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Posted by 八少女 夕

【小説】羊のための鎮魂歌

シリーズ物の中では、楽しんで書いている、イギリス人オースティン氏と愛犬グルーバーものの第一作です。湖水地方は、また行きたい所です。




ジョン・ヘンリー・オースティン氏はどちらかといえば変わった人物といってよろしかった。その風貌は別にどうということのない、かといって見過ごしていいほど平凡でもない、わりときちんとした紳士だった。ロンドン動物園の近くの小さなフラットに、こざっぱりしたインテリアの中で彼の犬と二人きりで住んでいた。彼はとりたてて散らかす性質でもなかったので、週に一度掃除や買物に来てくれるマッコリー夫人はオースティン氏や彼の愛犬のグルーバーの暮らしぶりにけちをつけたりはしなかった。

実際、グルーバーが来るまではオースティン氏は物静かな、つまり無害な紳士と思われていただけで、変わっていると言われたことはなかった。彼が「どちらかといえば変わった人物」という評価を受けるようになったいきさつはこうである。

彼の母親が(若くして)亡くなると、オースティン氏はすぐに犬を貰いに保健所へ行った。(彼の質素で控え目な性質は、彼にあえて血統書付きの犬を買う気をおこさせなかった)彼の母親は大の犬嫌いで、決して犬を飼う事に同意しなかったのだが、オースティン氏自身といえば物心も付かぬうちからどうしても犬を飼いたいという欲求にかられていたのだった。

彼は犬の血統や種類には一切こだわりを持たなかったが、たった一つだけ重要と思う点があった。彼は賢い犬と暮らしたかったのである。そこで、オースティン氏は自分を見た時の犬の反応で飼う犬を決定しようと、少々変わった格好で保健所に赴いたのだった。

他の犬たちがワンワンキャンキャンと騒ぐ中、一頭だけ誹しげにオースティン氏を眺めていた犬がグルーバーだった。オースティン氏はその茶色くて、耳の垂れた雑種の小さな犬を家へ連れ帰った。が、その姿を見た隣人たちはびっくりして、可哀想にオースティンさんは頭がいかれちまったらしいよ、と話し合った。というのも、オースティン氏がメキシコ風のケープを纏い、頭にはピンクのボンボンを付け、スコットランド風のタータンチェックのスカートにギリシャ風のサンダルをはいて、情ない顔をした仔犬を連れて歩いていたからである。が、翌日いつも通りこざっぱりとしたスーツで身を包んだ彼の礼儀正しい挨拶を受けてほっとした隣人たちは、オースティンさんは実は変わり者だったのだと結論した。もちろんほっとした中にグルーバーが入っていた事は言うまでもない。

グルーバーが来た事をマッコリー夫人は歓迎した。夫人が犬好きであった事も確かだが、実をいうと掃除も楽になったからだった。オースティン氏は、それがリバティの布地を張ったソファーだろうと、十九世紀風のサイドテーブルだろうとお構いなしに煙草の灰を轍き散らしていたのだが、グルーバーは彼がボーっと煙を吐いているのを、黙って放っておくような犬ではなかったのだ。オースティン氏は、誰がこの家の主人なのかをはっきりさせようと何度か試みたが、ついに煙草はベランダでしか吸えないようにされてしまった。オースティン氏がそのことについてマッコリー夫人に相談すると、夫人までが即座にグルーバーの側についた。そのうえ、彼女はオースティン氏のコレクションである数々の灰皿をグルーバーが丁寧にもベランダに並べてしまった事に対しても、部屋中に散乱していた頃と比べると格段に掃除がしやすいと言って絶賛した。勢いよく全ての灰皿を夫人が洗っている間、
「どうしても吸いたい訳じゃないんだけどね」
そういってオースティン氏がみじめっぼくグルーバーを眺めると、一枚上手の同居人は無邪気な表情で尻尾を振って見せるのだ。

と、いう訳でオースティン氏はグルーバーと暮らすこととなった訳だが、実の所彼の楽しみといえぱ、ベランダで吸う煙草の他は、角のパブで飲むジンと、グルーバーを連れての公園の散歩、土曜日にたまに行くコンサートや、シーズン中に一番安い席で観戦するクリケットと、非常に地味なものだった。彼は無口で礼儀正しい紳士だったが、取りたてて面白おかしくもなかったので、日々は彼の回りで平凡に過ぎ行くのだった。彼自身そのことを不満に思った事はなかったが、たまにどうしても気分転換が必要になると、行った事もない土地へとふらっと出掛けたくなるのだった。

その日も、ふとオースティン氏は思った。少し北の方へ行ってみてはどうだろうかと。幸い今年は例年よりも暖かい。夏には観光客で様がわりしてしまう湖水地方も、この初春にはきっとすてきだろう。グルーバーも喜ぶに違いない。そこまで考えて満足したオースティン氏は煙草をくわえてライターを探した。と、グルーバーはすぐにやって来て非難がましくオースティン氏を見上げた。オースティン氏は観念してベランダへ向かいながら言った。
「おまえが気に入ることを考えていたんだがね」


次の週末に、オースティン氏はグルーバーと共にユーストン駅からグラスゴー行きの列車に乗りこんだ。乗り換えのオクスンホルムまで約三時間。楽しい旅の始まりだ。グルーバーはひたすら尻尾を振って窓の外とオースティン氏を代わる代わる見ている。オースティン氏も、にこにこ笑ってそのグルーバーを見ていたのだったが、途中駅で乗りこんで来た女性が斜め前に腰掛けるやいなや、少々威厳ある態度をとるようになった。というのは、その女性が素晴らしく美しかったからだった。黄金の穂麦のような豊かな髪。二つの純度の高いエメラルドでできた眸、カーマインレッドに縁取られた瑞々しくそれでいて涼しやかな唇。オースティン氏は窓に反射する彼女の姿をくまなく観察した。もっとトンネルがあればいいのにと、いつもと反対の事を考えたりしていた。グルーバーはそんなオースティン氏の態度の変化に少々戸惑ったが、やはり英国に住む者としての冷静さを失ったりはしなかった。

「羊が…」
女性はふと、夜の音楽のような声でオースティン氏に話し掛けるともなく言った。

「羊が…?」
オースティン氏は女性から話し掛ける許可をもらったと受け取って間き返した。
(グルーバーはもう少し様子を見るつもりらしかった)

「羊が…随分とたくさんいますわね」
オースティン氏は頷きながら初めて窓の外の羊に目を止めた。

「美しいところですわね、ここは…」
女性は目を細めてため息をついた。完璧な(完璧すぎる)クイーンズ・イングリッシュにオースティン氏は何か寂しげなものを感じ取った。

「羊のために…」
女性はひとりで続けた。

「羊のためにこの国が救われたという話を聞いた事がありますか」
「産業革命の事でしょうか」
言ってからオースティン氏は後悔した。女性は明らかにオースティン氏のこの散文的な答えに非難の目を向けていた。

羊は草を喰んでいる。オースティン氏は弁解の言葉を探して脳の中を掻き回した。適当なものが見付かる前に女性は続けた。

「羊はああやって草を食べてますわよね。人間がいろいろな事をやって忙しく生きている間も。そして、どんなに人間が望んでも、画策しても、あれほど平和にはなれませんわ」
「羊は受容の生き物だと間きました」
オースティン氏はグルーバーの小馬鹿にした目を避けながら言った。
「あらゆる生き物の中で、刃に喉を刺されるということまで受け入れてしまうのは羊だけだそうです」
「まあ。どんな状況でも受け入れてしまいますの?」
「そうきいています」
「知りませんでしたわ」
得意そうなオースティン氏を見てグルーバーは尻尾をびくっと振って見せた。

「ご旅行でいらしたのですか」
女性はオースティン氏の方に向き直って言った。

「はい。この愛犬グルーバーと一緒にね」
それからチャンスだと思って
「あなたは、ええと…」
「ダナー・コールレーンですわ。ミスター」
「失礼いたしました。僕はジョン・ヘンリー・オースティンと申します。ミス・コールレーンはやはりご旅行で?」
「旅行と言えない事もありませんわね」
コールレーン嬢はエレガントに瞳を伏せた。ミセスと訂正もせず。

「オクスンホルムで降りられるのですか」
オースティン氏は予定変更も辞さない覚悟で訊いてみた。

「ええ、ケンダルヘ行くつもりですの」
…湖水地方だ、万歳。オースティン氏はすっかり浮かれている。グルーバーは注意深い様子でコールレーン嬢を観察していた。

オースティン氏はふと気がついた。これまでのグルーバーだったら、とっくに相手に対する態度を決めててもいい頃だった。尻尾を振っているか、吠え立てるか、あるいは全く無視するか。オースティン氏のこれまでの経験によると、グルーバーはどちらかというとヒト科の動物の外見上の形質の相違には無関心な方であった。美人だからどう対処していいか迷ってるということは考えにくかった。…じゃ、何だ?

「ちょっと失礼しますわ」
オースティン氏の思索を断ち切るようにコールレーン嬢は立ちあがり、車両のドアを出て行った。オースティン氏はもちろんのこと、グルーバーも又、英国に住む者として無関心を装うことを怠ったりはしなかった。

ところが、ダナー・コールレーン嬢は、それきり戻って来なかった。列車がオクスンホルムに着く頃になっても。
「どうしたんだろう。グルーバー」
「ヴァウ」
「ケンダルヘ行くと言っていたよな、確か」

列車はとうとうオクスンホルムの駅に静かに滑り込んだ。オースティン氏は意を決して自分のカバンとコートと帽子を取った。グルーバーも立ち上がった。オクスンホルムの駅は柔らかな光が差し込む、明るい駅だった。隣のホームには三面編成の古めかしい列車が慎ましやかに待っていた。湖水地方、ウィンダミアヘ向かう小さなその列車にオースティン氏はためらいながら乗った。あの目のさめるような黄金の髪をした女性の姿は見あたらなかった。

(彼女は、降りなかったんだろうか?)
オースティン氏はがっくりと肩を落として今にも壊れそうなビロード張りの席に腰を埋めた。グルーバーは何だかほっとした顔をしている。二十分ほど待ってから走り出したウィンダミア行の列車はじきにケンダルに到着した。湖水の見えるウィンダミアヘこのまま当初の目的通りに行こうかとも思ったが、列車はまるでオースティン氏とグルーバーが降りるのを待っているかのごとくなかなか発車しようとしない。

(…ええ、ケンダルヘ行くつもりですの…)
オースティン氏は立ち上がった。するとグルーバーはさっと列車の窓から降りてしまった。そこでオースティン氏も心を決めてドアを開けた。

ケンダルの小さな駅は、人影もまばらであった。無人の改札を抜け、行き交う人も少ない小さな町をオースティン氏とグルーバーはゆっくりと歩いた。町というにはあまりにも可愛らしく、すぐ近くは既に沢山の羊の姿があちらこちらに見える田園風景が広がっていた。オースティン氏はB&Bを探してゆっくりと歩いた。

犬と一緒でも構わないと言ってくれる宿はじきに見付かった。オースティン氏は宿の女主人に三日分の宿代を払い、簡単に荷物を整理すると、夕食には戻ると言ってグルーバーを連れて散歩に出掛けた。

陽射しは暖かく、緩やかに丘への道が続いていた。牧草地を区切る低い石垣。時折見かける家も、きらきら光る小川にかかる小さな橋も皆同じトーンの石で出来ていた。質素な造りの大地と対照的に瑠璃石で出来ているかのように深いブルーの空がダイナミックに広がっていた。

グルーバーは元気に駆け出した。いつもはよく出来た執事がふいに子供にかえったようだった。その姿を見て、オースティン氏はいつまでもコールレーン嬢の姿ばかり求めていては旅行が台無しになると思い直した。山も渓谷も、求めていた以上の美しさと静けさでオースティン氏を待っていたのだった。
(ロマンティックなことをむしよく考えていたのが間違いだったんだな)

しばらく行くとやはり石垣と同じ石で出来た大きな遺構に行き当たった。廃屋というには大きく、城跡というには小さすぎる。ただ、そこに有ることが妙にふさわしい不思議な存在感だった。

グルーバーはふと、先程コールレーン嬢に見せたのと同じような考え込む態度を見せた。オースティン氏がおやと思ったのもつかの間、グルーバーはさっさと丘を登って行ってしまった。丘の上は風が吹いていた。遥かにウィンダミア湖をのぞみ、平和の支配する穏やかな時間が眼下に広がっていた。羊の大軍はそれぞれに、けれど一定の軌跡に導かれるように緩やかな流れに添って移動して行く。

(…羊が随分と沢山いますわね…)
(…美しいところですわね、ここは…)
オースティン氏は列車の中ではぴんと来なかったコールレーン嬢の溜息のまじったような想いをはじめて実感した。同時に、この共感を味わえるあの女性に(ただの美女ではない、感性の研ぎ澄まされたコールレーン嬢に〉ぜひもう一度会いたくなった。

日が暮れてきたので宿に戻ると女主人のホークス夫人が温かいキドニーパイを出してくれた。
「随分歩いてらしったからおなかも空いたんじゃあ、ありません?」
「そういえばペコペコだ」
「湖水池方は初めての様ですね。いい所でしょう」
「ああ、本当に。でも、どうして初めてとわかったんですか?」
「なんとなくね。夕食の時間も忘れる程ここの風景が魅惑的だったんでしょう。初めての方は大抵そうなるからですよ」

オースティン氏は少し赤くなった。確かにダイニングに居るのはオースティン氏とグルーバーだけだった。そこでオースティン氏は名誉挽回に力をいれた。

「うん。このパイの味にもね。こんな美味いキドニーパイは初めてだ。ついに大英帝国もグルメヘの道を目指し始めたのかな」
「ここに泊ってくれるお客さんは皆そうおっしゃいますよ、ミスター。特に外国の人はね」
「へえ、外国のお客さんも多いんだ」
「多いとは言えませんがね。時折いらっしゃいますよ」

ホークス夫人は、オースティン氏がすっかり空にした皿と、同様なグルーバーの皿を片付けながら言った。マッコリー夫人同様ホークス夫人もまた、グルーバーの愛敬ある、しかし控え目で堅実な態度がおおいにお気に召したようだった。そして、その飼い主であるオースティン氏への評価も夕食に遅れるという行為の割には比較的高いものだったようだ。というのも、オースティン氏本人は伺い知れぬことながら、この日のホークス夫人の客の中でもっとも大きなデザートのプディングの一切れを食べた人類はオースティン氏だったからである。
(但し哺乳類の中では彼の友人が多少勝っていたが)


次の日も、オースティン氏は朝から昨日の丘に行って見ることにした。夕暮れの美しさもさることながら、こんな天気のいい朝の風景もぜひ見てみたいと思ったからだった。大英帝国の誇るブレックファーストもそこそこに(ただしこの朝食もまた絶品だった。自家製のブルーベリージャムも、程よい硬さのプレーンオムレツも、付け合わせの豆や塩辛すぎないベーコンも、そしてもちろん紅茶も)オースティン氏は宿を出た。

昨日と違って、わかった道のりは呆気ないほど短かった。随分と遠かったと思っていた例の遺構にもすぐに着いてしまった。オースティン氏は昨日よりも少し落ち着いてこの石づくりの廃墟を見てみることにした。

「昨日は気づかなかったけど随分激しく壊れてるなあ、グルーバー」
オースティン氏はほとんど土台しか残っていなかった裏側を見て言った。

「それに、これは煤だ。石造りの家なのに火災があったのかな」
だが、グルーバーはそれには応えず、急に別の部屋(のあった所)ヘと走って行ってしまった。
「グルーバー!」

グルーバーの吠え声を追ってオースティン氏が廊下を越えて一つの部屋に入った時、その部屋のもう一つの出口からスッと誰かが出て行った。
「あっ!」
オースティン氏は慌てて、その出口に走った。その外はまた廊下で、突き当たりには二階へは昇れない階段があるばかりだった。(いまや二階はなかったのだ)何処に行ったのか、オースティン氏の追った人物は影も形もなかった。
「そんなばかな…」
オースティン氏は、人物が消えた事よりも、一瞬だけ垣間見たその人物の後ろ姿にショックを受けていた。

「グルーバー、あれは…」
黄金の穂麦のような豊かな髪、上質のウールのフレアースカート、すらりとした背中。列車のドアへ消えていった後ろ姿。
「コールレーン嬢…」


「ああ、あそこにいったんですか」
昼に食事に戻ったオースティン氏は、矢も盾もたまらずホークス夫人に例の遺構について訊いた。ホークス夫人はしばらく黙っていたが、やがて、あたりを見回した。

「ここはね、オースティンさん。このケンダルには」
夫人の声はいつもからは考えられないほど小声になっていた。
「時おり密国者が来ていたんですよ」
「密国者?どこからの?」
「アイリッシュなまりのね」
「ああ、マン島経由の船が近くを通ってますよね」
「そうなんですよ。それがどうやらね、ヘイシャム行きの船に乗り込んだ物騒な方々がね、ウォルネイ島に一番近いところで海に飛び込んで、グランジ経由で英国に入っていたらしくて、このケンダルにもそうやって忍び込んだ密国者の根城あったんですよ」
「それがあの石造りの廃堀なのかい?」
「そうですよ。グラバー子爵の別荘だった事もある由緒あるお屋敷だったんですがね。子爵が破産して以来すっかり狐狸の住処みたいになってて都合がよかったんですかね」

「煤だらけで二階から上がなくなってた」
「それはもう、大変な騒ぎでしたよ。私ら田舎者はあんな大音響を産まれてからこのかた一回も聞いた事が無いでしょう。爆弾が一斉に爆発して二階から上は木端微塵ですよ。この世の終わりかと思って、慌ててお祈りを始めたのは多分あたしだけじゃありませんよ」

ホークス夫人の声は何時の間にかダイニング中に響きわたっていた。オースティン氏はひとりの客が、この話を熱心に聞いている事に気付いた。ホークス夫人は、オースティン氏の眼線でふと我にかえり、この話は少し尻切れとんぼで終わってしまった。

オースティン氏はさりげなく客の方を見た。ツイードのジャケットを堅苦しく着た中年の紳士だった。やはり、オースティン氏の事が気になるらしく、時折こちらを見ている。

午後になってオースティン氏は、もう一度グラバー子爵邸跡へ行ってみる事にした。あの場所に行けば、コールレーン嬢に会えるという不思議に強い確信があったのだ。先程はどこか近くにいて、ただオースティン氏がその存在を見過ごしたのだと。もう一度会ったら、ここがどんな事のあった所だか教えてあげよう。知らなかった事を教えてくれる旅の男に驚き、見直し、彼女は自分の事に関心をもってくれるだろう。

グルーバーは気が進まない様子だった。オースティン氏はグルーバーの事を大変気に入ってはいたが、グルーバーが時折毅然としてこうした分別ある態度を見せると、何が何でも自分に決定権があることをはっきりさせたいと感じるのだった。
「おまえにとってはコールレーン嬢も、スマトラの森の人もたいして違わないんだろうけど、それは絶対的に間違っているよ」

グルーバーは賢くも必要以上に逆らったりはしなかった。そういうわけで、オースティン氏は午後も午前中と同じ場所にいた。アイルランド紛争の拠点だと思うと、廃虚ながらもその場は重みをもって感じられた。

「オーステッドさんと言いましたっけ」
ふいに後ろから声がしてオースティン氏は振り返った。例の中年の男がいつの間にか立っていた。

「いえ、ジョン・ヘンリー・オースティンと申します。あなたは確か宿でお会いした…」
「はい、失礼致しました。私はジョセフ・マクホールと申します」
マクホール氏は控え目ながらも、しっかりとした意志を感じさせる紳士だった。眼鏡をかけ、白く整った歯並びが知的な印象だった。オースティン氏は気後れしまいと多少焦りながらマクホール氏をみつめた。

「後をつけるような真似をして申し訳ありません。ただ、あなたがここに興味をもっているようだったので」
「いけないことをしてしまったのでしょうか。私はただ、一介の旅人としてここに興味を持ったのですが」
「いえ、いけないなんて事は。私もそうですから」
「ここについて何かご存知なのですね。先ほどからそんな気がしていたのですが」
「お話ししてもいいが、私の知っている事にあなたの興味があるかどうか」
マクホール氏は眼鏡をずらして言った。少し遠い、悲しい眼をしながら。
「私のこれから話すことは政治の話というよりも、ひとりの人間の生き方の話なのです。そう思って聞いてくだされば、そして、この地を去る時に忘れていただけれぱ一番有り難い」
「忘れる?」
「そうです。何も話さずにここに近づかないでくれと言ってもあなたは納得しないでしょう。だから、一度話します。でも、あなたはお見受けしたところ紳士だ。私が忘れてほしいという意味がわかってくれると思う」

オースティン氏は妙な気持ちになった。マクホール氏はばつの悪そうなオースティン氏に構わずに話し出した。
「あなたはアルスターの事を何か知っていますか」
「アルスターというとUDA(アルスター防衛連盟)の?」
オースティン氏はホークス夫人の言葉を思い出しながら言った。
「至極もっともな反応だ!実に現代的だ!そして、核心をついている!」
マクホール氏は眼鏡を光らせた。

「そうですよ。オースティンさん。この場所と私の専門のケルト文明を結び付けるのは、散文的にも現在に至るアイルランド紛争なのですよ」
「専門というとあなたは学者なのですか」
オースティン氏はこれ以上この男にふさわしい職業はちょっと無いなと思いながら訊いた。
「ええ。でも、大学の教授のような立派な仕事をしているのではなくて、地方の小さな高校で教鞭を取る身です」
マクホール氏は少しはにかんだ。

「どうしてここが、ケルト文明やあなたと関係があるのですか」
「厳密に言うとアルスターの王の娘エーティーンの伝説を私は研究しているのです。アルスターというのはご存じかもしれませんが、北アイルランドにあった古代王国です。エーティーン伝説は簡単に言うと地母神の再生神話で、繰り返し生まれかわり人と女神の間を行き来するのです。多くの伝説でそうな様に大変な美女で、こんな風にたとえられています。

『彼女の髪は夏のあやめの花、あるいは磨いた純金の色だった。手は降ったばかりの雪の様に白く、頬は山ジギタリスのように赤かった。眉は甲虫のように黒く、歯は真珠の列、眼はヒヤシンスの青。エーティーンと比べるまでは誰でも美しく、エーティーンと比ベるまでは誰でも愛らしいブロンドだ』」
「見事なものだ。よくそらで言えますね」
オースティン氏は落ち着かない気分で言った。いま滔々と述べられた女神をまるで自分が知っているような気がして、伝説と現実の境めを見失った事を少し恥じながら。

「どういたしまして」
マクホール氏はさらりとオースティン氏の嫌みをかわして言った。
「古代のケルト人はもっと多くをそらで言えました。彼らは頭のなかに書庫を持っていたと言われていますからね」
「それで?ここが、その伝説の地なんですか」
「そうだとは言っていません。そうでないとも言えませんがね。だってストーンヘンジもランズエンドもケルト文明の残照だと世界中が認めているんですからね。ここだけケルト文明が及ばなかったとどうして断言できます?」
「…」

「いや、しかし、私がここにこだわるのはね、オースティンさん。私にとってのエーティーンが、ここで息たえたからですよ」
「エーティーンが?」
「ええ、ケルトの濃い血をひき、エーティーンの名にふさわしい美しさを持った少女でした。エーティーンとしてではなくむしろ、イケニのブーディカ、ローマ帝国に抵抗して戦ったあの女王のように死んだんですがね」
「戦って死んだ?」
「彼女は、IRA(アイルランド共和国軍)の工作員としてこのケンダルにやってきたんですよ」
「IRA!」
「本当のIRAだったかはともかく、この場所は密入国者たちの拠点でした。ここで仲間がおちあい、ロンドンに向かい市街で大掛かりなテロ活動を展開するばかりになっていたのです。彼女は、ただの工作員としてだけでなく、その生まれと美しさの両方を見込まれて、北アイルランド独立のシンボルとして、圧迫されたアイルランドの民の再生の象徴としてその後利用される事になっていたはずです」

「いつのことですか」
「もう十四年も前の事ですよ」
「あなたがその女性を知ったのは…」
「その時は気がつきませんでしたがね、彼女の人生の上では実に劇的な場面で出会ったのです。彼女が密入国してきたその夜、私は試験に失敗してやけっぱちになっていました。夜中に人目を避けて隠れ家を探す美女と死に場所を探していた青二才がこの丘でばったり会ったんですからね。彼女は妙にきちんとした英語を話したので、私にはすぐ外国人だとわかりました。それもものすごく訓練されたね。アイルランドから来たのだと分かったのは名前を聞いた時でした」
「名前…」
「本名かはわかりません。でも彼女はダナーと名乗ったのです」

「!ダナーですって?」
「そうです。ご存知ですか」
「いや、そんなはすは…」
「ダナーというのケルト神話の大地母神です。ケルトの神々はトゥアサー・デー・ダナン、つまりダナー女神の子供たちとされています。私はこの名前を聞いた瞬間に、試験の事を完全に忘れました。あの日彼女に会わなければ、死ぬことはとりやめていても、少なくとも研究はやめていたと思います。けれど目の前に、消え失せてしまったと信じていた生きた研究対象が出てきてしまえぱ、この研究を天職と信じてもおかしくはないでしょう」
「そうかもしれませんね」

「少し歩きましょうか」
マクホール氏はオースティン氏とグルーバーを連れて丘を登った。午後の穏やかな風が優しく頬を撫でる。オースティン氏は辛抱強くマクホール氏が続きを話し出すのを待った。

「彼女と会うことが出来たのはたった一週間だけでした。私が彼女の心を掴むことが可能かと思いはじめていた時に彼女は人生と使命の両方を終わらせてしまったのです。二人でこの丘に登り羊を見ました。彼女は泣いたのです。羊が故郷のと一緒だと言って。この国に、恨み続けてきたこの国に自分の愛した故郷と同じ羊がいるとは思ってもいなかったと言って」

「『人間が望んで、画策してもあんなに平和にはなれない』…」
「そう思ったのでしょうかね。彼女は悲しい目をするようになりました。時間がないと言って。そして、ついにあの前日に私に身の上を打明けたのです。古代アイルランドの血をひくものとして育てられた事、自由を抑圧された幼かった日々の事、差別を受け、仕事や土地を奪われ、尊厳までも踏みにじられ、イギリスを恨み、敵の首都をテロで破壊しクーデターを起こそうと言う人々の申し出に賛同したこと。そして二日後にはそれを実行する手筈になっていることも」
「でも、実行されなかった」
「そうです。彼女は実行させないために、隠れ家ごとふっ飛んでしまったのです。もしクーデターがおき、軍隊も出動するような事になれば、きっと被害を受けたであろうこの国と自分の国の両方の羊が、今までと同じように平和に生きていくために」

「それから、どうなったのですか」
「サッチャー政権がその年の七月に北アイルランド分権法案を発表して自治政府設置に向け動きだしました。少なくともそれを契機にここには再び武器が運び込まれることはなくなりました」
「あなたが忘れてほしいと言ったのは、この事件をなかったものとして彼女の名誉を守りたいという事なのですね」
「ええ、二国間のトップは当然知っていますし、その中でもう不問とされているこのテロ未遂事件が今さら公にされてしまうと、アイルランドにいるであろう彼女の家族や知人にも迷惑がかかると思います。私は彼女のためにそれを阻止したいのです。それに、彼女はIRAに所属していたと信じ、アイルランドの開放のためにここへ来ましたが、彼女を利用しようとしていた組織が実際何で、その本当の目的は何だったのかという事も私には分かりません」
「私は新聞記者ではありませんから安心してください」
「感謝します」
マクホール氏は小さく頭を下げた。

「私の時間はあの時に止まってしまいました。大字を卒業してすぐにここに移り住み、することといったら授業と、研究と、そしてこことの往復です。研究にはこの田舎では事欠きますし、村の中でも私は変わり者で通っています。ホークス夫人はよくしてくれますが知合いも少ないほうです。ただ、可笑しなことですが、ここにいればダナーの想いや悲しみを受けとめられ続ける様な気がしているのです」
「きっとそうだと思いますよ。私も彼女はここにすっと居ると思います。すぐ近くにね」

オースティン氏とマクホール氏はゆっくりと丘を降りた。途中でグルーバーがいないことに気づいたオーステイン氏はマクホール氏に先に帰ってもらうように頼んで愛犬を探しに行った。

「グルーバー!グルーバー!まったくどこにいっちゃったんだろう」
グラバー子爵邸跡を通り過ぎて、ふと気になって中を覗き込んだ時、ふいに聞えるはずのない声が聞こえて、ぎょっとしてオースティン氏は足を止めた。

「おまえは私の心持ちががわかる犬ね」
間違えるはすもない。コールレーン嬢はここにいるのだ。オースティン氏は震えた。
「あの列車でおまえが羊を見ていた眸に私は惹かれたの。人には決して感じられない自然との同一感に」
「ヴァウ」
「おまえの御主人は言っていたわ。羊はどんな状況でも受け入れるって。そうかもしれないわね。恐ろしいテロの結果起こる国の荒廃も自らの死も」
オースティン氏はゆっくりとその部屋に通じる戸口へと向かった。

「私は幼くて幸せだった頃、こことよく似た土地で過ごしたの。惨めだった都会での生活を忘れさせてくれたのがこの湖水地方だったわ。私は心から幸せになれたのよ。ここに来ただけで。そして、自分以外の人を大切に思うことも学んだわ。自分を幸せにしてくれる人や自分と利害の一致する人、そんな人だけが大切なのではないことを知ったのよ」

オースティン氏が部屋にゆっくりと入ると、グルーバーがそこに座っていた。そしてコールレーン嬢は微笑んでそこに立っていた。オースティン氏は震えている自分をなんとかしたかった。コールレーン嬢はどうみても生身の人間だった。竪琴も持っていなければ、翼も、頭の上の輪もなかった。

「私はここにいます。あなたや他の誰かがそれ望まなくても。オースティンさん。ここで、羊と一緒に生き続けたいのです」
「ミス・コールレーン、ああ、教えてください。あなたはいったい生きているのですか、それとも…」

しかし、コールレーン嬢は答えなかった。黙って微笑むとゆっくりと踵を返し、普通の人間と同じように戸口から出ていった。オースティン氏は追わなかった。彼女の正体を突き止めるような真似は、それこそマクホール氏の言っていた『紳士』としての行動にふさわしくないように思えたからだった。グルーバーも今度は吠え立てたりしなかった。

それきりオースティン氏とグルーバーは二度とコールレーン嬢に会うことはなかった。ホークス夫人の宿でマクホール氏に会ったときもオースティン氏は誰かに会ったとは言わなかった。三日間の休暇を何事もなく終えてオースティン氏とグルーバーは湖水地方を後にした。

帰りの列車の中からも羊たちが見えた。絨毯のように均一に広がる牧草地のなかを羊はのんびりと歩いていた。政治も、信条も、宗教さえ越えた平和のなかを。

オースティン氏は、もう一度コールレーン嬢の事を考えた。グルーバーは知っている様な気がした。マクホール氏は彼のダナーは死んだといった。言ったけれどそれは表向きなのかもしれない。あるいは、コールレーン嬢はマクホール氏のエーティーンとは別人なのかもしれない。それとも、オースティン氏の出会ったのはもう生きていない人だったのかもしれない。それとも幾度もうまれかわり、人と女神の間を行き来するエーティーンそのものだったのだろうか。その真相をヴェールの彼方に暈しておく事が、マクホール氏の、あの土地で年を重ねていく一人の純情な男のたったひとつの願いかもしれないと、オースティン氏は心の中で納得した。

「また、いつか来よう、グルーバー」
グルーバーは凛々しくすっと首をたてて、窓の外の羊たちを見守っていた。


(初出 :1995年3月 同人誌「夜間飛行」第3号)
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Tag : 読み切り小説 小説

Comment

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2012.03.13 19:01 | | # [edit]
says...
まほろさん、

小説の感想、どうもありがとう。
オースティン氏とグルーバーはお氣に入りのキャラなので、イギリスらしいと言ってもらえてすごく嬉しいです。これを書いた時、私はイギリスに狂っておりまして、一人で日帰りでロンドンから湖水地方まで行ったりしておりました。
その内に、またこのコンビの出てくる短編を書こうと思っているので、その時もぜひ読んで感想を聞かせてくださいね。

2012.03.13 20:56 | URL | #- [edit]
says...
執筆、お疲れ様です。といっても、かなり昔の創作なんですね。
今回、はじめて拝読しました。

お、なんか文体が翻訳調ですね。ちょっと新鮮です。
イギリスしかも湖水地方ですか~。いつか行ってみたいリストの上位に入っているんですがね、いかんせん先立つものが……。

オースティン氏とグルーバー、いいコンビですね。ワンコにいいようにあしらわれるオースティン氏がささやかな抵抗を試みるくだりが、じつに微笑ましいです。そして彼はどうも、女性にも振り回されるタイプのようですね。
ダナー・コールレーン嬢が何者なのか、ミステリアスでファンタジックな存在ですが、なんとなくエーティーンと呼ばれる存在が人のカタチをして現れている、そんな気がします。ただ、ウインダミア湖畔の地にオースティン氏を引き寄せ、マクホール氏を縛り付けているあたり、たんなる美しい妖精的な存在というよりも、セイレーンのようなちょっと危険な存在にも思えます。
ただ、ダナー嬢が祖国と敵国の「羊」を見て決断したことは、多くの流血を未然に防ぎ、その後の平和的な進展につながったのですから、やはり地母神と人の間を取り持つ存在だったのかもしれません。

現代的なリアリティと、古代の伝説、それに甘酸っぱいロマンスが調和した、読み応えのあるお話でした。
2016.11.09 11:42 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

そうなんですよ。
大昔に書いたものです。
まあ、でも、書き方そのものは、そんなに変わりませんよね。

そしてそうなんです。
この作品は、あえて翻訳調の書き方で書いてみたんです。
ああいうのに、憧れて。

湖水地方はとっても良かったんですが、なんと私は日帰りで行ったんですよ。
遅延のため向こう滞在時間が1時間に成ってしまった思い出があります。
日本の感覚でヨーロッパで電車旅行の計画を立ててはならないと学んだ旅でした。
次回はちゃんと泊まりたいなあ。

そして オースティン氏はグルーバーと美女に弱いキャラです(笑)
次作もそうだし。

コールレーン嬢は、私の民間信仰大好き、ケルト大好きなどが詰まった、イメージ優先のキャラです。
善人なんだか、地母神なのか、危険なファム・ファタールなのか、それともただのヒトなのかわからないところも、そういう混沌としたイメージの産物ですね。

妙に長くて、恐縮でしたが、読んでいただけて嬉しかったです。

コメントありがとうございました。
2016.11.09 13:00 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
保健所に引き取りに行く時の服装は気になりますね
その時用に用意したものなのかな?
家にあるものでその格好になれたのなら、やっぱり、ちょっと変わった人、てことなのかな?
2016.11.10 23:51 | URL | #- [edit]
says...
おお~~犬との旅行ですね。
なんだか情緒的と言いますか、感傷的というか、旅の背景に感情がこもっているような描写がいいですね~~。旅でこれだけの思い入れを込めるというのは私ではできないので憧れますね~~。
まるで、自分が旅行に行っている雰囲気になれるのが夕さんの小説の特徴!!(/・ω・)/
それが今でも昔でもあって良かったと思います。
楽しませていただきました。
2016.11.11 14:34 | URL | #- [edit]
says...
文体が何かいつもと違うなあ、と感じていたのですが、なるほど、翻訳調ですか!
紳士だけれど美女に弱い、おちゃめな面もあるオースティン氏とグルーバーのコンビの物語にこの文体はぴったりはまっているような気がしました。

歴史の難しいことはわたしは深く理解できていないかもしれないのですが、「ケルト」という言葉におおいに反応してしまいました。ケルト神話、好きなんです。といっても詳しく知ってるわけではないんですが。ギリシア神話よりもポエティックで妖精や精霊と親和性が高いイメージがあります。

コールレーン嬢の正体ですが、それこそ彼女の正体を探るのは『紳士』にもとる行為ですし野暮というものなのかもしれませんね。実体なのか幽体(?)なのか定かでないまま敢えて混沌を混沌のまま受け取るのが彼女との付き合い方なのかなと。

実は一番真理を理解しているのはグルーバーなのかもしれないですね。
犬って不思議ですよね。言葉を越えて真実そのものを見据える不思議な能力が備わっている気がします。
「ヴァウ」っていう返事の仕方もかわいいですね。

わんこが加わることで、シリアスなんだけれどどこかくすっと笑える読後感になっているような気がしました。

末筆になりますが、ご旅行お疲れさまでした。
2016.11.12 02:18 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

お、お氣に召して嬉しいです。

保健所に行く時の服装ですけれど、おそらくほとんどはもう持っていたモノじゃないかしら。
旅行に行っては、絶対に使えないようなモノを買ってきてしまう人なのかも。
まあ、変わり者ですなあ。どうひいき目に見ても。

コメントありがとうございました。
2016.11.12 20:16 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こちらにもありがとうございます。

これを書いたのは20年以上前なのですが、まだヨーロッパは遠く、英国には憧れと同時に「もう二度と来れないかも」と思っている所がありました。で、書くとなると必要以上に愛着が出てしまっている感じでしょうか。
今もそうですが、旅行が大好きなのでそういう描写には力が入ってしまいますね。

氣にいっていただけて嬉しいです。

コメントありがとうございました。
2016.11.12 20:23 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

なんかですね。
一時、原作が英語で、それを訳した作品群にハマったことがありまして、それっぽい書き方で書いてみたかったみたいです。
(20年以上前のことなので詳細をおぼえていない)

ケルトについては、私もよくわかって書いているわけではないです。
今は、かつてよりも少し多く知っているのですが、それでもいまいちよくわからないことも多く。

ケルト民族は、東欧から来て、西ヨーロッパのほとんどの国に移動してからブリテン島やアイルランドに行った模様。
他の地域よりもイギリスやアイルランドに、伝説や遺構が残っていてだから旅でケルトを感じたい場合はやっぱりそちらがいいみたいです。墓地でケルト十字架が普通にあったりすると「おお」と盛り上がります。

オースティン氏は「紳士」らしくにこだわったりして、英国人らしさに囚われすぎているきらいがありますが、グルーバーはそのオースティン氏を「やれやれ」と思いながらつき合っているようです。
「ヴァウ」は「ワン」よりも英語っぽい鳴き声かなと思って書きました。

これ、グルーバーがいないと少し間抜けな作品になってしまいます。
クスッと笑っていただける作品になっているとしたら嬉しいなあ。

コメントありがとうございました
2016.11.12 20:39 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
なるほど、翻訳調っていうんですね。でもなんか安心感があって素敵な文体ですね。凄く読みやすい。
これはサキが翻訳物を読みつけているからでしょうか?
オースティン氏とグルーバーが紳士だからということもあるのかな?

ロンドン、列車内、湖水地方とそれぞれ異なる情景の中で生き生きとしている2人?の様子、列車内で一緒になるをコールレーン嬢とのやり取り、楽しませていただきました。でも完全にグルーバーの方が上手だな。そしてマッコリー夫人も良いなぁ。こういう人が当たり前に雇える時代だったんですね。そんな時代背景も落ち着きます。
歴史上のコールレーン嬢はテロリストとして生きてそして死んだのですね。
古代文明からアイルランド紛争に至る戦いの歴史、とても重い物でした。羊たちの果たす役割・・・とても興味深い解釈でした。
最後の行動なんかもうそれだけで物語が一つ出来てしまいそうです。サキはテロリストの物語が好きですからね。
幽霊なのか、妖精なのか、現代に現れた彼女が何者かは謎ですが、もし現実に存在しているのならどういう存在なのか、色々と想像しまいます。


なんだかサキは「タンポポ娘」(ロバート・F・ヤング)を思い出してしまいました。
まだサキが生まれていない頃の作品なんですね。(嘘)
感動です。
2016.11.13 11:19 | URL | #0t8Ai07g [edit]
says...
こんばんは。

この書き方ですけれど、日本語としてはわざと少し不自然ないい方を混ぜてあります。
翻訳をすると、そういう感じになってしまうんですけれど、日本語で書いているくせにそういう雰囲氣を出したくてそういうまどろっこしい書き方をしているんですね。
翻訳物が好きな方には、かえって馴染みやすく感じるかもしれませんね。

お若いサキさんにはIRAのテロやサッチャー政権は完璧に歴史ですよね(笑)私がこの作品を書いた頃は、まだ「少し前のこと」程度だったような。

テロリストのお話は、あまり得意じゃないんですが、「アルスター」が両方に出てくる単語ということを知って、入れたくなってしまったのですね。

ダナーの正体については、SFでも、ロマンスでも、ファンタジーでも、読む方が自由に想像できるように書きましたが、私としては実はどれでもOKというかとくに決めないで書いています。

まあ、昔の作品ではありますが、さすがにサキさんは生まれていらっしゃったでしょう(笑)
日本と違って、かの国では、このくらいのタイムラグは特に問題がないような感じがありますね。スイスもそうだなあ。そう思うと日本の移り変わりの速さは、小説を書くにはちょっと面倒くさいものなのかもと思ったりします。

コメントありがとうございました。
2016.11.13 22:17 | URL | #9yMhI49k [edit]

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