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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

「アウグストゥス」読んだ

カテゴリを選んでいて、そういえば私って「読書感想文」ほとんど書かないなと今さらながら思いました。今日はそんな珍しいトピック。

「アウグストゥス」

友人がブログに上げていたのが、このジョン・ウィリアムズ著「アウグストゥス」(作品社 布施由紀子 訳)の感想。アメリカの作家で、この作品が遺作らしいのです。私は、失礼ながらこの方を知らず、同姓同名の作曲家を思い浮かべて「まさかね」と思ってしまったぐらいです。

しかし、この方の作品は、21世紀になってから「再発見」されて以来、欧米では絶賛されているそうで、日本でもこの作品と同じ作品社から、3作が翻訳されて順調に重版となっているとのことで、単に私が知らなかったというだけですね。

さて、どうしてこの作品に興味を持ったかというと、友人の絶賛も氣になったのだけれど、それに加えて、私はこちらに来てから10年くらい、毎週ドイツ語の個人レッスンを受けていて、その時の雑談にローマ帝国初期の複雑怪奇な人間関係をほぼ毎週耳にしていたからなのですね。つまり、この本を読む一般的欧米人と同じくらいか、それよりもう少しこの本に出てくる人々に対する基礎知識があると踏んだからなのです。

で、読みたいなあと頼んだら、なんとプレゼントしてスイスまで送ってくださいました! 大感謝。

で、読んでみて、感動しました。この作者、本当にすごい方です。

この作品はご本人も前書きではっきりと書いているように「小説」です。つまり、作者の創造に当たる部分が入っていて、人間ドラマも人間関係も「史実」そのものではありません。とはいえ、考古学や文献に書かれた史実をないがしろにしたわけではなく、むしろその隙間を見事に織りなして、壮大ながらももの悲しい人間ドラマを綴っているのです。

一般に「○○」だと見なされている登場人物は、本当にそういう人物だったかは今となっては誰にもわかりません。史書は書いた人間に都合よく書かれるので、敵対した人物は極悪人のように書かれるのが常です。そして、それがイメージとなって語り継がれるのですけれど、この小説ではそうしたイメージに反する人物像をつくりだし、それがまたどれも説得力抜群、「本当にこれが事実だったのかも」と思わせる世界観になっています。

これ以上書くとネタバレになるので、興味のある方はぜひ手に取って読んでいただきたいと思います。

ちなみに、ものすごくたくさんのことを丁寧に調べて書いているのに「こんなに知っています。僕ってすごい」感が全く出ていなくて、作品としての完成度が異様に高いのも感服ものです。加えて、この本に出てくる固有名詞のうち「シーザーとアントニーとクレオパトラしかわからない」というような方でも、ほとんど混乱なくストーリーを追えるように書いた構成も見事。もう、こんな作品が書けたら死んでもいいと思いますけれど、200回生まれ変わっても無理そう。

読書家の方には、本当におすすめしたい一冊です。
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Comment

says...
アウグストゥスはん、養子の癖にカエサルぬっころしの元老院の追認にも名を連ねてるし、政的ブルータスを打つ際には仇敵アントニウスの軍略に頼ってるし、おい、あんた後の皇帝だよな。もうえぐいのなんの。ってまあ、利害関係があんまりにも複雑すぎて実際の所は何が何やらな訳ではありますが、アントニウスとの争いの際の勢力圏はまんま後の分裂東西ローマ帝国版図に重なるわけで、やっぱり根深い対立が本人達以外の所にもあったんだろうなぁ。
2020.11.01 08:53 | URL | #eRuZ.D2c [edit]
says...
こんにちは。

そうなんです。ローマ、みんなエグいけれど、そのエグいの筆頭みたいなひとを主人公にして「そういう話にするか!」なんですよ。
miss.keyさんのように、既に知識のある方が読まれると、わたしの(物書きとして)感動した(もちろん読みながら「マジですか」とのツッコミつきで)点に納得していただけるかと思います。おすすめです。

コメントありがとうございました。
2020.11.01 09:58 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
アウグストゥス。
名前は聞いたことあるんですけどね。
世界史の授業は受けていないので、まったく知らない(笑)。
今からでも世界史の勉強してみたいなあ。。。
なんて、どうしても本業(医療)の勉強優先だし。
遊びたいし、小説書きたいし。
・・・で勉強できない現在(笑)。

また世界史の勉強したいなあ。。。
願望だけになっている。。。

2020.11.02 10:28 | URL | #- [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

そ、そうですね。
アグリッパやセネカまでいかなくても、アウグストゥスと呼ばれるオクタウィアヌスが誰かくらいはわかっていないと読むのは難しいかしら。
反対に、まっさらに状態で読むと新鮮かもしれませんが。

私は世界史が大好きで、授業中にけっこう胸をときめかしている子供でしたので、
勉強というよりは、毎回、楽しみに行っていたようなものでした。
いまだに歴史物の本を読むのは好きです。

一方で、物理や数学などはめちゃくちゃ嫌いでしたね。
語学も苦手でした。

それが、大人になってから「カオス理論」に夢中になって本を買いあさり
その一方で海外移住をして
今や外国語を使って生きているんだから、学校の時に好きだった、嫌いだったは
あまり関係ないのかもしれませんね。

コメントありがとうございました。
2020.11.02 22:44 | URL | #9yMhI49k [edit]

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