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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】郵便配達花嫁の子守歌

「十二ヶ月の歌」の三月分です。

月刊・Stella ステルラ 2、3月号参加 オムニバス小説 stella white12
「月刊Stella」は小説、イラスト、詩等で参加するWEB月刊誌です。上のタグをクリックすると最新号に飛びます。


「十二ヶ月の歌」はそれぞれ対応する歌があり、それにインスパイアされた小説という形で書いています。三月はロシア歌手ポリーナ・ガガリーナの“Колыбельная (Lullaby)”にインスパイアされて書いた作品です。

実は、この作品の元になるアイデアは、かなり前「マンハッタンの日本人」シリーズを書いていた頃に浮かんだのです。当時は、ブログのお友だちTOM−Fさんから、某ジャーナリスト様をお借りして好き勝手書いていたのですけれど、その延長で小説には関係ないけれどそのお方がどんな風にアメリカに来たのかなあなんて妄想もしていました。で、イメージは彼なのですけれど、さすがにTOM−Fさんも大困惑でしょうから、この作品では誰とは言わずに、似たような境遇の誰かとだけで書いてみました。


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郵便配達花嫁の子守歌
Inspired from “Lullaby” by Polina Gagarina

 舳先に行くには、少しだけ勇氣が要った。重く垂れ込めた雲を抉るように、荒い波が執拗にその剣先で襲いかかっている。雨が降りそうで、いつまでも降らない午後。ヴェラはストールが風に飛ばされないように、ぎゅっと掴まねばならなかった。

 こんな悪天候に船外に出ようとする物好きはほとんどいなくて、たった一人、まだ少年と言ってもいいような若い男だけがカーキ色のコートの襟に首を埋め、ドアの側の壁にもたれかかっているだけだった。

 波の飛沫が、彼のしている安っぽい眼鏡にかかっていた。海の彼方を睨むように見つめている姿は、希望に満ちているとは言いがたい。でも、それは、自分が感じていることの投影でしかないのかもしれない。ヴェラはこの船に乗ったことが賢い判断だったのか、確信が持てなかった。この暗く荒れた海が、彼女の未来を予言していなければいい、そんな風に思っていた。

「あまり先には行かない方がいい。波にさらわれて落ちた人もいるそうだ」
その男はヴェラを見て英語で言った。

「この船で?」
「いや、この航海の話ではないよ。乗る前に聞いた」
「そう」

 この人は、どこの国から来たのだろう。少なくともヴェラと同じウクライナの出身ではなさそうだ。顔から判断すると、どこかバルカン半島の出身かもしれない。

 誰もがこの船に乗って、ここではない所へ向かおうとしているように感じてしまう。ある者は戦火から、ある者は貧困から、そしてある者は閉塞した社会やイデオロギーから、どこかにある光に満ちた国へと向かおうとしているのだ。

「あなたも、トリエステまでよね。イタリア旅行?」
ヴェラが訊くと、彼は「まさか」という顔をした。ヴェラも自身も、そう思っていたわけではない。彼は「服装なんかに構っている余裕はない」と誰でもわかる出で立ちだった。すり切れ色のあせたシャツ、くたびれたカーキ色のパンツ、底が抜けていないだけでもありがたいとでも言いたげな靴。

国連難民高等弁務官事務所UNHCR が、旅をお膳立てしてくれたんだ」

 ということはやはり……。
「あの紛争の? 逃げてきたの?」
「ああ」
「じゃあ、ご家族も、この船に?」

 彼は、首を振った。
「国境まで生きていられたのは、僕だけだった」

 ヴェラは、お悔やみの言葉を述べたが、彼は「いいよ」というように手を振った。
「これからは、イタリアに住むの?」
ヴェラが訊くと、彼は微かに笑った。
「いや、ローマから飛行機でUSへ行くよ。難民として受け入れてもらったんだ。君は?」

「偶然ね。私もアメリカへ行くの。もしかしたら、飛行機まで一緒かもしれないわね」
「君も難民?」
「違うわ。私『郵便配達の花嫁』なの」

 彼は首を傾げた。
「それは何?」
「国際結婚専用のお見合いシステムがあってね。テキサスの人と知り合ったの。それで、彼と結婚することを決めたの」

* * *


 ヴェラは、今日五本目の煙草に火をつけた。

 目の前のラム酒の空き瓶をうつろに眺める。新しい瓶を買いに行くと、月末まで食べるのに困る事実を思い出し顔をゆがめた。飲むことか、煙草か、もしくはその両方をやめれば、新しい靴下を買えるのにと、ぼんやりと考えた。

 そろそろ出かけなければ。教会の炊き出しに並べば、三日ぶりに温かい食事にありつける。彼女は、すり切れたコートを引っかけると、アパートメントから出た。

 隣の部屋からは、テレビの音が漏れている。ニュースを読む男のよく通る声が、地球温暖化の脅威について訴えかけている。正義と自信に満ちた温かい声。ヴェラは、煙草の火や煙も地球を蝕む害悪なのだろうかとぼんやりと考える。それとも、車も持たず、電氣も止められている貧しい暮らしは、表彰されるべき善行なのだろうか。どちらでもいい、こちらには世界の心配をする余裕などないのだ。

 空は暗く、今にも雨が降りそうなのに、いつまでも降らない。こんな天候の日はあの船旅のことを思い出してしまう。

 船の上で、下手な英語でお互いのことを話した。ヴェラは幸せな花嫁になることを、彼は自由で幸せな前途が待っていると願いながら、それまでのつらかった人生と、それでもあった、幸せな思い出を語り合った。ヴェラが民謡を歌うと、彼は今はなくなってしまった国に伝わるお伽噺を語ってくれた。

 船旅と、ローマまでの二等車での旅の間に、ヴェラにとってその若い男は、全く別の存在になっていた。はじめの安っぽい服装の何でもない男という印象から、優秀な頭脳と温かい心、それに悲劇や苦境に負けないユーモアすら失わずにいる、理想的な青年に代わっていた。

 しかし、彼とはローマで別れて以来、どこにいるかも知らない。同じ飛行機ではなかったし、こんなに何年も経ってから「今ごろどうしているだろうか」と考えるような相手になるとは、夢にも思っていなかった。

 テキサスに着いて、迎えに来た未来の夫には二十分で失望した。彼は、ヴェラを妻ではなく奴隷のように扱った。「高い費用がかかったんだから」それが夫の口癖で、昼は農場の仕事に追い立て、夜も疲れていようが意に介せず奉仕を要求した。

 ヴェラが自由になるまでには、八年もの間、夫の暴力と支配に耐えなくてはならなかった。隣人たちは、みな夫の味方だったし、一人での外出を許されなかったヴェラは、助けを求めることも出来なかったのだ。たまたま、夫がバーボンの飲み過ぎで前後不覚になった時に、彼女は家を逃げ出した。二百キロメートル離れた街で無銭飲食をして捕まり、ソーシャルワーカーの助けで保護されて離婚することが出来た。

 けれど、その後に幸せな人生が待っているわけではなかった。ずっと夫に閉じ込められたままだったので、英語も下手なままだったし、自立して生きるための手に職を身につけているわけでもなかった。彼女は、そのままどこにでもいる貧民の一人として、祖国にいた時と同じか、それ以下の立場に甘んじることになった。

 あの船に乗り、国を出た時に持っていたものの多くを彼女は失ってしまった。若さと、美貌と、祖国の家族や友人たち。戻る氣力も経済力もない。希望と、笑いもあの海に置いてきてしまったのだろうか。静かに、ゆっくりと無慈悲に諦めと老いに蝕まれていく彼女は、襤褸布のようなコートを纏い、地を這いながら生き続ける。

 船で出会った青年と、いつかどこかで再会できることを、どこかで願い続けている。彼が成功していて、自分をすくい上げてくれることを夢見ることもあれば、同じように地を這っている彼と再会し、傷をなめ合うことを期待することもある。

 それは、暗い情熱、生涯に一度もしたことのない恋に似た感情だった。重く垂れ込めた雲間から注がれた天使の梯子のわずかな光。荒い波のように繰り返す不運に高ぶる神経を尖らせたヴェラを、落ち着かせ優しく眠らせてくれる、たった一つの子守唄ララバイ だった。


 (初出:2019年3月 書き下ろし) 

追記


この曲は、もともとポリーナ・ガガリーナという歌手の曲なのですが、才能発掘番組でこの曲を歌って一躍有名になったアイーダ・ニコライチェクのバージョンが日本では有名なので、こちらの動画を貼り付けてあります。また、歌詞は原語では全くわからないので、いくつかの英訳版を比較して掴んだ意訳を下に書いておきますね。


Aida Nikolaychuk - Lullaby [HD English-Lyrics Remaster]

(歌詞の意訳)
私の心の中を覗いてみて
そして冬に「立ち去れ」と言って
風は吹くけれど、あなたが私を暖めていてくれる
まるで私に早春を運んできてくれるように

空の雲に頼んで
私たちに白い夢を運んでくれるように
夜は浮遊して、私たちはそれを追うのよ
神秘的な光の世界へと

私の中にある憂鬱を霧散させて欲しいの
それは私の魂を怯えさせているの

空の雲に頼んで……

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Category : 短編小説集・十二ヶ月の歌 2
Tag : 小説 読み切り小説 月刊・Stella

Comment

says...
執筆、お疲れ様でした。

この青年、某朴念仁ニュースキャスターをイメージしながら、読ませていただきました。
ええ、たぶんこんな感じで、あの地獄から脱出してきたんだろうと思います。家族を失った悲しみも、ショックが大きすぎて、自分のことだと思えないくらいに麻痺しちゃってたんだろうな、とも思います。
そして、難民なんて状態から身をたてるのは、ほんの一握りの人だけなんだろうなぁということを、あらためて考えちゃいます。本人の才能や努力ということもあるけど、ほんのわずかな運の差という気もするし。

『郵便配達の花嫁』ですか~。
こういうのに近い仕組みって、実際にありそうですけど、なんか嫌だなぁ。上手くいかないことの方が、多そうな気がするし。
ヴェラも運が悪かったですね。なんとか逃げ出せたまではよかったですけど、その先も浮上することはできなかったんですね。
ずっと荒天悪天の海を航海しつづけているようなヴェラの人生で、彼の存在だけがささやかな慰めという結末がやるせないです。
2019.03.21 11:18 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

す、すみません。「お借りするのはこれで最後」ともう何度言ったことか。完璧に狼少女ですね。
そもそもジョセフが何歳で移住したのかも知らないし、勝手なこと書いたら怒られるだろうなあと思いつつも、脳内イメージは完璧に……。

まあ、本人かどうかは別として、ジョセフもまずはどこかの安全なヨーロッパのどこかに出国して、そこからアメリカに渡ったと思うんですよね。さすがにボートピープル状態ではアメリカには行けないし。

私の脳内では、ヴェラに話しかけられるまで、実はその青年は泣いていた、でも、荒波の飛沫でどっちだかわからない状態になっていた、みたいな裏設定がありました。でも、ジョセフもそうですけれど、本当の地獄から生還した人って「つらい、悲しい」と大騒ぎするような余裕が残っていないと思うんですよ。ましてや知らない人にそういう姿を簡単には見せられないというか。

とはいえ、ジョセフのように後々、過去をものともせずに立派に大成した人というのは、たぶんとても強い人だと思うんですよ。精神的にもそうだし、努力のキャパも。それに、アメリカではわかりませんが、ヨーロッパでは難民に対してある種のレッテル貼りみたいなものがあって、差別的なことをされたこともあるだろうし、それに負けずにちゃんとした地位を築くのって、本当に大変なことなんですよね。まあ、運も味方したってことも少しはあるでしょうけれど。

で。Mail Order Bridesですけれど、本当にあるんですよ。もちろん今はインターネットですけれど、昔はカタログ的なものだったのかも。
この作品を書くにあたって調べていたら、日本にもありましたよ。ロシアの金髪娘専用お見合いサイト。ひえ〜。

で、上手くいかなかった事例にヴェラみたいなのがあるんですが、実は上手くいっている事例もあって、日本ではわかりませんがヨーロッパにはけっこういるようです。内の近所にも「おそらくそれだよ」と言われているカップルが二組くらいいます。

この話を上手くいかなかったバージョンにしたのは、ひとえにイメージした唄のせいです。歌詞だけ調べると普通の幸せな愛の歌みたいですけれど、聴いているとなんだか妙に「薄幸」感が漂っていて、これってスラブ系のデフォルトなのか、それともこの歌がやはり薄幸なのか、よくわからないんですけれど。

ヴェラが、例の青年と再会してハッピーエンドになることはないでしょうけれど、なんらかのきっかけで少しは楽な暮らしができるようになるといいなと思っています。

コメントありがとうございました。そして、またまた失礼しました。
2019.03.21 22:32 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
個人的に。
ユニセフ募金はしています。
自分はお金はあるけど、仕事で忙しいので活動はできない。
・・・ということはあるので。

難民って大変だよなあ。。。
って思います。
大多数は、国を出たくないと思います。
それを出るってことは結構な覚悟もありますし、
その道も大変だろうなあ。。。って感じます。
夕さんの文章を読んでいて、そういうことも感じ取れて。
とても感慨深いものになります。
(ノД`)・゜・。
2019.03.22 11:11 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

そうですね。イデオロギーにしろ、民族紛争にしろ、どこにも絶対正義のようなものは存在しないのですけれど、そうしたことが起こるととばっちりを受けるのはいつも弱い一般市民なのですよね。

難民が大挙して押し寄せる、現在のヨーロッパの様子は、必ずしも紛争や戦争が原因ではないのですけれど、実際に多くの人たちがより良い生活を求めてつらい旅路に耐えてきたわけですよね。とはいえ、必ずしも多くの人々が望む生活を手に入れられたわけではないのですよね。
まあ、難しい問題です。

コメントありがとうございました。
2019.03.22 23:09 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
彼の生い立ちや運命も、彼がたぶん彼なんだろうと思い当たるので気になるのですが、ヴェラの運命にも相当に惹かれます。
『郵便配達の花嫁』というのは実際に存在する仕組みなのでしょうか?
夕さんのお話ですから、実際に何らかのモデルがあるんだろうとは思っているのですが、こんな仕組みも必要悪と思えるような酷い状況だったんでしょう。
そしてヴェラは結局上昇気流に乗れずに最下層のまま過ごしているのですね。
ほとんどの人がそういう立場に追い込まれるのでしょうけれど、そんな場所でも精一杯生きて行かざるを得ないというのが現実なんでしょう。
ヴェラと同じように、ほとんどの人が名も無い人生を送り、顧みられることも無く人生を終えていくのでしょうが、その立場でもその立場なりの喜びや幸せが訪れることを願ってやみません。
ヴェラにとって彼が思い人なのかどうかはわかりませんが、どこかで再会しても・・・たぶん何事もないようにすれ違って、物語は起こらないような気がしています。
なんか、やるせないなぁ。
地球温暖化の脅威について訴えかけるニュースを読む男のよく通る声・・・。
あれから8年以上経ってるんですよね?気になります。
2019.03.24 15:17 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは、サキさん。
ブログが珍しく広告状態だったのでどうなさったのかと思っていました。お元氣ならよかった。

さて、「郵便配達の花嫁」は、実在しますよ。「Mail Order Brides」の翻訳ですけれど、珍しいシステムではないです。
人身売買とは違い違法ではないと思うのですが、裕福な国の誰かが、そうでない国の誰かをカタログで選び、大金を払って妻にするというシステムですので、上手くいく場合もありますが、ヴェラのようなパターンも実際にあるようです。反対に男性側がひどい目に遭うパターンもあるようです。そして今回、書くにあたって調べて驚いたのは、日本人向けにもあるんですよ。こういうサイト。

ただ、言い方は悪いですが「お金で買われたような経緯での国際結婚」は必ずしもひどい結果になるわけではなくて、私の知っているだけでも五、六組は普通に幸せな家庭を築いています。言わなければ、「どこかで出会って国際結婚したのね」と思われて、普通に生活しているのではないでしょうか。

今回私がヴェラをそういうタイプの「郵便配達の花嫁」にしなかったのは、ひとえにこの歌の「薄幸オーラ」のせいです。

ヴェラのように「金持ちの国に行けば幸せが待っている」と単純に思い込んで、「そうは問屋が卸さなかった」のは、「郵便配達の花嫁」だけでなく経済難民や、出稼ぎ、それに色仕掛け結婚などいろいろな事例を見ています。単純にシステムが悪いだけとも言い切れませんし、もちろん本人の心がけの問題だけでもありません。私は、小説と違って実際の人生では「ウルトララッキー続き」の方が異常だと思っています。で、こんな話になっているのですね。

> 地球温暖化の脅威について訴えかけるニュースを読む男のよく通る声・・・。
> あれから8年以上経ってるんですよね?気になります。

あ、このニュースキャスターは、明確にジョセフ・クロンカイト氏をイメージしています。
船で出会った青年が彼だったかどうかは、あやふやにしていますけれど、仮に彼がジョセフだったとして、ヴェラはその存在を知りませんね。
ヴェラはテレビを持っていませんし、難しいニュースに興味を持つような知的水準にありませんし。
どこかでちらっと見かけたとしてもジョセフは立派になり身なりも完全に変わっているので、「そうかしら」と疑問を持つこともないかも。

まあ、たとえ「あの人だ」とわかったとしても、実際にジョセフが救い出してくれるなんてご都合主義にはならないでしょうから、知らない方がいいのかもしれませんね。

コメントありがとうございました。
2019.03.24 21:00 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
おお、明確に彼、という設定ではないにせよ、某ニュースキャスター様に
そうした背景があったとは……。
これまでどこかにそういった記述があったのかもしれませんが、
見過ごしていたようです、すみません。
キラキラしたイメージが強かっただけにちょっと驚かされましたが、
と同時に彼に対してさらに陰影と奥行きとが自分の中で増した気がします。

そして『郵便配達の花嫁』ですか!
コメント返信を見ていて思ったのですが、このシステム、
けっこう伸るか反るか、の部分があるのでしょうね……。
不幸にもヴェラの相手は、妻というより相手を使用人として
扱いたがった人だったのでしょうね。
日本でも、高齢の父母の世話をしてくれるお嫁さん目的で
婚活サイトに登録している人もいるようですし。

そんな彼女にとって若い頃船で出会った青年が、ある意味今の生きる指針になって
いるのですね。
救いがないのに救いがあるというような、不思議な読後感になりました。
今後、ほんのささやかな救いでいいので、彼女が何か幸福になるような
きっかけが訪れてくれるといいなぁと、祈りにも似た気持ちを覚えました。
2019.03.31 05:25 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

そうなんですよ。TOM−Fさんのところのジョセフはユーゴ難民出身なんです。
http://tomf777.blog129.fc2.com/blog-entry-293.html

この小説に、彼の出自について、彼視点で記述されているシーンがあります。
ジョルジアが彼を盗撮(?)したシーンは、TOM−Fさんがお書きになった彼が失った家族の墓参りをしていたシーンをイメージして書いたのです。そういう背景があるので、彼はエリートにもかかわらず、弱者にもいつも優しい視点を持っているのですよね。

「郵便配達の花嫁」ですけれど、名前はともかく、それほど珍しいものではないようですね。
このヴェラのような白人女性を探す「金髪美女出会い系サイト」みたいなのもありますけれど、日本だとなかなかお嫁さんの来ない農家などにアジアからのお嫁さんを探すお見合いシステムみたいなのもあるみたいですし、自分の文化圏ではなくて、経済的により貧しいところから外国人を連れてきてもらうというアイデアは、世界中にあるようです。

なぜそうなるかというと、やはり同じ文化圏だと条件だけで断られるからでしょう。ヴェラの話のモデルにしたサイトを見ましたけれど、超絶美人なロシア人がいっぱいでした。あの容姿のアメリカ女性は昼も夜も働かされるようなテキサスの農家にはまあ、行かないだろうなと。スイスでも、やはり地元の女性は主張ははっきりするし、いい男のところにはいい女は群がりますが、そうでない人は厳しいみたいなんですね。日本でもそうかもしれませんけれど。

一方で、例えば婚活サイトや結婚相談所に行って「超いい暮らしをさせてくれる金持ち男性か、豪邸に住まわせてくれるいい男を紹介してくれ」といっても、なかなか簡単にはいかないのと同じで、そもそも結婚は何年も付き合っていても実際に住んでみたら合わないことだってあるくらいで、条件だけで相手も知らずに決めて、上手くいくかどうかはやはりかなり大きな賭だと思うんですよ。

ヴェラは、最初から最後まで、かなり他力本願な生き方をしていて、しかも、必死に這い上がろうと努力をしていないと思うんです。
酒と煙草に逃げていますし。
でも、「彼」であるかどうかは別として、ジョセフのように、同じような最下層からあそこまで登っていけるような人って、何万人に一人もいないと思うんです。で、ヴェラみたいな人に「ああいう人もいるんだから、お前も頑張れ」と言うのは残酷なことだと思うんですよね。弱い人は、その努力ができないのですから。

私の小説に出てくるのは大半がヴェラのような弱いタイプで、書いている自分自身が「これじゃダメだよな」と突っ込みつつも、少しでも救いがあるといいのになあとは思っています。まあ、書きませんけれど。

コメントありがとうございました。
2019.03.31 20:59 | URL | #9yMhI49k [edit]

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