚以来息子である彼ともずっと連絡を絶っていて、他人みたいな人間関係しか築いてこられなかったの。それもあって、いまさら自分から歩み寄りにくいみたい。でも、ジェームスとの親子関係の事情は別として、ヘンリーの研究は地味だけれど大きな意義があるの。こういう基礎研究はすぐに何かが返ってくるわけではないので皆なかなかスポンサーになってくれないの。彼は、自分から人脈を形成していくタイプではないし放っておいたら研究に生活費までつぎ込んで飢え死にしてしまうんじゃないかって心配だわ」

 マッテオはため息をついた。
「彼には、生活面で心配してくれるような人はいないのか。家事もなにもかも一人でやっているのか?」
「いいえ。簡単なことは出来るけれど、掃除・洗濯や簡単な炊事は、キクユ族の娘が通ってやっているわ。そういう使用人を雇うのは、ケニアではものすごく裕福でなくても普通のことなの」

「その娘っていうのは、もしかして……。その、詮索して悪いけれど……」
「いいえ。わかるわ。大切な妹さんが関係しているからよけい氣になるんでしょう? その心配はないと思うわ。あなたも見ていてわかったと思うけれど、彼はジョルジアに夢中なの。残念ながら友達の枠は超えられていないみたいだけれど」

 それから声を顰めて言った。
「そのアマンダという娘はね。実のところヘンリーの妻の座を狙っているの。でも、彼のことが好きなんじゃなくて、単に白人の奥様になって、使用人にいろいろとやらせて、好きなものを買ってもらう生活をしたいだけなのよ。本当に計算高い娘なのよ。ヘンリーもそれはわかっているわ。一度引っかからないようにしなさいって忠告したら、笑って言っていたもの、彼女には村に恋人がいてベタベタしているのを見たことがあるって」

「そうか。そういうことなら、僕が彼の立場でも警戒するだろうな。出来心でも手を出すような真似はしないか」

「彼は、不器用すぎてため息がでるくらいなの。とても純粋なんだと思うし、悪いことだとは思わないけれど、このままじゃ永久に独り者だとマディもヤキモキしているわ。あなたの大切な妹のお相手としては物足りないと思うけれど、私たちは二人が上手くいったらいいのにって思っているわ」

「僕は彼女の交友関係を邪魔したりするつもりはないんだ。彼女ももうティーンエイジャーじゃないからね。いま彼女がつき合っている友人たちは、数は少ないけれど信用できる人ばかりだ。彼女の人を見る目については僕は全く心配していないよ。それに、君と彼女の両方が援助するに値するというなら、もちろん彼の研究だって応援するとも。成果が百年後にでることだって構いやしないさ。明日大金が転がり込むかどうかで援助を決定するのは、篤志とは言えないからね」

 彼は、グレッグが一人でこちらに戻ってくるのを見ながら、レイチェルに訊いた。
「ところで、なぜジョルジアは彼をグレッグと呼ぶんだい?」
「さあ、わからないわ。彼のミドルネームは、ジェームスの父親グレゴリーからもらったのだと思うわ。でも、彼は、たいていヘンリー・スコットとだけ名乗るし、私の知る限り、ジェームスを含めてみな彼をヘンリーと呼んでいるわよ」

 戻ってきたグレッグに、マッテオは訊いた。
「ジョルジアは?」

 グレッグは説明した。二人が、バーに着いたとき、ジョルジアのバッグからメッセージの着信音が響いたのだ。ベンジャミン・ハドソンからで資料のありかを電話で説明するために彼女は会場の外に出た。

「会社と連絡を取らなくてはならないそうで、電話をしてから来るそうです」
「そうでしたか。今、レイチェルとあなたへの援助の事を話していたのですがね。……と、あれ。あそこにいるのは……」

関連記事 (Category: 小説・郷愁の丘)
  0 trackback
Category : 小説・郷愁の丘
Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
更新、お疲れさまでした。

マッテオ兄ちゃん、ジョルジアを溺愛しているみたいですけど、さすがに交友関係にまでは口出しはしないんですね。「お前にお似合いの相手は……」なんて言い出したら、影響力と破壊力がすごそうですからね。
おまけに、グレッグ本人が不在でも、資金援助の話がどんどん進んでいるし。
なかなかいい流れじゃないですか。これで、本人たちの問題を除けば、周囲はオッケーということですよね。安心しました。

と思っていたら、なにやら最後に誰かさんが登場して、怪しい雲行きになりそうな気配が……。
というか、面白くなりそうなので、ひと悶着に期待します(笑)
2017.11.15 11:51 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
やっぱりマッテオですね。
ちゃんと見ていて適切に判断しているじゃないですか。やっぱり持って生まれたものがあるんでしょうね。羨ましいです。
ジョルジアの人を見る目にもちゃんと気づいていて、それに基づいてグレッグもちゃんと評価できているみたいだし、アマンダの件も合格みたいですね。
でもアマンダにはそんな魂胆があったんだ。生きていくためには愛情よりも・・・なんですね。そもそも結婚というものへの価値観が全く違うんだ。文化の違いというものなんでしょうか、驚きです。
そして、グレッグの研究に対してもきちんとした判断をしているみたいですから、こっちもOKですね。
マッテオはやっぱり無駄な投資はしませんよ。グレッグの研究は地味ですが寄付は無駄にはなりませんよ。いろんな意味で。
マッテオがグレッグの名前に突っ込んでいますが、これって何かの伏線かな?

あれ?ジョルジアが会場から一時退出しましたね。
そして、あそこにいるのは?
例のあの人に決まっていますよね?
これはまた楽しく、というか心配になってきましたよ。
2017.11.15 11:57 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
アマンダ……もし彼女がこの場にいたら……なんて想像しました。
いろいろ引っ掻き回してくれそうです。笑(ありえませんけれど…)

そして援助の話はなんだかすんなり通りそうな雰囲気ですが……
いや、ひょっとして次回の登場人物が絡んでくるのでしょうか?

僕には分からない人物ですので、楽しみにしております^^
2017.11.15 13:36 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

まあ、ジョルジアがティーンエイジャーだったら、また少し違うでしょうが、もう30歳はとっくに過ぎていますからねぇ。
もう一人の妹アレッサンドラはバツ2で三度目の結婚したばかりですし、妹の相手にいちいち干渉していたら身がもたないかも(笑)

ただ、これは裏設定ですが、ジョルジアにトラウマを負わせたジョンがニューヨークにいられなくなったのは、マッテオが絡んでいます。別にマフィアを雇ったわけじゃないですが。あ、マッテオ、イタリア系だ。雇ってないってば……。

資金援助は、はっきり言ってマッテオには税金対策の慈善でしかないので、相手のことを余程嫌いでない限り問題ないはずです。
ましてや今回はジョルジアの「お願い」がついていますから、断るはずがありません。グレッグはそんなことは知りませんが。

で、ノーテンキなマッテオの方はまったく問題ないのですが、ええ、あの方が「偶然」(白々しい作者だ)パーティにいたんですよ。
そして、マッテオどころではない影響が(笑)

え〜と、一悶着起こせるくらい肚が据わっていればいいんですが、なんせ一番最初に吹き飛ばされるキャラとラスボスくらいの風格の差がありますのでね。
ははははは。

コメントありがとうございました。
2017.11.15 20:27 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

マッテオは経営者で、人の上に立つ事に慣れているので、身内が可愛いといってもやはり俯瞰して客観的に物事を眺める事はできているみたいですね。
ジョルジアや、それにアレッサンドラに対しても、選ぶ男性について余計なことを言って邪魔をするというような事はありません。
アレッサンドラの二回の離婚には相談にのって適切なアドバイスをしていますし、それにジョルジアを苦しめたジョンのことは許しませんでしたが、グレッグのことを「こんな貧乏な窓際研究者はダメ」なんてことは言いませんね。反対に、「ジョルジアが喜ぶならもちろん援助!」みたいな感じで(笑)

アマンダは、グレッグのことを半分バカにしていて、恋人と二人でグレッグを金づるにして楽しようと思っているようです。ちょろいと思っていたのにジョルジアが突然現れたのでムッとしていたみたいです。まあ、でも、この人はもう出て来ませんので(笑)

> マッテオがグレッグの名前に突っ込んでいますが、これって何かの伏線かな?

いまのところ、特に重要な伏線ではないです。サキさんのツッコミでさらに続編になってしまった、今書いている作品で少しだけこの呼び方の話が出て来ます。その伏線といえば伏線かな。ま、ここはどうでもいいので、お氣になさらずに。

そしてジョルジアがこの場にいないまさにこの時に、「あそこにいるのは」が出て来たのは偶然ではありません。
あの方は、ええ、例のあの方です。
来週をお楽しみに。ははははは。

コメントありがとうございました。
2017.11.15 20:42 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

アマンダ、この場にいたら、速攻でマッテオに鞍替えすると思います(笑)

援助の話は、この流れなら問題なさそうですよね。
なのに、次回の誰かさんの行動が、少しピンチを思わせることに。

次回登場する方は、ゲストキャラです。
前作もそうだったのですが、あちらのお話にご迷惑がかからないように登場させるという縛りがあるので、多少肩すかしな登場の仕方になると思います。(そもそも登場っていうのか、あれ……)

来週をどうぞお楽しみに

コメントありがとうございました。
2017.11.15 20:46 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
ま。
どう生きるかは自由ですね。
結婚しないも自由。
結婚するのは・・・相手がいるから自由とはいかないな。
(;一_一)

タイミングがありますからね。
ある年齢で結審は必要ですよね。
結婚するのかしないのか。。。
それによって、今後の生活が変わりますからね。。。
真面目な話。
2017.11.16 11:38 | URL | #- [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

おっしゃる通り。
結婚するのもしないのも自由です。
といっても、結婚は相手あってのことですから「する」と決めても簡単に話が進まないこともありますよね。
タイミングと出会いが重要でしょうね。

結婚そのものは、いくつになってもできますけれど
そのあと家を持ちたいとか、子供が欲しいなどの計画がある場合は
あまり遅くに始めると大変でしょうね。

少なくともこの小説の二人は、まだ全然そんな段階ではありませんが(笑)

コメントありがとうございました。

2017.11.16 20:07 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
勘違いしてました、「君に起こる奇跡」の章が今年で最後って意味だったんですね、
てっきり前回だけで終わりかと思って実は残念に思っていたので、続きが見れて嬉しいです。

それにしても、マッテオお兄ちゃんかっこよすぎる!
税金対策とのことですが、やっぱり言葉の端々にお人柄が滲み出ているようです。
前回のコメントのお言葉通り、今回はマッテオのお話でしたね。
前回は三段活用でジョルジアをべた褒めしていたお兄ちゃんですが、
こうやって引いた目線でジョルジアを案じる面もあって、
うんうん、本当に素敵なお方だって思いました。
それに、そことなくグレッグとジョルジアの関係にも勘付いているみたいですね、
レイチェルのグレッグに対する言葉も、端的に彼の人となりを言い表しているようで、
彼をよく見てるな〜って思いました。
そうしてお兄ちゃんは、利害関係は度外視して、グレッグの研究に対する自然な
尊敬の念が感じられるのが素晴らしいです。
あ、それから、アマンダ!
手抜き仕事だけじゃなしに(文化の違いなどはあるにせよ)そっち方面でも
抜け目ないとは! そういう面では、グレッグがしっかりしていて安心しました。

って、最後の最後に登場するお方は……
えぇぇぇぇ……こ、これって……
もしわたしの予想通りだとすると……
グレッグ、絶体絶命!?(?)
だ、大丈夫!?(いろんな意味で)
2017.11.20 13:02 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

いやいや、私の書き方が紛らわしかったので、すみません!
それに、この章で今年終わりと言っても、実は外伝もあるので……。

マッテオはですね。妹大好きと言っても、健康的な「妹ラブ」なんです。
ありがちなシスコンとかマザコンとかは、少々歪んでいるアブナイ愛情がデフォルトだと思うんですが、この人は妹に恋愛感情があるわけではなく(あたりまえ?)だから普通の兄的な距離感でみているんですね。
そして、この精神的に健康というのが重要で、対するジョルジアは(そしてグレッグも多分に)健全というわけではなくて少し危うい感じなんです。だから兄ちゃんは心配しているわけで、「また傷つけたりする奴じゃないか」だけはチェックしているんですね。

同様にレイチェルも健全派なんです。
彼女は父親の恋人という立場ですけれど、グレッグにとっては恩師にもあたり、いろいろと面倒を見ています。
で、娘のマディと一緒になって「ぐわあ、こんなに不器用な奴は、ほっておけない!」と思っているわけです。

アマンダの件は、ええとですね、色々と事情があるというか、ジョルジアと再会する前の話ですが、あまり迫ってくるので、「どうせ独り者だしそんなに結婚したいなら」と、ちょっと考えたこともあるのですけれど、彼氏がいて自分にはまったく愛情を持ってくれそうにもないことに苦しむようになるだろうな、と判断して考え直した、という裏設定があるんですよ。あまり関係ないし長くなるんで書きませんでしたが。

なんて話は、どうでもいいのですが、最後に登場した方は、そうなんですよ、例のあの方です。
もちろんグレッグは、ウルトラ涙目ですとも(笑)
全然、大丈夫ではありません。
水曜日にご期待くださいませ。(何を)

コメントありがとうございました。
2017.11.20 23:04 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
ああ、そうか。ジェームスとレイチェルってそう言う関係だったんだ><(お父さんの事忘れてた)
そうですよね、最初からこのパーティに来る予定だったのはグレッグで、そこについて来たのがジョルジアで……。
どっちにしてもグレッグとマッテオは出会う予定だったんだあ。
すごい偶然だと思ったけど、いろいろ考えてみると、出会う確率の高いメンバーだったのですよね。
(意外なのはジョルジアとグレッグがこうなっちゃったことで)
そしてラストで登場しかけた人物とは。
もしかして彼?
なんだかわくわくしますね^^
2017.11.22 04:05 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

そうなんですよ。私はわかっているけれど、絶対にこの関係性はわかんなくなるよなと思って、リードに書いてみました。
レイチェルとグレッグの関係性は、日本だとほとんど「ありえない」だと思いますが、離婚後に我が子との関係が途切れることの方がおかしいとされる欧米では、むしろジェームスとグレッグの関係の方が異常で、おせっかいのレイチェルとマディ母娘が橋渡しをしているという妙な状態です。

そして、そもそもこのニューヨーク学会にきたメインの理由は、「レイチェルがマッテオにグレッグを紹介する」でしたから、もともと二人が会う予定だったのです。
もっともジョルジアの出現で、話がちょっと複雑になっていますが、最終的には結果は同じだったということで(笑)

そして、登場したお方は、そうです、あの方です。

あっちのコメントに続けますね。

コメントありがとうございました。
2017.11.22 22:45 | URL | #9yMhI49k [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:https://yaotomeyu.blog.fc2.com/tb.php/1490-2fdd5375