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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】夜のサーカスと漆黒の地底宮殿

scriviamo!


「scriviamo! 2018」の第二弾です。山西 左紀さんは、今年もプランBでご参加くださいました。プランBは、まず先に私が書き、それに対して参加者のブロガーさんが創作作品や記事などを書いてくださる参加方法です。

山西左紀さんは、SFを得意としていらっしゃる創作ブロガーさんで、こだわった描写にはいつも唸らされています。お付き合いのもっとも長いブログのお友だちの一人で、このscriviamo!も皆勤してくださっています。

既に多くの作品でコラボさせていただいていますが、もっとも多いのが、「夜のサーカス」のキャラクターの一人であるアントネッラと、そのブログ友達になっていただいたサキさんの「物書きエスの気まぐれプロット」のエスというキャラクターとの競演です。

で、お任せということですので、去年の「ファンタジー企画で七転八倒しているアントネッラの話」の続きを書かせていただきました。まあ、相変わらずアントネッラの作中作はやけっぱちですが、お許しください(笑)


【追記】
サキさんがお返し作品を書いてくださいました! エスと友人コハクの話も、苦手とおっしゃりつつとても面白いファンタジーも二重に楽しめる作品になっています。
夜のサーカスと漆黒の地底宮殿


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あらすじと登場人物

「夜のサーカス」外伝


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夜のサーカスと漆黒の地底宮殿
——Special thanks to Yamanishi Saki-san



 磨かれた黒い大理石は、よく目を凝らすと細かい銀の粒で満ちていた。それはまるで永遠へと続く星空のようで、見つめ続ければ吸い込まれ二度とは戻れないのではないかと思わせる。

 ロジェスティラは、可能な限り音を立てないようにゆっくりと歩いたが、それはほとんど不可能だった。彼女の鋼の甲冑は無粋な音を立てた。これではモルガントに見つかるのは時間の問題だ。

「そのような物々しい為りで現れるとはな。お前が《天翔けるロジェスティラ》か」

 ギョッとして振り向くと、いつの間にかそこには小柄な少女が立っていた。流れるような長い金髪、輝く黄金の瞳、白い襞の多いローブ、穢れなく無邪氣な様子をしているが、この口調からすると万物への愛に満ちているとは考え難かった。

「そうよ。あなたは何者なの」
「妾か。何とでも呼ぶがよい。かつてこの地で妾を崇めていた人の子は《冬に暖める母》とも《焼き尽くす者》とも呼んだがな」

 それではここにいるのは火を吹く山の女神、ヘロサなのか! ロジェスティラは身震いした。かの天空のヘロス大聖殿で起こった突然の炎柱が皇孫オルヴィエートのローブに火を点けた時、彼女は皇孫将軍が信じていたほどの高潔な精神の持ち主でない事を知った。彼女が《光の子たち》の騎士としての役割に初めて疑問を持ったのはあの時だった。

「あなたは、モルガントに協力しているのですね、《炎の女神》よ」
わずかに膝をついて敬意を示すロジェスティラを見つめて、少女は甲高く笑った。

「協力だと、妾が? 《天翔けるロジェスティラ》よ。お前は、稀有の戦士で運にも恵まれている。だが、救いようもないほど愚かだ。まずはあの愚鈍な白いサルに忠誠を誓い、我が聖なる神殿を血で穢したかと思えば、今度はあの田舎者に懸想してこの地底宮殿まで追ってくる。お前は一体何がしたいのだ」

 ロジェスティラは、びくっと肩を震わせた。それは、彼女自身が知りたい事だった。



「なんだかどんどん混沌の極みに陥っているような氣がするわ」
アントネッラはため息をつくと、エスプレッソをこくんと飲み干した。もういい加減にコーヒーの休憩はやめなくてはならない。いくら話が行き詰まっているからと言って。

「まさかあのエセファンタジーの続きを書かなくちゃいけないことになるなんてねぇ」

 小説を書くブログを運営している仲間たちでファンタジー作品を書き、その中で二作品を選んで仲間の意見を取り入れた上で完成させる企画だった。アントネッラはやけっぱちでメチャクチャな作品の書き出しを提出した。ファンタジーは書いたことがないどころか、まともに読んだこともなかったのだ。

 そもそも一度作品が消えてしまった時点でギブアップしようと思っていたぐらいなのだ。ところが、その作品の一つ前のバージョンを読んで意見をもらっていたエスが保存しておいてくれたおかげで、少なくともギブアップだけは免れた。つまり体裁だけ整えて提出すればすぐにこの話から逃れられると思っていた。

 器用になんでも書くエスの『クリステラと暗黒の石』が満場一致で選ばれたのは当然だと思ったが、驚いたことに自分の『天空の大聖殿』までが選ばれてしまった。どうやら仲間たちは、エスの作品のように独創的できちんと考えられている作品を二つ選ぶと、どちらにも口を出しづらいが、こんな稚拙なファンタジーになら何を言っても大丈夫だと思ったらしい。

 実際に、仲間たちがワイワイと意見を言ってきて大幅な改稿を繰り返すうちに、当初のコンセプトはもはやどこかに吹っ飛んでしまった。

 正統派ヒーローのはずだった皇孫オルヴィエートは、仲間の人氣が著しく低く二章目であっけなく醜態を晒して退場した。エスの強い勧めで新たなヒーローの座に着いたのはヒロインの幼馴染、悪の象徴からレジスタンス組織に変わってしまった《闇の子たち》の首領モルガントだ。

 アントネッラは、かつてとある地方巡業サーカスの団員たちと知り合いになり、彼らの物語を小説にしようとしていたが、警察も巻き込む大きな事件と上流階級のスキャンダルに関わってしまい、その小説を闇に葬らなくなってしまったことがある。せっかくの個性的なメンバーのことを世に出せなくなったのが残念で、今回の小説では既に二人の容姿を借りてロジェスティラとモルガントを設定している。

「エスは、どうせマッダレーナやヨナタンをモデルにしたキャラクターを主役にするならステラがモデルの可憐な妖精みたいなのも出せって言うんだけれど、あの容姿で妖精にしてもそのまますぎておもしろくないし。もっとも、この活火山の擬人化みたいなキャラにしてみたけれど、これはこれでどうなのかしらね。ま、いいか。あとは光と闇の調停をする大神官としてブルーノ、最高神の化身としてあの胡散臭い団長でも配置しておこう。そこまでセオリーから外したら、きっとみんなも呆れてこれ以上この話に興味を持たなくなるだろうし」

 書けば書くほど、どんどんおかしな設定になって行くが、奇妙なことにアントネッラはこの話が以前ほど嫌いではなくなっていた。ファンタジー専門で書いていこうとは思わないけれど、きっと完結したらこの話のことが誇らしくなるだろうと感じていた。おそらくファンタジーとしてはメチャクチャになるだろうけれど。

「そういえば『クリステラと暗黒の石』の方は、どうなったんだろう」
コーヒーを飲む以外に、行き詰まった小説から逃れる理由を思い出したアントネッラは、ニコニコして古風なブラウン管式ディスプレイ画面に向かった。

「現在改訂版の執筆中……か。『ドラゴンの結石が大量に必要なら、イラつくキャラでも派遣してドラゴンにストレスをかけてやれ』って冗談で書き込んだのは、まずかったかなあ。怒ってブロックされているんじゃないといいけれど」

 エスの改訂版を読むことができなかったので、本当に自分の作品に向かうしかやることがなかった。それに時間もそれほど残っていない。

 アントネッラはブラウザを閉じると、ロジェスティラとヘロサの緊迫した対決の場面の書かれたテキストを開いて大人しくキーボードを叩き始めた。暗黒宮殿のシーンにはまったくふさわしくない、ダフネの甘い香りが漂っていた。北イタリアが少しずつ春めいてきたことを彼女は知った。

(初出:2018年1月 書き下ろし)
関連記事 (Category: scriviamo! 2018)
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Category : scriviamo! 2018
Tag : 小説 読み切り小説 コラボ

Comment

says...
え~!!!!!
これはえらいことですよ!
ロジェスティラが再登場してる!
しかもヘロサって明らかにステラ!?
皇孫オルヴィエートが白い猿ですって?
田舎者ってまさか・・・?
ちょっと展開が追えませんよ。
でも、複雑な人間関係を思わせるワクワクする展開になっているのが悔しい。
エスめ!いらんことを焚きつけやがって!

あのエスのエセファンタジーが満場一致で選ばれたことになっていたり、もう無茶苦茶ですよ。
「『クリステラと暗黒の石』の方は、どうなったんだろう」なんて呑気なことを・・・。
イラつくキャラでも派遣してドラゴンにストレスをかけてやれ・・・ですって?
油断していたら夕さんから1年越しの逆襲を受けてしまいました~。
どうしよう。

北イタリアは春の気配ですか。
サキのところは猛吹雪になってしまいました。
2018.01.08 11:26 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
うふふ。
本当は昨年お返ししたかったんですけれど、余裕がなかったので。
で、こちらはまたしても続きを書くつもりは皆無の書きっぱなし(笑)
でも、「夜のサーカス」のメンバーを思い浮かべつつ読むとあまりのくだらなさに脱力できるかなと思って。
せっかくエスがいろいろと提案してくださったので、遊んでみました。

それに『クリステラと暗黒の石』もとても面白いお話で、あの後エスも忙しくて忘れられているみたいなので掘り起こしてみました。
こちらもブログ仲間の期待が集まっているから書かないわけにいきませんよね!

こちらはエレノアの影響か雪ばかりだったのが、ここ数日のフェーンで全部溶けていっています。
といっても、まだ春には程遠いですかね。
サキさんも猛吹雪ならお家でこたつみかんでもしてゆっくりしてくださいね。

サキさんの作品、楽しみにしていますね。
ご参加ありがとうございます!
2018.01.08 16:05 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
執筆、お疲れ様でした。

これ、面白いですね。
いや、ファンタジーと本編の内容も面白いですけど、一年越しで、しかもメタな設定が現実と絶妙にシンクロしていて、どこまでが作品でどこからが現実なのかという曖昧さが、ほんとうに面白い。
これぞscriviamo!という感じで、ほんとうに楽しいです。

アントネッラのキャスティングも、なんとも微妙で。はずしているようで、案外、適材適所だったりして。
まずは山西サキさんの「お返し」作品が楽しみですけど、来年もぜひ続けていただいて、二つの作品を完結させてください(笑)
2018.01.08 16:44 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

そうそう。そうなんですよ。
エスとアントネッラが出てくると、半分は私とサキさんのお遊びみたいになっちゃうあたり(笑)
そして、こうやって書けば、サキさんもあの続きを書かざるを得ないことに。
プランBの強みです。こっちが先行なのでやりたい放題ですね。

アントネッラはもうすっかりやけっぱちになっていますから、真面目に書いていません。
その分、去年書いていたような「ありがち」ファンタジーからちぐはぐな「メチャクチャ」ファンタジーになったのでかえって愛着が出たらしいです。なんだそりゃ。

そして、来年もって……。これよりもさらにメチャクチャですか(笑)
もはや崩壊寸前ですけれど。

コメントありがとうございました。
2018.01.08 18:39 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
ファンタジーが得意ではないと言いつつ、自分の世界を広げるがごとくチャレンジするアントネッラと、夕さんが重なって見えます^^。
私こそファンタジーは全く書けないんですが、夕さんにはもはや不可能分野はないですよね。
SFとファンタジーを機用に操るサキさんと、ちゃんと通じ合って作品を交換されてるんですから。

でも、苦手意識を捨てて書いて行くうちに、その世界観が身に付くというのはあるかもしれませんよね。
そう言う意味でもこの企画は本当にすごく創作の鍛錬になる場だと思います。(え、絶対私は手を出せませんが><)

今まで私がのめり込んだファンタジーは小野不由美だけだったんですが、昨年読んだ歴史ファンタジーには、本当に圧倒されました。
あんなに素晴らしい作家がいるならファンタジー界は安泰だ、なんて勝手に思ったり(笑)でも、マイナーな作家さんで、あまり声を聞かなくて……。(なんか間違ってる、書籍界)
あ、すっかり話がずれてしまいましたが、アントネッラとエスとのやり取り、楽しく追わせていただきます^^
2018.01.13 01:26 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こんばんは。

ファンタジーは無理です! これは部分だからそれっぽく見えるだけで、ちゃんと完成するとなったら大変ですよ。
サキさんのエスのシリーズの断片だけちらりと書くやり方、面白くていいなあと思って去年やってみたんですけれど、今年はその続きです。完成するつもりはまるで無し、というかサキさんに丸投げです(笑)

ファンタジーやハードボイルドは無理ですけれど、苦手意識を捨てて頑張ってみて意外と自分でも続いているぞと思っているのは、例の「樋水龍神縁起 東国放浪記」で平安ものなんて、死んでも無理と思っていたのが、いまや「次は何を書こうかな」なんて思うようになってきました。だから少しずつ苦手意識は克服できているのかもしれませんよね。

limeさんが圧倒される歴史ファンタジー。どんなのだろう。
私も時々ものすごくのめり込む作品があるんですけれど、必ずと言っていいほどベストセラーにはならないのですよね。
反対にものすごく話題になったからと、わざわざ送っていただいた作品がいまいちピンとこないこともあります。
素晴らしい作品と売れる作品というのは違うのかもしれませんけれど、素晴らしいものを書く方が報われるといいのになと思いますよね。

さて、完全な自己満足のこちらは、ファンタジーを名乗るのもおこがましい内容ですが、お遊びということでいいということにしてもらいましょう。あとは、サキさんにお任せですし。

コメントありがとうございました。
2018.01.13 21:14 | URL | #9yMhI49k [edit]

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