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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】ショーワのジュンコ

scriviamo!


「scriviamo! 2021」の第4弾です。つぶあんさんは今年も、プランBでご参加くださいました。プランBは、まず先に私が書き、それに対して参加者のブロガーさんが創作作品や記事などを書いてくださる参加方法です。

つぶあんさん(たらこさん)は、四コママンガでひまわりシティーという架空の世界で起きる壮大な事件をいろいろと表現なさっていらっしゃる創作ブロガーさんで、「ひまわりシティーへようこそ!」を連載中です。しばらくさまざまな事情でブログをお休みでしたが、つい前日復帰なさいました。

「scriviamo!」ではいつもBプランをご希望です。1月末ということで、締め切りまで1か月しかないので、他の方の作品より一足早く発表させていただきます。サキさん、志士朗さん、ごめんなさい!

さて、今回はたらこさんの「ひまわりシティーへようこそ!」からお2人の大事なキャラクターと共演させていただきました。殺し屋デスと茶々じいのお2人です。設定やキャラなどを壊さないように氣をつけたつもりですが、何か問題があったらおっしゃってくださいね。そして、この後は全くのお任せです。任務は遂行しないでいただいて全く構いません(笑)

さて、今回の作品、もし書いてある意味が全てわかったら、あなたも「昭和」です。そういう小説にしてみました。

【27.03.2021 追記】
たらこさんが お返し作品を書いてくださいました。そして、素敵なジュンコのイラストも!
ありがとうございました。

たらこさんの書いてくださった 「ショーワのジュンコ
ショーワのジュンコ by たらこさん
このイラストの著作権はつぶあんさん(たらこさん)にあります。許可のない使用は固くお断りします。


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ショーワのジュンコ
——Special thanks to Tsubuan-san


 郵便配達夫が、2度ベルを鳴らして、電報を持ってきた。父は、何度言っても携帯電話も電子メールも持とうとしない。なので、急ぎの用事は電報を使う。

シンダイシャキボウ アスアサカラルスバンニコイ イリグチデハキモノヌゲ


 なんとまあ、物騒な。電報で殺人依頼。死んだ医者ってことは、あの隣のいけすかない医院のジジイをついにやっちゃえってことなのね。でも、もう少し計画的にできないのかしら。普通、明日の晩に、完全犯罪をしろと電報で娘に命じる?

 アタシはジュンコ。「ひまわりシティー」郊外の、名もない村に住んでいるの。父は、少し変わった人で、通っていた純喫茶の看板を見てアタシの名前を決めたんですって。純喫茶って、知っている? エッチなことはしない喫茶店のことで、シャガールっぽい絵が掛かっていて、シャンデリアのぶら下がっている店内に、レコードでヴィヴァルデイの『春』がかかっている系統と思ってくれればいいわ。ナウなヤングはあまり行かないタイプの店よね。

 そんなことは、どうでもいいのよ。ジジイといっても、相手は男性。抵抗でもされたら私に押さえつけるのは難しい。ってことは、殺し屋でも雇わないとダメよね。

 アタシは、『ひまわりシティー・イエローページ』をめくった。殺し屋の電話番号なんて載っているかしら? あった。インド人もびっくり。探してみるものね。

 早速、ダイヤルしようとして、やめた。自宅からかけたら、足ついちゃうかもしれないし。とりあえず、駅まで行き、公衆電話からテレカででかける。
「もしもし 殺し屋のデスさんのお宅ですか?」

 相手が、電話の向こうで渋い声を出している。もしかするとゴルゴ13みたいな、いい男なのかもしれない。
「ちょっと、明日の晩におねがいしたいことがあるんです」

 殺し屋に電話をするのは、さすがのアタシでも初めてだ。そこをしっかりと強調しておかないと。
「え〜っと、ジュンコといいます。うら若い乙女です。初体験なので、どうおねがいしたらいいのか、いろいろと教えていただきたいんですけれど」
「そうですか。そういうことでしたら、もちろん喜んで。待ち合わせはどうしましょうか」

 ランデブーするみたいな言い方ね。でも、電報の情報を伝えなくちゃいけないし、ちょっと変装して行きましょうか。

 実年齢より若く見えるように、普段はあまり着ない服をチョイスした。膝小僧が出るくらいのキュロットに、赤いとっくりのセーター、それから、緑色の光るジャンパー。余裕のヨッちゃんで、高校生くらいには見えるでしょ。

 デスが指定してきたのは「ひまわりシティー」の『茶々』。渋いお爺さんマスターがひとりで切り盛りしている。殺し屋っぽい人は、まだ来ていないようだ。アタシは、マスターに待ち合わせであることを告げてから、窓際の目立たない席に腰掛けた。

 入ってきたのは、アイスホッケーのマスクをつけている、めちゃんこ怪しい男だ。店内をぐるっと見回して、アタシと一瞬目が合ったのにマスターに言った。
「待ち合わせなんだ。待たせてもらう」

「あちらのお客様が、先ほどからお待ちですが」
「いや、若い女の子と約束したから」
何その言い草! アタシが若くないっていうの?! 激おこぷんぷん丸。

「あの、デスさんですよね。お仕事の依頼をしたジュンコです」
「え。あなたがジュンコさん? しかも、仕事? 初体験なんていうから、てっきり……」
「なんですって?」
「いや、なんでもないです」

 アタシは、ジジイ医者の家を教え、依頼人が隣人である父とわからないように言葉を選びながら明日の晩に実行すべきであることを告げた。

「なぜ明日の晩限定なんですか?」
この殺し屋、シュールな格好の割には常識的な質問をしてくる。

「それは、依頼人からの電報にそうあるからなんです。明日朝から留守、晩に来いって。それから、入り口では着物を脱ぐって注意書きがあります。罠に氣をつけてください」
「着物を脱ぐ? ストリップをしろと?」
「ええ」

 デスは、首を傾げた。
「とりあえず、前金として、報酬の半分をいただきましょうか。ま、氣の乗らないときは遂行しないこともあるんですけれどね」
「え? その場合、前金はどうなるんですか?」
「お返ししたくてもね……。住所氏名、口座などを教えてくだされば、払い込みますけれどね〜」
デスはせせら笑っている。こちらが身元を明かさないことを知っているからだ。トサカにくる。
 
「そんなひどい。お金を持ってドロンされても、泣き寝入りなんて、涙がちょちょぎれちゃう」
ハンケチをとりだして泣く真似をした。

 2人分のコーヒーを運んできたマスターが言った。
「どうなさいましたか。あなたのように美しい人を泣かせるなんて、こちらのお客さんは罪な方ですね」

 まあ、なんて胸キュンのナイスガイなのかしら。「君の瞳に乾杯」なんてセリフを言うのはこういうタイプの人なのね。ウブなアタシはイチコロだわ。

 少し浮上したアタシは、暑くなったのでジャンパーを脱いだ。するとデスの目がアタシのボインな胸元に釘付けになった。ふふん、着痩せするタイプのアタシ、けっこうグラマーなのよ、これでも。

「じゃ、こちらの氣が乗らずに任務を遂行しない場合は、来週またここで待ち合わせるってのはどうでしょう」
デスの声色がずいぶんと変わっている。おかげでこちらもツンとした態度で喫茶店を後にすることができた。
「おねがいしますね」

 さて、ちゃんと殺しの依頼が済んだことを、父に報告するためにアタシは実家に向かった。

「おう来たか」
土間の奥で盆栽をいじっていた父は、アタシの顔を見ると、まず嬉しそうな顔をしたが、すぐに険しい顔になって続けた。
「わざわざ書いたのに、なぜ外で履き物を脱がないんだ」

「なんですって?」
「書いただろう、電報に。入り口で履き物を脱げって。先週からここは土間じゃなくしたんだ。土足は困るんだよ」

「履き物を脱げ? お隣の医者宅で着物を脱ぐんじゃなくて?」
「なんの話だ。隣の藪医者の話なんか誰もしておらん。それより、切符はどこだ。駅の窓口は混んでいたか?」

「切符? 駅? なんの話?」
アタシは呆然とした。

「ちゃんと電報に書いただろう、寝台車希望って。明日からの旅行の話に決まっているだろう」
ちょっとタンマ。何それ? 話がピーマン。

 アタシは、もう1度、父の送ってきた電報を取りだした。

シンダイシャキボウ アスアサカラルスバンニコイ イリグチデハキモノヌゲ


父は、それを取りあげて音読する。
「寝台車希望。明日、朝から留守番に来い。入り口で履き物脱げ。火を見るより明らかだろう。何が問題なんだ」

 なるへそ。考えてみれば、電報で明晩に隣人を殺せなんて、書くわけないか。とほほ。さて、殺し屋どうしよう。今から、あの男をキャンセルするの? あんな高ビーな態度で、出てこなければよかった。チョベリバ。

(初出:2021年1月 書き下ろし)
関連記事 (Category: scriviamo! 2021)
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Category : scriviamo! 2021
Tag : 小説 読み切り小説 コラボ

Comment

says...
いやいやいやいや、エ~ッとこれのどこが昭和なのか、平成のサキにはちょっとわかりませんねぇ・・・なんて書いてみましたが、実はよくわかってますよ。
先が郵便配達夫の部分から順番に解説してくれました。電報はまだ打てるのでしょうか?
片仮名だけで文章を綴る電報はメールに慣れた現代人には不便なものでしょうし、誤解を招くことも多そうですが、平成にほとんどすべて廃止されてしまった「寝台車」は意識の中に無いかも知れませんが、なかなか「死んだ医者」とも読まないでしょう。サキでも「履き物を」と読みましたよ。
しかし夕さん、よくここまで詰め込みましたね。
きっと楽しみながらはめ込んでいかれたのでしょう。
面白かったです。
2021.01.31 11:33 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

あはは、さすがに先さんはきっとおわかりかと。
もっとも私は「チョベリバ」よりも前の世代だったりします。使ったことありません。先さんはギャルじゃないからなおさらお使いにならなかったかと(笑)

電報は、まだあるらしいですよ。慶弔用ばかりになっているようですけれど。
昔は「サクラサク」なんてのもありましたよね。

「死んだ医者」は必須です。だって、何とかして殺し屋デスさまにご登場いただかなくちゃいけなかったんですもの。
「履き物」の下りは別に私のストーリーにはいらなかったのですけれど、あちらでツッコみどころというか、笑いを取るとっかかりがいくつかいるかなと思って入れてみました。この電文読み間違いもものすごく古い昭和ネタです。電報がなくなった今ではなつかし〜ですよね。

ネタはもっとあったのですけれど、うまくはめ込めなかったので1/3は捨てたのですよ。
構想から執筆まで2日しかなかったので、こんな感じになりました。
水曜日はサキさんへのお返しですよ。

コメントありがとうございました。
2021.01.31 19:22 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
わぁ~さすが夕さん、仕事が早い。
忙しい中、しかも飛び入り参加でありがとうございます。

いや~さすがたくさん盛り込まれてますよねw
今では喫茶店といえば普通にコーヒーのむとこですが昭和の初期ではホステスさんがいて少し色っぽい店だったようです。
今ではメイド喫茶がそれに近いかも。
だからコーヒーだけすする喫茶店は色っぽい店じゃないということで純喫茶と表示されてたようですね。
銃喫茶からということできっと漢字は純子さんなのでしょう。

まずこの電報は罠があるなと思いましたよw
ひまわりシティーネタも色々入れながらも夕さんらしい表現もありますよね。
シャガールとか出てきてるあたりとか。
デスの性格もよく出ていて前金はかならず貰うけど仕事しなかったり失敗したときは返さないのですよこの人w
あいもかわらずのスケベな性格も出てますね。
チョベリバもトオルのオマージュですね~

それにしてもすごいお題振られちゃいましたw
これはデスがこのあとどうしたかを描かなきゃ逃げになりますな~
キーはこの電報の意味をデスがどう捉えてその藪医者をどうするかってことでしょう。
なかなかの難題ですが久々に腕を振るって頑張ってみますね(^^)v
その時に詳しい感想も書かせて頂きます。

とても夕さんらしい仕上がりになって読み応えありました。
ありがとうございました。
2021.01.31 23:08 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

Bプランなので、何よりも急いで作成してみました。
そして、「ロード」でロート製薬ネタを使われたたらこさんだから、昭和ネタもいけるかなと思いまして。
それにデス様も、けっこう守備範囲が広かったと記憶しているので、若い子だけでなく熟女でも出るところ出ていればOKかなと(笑)
ま、このために作ったダメダメなキャラですので、どのように扱ってくださってもノープロブレムです。

そして、そうです、名前は純子です。
それに、デス、ってことは、アルシュにも前金返さなかったのですね(笑)
純子の方も、もちろん踏み倒してくださいね。
そうそう。チョベリバはトオルの口癖なんですよね、確か。
チョベリバは、私よりも下の世代が使った言葉で、当時は「いまの若い子って、こんな風に話すんだー」と思ったものですが
今となっては一緒くたのネタになってしまいましたね。
でも、トオルが言えばなんでもカワイイ。カワイイは正義です。

お返しは、無理なさらずに、デスさまだけ出てくればなんでもいいですよ!
藪医者も父ちゃんも純子もどうぞ好きなように料理してくださってけっこうですし。

復帰早々に遊んでくださって感謝です。
ご参加どうもありがとうございます!
2021.02.01 23:03 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
執筆、お疲れ様です。

がび~ん、完全に出遅れた~(笑)
ア~ウ~、ワタシ最近の人なので、ちりばめられた数々のネタ(流行語)については、ほとんど記憶にございませんし、ワケワカメでした。
というのはもちろん冗談です。

いやぁ懐かしいネタがいっぱいで、笑わせていただきましたよ。なかには死語になっちゃったものもありますけど、いまでもしっかり現役の言葉もありますね。
ジュンコちゃん、電話の内容がちょー誤解されまくりですね。デス氏がジェイソンだし、ストリップさせるとか、アンタも好きねぇ。
これ、いわゆる「ギナタ読み」ってネタですよね。昔は電報ってカタカナばかりでしたから、こういう落語的なハプニングもあったでしょうね。まあ、いまでもときどき文章の音読でやらかすともありますけど。いやあ、日本語って、ほんとうにムズイですよね(笑)
父娘の誤解は解けたみたいですけど、殺し屋さんはさっさとキャンセルしないと、ジジイ医者さん天中殺ですよね。まあ、あっしには関わりのねえこってござんすが。

って、このコメントのネタもイマドキの人には、わかるかなぁ~、わかんねぇだろうなぁ(爆)
2021.02.02 03:24 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんばんは。

あはははは。
TOM−Fさんったら、そんな昭和認定ネタ爆弾を(笑)

マズいんですよ。
今回書くにあたって、調べたら、私がまだ普通に使っている言葉があったりして。
普通に「とっくりのセーター」とか言っていました。「ダイヤルする」なんて今の子供は想像もできないんでしょうね。

今は、子供でもメールだラインだって時代なので想像もつかないでしょうけれど、昔は「携帯なんて高い!」「国際電話なんて何万円もする!」みたいな感覚で、電報をメッセンジャー代わりにしていたのですよね。そういえば、若い子の間ではポケベルなんてのがあって、あれなんて今からしたら「スパイの暗号ですか!」ってシステムでしたよね。

で、「ギナタ読み」で誤解が生まれるというストーリーも当時は成立したわけですが、それを2021年にやろうという(笑)

しかし、たらこさんところのデスは、本編ではヒロインのお父さん殺したりれっきとした殺し屋なんですけれど、この手のコラボではあまり氣が乗らないのか、ほとんど任務は遂行しないので、ま、藪医者も大丈夫ではないかと……。でも、履き物の件は、連絡した方がいいかもしれませんねぇ。たらこさんのお返しが楽しみなので、連絡しない方がいいのか(笑)

> まあ、あっしには関わりのねえこってござんすが。
えっ、このネタは、まだ生きていますよね?!
あ、時代劇そのものがなくなっているんでしたっけ。それは悲しい!

コメントありがとうございました。


2021.02.02 21:52 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
私は知らない言葉がたくさんありました
(知ってるのも結構あったけど)
郵便配達夫って人の名前かと
昔から面白い言葉は多かったんですね
当時もJK(今は?歳)が考えてたのかな
ってそんなこと言ってる場合じゃないぐらい
チョベリバな事態に!?

実は私も最後だけは着物だと思ってました…
危なかった
2021.02.03 13:14 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

そりゃ、ダメ子さんはJKですから、さっぱりわかりませんよね。
もしかしたら、隣のお兄さんは、けっこうご存じかも!

昔は昔で、変な言葉が多かったですけれど、今の言葉はもっと進化している上、死語になるまでの時間もとても短いようで、怖くて何も使えません。あ、でも、orzはよく使っている私。(もしかして痛い?!)

着物脱いじゃうのはヤバいです!
そんなことをカミングアウトしたら、そういう電報がおうちにいっぱい舞い込んじゃいますよ!

コメントありがとうございました。
2021.02.03 21:31 | URL | #9yMhI49k [edit]

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