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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【断片小説】「青龍時鐘」より

官能的な表現も若干含まれるために、fc2小説の方だけで公開している四部作、「樋水龍神縁起」の最終巻、「春、青龍」を本日公開します。(新月を待つので、会社から帰ったら)
この小説は扱っているテーマを完遂するために、当初予定していたラストを変更した唯一の作品です。設定がありがちだったり、現実離れした、私にとっては冒険の作品でしたが、扱っているテーマ、その結末については、いまだに「これしかなかった」と思っています。2012年の十月にこの小説を完全公開するプランをずっと温めてきました。無事に公開出来てほっとしています。ちょっとだけ断片小説として紹介しますね。


fc2小説「樋水龍神縁起 -第一部 夏、朱雀」
fc2小説「樋水龍神縁起 -第二部 冬、玄武」
fc2小説「樋水龍神縁起 -第三部 秋、白虎」
fc2小説「樋水龍神縁起 - 第四部 春、青龍」
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「樋水龍神縁起 第四部 春、青龍」--「青龍時鐘」より抜粋

 激しく降りしきる雨の中、石や砂利や木の枝などの上を引きずられて、ゆりの体は傷だらけになりあちらこちらから血がでていたが、陣痛の痛みの方がずっと大きく、ゆりは体がぼろぼろになるのも氣にしなかった。愚鈍で醜く価値もない肉体などどうでもよかった。やがてゆりは池に引き込まれた。溺れる恐怖に、岩に必死でしがみつき抵抗した。

 そして、そこが夫婦桜のすぐ下であることに氣がついた。雷雨に叩かれて花が無惨に散っていた。多くの葩は幹にまとわりついていた。根元からねじれて重なった二本の幹が、白く光りながら雨の中固く抱き合っているように見えた。

 ゆりははじめてこの樋水で泳いだ晩に濡れたまま朗に抱きしめられたことを思い出した。ゆりは突然悟った。私は、あのとき愛されていた。いつも私たちにはあの白い光があり、抱き合うと心が一つになった。

 Kawasakiで風を共に感じたこと、闇の中から引き上げてもらい疲れきった朗に強く抱きしめられたこと、キャンドルのゆらめくテーブルで「君を幸せにしたい」と言ってくれたこと、蝉時雨の降る丘の上ではじめて口づけされた時のこと、万感の想いを込めて翡翠の勾玉をつけてくれた時のこと、全てが一時に甦ってきた。

 一緒に馬に乗っていたのも、翡翠を渡したのも朗だった。子供の頃から深く愛し合っていた『夢のひと』は朗だった。この二本の桜のように、切り離せない強い絆で結ばれていた二人だった。春昌と朗は別の肉体を持っていたが、心は一つだった。そしてその一つの心が愛したのは、瑠璃媛やゆりという個別の肉体ではなく、たった一つの心だった。
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Category : 断片小説

Comment

says...
 こんにちは。
僕は 此の小説の本編の方は拝見していないので 此の断片小説だけの感想ですが…
おそらく 二つの魂が 時代を超えて 色々な人物として出会い 愛を深めていくと
言った 感じの内容なのでしょうか。

何処か 八少女さんを投影した 八少女さんの考え 思考を色濃く映し出した小説のよう感じました。
何か 八少女さんの小説の中では 多少異色な 小説としての娯楽性 整合性よりも
何か整合性を犠牲にしてでも 表現したいといった 意志を感じました。
此の 断片だけの感想なので とんでもない勘違いをしていたら ごめんなさいね。

2012.10.15 07:29 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

感想、いただけて嬉しいです。
そうですね。舞台は、小説としては凡庸でありがちなものになっています。っていうか、書き出すまで、こんなに神道に関した小説書いていらっしゃる方がいるのを知らなかったんですが。
でも、舞台設定そのものよりも、たぶん原始宗教、世界宗教、それからそれを凌駕したもっと観念的なもの、愛と言われるものの本質を、タブーも含めて書きたかったのだと思います。うまくいったかどうかは、いまだにわからないのだけれど、まあ、この作品としては、こうなるしかなかったんだろうなと。

かといって、「カミさま」レベルの概念を優先して書いていると、自分も疲れてしまうので、もっと泥臭い人間レベルのものを当面書いていこうかなと思ってます。リナ姉ちゃんとか、ステラとか、かなりお氣楽ですよね?

コメントありがどうございました。
2012.10.15 17:09 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
おはようございます。

樋水龍神縁起、少しずつですが読ませてもらっています。
今は「第三部 秋、白虎」の途中です。
私は、こういうお話が好きなので、すごくツボにはまりました。
この手のストーリーは、荒唐無稽になりがちですが、じつにしっかりと地に足がついている話の運びで、
感心しています。
そこはかとなくエロいところもまた、いいですね。

第四部も楽しみに読ませてもらいますね。
では、では。
2012.10.16 01:16 | URL | #- [edit]
says...
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012.10.16 09:31 | | # [edit]
says...
こんばんは。

おおお。もう、そんなところまで。
エロくて、ここで公開出来ませんでしたが、実は「春、青龍」はエロ抜きでございます。っていうか、もう、そんなのどうでもいいやい状態で(笑)

この手の話は、一生に何度も書く類いのものではないので、書いちゃってよかったなと思っています。「エロはまったく書けない」から、脱却しましたし。

お時間のある時に、最後まで読んでいただければ、幸いです。

コメントありがとうございました。
2012.10.16 18:08 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
鍵コメ cさま、こんばんは。

いいえ、何が何でも、返信させてください。なんといっても今まで、この話を読み終わって、感想をいただいた方がいなくて、「語りたい病」を持て余していたのですから。
(一人だけ読ませたリアル友は、エロ描写に引いてしまったようで、全然本質的な感想をもらっていないのです)

まず、お忙しいのに、わざわざ時間を作って読んでいただき、ありがとうございました。まさか、こんなに早く!

実は、この話を公開したくなったのは「cさんに、読んでいただけたらなあ」と思っていたからなのです。そちらのブログのメッセージ欄で会話していて、愛を語る時に「樋水龍神縁起」では……と言いたくなったのです。でも、お見せする方法がないぞと。だから、いつか一年後にでも読んでいただけたら本望と思っていたのですが……。

cさんが、私の意図して書いた事をすべて深く読み取っていただいたことを、驚くと同時にとても嬉しく思っています。

ちょっとだけ解説的な事を書きますと、道教や風水の基本的な概念『四神相応』と『陰陽五行』とをすごく意識しています。
「南 朱雀 夏・火」「北 玄武 冬・水」「西 白虎 秋・金」「東 青龍 春・木」になっているんですが、それぞれにcさんもおっしゃっていた概念としての季節(秋は実りとか)はもちろんのこと、関連するエピソード「花火」「水に関するエピソード」「例の夜の金の光と翡翠の勾玉」「夫婦桜」などの五行のモチーフを隠しています。
さらに、愛の四段階「恋」「夫婦の愛」「神に近い愛」「愛を超えた段階」、愛の方向性として「外側に向く想い」「内側に向く想い」「お互いに向く想い」「全方向に、もしくは方向のなくなる段階」、語りの対象として「女」「男」「人々」「神域」という具合に、すべて四つのテーマを決めて書きました。普段の私の書き方と、正反対なのです。

で、構成は別として、ここで語っているのは私の宗教観で、ほんとうに神の域に到達すると肉体も心もなくなり、物質と生命の違いもなくなる。生と死もなければ、エロと高尚なるものの違いもなくなる。(したがってキリスト教的な宗教と、ヒンズー教や南米のエロかったりグロテスクな宗教との違いもなくなる)
憎んでいたものと愛しているものとの違いも、「自分」と「他者」の違いも、「現在をどう生きる」と「死んでどうなる」もなくなるという、般若心経でいう「空」に到達するんだという宗教観です。

ただ、ここまでいってしまうと、もう「愛」もなくなってしまうので、人間のストーリーではなくなってしまいます。本当は、ラストを人間界で言う所のハッピーエンドにするはずだったのですが、思想を全うするために、ああいう形になりました。で、その代わりに、もう一つの「妹神代」と「背神代」の物語を書きました。それが、来年あたり公開する予定の「樋水龍神縁起 DUM SPIRO, SPERO」です。

個人的には、人間についての小説を書いていきたいと思うので、今後発表するものは基本的に「春」か「冬」の段階の愛しか書かないと思うし、それでいいのだと思っています。

すごくわかりにくい観念に丁寧におつき合いいただきまして、本当に嬉しいです。これでやっとcさんのブログのコメント欄で、愛についてきちんと語れそうと、嬉しくなってきました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
2012.10.16 18:57 | URL | #9yMhI49k [edit]

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