【小説】樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero (13)第三楽章 -2-
ラフマニノフのコンチェルト第二番といったら、誰がなんといおうとこの第三楽章のメロディなのですが、瑠水はなんとこの日まで聴いたことがなかった、という設定です。思い出が強烈な第二楽章の終わりを聴くのが怖いと避けていたから、当然第三楽章にはいかないわけです。なんてもったいない。中学の時からもしかしたら一番たくさん聴いているクラッシックかもしれません。「どんな曲?」と思われた方は、先週の更新分にくっつけた動画へどうぞ。今日のは拓人の最後の一曲をイメージしてくっつけてあります。
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この作品は下記の作品の続編になっています。特殊な用語の説明などもここでしています。ご参考までに。
「樋水龍神縁起」本編 あらすじと登場人物
樋水龍神縁起 Dum Spiro Spero
(13)第三楽章 -2-
わずかな間があり、第三楽章がはじまった。オーケストラの華やかな導入にあわせて、拓人は再び華麗に装飾音型を紡ぎだしていく。真樹の部屋から逃げ出してしまったために、今まで瑠水が聴いていなかった、美しい第二のテーマが流れる。確認するごとく拓人が力強く奏でる旋律は瑠水の心を強くつかんだ。
私はたった三十分の曲ですら第三楽章まで聴かなかった。シンはこの曲を最後まで知っていた。知っていて、もう一度最初から私と聴いてくれた。私が大人になるのを三年もの間ひたすら待っていてくれたのだ。私は知らないまま逃げ出した。
樋水のためになることをしたいと言いながら、まだ何もしないうちにもう、瀧壺の底の、カミの世界の至福を手に入れようとした。あの池の底で感じた『水底の皇子様とお媛様』の苦しみをすべて飛び越して。龍王様は私をどんなに思い上がった小娘だと思ったことだろう。
拓人の演奏は、佳境に達していた。真耶がショーソンの『詩曲』で魅せた、あの神域の世界をいまや拓人が実現していた。虹色に輝く黄金の世界。
瑠水は突然悟った。真耶さんや結城さんは、ここで至高の存在に仕えている。シンが消防士として真剣に天命を果たそうとしていたように。では、私は、何をしているのだろう。樋水のために何かをしたいと防災地質学を学んだというのに、何もしていない。愛してくれたシンや結城さん、それに私に神域を見せてくれた真耶さんに胸を張って誇れるようなどんなことも成し遂げていない。
私はただ待っていただけだ。自分のすべき仕事が与えられるのを希んでいた。『水底の二人』の至福にただ加わらせてもらおうとした。シンが連絡してくれるのをひたすら望んでいた。結城さんが愛してくれるのを、または飽きて捨ててくれるのをただ期待していた。両手を広げて星が降ってくるのを待ち受けていた。星をつかもうと手を伸ばしたことすらなかった。
生身のシンに『水底の皇子様』の抽象的な愛だけを求めたように、寂しかったから結城さんにシンの身代わりをさせようとした。私がこんなだから、龍王様が私を『水底の二人』の幸福に加わらせてくれなかったんだ。
オーケストラと拓人の激しくも力強い手の動きは、階段を昇るかのように聴衆を連れて盛り上がり、幸福の絶頂に伴って華麗にフィナーレを迎えた。
割れるような喝采がおき、聴衆が一斉に立ち上がった。立ち上がっていない真耶は、隣にいる瑠水の涙と決意に満ちた横顔を黙ってみつめた。激しい喝采に拓人が何度も袖と舞台を往復しているその興奮の中、真耶と瑠水の席だけは違う空氣が漂っていた。
瑠水は静かに低い声で言った。
「真耶さん。ありがとうございました。私、二人にお会いしたことを生涯忘れません」
真耶は、それだけで瑠水が何を決心したか理解したようだった。
「ありがとう、瑠水さん。私もあなたが拓人にしてくれたことを生涯忘れないわ。幸せになってね」
オーケストラには、休憩の後まだ別のプログラムがあり、場内は二十分の休憩になった。聴衆はまだロビーや客席にいたが、その間に瑠水は一人で楽屋の拓人のもとに向かった。
楽屋で拓人は瑠水に抱きついた。
「ありがとう、瑠水。君のおかげだ」
瑠水はじっと目を閉じて、それからはっきりとした声で言った。
「私こそ、お礼をいわなくては。結城さん。本当にありがとうございました。私、島根に帰ります」
拓人は信じられないという顔をして瑠水を見た。
「結城さん。あなたが教えてくれたんです。どうやって生きるべきか、どういう風に人を愛するべきか。私は、何もせずに待っているだけの弱虫でした。あなたの音楽が、私に勇氣をくれたんです。あなたと真耶さんの音楽には到底較べられないけれど、私も天に応えられるように、自分の人生を踏み出します」
拓人は、黙ってしばらく瑠水を抱きしめていたが、やがて言った。
「どうしてもか?」
「ええ、どうしても」
「そうか」
深いため息が聞こえた。拓人にもわかっていた。この世にはどうしても変えられないことがある。拓人はどれほど好きでも島根に瑠水を追いかけていくことは出来ない。音楽と瑠水を天秤にかけなくてはならないなら、あきらかに音楽の方が重かった。
「もし、島根でどうしてもうまくいかなかったら、僕の所に帰っておいで。しばらくは一人でいるだろうから。いつまでとは約束できないけどね」
瑠水は一度拓人を強く抱きしめてから、「さようなら」と言って、その場を離れた。そして、涙も拭かず、後ろも振り返らずにホールを後にした。
チャイコフスキーの『悲愴』がはじまったが、真耶は客席には戻っていなかった。そっと、楽屋に向かうエレベーターに乗った。楽屋におかれたアップライトピアノの音色がわずかに聞こえていた。
ドアを開けて音を聴いた真耶は微笑んで頷いた。拓人の弾くショパンの『幻想即興曲』はこれまでに何度も聴いていた。だが、どうしても技術だけが勝り、感心する演奏を聴いたことがなかった。いまのこの音は違う。目の色も違っていた。テンポが揺れていたが、その音には凄みがある。真耶は、拓人の経験に足りないのは嫉妬と絶望だと常々思っていた。そして、いま彼はそれを手に入れたのだ。次は『革命』が聴きたいわね。今ならいい演奏になるはずだわ。
「なんだよ」
拓人は弾き終わってから一分ほど経ってから振り返り、ドアにもたれている真耶に声をかけた。
「見事だわ」
「お前は、何でも演奏の肥やしになればいいと思っているんだろ」
「そうね。でも、あなたを心配していないわけじゃないのよ。なんせ、最初の失恋ですものね」
「馬鹿にしているのか」
「まさか。もっと弾いてよ。こんなにあなたのピアノが聴きたいと思ったの、久しぶりだわ」
「それは瑠水に言ってほしかったな」
真耶は優しく妖艶に微笑んだ。本当にどこまでもわかっていない男ね。いつか思い知らせてやるわ。
拓人は『別れの曲』を弾いた。思い出のように甘い穏やかな旋律、心かき乱されていく中央部、全て失ったあとに諦念の叫びのように繰り返される最初のテーマ。真耶は拓人がひとつ階段を昇ったことを感じた。今すぐ家に戻ってヴィオラを弾きたいと思った。いい音が出せる確信があった。
追記
「別れの曲」こと、練習曲作品10の3番は、超有名曲だけあって動画もよりどりみどりなんですが、ホロヴィッツがあったので……。真ん中と最後はあっさりしすぎかなとも思ったのですが、最初のテンポの揺れ方がイメージ通りだったのでこれにしました。Frederic Chopin
Etude Op.10 No.3
Vladimir Horowitz: piano
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Comment
こんばんは。
うーーーん ここで 別れの曲を弾くかーーーーー
此れほど綺麗でありながら 此れほど激しい感情が込められている曲も そうそうないと思う…
何と言いますか… 幻想即興曲は 僕がピアノを続けている理由ですからね。
本当に 弾けるのですが 凄く難しい曲。 そうなのですよね 技術が先走る曲… 中途半端な技術で弾くと
薄っぺらくなる曲
ほんとに この曲は人前で弾くのが恐ろしい曲なのですよ…名曲だから 凄く上手い演奏がゴロゴロあるし…
うん拓人が 感情のままに 鍵盤をたたく様が見える様な気がしました。
うーーーん ここで 別れの曲を弾くかーーーーー
此れほど綺麗でありながら 此れほど激しい感情が込められている曲も そうそうないと思う…
何と言いますか… 幻想即興曲は 僕がピアノを続けている理由ですからね。
本当に 弾けるのですが 凄く難しい曲。 そうなのですよね 技術が先走る曲… 中途半端な技術で弾くと
薄っぺらくなる曲
ほんとに この曲は人前で弾くのが恐ろしい曲なのですよ…名曲だから 凄く上手い演奏がゴロゴロあるし…
うん拓人が 感情のままに 鍵盤をたたく様が見える様な気がしました。
こんばんは、TOM-Fです。
更新、お疲れ様でした。
あらら、瑠水ちゃん、この曲の第三楽章聞いたことなかったんですね。なんと勿体無い……。
今までが今までだっただけに、瑠水の気持ちの変化にカタルシスを感じました。龍王さまも、パスタやほうれん草を茹でていただけじゃなかったんですね……いや、あのお方なら、知らん顔して玉子とか茹でてそうですね(笑)
瑠水ではなく、音楽を選んだ拓人も、なかなかオトナな男性だなぁと思います。そして、真耶サマ。もう、サマ付けで呼ばせていただきますよ、この人。カッコ良すぎです。
次話からは、樋水編でしょうか。
成長した瑠水が、真樹とどう向き合っていくのか、楽しみです。
ショパンの「別れの曲」、これも好きな曲のひとつです。この曲を聴くと、胸がじーんとなりますね。
更新、お疲れ様でした。
あらら、瑠水ちゃん、この曲の第三楽章聞いたことなかったんですね。なんと勿体無い……。
今までが今までだっただけに、瑠水の気持ちの変化にカタルシスを感じました。龍王さまも、パスタやほうれん草を茹でていただけじゃなかったんですね……いや、あのお方なら、知らん顔して玉子とか茹でてそうですね(笑)
瑠水ではなく、音楽を選んだ拓人も、なかなかオトナな男性だなぁと思います。そして、真耶サマ。もう、サマ付けで呼ばせていただきますよ、この人。カッコ良すぎです。
次話からは、樋水編でしょうか。
成長した瑠水が、真樹とどう向き合っていくのか、楽しみです。
ショパンの「別れの曲」、これも好きな曲のひとつです。この曲を聴くと、胸がじーんとなりますね。
瑠水の気持ちが前へ動きましたね!
そうそう、待っていただけ、それではだめ、というように心が動いていく。それが拓人のピアノによって動かされていく。
今まで聞くことのできなかった部分へ至ることで、それが前に進む力になるって、その音楽との重なりがまたまた私の琴線に触れました。
同じようなクラシックの場面を書いているけれど、やっぱりなかなか夕さんの表現される世界には追いつけません……
真耶さんも素敵です。言葉なんて少なくてもちゃんと分かるところがやっぱり真耶。
何よりも、ヨーロッパから届く意味不明の4人組からのハガキを受け取り続けていた人ですから、器が違うんですね!
(って、どんな感想!?)
でも個人的に萌えたのは、「いつまでとは約束できないけどね」でした(*^_^*)
いやいや、拓人、いいぞ!とエールを送りたくなりました。それでこそ拓人!
ちょっと負け惜しみと寂しさと、そしてやっぱり瑠水への愛しさと、あれこれの想いを込めて、この言葉だろうから、素敵だと思いました。
この二人、やっぱり深いですね。音楽の可能性と美しさ、そしてちょっぴりの怖さを感じました。高みに登っていく人たちはやっぱり、何かを振り捨てて、登って行くんだろうなぁ。
さて、いよいよ島根ですか。シンちゃん、元気かなぁ。
摩利子さまにも会えるのね(*^_^*)
そうそう、待っていただけ、それではだめ、というように心が動いていく。それが拓人のピアノによって動かされていく。
今まで聞くことのできなかった部分へ至ることで、それが前に進む力になるって、その音楽との重なりがまたまた私の琴線に触れました。
同じようなクラシックの場面を書いているけれど、やっぱりなかなか夕さんの表現される世界には追いつけません……
真耶さんも素敵です。言葉なんて少なくてもちゃんと分かるところがやっぱり真耶。
何よりも、ヨーロッパから届く意味不明の4人組からのハガキを受け取り続けていた人ですから、器が違うんですね!
(って、どんな感想!?)
でも個人的に萌えたのは、「いつまでとは約束できないけどね」でした(*^_^*)
いやいや、拓人、いいぞ!とエールを送りたくなりました。それでこそ拓人!
ちょっと負け惜しみと寂しさと、そしてやっぱり瑠水への愛しさと、あれこれの想いを込めて、この言葉だろうから、素敵だと思いました。
この二人、やっぱり深いですね。音楽の可能性と美しさ、そしてちょっぴりの怖さを感じました。高みに登っていく人たちはやっぱり、何かを振り捨てて、登って行くんだろうなぁ。
さて、いよいよ島根ですか。シンちゃん、元気かなぁ。
摩利子さまにも会えるのね(*^_^*)
こんばんは。
おおお。偶然とはいえ、ウゾさんにとっての大切な曲が揃ったんですね。
この二つのショパンはやっぱり技術だけでも弾けるんだろうけれど、その上があるんだろうなと思う曲です。
私は実際には弾けない単なる聴衆なので、小説では好き勝手書きますけれど、自分が弾くとなると涙目になる曲なのだろうなと思います。
拓人、こうやって失恋の感情を昇華していくんでしょうね。そして、再びしょーもない色男として頑張る予定です!
コメントありがとうございました。
おおお。偶然とはいえ、ウゾさんにとっての大切な曲が揃ったんですね。
この二つのショパンはやっぱり技術だけでも弾けるんだろうけれど、その上があるんだろうなと思う曲です。
私は実際には弾けない単なる聴衆なので、小説では好き勝手書きますけれど、自分が弾くとなると涙目になる曲なのだろうなと思います。
拓人、こうやって失恋の感情を昇華していくんでしょうね。そして、再びしょーもない色男として頑張る予定です!
コメントありがとうございました。
こんばんは。
そうですよね〜。
第3楽章のないラフマニノフ二番なんて!
パスタやほうれん草、卵も茹でますが、さりげなく楽屋の水道あたりから登場している可能性も(笑)
もっとも氣が長くて1000年単位なんで、「わかんなきゃいいや」かもしれません。
拓人は、かなりのカッコつけですから、ボロボロに傷ついていてもこのくらいの虚勢は……。
真耶はねぇ。こんな男前だから、男が逃げだすんだろうなあ。
はい、来月になりますが、出雲にもどっておしまいです。
その前に、もう一度座談会が……。
ショパン、題名からして、このシーンにふさわしいかなと思いましたが、曲そのものもちょうど拓人の感情に重なると思ったので採用してみました。個人的には氣にいった組み合わせとなりました。
コメントありがとうございました。
そうですよね〜。
第3楽章のないラフマニノフ二番なんて!
パスタやほうれん草、卵も茹でますが、さりげなく楽屋の水道あたりから登場している可能性も(笑)
もっとも氣が長くて1000年単位なんで、「わかんなきゃいいや」かもしれません。
拓人は、かなりのカッコつけですから、ボロボロに傷ついていてもこのくらいの虚勢は……。
真耶はねぇ。こんな男前だから、男が逃げだすんだろうなあ。
はい、来月になりますが、出雲にもどっておしまいです。
その前に、もう一度座談会が……。
ショパン、題名からして、このシーンにふさわしいかなと思いましたが、曲そのものもちょうど拓人の感情に重なると思ったので採用してみました。個人的には氣にいった組み合わせとなりました。
コメントありがとうございました。
こんばんは。
「ええかげんにせい!」のヘタレヒロインが続く「樋水龍神縁起」シリーズ。彩洋さんをかなり苛つかせたかも(笑)そう、ようやく自分から前に進む事になりました。ずっと当たり前のようにあった、前もって手を差し出してくれる人のいない環境、二人の自立した先達。摩利子や次郎は「龍王様から守らなきゃ」のつもりで東京に行かせたのでしょうが、これが瑠水の成長にはどうしても必要な環境だったのですよね。
本編が「カミ」レベルの味到を求める話だったのと比較して、この「Dum Spiro Spero」は人間レベルの最低限の氣づきに至る話なので、このヘタレちゃんの成長はここまでです。ま、与えられる試練も某役職の九年ごとの神事を除けば、大した事ありませんしね〜。
クラッシック音楽をモチーフにした小説のレベルで言うと、彩洋さんの方がずっと上だと思いますよ。「死と乙女」、新しいのが発表される度に「う〜ん、これこそ音楽の話だよなあ」と唸っていますもの。
そうそう、真耶はね。仲が良かったわけではない同窓生二人と、全然知らないガイジンの書いたハガキを送りつけられたかと思えば、「悪いけど戸籍謄本がいるのよね〜。あたしたち失踪中で家族には頼めないし」とか言われて、それでも黙々と四人を助ける。ノブレス・オブリージュの範囲はとうに超えているかも(笑)
拓人の、それに萌えましたか! 拓人もねぇ。けっこう踏んだり蹴ったりですが、全く懲りずにじきに219人め以降のナンバリングを再開するはずです。しょーもない!
たぶん、この二人は「音楽の神様」の神官になっちゃったから、ふつーの恋愛は難しいんでしょうね。私のブログに出てくるキャラの中ではかなり古い部類に属する二人ですが、これからもどうぞよろしく。
シンは、ええと。まあ、元氣です。まずは座談会で(笑)
コメントありがとうございました。
「ええかげんにせい!」のヘタレヒロインが続く「樋水龍神縁起」シリーズ。彩洋さんをかなり苛つかせたかも(笑)そう、ようやく自分から前に進む事になりました。ずっと当たり前のようにあった、前もって手を差し出してくれる人のいない環境、二人の自立した先達。摩利子や次郎は「龍王様から守らなきゃ」のつもりで東京に行かせたのでしょうが、これが瑠水の成長にはどうしても必要な環境だったのですよね。
本編が「カミ」レベルの味到を求める話だったのと比較して、この「Dum Spiro Spero」は人間レベルの最低限の氣づきに至る話なので、このヘタレちゃんの成長はここまでです。ま、与えられる試練も某役職の九年ごとの神事を除けば、大した事ありませんしね〜。
クラッシック音楽をモチーフにした小説のレベルで言うと、彩洋さんの方がずっと上だと思いますよ。「死と乙女」、新しいのが発表される度に「う〜ん、これこそ音楽の話だよなあ」と唸っていますもの。
そうそう、真耶はね。仲が良かったわけではない同窓生二人と、全然知らないガイジンの書いたハガキを送りつけられたかと思えば、「悪いけど戸籍謄本がいるのよね〜。あたしたち失踪中で家族には頼めないし」とか言われて、それでも黙々と四人を助ける。ノブレス・オブリージュの範囲はとうに超えているかも(笑)
拓人の、それに萌えましたか! 拓人もねぇ。けっこう踏んだり蹴ったりですが、全く懲りずにじきに219人め以降のナンバリングを再開するはずです。しょーもない!
たぶん、この二人は「音楽の神様」の神官になっちゃったから、ふつーの恋愛は難しいんでしょうね。私のブログに出てくるキャラの中ではかなり古い部類に属する二人ですが、これからもどうぞよろしく。
シンは、ええと。まあ、元氣です。まずは座談会で(笑)
コメントありがとうございました。