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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】豪華客船やりたい放題 - 5 -

大海彩洋さんと、ちゃとら猫マコト幹事で開催中の「【2019オリキャラオフ会】豪華客船の旅」の参加作品の第五回目です。

お目付役の京極に見つかってしまったので、仕方なく一緒に船内を回ることにした山内拓也。現在は『不思議の国のアリス』コスチュームをしたアンジェリカの外見です。ただし、中身と声は拓也そのものです。

今回は、中途半端な『旅の思い出』と参加者のみなさまとのコラボ系を少し書いてみました。それとレストラン名などは、数学パラドックス系で遊んでみただけです。次回、最終回にできるかなあ、頑張ります。


オリキャラのオフ会


【2019オリキャラオフ会】豪華客船の旅の募集要項記事(大海彩洋さんのブログ)
私のところのチームの詳細設定/この話をはじめから読む



目が合ったそのときには 3
豪華客船やりたい放題 - 5 -


「すげーな、豪華客船って。プールもある、カジノもある、レストランやバーもいっぱいある、船室だっていくつあるんだか」
アメリカ人少女、アンジェリカの外見に成り代わった俺は、執事コス、もといタキシードをビシッと着こなした京極に付き添われて船内を歩いた。

「客船に乗るのは初めてか?」
京極が訊いた。

「もちろん。お前は、初めてじゃないのかよ」
「子供の頃に、何回か乗ったことがある。もっとも世界一周するような客船ではなくて、三日くらいの国内クルーズだったけれど」

「へえ? 海外のクルーズだっていくらでも行けるだろうに、なんで?」
「父は仕事人間でね。三日以上の休みを取ったことがないんだ。家族旅行そのものも滅多に行かなかったけれど、行くとしても最長三日。それも、お盆や年末などの会社の閉まる時期だけだから。どこへ行っても混むのがわかりきっている。だから、定員以上にはならないし、渋滞もないクルーズ旅行をしたんじゃないかな」

 そうなんだ。
「で、この船と較べてどうだった?」
「僕は子供だったからね。何もかもが大きくて、夢のように見えた。もっとも、実際には、この船の方がずっと大きいし、豪華だし、スケールも桁違いなんだけれどね。オーナーはもちろん、招待客にしろ、用意されている食事やアトラクション、エンターテーメントにしろ」

 そうなんだっけ? エビフライやスパゲッテイは、けっこう馴染みっぽい味だったけどな。

「どこがそんなにすごいんだ?」
俺が首を傾げると、京極は壁に掛かっているポスターを示した。

「例えば、ほら。メインダイニングでは、今夜は相川慎一とテオドール・ニーチェがベートーヴェンのソナタを聴かせてくれる。明日は、新星ディーヴァとの呼び名も高いミク・エストレーラによるディナーコンサートだ」

「俺、そういう高尚なのは、よくわかんないからな。こっちのほうが面白そうじゃね? 高級クラブ『サンクトペテルブルク』でワンドリンク付きショウってだってさ。おい、見ろよ、このシスカって歌手の姉ちゃん、銀髪にオッドアイだぜ。戦闘服系のコスプレさせたら、メチャクチャ似合いそう」

 京極がため息をついた。なんだよ、思うのは自由だろ。
「お。こっちも、いいじゃん」
俺の指したポスターを見て、京極は「ほう」という顔をした。

「君もスクランプシャスのファンなのか」
俺はムッとした。俺だってアニソンの専門じゃないんだよ。スクランプシャスは若者の思いを代弁してくれる名バンド。ま、俺も若者っていっていいのか、若干怪しい年齢にさしかかっているけどさ。

 しかし、まさか生スクランプシャスがここに来るとは。ライブはいつなんだろう。お願いだから『魔法少女♡ワルキューレ』放映時間とだけは重ならないでくれよ。

 そんな話題を花咲かせながら、俺たちは豪華客船の中を歩いて行った。

 目立つメインダイニングに行くことを京極が渋るので、俺たちはカジノを横切り、わりと目立たないカフェテリア『アキレスと亀』を目指した。

 カジノでは、アラブの王族みたいな服を着た男と、小柄の中年のおっさん、それに胡散臭いオヤジが、目も醒めるようなタイコーズブルーのドレスを着た女と勝負をしていた。はじめはけっこう余裕をかましていた男たちだが、みるみるうちにチップが女の方に移動していく。へえ。すげえ。

「なあ、京極、俺も少し賭けていい? あの赤い髪のねーちゃんみたく賭ければ、少し儲かるかも。そしたらコスプレも、自分の金で買えるようになるし」
そういうと、京極は首を振った。
「君は今、十歳のアンジェリカ嬢なんだ。カジノで賭け事するなんて言語道断だ。行くぞ」

 ちぇっ。本当にお堅いんだから。少しぐらいいいじゃん。

 カジノを横切って再び廊下に出ると、小脇に二頭のハスキー犬ぬいぐるみを抱えたとても幼い少女とぶつかりそうになった。おっと。

 少女はぽかんとしているだけだが、抱えたぬいぐるみ達が眉間を釣り上げて吠えかけたような氣がした。
「なんだよ、怖えな。わざとじゃないって」

 少女を氣遣っていた京極が振り向いて「なんだって?」と訊いた。
「いや、そのぬいぐるみが、怒ってしかもちょっと火を噴いたような……」
俺が言うと、京極は今日何度目になるかわからないため息を漏らした。

「ハスキー犬が怒っているように見えるのは普通だろう。模様だよ」
ま、そうだよな。よく見てもやはりぬいぐるみだし。京極の女に対する神通力は、幼児から老婆まで変わらないらしく、小さな女の子は俺なんか見もせずにヤツににっこりと笑いかけて手を振った。

 まあいいや、とにかくメシ食おう。カフェテリア『アキレスと亀』は、その廊下の突き当たりにあった。黒をメインにしたインテリアに、ギリシャ風の壺などがあちこち置いてある。

 俺は、メニューを開いて「うーん」と唸った。なんだよ、ここ、ギリシャ料理の店じゃん。俺は、普通の洋食が……。あれ、このムサカってのは美味そうだな。茄子のグラタンみたいなもんじゃん? それにほうれん草のパイか。それももらおう。それにえっと、飲み物は、おおっ。ウゾか、結構強そうだな。

「それはダメだ。君は十歳なんだから」
京極がすぐにダメだしする。ちっ。ま、いいか、このヨーグルトドリンクみたいなヤツで。

 選んでいると、奥の方のステージに灯がついた。ミュージシャン登場かな? でも、この店、まだ開店休業状態じゃん。俺たちの他にいる客といったら……、あ、白っぽいキャミソールドレスを着た女が一人か。お、すげー美人だ。それにあのスタイル。ポン、キュッ、ポンてな具合だよな。今のドレスもいいけど、コミケで着せるとしたらやっぱりピッタリとした戦闘スーツかなあ。別に戦闘系にだけ萌えるわけじゃなんいだけどさ。

 ともかく、客より従業員の方が多そうな状態だけれど、何かショーが始まるらしい。

 見ると、奥にわずかに他の床よりも高い場所があり、大広間にあったのとは比べものにならない古ぼけた感じのするピアノが置いてある。そこに着崩した麻のジャケットを着た金髪の男が座った。フルートを持った女や、ギターを抱えた男もステージに上がってきた。この二人はアジア人だ。それから、ひょろひょろとしたもじゃもじゃ頭の眼鏡男がピアノの前に立った。

 最初に弾きだしたのは、ギターを持った日本人。流れてきたメロディは、ギリシャ風の曲だ。あ、これ聴いたことがあるような。ギリシャ観光局って感じ? 別にどうということのない曲なので、メシを食うのに邪魔になることはなさそう。もじゃもじゃ頭の眼鏡男はなぜかトランプ手品を繰り広げている。

 俺は目の前に置かれたムサカに取りかかることにした。あっちっち。茄子と挽肉のグラタンみたいなもん? 美味っ。
「上品に食べてくれよ」
京極がささやく。うるせえな。お前は食わないのかよ。

 ヤツは、舞台の方に集中している。金髪男がピアノで先ほどより上品そうな曲を弾き出して、手品男もトランプをしまって歌い出した。意外にも上手いのでびっくり。

「モーリス・ラヴェルの『五つのギリシャ民謡』だな」
京極が頷く。
「なんだよ、お前、知ってんのか」
「ああ。ギリシャの民謡に素晴らしい和声のアレンジを加えて作った作品だ。この店に合わせてこの曲目を用意するなんて、洒落たアイデアだと思わないか?」

 俺は「うん」とは答えてみたものの、いまいちピンときていない。飯が美味ければ、何でもいいんだけど。京極はレチーナワインを飲んでいるだけで、全然食わないので俺がどんどん片付ける。舞台の曲は、アジア女のフルートや、ギター男が演奏に加わり、なかなか華やかな演奏になってきた。

 その『五つのなんとやら』が終わったらしく、客席から拍手が起こった。京極、白いドレスの綺麗な姉ちゃんや、いつの間に入ってきたのか他の観客も拍手を送っている。

 舞台のギター男がさっと立ち上がり手を伸ばした。その先にいたペパーミントグリーンのドレスを着たショートカットの女が、舞台に上がった。あ、この顔は知っている。さっき京極がポスター見ながら褒めてた歌手じゃん。初音ミクみたいな名前の、ええと、なんだっけ。

 一層大きな拍手に迎えられ、彼女は優雅にお辞儀をした。もじゃもじゃ男は舞台から降りて、アジアの二人と金髪男が伴奏をはじめた。

 おお、この曲はよく知っているぞ。なんて曲か知らないけれど。
「映画『日曜日はダメよ』のテーマ曲『Ta Pedia Tou Pirea』だな」
京極が解説してくれる。

「何それ?」
「ギリシャを舞台にした名作映画だよ。曲名は『ピレアの男たち』って意味じゃないかな。アカデミー音楽賞も取ったはずだ」

 澄んだ歌声は心地よい。さすがメインダイニングで歌う予定のディーヴァ。見るとキャミソールドレスの別嬪姉ちゃんも、さっきのもじゃもじゃ眼鏡男の時とは全く違う熱心さで舞台に見入っていた。

 俺は、とりあえずほうれん草のパイを片付けるのにメチャクチャ忙しい。京極、悪いけど全部片付けちゃうぞ。美味いし。

「ところで、君はいつまでアンジェリカ嬢の身体を乗っ取っているつもりなんだ」
京極は声を潜めて訊いた。

「ほんのちょっとだよ。うまいもん食って満足すればそれでいいんだ。最長で明日の『魔法少女♡ワルキューレ』放映時間までには戻してくれって頼んである。あの子が、船のあちこちを見るのに飽きちゃったら、すぐにでも終わりだろ。ほら、そこにも四角い額縁があるしさ」
俺は、ガツガツとフェタチーズとオリーブ入りのサラダをかき込んだ。

追記


忘れてた……。ミク嬢が歌ったのをイメージしたのはこちらです。

Ta Pedia Tou Pirea - NANA MOUSKOURI


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Tag : 小説 連載小説 コラボ オリキャラのオフ会

Comment

says...
更新、お疲れさまでした。

京極&山内コンビ、船内を楽しんでしますね。
あ、もっぱら楽しんでいるのは、山内氏か。ほんと、いいキャラだなぁ。

京極氏の旅の思い出、クルーズなんていいなぁと思いましたが、そうか、家族旅行にゆっくりと行く機会はなかったんですね。なんだか、弾丸ツアー上等!な私も、身につまされるような……。

カフェ『アキレスと亀』ですか~。いったい、誰が誰に追いつけないのやら。
ナイスバディのねえちゃんは、アイツですね。いそうだな、そういうところに。
そして、ここで大道芸人の皆様に、ミクのご登場ですね。あっちゃ~、あいつ、ミクにも色目使ってるのか。節操ないなぁ(笑)

次話で最終回の予定なんですね。
はたして、船のオーナーと面会がかなうのか、楽しみにしています。
2019.11.05 04:52 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
山内は相変わらずあの格好で好きなことをやって食べまくっていますが、京極がお目付け役についてくれていますのでとりあえず安心しています。
なにしろアンジェリカですからね、無茶苦茶をされてはたまりません。
でもさすが夕さん、よくこれだけ食べ物が次から次から・・・
今回、食べ物と同様にたくさんの人物が登場してきますが、サキの読書量が足りないのか、分かるキャラと分からないキャラがいますね。

そしてミクとシスカに絡んでいただいてありがとうございます。

シスカの歌うクラブ名、イメージにぴったりです。
戦闘服は確かに似合いそうだけど、そんなコスチュームでコミケのような場所へ出したらコスプレーヤーとしてかなり有名になりそう。
ミクが新星ディーヴァとの呼び名も高いってのは、作者も知りませんでした。
そしてなんとミク、Artistas callejerosの4人組と競演させてもらってますね。ということはお蝶やヤスやレネやヴィルとも知り合いになったということですね。
これは嬉しい!
蝶子とは同じぐらいの年齢になるのでしょうか?どんな会話を交わしたのか気になります。
選曲も軽妙で素敵です。声のイメージはちょっと違っているけれど・・・。

無理して送り込んだかいがありました。
楽しませていただいてます。
2019.11.05 11:50 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

山内拓也は美味しいキャラです。
とくに、こういう他の方に任せて好き勝手やってもらう場では、重宝します。他の方も遠慮しなくて済みますし(笑)

京極みたいな、恵まれすぎキャラが、羨ましくなるような旅の話をしても「けっ」とか思いません?
なので、バランスを取らなくちゃと思ってしまいました。
京極パパって何やっているんでしょうね? (設定皆無)

レストラン名などは、考えるのが面倒だったので、みなさんが「シュレーディンガーの猫」をあれこれと語っていらっしゃるので、「片隅でウロウロ派」は、数学パラドックス系で揃えちゃえと。で、メインダイニングでは大物が立派な演奏をしているので、特に呼ばれていない四人組は、こっそりとこの辺で。

そして白いドレスのお方はもちろんあの方です。
神出鬼没っぽくいらしていただきました。そりゃレネよりミクの方がお好きですよね(笑)

あまり長く連載していても、特に面白い話ではないので、次回辺りで終わらせようと思っています。
ま、特に盛り上がりもないと思いますけれど。
タケルパパと面会? 無理無理。うちの参加メンバー、みなモブですから。

コメントありがとうございました。
2019.11.05 21:10 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

ま、いいんですよ、アンジェリカは子供ですし、そもそもモブキャラですから。

ギリシャ料理は、店名から決めました。『サンクトペテルブルク』の方にしなかったのは、実はロシア料理はさほど得意ではなかったからだったりして。地中海料理は、万人受けする味だと思います。

シスカは、メインダイニングで大々的に歌うよりも、「わかっている人だけが来る」みたいな目立たないところで歌いたがるイメージです。ミクの方は、大きな舞台も喜んで立つでしょうけれど、こういう目立たないところにも来てくれるように思いまして。

拓也の妄想は、ほっておいていただいて結構です。
困ったヤツですから。

さて、登場させたゲスト、わからない方いました? 
けいさんの所だけ、実際の参加者がまだわからないので、他の方が既に書いている「夢叶」で出てくるバンド「スクランプシャス」。あとは、ポールさんのところの紅所長、志士朗さんのところのキィさんたち、TOM−Fさんの所からは「スクルド」にご登場願いました。

そして、サキさんのところがご指摘の通り、シスカとミクです。
ミクは一度、カルちゃんとアントニアの会話の中で出てきましたから、Artistas callejerosの四人と同時代扱いでもいいのかも。
もっとも、タケルパパやタケル、慎一たちとは完全にタイムパラドックスなんですけれど(笑)
だからここで年齢の話をしても仕方ないのかな。

選んだのは、ギリシャのスーパースター、ナナ・ムスクーリの曲の中でも本当にギリシャっぽい曲です。
この人、もともと声楽畑の出身で、もっと高い声で歌うことも多くて、その方がミクのイメージに近いと思っていたのですけれど、フランス語やドイツ語の歌よりもギリシャのものにしたかったのでこの曲にしました。

喜んでいただけて何よりです。

コメントありがとうございました。
2019.11.05 21:23 | URL | #9yMhI49k [edit]

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