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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】大道芸人たち 2 (7)ミュンヘン、事務局 -3-

四回に分けた三回目です。特に引っ張るほどの内容でもないんですけれど、たまたま長さの関係で、こうなりました。発表の長さって、毎回悩むところでもあります。私の場合は、短くてもいいので、とにかくまとまったものはコンスタントに出すという「自分ルール」を決めているのでこうなるんですけれど、これって読者には親切なのかなあ、それともウザいのかな。

ただ、この程度の内容で8000字ぐらい一度に読ませて、それから一ヶ月放置「また内容忘れちゃった」にするよりはいいのかなあ。もっと手に汗握る、さらに言うと忘れにくい強烈な内容の小説だと、また違うんでしょうけれど。


「大道芸人たち 第二部」をはじめから読むこのブログではじめからまとめて読む
あらすじと登場人物




大道芸人たち Artistas callejeros 第二部
(7)ミュンヘン、事務局 -3-


「話にもならないわ!」
蝶子がため息をつきながら戻ってきたのは二時間ほど後だった。

「なんの面接だったんでしたっけ?」
レネが蝶子に再びワインを注いでやりながら訊いた。

「家政婦よ。マリアン一人じゃまわらない仕事を分担する人が二人は必要なんだけど、よくわかっている方が結婚してやめる事になったの。もう一人が彼女のやっていた分を引き継ぐには荷が重いので、少ししっかりした人を雇いたいんだけど、今日来たのは普通以下よ」

「どんなことをしてもらいたいんですか? 掃除とか、洗濯とか、料理とか?」
「料理そのものは、料理人がいるからしなくていいの。下準備はしてもらうけれど。掃除や洗濯、それに買い物。掃除と一口に言っても、真鍮はどう磨くとか、この木材はどの溶剤で手入れするとか、ものすごく覚える事があるの。洗濯もしみ取りの方法や特殊な手入れを知らなくちゃいけないし。ある程度ちゃんとしたお屋敷で働いてきた人か、そうでなければものすごく頭の回る人がいいんだけれど、そんな人は、全然こなかったわ」

「ものすごく頭の回る人って、ヤスミンは?」
レネの言葉に、蝶子は目を瞠って答えた。
「そりゃ、理想的だけれど、ヤスミンが家政婦の仕事をしたがったりすると思う?」

「昨日、劇団の仕事と美容師の仕事の両立がきついって言っていたんです。でも、生活のためにはしょうがないってね。アウグスブルグのアパートを払うのが大変なら、ここの僕が使わせてもらっている部屋に越してくればって言ったら、それは理想的だけれど、ただの居候は嫌だし、時間のやりくりのつく仕事をミュンヘンで見つけるのは難しいって。ヤスミン、マリアンとは仲もいいし、時折率先して手伝っていたから、経験なくてもいいなら、やりたがるかもしれませんよ」

 蝶子はヴィルの方を見た。ヴィルは、好きにしろという様に頷いただけだった。
「じゃあ、今晩でも電話して訊いてみるわ。そりゃ、ヤスミンが引き受けてくれたら、これ以上の事はないわね。私たち、安心していろんな事を任せられるし」

「やりたい!」
ヤスミンは即座にそう答えた。
「でも、ヤスミン、家政婦よ? いいの?」
蝶子は戸惑いながら訊いた。

「もちろんよ。花嫁修業になるじゃない。前ね、マリアンと話していて、家事のことをまったくわかっていないってわかったの。暇があったらこちらから頼んででも、マリアンにあれこれ教えてもらいたいと思っていたのよ。それが、お給料をもらえて、アウグスブルグのアパートを引き払えて、美容院の仕事も辞められて、レネが来る時には確実に会えるんでしょ? お願い、シュメッタリング、私を雇って」

「わかったわ。ヴィルにそう伝えるわね。私たち、再来週からしばらくいなくなるけど、都合のいい時に、こっちに移ってきて。引っ越しの請求書はマイヤーホフさん宛にしてもらってね」
「ありがとう、シュメッタリング」

 蝶子は電話を切ってから、電話の前でしばらく黙って佇んでいた。
「どうしたんだよ、お蝶?」
通りかかった稔が声を掛けた。

「なんでもないわ。ヤスミンは柔軟ね」
「何の事だ?」

「わたしね、どこかで仕事を二つに分けていたの。『職業に貴賤なし』って言うけれど、まさにその貴と賤に。私がマリアンの雇い主なのは偶然にすぎないし、大道芸人は本来なら家政婦って職業よりも下かもしれないのにね。その無意識の差別に氣がついちゃって、自分でちょっぴりショックを受けているのよ」

「お前、だんだんトカゲらしくなくなってきたな」
褒めているのか貶しているのかわからない感想を稔がもらしたので、蝶子はにらんだ。

「ヤスミンは、わたしとは全然違う意識を持っていたんだわ。マリアンを家事のエキスパートとして尊敬していたの。私だってマリアンはすごいとは思っていたけれど、自分が習いたいだなんてまるっきり思わないのよね」

「お前はドミトリーの炊事場や洗濯場で、トカゲにしては率先してやってくれるじゃないか。それ以上の家事は必要ないだろ?」
稔はのんびりと言った。

 蝶子はここエッシェンドルフでは家事などをしてはならない。あくまで男爵夫人でいなくてはならない。それは世間的な建前の話だけでなかった。稔がこのことを理解したのは、例の葬儀の後の相続ならびにヴィザの再取得などで四人が一ヶ月近く滞在したときの事だった。
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Category : 小説・大道芸人たち 2
Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
更新、お疲れ様でした。
あらら、面接ダメでしたか。ドイツ貴族のお館ともなると、家政婦さんもいろいろ大変そう。日本の家事代行とはわけがちがう感じですね。
で、ヤスミン採用なんですね。これでレネも実家とエッシェンドルフ館と、二か所の居場所持ちになったんですねぇ。
そうか、エッシェンドルフ家では、蝶子は家事をやっちゃダメなんですか。やらなくてもいい、じゃなくて、やってはいけない、というのはなんかストレスになりそう。蝶子にその気があるかどうかわかりませんが、ヴィルの身の回りの世話をしたくてもできないんですよね? なんかな~。

更新頻度と一回の文字数。
私の場合、読み切りや掌編は違いますが、連載の場合はだいたい3000~4000文字を一話にして、一回で投稿しています。2000文字を二回で、とも考えるのですが、書いては出しの自転車操業ですので、そうもいかず。
八少女夕さんの更新ペースは、安定して更新して下さるので、私としては読みやすいです。
2018.08.01 09:52 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
蝶子が凹むことなんてあまり見れないから、ちょっと貴重なシーンかも……なんて言ったら怒られちゃいますね。
でも、家政婦がいて当たり前の生活だと、感覚が違ってくるのも当たり前ですよね。
旦那さんのお世話をしなくていいなんて……(なんてうらやましいw)←え、(笑)
家政婦というか、家事のエキスパートを雇うと思えばいいんですよね。
ヤスミンみたいな人、本当に尊敬します。
家事検定って言うのがあるらしいんですけど、私はきっと初級も落ちそう。
あ、夕さんはきっと合格です。ぜったいヤスミンタイプだと思う。
2018.08.01 14:36 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こんばんは。

この館の場合は、さらに事情が複雑かもしれませんね。
普通、奥様は常に家にいて「これでは困るの」とびしっと言うじゃないですか。
でも、この奥様、大道芸人の旅にいっちゃうし、そうなると使用人を監視指導するのがマリアンなどの古参の使用人になってしまう。
やりにくいですよね。

ま、蝶子はそんなに家事なんかやりたくないタイプなので、そのことでのストレスはあまりないと思いますが。
ヴィルの世話? 興味があるとは思えない(笑)

ドイツのお貴族様、最近は本人がバリバリ働いている伯爵夫人とか、普通にいるようですが、この話ではこれだけ使用人がいるのでこういう設定にしてあります。

更新の話なんですけれど、私のストーリーの場合、あまり強烈な印象がないので、一ヶ月に一度とか出すと、みなさん前回までのあらすじ憶えていらっしゃらないと思うんですよね。それで、なんとか記憶が保てるだろうと思うギリギリで出すんですけれど、反対に週に一度読まされるのに一万字とかだと「勘弁してよ、こっちも忙しいんだし」と思われるかなと、悩むところです。

読み切りだと一万字くらいまでなら一度か二度くらいで、ぱっと出してしまった方が読む方も落ち着くかなと思ったりもするんですけれど。

連載は、こういう安定したペースで定量ずつともくろむと、やはりできていないのに見切り発車は少し怖いです。というわけで、連載しているうちに最後は埋められるであろうという、「八割完成」くらいまでいってから発表したがるんですが、これをやっているといつまでも「出す出す詐欺」になってしまう。しくしく。 難しいですね。

コメントありがとうございました。
2018.08.01 19:25 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

あはは、そう、あまり凹みませんものね、蝶子。そういえば、私もそういうシーンはこれまでほとんど書いた記憶がないです。

蝶子は家事を自分でしたいというタイプの女性ではないのですが、もともとシモジモの出なので、「あれやれ、これやれ」と命令するのは好きではないです。にもかかわらず、どこかで家政婦や使用人という職業をどこか「私も友達もやらないもの」と感じていたことにショックを受けているみたいです。

もっとも使用人がいようといまいと、蝶子はヴィルのお世話なんてしませんとも(笑)
それにですね。ヴィルはドイツ育ちですので、日本に多い「上げ膳据え膳」タイプの存在が信じられないかも。
なんで日本って、今時、家事を分担しない男があれほど多いんでしょうね。不思議。
ちなみに、我が家のスイス人の連れ合いですが、伝統的日本人男も真っ青になるくらい何もできないし、しないです。
私が諦めてしまったので、生涯使えないままでしょう。
もっとも、私が世話しなくても文句はいわないので、それはマシかな。

limeさんったら、なんて謙遜をなさるんですか!
絶対に家事のエキスパートに違いない。
ちなみに私の家事は「簡単に、いかに省くか」がテーマです。
でも、日本ほど高度な家事能力は要求されないので楽なんですよ。
移住して本当によかったと思います。

コメントありがとうございました。
2018.08.01 19:39 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
まあ、家政婦は家政婦でプロフェッショナルの仕事ではありますからね。
どの仕事にしても専門性はいるし、やりがいもあり。
生計として成り立つ。
それがプロフェッショナルの家政婦ですからね。
片手間ではできないものが多いってわけですよね。
結局のところ。
特に、西欧諸国だと伝統的な建物も多いでしょうから。
修繕や手入れにしても、専門性ややり方があるでしょうから。
覚えるのは大変でしょうね。
やはりどの仕事も大変ってことですね。
ちょっと勉強になりましたじぇ。。。
( 一一)
2018.08.03 09:52 | URL | #- [edit]
says...
自分の家で自分で家政婦していたっていろいろ大変なんですから、お屋敷となると大変さも(なんとなく)わかります。
つながりがプライベートになるので、知り合いのつてという方が安心できる?
意外な近くに人材と縁ってあるものなんですよね。
これでレネの心配もなくなるし、蝶子も安心して家を空けられる…?

ちなみにうちはiRobotルンバがお掃除を手伝ってくれます♪
面接はしなかったけど、性能・価格の比較はした(-_-;)
Amazonエコーのお世話にはまだなっておりません(^^;)
時代は変わるだねえ…(全然ファンタジックじゃない…)
2018.08.03 11:35 | URL | #- [edit]
says...
マイヤーホフはヤスミンのことはかなり好意的に見ていた・・・とありましたから、ベストな選択だと思いますよ。
彼の心象は大事だと思うんですよ。マリアンとは気心が知れているみたいですし。
でもやっぱりヤスミンは決断も行動も早いなぁ。美容師の仕事にももう少し愛着があると思っていましたが、レネとの生活を優先したのでしょうか。花嫁修業なんていっていますし。
劇団はアウグスブルグでしたよね、ミュンヘンに住んでしまって劇団の仕事に対応できるんでしょうか?通勤範囲内?ヤスミンファンのサキは余計な心配をしています。

確かに家政婦という職業に偏見ってあるかもしれないですね。でも最近はホテルのドアマンやベルボーイなどの職業も高度な専門職として見られるようになってきていますから、家政婦だってその範疇に入るのかも、と思いました。
介護士なんかもそこに入るようになってくるといいんですけれどね

すっかりトカゲらしさが抜けてきた蝶子、稔もそろそろ彼女をトカゲと呼ぶのを卒業しなければいけませんね。
2018.08.03 13:31 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

今では、プロのサービスがリーズナブルな値段で提供されているので、何もかも家庭で完結ということはなくなりましたが、かつては、ほとんどのことを自宅でやっていたんですよね。例えば、おせち料理などは、今では自分で何もしなくても購入することができますが、かつては皆自宅で作っていたというように。

スイスでもほんの百年くらい前は、豚を屠殺してラードからソーセージづくりまで全部自宅でやっていたそうですが、当時はただの家事だったことが今では専門職になってしまっているのですよね。

大きいお屋敷などでは、掃除一つとってもシモジモの私が普段やっているのとは違う決まりがたくさんあって、そういうことを仕事から学べるのは貴重な経験だろうなあと思います。学生時代にいくつかのバイトをした経験から、この発想が出てきました。

本当にどの仕事も大変ですよね。

コメントありがとうございました。
2018.08.03 21:53 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

私は家事はいかに省略すべきか、みたいなことばかり考える人なので、ごく一般の家庭の「ちゃんとした家事」ですら、ものすごくハードルが高く尊敬するのですが、それが由緒あるお屋敷ともなると、きっとものすごく大変(だと思う……)ですよね。

誰かを雇うのって、どんな場合でも少しリスクがあって、やはりどんな人か知っているとそれだけで安心感が全く違うと思うんです。
ヤスミンが、エッシェンドルフの館にいることで、レネはもちろんですが、他の三人にとっても行きやすくなるというか、少なくとも使用人の一人は彼らの味方だというのは、居心地いいと思います。

それにヤスミンは、ヨーゼフたちとも結構上手くやると思います(笑)

そうそう。けいさんのお家はルンバくんが働いてくれるんですよね。
どうですか? あれは、床に何も落っこちていないもともと片付いたお家でしか使えないんだろうなあと
遠い目をしております。

もっとかたづけよう。

コメントありがとうございました。
2018.08.03 22:52 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

ヤスミンは「ちゃんとしたドイツ人」とヨーゼフにも認められているので、けっこう上手くいくと思います。
マリアンともすっかり仲良しみたいですし。

彼女は美容師の仕事にはそんなに未練がないようです。どちらかというと生活のためだけに続けてきた、という感じがあり、生活のレベルが上がりつつ、今よりも劇団の方に力を入れられるのは渡りに船。もっともエッシェンドルフの仕事にも特に思い入れはないでしょうから、次の機会にはあっさり辞めちゃいますけれど。

アウグスブルグとミュンヘンはそれほど遠くありません。
子供の頃のヴィルが通っていたくらいですから、特に問題はないと思います。

普通のお手伝いさんよりも、ちゃんとしたお屋敷で家政の仕事をしていたとなると、そこら辺の事務職よりもずっとちゃんとした専門職として認められるはずです。日本よりもそういうところはシステマテックかもしれませんね。

稔はあいかわらず「トカゲ」扱いしていますよね。これ、ずっと直りませんよ(笑)

コメントありがとうございました。
2018.08.03 23:01 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
なんか家政婦談義に花が咲いていて面白い。私のイメージでは、西洋諸国(あるいは日本でも古い時代のお金持ち、お殿様とか?)の家政婦さんとかお屋敷勤めの人って、ものすごいプロでなければ勤まらないという感じです。ここに夕さんも書かれているように、何か一つ動かすとか修繕するとかっていっても、簡単そうではないし。しかも、そもそもお屋敷の旦那様や奥様は「そんなことしちゃいけない」んですよね。これはプロの仕事であって、そこに手を出しちゃいけない、落としたフォークを拾うのはご主人様の仕事ではないってことなんですよね。まさに蝶子の言うように、職業に貴賤なしでそこはお互い不可侵であるべきって事なのかなぁと思いました。
うちの竹流などは、何でも興味津々の子どもだったので、家政婦さんの処に行っては何か手伝おうとして「ぼっちゃまのなさることではありません!」って怒られ続けていました(そし家出して船に乗って、前からやってみたかった料理に目覚めたって話も)。おかしいなぁ、ヴィルと違って、お育ちもいいとこだったのに、築地でねことか拾ってるし(だから、それはチガウ人)。
日本人ってそういう意味では、職業に対する線引きが割と曖昧なのかなぁと思っていましたけれど、それでも尊い仕事とそうでない仕事をつい分け隔てしているかも知れないって蝶子の言葉は重いなぁと思いました。まぁでも、日本で一番すごいと思われているのは「手に職」かもなぁ。いわゆる職人。

そんなこんなは置いといて。
ヤスミンの柔軟さには私もちょっと感動しました。というのか、自分がこうしたいという中心がはっきりしているのですね。それ以外のことは、不要なら切り捨てる、なんとかしなくちゃならないことはなんとかする。そういうメリハリがはっきりしてるんだろうな。レネにはこういう割り切りのいい女性が似合っているなぁと思いました。蝶子はトカゲ女だけれど? 意外にぐるぐるもする女性だし。
稔の「お前だんだんトカゲらしくなくなってきた」に思わず笑っちゃいました。トカゲの中身についても議論したくなっちゃうけれど、稔の視点がなんとも面白くて。その上、トカゲにしては率先してやってくれてた、って^^; トカゲが聞いたら、トカゲだって色々あるんだよって怒られそう^^;
でもこうして、みんなが集まっていく、大きなカンパニーみたいになってきましたね。それこそ、ヴィルの思うところなのかしら。
引き続き楽しみにしています。
2018.08.04 06:39 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんにちは。

そうなんですよ。もちろん、私が体験してそういうことを知っているというわけではないのですけれど、どうやらそういう感じみたいです。
使用人にもいろいろあって、ホテルみたいに細分化している大きなお屋敷はともかく、ある程度の数しか居ないところでは、アレもコレも知っているエキスパートみたいな人がいるみたいですね。

そして、それをとりまとめる人は、本人はその仕事を毎日するわけではないけれど、訊かれたら全部知っている、もしくはチェックして小言をいうので、例えば、それを奥様に当たる人がやっている場合は、奥様が全部知っているというわけです。ヴィルん家では、ミュラーとマリアンがそれぞれに全部知っているという設定です。

竹流もあれこれ家政婦さんのお手伝いしていたのですね(笑)
ウチのキャラでは、ちょっと特殊な例ですけれど、23がそうでした。もっともあそこは「メウ・セニョール」と「使用人」に一応別れているけれど、「使用人」から「ミニャ・セニョーラ」になったりするので、いわゆる「立派なお家の子」と「シモジモ」とはちょっと違うのですが。23は、靴職人の修行を始めるまでは暇すぎて、お掃除の人たちのやることを観察して勝手にあれこれ習得してしまいました。で、マイアに教育的指導をしていたのですね。

いやいやいや。日本で一番尊いと思われているのは、やはり「先生」とつく職業でしょう。お医者さま、弁護士、大学教授、代議士……。そういう男性が見合いパーティに行くと女性が群がるっていいますよね。一方で、男性だと体を使う職業、女性だと夜に営業する飲食業の方などは、わりと軽く見られがち。初対面の時に、職業を訊いてそれだけでどんな方かを判断することはできないはずなのですが、かといって、「自分はそんな差別は一切したことがない」と言い切れる人も少ないのではないかと思います。

その一方で、例えば「建築に関わっています」という言葉で、「設計士」であるか「組み立ての作業員」であるかで、上に書いたように、人の反応って変わるように思うのですけれど、これが「宮大工です」となるといきなり尊敬の方に大きく振れるというのもありますよね。そういう意味では、伝統工芸の継承者というのは尊敬されていると思うし、むしろそうであるのも正しいと思いますし。

さて、ヤスミンは、そうなんです。スパスパ型です。美容師の仕事も「お金のため」と割り切っていました。これには裏設定もあって、彼女は器用でしかも向上心もあるので、美容師として技術などをかなり磨いてきたのですが、トルコ人と間違えられるエキゾティックな見かけのせいで、わりと不当な扱いを受けてきたのですね。それで、かなり愛想を尽かしているという感じです。彼女は、そういうことに悩んだりしないし、怨んだりもしない、さっさと新しい世界に行って自分で道を切り開くタイプです。しかも、ヴィルが雇い主だから劇団を続けることに文句を言われることは絶対にないことがわかっていますし。

稔は言いたい放題ですよね。これができるところがやはりこのメンバーたちの信頼関係かなと思います。本物のトカゲは不本意だと思いますが(笑)

このあたりは、四人だけでほぼ完結していたArtistas callejerosの世界が、また定住世界との関係を再構築して行く過程みたいなものですね。
少し説明っぽい記述が続きますが、もう少々お付き合いください。

コメントありがとうございました。
2018.08.04 18:22 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
以前に小説の執筆のためにいわゆる伝統的な「執事」
のことをいろいろ調べたことがあるのですが、
執事と家政婦さんはまた違うのでしょうけれど、
要はどちらも屋敷を管理・維持するお仕事、突き詰めていけば
専門職にならざるを得ないかなって思いました。
家事も、一家庭の小さな範囲だったらまななんとかかんとか
ごまかしながらもやっていけるのかもしれませんが、
これだけ規模が大きくなってくると掃除ひとつとっても専門性が
要求されて、大変そうだなって思います……
食器にしても、なんでも洗剤でひとまとめ、ってわけにもいかなさそうですし……

ヴィル様の家庭……というか生まれですが、こうして見ると彼はつくづく
本質的に蝶子さんたちは違う世界に生まれてきた人なんだな……
としみじみと感じています。
蝶子さんは素敵な女性だけれど、生まれ自体はいわゆる「庶民」ですから、
例えば「奥様」として振る舞うことを要求されるのはちょっと大変かも、
と思いました。
それから、珍しくちょっとナイーブになっていた職業の貴賎問題。
ああ、この感覚、なんだかものすごい日本人らしいなとも思いました。
それとも、蝶子さん、だったからなのか、ヤスミンが柔軟だったからそう感じさせられたのか。
基本的に、身体を動かす仕事が、なんとなく「下」というか「現場」扱いされるのはなんでなんでしょうね。突き詰めていけばなんだってプロフェッショナルなことに変わりはないのに。
でも当のヤスミンが気にしていないようなのでこの申し出は本当にありがたいですよね。ヤスミンだったらそれこそチャキチャキこなしてくれそうです。

定住世界との関係性の構築ですか、ふむふむ、ということは、ここから本格的に物語が動いていくのでしょうか?

連載の文字数と間隔についてですが、これは本当に自分も悩みますね。
わたしでいえば以前は二千字×月二回でやっていたんですが、これはこれで
ぶつ切りになってわかりづらいことに気づかされたので今は3千〜5千×月二回
でやっています。五千字が読んでいてきつくなるぎりぎりのボーダーラインと判じてのことですね……これは、あくまで自分の話の場合です。一気に読ませるタイプの
方だったら何文字でも苦痛にならないんじゃないでしょうか。

夕さんは毎週同じペースで掲載してくださるのでとっても読みやすいです。
個人的には今回はえ〜も終わり? もっと読みたい! ってなりましたが^^
こうした水面下の細やかな気遣いも人気の秘訣かなあとも思っています。
2018.08.05 08:31 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

そうそう。
執事のことも調べたんですけれど、ケイ様のお家や、うちで言うとドラガォンの館のような「そもそも実在しないし」の設定ではなくて、こちらはミュンヘン辺りに実際にあるお屋敷をイメージして書いたので、いわゆるイギリスっぽい執事は設定しなかったんです。ポルトガルはイギリスの影響がとても強いので、イギリスっぽい使用人がいてもあまり違和感ないんですけれど、ドイツだとなんかちょっと変と思って。

それで、この話の設定ではたまに「執事」という言葉も使っていますがミュラーという屋敷の全体のことを見る使用人頭と、いわゆる料理洗濯などをする女中的な使用人をまとめるマリアンの二人が分担して居る設定です。ま、もうそんなに出てこないので、どうでもいいのですけれど。その他に領地の管理などの手伝いとして秘書のマイヤーホフがいるのですね。本当に銅でもいい話でした。

私は、あまり高価な食器などは持たないようにしているのでよくわかりませんけれど、お屋敷ともなると、銀器、クリスタル、マイセンのような磁器など、手入れも面倒くさいし、壊したら大変というものも沢山ありますし、取っ手が真鍮だとか、大きな壺やシャンデリアのほこり取りはどうするかとか、タペストリーや絨毯の手入れは……などちょっと想像しただけでも、大変なお仕事が沢山ありますよね。

ヴィルは、もともと母親と一緒に団地で育ったシモジモで、父親のところに通って矯正されましたけれど、マインドとしては「こういうの面倒くさい」だと思います。顔には出しませんが。ま、ドイツ人ですから整理整頓は大好きだと思いますけれど。

そして、canariaさんがツッコんでくださった、蝶子とヤスミンの違いはですね、正におっしゃるとおりで、実は蝶子の方は「職業に貴賎なし」という表面的な平等論があるから神経を尖らせているんですけれど、実はヤスミンの方はむしろ「だって、私、労働者階級だもん」的な感覚だと思うんですよ。日本って、妙な平等感があって、平民でも皆大学に行って、場合によっては「先生」と言われる立場になったり、有名企業で出世して尊敬される存在になることもある」となんとなく思っているじゃないですか。でも、こちらは、大学にいく人は本当に限られた優秀な人で、それ以外の人は職業訓練をして社会を下支えする存在になるんですよね。もちろんどの仕事も尊いのですけれど、弁護士が家政婦はやりたがらないけれど、美容師のヤスミンは別にその仕事が家政婦よりもいいなどという感覚はなかったのですよ。その違いがあるかも。

ヤスミンは、この後もずっとチャキチャキ労働者階級の仕事をします。あ、これ、医者や弁護士にはなりません、という意味です(笑)

物語の方向性は、ですね。いい勘していらっしゃいますね。この章、あまり面白くないと思うんですけれど、実は今後の方向性があちこちにうっすらと現れています。もっとも、表だって見えている大きな変化は実はあまり重要ではないという(笑)

文字数の話ですけれど、仰る通りなんですよね。思うんですけれど、ポピュラーなジャンル、もしくは何を書いても引き込まれてしまうようなすごい内容だったら、はっきり言って文字数なんて関係ないと思うんです。
私が発表頻度や文字数を妙に氣にするのは、やはり内容が平坦で地味だからなんですよ。あまり間を空けたら「前回、何の話だったっけ」ってなること間違いないと思うんで。ただ、週に一度出すとなると、あまり長いと即脱落者出るなと思ってしまうんです。これまた内容がこうだからですけれど。

反対に設定が特殊で複雑だった「Infante 323 黄金の枷」は、あまりブツブツ切ると訳わからなくなるかなと思ったので、月に一度で切りのいいところまで出すという発表の仕方をしたんですけれど、こういうの本当に難しいですね。

コメントありがとうございました。
2018.08.05 20:24 | URL | #9yMhI49k [edit]

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