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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】酒場のピアニスト

scriviamo!


「scriviamo! 2021」の第2弾です。大海彩洋さんは、当ブログの『黄金の枷』シリーズとのコラボ作品で参加してくださいました。ありがとうございます!

 大海彩洋さんの書いてくださった『【ピアニスト慎一シリーズ】Voltaste~あなたが帰ってきてくれて~ 』

大海彩洋さんは、ライフワークである「真シリーズ」をはじめとして、精密かつ重厚な小説を書かれるブロガーさんです。いろいろなことに造詣が深いのは、みなさんご存じだと思いますが、ピアノもその一つで、実際にご自分でも演奏なさるのです。今回は大河小説「真シリーズ」のメインキャラの1人、ピアニストでもある相川慎一がPの街にお越しくださいました。そして、23がちゃっかりそのピアノを聴かせていただいたり、誰かさんに至っては、慎一御大にお遊び用のカラオケを用意させるというような申し訳ない事態になっています。ひえ〜。

お返し、どうしようか悩んだのですけれど、インファンテやインファンタが直接慎一たちに絡むのは、かなり難しいこともあり(とくに慎一、ただの日本人じゃなくてヴォルテラ家絡みですしねえ)、ちらっと名前だけ出てきた方を使わせていただくことにしました。時系列では、ちょうど連載中の『Filigrana 金細工の心』とだいたい同じ頃、つまり彩洋さんの書いてくださった作品の「8年前」から1、2年経ったくらいの頃でしょうか。

そして、それだけでなく、彩洋さんの作品へのオマージュの意味を込めて、ショパンの曲をあえて使ってみました。そのキャラ、彩洋さんの作品にサラッと書いてあった感じではショパン・コンクールを目指したかった……みたいな感じだったので。

さて。もう1人のキャラは、連載中の『Filigrana 金細工の心』の未登場重要キャラです。またやっちゃった。どうして私は、隠しておけないんだろう……。ま、いっか、別にものすごい秘密ってわけじゃないし。



『Filigrana 金細工の心』を読む「Filigrana 金細工の心」をはじめから読む
あらすじと登場人物


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酒場のピアニスト
——Special thanks to Oomi Sayo-san


 電話を終えると、チコはゆっくりと歩き出した。Pの街は久しぶりだ。以前来たときよりも観光客向けの洒落た店が多くなっている。そうなると途端に値段がチコ向きではなくなる。彼は、裏通りに入って、見かけは単純だが、そこそこ美味しくて彼の財布に優しい類いの店を探した。

 どこからかファドが聞こえてくる。観光客向けのショーらしい。看板が目に入った。ファドとメニューのセットの値段が、派手な黄色で走っている。それを眺めながら通り過ぎようとして、もう少しで誰かとぶつかりそうになった。

「失礼」
チコが謝ると、青年は「いいえ、こちらこそ」とブツブツ言いながら、ファドのレストランに入っていった。扉を押すときに左手首に金の細い腕輪が光った。

 金メッキの腕輪など珍しくもなんともないが、チコはとっさに彼の《悲しみの姫君》のことを思い出した。チコは、厳密には彼女が金の腕輪をしているのを見たことはない。彼女が腕輪の話をしたことも、1度もない。腕輪の話をしたのは、彼女の妹、チコたちの仲間から《陽氣な姫君》とあだ名をつけられたマリアだ。

「みて、ライサの左手首」
潮風に髪をなびかせながら、マリアはそっとチコに囁いた。オケの同僚であるオットーやジュリアたちと、姉妹の特別船室に招かれて、小さなパーティーのようなことを繰り返していたある夕暮れのことだった。

 一介のクラリネット吹きであるチコが、特別船室に足を踏み入れることなど、本来なら考えられないのだが、華やかな社交に尻込みして部屋から出たがらないライサのために、姉の唯一興味を持った楽団のメンバーたちをオフの晩にマリアが招き入れるようになったのだ。

 女性の装身具などには全く詳しくないチコは、言われるまでまったく目に留めたこともなかったのだが、ライサの左手首には何かで線を引いたような細い痕があった。
「あれね。腕輪の痕なの。日焼けせずに残った肌の色」

 おかしなことを言うなと思った。腕時計をしなくなった人に、そういう痕が残ることは知っているけれど、しばらくすればそこもまた日に焼けて目立たなくなるものだろう。マリアはそんなチコの考えを見過ごしたかのように微かに笑ってから続けた。
「私の記憶にある限り、常にライサには金の腕輪がつけられていたの。子供の頃からずっと」
「つけられていた? つけていたじゃなくて?」

 マリアは、じっとチコを見て、区切るようにはっきりと言った。
「つけられていたの。金具もないし、自分では、絶対に取れない腕輪よ。ねえ、チコ。どうして私たちがこんな豪華客船で旅をできるのか、知りたいって言ったわね。私も知らないけれど、でも、1つだけはっきりしていることがあるの。それは、あの腕輪をつけたり外したりできる人たちが、払ってくれたのよ」

「ライサは、それが誰だか知っているんじゃないかい? 自分の事だろうし」
「もちろん、知っていると思うわ。でも、あの子は絶対に言わない。言わせたところで、あの子が救われるわけでもないの。でもね、チコ」
「うん?」
「外してもらった腕輪は、まだあの子を縛っているんじゃないかなって」
「それは、つまり?」
「あの子は、はじめてパスポートをもらったの。クレジットカードも。こんな豪華客船の特別船室で、世界中の珍しいものを見て回って、美味しいものを食べて、好きなものを買える立場にいるの。でも、彼女の心は、Pの街の、私の知らないどこかに置き去りになっているみたい」

「彼女が、とても淋しそうなのは、わかるよ。僕に、『グラン・パルティータ』を吹いてほしいって頼んだとき、たぶん彼女は何かを思い出して、その場所を懐かしんでいるんだろうなと思ったし」

 その場所は、おそらくこのPの街にあるのだろう。3か月の船旅の後、姉妹はこの街に戻った。マリアは元働いていた銀行でバリバリと活躍しているらしい。ライサが今どうしているかは……。チコは、そこまで考えてわずかに微笑んだ。明日、彼女と会える。その時に、いろいろな話をしよう。

 豪華客船の楽団メンバーの仕事は、本来旅の好きだったチコには合っている。もちろん、学校を出たばかりの頃は、室内楽や交響曲だけでなく、ビッグバンドの真似事やジャズまでもまとめてやることになるとは思わなかったけれど、最近は、それもさほど嫌だとは思わなくなっている。

 長い航海が嫌だと思ったことはこれまではなかったけれど、今回だけは別だった。この国から遠く離れているうちに、ライサが新しい人生をはじめて、彼のことなど記憶の果てに押し流してしまうんじゃないかと思っていたから。でも、マリアのあの口ぶりでは、ライサはいまだに引っ込み思案で、友だちらしい友だちも作らずにいるらしい。僕にももしかしたらチャンスがあるかもしれない。

 近くに寄ったついでというのは、口実だときっとマリアにはバレているんだろう。でも、そんなこと構うものか。

 彼は、そんなことを考えながら、数軒先に見つけた手頃そうな店で食事をすることにした。テーブルワインと前菜の干し鱈のコロッケパステイス・デ・バカリャウを食べているとドアが開いて、誰かが入ってきた。チコは、はっとした。それは先ほどぶつかった青年だったからだ。

「よう。ダリオ。今日は出番の日かい」
奥からオヤジが声をかけた。

「ああ。ファド・ショーが中止になったから、急遽弾いてほしいって。おじさん、僕にもメニュー、おねがいします」
そう答えると、ダリオと呼ばれた青年は、狭い店内のチコの斜め前に座り、軽く会釈をした。

「ああ、同業者でしたか。僕、クラリネットなんです。あなたは、ええと」
チコが、声をかけると青年は「ピアノを弾きます」と小さく答えた。

「あそこ、ちょっと高そうでしたが、飲み物だけで入るのって、無理かな」
そう訊くと、青年は首を振った。
「ファドの日じゃないし、文句は言われないですよ。そもそも、セットメニューは、英語しか読めない観光客用ですし」

 それから、肉の煮豆添えが出てくるまでの間、2人は軽く話をした。
「じゃあ、以前はあの交響楽団にいたんですね。子供の頃テレビでチャイコフスキーの協奏曲第一番を見ましたよ。大人になったら、ああいう舞台で弾きたいって、弟に大言壮語していたっけ」
ダリオは、少し遠くを見るように言った。

 観光客や酔客相手に演奏する、日銭稼ぎのピアニストであることを恥じているんだろうか。大きな交響楽団をバックにソリストとして活躍するほどのピアニストになるのは、大変な努力の他に大きな才能も必要だ。才能と幸運の女神は、誰にでも微笑むわけではないことを、チコ自身もよく知っている。
「子供の頃は、僕もずいぶん大きな口を叩いていましたよ」

 ダリオは、多くを語らずに食事を終えた。チコは、ダリオと一緒に、先ほどの店にいった。暗い店内は、ファドでないせいかさほど観光客がおらず、かなり空いていた。チコは、セルベッサを頼んで、ピアノの近くに座った。

 ダリオは、センチメンタルな典型的なバーのジャズピアノ曲を弾いていた。客たちは聴いているのかいないのかわからない態度で、ピアニストの存在は忘れられている。チコは、ダリオが手首を動かす度に、ライトを受けて腕輪が光るのをぼんやりと眺めていた。

 彼が夢見ていた音楽と、これは大きな違いがあるのかもしれない。誰もが夢中になって聴くソリストと、存在すらも忘れられる心地よいムード音楽。主役は、食べて飲んでいる客たちの時間。目の前に揺れて暗闇に浮かび上がるロウソクの焰。セルベッサのグラスに走る水滴。

 チコの仕事も、あまりそれと変わらないときもある。それでも、船の上のシアターで行う演奏会の時は、熱心に聴いてくれる客がいる。ライサのように、彼らの音色が聴きたくて通ってくれた人がいる。ダリオは、どんなことを思いながらこの仕事を続けているんだろう。

 しばらく、ムードジャズを弾いていた彼は、ちらっとチコを見ると、ゆっくりと短調の曲を弾き出した。あ、ショパンだ。なんだっけ、これは。あ、ノクターンの6番か。映画『ディア・ハンター』で演奏されていたから、強引に映画に出てきた音楽ですと言い張ることもできるけれど、きっとこれは僕がいるからクラシック音楽を弾いてくれたんだろうな。

 彼の感情を抑えた指使いが、静かに旋律を奏でる。装飾音も少なく、単純な右手の響きが繰り返される。数あるノクターンの中でも演奏される機会が少ないのは、演奏会などで弾くには華やかさが足りないからなのかもしれない。暗闇の中で焰を揺らすのに、これほど似合うことを、チコは初めて知った。

 氣がつくと、騒いでいた客たちは黙って、ダリオの演奏に耳を傾けていた。ダリオは、後半でわずかに強い想いを込めて何かを訴えかけたが、転調してからはまるで諦めるかのようにコーラル風の旋律を波のように繰り返しながら引いていった。焰も惑うのをやめた。

 曲が終わった後の休止。チコは、手を叩いた。それに他の客たちもわずかに続いたが、ダリオがわずかに頷いてすぐに再びムードジャズに戻ると、また忘れたようにおしゃべりに興じた。

 彼が、ピアノの譜面台を倒して立ち上がったときも、それに目を留める客は多くなかった。チコは、再び手を叩くと、ダリオを彼の前に座らせた。
「素晴らしかったよ。とくに、ショパン。君、さっきはずいぶん謙遜していたんじゃないかい?」

 ダリオは、はにかんだ笑いを見せると答えた。
「そんなことはないよ。でも、ありがとう。聴いてくれる人がいるっていうのは、嬉しいものだな」
「今からでも遅くないから、就職活動をしたらどうかな? 少なくとも僕の乗っている船でだったら、ソリストとして活躍できると思うよ。他にも……」

 チコの言葉を、ダリオは遮った。
「いいんだ。ちょっと事情があって、僕はこの街を離れられないし、ここの仕事も、わりと氣に入っているんだ。次に、この街に来るときには、また聴きに来ておくれよ」

 チコは、「そうか」と頷いた。明日逢うことになっているライサの、《悲しみの姫君》の微笑みを思い出した。何かを諦めたかのような瞳。揺れる焰の向こうでダリオはセルベッサを飲み干した。金の腕輪がまた煌めいた。


(初出:2021年1月 書き下ろし)

追記


さて、これが出てきたショパンのノクターン6番です。


Frederic Chopin- Nocturne no. 6 op. 15 no. 3 in G Minor

そういえば、彩洋さんの作品には、以前書かせていただいた某チャラ男も登場しているのですけれど、今度こやつでも遊びたいなあ。ま、大道芸人たちのほうが馴染みがいいのでそっちにしたいのだけれど、実はちょっとタイムトリップなので、(ヴィルはいままだ幼児)いずれまた別の機会に!
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Category : scriviamo! 2021
Tag : 小説 読み切り小説 コラボ

Comment

says...
執筆、お疲れ様です。

例の豪華客船ツアー(オフ会じゃない方w)の間に、ライサにはその後の運命を決める出会いがあった、というわけですね。まあ、ライサ本人が、どのくらい意識しているのかは、わかりませんけど。
客船の楽団となると、演奏する音楽もかなり多岐にわたるわけですね。なるほど、あるときは交響楽団、あるときは室内楽団、ときにはビッグバンド。音楽(演奏)を聴きにくる聴衆相手と、食事や酒を楽しみに来る客相手のどちらも経験できるのは、ある意味では面白いかもしれませんね。チコはそれもいいか、という感じですね。
ダリオの方は、やはりソリストを意識していますね。ノクターンはチコ向けの演奏だったのでしょうけど、Pの町から出られない自分、ソリストとして世界をまわることができない自分へのプレゼントだったのでしょう。さすがに、他の客もその演奏に気がついた、というところですね。
比較的自由なチコ、枷に縛られたダリオ、そして枷をはずされてもそちら側に未練を残してしまったライサ。三人の立ち位置と関係性が、絶妙でした。
2021.01.13 10:08 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
そうそう、某チャラ男、実は時間軸が合っていないんですよね。って、そこから入って済みません。
でも、まぁ、そのあたりはscriviamo! あるあるで許していただこうっと!
で、いつかこのチャラ男のお話も登場すると思ったら楽しみです。どんな奴やら。そうそう、大道芸人たち絡みで出てくるのが自然かな。うんうん。
あ、タイトルの「しまった~」はその件じゃなくて、TOM-Fさんにコメント1番乗りを取られたことです。って何を争っているのやら。でも、ポール・ブリッツさんよりも作品アップが早かったのは、ちょっと気分がよいかも!(^^)!(すみません、ポールさん)

読み始めて、あ~なんか面白いと思ったのは、《陽気な姫君》と《悲しみの姫君》という表現。実は、ある人のショパン弾きたちの分類に『陰のピアニスト』と『陽のピアニスト』がいる、というのがあって、ショパンのほの暗さを表現できるショパン弾きと、ショパンの優しさを表現できるショパン弾きがいるんだって(そしてそれは両立はしない)考え、面白いなぁと思っていたところで。丁度、この対比で行くと、ライサはノクターンの1番、マリアは2番(もっと元気かも?)、なのかもなぁ、なんて考えておりました。二人はピアニストではありませんが。

そしてチコはその《悲しみの姫君》にぞっこんのようですね。これからまだ続きがあるような、というのか、ライサにとって救いの物語があるのかも、というのは素敵なNEWSでした。こうしてscriviamo!のお返しで、物語の先をチラ見させていただくのって嬉しいかも。

そして、ダリオ、使っていただいてありがとうございました。
こちらではまぼろし??的扱いだったのが、実体になっているって、なんか感慨深いです。Pの街の小役人じゃなくて、ちゃんとピアノを弾いていたのですね。それもまたよかったなぁ。望む形かどうかは別にして、だけれど。

そして、このタイトルはもしかして「船の上のピアニスト」のもじり? チコは自由だけれど、あの船のピアニストは船から下りれない設定でしたから、そのままPの街から出れないダリオに重なりました。
ノクターンの6番って、なんかつかみ所が無くて、なんですが、その選曲もわざとなんですね。きっと私が使った13番のような感情を乗せやすい曲とは違うというあたりがミソなんだろうなぁ。目立たないように生きている彼らに重なるものがありました。

ありがとうございました! 
2021.01.13 13:24 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

そうそう、あっちじゃない方の、豪華客船(笑)
ライサとマリアは、上流社会よりも、シモジモと仲良くやっていたというわけです。
とはいえ、ライサ本人はいまだに、ピアノがどうのこうのとかグルグルしていますからねぇ。

大きな船なので、楽団も1つだけではないでしょうが、いずれにしても守備範囲を広くもって、あれこれ演奏しているようです。
チコは、本編ではちゃんと説明がありますが、もともとちゃんとした交響楽団にいたのだけれど、追い出されて結局この仕事に流れ着いたのですね。でも、あまり深刻なタイプではなく「ま、いっか」と生きているようです。

ダリオの方は、選択がいくつかあっての現状ではなく、その分ちょっと暗いかも。
そのあたりの比較になっているといいかなと思ってチコを引っ張り出してきました。

ライサは、TOM−Fさんもおっしゃるように、自由になって、さらにブラックカードももらって、何でもできる身だったのに、それでもあまり幸福ではない感じですよね。まあ、チコはもちろん、マリアも24とのことは何も知らないので、ライサが暗い理由はわからないんですけれど。

オチもない掌編におつきあいくださり、感謝です。

コメントありがとうございました。
2021.01.13 20:49 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

一番コメ争いしていただき、ありがとうございます(笑)

そうなんですよ。チャラ男、今回何かで出そうかと思ったんですけれど、1人だけチャラチャラしていても、なんか世界に合わなそうで。
また、別の機会に、遊ばせてください。今年ってなんか他のイベントあるかな。15万Hitはあってもきっと数年後だろうし。12か月シリーズで無理矢理出しちゃおうかしら。

ポールさんより速いのは、記録ですよね。
旧年中発表も、全然フライイングじゃないんですよ。ポールさん、よくそうだし(笑)
ご心配なく!

《陽氣な姫君》と《悲しみの姫君》は、本編でも使っているのをそのまま持ってきたのです。
本編では、レディ・アレグリアとレディ・トリエステという言い方で、人々がヒソヒソ噂していたということになっています。
特別船室に滞在している謎の姉妹でしたから。
たまたまだろうけれどショパンにそういう分類があるっていうのは、ちょっと嬉しいですね。もっとも、ライサはともかく、マリアは「私? クラッシックにはあまり興味ないかも」などといいそうです。

そして、チコは、せっかくここまで黙っていたのに、またやっちゃいましたよ(笑)
じつは、本当はもっと早く頭の方でチコが出てくるはずだったのですが、ライサの回想や「哭くアルペジオ」のあたりの章を前の方に持ってきた関係で、チコが全然出てこなくなってしまう羽目に。ま、いっか。

ダリオは、《星のある子供たち》の象徴っぽかったので、早速使わせていただきました。
たぶん彼は、ピアニストとして従弟にも弟にも追い越され、それは《星のある子供たち》であるせいなのか、それとも所詮自分はそのレベルなのだと納得しているのか、わかりませんけれど、街の裏道で目立たないように生きているのですよね。

タイトルは、えーと、すみません、いいのが思いつかなくて「まんまだけどいっか」という感じでつけました……orz

ノクターンの6番は、ショパンコンクールの課題曲にも選ばれていないし、地味であまり有名でもないし……というので使ってみました。
印象に残らない、有名でない「ショパン? なんか弾いていたような。でも、メロディー、憶えていないわ」という感じが、ショパンコンクールにもいけないし、顔も名前も憶えてもらわずにひっそりと生きていく《星のある子供たち》の姿と重なっているので。

うまく慎一やルシオの音楽との違いが出ていたらいいなあなんて思いながら書きました。

最初から大作で盛り上げていただき感謝です。
コメントと素晴らしい作品でのご参加、どうもありがとうございました!
2021.01.13 21:20 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
チコ、彼が重要キャラなんですね。クラリネット吹きというのもクラシックからジャズまで様々な使い方が出来そうですね。
そして彼はあのライサ、《悲しみの姫君》ですか?に思いを寄せている?
どういう展開になるのかはわかりませんが、本編の展開が楽しみになってきました。
世界中を旅するチコと生まれてからこれまでずっと閉じ込められて生きてきたライサとの組み合わせ、どんなふうに展開するんだろう?ライサはどのように心を開いていくんだろう?とても大切な人物との出会いが先だったから、なかなか開かないんだろうけれど・・・。
予告編のようなこの掌編、お祭りですからきっと夕さんの大サービスなのでしょう。

そして腕輪の人ダリオとの皆合、マリアの話と合わせで彼にも腕輪の持つ意味は表面上にしろ理解できていくのかな?
ダリオはショパンに何をこめたのでしょう?閉じ込められた諦めの気持ち?外へ出たいという希望?今の自分を全うしようとする覚悟?
チコ、ダリオを船に誘っちゃうなんて罪な事を・・・。
でもダリオって誰?と思っちゃいましたよ。本当にチラチラとしか出てきていないので認識の彼方でした。あの料理人?って全然勘違いでした。

チコ、これからライサの所へ行くのですね?
2021.01.17 11:14 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

そうです。チコ、本名はフランシスコ・ピニェイロなんですけれど、ここではそんなことはどうでもいいので、チコとだけ書いて登場させました。彼は、『Infante 323 黄金の枷 』の中でライサの船旅を設定したときから、裏設定には存在していたキャラで、私にとってはもう8年近くその辺にいた人なんですけれど、皆様にはこれがお披露目になります。まあ、グレッグを外伝で出してしまったときよりは、ネタバレとしては大したことがないので、「ま、いっか」という感じです。

マリアにしろ、チコにしろ、腕輪の意味を教えてもらうことはないので「?」のままでしょうね。
マリアも、なんだかんだいって美味しい目に遭ってしまったので、とくに問題がない限りドラガォンに対して不利な行動はしないでしょうし。

ダリオは、単にショパンを弾いただけ、なのかもしれません。
ただ、有名な曲ではなくて、同じショパンの中でも「なぜこんなマイナーで面白くないと言われているのを弾くんだ」という選曲をしたとこに、彼なりの言いたいことが詰まっているのかも。

以前、ミクに関する話の中で、アントニアがカルロスに語った下りがありましたけれど、《星のある子供たち》に生まれた以上、名演で名を成すようなことは許されないわけです。マイアみたいに誰も教えてくれなかったので知らない例外は別として、普通の《星のある子供たち》は、それを子供の頃からたたき込まれていますので、ここで天才的な演奏を披露して自我を満足させたりすることはありません。どこにでもいる名もない酒場のピアニストとして、どうでもいい演奏を披露した程度でしょう。

ダリオは、私の作り出したわけではなくて、彩洋さんが作られたキャラクターです。まあ、作品上でははっきりと《星のある子供たち》だとは書いてなかったのですが、とてもそれっぽいので確認したら、《星のある子供たち》設定だとお返事をいただきましたので、今回使わせていただきました。ま、ストーリーとしては、《星のある子供たち》であれば誰でも成立するんですけれど、せっかくですからあちらの作品に関係のあるメンバーをと思いまして。

チコ、そのうちに本編に出てきます。どうぞお楽しみに。

コメントありがとうございました。
2021.01.17 17:59 | URL | #9yMhI49k [edit]

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