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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】Usurpador 簒奪者(8)太陽と影

『Usurpador 簒奪者』の続きです。

ようやくタイトルになっている「簒奪者」が、本文に出てきました。カルルシュの大きなコンプレックス、彼を生涯苦しめた言葉です。才能がないのに上に立たざるを得ない者と、才能があるのに何一つすることを許されない者。たった数日の誕生の違いで道が分かれてしまったことが、本来ならばお互いを思いやって仲良く生きられた兄弟の関係を壊してしまうことになります。

マヌエラは、その目撃者であると同時に、二人が和解できなくなってしまった要因そのものになっていきます。



『Usurpador 簒奪者』を読む「Usurpador 簒奪者」をはじめから読む
あらすじと登場人物





Usurpador 簒奪者(8)太陽と影

 その間に、22との近さほどではないものの、マヌエラはカルルシュとも親しい言葉を交わすようになっていた。始めは、単に法学に関するヒントを話すぐらいだったのが、天候の話や、彼女の家族の話、それに好きな食事の話など他愛もない話題についての雑談もするようになった。

 よく叱責を受けて、項垂れている彼が、短い会話の後で僅かでもリラックスして笑顔を見せることを、マヌエラは嬉しく思っていた。

 その朝もドン・ペドロは、カルルシュにレポートを突き返した。
「いいか。カーネーション革命が無血に終わり素晴らしい、などという文言は、単なる感想文に過ぎない。そんなことはどうでもいいのだ。肝心なのは、40年間続いた独裁体制が終焉に至った社会的背景だ。このレポートには、植民地戦争やソビエトやキューバからの独立支援について何も触れていないではないか。書き直すように」

 項垂れて部屋に戻ったカルルシュは、いくつかの歴史書や百科事典を書斎に持ち込んだ。マヌエラが、掃除にやって来た時に、彼は書斎の机の上に何冊もの分厚い本を広げて、あちこちメモをとっていた。小さな文字で書かれたメモは散乱し、彼は、本をひっくり返しながら、書いたばかりのメモを探した。

「失礼します」
邪魔にならないように、小さな声で断ると、彼は驚いて立ち上がった。その時に一枚のメモが宙に浮き、それをとろうとした彼が反対に本にぶつかり、バタバタとあらゆるものが床に落ちた。百科事典、歴史書、レポート用紙、メモ用紙、その全てがごちゃごちゃに地面に伏せた。

 マヌエラは、彼を助けるために近くに寄り、まずは貴重な本が傷んでないか確認しながら閉じて机に置いた。その間に彼は散乱した紙類を集めた。

「ごめんなさい、私が来なければ……」
彼はあわてて首を振り、レポート用紙やメモを机の上に置き、マヌエラの邪魔にならないように書斎から出た。
「いや。違う。僕こそ、申し訳ない。こんなに散らかしてしまうなんて……ここをきれいにしなくちゃいけないんだよね。どうぞ、終わらせてくれ」

 彼女は、つとめて平静を保ち、手早く書斎の埃取りと拭き掃除を終わらせた。机の上のレポート用紙は、教師の入れたコメントで真っ赤になっており、ちらりと見えたメモ用紙の内容は、彼にドン・ペドロの叱責内容があまり頭に入っていないことを思わせる頼りない走り書きだった。

 訊かれてもいないのに、何かを言ってはいけない。マヌエラは、見なかったことにして仕事を終え、書斎から出た。
「お待たせしてごめんなさい。終わったので、どうぞ」

 彼は、もの言いたげな瞳で彼女を見た。
「革命……。かつて王国があって、独裁政治になって、それから、革命があった……。なのに、ここ竜のシステムはそのままだ。ここにも革命があればいいのに。……そうでなかったら、相応しくない者を排除してくれればいいのに」

 マヌエラは、言葉に詰まった。プリンシペである彼が、やがて当主になる立場の人が、いうべきではない言葉だ。けれども、それを指摘して何になるだろう。彼自身がそれを誰よりもよくわかっている。ドラガォンのシステムには革命どころか、引退も譲位もない。彼は教育からも叱責からも逃れられない。そして、やがては教育などという生易しいシミュレーションではなく、現実の荒波に耐えなければならない立場にいる。心身共に弱く、覚悟も定まらない、俯きがちな青年が。
 
 ため息をもらすと、彼は少し離れた所へ動き、小さな声でつぶやいた。
「僕のこと、みんながなんと呼んでいるか知っているか」
「いいえ」

簒奪者オ・ウーズルパドール
「どうして、そんな……」
少なくともマヌエラは、誰かがそんな風に呼んだのを一度も聞いたことがなかった。

「僕の本当の父親は、『ガレリア・ド・パリ通りの館』にいるInfante321だ、彼が戯れに愛し、後に憎んだ女が僕の本当の母親だ。彼女と、母上、いやドイスの母親はほとんど同時に身籠り、ドイスの出産予定日の方が一ヶ月以上早かった。それなのに、僕の方が先に生まれた。本当のプリンシぺを押しのけてずる賢くこの地位を手に入れた」
「……でも、あなたはしようと思ってしたわけじゃないでしょう」

「もちろん。でも、父上は、我が子をインファンテにしてしまった憎むべき存在の僕を、長男として引き取らなければならなかったし、この僕に責任を持って教育をしなくてはならないんだ。それだけじゃない。口にしなくても誰もが思っている。ドイスの方がずっと当主になるにふさわしいって」
「そんな……」

「君だって思うだろう? 同じ頃に、同じ血の濃さで生まれてきたのに、彼は……そう、彼はまるで太陽みたいだ。本人そのものに力があって全てを惹きつけ輝いている。その存在を誰もが待ち望み、ありがたく思う。その一方で、僕ときたら……」
「あなたは、月なの?」

 カルルシュは、首を振った。とても悲しそうに。
「いいや、僕は月じゃない。あんなに輝かしくて美しい存在じゃない。僕はきっと、月か、地球か、とにかく何かの影みたいなものだ。僕がおかしな所に立つせいで彼の姿が見えなくなる。それで、誰もがわかるんだ。ドイスは素晴らしい。『メウ・セニョール』と呼ばれて傅かれるのに相応しい、上に立つべき人間だって」

 嫌みや恨みなどの混じっていない、純粋な言い方だった。他人事にも聞こえて、マヌエラは戸惑った。カルルシュは、彼女の言外の判断を感じたのか、とってつけたように笑顔を見せた。

「わかっているんだ。彼じゃなくて、僕こそあれこれできなくちゃダメな立場だってことは。でも、他に言いようがないんだ。彼は素晴らしい。頭脳や才能、それに容姿だけじゃなくて、人格も。この館にやって来て彼のことを知れば、誰でも一週間もかからずにそれをわかる。僕は、そんな彼を20年も知っているんだ」

「双子のように一緒に育ったんですよね」
マヌエラは、慎重に言葉を選んだ。彼は、少し悲しそうに笑った。
「そう、空間と時間的にはね。いつも一緒だった。幼い頃は、おなじおもちゃで遊び、同じ絵本を読み、一緒に絵を描いた。あの頃から、失敗をするのはいつも僕で、でも、彼はいつも、叱られる時でさえ一緒にいてくれた。ピアノだって……」

「ピアノ?」
「ああ。最初にピアノを習ったのは僕の方だったんだ。22が、ヴァイオリンを習い始めていて、僕も何かやりたいって。彼が、あっという間にヴァイオリンを弾けるようになったので、楽器なんて簡単だと思ったんだろうな。でも、全然上手く弾けない。先生が苛々するくらいに。1人で練習していると、見かねた22が一緒につきあってくれた。そうしたら、あっという間に彼のピアノが上手になってしまったんだ」

 それでも、カルルシュは、努力を続ければいずれは自分にも素晴らしい演奏ができると思い、楽譜を譜面台に広げて新しい曲に挑もうとした。隣に立っていた22は、初めて見た譜面にもかかわらず、メロディを口ずさんだ。

「どうしてそんなことができるんだって訊いたんだ。五線譜の上にまばらに広がる音符は真っ黒な模様で、僕にはメロディは全然浮かばなかったから。そしたら、見ればそのまま音が浮かぶっていうんだ。僕は、右手と左手と同時にかって訊き返した。そしたらもちろんって言った。そして、持っている交響曲の譜面を見せてくれて、オーケストラの全てのパートが、譜面を見れば聴こえるって……」

 マヌエラは驚いた。指揮者や作曲者が、そういうことができるのは知っていたけれど、楽器を習い始めたばかりの少年にそんなことができるとは思いもしなかったからだ。

 カルルシュは、力なく笑った。
「それで、さすがの僕も才能の違いを痛感してね。音楽は諦めた……いや、音楽も……かな」

 こんなに何もかも差をつけられてしまうことに、彼は怒りも嫉妬もおぼえないのだろうか。マヌエラは複雑な想いでカルルシュを見た。彼は、思い出に浸るように考えていた。

「彼に、何一つ敵わないことは、悲しくなかった。それは僕にとって当然のことだったんだ。母上が……」
「お母様?」
8年ほど前に館から去ったと聞かされたかのドンナ・ルシアのことだろう。

「いつも言っていた。ドイスはお前なんかとは違うと。記憶にある最初から、いつも。僕が何か意に染まぬことをしてしまうと、母上はとてもきつく叱った。罰だと言ってたくさんの書き取りをさせられたり、おやつを禁止されたりした。でも、つらくて泣いていると、いつも慰めてくれて、おやつを分けてくれたのはドイスだった」

 ようやく彼女には、納得がいった。カルルシュにとって、22は妬むべきライバルではなくて、憧れ頼るべき唯一の存在だったのだ。

「ごめん。こんな事を言っても君を困らせるだけだよね。忘れてくれ」

 マヌエラは、悲しみでいっぱいになって、カルルシュのそばに近づいた。
「ねえ。みんなじゃないわ。少なくとも私は、あなたがどれだけ努力をして、苦しんでいるか、わかっている。努力しても結果が出なくて辛い氣持ちも、わかっているわ」

 それを聞いて、カルルシュは顔を上げた。マヌエラの同情の浮かんだ顔をじっと見つめて、それから視線を落とした。
「ありがとう。ドイス以外で、そんな風に言ってくれたのは君1人だ」

 赤みの増した彼の頬を彼女は見つめた。彼は、しばらく戸惑っていたが、やがて言いにくそうに口を開いた。
「マヌエラ……、あの、もし、僕が……君と……」

 そこまで言われて、彼女は彼が愛を告白しようとしていることを察した。彼にまで想われていることに狼狽えた。22との距離を縮めたときのような、単純な嬉しさとは全く違っていた。彼女は、視線を落とした。

 断ったら、もし自分が22と生きることを決めたこと、そして間もなくそれが現実となることを告げたら、彼はもっと傷つくだろうととっさに思った。だから、言わないでほしいと願った。

 常に貶められてきたカルルシュはそれを敏感に感じ取ったのであろう。ひどく傷ついた顔をして口ごもった。
「ごめん。なんでもない。忘れてくれ」

 マヌエラは苦しくて泣きたくなった。心が引き裂かれるようだった。
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Category : 小説・Usurpador 簒奪者
Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
更新、お疲れさまでした。

なんというか、徹底的かつ絶望的に才能の差がありすぎですよね、カルルシュと22って。
カーネーション革命なんて知りませんでしたが、ググってみたら40年ほど前の出来事なんですね。ポルトガル人なら、みんな知ってて当然か。たしかに、あのレポートじゃあ「感想文」と言われてもしかたないけど。
ただ、今回のお話を読んでいてふと思ったんですけど、そもそも22ってスペック高すぎますよね? おまけに、カルルシュに求められていることも、レベルが高いなぁ。まあ、こんな家の当主ですから、それも当然なのでしょうね。
で、ここまで差がついたら、もうひがむ気にもなれないのでしょうけど、これでカルルシュの性格が悪ければ、もっと違った展開になっていたでしょうね。マヌエラも、見向きもしなかっただろうし。
お、カルルシュ、告白(=宣告)かと、ドキドキしましたよ。未遂でしたが、これ、波風立ちますよね、とくに当事者同士は。うん、面白くなってきたぞ。
次話、楽しみにしています。

2020.05.20 06:48 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

カーネーション革命どころかサラザールの独裁政治についても、私も、ポルトガルに行ってはじめて知ったのですよ。でも、ごく普通の世界史の授業には出てきませんよね。お隣の国のフランコ政権ぐらいまではやるでしょうけれど。

さて。カルルシュは、平均かそれよりも少し劣るくらいの頭脳、体力、才能を持って生まれてきました。それに加えて育ての母親(22の母親ドンナ・ルシア)に徹底的に貶められて育ったので、自信のない俯きがちな性格になっています。

で、22の方はおっしゃる通り高スペックなのです。それも無駄に。綾乃みたいに高スペックでも実力を十分に生かせる場があれば、適材適所でいいのですけれど、この人、何一つ功績を残せない立場で、さらにいうとご存じの通りカルルシュには男の子が三人もできてしまい彼はスペアとしても完全に用なしの人生を歩みます。

少なくともこの時点では、カルルシュは22のことが大好き、22の方もカルルシュのことを怨んだりはしていません。ナイーヴなカルルシュと違って22の方には思うところはあるのですけれど、でも、カルルシュが悪いわけではないと自分に言い聞かせている、くらいの感じでしょうか。ところが、同じ女性を好きになってしまったことから、亀裂が入ってしまいます。ひと言で言えばカルルシュが悪いんですけれど。

さて、ここでカルルシュ告っても、(マヌエラが断るだけで)大して問題はなかったはずなのです。22は既にマヌエラに告っていますしね。大事なのは正式な申し出(もしくは宣告)、つまりこの場合は当主ドン・ペドロの前で許可を得ることなのですが、それを二人が「ジョアナたちの気持ちが落ち着くのを待って」とかいってさっさとやっておかなかったために、22は煮え湯を飲まされることになります。

もうすぐにその話になりますのでご期待ください。(ドSな言い方だわ)

コメントありがとうございました。
2020.05.20 21:24 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
う~ん。お互い「いっしょになろうね」「うん」だけじゃだめなのね~。相思相愛と言うだけじゃどうにもならなくて、公衆の面前、というのか、当主の面前で、お見合いパーティでいうところの告白タイムがあって、で、女性の方には基本的には拒否権はないのか~。「よろしく御願いします」ってやられたら「ごめんなさい!」はないのか~。う~む。でも、こうなると、普通なら「この人は嫌~」ってことになったとき、切った張った、刃傷沙汰に曽根崎心中も出てきそうですが、そこは管理人たちがしっかりしているんでしょうね。だって、当主はカルルシュにしても高スペックとは限らないし、「この人はいや~」ってこともあるんだろうし。
あ、でも、大奥なんか、ある意味、将軍のこどもを産むための組織で、それが女性の職業的なイメージもあるから、言い方は悪いかもしれないけれど、ここでは女主人になってこどもを産むのも職業に就くって感じなんでしょうね。愛や恋やの話じゃなくて。
この間、中村 芝翫さんが息子2人連れて京都の鞍馬寺を詣でる番組をやってましたが、それ見ながら、ある意味、梨園に嫁いだ女性も旦那の元に嫁いだと言うよりも梨園に就職したようなもので、その中に男子を産むって仕事もあって、三田寛子さんはすべてに於いて三重丸の(男子3人も生んでるし旦那もコントロールしているし)見事な職業人かもなぁと思っていたのでした。なんとなく、マヌエラと重なる部分があるような気がして。

このところ、ちょいとカルルシュに同情的な私。もしかしてマヌエラに近いところがあるかも。
いや、もうね、そうなのよ、私が1年以上かかってうだうだやって何とか弾いている曲を、1ヶ月もかからずさら~っと弾いておられる人を見るとね、もう、気持ちはカルルシュ。多少おつむが足りない(技術が足りない)ところがあっても、誰かが「君は素晴らしいよ」と言ってくれたら、なんか上手くやれる気がするけれど(教師って大変だな)、母ちゃんや(一応)父ちゃんからこんなふうに否定ばかりされていたら、辛かったですよね~
コンクラーベみたいに、選挙制にしたらいいのに、と言いたいけれど、血の濃さだけが問題だから、こうなってるんですよね。ローマのヴォルテラ家は血の濃さは関係ないので(自己犠牲の資質さえあれば)こんな不幸なことにならないけど、こういう外枠がっぽりなシチュエーションは、物語的にはおいしいですよね(どSな読者たち)。
あ。なんか、小学生の感想文みたいになっていますね。
今日はカルルシュな私、でした。
2020.05.21 10:54 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

そうなんですよ。「二人だけが知っている」は無効なんです。これって後から「でも、僕たち婚約していた」とか言いだして揉めないようにするためのルールなのです。黒服の《監視人たち》の一人、またはドラガォンの中心的メンバー(ドンとかドンナとかついている人、ただし当事者は除く)の立ち会いが必須です。ただし、立ち会うだけで介入はできません。掟に反していなければ、その場で承認する以外の選択は立会人にはありません。

前作『Infante 323 黄金の枷 』で、23が自分の意に反して急遽マイアに宣告することになったのはこのルールがあったからです。ドン・アルフォンソの前で24が宣告の台詞を言ったらマイアは24の所に行くしかなかったからです。マイアはわかっていませんでしたが。

ちなみに宣告された女には拒否権はありません。ただし、「女は一度だけ」ルールがあるので、美人だから次々いろいろな男に宣告されることもありません。それと、女は「子供を産むか一年経ったら、男の元を自由に去れる」というルールもあります。だから好きな人とずっと一緒に居たかったら、ちゃんと心づくししてずっと一緒に居ようと思ってもらわなくちゃいけないわけです。カルルシュの父親である21は、性格に問題がありすぎて、次々と女に手をつけまくりましたが、カルルシュの母親アナも含めて全員に去られています。

さて、梨園の奥様や相撲部屋の女将さんなどにも共通することですけれど、本業そのものには女性は関われないけれど、裏方としてはものすごく重要な役割があり、成功はその人にかかっている、って世界はいろいろとあるのですよね。三田寛子さんはすごいですよね。アイドルだった時はほんわかした雰囲氣で、梨園って大変なのに大丈夫かしらなんて思っていましたがなんのその、芝翫さんは頭が上がらないでしょうね。

ドラガォンのシステムも、実は女性の役割はとても大きくて、当主は表に出てきてはいけない(ある日いきなり入れ替わる可能性がありますし)ので、当主夫人やインファンタ(当主の娘)がかなり矢面に立つ確率が高いのです。あとは黒服ですけれど。いまの話の当主はしっかりしているのですが、カルルシュの代になるとご存じの通りあれこれ残念な人ですので、アントニオ・メネゼスとマヌエラの二人が意思決定の中心になっていきます。一応カルルシュを立てていましたけれど。

ヴォルテラ家のシステムとはスケールは全然違いますけれど、同じような立場は、うちでいうと《監視人たち》の中枢部、特に《鍵を持つ者》になる人の方で、とにかくちゃんとシステムを守ることができればいいので、血筋が絶えたり養子をとったりしても問題ないのです。むしろあちらは実力や適性のほうが優先されます。当主の方はとにかく血筋を伝えることが大切なので、身内で争ったりする余地が全くないように、解釈や温情で代々の当主が勝手なことをしないように、非情とも言える掟が決まっていて当主にも何もできないようになっているわけです。

でも、カルルシュは、彩洋さんがおっしゃってくださっているように、確かに残念な人ですけれど本人が悪いわけではないのですよ。たまたま、向かない人がその場にいてしまっただけで。ルールが厳格な分、時おり、こうやって当主なんだけれどまったく向いていない人、というのも出てきてしまうんですよね。

ドン・アルフォンソや23は、ひどく優秀というわけではないのですが、当主として頭を抱えるというほどではなくそれなりです。カルルシュが早死にしてしまったので、その息子のアルフォンソはかなり早くに当主になりましたが、メネゼス的には「こっちの方がずっと安心できる……」だったかも。

彩洋さんが、カルルシュ側だなんて「とんでもない」ですけれども、私は明らかにカルルシュサイドの人間なので、このストーリーでカルルシュを単なる悪役にはしたくなかったのですよね。あらすじにまとめると「彼が悪い」になってしまうのですけれど。

次回が、メインの事件です。また読んでくださいね。

コメントありがとうございました。
2020.05.21 21:53 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
レポートの下りの文章に関しては懐かしいな。
・・・ということを感じてしまった。

私の専門学校では、
「日本の第2次世界大戦の参加と原爆投下について、
 これから医療に携わる者としてどういう意見を持つか。」
・・・みたいな感じなのを3年間やらされましたね。
毎年、戦争や原爆の勉強をして、
医療者として、
軍事兵器や戦争に対しての意見を持つことを大切さを学びました。

今でこそ、もうちょっと勉強しておいたら良かった。
・・・って感じになってしまいますね。
( 一一)
2020.05.23 08:40 | URL | #- [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

そうですね。
戦争が善か悪か、といったことならば、私にとっては「悪」でしかないのですけれど、そもそもそれを感情論で書いても子供の感想文と変わらないのですよね。

医療に関わることであるならば、たとえば命の選択の問題や、中絶の善悪など「かわいそうだからダメ」というような次元とは違う論拠を持って論じなくてはならないのでしょうか。実際に医療の場に立つのであれば、避けては通れない話題なのでしょうね。

コメントありがとうございました。

2020.05.23 19:06 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
簒奪者・・・ですか。
でもルールはルールですからそんなに後ろめたく考える必要は無いと思うのですけれど、22の器量を見せつけられるとなんだかなぁ。そこがカルルシュのカルルシュたる所以ですね。
生まれた経緯も微妙だし。
21の息子というのも負い目に感じるだろうなぁ。
それに今度はマヌエラまで?
本当に22からすべての物を奪っていく様は簒奪者というより“略奪者”といってもいいほどです。
望んでもいないのにそんな立場に立たされるなんて、運命というのはおそろしいものです。
カルルシュがいい人なだけにこの人物が置かれた境遇に同情を禁じ得ません。
こんなにプレッシャーをかけられたら壊れてしまう人も多いと思うんだけど、これに耐え続けられること、それが彼の特質なのかもしれないなぁ・・・なんて思ったりもしています。母性本能を刺激したり・・・案外、彼、強いです。
ああ、23の宣言を思い出しました。マイアはあれに掬われたんだけど、カルルシュは思いとどまった(と言うか、気後れした?)んですね。
この話はまたいずれ蒸し返されるのですが、3人それぞれがどんな反応をするのか、楽しみになってきました。やっぱりサキは意地悪ですね。

そういえば、カーネーション革命で打倒されたサラザールってハリーポッターのサラザール・スリザリンのモデルですよね。
晩年は執務室で、もはや何の影響力も効力もない命令書を書き、偽の新聞を読んで過ごした・・・なんてウィキにありましたが、スペインも含めてほんの最近まで独裁政権だったんですね。イベリア半島に出かける前に勉強して、驚いた記憶があります。

おお?123456ですかぁ?うまくタイミングが合えばですが、狙ってみます。
2020.05.24 11:24 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

生まれてきたことに関しては、カルルシュは何も悪くないですよね。
予定日よりも早く生まれるなんてことは、よくあることで、いや、もしかしたら21が臨月のアナに何か細工したのかもしれませんけれど、いずれにしてもカルルシュのせいではありません。でも、特に育ての母親にずっと恨みを込めた嫌みを言われ続けたのです。ドン・ペドロは恨みと言うよりは、次期当主をまともにしなくてはならない責任感から厳しく育てたのですが、実の両親の愛情も全くない中で、カルルシュは卑屈で自分を肯定できない性格に育ってしまいました。

上の他の方への返信にも書いていますが、当事者しかいない場で何を言おうが、拘束力は全くありません。宣告は、「青い星を持つ……」という定型文で始まる特別な(呪文みたいな)言葉を、立会人の前で発することで成立します。前作で23がやったアレです。ただ、宣告なしでも二人が立会人の前でその意思を表明すれば、立会人はそれを承認します。(前作ではミゲルとマティルダのカップル、今作ではジョアナとフェルナンドはこのパターンでした)

私はハリーポッターは途中で主人公に共感できなくなり読むのをやめてしまったので、サラザール・スリザリンのことはよく知らないのですけれど、作者はポルトガルに住んでハリー・ポッターの物語の多くのインスピレーションを得たので、モデルにしたというのはよくわかります。ポルトガル人の中でもサラザールに対する評価は分かれていて、一般的なドイツ人がアドルフ・ヒトラーに対して持っている全否定的な扱いとは少し違うようです。それに、スペインのフランコ政権とも「一緒にして欲しくない」という思いを持っているようです。賛否はいろいろですけれどね。

ただ、いずれにしてもカーネーション革命が無血革命で逢ったことに対しては、みな一様に誇りを持っているようですね。

さて、123456、あと一週間くらいはかかると思います。お遊びですし、今回は私が書くだけですので、ぜひご参加くださいね。

コメントありがとうございました。
2020.05.24 21:34 | URL | #9yMhI49k [edit]

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