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scribo ergo sum もの書き・八少女 夕のブログ Since March 2012


Posted by 八少女 夕

【小説】格子の向こうの響き

今日の小説は、またしても「黄金の枷」の外伝。「scriviamo! 2015」もたまっていないし、なにか読み切りでも出しておくか、という感じです。彩洋さんからいただいているお題も、このシリーズなので、どうせだからもう一つ、設定を開示しておくのも悪くないかなと。「森の詩 Cantum Silvae - 貴婦人の十字架」の連載を再開してもよかったんですが、まあ、中途半端にまた止めるよりはしばらく様子を見ようかなと。

現在連載している「Infante 323 黄金の枷」は三部作の一作目。三作を通して登場人物は「ドラガォンの館」を中心にした二世代なのですが、今回はじめて出てくる人物が最後の大物です。これでようやく全部揃ったという感じ。(あ、まだライサ・モタが出てきていないか)

今回の話は、前回発表したばかりの「願い」のエピソードと互いに関連しています。父親が23の心を傷つけてしまった件ですね。

出てきた曲は、いつものように追記でご紹介しています。



「Infante 323 黄金の枷」「Infante 323 黄金の枷」をはじめから読む
あらすじと登場人物




格子の向こうの響き

 激しい弓使いが暗い館の重い空氣を切り裂いた。23はその音に心惹かれて格子に近寄った。その奥に閉じこめられているのが、彼自身と同じ番号の名前を持つ人だという事は知っていた。十一歳になったばかりの23には、その人が動物のように檻に閉じこめられている理由も、そして、食事の度にその扉が開かれて召使いが呼びかけるのに、絶対に出てこない理由もわからなかった。

 それはいつもの儀式だった。召使いたちもそれから23の両親も、Infante322が食事に出てくるとはもう考えていなかった。しばらく待つと、やがて当主であるドン・カルルシュ、23の父親が目で指示をしてメネゼスは召使いたちに給仕を始めるように合図する。22の居住区には、もう一人の召使いが直ちに向かい、彼の三階の部屋のテーブルにクロスやカトラリーをセットする。そして彼の食事はそこへと運ばれるのだった。

「牢屋に閉じこめられるなんて、どんな悪いことをしたの?」
とても幼い頃に24が訊いて、両親にきつく窘められて以来、兄弟の誰も彼のことを詳しく訊くことが出来なかった。けれど、23はもう理解していた。Infante322は、ドン・カルルシュの弟、彼の叔父だった。そして、彼の父母と22の間には、とても大きな蟠りがあり、格子の向こうの男は兄夫婦のことを激しく憎んでいるらしいことを。

 23の祖父、前当主が生きていた頃から、22は館の中で一人浮いた存在だった。召使いともほとんど口をきかず、家族には冷たい拒否を示し、ただ一人で格子の向こうに居続けた。誰も彼に近づこうとしなかった。それは子供たちにとって無言の禁忌となり、彼らもまたその居住区の前を通るときは早足になり、冷たい青い眼に見られることがないようにした。

 けれど、23は今その格子に惹き寄せられていた。それははじめてではなかった。22がヴァイオリンを奏でる時、または一階に置かれたグランドピアノの鍵盤を叩いている時、23は居住区の側までやってきて、階段に腰掛けて聴き入ることがよくあった。

 23はそうでなくても、いつも一人だった。居間で他の兄弟たちが遊んでいるときも、24が使用人に甘えて一緒にゲームをしてもらっているときも、アントニアが母親と花を手折りながら庭をまわっている時も、彼は黙って部屋の隅にいた。甘えて、仲間に入れてほしいと言えばよかったのに、それが出来なかった。あの晩以来。

 それは23が八歳の時だった。その数日前に、アルフォンソが心臓発作で入院した。付き添いとして病院へ行った母親に会えなかったので、六歳になったばかりの24は泣いて騒ぎ、容態が安定したと戻ってきたマヌエラにしがみついて離れようとしなかった。23も寂しかったので、母親のもとへ行こうとしたが、カルルシュに厳しい声で止められた。
「トレース、お前までマヌエラを患わせるな。少しは我慢しろ」

 夜になって、彼は夢にうなされて目を覚ました。静かな部屋の中で、汗を拭き、ひと目だけでも母親に逢いたくて、23はそっと廊下にでた。カルルシュとマヌエラの部屋の前まで歩いていくと、扉がわずかに開いていて光が漏れていた。そして両親が密やかに話しているのが聞こえた。マヌエラが泣いているのがわかった。

「大丈夫だ。前回の発作よりも軽く済んだじゃないか。前よりもよく食べて、体もきちんと育っている。希望を捨てないでくれ」
「ええ。あなた、わかっています。でも、アルフォンソが不憫で……。苦しいでしょうね」
「あれは俺の弱い体を受け継いでしまったのだろう。許してくれ、マヌエラ」
「あなたのせいではありません」

「幸いクワトロは健康で、美しく、天使のようで、本当にドイスの子供の頃にそっくりだ。あの子がお前に親としての最高の幸せを与えてくれるだろう」
「カルルシュ、なにを言うの。あなたが与えてくださったどの子供だって……」
「それはそうだ。だが、俺は時々苦しくなる。クワトロを誰よりも幸せにしてやりたくなる。あの笑顔を消したくないんだ」

「カルルシュ、お願いですから、そんな事を言わないでください」
「すまない。子供たちには、こんな感情は悟られないようにしないと……」

 23は、踵を返して走り去った。誰かがいたことに氣のついた両親が、扉を開ける前に彼は部屋に飛び込んでベッドに潜り込んだ。それから朝までもっとひどい悪夢にうなされた。

 目を覚まして、顔を洗うために洗面所の鏡の前に立った。黒い縮れた髪、黒い眉の下に焦げ茶色の瞳、自分の顔を醜いと思ったことは一度もなかった。鏡に映っている少年は、醜くはなかった。だがどう眺めてみても天使には見えない。いつも感じていた漠然とした想いが、言葉になって心に渦巻いていた。どうして誰もが24に笑いかけて、俺には無関心なんだろう。父親が自分に対して冷たいと感じたことは一度だけではなかった。母親が一番最初に24を抱き上げるのもなぜだろうと思っていた。それでも、それは自分の思い過ごしだと信じ込もうとしていた。そうじゃなかった。

 そのことは誰にも打ち明けられなかった。アルフォンソは、次期当主としての英才教育に加えて、体が弱いためにいつも誰か大人と一緒にいて、二人だけでゆっくり話せるようなことはなかった。アントニアは23にほとんど興味がなかった。一度その夜のことを自分の奥底に沈めてしまったために、この三年間、彼は家族ときちんと話せなくなってしまった。

 珍しく使用人たちが話しかけてきても、父親や母親に笑顔を向けられても、彼は戸惑いほとんど口もきかずに必要最低限の返事をするだけになってしまった。以前のように母親に抱きつくことも、無邪氣に24と遊ぶことも出来なくなった。その態度がますます館の全ての人間の態度をよそよそしくした。

 いつの間にか、彼が一番近いと思える人間は、格子の向こうの叔父になった。彼に暖かいからではなく、誰に対しても冷たく、一人でいることに怖れも持たず、自分の世界だけに生きている姿が心の支えになった。

 その叔父が息をしてこの世に存在している証が、聴こえてくる音色だった。激しい切り裂くような弓使い。力強く想いのこもった響きだった。その日は彼は珍しく三階や階段を下りた一階ではなく、格子の向こうである二階の居室に立っていた。広い部屋の一番奥にいたので、階段からはどこにいるのかわからなかったが、音色はいつもより空間に広がり、23を魅了した。

 彼は思わず立ち上がり、格子に向かって歩いた。格子をつかみ、音色に耳を傾けた。何もかも悟ったような冷たい瞳をしていても、彼の奏でる音はこれほどに狂おしい。誰をも必要としていないように振る舞っても、彼の音はこれほどまでに惹き付ける。それが自分の中にある風を巻き起こしたようで、23は居ても立ってもいられなくなった。

 突然、音が途切れた。23ははっとして瞼をあげて格子の向こうを見た。すぐ近くにヴァイオリンを構えたまま22が立ち、厳しい顔で23を見下ろしていた。このように正面から彼の顔を見上げたのは初めてだった。彼は猛禽に見つかった鼠のように固まったまま動くことが出来なくなった。勝手に親しみと憧れを持っていたその男は、優しさも同情も全く見せない様相で、格子をつかんでいる少年を見下ろしていた。
「何をしている」

 23は、瞬時に見て取った。この人も俺のことを嫌っている。しかも、他の人のように何となくではなく、強く意志を持って憎んでいる。でも、どうして。俺は、この人に憎まれるようなことをしたことは、一度だってないのに。
「その……近づいてもっとよく聴きたかったんです」

 22はわずかに表情を緩めた。
「お前は、23だったな……」
「はい。そうです」

 彼は、少年の顔をまじまじと眺めつつ言った。
「本当によく似ている」
「誰に?」
23が訊くと叔父は口の端を歪めた。
「子供の頃のお前の父親に。見るだけで腹立たしいと思ったが、そうか、お前はインファンテだったな。私と同じ運命を歩む予定の……」

「同じ運命?」
その言葉に23は戦慄した。後から思えば、22は単純にインファンテとしての人生について口にしたのだとわかったが、その時の23は、彼が叔父に対して持つ近さを22の方も感じてくれたのかと思った。青い瞳を閉じると彼は続けた。
「この曲が好きか」

「はい。心が引き絞られるようです」
「そうか。クライスラーという作曲家の『プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ』という曲だ。本当はピアノの伴奏がつくんだが、残念ながら私一人ではどうにもならない。もう一度はじめから弾いてやろう」
そう言うと、彼は再び弓を構えて、少年の心を震わせるあの響きを繰り返した。

 この人は、世界を憎んでいるわけではない。言葉としてではなく、概念で23は理解した。情熱の響き、強い想い、何かを求め、それを未だに探している。乾き、求め続けている。それは言葉でも、冷たい一瞥でも、そっけなく興味のない様子でも隠すことの出来ないこの人の本質なのだと。

 23は自分自身もまた、誰にも話しかけず、誰からも求められず、一人で部屋の隅でうずくまっているが、それは本質ではないのだと感じた。この人がこの響きを生み出しているように、自分もまた何かを表さなくてはならない。それを、彼はやはり言葉ではなく概念で感じた。そして、それは涙となって表れた。

 終わりの和音を弾き終わり、余韻を味わうように弓を引いた22は、格子の向こうの少年が涙を流しているのを見て、わずかに笑った。
「拍手よりも嬉しい喝采だな」
「感情がコントロールできなくなるんです。また、弾いてくれますか」

 22は首を振った。
「それはダメだ。私と親しくなろうとするな。私に音楽を求めるな。お前にそれが必要なら、自分の中に求めるのだ」
「なぜ?」
「私は、お前とは一緒にいられないからだ。それが私たちインファンテの宿命だ。音楽が必要ならば、なにか楽器を習いたいとお前の両親に頼みなさい。もし反対されたら『インファンテにはそれが必要なのだ』と私が言ったと伝えなさい。その言葉があれば、お前の両親はどんなことでも叶えてくれるに違いない」

 22のいう事を、少年はよくわからなかった。彼は、この日以外に叔父と直接話をしなかった。彼は二度と二階でヴァイオリンを奏でなかったし、23は、この日のように近くへ寄ろうとしなかった。23は、叔父の怒りを買わないように、遠くからその音を聴き続けた。それは、それから三年後に23自身の体が変化して、新しい世代のインファンテとして格子の向こうに閉じこめられる日まで続いた。それと同時に叔父は館を離れて暮らすことになった。

「私はお前とは一緒にいられないからだ」
叔父の言葉は現実となった。彼は、また一人になった。彼の慰めであり、支えであった音楽は消え去った。格子の向こうへ追いやられ、彼の心は絶望と怒りに苛まれた。熱がでて、体中が痛み、背骨は歪んだ。暴れ、抵抗し、友が出来るかもしれないというわずかな希望をも打ち砕かれてから、ようやく彼は自分の運命を受け入れた。

 彼は、ギターラを手にした。叔父が言おうとしていたことを、彼は少しずつ理解した。必要な響きは、己の中にある。願う通りの響きを表に出すためには、彼自身が弾き手でなければならなかった。また、その聴き手も、彼自身以外にはいなかった。

(初出:2015年1月 書き下ろし)

追記


いま氣がついたんですが、22と23って文字が似ていて、見間違いそうですよね。当時まだ少年だった甥の方が現在連載中の「Infante 323 黄金の枷」の主人公通称23、または「トレース(3という意味)」です。「ドイス(2という意味)」と呼ばれているのが叔父のInfante322。この感じの悪い叔父さんこそが、第三部の主人公です。

この作品で22が弾いているのがこちらの曲。クライスラーの『プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ』です。
この曲を弾く22をどう使うかずっと考えていました。

Itzhak Perlman Kreisler-Preludium and Allegro
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Category : 小説・黄金の枷 外伝
Tag : 小説 読み切り小説

Comment

says...
うう。泣ける。
23がギターラを手にしたのには、そんな背景もあったのですね。
マイアを惹きつける演奏をするのにも。
叔父の22は孤高の方ですねえ。
そうそう、23の移動とともに、どちらに行かれて、今はどうしているのだろうと実はちょろっと思っていたのですよ。
今は街に? で?で?
第三部の主人公さんですか。楽しみです。

楽器は語るう(T^T)
楽器の語りは言葉ではないので、誰の心にも容易く入ってきますよね。
それが涙させたり笑顔にさせたり。
いいなあ・・・(勝手に浸っているので、放っといてください -_-;)
2015.02.04 11:16 | URL | #- [edit]
says...
更新、お疲れ様でした。

ん? あれれ……23って、もしかしてドン・カルルシュの●●じゃないとか? この設定って、どっかで出てましたっけ。うむう、読み落としていたかorz
これ、多感な年ごろにわかっちゃうと、きっついでしょうね。そりゃ、人と関係持ちたくなくなるわ。
22の孤独と、23の孤独が、共鳴したという感じですね。この二人の共感は、ヴァイオリンという楽器から受けるイメージに似合うように思えます。
音楽を求めるのなら自分の中に、という22の言葉は、深さと重みを持っていますが、同時に底知れない孤独を感じます。インファンテのさだめとはいえ、引きこもり系をそんなふうに導いちゃったら、取り返しがつかないことに(泣)
で、アントニアって、あのアントニアですよね。こんなに没交渉だった二人が、なんであんな親密な関係になったんだろう。そのあたりも、興味深いですね。

本編の次話、楽しみにお待ちしています。
2015.02.04 11:47 | URL | #V5TnqLKM [edit]
says...
このお話の舞台設定は、本当に細やかに、奥深くまで考えられているのですね。
そうでなければ、ここまでの世界観を描き出せないのですよね。
23が、自分で音楽を奏でようと思った背景は、ここにもあったのですね。
振り返るごとに、23の孤独が伝わってきます。
(とはいえ、前回の外伝でカルルシュの愛情はちゃんと理解できたので、その面では安心しているのですが・・・23に教えてあげたい)
22と、カルルシュ夫婦の間にどんな亀裂があったのか、ちょっとまだ分からないのですが(既出だったらごめんなさい)このあと22もしっかり登場するようなので、そちらを待ちます。
23と再び会う日が来るのでしょうか。

2015.02.04 14:31 | URL | #GCA3nAmE [edit]
says...
ほんと、泣ける……こういうの、好きだわぁ。そうそう、べったり愛している~とか可愛い可愛いじゃなくて、言葉も何もないけれど、魂のどこかで通じているような、でも通じているのは幻想かもしれなくて、あるいは通じたのは一瞬だけで、後はもう何の接点もなくなってしまって、それでもそのひとつの言葉や態度がその人の心に残るって話、もろに好みであります。
夕さんの短編に時々出てくるこの「人生の中で一瞬触れた」というシチュエーション、私の琴線に触れまくりです。いえ、もしかすると、この先また触れ合うことがあるのかもしれませんが……(22の言うとおり、それはダメかもしれませんが)
そして、子どもって、誰かの何気ない一言で、人生において自分にとっての大事なことを心に決めることがあるのですよね。ひとつの言葉、ひとつの光景、それが人生を決めることも。
23は孤独に嵌っていってしまうけれど、マイアもいるし、それに心根は穏やかで優しい子だし、それに両親の想いって本当に憎まれているのなら別だけれど、愛情が欠片でもあれば心のどこかではちゃんと分かるものだろうし。
この先、まだ物語があると思うとワクワクします。
心惹きつける外伝、ありがとうございます(*^_^*)
2015.02.04 16:59 | URL | #nLQskDKw [edit]
says...
こんばんは。

おお、泣いてくださいますか。
「こりゃ、独りよがりが過ぎて引かれるかもな」と思っていたエピソードなので嬉しいです。

そうそう、私のギターのように「老後のボケ防止に」なんて理由ではなくて、誰かの前で演奏するためでもなくて、自分の存在と折り合いを付けるために始めたのですよね。
マイアが惹き付けられてしまったのも、単なる音楽にではなくて、それを弾かなくちゃいけなかった彼の何かを感じたからかもしれませんよね。

そして、感じの悪い叔父さんは、ちゃんと出てくるのはもっと先ですが、今週末にチラリ出演いたしますよ。
実は、それがあるから、今日これを公表したという説もあり(笑)

そして、楽器は語る、そうなんですよね。
歌詞のある歌だと、言いたいことがストレートに伝わりますが、インストルメンタルによるメロディだと、受け取るものは聴き手に委ねられる部分が多いのですよね。だから、それぞれが別の感じ方をしつつ受け入れるんだろうなと思います。

23が受け入れられるようなものを弾けるようになるのは更に数年後。マイアがやってくるまでには間に合ってよかった(笑)
浸っているけいさん、好きです。

コメントありがとうございました。
2015.02.04 20:12 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

TOM-Fさんを更に混乱させる裏設定(初公開)を語りますと。
番号の人は存在していないので、番号の人の遺伝子を受け継いだ赤ん坊は、名前のある人の子供になります。
(存在していない子供はどっちにしても存在しませんが)
つまりドラガォンの館で兄弟姉妹として育てられる同世代は、本当の兄弟姉妹の場合と、異母兄弟姉妹の場合と、従姉妹や従兄弟の場合があるわけです。この範囲の中で(誰の実子かは関係なく)一番早く生まれた男子と、全ての女子が名前のある存在になります。

でも、TOM-Fさんの深読みは、ご心配なく。23はカルルシュとマヌエラの実子です。
こんなことまで隠してもしょうがないし。
なぜカルルシュが、23よりも24を大切にしていたかというと、23は自分にそっくりで、24は22にそっくりで、それを投影しちゃったからなんですね。カルルシュが嫌いだったのは自分自身で、幸せにしたかったのは22だったのですが、あの失言を聴いてしまったのが23で、そのせいであんなひきこもりになってしまったと知った後でようやく自分の間違いに氣がついて……という流れです。ここに書いたことは、本編に直接関係ないんでどこにも出てこない裏設定なんですけれど、なんだか番外編で開示すればするほど、皆さんの疑問が増えていっているような……

本編ではもう26歳になっている23は、父親の過去の問題も、自分に対する両親の考え方も、それにドラガォンのシステムや、現在ドラガォン抱えている大問題も全部理解しているのですが、それでもマイアがやってくるまでは何をどうやっていいのかよくわからずに、引きこもりライフ継続中でしたね。

22の弾くメインの楽器をヴァイオリンにしたのは、私の事情です。
蝶子も真耶もヴァイオリン弾きじゃなくしちゃったので、好きなヴァイオリン曲で書かせてくれるキャラが欲しいなあという自己都合(笑)
でも、時に楽しく、時に悲愴に一人で演奏するとしたらヴァイオリンはわるくないですよね?

アントニアは、ええ、あのアントニアです。
この二人が仲良くなりだしたエピソードもそのうちに外伝にしたいんですが、ええと、ネタバレが……。
ま、いいか。そろそろ読者にはわかっているだろうしな。この二人の関係。

本編の次話は、ええと、ほら、その、TOM-Fさんお待ちの沐浴シーン……なんだけど、ちょっとヤバいので、さっさと出す勇氣が……。scriviamo!が途切れたら、出さなくちゃいけいなくなるけれど……。

コメントありがとうございました。
2015.02.04 20:35 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

なんというんでしょうか。
こういう非現実的な設定を始めると、破綻を防ぐために別の設定が必要になり、それがまた別の設定を生み、なんだか私自身もどうなっているのやら、なことになっています。

今発表している本編からは、全部どうでもいいことになるんですが、それでも「なぜ23はマイアだけ特別に反応したのか」とか「なぜ23と24に大きな違いが出たのか」とか「なぜ23はそこまでひきこもりなのか」とか深く追求すると、親世代の物語と不可分になっています。

たとえば「継子なので虐められた」というような確固たる理由がなくても、それに実際には両親はとてもいい人だという事実があっても、両親の愛情が完全に等しくなかったということって、あると思うのです。「なんとなくそりがあわなかった」とか「一人だけ健康問題があって手がかかったので他の子はなおざりになった」とか「顔の好み」とか。親は親として、等しく愛そうと努力しているし実際に愛しているのだけれど、子供はそれでも傷ついている。ちょうど弟が生きていた時の優馬が紀美子の愛情に不安を感じていたのに近いのかもしれません。

同じように精一杯愛されていても、マイアのように「自分は実子じゃないし」とウジウジしている場合もありますし。(優馬もこれがあったのかな)

親世代の確執は、もちろん初めて書いたことです。ご安心ください。この話が「Usurpador 簒奪者」という二番目の話になります。でも、今の本編(マイアの恋愛ストーリー)にはほぼ無関係なので、ここはサラッと流します。

23と22が次に逢ったのは、カルルシュのお葬式でした。でも、23はその時はひと言も口をききませんでした。次に逢うのは……三番目の話「Filigrana 金細工の心」ですね。でも、こんどの日曜日に22は再登場します。

コメントありがとうございました。
2015.02.04 20:52 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
こんばんは。

おお、彩洋さんもお氣に召してくださいましたか。
この手の「情念系」の話を書く時は、いつも「これって、独りよがり度が過ぎて、みなさんドン引きかも」と思いながら怖々アップしているのですよ。
「黄金の枷」シリーズは、ますますその傾向が進みすぎて、自分でも「大丈夫かこのままで」なんですけれど。

「Infante 323 黄金の枷」は23の運命との和解の話で、「Filigrana 金細工の心」が主に22の運命との和解の話なんですけれど、この二人は、お互いにキーパーソンなんで、ちらっと触れるんです。でも、がっしりと触れることはないんですね。っていうか、このストーリー「がっしり触れている」人たちが少なすぎるのかも。

少しずつ外伝で小出しにして開示しているのは、本編としては別に見えなくてもいいけれど、実際には地下水のごとく流れている、マイアと23の対比です。本編だと、両親揃っているし、ご主人様だし、23の方が恵まれているように見えるけれど、心の飢え方では実はえらい違いがあるのです。でも、能天氣なマイア視線で書いている本編ではそれは浮かび上がらせないようにしています。

さらにいうと、「Usurpador 簒奪者」と「Filigrana 金細工の心」にうつると、今度は「23、あんたはいいよね。何でそんなちっちゃなことで暗くなっていたのさ」という話になりそう。だから時系列は無視して、ここから話を始めているのですが(笑)実際に、23の状態はそんなに悪くないのです。両親にはちゃんと愛されているし、そのことも、もちろん一番に愛されているのではないと知りつつも、理解してそれで苦しむことはないですし。それに、後から人びとの評価が変わって相対的に23はみんなに好かれるようになっていくのですから。

そして、この外伝は、日曜日に発表予定の、彩洋さんへのお返しの前触れです。いきなり「ヴァイオリンを弾くヤツ? 誰だよそれ」にならないように。現在、そっちを校正中。もう少々お待ちくださいませ。

コメントありがとうございました。
2015.02.04 21:13 | URL | #9yMhI49k [edit]
says...
数字の名前が多いというところには感服しますね。
考えてみれば、西洋ではそういう風習があったのかな。。。
世界史などや文化には疎い方ですが、
日本人から見ると、数字の名前というのも趣がありますね。
クワトロにしても。
2015.02.07 06:17 | URL | #- [edit]
says...
こんばんは。

えっ?
そんな風習はありませんよ!
これは完全に私のオリジナル設定ですから……。
(っていうか、存在しない人なんか、歴史には残らないし)

まあ、王様などで、同じ王朝の中で同じ名前があって、二世という具合に、数字を後ろにつけるのはありますが。

コメントありがとうございました。
2015.02.07 18:44 | URL | #9yMhI49k [edit]

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