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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】迷える詩人

scriviamo!


「scriviamo! 2019」の第六弾です。前回に引き続き、ポール・ブリッツさんのご参加分。今年は十句の無季自由律俳句でご参加くださいました。

 ポールブリッツさんの「電波俳句十句

毎年ポールさんのくださるお題は難しいんですけれど、今年は更に悩まされました。毎年のお題と違うのは、今回の作品はかなりパーソナルな内容なのかなと思いまして、どう取り扱っていいのか。

ここで私が十句もパーソナルな内容の俳句をお返しすることは、誰も望んでいないと思うので、俳句に詠まれた内容を(一部は申し訳ないのですけれど、正確な意味がわからなかったのですが)、私なりに感じる創作者の共通の悩みのことを書いてみようかなと思いました。そして、書いてくださった十句にちなんで、十のよく知られたラテン語の箴言や格言を散りばめてみました。私が付け焼き刃で書く下手な俳句などでは却って失礼になると思ったので。

登場するのは、「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」における「歩く傍観者」こと、(身元が判明する前の)主人公マックスです。ご存じない方も、彼が主人公だったことをお忘れの方も、全く問題ありません。この作品ではほとんど関係ありませんから。


【参考】
「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」を読む「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」を読む
あらすじと登場人物

森の詩 Cantum Silvae 外伝

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森の詩 Cantum Silvae 外伝
迷える詩人
——Special thanks to Paul Blitz-san


 穏やかな秋の午後、マックスは山道を急いでいた。まだ今宵の宿を見つけていないのだ。足下には絨毯のごとく大量の栗のイガが散らばっていた。

「痛っ」
マックスは、声を上げた。今日は、もう三度目だ。彼はまたしてもそれを踏んでしまったのだ。

 この地域は、特に風味豊かな栗を産することで有名だ。鬱蒼と茂る背の高い栗の木々は、村のそれぞれ家で管理している。教会と代官に納める分以外は、乾燥栗や、その粉末に加工されてヴェルドンはもとより、貿易によって運ばれ遠くセンヴリやカンタリア王国の宮廷でも食卓に上ることがあった。

 落ちているのはイガばかり、つまり、旅籠で本日の定食を頼めば、彼の足を刺したイガが抱いていた秋の味覚を口にすることが出来るはずなのだ。

 まずは栗を煎る香ばしい煙が、それからようやく小さな灰色の家々がマックスを出迎えた。彼は、歩きにくい粗い石畳の小径を進み、《牡鹿亭》と書かれたおそらくこの辺りで唯一の旅籠に足を踏み入れた。

 中には旅人らしい影は多くなかった。食事をしているのは、旅籠の亭主らも含めて四人ほどで、おそらく客は奥に一人で座る青年のみだろう。

「今宵の宿を頼みたいのだが」
そう尋ねると、亭主は立ち上がり、中へと招いた。古い栗の木を用いた寝台や机、とても小さな戸棚があるだけの簡素な部屋だったが、マックスは満足した。

「今すぐ来てくれれば、定食を出すが」
マックスは、頷いた。少し早すぎるとも思ったが、食いっぱぐれるよりはいい。

 食堂は狭いので、彼は先客の前に案内された。それは青ざめた顔をした痩せた青年で、銀色のタンブラーを右手で持っている。中には半分ほどのワインが入っている。その手がわずかに揺れているのを見て、マックスは「おや」と思った。

「ワインはいかがですか」
亭主がワインの入った水差しを持って近づいてきた。マックスは礼を言ってタンブラーを差し出した。マックスに注ぎ終えると、訊くまでもなくもう一人の客もタンブラーを差し出したので、そちらにもためらいながらも注いだ。

「そんなに飲んで、大丈夫か、アントー? 」
亭主の問いかけに、アントーと呼ばれた客はあざ笑うように言った。
「大丈夫じゃないさ。生まれてからこのかたずっと」

「それじゃ、わざわざ明日の頭痛や悪寒をあえて背負い込む必要はないんじゃないかい?」
余計なことと思いつつも、マックスは言ってみた。

 男は片眉を上げると、マックスにタンブラーを差し出して答えた。
「正にその通り! それでは、明日の頭痛と吐き氣に乾杯しよう、旅のお方」

 マックスは、盃を合わせて少し飲んだ。
「君は、この村にしばらく逗留しているのかい? 詳しいなら少し教えてくれないか」

 アントーは、口の端だけで笑いながら言った。
「何を知りたいのかね、旅のお方。俺は、確かにこの辺りのことに少しは詳しいさ。今は歓迎されず、長居をすることはないが、何といっても隣村で生まれ育ったのでね」

「そうなのか! 僕は、サッソ峠を超えてグランドロンヘと入るのは初めてなんだ。初雪が降る前に街道へと出たいんだが、どこを通ると一番いいだろうか」
「そうだな。俺なら、少し西へと向かいエッコ峠にするな」
「ずいぶんと遠回りなのにかい?」
「サッソ峠は、日が当たらないためか辺りはひどく貧しくてね。旅籠はないし、食べられるものや安心して休める場所も見つけにくい。ここを出てしばらくはひもじい思いをすることになるし、追い剥ぎにやられる可能性も多い。道は一本なので、迷うことはほとんどないと思うがね」

「じゃあ、君がここに居るのは、故郷に帰るためなのか?」
そうマックスが訊くと、アントーは引きつったような笑い方をした。

「俺は、二日ほど前に故郷の村へ行ったんだが、追い払われたんだよ。金の無心だけのために戻ってくるなってね。名をなして、豊かにならない限り、故郷にも帰れないのさ」
そう言うと、苦しそうにワインをあおった。

「故郷を離れてから、どこに居たんだい?」
「あちらこちらさ。宮廷で雇ってもらおうなんて野望は持っていないが、大きな町に行けば、詩人として名をなすことも出来るかもしれないってね」

「君は、詩人なのか」
「今は、ただの酔っ払いだ。言うだろう、『In vino veritas.(真実とはワインの中にある)』ってね」

 マックスは肩をすくめた。
「つまり、これから君は、本当のことをペラペラとしゃべってくれるというわけだね」

 アントーは、おやと言うようにマックスを見た。
「ラテン語がわかるってことは、お前さんは、ずいぶんと教育を受けているんだね、旅のお方」

「ほんの少しね」
マックスは、酔っ払っていないので、真実を吐き出してはいなかった。実際には、彼は当代で受けられる最高の教育を受けており、宮廷や貴族たちの家で教師として働くことで生計を立てていた。そして、この旅籠の主人らが生涯に一度も見たことがないほどの大金を質素な旅支度に隠し携えていたのだ。

「そうか。俺は、だが、ラテン語に詳しいというわけではない。さっきのはたまたま知っていただけだ。そもそも、まともな教育を受けることなど不可能だったしな。まともに食うものもない貧しい村で、詩人になりたいといったら、誰もが笑ったよ。ただ、親は喜んだ。小さな畑を二人の息子が引き継ぐのは不可能だったし、詩人になるなら村から出て行くに決まっているからな」

「そして、君はそうしたんだね」
「ああ、したとも。ヴォワーズ大司教領へ向かい、門前町で自慢の詩を朗々と歌うところから始めた。まさか、村でよりもひどい嘲笑に迎えられるとは思いもしないで」

「『Sedit qui timuit ne non succederet.』」
「なんだそれは?」
「ホラティウスの言葉だよ。『失敗を怖れ成功したくなかった者は、静かに座っていた』つまり、何もしない人間は失敗もしない代わりに成功することは絶対にないって意味だ。君は詩人になる努力を始めたんだろう」

 アントーは頷き、タンブラーから酒を飲み干すと、亭主に合図してお代わりを要求した。亭主は、先にマックスにスープを運んできた。わずかに茶色いクリームスープからはほのかに栗の香りがした。

 アントーは、酒をもらうと、低い声でブツブツと詩らしきものを唱えていたが、マックスにはほとんど聞き取れなかった。彼は、顔を上げてマックスに語りかけた。
「そうさ。でも、詩人を目指すのと詩人になるのは同じではなかった。大きな壁があった。みな俺の詩には、教養がないと言うんだ。韻は踏めていないし、故事も含めていないと。だけれども、どうしたらそんなことが出来る? 俺は、何も知らないし、習う相手もいないんだ。金もないし。なあ、旅のお方、詩人の資格とはなんなのだ?」

 マックスは同じホラティウスの言葉を思い出した。
「『天賦の才、人より優れた心、そして偉大な物事を表現する雄弁さを持っている人は、詩人の名誉を受ける権利がある(Ingenium cui sit, cui mens divinior, atque os magna sonaturum, des nominis hujus honorem)』ってね。雄弁さの部分は、技術的な問題もあるから学ぶ必要があるのかもしれないが、そもそも大切なのは何を表現したいかじゃないのかな」

 アントーは、顔を上げた。暗い想いにわずかな陽が差したかのように。
「表現したいこと……それならいくらでもある」

「こうもいうよ。『魂があるところに、歌がある(Ubi spiritus est cantus est)』僕は、全く詩人ではないから、知識があっても詩は作れない。詩を作りたいと想うことこそが、既に一つの才能なのではないかな」

「じゃあ、俺はまだ詩人でありたいと願い続けていてもいいのだろうか」
「もちろん、いいと思うさ。名をなして金持ちになるかどうかはわからないけれど、もともと金がないから詩人を目指してはいけないなんてことはない、そうだろう? もし、君さえよければ、僕に一つ聴かせてくれないかい?」

 アントーは、小さく頷くと、うつろな瞳を宙に泳がせ詠じた。
「少女が戸口で頼む 火のついた炭を分けてくれと
隣人は怠惰なのろまと罵り 戸を閉めた
冷えた家に戻った継母は 怒りにまかせて少女を叩き
彼女は叩かれた数を 腹の中で数えた」

 詩は、次の連へと進み、いくつもの傷跡を受けて謎の死を遂げた継母を置き去り、少女が街へと出て行く様子を述べた。少女は街で早々に男たちに売られて、悲惨な生活へと流されていくやるせない物語だった。マックスがこれまで聴いた詩と違うのは、確かにそのアントーの詩は韻律を全く無視しており、平坦な文章にしか聞こえなかったことだ。だが、物語そのものは、非常に興味深かった。

 亭主がやってきて、詩には全く感銘を受けた様子を見せずにアントーをじろりと睨んだ。
「おい、なんの役にも立たない物語でお客さんを悩ませるんじゃないぞ」

 青年詩人の声は小さくなり、語るのをやめてしまった。その様子を見て、マックスは、この近隣でのアントーの立場を思いやるせなくなった。

『何故笑っているのか。名前を変われば、物語はあなたのことを語っているのに(Quid rides? Mutato nomine et de te fabula narrator.)』
そう言ってやりたいと思ったが、それが却って故郷でのアントーの立場を悪くしてはならないと思い、黙った。

 亭主は、マックスの空になったスープ皿の椀を下げると、平たい麺にラグーをかけた料理を置いた。ラグーには煮込まれてバラバラになった肉が見えたが、塊はなかった。その代わりに大きな栗がいくつか見えた。

「スープはいかがでしたかい」
「ありがとう。美味しかったよ。栗が入っているんだね」
「へえ。そして、この麺にも栗の粉が練り込んでありやす」

 その麺を、マックスは一度も見たことがなかった。指ほどの長さに切れていて、グレーと茶色の中間の色をしている。少しざらりとした舌触りだが、もっちりとして弾力のある歯ごたえだ。
「土台になっているのは小麦ではないのかい?」
「ソバ粉、栗の粉、それにほんのわずか小麦でさ。この谷の名産としてお代官さまに献上する品目に入っておりやす」

 この地域は、小麦がよく育たなく、むしろソバの生育に適しているのであろう。ないものを憂えるのではなく、その土地だからこそ出来る物を強みに、人々が生き抜く様を、マックスはここでも感じた。
「『Aut Viam Inveniam Aut Faciam』と言うとおりだね」

「なんですかい、それは?」
「先ほどから、僕たちが話しているラテン語名言集のひとつさ。『私は道を見いだすか、さもなくば自ら道を作るだろう』っていう意味だよ。他の土地のように小麦を植えるのは難しいかもしれないが、栗にしろ、蕎麦にしろ、この谷だからこそよく育つ植物を利用して、他にはない強みを作った先人たちの知恵に感心しているのさ」

「そうなんですかね」
そういって亭主はまた下がった。

「自ら道を作るか……」
アントーが、つぶやいた。

「そうだ。君の詩も、おそらく道を作りかけている最中なのではないか?」
マックスは言った。

 アントーは、自信なさそうにマックスを見た。
「聴いてくれるのは、貧しい人たちばかりだ。金のある奴らは、俺の語りかけに立ち止まることをしない。それに神父がやってきてたしなめるんだ、善きことをした者が報われる物語を、きちんとした韻律で語れと。この世に善きことをした貧しい者が報われたことなど、俺は一度も見聞きしていない。そんな耳障りのいい絵空事を語るために詩人になりたかったわけじゃないんだ」

 マックスには、アントーの悩みの本質が見えてきた。韻律や故事などは習うことが出来よう。だが、彼が望むのは世の中の矛盾と不正義に対する告発を詩にすることなのだ。そして、それを望む限り金銭的な成功や名誉を得ることは難しいに違いない。

「僕には、君を助けてあげることが出来るかどうかはわからない。でも、名を成すことと、伝えたいことを同時に実現するのは、詩人に限らず難しい。君の物語に僕は心を動かされたから、受け入れられることは可能だと思う。でも、それが難しいのは確かだ。少なくとも韻律を学んで、体裁を整えれば、聴いてくれる者が増えるかもしれない。もしくは耳障りのいい詩で先にパトロンを作ってから、より伝えたい詩を詠じるという道もある」

 アントーは、しばらく黙ってマックスを見つめていた。
「お前さんは、まじめに聴いてくれるんだな。そうか、そうかもしれないな。今すぐに全てを実現しようとするから、上手くいかないのだろうか」

「新しいことをしようとすれば、時間はかかるだろう。『滴は岩に、力によってではなく、絶え間なく落ちることによって、穴をあける(Gutta cavat lapidem, non vi, sed saepe cadendo. )』って言うからな」

 アントーは、タンブラーを脇にどけて、真面目にマックスの顔を見つめた。
「体裁を整えるために韻律を学ぶか。だが、どこで、誰に……」

 マックスは、少し考えた。
「もし、またセンヴリに向かうつもりならば、マンツォーニ公の領地へと行くがいい。サン・ジョバンニ広場には、アレッキオという年老いた詩人がいる。彼とは、一年ほど親交を持っていたが、人の心のわかる立派な魂を持った男だ。彼にマックス・ティオフィロスに紹介されたといって教えを請うといい」

「ありがとう。是非そうするよ。なんとお礼を言っていいか」
「『苦難の中にいるものには、恐らく、よりよいものが続くであろう(Forsan miseros meliora sequentur.)』もしくは『過ぎ去った苦しみの思い出は、喜びに変わる(Jucunda memoria est praeteritorum malorum.)』っていうからね。君の志が実を結ぶことを応援させてもらうよ」 

 それからマックスは、懐から財布を出して、銀貨を一つ渡した。一つの詩に対する賞賛にしては高すぎる金額だったので、アントーはぎょっとして訊いた。
「どうして?」

「君の未だ世に認められていない才能にさ。『Magna voluisse magnum.』(全ては我が槍に至る - 偉大なことを欲したということが偉大である)、そう思って受け取るといい。僕に出来るのはここまでだ。このあとに運命が開かれるかどうかは、君次第だ」
マックスは言うと、彼自身のワインを飲み干して、青年の幸運を願った。
 
(初出:2019年1月 書き下ろし)

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Tag : 小説 読み切り小説

Comment

says...
サキは天津甘栗が好きですね。あらかじめ割れている奴じゃ無く、爪で剥いて食べる奴。これに限ります。
実ですから栄養も豊富だし、この時代なら貴重な栄養源だったんでしょう。さらに味も良いですからね。
マックスは相変わらず気づかれないように介入していますね。とてもただの傍観者ではありませんね。
大変な旅行をしているんでしょうけれど、この時代が一番楽しそうです。

ポールさんのお題十句は読ませていただいたのですが、やはりほとんど理解不能でした。
夕さんはどのように答えられるんだろうと気になっていましたが、ラテン語の箴言や格言を十散りばめるというアイデアはさすが夕さんです。
それにしてもよくこれだけご存じですね。
それぞれにストーリーに上手く組み込まれていて勉強になったのと同時に、とても面白かったです。よくまぁこんな事を考えるなぁと、あきれています。

詩人についてはどうやって食べていたのか、何がウケていたのか、サキには今ひとつわからない職業なのですが、創作者として考えればなんとなくアントーの言いたいことはわかります。
「偉大な物事を表現する雄弁さ」と言われると大層な感じがしますが、表現をしたいと思うことが大切だと言われれば、納得できる部分もあります。
自ら道を作る・・・アントーの才能が認められる事を祈ります。
2019.01.28 12:22 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
ありがとうございます。ラテンの賢人の言葉、身に沁みるであります……。

あれを書いたときには本人も自分の感情を持て余し気味で。

来年こそはまともなお題でもって参加したいものであります……。
2019.01.28 13:11 | URL | #0MyT0dLg [edit]
says...
執筆、おつかれさまでした。

わあ、なんか懐かしいですねぇ、『森の詩』。ひさしぶりでしたが、やはりこの世界観、いいですねぇ。

マックスは就職前なんですね。「歩く傍観者」て(笑) 今回は他人の人生に、それなりにコミットしているじゃないですか。

アントーの詩って、いわゆる社会派ですよね。
モチーフが恋愛とか歴史とか物語とかじゃなくて、詩人というより評論家のようにも見えました。

ポール・ブリッツさんの10の俳句は、難解かつ意味深で半分ほどしか理解できませんでした。しかも、八少女夕さんのラテン語の格言も、ほぼ知らない状態で……残念。もっとも、言っていることは、そうだよねぇと感心さえられることも多く、時代の違いや洋の東西を問わず、共通することはあるんだなと思います。
そして、このお話では『詩人』を『物書き(あえて小説家とは言わないw)』と置き換えれば、なにやら身につまされることが多いです。まあ、生業にはしてませんから、アントーほど切迫してはいませんが。
小麦が採れなくて、ソバや木の実が頼りだと、あまり豊かにはなれそうもないのでしょうが、それでもいろいろと工夫をして生きていく。そういう人間のたくましさと、アントーの境遇を重ね合わせた物語は、『森の詩』テイストですね。

あ、scriviamo! 2019 いま、作品を鋭意執筆中です。今週末は『エヴェレット』の更新なので、2月中旬くらいに投稿予定かなぁ。なお、今回も、大暴投な模様(笑)
2019.01.28 16:48 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

こちらも今日は氷点下ではなかったので、とても暖かく感じましたよ!

さて、天津甘栗、本当に美味しいですよね。
残念ながら、ヨーロッパの栗はあれほどは美味しくないのですけれど、それでも比較的美味しい栗が採れる地域があります。
この話のモデルにした我が州のブレガリア谷もその一つです。
栗のレシピは中世の料理を現代に伝える「ヒルデがルド・フォン・ビンゲン」の料理集にもいろいろとあるのですよね。

さて、マックス、普段よりも少しは手助けをしている模様です。彼は、本当にこの時代のフラフラした日々が一番生き生きしていましたよね。この人、根無し草なんですよ。

さて、ポールさんのお題、ちゃんと読み込めたか不安もあったのですけれど、ポールさんに限らず創作者一般の話として書いてみました。お返しの方法はあれこれ考えたのですよ。でも、あまり個人的なことに手を出すと反対に傷でもえぐったりするとよくないかなと思いましたし、具体的な自分の話は誰も望んでいないなと思ったので、作品として返す方法を考えました。で、苦肉の策がラテン語の箴言だったわけです。これならかなり一般化されますし。

もちろん全部自分で知っていたわけではありませんよ。半分くらいかなあ。他にもないかなと調べて、その手の格言集で四十個くらいの中から使えそうなのを選んだというのが舞台裏です。

アントーが上手くいかない理由は、いろいろとあると思うんですけれど、今だったら点や線だけの絵画も現代美術として認められるけれど、近世までだったら「落書きかよ」で認められなかった、みたいな感じで読み取っていただければいいかと思います。形式がその当時の常識とかけ離れすぎているってことですよね。更に題材も「面白おかしく」もしくは「宗教的」が望まれていた時代にマッチしていないと。でも、アントーとしては、低俗なおべんちゃらや、きれい事を伝えたかったわけじゃないんだ、と悩んでいるわけです。

私が格言集の中で一番「伝えたいこと」に近いと思いつつ書いていたのは「名前を変えれば、それはあなた自身のことを語っているのだ」というもので、決して人ごとの悩みではないってことなんですよね。
ま、ポールさん的には「お前にわかるか」なのかもしれないな、と思って書いていましたが。

アントー、上手くいくと良いですよね。もう二度と出てこないだろうな。

コメントありがとうございました。
2019.01.28 21:28 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

いろいろな意味で、本当にどうしようかと悩み、相当時間がかかりましたが、お氣に召していただけたでしょうか。
ま、さすがに、現代に至るまで残っている箴言の数々ですから、私ごときの言葉よりはずっと的を得ていますよね。

俳句、全てをきちんとわかったわけではないですが、私なりに「受けている創作」「売れているプロの作品」に感銘を受けることもあれば、「なんだかなあ」と思うこともある、そのモヤモヤと近いものがあるのかなと、勝手に解釈して書かせていただきました。

お疲れにもかかわらず、ご参加いただきありがとうございました。
来年もどうぞよろしくって、それこそ鬼が笑いますけれど。
2019.01.28 21:34 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

最近、「scriviamo!」にしか出てこない「森の詩 Cantum Silvae」の面々です(笑)
現代物で語るのが生々しすぎるときは、すぐに中世に逃げる私でした。

マックスは、ルーヴランへ行く前の話ですね。
傍観ラリー中です(笑)

そうそう、アントーはちょっと生まれる時代を間違えたのかもしれませんね。
しかも基礎がなっていないままプロになろうとして、思いっきり叩かれて凹んでいます。

ラテン語の箴言格言は、もちろんそのままでは誰もわからないと思ったので、それぞれ訳付きで書きましたけれど、その分少しウザい感じの作品になったかなと反省しています。ただ、ラテン語を書かないでそのままだと、なんか日本語として妙かなと。悩むところです。

もっとも選んだ箴言の多くは、正に私自身のモヤモヤに対する答えのように思えましたから、この題材にはふさわしかったのかなと。

それから意図的に創作の話だけでなくて、この貧しい土地の名産の話も交えました。現実のスイスのある地域を想定して書いたんですけれど、そもそももともと肥沃で特に苦労しなくても収穫が多い土地や、資源が豊かな国って、近世以降の発展がいまいちだと思いませんか。土地が狭かったり貧しかったり寒冷だったりの人々は、勤勉と工夫で後々道を見つけ出しているって思うんですよ。そういう道を探してもがく人たちへの応援歌になったらいいなと思いつつ、このシリーズや他の作品を書いています。

そして、おお、現在執筆してくださっているのですね。楽しみです。
今年も大変なんですか……あ〜、怖いな。頑張ります。

コメントありがとうございました。
2019.01.28 21:48 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
作りたいものを作るかそれとも
人気がありそうなものを作るかは永遠の悩みですね><

それにしてもこうやって会話中に
さり気なく名言を引用できたらいいなと思いました
しかも親身で優しい…これはイケメンです

でも私は失敗したら困るから
静かに座って栗を食べてる方がいいや…
(熊が出るので拾いにも行けません><)
2019.01.31 13:46 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

そうですね。私の作品や記事でも度々話題にしていますけれど、ポピュラーでない題材を書くと読んでもらえないけれど、ジャンル違いを書いても自分の作品らしくなくて書いている意味がわからない、なんてことになるのも本末転倒ですよね。

さて、今回は無理に十個押し込めましたので、全然さりげなくないし、実際にこんなにラテン語ばかり混ぜてくるヤツがいたら、鼻持ちならないと嫌われるんじゃないでしょうか。ま、今回はちょっと優しかったですね。普段はもっと傍観者ですが。

静かに栗を食べるのもいいですね。
熊がいなくても、拾うのはけっこう大変で、せっかく拾ってもよく虫が食っています。えーん。
日本は皮を剥いてパックにしたモノも売っているんですよね。
ますます便利だなあ。

コメントありがとうございました。

2019.01.31 22:13 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
マックス、本当にいろんな意味でカッコイイ。
教養や徳のある人物を書くには、作者がそうである必要があると思っているのですが、夕さんはやっぱり素敵な人だなあとしみじみ……。自分にはこういう展開は絶対描けないです。
読む人にいろんな意味で希望を与えてくれる短編ですし、何よりこの世界の創作における真髄がここにあるような気がします。技術や知識じゃない。要は何を伝えたいか、なんですよね。
今回も素敵な物語、ありがとうございました。
マックス、こういう掌編で出すと完璧にカッコいいのに、なんて長編になると脇役に食われちゃうのかなあ……。そこがまた彼のいいところなんだけど。
2019.02.01 00:13 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
こんばんは。

いやいやいや、教養もなければ、ましてや徳なんてカケラもない私が書いております。
マックスも、行きずりでそこら辺のねーちゃんたちとよろしくやっている合間の話ですから(笑)

思うんですけれど、マックスはもともと私と同じように小市民なので、小市民同士の関わりだとわりと生き生きと活躍できるんですよね。で、国の命運みたいな大きな話になってしまうと、「そんなの僕には無理無理」と諦めてリュートを弾いて待っていたりするんですよ。ま、一応、ラウラだけは救おうと頑張っていましたけれど(あっさり逮捕されていたけれど)

という話はさておき、この話の骨格に据えた「創作者の悩み」に関しては、普段から自分がうじうじと考えていることですね。
もちろん「何を伝えたいか」が一番大切で、それがなければたとえ受けても「自分の作品とは言えない」と思ってはいるんですけれど、それと同時に「自分の作品が受けないのは読者が悪い」ではなくて、やはり技術的な問題や、伝え方などもあるんだろうなと常々思っているのですよ。

骨となる言いたいことに、きちんとした技術や、魅力的な題材で肉付けをしていくことにより、結果が出てくる……例えばlimeさんが受けている評価のように……って、思うんですよね。

というわけで、今回の話では、アントーは、つべこべ言わずに詩の基本を学びに老詩人のもとを訪れてもらいたいですね。
その路銀として、マックスは銀貨をあげましたし。これをワインで飲んじゃったら、こいつはおしまいです。まあ、この世には飲んじゃって終わりの人もいると思いますが。

この世界は、最近滅多に書いていないのですが、けっこう好きなので、読んでいただけるのが嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2019.02.01 22:17 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
おお、マックス、かっこいい。
本編では王様に持っていかれがちな面もありましたが、
王様だったらきっとここまでアントーの憂いに寄り添うことは
できなかっただろうな。

ポールさんの俳句ですが、全部は理解できないまでも
なんとなく身につまされる思いがする句ばかりでした。
それこそ型破りで(いい意味で)、ポールさんの小説というものに
かける情熱がうかがい知れるようでした。

わたしもアントーの心情を追いながら、ああ、この気持ちわかるなぁ、
と思うことばかりでした。
そしてマックスが忌みじくも指摘してくれているように、
作りたいと思うことがもう一つの才能で、そして何を表現したいかが
大事なのではないかと感じました。

詩においての韻というのは、小説でいうところの作法とか文法とかに
あたると思うのですが、なんだろう、文法はめちゃくちゃでも妙に訴えかけてくる
作品もあれば、文法は完璧なのにあまり印象に残らない作品もあったりして
難しいところですよね。個人の好みといわれればそれまでなのですけれど、
要は外部に価値基準を委ねている限りキリがなくなるということなのかなと思いました。
それがめぐりめぐってマックスのいう「何を表現したいか」「作りたいと思うことそのものが大事」、つまり個人の心に還っていくのだと思います。
彼のように表現したいことにあふれてる人なら韻を学べば最強でしょうね。

今回は「作品」という形でのすべての創作者に対する夕さんからのエールのように
感じましたが、夕さんご自身のご意見とかもまた機会があったらうかがって
みたいな〜と思いました^^
2019.02.03 13:05 | URL | #- [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

マックス、この氣ままな旅ガラスが一番似合っていますよね。
そうですね、レオポルドはこんな片田舎には来たことないしな。
それに彼は「こんなところで飲んだくれていないで働け!」って言っちゃうかも。

ポールさんの俳句の多くは、創作に関することなんだろうな、と感じ、なんだかお悩みになっていらっしゃるのかなと思ったんですけれど、それを直接扱っても逆鱗に触れたり、反対に上手く理解できていないことが露呈するだけかもと思ったので、「創作者の悩み」というところだけを拾い、むしろ自分のことを投影しつつアントーを創作しました。

宮廷詩人だったり、売れっ子の詩人といわれるような人たちは、聴衆が好むような題材を器用に詩にすることができたはずなんですよね。
それも「素晴らしい」と言ってもらえる技巧を上手に織り込みながら。
アントーは、題材も型破りながら、基本も出来ていなくて、そりゃ売れんわ、な詩人です。
ちょうどcanariaさんも指摘してくださるように、作法や文法のなっていない小説を作っているようなもので、
でも何かが心に訴えかけてくるので傍観者マックスも助けてあげたくなったというわけですね。

願わくば、マックスにもらった銀貨でちゃんと老詩人のところまで行き、まじめに学んでくれるといいのですが。
そうすればよかったのに、結局飲んだくれちゃって人の好意も無駄にした、なんてこともこの世では珍しくないですよね。

ともあれ、ちょっと「説教臭い」作品を読んでいただき、ありがとうございました。
2019.02.03 19:43 | URL | #9yMhI49k [edit]

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