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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】霧の彼方から(2)はじめての夜と朝 - 3 -

「霧の彼方から」の続きです。三回に切った「はじめての夜と朝」のラストです。

しつこく予告してきましたが、今回は一応R指定です。性的描写が苦手な方はお氣を付けください。といっても、大した描写ではありませんが。


霧の彼方から「霧の彼方から」を読む
あらすじと登場人物




霧の彼方から(2)はじめての夜と朝 - 3 -

 それからしばらく時間が経ったらしい。安堵してリラックスしたのか、ウトウトしたようだった。再びドアの開く音がして意識が戻った。ジョルジアは瞼を開けて、彼が入ってくるのを見た。電灯はいつのまにか消えていて、ロウソクの光がサイドテーブルのあたりだけを浮かび上がらせていた。

 彼はそこにそっと水の入ったグラスを置いた。彼女の不安で強張った表情を見ると、ベッドの端に腰掛けて微笑んだ。
「ただ眠りたい?」

 彼女は、首を振ると彼に向かって手を伸ばした。彼は頷いてバスローブを脱いで椅子にかけると、サイドテーブルに置いたロウソクを吹き消した。その時に、ジョルジアには彼の何も身につけていない肉体が見えた。初めて見る彼の下半身も。同情でも憐憫でもなく、彼の肉体が彼女を欲しがっている証を見て、ようやく彼女は愛されなかった記憶の呪縛から解放された。

 蝋の香りが満ちて消えた。その灯りが消えても暗黒にはならなかった。窓から月の光が差し込み、寝室は青く照らされた。シーツに彼が滑り込んできて、熱を持った腕と胸に抱きしめられた。彼はもう一度貪るように口を吸うと、彼女がまだ纏っていたバスローブを脱がせて、抱きしめた。肌と肌が触れ合った時は、電流が流れたようだった。静かな部屋に自分のものとは思えぬため息が響いた。

 彼の温かい大きな掌が、彼女の肩を通り、滑るように左の乳房を包んだ。僅かに乳首の近くに指が触れただけで、反応するのがわかり彼女は頬を赤らめた。その指はそこに止まらずに、乳房の下に向かい、普通の女性のそれとは違いザラザラとした痣の始まりの部分に触れた。

「痛みや不快感はないかい?」
彼の囁きに、彼女は首を振った。
「いいえ。触覚は普通の肌と変わらないの」

 青白い光の中に浮かび上がる優しい瞳が輝いた。
「そうか」

 それから、彼は、彼女を苦しめ続けてきたその肌に口づけをした。甘美な悦びを、そこから教えられるとは夢にも思わなかったジョルジアは、愛されるということがどれほど幸せなのかを知り、もう一度、涙を流した。

* * *


 目が覚めた時、最初に躰の間に疼く痛みを感じた。それから、昨夜に初めて知った肉体の悦びの事を思い出して微笑みながら横を見た。そして、グレッグと目があった。

「おはよう」
彼は穏やかで優しい。

 ジョルジアは、はっとした。もうずいぶんと陽が高い。いつも朝焼けの中をルーシーと散歩している彼には遅すぎる時間だ。
「ごめんなさい。もうこんな時間! ルーシーが怒っているかも」

 彼は笑った。
「僕が、人生で一番幸せな朝を過ごしている間くらい我慢して待ってくれると思う。今までの夢と違って、朝目が覚めても君は消えないんだ」

 ジョルジアは、彼の胸に顔を埋めて呟いた。
「あなたはとても優しいのね」
「どうして」

 彼の質問にどう答えていいのかわからなかった。以前、彼と愛しあった女性はどんな人なのだろう。年甲斐もなく初めての痛みに呻いて興ざめさせたりしなかっただろうし、リードしてもらうだけではなく彼を悦ばせることもできただろう。彼はその人と満ち足りた夜と幸福な朝を経験したはずだ。

「またチャンスをちょうだい。あなたが満足できるように、努力するから」
ジョルジアは自信なさげにつぶやいた。彼は、意味がわからないという顔をしていたが、はっとして、顔を赤らめた。

「僕こそ……。あまり幸せで、その……いろいろと見失ってしまって、すまない」
  
 ジョルジアは、彼の顔をじっと見つめて微笑みながら首を振った。昨夜の彼は、まるで別人のようだった。いつものように思いやりがあり優しかったが、映画の中のヒーローのように、能動的で、躊躇することなく彼女をリードした。

 今朝の彼は、少し自信がないような、いつもの彼に近い振る舞いだ。ジョルジアは、どちらの彼のことも、それぞれに心地よく愛しいと思った。

「私もよ」
彼女は、しがみついた。彼は笑顔になり、彼女を抱きしめてキスをした。そのまま二人でまたシーツの中に潜り込もうとしたところ、ドアの外でルーシーが吠えた。二人は笑った。
「さすがに、これ以上待つのは嫌らしい」
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Category : 小説・霧の彼方から
Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
更新、お疲れさまでした。

おっと、なかなか美的なXXシーンじゃないですか。
月の光の差し込むベッドで、というのは映画のワンシーンのようでした。それに、しっかりとRしてるし。
ジョルジアにとっては、たしかにこの「儀式」は必要でしたね。彼女が解放されるくだりは、ほんとにホッとしました。

で、お泊りの翌朝の話題が、ルーシーですか……(笑)
まあグレッグの生活サイクルをちゃんと気にしているところとか、好感は持てますけどね。
そしてやはりグレッグさん経験ありでしたね(ですよね?) このオクテな人物がそういうことになった事情については、ジョルジアでなくても気になるところです。
ジョルジアのいじらしい言葉に、でもちゃんと対応したグレッグ。なんか幸せの絶頂という感じで、うらやましい……もとい、微笑ましいですね。

次話は、イギリス編に戻るのでしょうか。
続きが楽しみです。
2019.04.24 15:39 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

この程度のシーンでも、けっこうオロオロしている私。慣れないモノを書くと疲れます。
ほぼ朝チュンですけれど(笑)

月明かりは、田舎あるあるですね。
都会から来ると驚く明るさですけれど、このくらいがストーリーにはちょうどいいです。
ばっちり電球つけるわけにはいきませんし、かといって真っ暗だとストーリー上、わけわからないし。

で、18Rそのものはどうでもいい、というか「アラフォーカップルなんだから、やらないわけないだろう」なのですけれど
(1)コンプレックスがここで解消したことと(2)新たな疑問が湧いたの二つがここでは重要だったのですね。

グレッグは、ええと、シマウマの交尾を見て研究しました……なんてわけなさそうですよね。
四十歳なのに「こいつ童●じゃなかった!」とか驚かれているあたり。
この疑問に関する真相も、このストーリーで明らかになっていく予定です。

ルーシーは、じっとご飯を待っています。「あ、起きたらしい」と思って客間の扉の前でじーっと。お腹空き空きですよね。

次話は、まだまだ、アフリカにいます。そんなに長い話じゃないのですけれど、前提が結構長い。
もう少々お付き合いくださいませ。

コメントありがとうございました。
2019.04.24 20:01 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
シマウマの……で笑いました(o^^o) でも、実はそうかもしれない、と思わせる辺りがグレッグですね。
ジョルジアの心の傷が癒やされていく過程が素敵ですね。なんというのか、これはもう、口で「愛している」といわれても実感を得られない限りは、癒やされようのない傷だったと思うので、こうしてちゃんとシーンに興さないと、読者も実感が無くなっちゃうというのか。

美しいシーンの方が、書いていると照れちゃうのです。なんか分かります(o^^o)
私、けっこう酷いシーン書いてましたが、あれって、格闘シーン並みのドライ感で書いているので、逆にあんまり恥ずかしくなかったんだなぁ。色気がないというのか。でも、漫画で言うと、バックに薔薇が描かれているシーンになるようなパターンのほうが、書いていても読んでいてもドキドキするんですよね。だから、自分が書くときは、逆に細々と書かないですっ飛ばす癖があります。だって、ラブラブなシーンって表現が追いつかないんですもの。格闘シーンなら、にらみ合って、ここでビール瓶が割れて、膝蹴りして、云々、って書くこといっぱいあるけど、ラブラブってほんと、何かいたらいいの? ってなっちゃう(どんなけ色気がないんやら)。だから、書いても読んでも照れちゃうけれど、照れちゃった後にほっこりが残るシーンであることって、大事だなぁと思ったりしました。

何はともあれ、新たな疑問が湧いたってあたりも大事ですね。って、ジョルジアはグレッグをどんなふうに思ってたのかしら(^^;) そうそうまさかね、童○でしたって、ないよね。これからパースに行って、なにやら疑問が膨らむのか、解消するのか、楽しみです。
そうそう、ルーシーも散歩は我慢できてもご飯は譲れないわ、ってとこですよね。
2019.04.26 01:17 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
キャッ、ロマンチック///
そしてグレッグさんがイケメンになってる
いったいなぜ…
実はこう見えて母性本能をくすぐり
数々の浮名を流してきたモテ男だったらどうしよう…><
2019.04.26 14:18 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

まあ、マッテオや拓人みたいに、「よりどりみどりで経験しまくり」でないことは、ご想像の通りです。
でも、シマウマ学習だけじゃなかったみたいですね。

人間は機械のように「スイッチ入れたらできる」というものでもないので、「愛しているから」確実に「できる」ってものでもない(とくにグレッグみたいなこじれた男性の場合)のですけれど、ストーリーの都合上、ここで「ちょっと今夜は無理」などになってしまうと、ジョルジアのトラウマはもっと面倒くさいことになっちゃう→話が無駄に延びるので、ここはあっさりといけたことにしました。

まあ、こんなシーンを書いても、きっと誰も読みたくないよなあ……と思ったので「郷愁の丘」では書かずに逃げたのです。
で、ご要望に従って書いてみたんですけれど、このシーンだけ外伝で書いてもあまりにも「なんだかなあ」なので、せっかくなのでグレッグの過去にスポットライトを当てる続編のきっかけにすることにしました。

で、恋愛関係シーン、他の行為に関しては、それなりに「美しく」書けるモノもありますけれど、この最終的な行為に関しては、そもそも全然「美しい」ものじゃないので、どう書いても大して美しくならないんですよね。「熱い」だけならまだしも、具体的に書けば書くほど、どちらかというと「キモい」ものになっていくわけで。だから私は毎回ギリギリまで書いて速攻朝チュンで逃げるわけですけれど。それを果敢に書かれる皆さんの勇氣や手腕にはいつも感心しているわけなのですけれど……。

ジョルジアは、おそらく(自分のことにいっぱいいっぱいで)「グレッグって童●かな?」とか考えたことはなかったと思うんですが、やっている間に「あれ?」と思ったようです。「めっちゃ慣れてる?」みたいに。実は、大して慣れていなかったと思いますけれど。

ルーシーは、頑張って待っていたようですが、あまりイチャイチャしているようなので、自己主張してみたんでしょうね。
このあと、実は、レイチェルから電話があって、速攻で行くことになるので、どっちにしてもイチャイチャしているヒマはなかったのですけれど。どっちにしても、その記述は飛ばして、次回は半年後です。

コメントありがとうございました。
2019.04.26 20:59 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

ロマンチック? イケメン?
グレッグに似合わないボキャブラリーをありがとうございます。

しかし、母性本能をくすぐる作戦なんて、そんな計算高いことができたら、もうとっくにモテモテになっているはず!
すくなくとも全然モテてませんからねぇ……

コメントありがとうございました。
2019.04.26 21:12 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
この2人もようやくここまできましたね。
普通の人なら一週間でたどり着いたであろう情事。でもこの2人だからこそ、この優しいシーンが生きてくるんですよね。
私は普通に愛し合う男女のベッドシーンを書いたことが無いんですが、大海さんのおっしゃるように、ノーマルなほど、書くの照れちゃいそう。
でもこれが書けないと一人前じゃないともいうし( ;∀;)
いつか書く日が来るのかなあ。(そもそも恋愛ものが書けるのかという疑問が……)
と、ともかく、二人はここからやっときちんとすべて繋がることが出来たのですよね。
グレッグがちゃんとリードを取れたことに、すごく安心しました。
やるじゃん。よかった。こういうところはちゃんと男なんだと、見直しました。
ここからは安心して二人を見守って行けそうです^^
2019.04.27 00:57 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
ずっとこのシーンが読みたかったので大満足です。
適度に抑制された描写は素敵でした。
グレッグの自然な優しさ、ジョルジアの不安と喜びが素直に伝わってきて、とても感動的ですらありました。ロウソクや青い月光の演出も素敵でした。
「痛みや不快感はないかい?」という問いかけに、優しさに加えて生物学者の性を感じてしまいましたけど。

このういうシーンを描写するのは難しいです。
自分の中にこっそりと潜ませているものを公開してしまったような気分になってしまいます。まぁいいや皆これくらいは書いているんだし、なんて開き直らないと書けないです。
それに細かく描写しすぎると別ジャンルの小説みたくなってしまって、作品の雰囲気を壊してしまうことすらありそうですからね。
サキの場合は、シスカの続編で書いたのくらいが精一杯で、ほとんどすっ飛ばしてしまいます。ま、作品の雰囲気云々というよりも、ようするに書けないんですけれど・・・。
書いてほしいなんてリクエストしたサキが言うのも何ですけど。すみません。

そして“朝チュン”(?これ良い言い回しですね)ジョルジアの前向きな発言になんだか安心しました。
グレッグの方は少ないながらも色々あったようですが、これについてはジョルジアも問題視しないでしょう?
今のところという条件が付いていそうですけれど・・・。
最後のルーシーが良いアクセントになっています。
2人の表情が目に浮かぶようです。
2019.04.27 05:33 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんにちは。

この歳で、この遅さはかなり異常ですけれど、それでもここにようやく到達し、やがて家庭を作るんですね。

さて、limeさんはもっと上級者向けシーンをさらっとお書きになっているので、「普通」をまだ書いたことがないというのは驚きです。
まあ、でも、必要もないのに書くものでもないですよね。
「ただの恋愛モノ」を書かない限り、出てこないシーンですし(笑)
普段は、私も書きませんね。「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」みたいに直前で切っちゃう。
実際「郷愁の丘」も書かずに逃げ切ろうとしたのですが、許してもらえませんでした。

グレッグ、ちゃんとリードしたようです。
でも、意外でしょう? あんなに求愛にモタモタしていたから、本番もモタモタするに違いないと、読者もジョルジアもそこはかとなく思っていたりして。
そこが出発点になっている話だったりします。

とはいえ、別に婚約中に騒動が起こって云々というほどの不穏な事態はないので、のんびりと追っていただけると嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2019.04.27 09:40 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんにちは。

もともとサキさんのリクエストで書いてみたこのシーンから広がった中編なので、(もともとの裏設定はありましたが)、ひとまずご満足いただけてほっとしました。

日本の都会の話だと「ロウソク」「月の光」はいまいち「演出やりすぎ」の印象があるでしょうが、アフリカやヨーロッパの田舎では、かなり日常アイテムなので、描写には使いやすかったです。

シャワーから戻ってきてからもう一度意思を確認したり、例の肌に触れる前に質問したのは、いつもの思考癖「本当は嫌なんじゃないか」が前提にあるんですけれど、基本的にはこの意思確認って大切なことなんですよね。オラオラ系の方が様々な作品ではもてはやされたりしますが、現実の世界では、オラオラ系は家庭内暴力に近い不快感で受け止められますし。

ここまであからさまでなくても、ラブシーンを書くのは恥ずかしいですよね。私もできれば書かずに済ませたかったんですよ、サキさん!
といつても、他の方の書いていらっしゃるモノに比べたら、ほぼ「逃げた」に近い描写ですけれど。ま、あまり具体的に書くと、結局興ざめになるんですよ。大してきれいなものでもないですしね、例の行為そのものは。

「朝チュン」って、今や死語なんですね。
昔は、ごく普通に通じたんですけれど。今のように、少女マンガにあからさまに性描写が許されなかった時代、「いざ」というシーンの直前まで描写して、すぐに翌朝鳥チュンチュンが鳴いているシーンに変わる、お決まりのパターンのことですね。

さて、グレッグの過去について、ジョルジアが氣にしだしたのがこの晩なのですけれど、それについては本文でいろいろと触れていきます。まあ、「過去に他の人がいたのが許せない」なんてことはないですよ。グレッグもう40歳だし。

一番悩みがないのがルーシーですけれど、でもお腹はすいたみたいです。餌をあげないとね。

コメントありがとうございました。
2019.04.27 10:50 | URL | #9yMhI49k [edit]

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