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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

同居するカップルのあり方に思う

今日は時事問題について思うことを。

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このブログでは滅多に政治問題には触れないのですけれど、これは政治問題であると同時に社会のあり方の話であるし、同時に比較文化の話でもあるので、現在感じることを綴ってみることにしました。

国会で野党からの選択的夫婦別姓に関する質問中に「だったら結婚するな」という与党女性議員のヤジが飛んだ、とニュースになっていました。

この発言、発した本人は「言ったのは私です。逃げも隠れもしません」と正々堂々という覚悟も「(婚姻において一つの姓しか名乗れない)民法750条には、これだけの正当性がある」という論拠もないようです。だったら言うなよと思いますが、言ってしまったのは、本人の中に、もしくはその方を「あなたは正しい」と日頃持ち上げている人たちの中に、「婚姻関係を結ぶ」ことがすなわち「●●家に所属する」という発想が深く根を下ろし、実際の多様な家族のあり方との差に目を向けることがないからなのではないかと推察します。

論拠としては「日本の伝統」(実際にどれほど長い伝統なのかという疑問はさておき)なのかもしれませんが、現在の日本国憲法では「婚姻」について下記のように定めています。

婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。



要するに「婚姻」と「とある家に属する」ことは特に関連性はなく、単純に民法750条の縛りが必要なのかどうかという問題だということになります。そこで、その論議をしようとしている、という話ですよね。

人によっては、全て混同してしまいがちなのですが「婚姻」と「結婚」と「入籍」同じではありません。(いま話しているのは、日本の制度と法律に限っての話です)

「結婚」は定義が難しいのですけれど「人生を共にしようと決めた二人が、社会的にそれを宣言すること」で、ようするに「あの二人は社会的に固定カップルになった」という社会的認識の話です。具体的な法手続をすること、もしくはしないことは、別問題です。

「婚姻」は、法律手続きのことで、日本の場合は「異性の二人(自治体によって例外もある)が、婚姻届を提出することによって、両方の所属していた戸籍から抜けて新たな一つの姓による戸籍を作成すること」です。

ちなみに誤用されている「入籍」は、「ある一名が既に存在している戸籍に入ること」なので、二人で新たな戸籍を作る「婚姻」ではなくたとえば「養子縁組」などに使う言葉です。

誤用される原因の一つが、「●●家の嫁になる」「●●家の婿養子になる」という家制度の認識のもと、二人で一つの戸籍を作成する「婚姻」と本当にある一つの戸籍に追加登録される「入籍」をごちゃ混ぜにしているからだと思います。この認識が「うちの嫁に来たくせに、いつまで経ってもしきたりをおぼえない」といわれて苦悩するとか「婿養子なので肩身が狭い」とかいった誤った苦しみも副次的に生み出しているようです。

話を元に戻しますが、というわけで、たとえば事実婚といわれる二人のあり方や、異性のカップル、国際結婚には民法750条の「婚姻」はあてはまりません。私は国際結婚をしたので、「婚姻届」を提出しましたが、日本国籍のない連れ合いはおなじ籍には入れないので、新しく作った戸籍には私一人しかいません。彼の名は、但し書きみたいに書いてありますが、私がもともとの姓をそのまま使っているので、連れ合いとは夫婦別姓ということになります。

スイスではどうなのかというと、私は外国人でパスポート上の名前が正式名になり、夫婦が同性である必要はないので、とくに論議することもなく夫婦別姓です。

そして、その別姓が、同姓を選んだ人とどう違うのかというと、社会的には何の違いもそれに伴う問題もありません。そりゃそうなんですよ。姓が同じだから愛情が増すわけでもないし、その反対でもないです。

私たちには子供はいませんが、いるカップルでも同様です。母親または父親と子供の姓が違うことも、「あ、違うのね」と紹介の時に認識してそれでおしまいです。いろいろな民族が一緒に住んでいますので、それぞれの風習が違いますし、姓が違うことをいちいち考えないという方が近いかもしれません。たとえば中国の風習では夫婦は常に別姓ですし、ポルトガルのように母親の姓−父親の姓という順番で名乗る国もありますし、そもそも姓がなくて「●●(親の個人名)の息子」という単語を姓のように使っている民族もあります。

更にいうと、そのカップルが法律的に結婚しているかどうかも、周りからはわかりにくくなっています。法律的な「婚姻関係」を結ぶかどうかは、主に税法上の法律的な意味合いは持ちますが、社会的には(ようするに他人にとっては)どちらでも同じなのですね。

私の住んでいるドイツ語圏スイスや、同じドイツ語圏の他の国では、そのことが言語にも表れています。「Meine Frau」「Mein Mann」という言葉は、直訳すると「私の女」「私の男」ですが、婚姻関係を結んだ二人だけでなく、事実婚状態またはこの間から同棲を始めたカップルまで幅広く相手のことを呼ぶのに使われます。

婚姻関係というのは法律上の家族関係だけであり、愛情の強さとか、家族の絆とか、子供のいじめ問題とかその他のあらゆる問題と直接的な繋がりはないし、ましてや夫婦が同姓であるとか別の名前を名乗るかで何かが変わることはありません。

スイスでも結婚に伴い、相手の姓を名乗ることを決める人も多くいます。「名前とメールアドレス変わりましたのでよろしくお願いします」ということは別に珍しくありません。それはその人の選択だというだけで、別に「いいこと」でも「悪いこと」でもありません。このほかに相手の姓の前か後ろに生まれながらの姓をつけるオプションもあります。

いずれにしてもそれはそれぞれの生活上の便宜を考えて本人が決めることで、相手や国やましてや関係のない他人に強要されるべき事ではないと、私は思います。二人が選んで同姓になる権利を奪われないならば、同姓であることを望まない当事者二人が違う姓を持ちながらも法律的な婚姻関係を結ぶことができるようになることの、どこがそんなに問題なのか理解に苦しむ私でした。


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Comment

says...
仰るように、本質的には夫婦が同姓だろうが別姓だろうが、なんの違いも不都合もないように思います。
当人たちの意思で決めればいいことで、法律や役所がどうこういうべきことではないでしょうね。その方が、女性の社会進出も進むと思うし(現状では女性が姓を変えることが多いので)。
あと、これはファンタジーな妄想ですが、婚姻でせっかく新しい戸籍を編製するのだから、新しい姓を名乗れるなんていうぶっとんだ法律にしてくれないかなぁ。私、すごくありふれた姓なので、かっけ~のを名乗りたいんですよね。割とマジに。
2020.01.27 00:52 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
個人的には一緒の性が良いとは思ってます。
ただ、それは個人の意見であって、政治的な意見ではなく。

政治は多様性を認めるべきだとは思うので、
選択肢は広い方が良いような気はしますがね。
今回の件で何が駄目かって、
ヤジを言った人が逃げ隠れていることなんですよね。
政治家の信念として、夫婦別姓はけしからん、と言うのであれば。
それはそれで政治家の理念をはっきり言うべきだと思います。
世の中絶対的に正しいものは存在しないのですから。
2020.01.27 15:15 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

時々見かけるんですけれど「夫婦の姓が一つになってこそ家族の一体感が得られる」みたいな論調、謎です。
そういう人(たいてい男性)に限って「じゃあ、妻の姓を名乗れば」というと「姓を変えると社会的に困る」とか言い出すんですよね。
一体感はいいのか。
反対にTOM−Fさんのご提案を一歩進めて「二人とも元と同じでない新しい姓を名乗れ」とかなったら「家族の一体感が」派の人はなんと言い出すのかなと思ったりします。姓なんて関係ないんですけれどねぇ、一体感とは。

しかし。自由に姓を選べるとなると、絶対にキラキラネーム問題になりますよね(笑)
ついいろいろと想像して脳内で遊んでしまいました。
結婚するときにキラキラ姓を名乗っておき、子供にキラキラネームをつける。
「聖闘士星矢」とか「北斗拳」とか「ゲゲゲの鬼太郎」とか(笑)
あと、「ローゼンクロイツ麗華」とか。

そこまで行かなくてもきっと田中さんや山田さんが減って萬里小路さんとか伊集院さんとか増えそう。

コメントありがとうございました。
2020.01.27 21:08 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

そうですね。
同じ姓がいいという二人が、どちらかの姓を名乗るのは、いいことだと思います。

その決定が尊重されると同時に、どちらも変えたくない二人の決定も尊重されてもいいって事なんですよね。

逃げる程度の信念の人は、国会で発言しないで欲しいですよね。
それもヤジなんかではなく、ちゃんと議論の場で発言して欲しいです。

コメントありがとうございました。
2020.01.27 21:13 | URL | #9yMhI49k [edit]

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