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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】樋水龍神縁起 東国放浪記 約定

scriviamo!


「scriviamo! 2021」の第9弾、ラストの作品です。TOM-Fさんは、「天文部シリーズ」シリーズの掌編でご参加いただきました。ありがとうございます!


 TOM−Fさんの書いてくださった「この星空の向こうに Sign04.ライラ・アークライト オブ ザ  スカイ

TOM-Fさんは、胸キュンのツイッター小説、日本古代史からハイファンタジーまで 幅広い小説を書かれるブログのお友だちです。フィジックス・エンターテイメント『エヴェレットの世界』は、無事完結、現在は次の長編に向けて、準備中とのこと楽しみですね。

「scriviamo!」には皆勤してくださり、毎回趣向を凝らした名作でご参加くださっています。そして、毎回めちゃくちゃ難しいのですけれど、今年の難しさは例年と違うところにありまして……。最愛のキャラの渾身のエピソードでご参加なのですよ。いや、他にも大切なキャラでご参加くださったことは多々あるのですけれど、今回の作品は最愛のキャラをここまで痛めつけるかという、TOM−FさんのドSぶりを遺憾なく発揮されていて、いや、これに適当なキャラでお茶を濁すお返しはナシでしょう……みたいな。

それで、こちらも最愛キャラ(の前世だけど)を持ってくることにしました。しかも、同じくらい虐めている……ええと、いや、そうでもないか。しかし、TOM−Fさんがご自分の作品について「イタい」とおっしゃっている以上に、めっちゃイタい仕上がりになっています。あと、男が病で死んじゃうのと、男が死んだ女に囚われているのもあちらの作品と同じ。

いや、合わせてそう書いたのではなく、もともとそういう構想でして。今回のこれ、バリバリの本編で、しかも終わりから2番目くらいのところにあるべき話をいきなり書いてしまいました。ええ、TOM−Fさんのお話を読んでから「いきなり(ほぼ)最終回」を書くことにしたんです。

最終回の手前ですから、主要キャラたちの行く末が全バレです。ここまでとんでもないネタバレはさすがに普段はしませんが、この話に限ってははじめから主人公が野垂れ死にすることを公表しているので、これでいいかなと。この話、いずれ途中を書いたら、記事の順番を調整してこれがちゃんとおしまいの方に来るようにしたいと思っています。でも、ほら、もう書かないかも知れませんしね〜。(根の国のシーンが大変そうで筆が進まないという説も)


「樋水龍神縁起 東国放浪記」をまとめて読む 「樋水龍神縁起 東国放浪記」

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樋水龍神縁起 東国放浪記
約定
——Special thanks to TOM−F-san


 開け放たれた鳥居障子の向こうに垂れ込めた雲が見えた。萱は、平伏する次郎から眼をそらし、その雲間より逃れた一条の光が、若狭の海に差して煌めくのを眺めた。
 
 安達春昌の忠実な従者である次郎が、ひとりでこの若狭を訪れるということが意味することは一つだった。久しぶりに次郎の顔を見て喜んだ三根もまた、その意を解して泣きながら萱に伝えに来た。

 訊けば、春昌はここ数年東国を彷徨い、伊勢の近くで流行り病で亡くなったという。廃寺の境内に主人を埋め、次郎は生まれ故郷の奥出雲へ戻る途上であった。

 かつて春昌は、いま次郎が座る位置のすぐ後ろの廂板間に座っていた。あれは何年前のことだろう。昨日のことのように鮮やかに脳裏をよぎるが、昔語りになってしまった。

「わざわざ報せにきてくれたこと、礼を申します。春昌様は、何かおっしゃられたのか」
萱は、頭を上げるように言ってから問うた。次郎は、わざわざ人払いを願い出た。何か伝えることがあるのだろう。

「お隠れになる二日ほど前のことでございました。こちらでお世話になったことを語られたとき、こうおっしゃいました。『誓いは果たしたと、萱どのに伝えてほしい』と」

 萱は、こみ上げるものを押さえつけた。神罰に全てを捨てて彷徨うかつての陰陽師を、それまで以上に苦しめることになった約定を、萱もまた忘れたことはなかった。これからも生き続ける限り忘れないだろう。

* * *


 それは、あの月夜のことだった。春昌は廂の板間に座り、若狭の海に揺れる月影を眺めていた。次郎は三根のもとに行き、佐代や岩次も下がり、萱はひとり春昌の杯を満たしていた。

 献上品となる濱醤醢を造る『室菱』の元締めとして、女だてらに重責を担う萱は、長らくふさわしき婿取りを期待され続けてきた。父に婿になることを所望された若衆が海難に遭い、間もなく父も急死したため、図らずも若くして元締めになった萱には、これまで婿探しをしている時間などなかった。

 何年か前より子細ありげな貧しい公達、安達春昌とその従者次郎が滞在するようになって以来、古くからの使用人たちはこの公達と萱との縁組みを期待するようになった。特に、萱の従妹である夏姫を巻き込んだ怪異を、春昌がみごとに祓い、かつて殿上すら許されていた陰陽師であったことが知れると、彼らの期待はさらに強くなった。それどころか若狭小浜の商い人たちも、もはやそれが決まったことのように噂するようになっていた。

 ところが、当人同士が話を進める兆しを全く見せないので、業を煮やした使用人たちがあえて場を離れ、次郎を主人から引き離して、春昌と萱がふたりきりになるよう骨を折っていたのである。

 萱は、彼らの願いは十分に承知していたものの、そのようなことは到底あるまいと心を定めていた。他の者らは、春昌と樋水龍王神社の御巫瑠璃媛の死にまつわる因果を知らなかったし、萱と播州屋惣太との深い因縁を春昌が承知していることも氣づいていなかったのである。

 萱と春昌はもはや、釣り合う似合いの男女、もしくは惚れた腫れたの始まりを探り合うがごとき浅い仲ではなかった。影患いの果てに生成りとなった惣太の妻に萱代わりに祟られた夏を救うため、萱は春昌と共に、根の国を訪れることとなった。ふたりはそこでこの世ならぬものと対峙した。そして、そこで不本意ながら、もっとも知られたくない心の一番奥にある悼みを晒すことになってしまった。

 十六夜の月は穏やかに輝き、若狭の海はいつになく凪いでいた。微かな風が、春昌の鬢からこぼれた髪をそよがせている。根の国で亡者に囲まれ二度と現し世に戻れぬことを覚悟したとき、彼は萱を守らんと全霊を尽くし半ば鬼と化した。その彼の姿は夢のように遠く想われた。

 彼は、萱が生涯をかけて愛し求めた男ではない。そして、彼にとってたったひとりの宿命の女は萱などではない。彼が奥出雲の地で禁忌を犯し、そのために名聞はなれ彷徨い生きていることも知っている。けれども、そうした全ての情状は現し世にのみ存り、根の国の在り様とは何ひとつ関わりなきことであった。萱は、神意も天罰も愛欲も恩讐も全て手放し、ただ彼と共に、かの黄金に輝く七色の光の中に溶け込んで消えていきたかった。

 こうして現し世に舞い戻り、またそれぞれの情状を抱えた者に分かれて座っていることに、違和感が拭えない。夢の続きのごとく、合うさきるよそ事に思える。春昌様も、同じように感じておられるのであろうか。萱は、穏やかな彼の横顔を見ながら考えた。それとも、この方にとって、あのような神事象の見聞は、明暮のことなのやもしれぬ。

 誰よりも近く、誰よりも頼りになると感じられた男が、現し世ではこれほどに遠く感じられる。身分と立場が、そして、お互いの持つ深い業と過去が、ふたりの間に大きな楔を打ち込んでいる『室菱』の者らにも、おそらく春昌を知り尽くした次郎にも見えてはいない、まがう事なき隔たりを萱は感じている。この男とひとつになれるのは、あの七色の光の中でだけなのだと。

 ふたりとも、言葉にしてその様な語りは何もしない。ただ、周りの期待には応えられないことを、お互いが誰よりもわかっていた。怖ろしいほどに穏やかな月夜だった。

「そういえば、弥栄丸から便りがございました。来月、夏と共にこちらに参るそうでございます。ふたりとも一日も早く春昌様にお目にかかって御礼を申し上げたいと、心はやっている様子でした」
萱は、丹後の屋敷に戻っている夏の様子を知らせた。あのふたりが夫婦になることを夏の父親もついに許したらしい。

 春昌は、夏の話をするときにいつも見せる幼子を愛おしむような微笑みを見せて答えた。
「夏どのがこちらに戻られる頃には、私はもう居りませぬ。よろしくお伝えください」
「どうしてですか」
「月が明ける前に、出立する心づもりでおります」

 これから冬になるというのに、なぜいま苦しい旅に出ようとするのだろう。
「春昌様。春をお待ちください。これからの山越えはおつらいでしょう」

 彼は、顔を向けて萱に冷たい一瞥を与えた。ひどい冷氣が下りたかと思うほど空氣が変わった。春昌の全身が例の青紫の氣焰に覆われていた。
「だから行くのだ。ここで心地よい冬を過ごしたりせぬように」

 はじめてその氣焰を感じたとき、萱は何か禍々しきものに触れたのかと、ひどく怖れたものだ。だが、彼女はもうそれに恐れを感じることはなかった。それは、癒やされることのない痛みと彼自身すらを許さない己の怒りが生み出す彼の業そのものだからだ。彼女は、彼の心の痛みに耐えかねて、思わずその掌を彼に向けた。

 すると、不思議なことが起こった。あの根の国で見たのと同じ、彼女自身の黄色い氣焰が掌で暖かい色に輝きぶつかった彼の氣焰の色を変えたのだ。

 萱は長いこと、自らの氣焰も含めて、この世ではないものを見ることをやめていた。自分にはその様なことはできないのだと思っていた。かつて媛巫女瑠璃に、樋水龍王神の御前に連れて行かれたときも、偉大なる巫女の権能が彼女に特別なものを見せたのだと思い込んでいた。

 だが、それは、萱自身の『見える者』としての力だった。春昌と共に訪れた根の国で、彼女は再び樋水龍王神の御姿を拝し、禍つ神を浄める媛巫女に比肩する伎倆を手にしたのだ。

 全ては収まるべきところに収まった。萱は現し世に戻り、商いには不要なその特別な力はもう使うこともないと思っていた。

 それなのに、なんということであろう。かつて己をあれほど怖れおののかせたあの氣焰を、自ら触れるだけで消している。

 掌はまだ服の上にも達していないが、萱の掌から溢れる暖黄色の光は、春昌の外側に纏いつく青紫の氣焰を、触れたところから次々と春の若萌え草のような明るく心地よい氣に変えていった。

 だが春昌は、萱がしようとしていることを見て取ると、身を引き、苦しそうに顔をゆがめて言った。
「やめてくれ、浄めるな。頼む」

 萱は、動きを止め、わずかに後方へ下がった。青紫の氣の焰はまだ春昌の周りに燃えていた。若緑に変わりだしていた氣も、やがて再びその青紫に打ち消されて消えていった。

「すまぬ」
春昌は、絞り出すように言った。
「無駄なのだ。一刻、すべてを浄めても、またこの業が勝る。奥田の秘め蓮の池も、権現の瀧も、若狭姫大神の神水も、どうすることもできなかった。私が生き続ける限り、これは消えはせぬ」

「春昌様」
「夏どのを救うためには、そなたの力を借りる他はなかった。だが、そなたの眠れる力をあのような形で目覚めさせたのは、忌むべき咎だ。ましてや、そなたをこの呪われた業に巻き込むわけにはいかぬ。呪われ黄泉へ引きずり込まれるべきはこの身だったのだ。媛巫女ではない。憐れな次郎でもない。そして、そなたでもないのだ」

「想ってはならぬ方を想うことが呪われた業ならば、この身はとうに奈落に落ちております」
萱は、わずかに震えながらも、はっきりと口にした。

 惣太の妻を恨みの鬼にし、影患いに追い込んでしまったのは、他でもない自らの業だ。たとえ全てが終わった今となっても、神罰を受けることはなくとも、その事実を変えることはできない。

 春昌は、わずかに顔の険しさを緩めた。否定しないことが、彼が萱の言い分を認めていることを示している。

「春昌様。苦しまれるあなた様を、同じ浄めの力を持つ私の元へと導かれたのは、媛巫女様だとお思いになりませぬか」

 夏のように、三根のように、すべてを投げ打ち想いのままに慕う相手の胸に飛び込むことは、萱にはできない。自らが媛巫女に立ち替わる存在だとうぬぼれているわけでもない。だが、せめて一刻でもかまわない。私にできることをさせてくださいませ。萱は祈るように春昌を見つめた。

「媛巫女の真似事はそなたの本分ではない。その様なことを度々すれば、すぐに周りにこの世ならぬものが集い、身動きが取れなくなる。心を煩わさずに、そなたの定めを生きよ」
「そして、あなた様おひとりで、全ての苦しみを背負われるおつもりですか。せめて、ここにおられる間だけでも、重荷を下ろして楽におなりくださいませ」

 春昌は、月から視線を移し萱を見た。
「楽になどならなくていいのだ。ここで安らぎを得るのも過ちだ。私は赦しの道を探しているわけではないのだから」

 揺るぎのない強い光を放つ瞳を見て、彼女はこの男が彷徨いながら探しているものが何かを理解してしまった。嘆きせめぐその魂は、もはやなんの希望をも持っていなかった。

 萱は彼を救うことができない。彼の願いはひとつだけなのだ。呪われた身を横たえ二度と目覚めぬこと。罪に穢れた屍を受け入れてくれる土地神を探すこと。

「そのようなことを、おっしゃらないでくださいませ」
絶望に打ちひしがれて、萱は伏した。

 彼は女の涙には揺るがなかった。一刻も早くここを去ろうとするのは、大きくなりすぎた萱との縁を断ち切るためなのだ。

「萱どの。そなたは、私と次郎に善く尽くしてくれた。その恩に報いることのできるものを私は何ひとつ持たぬ。だが、もし、私の力でそなたの恩に報いることができるのならば、どんなことでも願い出てほしい」

 萱はたったひとつの願い事をした。それが、春昌が果たしたという約定だった。

* * *


 萱は、紙に包まれた一房の髪を手に取った。別れ際に見た彼の髪にこれほど白いものは目立っていなかった。伊勢にたどり着くまでに、どれほどの新たな苦しみを抱いたのであろう。目の前の次郎もまた、少し歳をとった。だが、故郷へ戻る彼の氣焔には、以前よりも朗らかで暖かいものがにじみ出ている。

「次郎どの。春昌様のお言葉をお伝えくださり、誠にありがとう存じます。また、大切なご遺髪をお譲りいただき、謝するにふさわしき言葉もございません」

 次郎は、声を詰まらせながら、萱の心を慮った言葉を綴った。この春昌と媛巫女に忠実な侍者が、わざわざ伝えに来たのだから、春昌が我が身を忘れなかったのもまことであろうと思った。次郎や、他の者が思っているのとは違うとはいえ、確かに彼と萱は特別な縁で結ばれていた。

 そして、次郎もまた、この若狭で、長く苦しい旅に値する縁を見いだしたのだろう。
「次郎どの。あなた様と三根のこと、私に一切遠慮をなさらぬように。三根の恩義はもう十分に返してもらいました。どこへ行こうとあの者の心のままです」

 次郎は、萱に許しを願い出る時機を迷っていたのであろう。顔を真っ赤にして、また畳に何度も頭をこすりつけた。

 遠からず、次郎は新しい旅の道連れと、奥出雲への旅路に出るであろう。たち止まり根を張ることも、赦され安らかに生きることもない、終わりの見えなかった旅は終わろうとしている。誤って大切な媛巫女を死なせた苦しみは、彼の主人が全て背負い、伊勢の弔うものもない廃寺で朽ちていこうとしている。

 次郎が下がった後、萱はかの板間に座り、春昌の遺髪を今ひとたび見つめた。それはすでに魂なき物であった。青紫の氣焔も、若緑のそれも、もはや感じることはなかった。彼の願い、せめぎ苦しんでいた魂の渇望は、ようやく成就したのだ。萱が言霊で縛り付けた、長い苦しみの果てに。

 萱が彼に願ったのはたった一つだった。
「生き続けてくださいませ。決して自尽はなさらないでくださいませ」

 彼は、萱の残酷な願いを了承した。流行り病で命を落とすまで、彷徨い生き続けた。そして、いま萱は、彼のいない現し世に虚しくひとり立っている。

 忙しく働く使用人たちの声が耳に入る。萱は、遺髪の包まれた紙をそっと胸元にしまうと、立ち上がり表へと向かう。もう一度若狭の海を振り仰いでから襖戸を閉めた。

(初出:2021年3月 書き下ろし)

追記

月夜の語らいのイメージ曲は、萱のキャラクター紹介でも貼り付けたのですけれど、せっかくなのでもう一度。

上妻宏光 風林火山~月冴ゆ夜~

おまけです。次郎の帰りの旅のイメージソングを。「君」の意味がいくつかあったりして。

あの頃へ / 安全地帯
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Tag : 小説 連載小説

Comment

says...
執筆、お疲れさまでした。

おっと、『東国放浪記』だ。しかも、いきなりクライマックスじゃないですか。八少女夕さんの「萌え」というか「愛」が、たっぷりと込められていますね、これ。

春昌の最期は、まあ、やはりそうなりますか。まあこればかりは、変えられないですよね。

周りの人々が、春昌と萱に一緒になって欲しいという望みを持つのは当然だろうし、またその期待どおりの人生を送ってもよかったんだろうなぁ。龍王様は頓着しないだろうし、萱が言う通り瑠璃媛もそれを願いそうだし。でも、それをわかっていても、他の誰でもなく彼自身がそれを許せない。死者に囚われてしまった人間、しかも誠実な人って、そうなっちゃうんでしょうね。
萱も、あれこれ訳アリですね。あの文脈だと、商人さんとは浅からぬ関係のようだし。
そういう経験が彼女の人間性に深みを与えているんだろうなぁ。
そして、駄目だとわかっていてもなお、死出の旅立ちを望む春昌を引きとめようとする彼女の気持ち、痛々しいですね。

約定の内容は、きっとそうだろうな、と読みながら予想したとおりでした。
春昌にしても、あれでなければ自分の望んだ末期ではないだろうし、萱にしても、あれでなければ自分を納得させることなんてできなかっただろうし。一見、残酷なようで、けれど実はお互いにとって最良の約定だったのだと思います。萱の言霊が春昌を縛り生き続けさせたように、彼女自身も縛り、このさき長い人生を生きていくことになるのでしょうね。

イメージ曲、切なさと情念とが混ざりあって、このシーンにぴったりですね。

モチーフや構成は似ていても、超甘党の拙作とはちがって、こちらはキャラたちの強さと、物語の重厚さを感じる、じつに硬派な作品です。さすがは八少女夕さんです。
次郎や夏のその後も盛り込まれていて、とても読み応えのあるお話でした。
極悪投球への見事な返し、堪能させていただきました。

ところで、「根の国殴り込み編」が、とても気になっているのですが……。
なんですか、あれは。なにやら面白そうなことになってるじゃないですか。こんなネタバレされたら、読みたくなっちゃいますよ。
書く書く詐欺、ぜひ解消してくださいね。
2021.03.03 08:49 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
こんにちは。

ほら、TOM−Fさん「今年は『東国放浪記』ないの〜」的なコメントくださったから、せっかくなので書いてみました。
あ、詩織ちゃんに匹敵する手持ちのストーリーが、2つくらいしかなくて、1つはいくら何でも出せない「誰もしらんわ、こいつ」でしたのでこっちにしてみました。そして、いきなりストーリーすっ飛ばしです(笑)
それに、ぶっちゃけ「これさえ書ければ、他のシーン、書かなくてもいいや」ってありません?

いただいたお題がとても重かったので(内容もそうですけれど、作者の思い入れ的に)、こちらもそれに匹敵する思い入れを込めましたが、おかげさまでかなり独りよがりでイタい感じになりました。いいんです。偏愛するキャラを書くときはイタくてナンボですよね?

春昌の最期は、もちろんこれです。(野垂れ死にシーンの構想もあるけれど、もっとイタいので書かないかも)

樋水龍王神は、ええ、正直言って「そっちの展開、むしろウェルカム」だったかも。
このストーリーの特色として、「神罰」とか「龍王様の御心に適う」とか言っているのは全部人間で、実は龍王は一貫してそんなこと言っていないというのがあります。次郎に春昌討伐を命じたのも宮司であってご神託でもへったくれでもなかったですし。

ここで名前だけ出てきた播州屋惣太という商人は、ご推察の通りかつては萱の恋人でした。そんで、春昌が「自覚のある諸悪の根源」なのに対して「自覚の全くない諸悪の根源」です。もちろん、彼には彼なりのあれこれがあって、そうなったわけですけれど。

萱と春昌の関係が、単なる恋愛感情の話ではないというところだけ少しこだわって書いていますが、最期の方はその感情の名前がもう萱本人にもわからなくなっている感じにしてあります。

約定に関しては、すぐにわかりますよね。
この言霊は、春昌だけでなく、ご指摘通り、後ほど萱本人も縛っています。この人、結局死ぬまでぼっちで、全てに対して虚しい想いを抱えたまま生き続けます。

「根の国シーン」は、厨二病感全開ですけど……。
生成り奥さんとのバトル、萱の覚醒、亡者とのバトル、龍王様降臨、すんでの所で龍の媾合。めっちゃ書きたくないんですけれど……。

ともあれ、今年も渾身の作品でのご参加、本当にありがとうございました!

2021.03.03 15:25 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
もぐらさん、サキさんのお話の方からコメントをと思ったのですが、後先になっちゃったけれど、先に一番最近読ませて頂いた方からコメントしようっと。記憶が混乱しちゃってて。
と、言い訳はともかく。なるほど~。痛い話に痛い話を持ってきたというだけではなく、言葉や行いによる呪縛から逃れられなかった末路のお話という意味でもシンクロしていましたね。末路といっても、悪い意味だけでは無くて、ある意味ではそのおのれの所行に真正面から対峙した結果の真っ当な人生だったとも言えるわけで。惨めな死だったかどうかは、見た目ではわかりませんものね。殉じたという意味では満足だったのかも。
でも何よりも、作者の思い入れがそれぞれ半端ないという点がシンクロしているのか……う~む。それと、書く書く詐欺ならぬ、野垂れ死にだってのは前から言っておられたけれど書かれなかったシーンが描かれたという点でも、シンクロですね。

萱はまさに言葉によって呪をかけたのですね。そして、人を呪わば穴二つ状態(あれ? なんか使い方間違ってるか)で、自分もその呪に捕まってしまったのですね。でも彼らにとってはそれがまた別の意味での絆というのか、縁というのか、宿命というのか、媾合というのか。いずれにしても、萱は瑠璃媛に、ある方向から見たら勝ったのかも?(いや、勝ち負けではないか)。どこか女の情念的なモノも(誰に対してかはともかく)感じられちゃったのでした。
上妻さんだ(o^^o)
2021.03.04 17:37 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。
しかも、5000字ではなくて、ちょっと長くなってしまったので読むの大変じゃありませんでした? ごめんなさい!

そして、そうなんですよ。
TOM−Fさんのところのリィアン氏と、春昌は、いろいろと共通点があるのです。
最期が野垂れ死に系なのもそうですし、贖罪に後半生を費やしているとか、「それはもういいから、目の前にいる人と縁結べ」って読者がヤキモキしそうなところとか、それとも女に「そんな男ほっとけ」と思う方も多いかも。

書いておいてなんですけれど、春昌の暗い道行きは完全に独りよがりです。龍王は罰するつもりなんてぜんぜんないし、むしろ「何やってんだ、こいつ」でしょう。でも、彩洋さんも書いてくださったとおり、本人としては最期まで贖罪に徹して死んでいったので、それで満足なのではないかと思っています。この時点では、まさか、何度生まれ変わっても記憶がリセットされないとは思っていなかったでしょうし。

萱は、正に自分のかけた呪に穴2つ状態で嵌まりました。あんなことを頼んでおいで自分は「つらいから死んじゃえ」というわけにはいきませんよね。ま、この人はもともと自殺を願うようなタイプではないんですけれど。
この人、もちろん春昌に自殺なんかして欲しくないという純粋な想いもあったでしょうが、それだけでなく、たぶん、現在の特別な縁のある状態を引き延ばしたかったんだと思います。
春昌が生きている間は、瑠璃媛よりも萱の方が(物理的に)近くてできることもたくさんあって、三根と次郎の縁もあるので、また春昌一行が考えを変えてここに来るかもしれない的な希望もあって。
でも、春昌は(頑ななヤツですから)2度と帰ってこないまま死んでしまいました。萱からしてみたら、瑠璃媛のいるところへ行ってしまったわけです。その後、次郎の働きかけもあって樋水龍王神社で瑠璃媛の背神として祀られるので公私ともに一緒になったんですよね。一方で、萱は醤醢つくりながら1人で生き続けます。もちろん惣太とは切れていますし。

このストーリー、思い入れはたっぷりあるのですけれど、実は、「たぶん書かないだろうなあ」と思っている、この1つ前の話(野垂れ死に直前シーン)と1つ後(次郎と三根の旅路的なラストシーン)の方が、思い入れがあるかもしれません。でも、そっちはあまりにもイタい感じで……。あはははは。

そして、上妻さんの曲、すきなんですよ。わりと稔のイメージを考えるときに本格的な三味線の曲よりも、こうしてポップにアレンジされた上妻さんの曲でイメージすることが多かったので。(素人はこれだから……)

コメントありがとうございました。
2021.03.04 22:01 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
時代も作者も超えて本編同士がシンクロしているんですね
苦難続きで最後は死んでしまうとか
ドSな作者のところのキャラは大変だ
死んでしまうのも悲しいとはいえ
過去の女の人に敵わずじまいで残されるのも辛いですね
2021.03.05 14:14 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

あはは、シンクロといえばシンクロですが、たまたま似た設定のキャラの話を私が持ってきただけということも(笑)

「苦難続きで野垂れ死にする」という記述は、もともとの作品では1行で書いてあったのですが、なぜかスピンオフがけっこうな長さの作品になりました。

さて、過去の女の人に敵わない件ですが、基本的に死んだ恋敵に勝つのは難しいですよね。
相手は美化されていく一方ですから。とくにこの手の作品では難しいです。
現実にはどんどん再婚して普通に幸せになる人もいますけれどね。
前の人なんか氣にせずに戦わないというのがベストなのかも。

コメントありがとうございました。
2021.03.05 23:14 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
ああ、とうとう、しかも唐突に亡くなってしまいましたか。
予告されていたこととは言え、ちょっとショックでした。夕さんの小説ですから淡い期待を抱いても無駄だとはわかっていたんですが、やはり・・・しかも物語の流れを一気にすっ飛ばしていきなりですからね。
でも春昌、自分に科した定めに忠実に従って死んだのですから、サキはとても理解できませんが、ある意味で幸せだったのだろうと無理やり納得しました。
春昌と萱の関係は大人の関係というか、どちらも相手のことを深く思っているのに、そしてお互いがそれをわかっているのに、そこから先へは進もうとしない、進むことが出来ない、そういう関係なのですね。
しかし、頑なだなぁ。人間って本当に複雑怪奇です。
こういう関係、とても興味深くて、サキも書いてみたいとは思っているのですが、どうも思考回路が単純なせいでしょうか、どうしてもハッピーエンドへ向かってしまうか、展開できずに殺してしまったり・・・上手く書けないのです。
生き続けたまま耐える・・・萱はそんなことを願ったのではないのでしょうが(生きて戻ってきてくれることに一縷の望みを託した?)、春昌はどんな気持ちでそれを実行したのか、萱はどんな気持ちでで春昌の言伝を聞いたのか、う~ん、複雑です。

次郎と三根の2人が救いでした。
次郎の新しい道連れって彼女の事ですよね?
2人で奥出雲へ旅立つということでいいのですね?
こっちのシリーズしか読んでいないサキは、何か読み間違えているようで不安です。
新型コロナのせいでもあるのかな?
いきなりのクライマックス!楽しませていただきました。ドキドキですよ!

イメージ曲、映画化されるなら即採用ですね。
2021.03.06 11:45 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんにちは。

春昌の死については既に1度書いた(断片小説としてブログに公開した部分です。 https://yaotomeyu.blog.fc2.com/blog-entry-1239.html )ので、その間のエピソードを少しずつ埋めている書き方の1つだと思っていて、なので途中が欠けている状態でこれを発表することは、他の結末が未発表の小説よりは抵抗が少なかったです。

幸不幸は別として、この時点で彼は自分のやったことを「終わったこと」として新しい幸せを探すようなことはしたくなかったのでしょう。
実は、この人、千年間に何度も生まれ変わっては、その度に前世の記憶を思い出していたのですが、その別の人生では普通に恋愛したり結婚したりしています。

個人的な執筆のテーマとも関連があるのですけれど、おそらく私の「萌え」というのか感情のツボにあたるところって、サキさんがご指摘くださっているように「そこから先へは進もうとしない、進むことが出来ない、そういう関係」にあるように思います。だからどの作品でもぐるぐるが長いのかも。ハッピーエンドになると途端に興味が薄れますし。

ティーンエージャーの頃には、主人公ひとりとヒロインひとりの絶対に揺らがない強固な関係の話をよく書いていましたけれど、ある程度の年齢になってからはそういう原色のきっぱりとした話ではなくて、もっといろいろな物事や感情が複雑に絡むマーブル模様の話を書きたくなりました。実際に人間が生きていく間に、何でもかんでもきっぱりと線を引けることばかりではないし、真心だけの問題でもない、それはその人が善い悪い、または弱いから強いからではなくて、人間とは多かれ少なかれそういうものだと思うからです。かつての私なら決して登場させなかった(ヒロインにとってはライバルの立場の)萱と春昌の物語を書くようになったのは、そのあらわれだと思います。

次郎と三根の件は、おっしゃるとおりです。ただし、2人ではなく3人で帰りました。3人目は2人の子供です。ここも詳しく書くか迷ったのですが、ごちゃごちゃ書くと、ストーリーのトーンがおかしくなるのでわざと書きませんでした。ちなみに、『樋水龍神縁起』の本編を書いたときには、三根はまだ存在していなかったので、本編の方にはまったく記述はありません。

実は、『樋水龍神縁起 東国放浪記』のもともとのプロットは、この最期の3回分くらいのイメージで始まりました。ただ、すでに中ほどのプロットもだいぶたまっているので、おいおい間を埋める形で発表していこうと思います。(また「書く書く詐欺団」の面目躍如)なので、また生きている春昌も登場すると思いますので、その時にはどうぞよろしくお願いします。

コメントありがとうございました。
2021.03.06 16:23 | URL | #9yMhI49k [edit]

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